JP3628251B2 - 根菜類収穫機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉ねぎ、人参、大根、ニンニク、などの根菜類の収穫に利用する収穫機に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記収穫機の一例である玉ねぎ収穫機としては、例えば、特許公報第2759442号で示されたものが知られている。この玉ねぎ収穫機は、係止爪を前方側に向けて突出させた姿勢で地面近傍から後方斜め上方に向けて移動させて圃場にある根菜の葉茎を引き上げる縦回し型の葉茎引上げ装置と、この葉茎引上げ装置によって引き上げられた葉茎を、係止爪を横方向に向けて突出した姿勢で後方斜め上方に向けて移動させて掻き上げる横回し型の葉茎掻上げ装置と、この葉茎掻上げ装置によって掻き上げられた葉茎を挟持して後方斜め上方に向けて挟持搬送する挟持引上げ搬送装置とを備え、機体を根菜条にそって前進移動させることで、先ず、倒れ込んでいる葉茎を葉茎引上げ装置によって引き上げ、次いで、引き上げられた葉茎を左右の葉茎掻上げ装置で掻上げて挟持引上げ搬送装置の始端部に導き、この挟持引上げ搬送装置で葉茎を挟持して後方斜め上方に向けて搬送することで、根菜を圃場から抜き上げ、その後、葉切り処理、等を施して根菜本体を圃場面に放出してゆくよう構成されている。
【0003】
また、この玉ねぎ収穫機においては、挟持引上げ搬送装置の挟持始端部位に相当する箇所の横側に、根菜本体の下方にまで入り込んで前後に往復駆動される土切り崩し体を配備して、収穫する玉ねぎの周辺の土を膨軟化することで、挟持引上げ搬送装置による玉ねぎの抜き上げを容易に行えるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の玉ねぎ収穫機は、4条の玉ねぎが植付けられた幅広の平畝をまたいで往復走行することで、進行方向左側の2条づつを収穫するよう構成されたものであり、一行程で収穫すべき2条の玉ねぎの周辺土壌を膨軟化する土切り崩し体は、畝の左側および畝上の中央から畝に突入されてた。
【0005】
上記構成は、畝の土壌が露出された、いわゆる露地栽培された玉ねぎの収穫に対応して構成されたものであり、畝にマルチシートを掛けて栽培する形態の圃場においては、畝に掛けられたマルチシートによって根菜の抜き上がりが阻止されるので、所望の引上げ搬送を行うことができないものであり、また、マルチシートの掛けられた畝上の中央から土切り崩し体を畝に突入することもできないものであった。
【0006】
そこで、従来では、マルチ掛けされた畝での収穫に際しては、収穫機による収穫を行う前に、マルチシートを人手によって除去していた。しかし、マルチシートの植付け孔から出た葉茎は周囲に広く張り出しており、マルチシートだけを簡単にめくり上げるわけにはゆかず、マルチシートを切り破りながら除去することになり、このシート除去作業に多大な労力と時間を必要とするものであった。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、マルチ掛けされた畝で栽培された根菜類を機械的に収穫するのに有効に活用することのできる収穫機を提供することを主たる目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、作用および効果〕
【0009】
(構成) 請求項1に係る発明は、畝に作付けられた根菜を収穫する根菜類収穫機であって、畝に掛けられたマルチシートの植付け孔から突出した葉茎を挟持して後方斜め上方に向けて搬送する挟持引上げ搬送装置を、地面近くから後方上方に向けて傾斜配備し、この挟持引上げ搬送装置における始端部の下方近傍にマルチ用葉切り装置を配備するとともに、その葉切り箇所で根菜本体が引上げ移動されるのを受け止め規制する上昇規制部を配備し、この上昇規制部材を前記マルチ用葉切り装置の下側において互いに掻込み方向に回転駆動して茎葉を後方に強制搬送する左右一対の回転体で構成してあることを特徴とする。
