JP3630887B2 - 手持ち型眼底カメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被検眼眼底を撮影する眼底カメラに係り、さらに詳しく述べれば、赤外光で照明された眼底像のピント合わせに好適なフォ−カス機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の被検眼眼底を撮影する眼底カメラにおいては、観察用照明光に赤外光を使用することにより、散瞳剤等の特殊な薬品を使用することなく、眼底部像の撮影が行える無散瞳方式のものが知られている。しかし、赤外光による観察用光束で照明される眼底像は、赤色の血管像が主体であるために全体的にコントラストが低く、不明瞭なものであり、この眼底像のみでピントを合わせることは非常に困難であった。
【0003】
そこで、眼底部にピント合わせ用の指標を投影する指標投影光学系を設け、これを斜設ミラ−により観察用の照明光学系の光軸と同軸にして眼底に投影された指標像の状態を観察することにより、眼底部像のピント合わせの適否を判断するようにした装置が提案されている。撮影時にはピント合わせ用の指標像は必要がないので、照明光学系の光軸上に配置した斜設ミラ−を退去させることによって、指標が投影されないような構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成の装置は、観察用の照明光学系とは別個に、指標投影用の光源、指標板、リレ−レンズ、斜設ミラ−等の指標投影のための専用の光学系が必要である他、撮影時には斜設ミラ−を退去させる機構が必要であるので、構造が複雑になるという欠点があった。このことは、特に手持ち式の眼底カメラにおける小型軽量化の点で不利である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、観察時におけるピント合わせ用の指標投影と撮影時における指標投影の除去が、簡単な構成で行える眼底カメラを提供することを技術課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、以下に記載するような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 赤外光により被検眼眼底の照明を行う第1照明光学系と、該第1照明光学系と光路の一部を共用し撮影用の可視光により被検眼の照明を行う第2照明光学系と、赤外域に感度を持つ撮像素子を有し被検眼を観察する観察光学系と、可視域に感度を持つ撮像素子を有し被検眼を撮影する撮影光学系を持つ手持ち型眼底カメラにおいて、前記第1照明光学系及び第2照明光学系が共用する光路に配置されるピント合わせ用の指標板であって、可視域の撮影光と赤外域の観察光のいずれも透過する透過領域が眼底の撮影視野を制限しない大きさに形成され、かつ該透過領域内であって、撮影光軸を中心とする中央領域を除いた位置に、可視域を透過し赤外域を遮光する波長特性を持つコーティングにより形成された細線のピント合わせ用指標を持つ指標板と、前記観察光学系により得られる被検眼眼底及びピント合わせ用指標を観察しながら操作されるフォーカシングレンズに連動して前記指標板を光軸方向に移動させるフォーカシング手段と、ピント合わせ用の前記指標板を前記第1照明光学系及び第2照明光学系の共用光路に配置したままの状態で撮影スイッチの撮影信号に応答して第2照明光学系の撮影用の照明光を発光させて前記撮影光学系により眼底像を撮影する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
【実施例】
以下、本発明についての一実施例を図面に基づいて説明する。図1は実施例の眼底カメラの概略構成を示す図である。実施例の眼底カメラは、手持ち操作に適する筐体に観察や撮影のための光学系等を収納した撮影ユニット部1、撮影ユニット部1を制御するコントロール部2、観察用モニタ3、表示用モニタ4、ファイリング装置5、ビデオプリンタ6から大別構成され、各部は電気的に接続される。
【0014】
図2は眼底カメラの光学系を示す図である。光学系は照明・指標投影光学系、観察・撮影光学系に別けて説明する。
【0015】
(照明・指標投影光学系)
