JP3628169B2 - ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、たとえば型内発泡成形品の原料として好適に使用しうるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造するばあい、樹脂粒子を密閉容器内で分散剤とともに水系分散媒に分散させ、さらに揮発性発泡剤を導入し、ついで前記樹脂粒子をポリオレフィン系樹脂の軟化点温度以上の温度に加熱し、前記密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造する方法がよく知られている。
【0003】
また、たとえば前記方法を用い、示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法(たとえば特開昭59−176336号公報、特開昭63−183832号公報など)や、さらには該特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に発泡能を付与したのち加熱することにより、独立気泡構造を保持したまま、発泡倍率を向上させる方法がすでに公知である(特開昭60−23428号公報、特開昭60−90228号公報)。
【0004】
前記特開昭60−23428号公報には、特定の発泡倍率および気泡数の範囲を有し、DSC曲線に基材樹脂固有の固有ピークよりも高温側に高温ピークが現れる結晶構造を有する無架橋プロピレン系ランダム共重合体予備発泡粒子に、発泡能を付与したのち、加熱発泡により元の発泡倍率よりも高い発泡倍率を有する予備発泡粒子をうる方法が開示されている。
【0005】
また、前記特開昭60−90228号公報には、たとえば前記特開昭59−176336号公報、特開昭63−183832号公報などに記載のものと同様の特殊な結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であり、内圧減少速度係数kがk≦0.30である予備発泡粒子に発泡能を付与する工程と、密閉容器内で該予備発泡粒子を、式:Tm−65<T<Tm−30(式中、Tmは基材樹脂の融解終了温度を示す)で表わされる温度T(℃)に加熱保持して容器の一端を解放し、予備発泡粒子を容器内よりも低圧の雰囲気下に放出する工程とからなる方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法における技術は、いずれもポリプロピレン系樹脂、とくにエチレン−プロプレンランダム共重合体に関するものであり、他のポリオレフィン系樹脂を用いたばあいの技術に関する開示がない。
【0007】
また、加熱温度に関しても、通常、好ましくは0.8〜1.5kg/cm2(G)の水蒸気(116〜127℃)または100℃以上の熱風を用いる旨の記載(特開昭60−23428号公報)、あるいは式:Tm−65<T<Tm−30(式中、Tmは基材樹脂の融解終了温度を示す)で表わされる温度T(℃)で加熱する旨の記載(特開昭60−90228号公報)はあるものの、特殊な結晶構造を有する予備発泡粒子を用いながら、その予備発泡粒子の結晶特性と加熱温度とを関連付けて目的を達成させる技術は開示されていない。
【0008】
さらに、こうしたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の加熱発泡を行なうばあいには、加熱温度が高すぎると、えられる予備発泡粒子の連泡率が増大し、こうした予備発泡粒子を用いて型内成形を行なったばあい、えられる成形体の機械的強度がいちじるしく低下したり、あるいは発泡粒子の相互融着が発生し、発泡粒子を成形機に供給する際、充填不良の原因となったりすることが想定され、これらの現象については、前記公報においても言及されている。
【0009】
そこで、本発明者らが、前記Tm=157℃のエチレン−プロピレンランダム共重合体を基材樹脂とし、製造後水および酸性水溶液などを用いて充分に洗浄を行なった、前記特殊な結晶構造を有する発泡粒子(発泡倍率11.3倍、平均セル径300μm、内圧減少速度係数k=0.15)を用い、水蒸気圧1.5kg/cm2(G)(約126℃)の水蒸気での加熱発泡(発泡時間30秒)を行なったところ、確かに、高発泡倍率でかつ独立気泡構造を有する予備発泡粒子をうることができたものの、発泡粒子の相互融着が生じ、成形時に、発泡粒子の充填不良が生じてしまった。
【0010】
加熱発泡法を利用して予備発泡粒子を製造するばあい、えられる予備発泡粒子の発泡倍率を大きくするための有力な手段の1つとして、加熱温度を上げ、発泡粒子内圧を高めるとともに、発泡粒子表面の樹脂層を軟化させることが考えられるが、前記のごとき発泡粒子の相互融着が発生してしまうと、実質上、これ以上加熱温度を上げることができず、えられる予備発泡粒子の発泡倍率を高めることができない。
【0011】
一方、前記特殊な結晶構造を有する予備発泡粒子を成形機に充填し、水蒸気にて加熱融着せしめ、所望の形状を有する発泡成形体をうるポリオレフィン系樹脂発泡成形体の製造方法において、成形融着性を支配する因子の1つとして、予備発泡粒子の表面の付着物量があることが知られている(たとえば特開平4−57838号公報)。
【0012】
すなわち、ポリオレフィン系樹脂粒子を密閉容器内で水系分散媒に分散させ、さらに揮発性発泡剤を導入し、ついで前記樹脂粒子をポリオレフィン系樹脂の軟化点温度以上の温度に加熱し、前記密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、ポリオレフィン系樹脂粒子とともに、分散剤あるいは融着防止剤などと呼ばれる無機粉末などを添加し、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面に付着させ、水系分散媒中では樹脂粒子の相互融着を防止し、予備発泡粒子の製造中あるいは製造後にこの表面付着物を洗浄、除去することにより、成形融着性を向上させる方法である。
【0013】