【0010】
(作用) 上記構成によると、機体を畝に沿って走行させると、マルチシート上に突出した葉茎は挟持引上げ搬送装置で挟持されて後方上方へ引上げ搬送され、これに伴ってマルチシート下方の根菜本体は、マルチシートとともに畝から引き上げられ、大きく引き上げられるまでに葉茎がマルチ用葉切り装置の切断箇所に到達して切断され、切断された葉茎は引き続き挟持引上げ搬送装置で挟持搬送されてゆくとともに、葉切りされた根菜本体はマルチシートの下において畝上に残し置かれる。
【0011】
その後、突出していた葉茎が切断除去された状態のマルチシートを人手あるいは巻取り装置によってめくり上げ除去し、畝上に残し置かれた根菜本体を回収してゆく。
【0012】
この場合、根菜が切断箇所に到達するまでに挟持引上げ搬送装置によって大きく上昇されると、根菜本体がマルチ用葉切り装置に接触して傷つけられてしまうおそれが生じるが、本発明では、葉切り箇所での根菜の上昇移動を受け止め規制する上昇規制部を配備してあるので、根菜本体が不当に大きく上昇して葉切り装置に接触することが回避される。
【0013】
上記構成によると、上昇規制部としての回転体は、挟持引上げ搬送装置によって後方上方に搬送される根菜本体が不当に大きく上昇して葉切り装置に接触するのを阻止するほかに、根菜を切断箇所に素早く送り込むことになる。
【0014】
(効果) 従って、請求項1に係る発明によると、マルチ掛けされた畝で栽培された根菜類の収穫において、根菜本体を損傷することなく能率よく収穫することが可能となる。
【0015】
また、請求項1に係る発明によると、根菜本体が葉切り装置に接触して傷つくおそれが少なくなる。
【0016】
〔請求項2に係る発明の構成、作用および効果〕
【0017】
(構成) 請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記回転体による後方搬送速度を、前記挟持引上げ搬送装置による後方搬送速度より速く設定してある。
【0018】
(作用) 上記構成によると、一層、根菜が上方に移動する間もなく葉切り装置に送り込まれることになる。
【0019】
(効果) 従って、請求項2に係る発明によると、根菜本体が葉切り装置に接触して傷つくおそれが更に少なくなる。
【0020】
〔請求項3係る発明の構成、作用および効果〕
【0021】
(構成) 請求項3に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記マルチ用葉切り装置が、互いに掻込み方向に回転駆動される左右一対の円盤状の回転刃で構成されている。
【0022】
(作用・効果) 上記構成によると、左右の回転刃の下側に、回転体を装備することで、挟持引上げ搬送装置による後方搬送速度より速い後方搬送速度で作動する上昇規制部を構成することができる。
【0023】
〔請求項4に係る発明の構成、作用および効果〕
【0024】
(構成) 請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項の発明において、前記マルチ用葉切り装置が、前記各回転体と一体に回転する回転刃で構成されている。
【0025】
(作用・効果) 上記構成によると、左右の回転刃の下側に、回転刃と一体回転する回転体を同軸に装備することで、挟持引上げ搬送装置による後方搬送速度より速い後方搬送速度で作動する上昇規制部を構成することができる。
【0026】
〔請求項5に係る発明の構成、作用および効果〕
【0027】
(構成) 請求項5に係る発明は、請求項4の発明において、前記回転体の外周に掻込み突起を備えてある。
【0028】
(作用・効果) 上記構成によると、左右の上昇規制部(回転体)の間への葉茎のくわえ込みが確実に行われることになり、請求項3の発明の上記効果を一層的確に発揮させることができる。