11は観察用照明光源である赤外発光ダイオードであり、赤外発光ダイオード11はピント合わせのための指標投影光源を兼ねる。12は拡散板、13はコンデンサレンズである。14は撮影用光源であるフラッシュ光源であり、可視光束を出射する。15はリング状の開口絞りであるリングスリット、16は撮影部位のピント合わせのために被検眼眼底に指標を投影するためのチャート板である。チャート板16は、図3に示す如く、部分的に十字線で構成される指標マ−ク16aを持つ。この指標マ−ク16aは可視域を透過して赤外域を遮蔽する波長特性を持つコーティング(光学薄膜)により作成されている。十字形状の指標を使うと中心から周辺までピントを合わせたい部位を線上の位置で確認しやすいので都合が良い。指標マ−ク16aの回りの他の部分16bは可視域及び赤外域の光を共に透過する透過領域である。また、チャート板16は後述する観察・撮影光学系のフォーカシングレンズ23と同期して光軸方向(矢印方向)に移動し、眼底のピントが合うとともに共役な位置に置かれる。
【0016】
17は投光レンズ、18は照明・指標投影光学系の光軸と後述する観察・撮影光学系の光軸とを同軸にするビームスプリッタである。19は黒色吸収体であり、ビームスプリッタ18を減衰透過した照明光を無反射吸収することにより、観察・撮影光学系に不要なノイズ光が入射することを防止する。Eは被検眼を示す。
【0017】
赤外発光ダイオード11を出射した赤外光は、拡散板12により均一化された後、コンデンサレンズ13により収束してリングスリット15を全面照明する。リングスリット15によりリング状に制限された照明光は、さらにチャート板16を照明する。透過領域16bを透過した光束は、投光レンズ17を介してビームスプリッタ18に入射し、その光量を約1/2に減衰反射されて被検眼Eに向かう。リングスリット15によりリング状に制限された光束は、撮影ユニット部1が所定の作動距離に位置する時、被検眼Eの瞳孔近傍と共役になり、いったんリングスリット像を結んだ後拡散して、撮影される視野と同じか、やや広い視野の眼底を赤外の不可視光で照明する。このとき、チャート板16上の指標マ−ク16aと投光レンズ17及び被検眼Eの水晶体は眼底に対して結像光学系を構成しているので、その指標マ−クが陰影部として眼底に投影される。
【0018】
また、フラッシュ光源14を出射した光は、リングスリット15、チャート板16を照明する。このとき指標マ−ク16aは可視域を透過するので、撮影用の可視光束はチャート板16に制限されることなく通過する。チャート板16を通過した光束は、赤外発光ダイオード11による照明光束と同様の光路を経て被検眼眼底を照明する。
【0019】
(観察・撮影光学系)
21は観察用の対物レンズ、22は前記リングスリット15と同様に被検眼Eの瞳孔近傍と共役になる位置に配置された撮影絞りである。23はフォーカシングレンズであり、被検眼の屈折力に合わせて調整を行うために、図示なきレンズ移動機構により光軸方向(矢印方向)に移動可能である。24は結像レンズ、25はダイクロイックミラーであり、ダイクロイックミラー25は赤外光を反射させ、可視光を透過させる特性を備える。26は撮影用のCCDカメラである。
【0020】
27は光路を延長するためのリレーレンズ、28は鏡像反転を元に戻すためのミラー、29は観察用の赤外CCDカメラである。
【0021】
被検眼眼底は照明・指標投影光学系による赤外照明光により照明される。この照明による眼底からの反射光は、瞳孔近傍でのリングスリット15によるリング像と重ならない光軸中央を出射する。被検眼Eを出射した光束は、ビームスプリッタ18でさらにその光量を約1/2に減衰され、対物レンズ21によりA点に倒立像を一旦結像した後、撮影絞り22を通過する。撮影絞り22は瞳孔と略共役であるので、被検眼Eの瞳孔部から取り出す撮影光束径は、リングスリット15による周辺のリング像と重ならないように、撮影絞り22によって決定される。また、A点の倒立像は、被検眼Eが持つ屈折力(視度)により光軸上の位置を変化する。
【0022】