【0029】
〔請求項6に係る発明の構成、作用および効果〕
【0030】
(構成) 請求項6に係る発明は、請求項5の発明において、前記回転体の掻込み突起を、前記回転刃の外周より外方に突出させてある。
【0031】
(作用・効果) 上記構成によると、切断が開始される前から葉茎の掻き込みが実行されることになり、左右の上昇規制部(回転体)の間への葉茎のくわえ込みが一層確実に行われることになり、請求項3の発明の上記効果を発揮させる上で有効となる。
【0032】
〔請求項7に係る発明の構成、作用および効果〕
【0033】
(構成) 請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項の発明において、マルチシートが掛けられた畝における畝肩の裾近くから畝に植付けられた根菜の下方に入り込んで前後に往復駆動される土切り崩し体を、前記葉切り装置の切断箇所より後方箇所に配備してある。
【0034】
(作用・効果) 上記構成によると、マルチシートから突出している葉茎が切断された後、畝上に残された根菜本体の周辺の土は土切り崩し体によって膨軟化されるので、畝上の根菜本体は取上げやすい状態となり、マルチシートをめくり上げた後の根菜本体の回収を容易に行うことができる。
【0035】
〔請求項8に係る発明の構成、作用および効果〕
【0036】
(構成) 請求項8に係る発明は、請求項7の発明において、前記土切り崩し体の直前方位置における畝肩の裾近くに、畝に掛けられたマルチシートの裾を自由にしてめくり上げ容易な状態にするシートめくり上げ用補助具を配備してある。
【0037】
(作用) 上記構成によると、挟持引上げ搬送装置の挟持始端部位に相当する箇所の横側では、先ず、シートめくり上げ用補助具が畝肩の裾近くに作用しながら前進移動することで、マルチシートの裾に被されていた土が崩されたり、除去されたりして、マルチシートの裾がめくり上げ容易な状態となる。引き続き土切り崩し体が、シートめくり上げ用補助具が通った畝肩の裾近くから根菜本体の下方に入り込んで前後に往復駆動されながら前進移動し、根菜の植わっている付近の土を膨軟化する。この時、シートめくり上げ用補助具の通過によってマルチシートの裾はめくり上げの容易な状態となっているので、土切り崩し体がマルチシートの裾を無理なく押し上げめくり上げてゆく。
【0038】
(効果) 従って、請求項8に係る発明によると、マルチシートを引っ掛けて破るようなことなく、横幅の広い土切り崩し体を容易に突入させて進行させることができ、マルチ掛けされた畝での収穫を円滑かつ確実に行う上で有効となる。
【0039】
〔請求項9に係る発明の構成、作用および効果〕
【0040】
(構成) 請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一項の発明において、前記挟持引上げ搬送装置の下方に、葉茎を挟持されて後方に吊り下げ搬送される根菜の葉茎を左右の上昇位置規制ガイド部の間に導入して根菜が後方に移動する間に根菜本体の上昇を規制してその高さを揃える位置揃え装置と、高さの揃えられた根菜の葉茎を切断するカッターを配備するとともに、前記挟持引上げ搬送装置の始端部下方に配備された前記マルチ用 葉切り装置を作用解除可能に構成してある。
【0041】
(作用) 上記構成によると、葉切り装置を所定の位置で作用させることでマルチ掛けした畝において、マルチシートから伸び出ている葉茎の切断を行って、シートのめくり上げを容易にして、畝に残し置かれた根菜回収を行うことができる。また、葉切り装置を作用解除すると、マルチ掛けされていない畝の根菜を挟持引上げ搬送装置で引上げて後方上方に吊り下げ搬送し、上昇位置規制ガイド部によって高さ揃えをした後、カッターで葉茎を切断し、葉切りした根菜本体を畝上に放置してゆくことができる。
【0042】
(効果) 従って、請求項9に係る発明によると、マルチ掛け栽培された根菜の収獲と、露地栽培された根菜の収獲とを一機種で行うことができ、実用上の利便性に優れたものとなる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を歩行型の玉ねぎ収穫機に適用した実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0044】
この玉ねぎ収穫機は、基本的には露地栽培時の収獲用の仕様(露地仕様)に構成されており、その露地仕様に設定された玉ねぎ収穫機が図9〜図16に示されている。また、その基本構成に一部改造を加えることで、マルチ掛けされた畝での収獲用の仕様(マルチ仕様)に設定することができるようになっており、マルチ仕様に設定された玉ねぎ収穫機が図1〜図8に示されている。
【0045】
先ず、基本構成である露地仕様の構成を図9〜図16に基づいて説明する。この玉ねぎ収穫機は、幅広の平畝上に栽培された4条の玉ねぎ(根菜)Wの内の進行方向右側2条を収穫するよう構成されたものであり、ループ状の操縦ハンドル1が備えられた3輪走行式の走行機体Aの前部に2条堀り仕様の収穫部Bが装備された構造となっている。
【0046】
前記走行機体Aは、畝をまたぐ左右一対の駆動後輪2と右側の畝底を移動する一つの遊転前輪3が備えられており、機体後部に搭載したエンジン4からの動力がミッションケース5で変速された後、車軸ケース6よびチェーンケース7を介して左右の駆動後輪2に伝達されるようになっている。そして、畝幅に応じて後輪トレッドを変更できるように、左側の車軸ケース6を伸縮して左側の駆動後輪2を左右に位置変更できるよう構成されている。また、収穫部Bの対地高さを決めるゲージ輪として機能する遊転前輪3は、手元ハンドル8を回転操作することで上下調節可能に構成されている。
【0047】
収穫部Bには、収穫すべき2条の玉ねぎWの葉茎Wbの両脇に位置する縦回し型の葉茎引上げ装置10、その後方に位置する横回し型の葉茎掻上げ装置11、さらにその後方に位置する挟持引上げ搬送装置12、挟持引上げ搬送装置12の始端側の下方に位置する土崩し装置13、挟持引上げ搬送装置12の下方に位置する位置揃え装置14、挟持引上げ搬送装置12と位置揃え装置14との間に位置する葉切りカッター15、位置揃え装置14の後部に位置する姿勢揃え装置16、が基本的に備えられており、以下に各部の詳細な構成および機能を説明する。
【0048】
〔葉茎引上げ装置10(露地仕様)〕
【0049】
縦回し型の葉茎引上げ装置10は、ケース21の上下に備えたスプロケット間に巻回されて縦回し駆動されるチェーン22に多数の係止爪23を起伏自在に連結して、係止爪23を前方側に向けて突出させた姿勢で地面近傍から後方斜め上方に向けて移動させて玉ねぎWの葉茎Wbを引き上げるよう構成されたものであり、2条の玉ねぎWそれぞれの左右両脇で作用するように配備されている。
【0050】
ここで、葉茎引上げ装置10は以下のように駆動されている。つまり、図16の伝動系統図に示すように、ミッションケース5の前部に設けた作業用動力出力部24に、PT0クラッチ25を介して動力伝達が断続されるPTO軸26が横架され、このPTO軸26の左端から前方に向けて延出された前向き伝動軸27の前端に、葉茎引上げ装置駆動用の横向き伝動軸28が横架され、この横向き伝動軸28によって3本の葉茎引上げ装置10が駆動さるようになっている。
【0051】
〔葉茎掻上げ装置11(両仕様共用)〕
【0052】
横回し型の葉茎掻上げ装置11は、ケース31の上下に備えたプーリ間に巻回されて横回し駆動されるベルト32に多数の係止爪33を連設し、この係止爪33を横方側に向けて突出させた姿勢で地面近傍から後方斜め上方に向けて移動させて、玉ねぎWの葉茎Wbを掻き上げるよう構成されたものであり、左右一対のベルト32が、互いのの係止爪33が重複するように対向して配備され、葉茎引上げ装置10によって引き上げられた2条の玉ねぎWの葉茎Wbが、両ベルト32の始端部で左右から掻き集められた後、後方上方へへ掻き上げられるようになっている。