撮影絞り22を通過した赤外域の光束は、フォーカシングレンズ23、結像レンズ24を通り、ダイクロイックミラー25で反射した後、リレーレンズ27により赤外CCDカメラ29の撮像素子上に結像する。CCDカメラ29が得た眼底観撮像は、観察用モニタ3に表示される。ここで、A点の倒立像移動に対し、フォーカシングレンズ23は被検眼の屈折力を補正し、CCDカメラ29にピントを合わせる目的で移動させるが、同時にチャート板16もこれに連動させて眼底面に正確に投影できる構成となっている。フォーカシングレンズ23及びチャート板16の連動での互いの移動量の違いは、カム等を介して連結することにより補正することができる。
【0023】
また、撮影用のフラッシュ光源14によって照明された眼底からの可視の反射光束は、赤外光による眼底反射光束と同様に対物レンズ21、撮影絞り22、フォーカシングレンズ23、結像レンズ24を介して、ダイクロイックミラー25に入射する。ダイクロイックミラー25は可視光束を透過させるので、可視の眼底反射光束は結像レンズ24によりCCDカメラ26の撮像素子面上に眼底像を結像する。このとき、チャート板16はその全面において撮影光束である可視光を透過するため、チャート板16の指標像は可視域では形成されない。また、赤外光束はダイクロイックミラー25により反射されるため、撮影用CCDカメラ26に入射することはない。したがって撮影用CCDカメラ26はチャート板16の影響を受けない眼底像を得ることができる。CCDカメラ26が得た眼底像は表示用モニタ4に静止画像表示される。
【0024】
以上のような構成を持つ眼底カメラにおいて、以下にその動作を図4の要部制御系ブロック図を使用して説明する。撮影環境としては、やや薄暗い程度の明るさで、自然散瞳状態で被検眼の瞳が大きく開く程度が好ましい。コントロール部2に設けられた図示なきスイッチにより駆動回路を作動させて赤外発光ダイオード11を点灯する。撮影者は撮影ユニット部1の筐体を手で持ち、被検眼Eのやや手前から撮影ユニット部1を近づけて被検眼Eを照明する。観察照明光束及び指標投影光束は不可視の赤外光束であるため、被検眼Eに負担のない状態で照明できる。
【0025】
赤外光束により照明された被検眼からの反射光束は、赤外CCDカメラ29で捕えられ、撮影像はカメラコントロール回路31を介して観察用モニタ3に映し出される。観察用モニタ3で観察される被検眼像はやや手前から照明し始めるため、最初は被検眼の前眼部像が映し出される。撮影者はその像を観察しながら眼底カメラの作動距離位置付近まで装置を近付けると、観察用モニタ3では瞳像が広がり、やがて眼底像が映し出されるようになる。
【0026】
このときの観察用モニタ3に映し出される像の一例を図5に示す。この状態になると、チャート板16の指標マ−ク16aにより黒い影となって形成された指標像51が観察用モニタ3上で眼底像と同時に映し出され、確認できるようになる。撮影者は、被検眼の瞳孔像が所望の大きさになったとき(作動距離が合ったとき)に撮影ユニット部1の移動を止める。次に、フォーカシングレンズ23を移動して眼底のピントを合わせる。赤外光により照明された眼底像は赤色の血管像が主体となるため、全体的にコントラストが低く、この観察だけでは不慣れな者によるピントを合わせは容易でないが、モニタ3上には指標像51が映し出されているので、これを観察してピントを合わせを行う。指標像51は、モニタ3の白黒画面上で白っぽく映し出される眼底像に比べ、コントラストがはっきりした黒い影として映し出されるので、撮影者は指標像51が最も明瞭になるようにピント合わせを行う。フォーカシングレンズ23の移動に連動して、チャート板16も移動する。ピントが合うと、フォーカシングレンズ23は眼底(つまりA点の倒立像)に、CCDカメラ26、29の撮像面をそれぞれ共役な位置とする。
【0027】
次に、撮影者は観察モニタ3の画面を観察しながら、所望の眼底撮影部位を瞳孔を中心に撮影ユニット部1を振る形で移動させて微細に決定する。なお、外部固視灯により被検眼の視線を動かして撮影部位を決定する周知の方法を用いることもできる。
【0028】
眼底撮影部位の決定が完了したら撮影ユニット部1に設けられている撮影スイッチ32を押す。撮影スイッチ32が押されるとトリガ信号が発せられ、その信号はコントロール部2のタイミング回路33に入力される。タイミング回路33は、同期信号分離回路34を介して入力された撮影用CCDカメラ26からの同期信号と同期させて、フラッシュ光源駆動回路35とメモリコントロール回路36に作動信号を送る。フラッシュ光源14の発光により照明された眼底像は撮影用CCDカメラ26に捕えられる。CCDカメラ26が捕らえた映像信号は、A/D変換器37でディジタル化され、メモリコントロール回路36からの信号に同期してフレームメモリ38に記憶される。