【0053】
この場合、葉茎掻上げ装置11は、係止爪33を横回し移動させて葉茎Wbを掻上げるので、前後方向に向いている葉茎Wbに対しては係止爪33が大きく交差するようにして確実に係止するので、葉茎引上げ装置10によって引き上げられられなかっても、上記したように前向きに倒れた姿勢に修正されることで、葉茎掻上げ装置11による掻き上げ作用を確実に受けることができ、全ての葉茎Wbがもれなく掻き上げられる。
【0054】
〔挟持引上げ搬送装置12(両仕様共用)〕
【0055】
挟持引上げ搬送装置12は、上下のプーリ間に巻回されて横回し駆動される左右一対の幅広の挟持ベルト34を対向配備して構成されたものであり、葉茎掻上げ装置11によって掻き集められたた2条の玉ねぎWの葉茎Wbを左右の挟持ベルト34で強く挟持して後方上方に移動することで、畝上にある2条の玉ねぎWを引き上げて後方上方に吊り下げ搬送するよう構成されている。
【0056】
なお、図16に示すように、PTO軸26からウオーム減速機構36およびチェーン37を介して取出された動力で、挟持引上げ搬送装置12における左側の挟持ベルト34が駆動されるとともに、この左側の挟持ベルト34の前端から取出された動力で葉茎掻上げ装置11における左側のベルト32が駆動される。また、前記チェーン37の中間に連動連結した伝動軸38を介して取出された動力で、挟持引上げ搬送装置12における右側の挟持ベルト34が駆動されるとともに、この右側の挟持ベルト34の前端から取出された動力で葉茎掻上げ装置11における右側のベルト32が駆動されるようになっている。
【0057】
〔位置揃え装置14(露地仕様専用)〕
【0058】
位置揃え装置14は、露地仕様において使用されるものであって、前後のプーリ間に巻回されて横回し駆動される左右一対の案内ベルト47を対向配備して構成され、前後方向に略水平に設置されている。従って、この位置揃え装置14とその上方の挟持引上げ搬送装置12との間隔が、搬送方向後方側ほど大きくなっており、挟持引上げ搬送装置12で葉茎を挟持されて斜め後方上方に搬送される玉ねぎWの葉茎Wbを左右の案内ベルト47の間に導入することで、挟持引上げ搬送装置12によって上方に引き上げられようとする玉ねぎ本体を案内ベルト47の下面で受け止めて、それ以上の上方移動を阻止することで、玉ねぎ本体Waの高さを一定に揃えるように構成されているのである。なお、図16に示すように、この位置揃え装置14における左右の案内ベルト47は、葉茎掻上げ装置11における左右のベルト32の後端から取出した動力でそれぞれ駆動されるようになっている。
【0059】
ここで、挟持引上げ搬送装置12における左右の挟持ベルト34による葉茎挟持力は、圃場からの玉ねぎ引上げを行う搬送前端側では強く、位置揃え装置14との協働で玉ねぎ本体Waの高さを揃える搬送領域では挟持力を弱くして、位置揃え装置14によって上方移動が阻止された玉ねぎWの葉茎Wbが挟持引上げ搬送装置12から相対的に下方に引き抜かれるようになっている。
【0060】
〔葉切りカッター15(露地仕様専用)〕
【0061】
葉切りカッター15は、露地仕様において使用されるものであって、前記PTO軸26から屈伸可能に連設された一対のチェーン伝動機構48,49の前端部に装備された単一の円盤カッターとして構成され、直線スライド案内機構50に沿って上下に位置調節することが可能となっている。従って、前記位置揃え装置14によって玉ねぎ本体Waの高さが揃えられた玉ねぎWの葉茎Wbを切断するとともに、その作用位置を調節することで、玉ねぎ本体Waに切り残される葉茎Wbの長さを調節することができるようになっている。
【0062】
〔土崩し装置13(露地仕様)〕
【0063】
図11〜図15に示すように、土崩し装置13は、挟持引上げ搬送装置12による玉ねぎWの畝からの引抜きを容易にするものであり、畝肩の裾近くおよび畝の上面から機体進行方向右側の2条の玉ねぎWの下方にまで入り込むよう正面視L字状に屈折された左右一対の土切り崩し体41によって構成されている。各土切り崩し体41は、機体フレーム9の前部に支点a周りに前後揺動可能に枢支されるとともに、その上方延出端と前記PTO軸26の右端に備えた偏心クランク部43とがロッド44で連動連結され、偏心クランク部43を介してロッド44が押し引き駆動されることで、土切り崩し体41が支点a周りに一定の小ストロークで前後に揺動駆動され、玉ねぎWの下方の土を崩して膨軟化することで、挟持引上げ搬送装置12によって葉茎Wbを挟持されて引上げられる玉ねぎWが無理なく抜き上げられるようになっている。
【0064】
〔姿勢揃え装置16(露地仕様専用)〕
【0065】
姿勢揃え装置16は、位置揃え装置14の終端側に搬送経路を挟んで配備されたガイドバー51およびガイド板52と、左側の案内ベルト47の終端から取出した動力で駆動される突起付きベルト53とからなり、葉切りされた後、切り残された葉茎Wbを左右の案内ベルト47によって挟持されて後方に搬送されてきた玉ねぎ本体Waを、ガイドバー51とガイド板52とのよって回収しやすい横向き姿勢に修正して畝上に強制放出してゆくように構成されている。
【0066】
露地仕様の玉ねぎ収穫機は以上のように構成されており、平畝に露地栽培されている4条の玉ねぎWに対して、一行程の前進で進行方向右側の2条の玉ねぎWを引き抜いて所定の長さで葉切り処理し、畝の上に放置してゆくことになる。そして、その後、葉切りされて畝上に残し置かれた玉ねぎWを機械式あるいは人手によって回収してゆく。
【0067】
次に、マルチ仕様の玉ねぎ収獲機の構成を図1〜図8に基づいて説明する。このマルチ仕様の基本的な構成は、上記した露地仕様と同様であり、露地仕様のものと同一の部品および機能部位には同一の符号を付して、重複した説明を省略し、構造が相違している部位について以下に説明する。
【0068】
〔葉茎引上げ装置10(マルチ仕様)〕
【0069】
このマルチ仕様においては、右側の玉ねぎ条の右外側に2本の葉茎引上げ装置10が並列配備され、全体として4本の葉茎引上げ装置10が使用されている。図8の伝動系統図に示すように、横向き伝動軸28によって左側2本の葉茎引上げ装置10(1) ,10(2) が駆動されるとともに、右側2本の葉茎引上げ装置10(3) ,10(4) は、補助チェーン伝動装置29を介して後端駆動位置を順次ずらして駆動されている。そして、右側の玉ねぎ条の直右側に位置する葉茎引上げ装置葉茎引上げ装置10(3) は、左側2本の葉茎引上げ装置10(1) ,10(2) よりも後傾斜され、ケース前端が左側2本の葉茎引上げ装置10(1) ,10(2) のケース前端よりも前方下方に突出されている。また、最右側の葉茎引上げ装置10(4) は、その内側の葉茎引上げ装置10(3) よりも更に大きく後傾斜され、そのケース前端が内側の葉茎引上げ装置10(3) のケース前端よりも更に前方下方に突出されている。なお、各葉茎引上げ装置10の係止爪23は、弾性変形が容易な軟質の樹脂で成形されたものに構成されている。
【0070】
〔葉切り装置17(マルチ仕様専用)〕
【0071】
マルチ仕様においては、挟持引上げ搬送装置12の始端部の下方に、挟持引上げ搬送装置12によって挟持搬送され始めた玉ねぎWの葉茎Wbを切断する葉切り装置60が配備されている。この葉切り装置60は、位置揃え装置14を構成する左右の案内ベルト47を巻回した前部プーリ39からチェーン61を介して取出した動力で左右の円盤状の回転刃62を駆動するよう構成されている。また、各回転刃62の下には、ゴム製の厚肉円盤状の回転体63がそれぞれ連結され、各回転刃62と一体に回転駆動されるようになっており、葉茎Wbを左右から挟持して後方へ搬送するとともに、玉ねぎ本体Waが引き上げられて回転刃62に接触するのを回転体63で受け止め阻止することで、玉ねぎ本体Waが傷つくことが回避されるようになっている。