【0029】
フレームメモリ38に記憶された撮影像は、D/A変換器39でアナログ信号に変換された後、ビデオアンプ回路40を介して表示用モニタ4に送られ、瞬時に映し出される。表示用モニタ4に映し出される眼底像は、フラッシュ光源14による定常光でダイクロイックミラー25により波長選択された可視域のものであるので、赤外域を制限するだけの指標マ−ク16aの像は映し出されずにすむ。
【0030】
撮影者は表示用モニタ4に映し出された眼底像が良好に撮影されているかを確認し、撮影像が良好でない場合は、フラッシュ光源14の光量調整等の撮影条件を設定し直し、同様の操作で撮影をやり直す。
【0031】
撮影像を保存する場合は、ファイリング装置5を操作してデータを保存する。ファイリング装置5に記憶保存された眼底像の画像データの再現は自在であり、不要な画像データは消去して編集する。また、カルテに貼付ける等のためにプリント画像が必要な場合は、ビデオプリンタ6を操作することによりプリント出力する。
【0032】
なお、実施例のように観察用モニタ3は撮影ユニット部1とは別置きにしたが、観察用モニタ3の代わりに小型の液晶ディスプレイ等を採用し、これを撮影ユニット部1に配置するようにすることより一層操作性が良くなる。また、観察用モニタ3と表示用モニタ4は、画像切換手段を設けることにより、1つのモニタで観察画像と撮影画像が見られるようにしても良い。以上示したように、本実施例は前述した変容例の他にもその技術思想を変えることなく種々の変容が可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複雑な光学系や移動機構を設けることなく、観察時におけるピント合わせ用の指標投影と撮影時における投影指標の除去を容易に行うことができる。したがって、装置の単純化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例である眼底カメラの概略構成図である。
【図2】実施例である眼底カメラの光学系要部構成図である。
【図3】実施例であるチャート板を示す図である。
【図4】実施例である眼底カメラの要部制御系ブロック図である。
【図5】観察用モニタに表示される眼底部像の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 撮影ユニット部
3 観察用モニタ
11 赤外発光ダイオード
14 フラッシュ光源
15 リングスリット
16 チャート板
16a 指標マ−ク
18 ビームスプリッタ
23 フォーカシングレンズ
26 撮影用CCDカメラ
29 観察用赤外CCDカメラ
Claims (1)
- 赤外光により被検眼眼底の照明を行う第1照明光学系と、該第1照明光学系と光路の一部を共用し撮影用の可視光により被検眼の照明を行う第2照明光学系と、赤外域に感度を持つ撮像素子を有し被検眼を観察する観察光学系と、可視域に感度を持つ撮像素子を有し被検眼を撮影する撮影光学系を持つ手持ち型眼底カメラにおいて、前記第1照明光学系及び第2照明光学系が共用する光路に配置されるピント合わせ用の指標板であって、可視域の撮影光と赤外域の観察光のいずれも透過する透過領域が眼底の撮影視野を制限しない大きさに形成され、かつ該透過領域内であって、撮影光軸を中心とする中央領域を除いた位置に、可視域を透過し赤外域を遮光する波長特性を持つコーティングにより形成された細線のピント合わせ用指標を持つ指標板と、前記観察光学系により得られる被検眼眼底及びピント合わせ用指標を観察しながら操作されるフォーカシングレンズに連動して前記指標板を光軸方向に移動させるフォーカシング手段と、ピント合わせ用の前記指標板を前記第1照明光学系及び第2照明光学系の共用光路に配置したままの状態で撮影スイッチの撮影信号に応答して第2照明光学系の撮影用の照明光を発光させて前記撮影光学系により眼底像を撮影する制御手段と、
を備えたことを特徴とする手持ち型眼底カメラ。
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