【0072】
また、回転体63の外周面には掻込み突起64が突設されており、葉切り装置16に導入されかかる玉ねぎWの葉茎Wbを左右から掻き込んで回転体63で挟持搬送するようになっている。ここで、回転刃62は、チェーン61による伝動において増速されて駆動されており、これに伴って回転体63も高速で回転駆動される。この場合、回転体63の周速度、つまり、回転体63による後方への挟持搬送速度は、挟持引上げ搬送装置12および位置揃え装置14による後方への搬送速度よりも速くなるように設定されている。
【0073】
〔土崩し装置13〕
【0074】
図5および図7に示すように、マルチ仕様における土崩し装置13は、葉切りされて畝に残された玉ねぎ本体Waの周辺の土を切り崩して、後の引上げ回収を容易に行えるようにするものであり、畝肩の裾近くから右2条の玉ねぎWの下方にまで入り込むよう正面視L字状に屈折されたの土切り崩し体41と、この土切り崩し体41の直前方位置の若干外側において畝肩の裾近くに突入するシートめくり上げ用補助具42とからなり、土切り崩し体41は機体フレーム9の前部に支点a周りに前後揺動可能に枢支されるとともに、その上方延出端と前記PTO軸26の右端に備えた偏心クランク部43とがロッド44で連動連結され、偏心クランク部43を介してロッド44が押し引き駆動されることで、土切り崩し体41が支点a周りに一定の小ストロークで前後に揺動駆動され、玉ねぎWの下方の土を崩して膨軟化することで、玉ねぎWが無理なく抜き上げられるようになっている。
【0075】
また、シートめくり上げ用補助具42も支点b周りに前後揺動可能に枢支されるとともに、連係ロッド45を介して土切り崩し体41に連動連結され、土切り崩し体41の前後揺動に同期して前後に揺動駆動されるようになっており、畝肩の裾部を切り崩しながら前進移動することで、後続の土切り崩し体41の土中への突入抵抗を軽減するとともに、畝に掛けられたマルチシートFの右側の裾を少し押し上げてめくり上げながら前進する。このように、シートめくり上げ用補助具42によってマルチシートFの右側の裾を自由にしてめくり上げが容易な状態にしておくことで、後続する土切り崩し体41によるマルチシートFのめくり上げが無理なく円滑に行われる。また、このシートめくり上げ用補助具42からは、このシートめくり上げ用補助具42ですくい上げたマルチシートFの裾を土切り崩し体41にまで案内して、マルチシートFが土切り崩し体41に引っ掛けられるのを回避するためのシート案内部46が延出されている。
【0076】
このように葉切りを行いながら機体が通過した後は、切り残された短い葉茎がマルチシートFの栽培孔から突出している状態となり、マルチシートFは葉茎Wbに邪魔されることなく簡単にめくり上げることができる。そして、マルチシートFをめくり取ると、畝上には短く葉切りされた根菜本体Waが浮き上がった状態で並んでおり、これを回収すればよい。
【0077】
マルチ仕様の玉ねぎ収穫機は以上のように構成されており、マルチ掛けされた平畝に栽培されている4条の玉ねぎWに対して、一行程の前進で進行方向右側の2条の玉ねぎWの葉茎Wbを葉切り装置16によって切断し、一往復移動することで一畝4条の葉切りを行い、次に、マルチシートFを巻取り除去、あるいは、めくり上げ除去して畝面を露出させ、葉切りされて畝上に残し置かれた玉ねぎWを機械式あるいは人手によって回収してゆく。
【0078】
なお、上記実施形態では、露地仕様の構成において、葉茎引上げ装置10、土崩し装置13の仕様を上記のように変更するとともに、葉切り装置17を付設することでマルチ仕様に変更することができるのであるが、葉切り装置17を常備したままで、作用位置と非作用位置とに位置変更するように構成して、露地仕様とマルチ仕様の変更を行うように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体側面図
【図2】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体平面図
【図3】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体正面図
【図4】マルチ仕様の収穫部の側面図
【図5】マルチ仕様の収穫部の前部を示す平面図
【図6】マルチ仕様の収穫部の一部を示す正面図
【図7】マルチ仕様の土崩し装置の側面図
【図8】マルチ仕様の伝動系統図
【図9】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体側面図
【図10】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体平面図
【図11】マルチ仕様の根菜類収穫機の全体正面図
【図12】マルチ仕様の収穫部の側面図
【図13】マルチ仕様の収穫部の前部を示す平面図
【図14】マルチ仕様の収穫部の一部を示す正面図
【図15】マルチ仕様の土崩し装置の側面図
【図16】マルチ仕様の伝動系統図
【符号の説明】
12 挟持引上げ搬送装置
14 位置揃え装置
15 葉切りカッター
41 土切り崩し体
42 シートめくり上げ用補助具
60 葉切り装置
62 回転刃
63 回転体(上昇規制部)
64 突起
F マルチシート
W 根菜
Wa 根菜本体
Wb 葉茎
Claims (9)
- 畝に作付けられた根菜を収穫する根菜類収穫機であって、
畝に掛けられたマルチシートの植付け孔から突出した葉茎を挟持して後方斜め上方に向けて搬送する挟持引上げ搬送装置を、地面近くから後方上方に向けて傾斜配備し、この挟持引上げ搬送装置における始端部の下方近傍にマルチ用葉切り装置を配備するとともに、その葉切り箇所で根菜本体が引上げ移動されるのを受け止め規制する上昇規制部を配備し、この上昇規制部材を前記マルチ用葉切り装置の下側において互いに掻込み方向に回転駆動して茎葉を後方に強制搬送する左右一対の回転体で構成してあることを特徴とする根菜類収穫機。 - 前記回転体による後方搬送速度を、前記挟持引上げ搬送装置による後方搬送速度より速く設定してある請求項1記載の根菜類収穫機。
- 前記マルチ用葉切り装置を、互いに掻込み方向に回転駆動される左右一対の円盤状の回転刃で構成してある請求項1または2に記載の根菜類収穫機。
- 前記マルチ用葉切り装置を、前記各回転体と一体に回転する回転刃で構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の根菜類収穫機。
- 前記回転体の外周に掻込み突起を備えてある請求項4記載の根菜類収穫機。
- 前記回転体の掻込み突起を、前記回転刃の外周より外方に突出させてある請求項5記載の根菜類収穫機。
- マルチシートが掛けられた畝における畝肩の裾近くから畝に植付けられた根菜の下方に入り込んで前後に往復駆動される土切り崩し体を、前記葉切り装置の切断箇所より後方箇所に配備してある請求項1〜6のいずれか一項に記載の根菜類収穫機。
- 前記土切り崩し体の直前方位置における畝肩の裾近くに、畝に掛けられたマルチシートの裾を自由にしてめくり上げ容易な状態にするシートめくり上げ用補助具を配備してある請求項7記載の根菜類収穫機。
- 前記挟持引上げ搬送装置の下方に、葉茎を挟持されて後方に吊り下げ搬送される根菜の葉茎を左右の上昇位置規制ガイド部の間に導入して根菜が後方に移動する間に根菜本体の上昇を規制してその高さを揃える位置揃え装置と、高さの揃えられた根菜の葉茎を切断する葉切りカッターを配備するとともに、前記挟持引上げ搬送装置の始端部下方に配備された前記マルチ用葉切り装置を作用解除可能に構成してある請求項1〜8のいずれか一項に記載の根菜類収穫機。
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