たとえば、特開平4−57838号公報に記載の方法においては、エチレン−プロピレンランダム共重合体ペレット100部(重量部、以下同様)に対し、分散剤としてパウダー状第三リン酸カルシウム3部およびn−パラフィンスルホン酸ナトリウム0.12部を添加し、予備発泡粒子の生成直後の洗浄方法を変更することにより、予備発泡粒子表面の付着物(主として第三リン酸カルシウム)量を変化させている。しかしながら、かかる付着物の量が3300ppm以上のばあい、成形融着性がいちじるしく低下し、成形体の融着率が0%となるといった問題が、かかる公報でも指摘されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、まず、前記予備発泡粒子表面の付着物の量によっては、加熱発泡中の発泡粒子の相互融着を防止または抑制することができるのではないかと考え、前記加熱発泡時の水蒸気圧1.5kg/cm2(G)で発泡粒子の相互融着が生じたばあいとまったく同じ条件で、原料発泡粒子表面の付着物の量を多くした際の加熱発泡実験を行ない、その結果、水蒸気圧を3kg/cm2(G)(=143℃)としても、発泡粒子の相互融着が生じないことを見出した。
【0015】
また、融解終了温度の異なるエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体にエチレン系アイオノマーを添加した樹脂組成物などのその他のポリオレフィン系樹脂またはその組成物についても前記と同様の実験を実施した。その結果、原料とする予備発泡粒子が有する2つの融点のうちの低温側の融点TLに対してTL−30(℃)未満の温度では、加熱発泡による発泡倍率の向上がいちじるしく小さく、2つの融点を示すピーク間の鞍部温度TV(℃)をこえる温度では、基材樹脂(組成物)の融解終了温度または原料発泡粒子表面の付着物の量に関係なく、発泡粒子の相互融着が発生するか、あるいは加熱発泡の結果、えられる予備発泡粒子の連泡率が20%以上となり、これらの理由により、良好な成形性を維持することが困難であることを見出した。
【0016】
さらに、前記TL−30(℃)以上の温度かつTV(℃)以下の温度領域において、前記発泡粒子表面の付着物の量と発泡粒子の相互融着を生じる加熱発泡温度t(℃)との関係について検討を行なった結果、驚くべきことに、いずれのポリオレフィン系樹脂の発泡粒子のばあいにおいても、式:t−Tvで表わされる温度の上限値(かかる温度以上では発泡粒子の相互融着が生じてしまう)と発泡粒子表面に付着した融着防止剤の量とのあいだに直線関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用い、加熱発泡法により、発泡粒子の相互融着が生じず、気泡の独立性を維持したままで、高発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をうることができる方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
▲1▼示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与したのち、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、前記加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係が式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされ、かつ加熱発泡させる温度が式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、tは加熱発泡させる温度、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法、
▲2▼前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が0.001〜0.3phrである前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法、および
▲3▼前記融着防止剤が第三リン酸カルシウムを主成分としたものである前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法
に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、前記したように、示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与したのち、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる方法において、前記加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係が式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされ、かつ加熱発泡させる温度が式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、tは加熱発泡させる温度、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲であることを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記示差走査熱量測定とは、たとえば特開昭60−23428号公報、特開昭60−90228号公報などに開示された方法と同様にして行ない、発泡粒子の結晶化特性を、示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温することにより測定する。
【0021】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡粒子では、前記示差走査熱量測定によるDSC曲線において、たとえば図2のグラフに示されるように、結晶化に伴う吸熱ピーク(融点)が2つ現れる。これらの2つのピークのうち、低温側のピーク(融点)をTL(℃)(図2中の符号α)、高温側のピーク(融点)をTH(℃)(図2中の符号β)とすると、通常、この2つの融点の温度差TH−TLは5〜20℃程度であり、図2に示されるように、これら2つのピークが全体として馬の鞍のような形を形成する。この鞍部において、DSC曲線が最も放熱側に寄った位置でもう1つの極値を有し、本発明においては、この温度を鞍部温度TV(℃)(図2中の符号γ)と定義する。
【0022】
前記のごとき特定の結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂の発泡用樹脂粒子を発泡剤にて発泡させることによって製造することができる。
【0023】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、たとえばポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−α−オレフィンターポリマーなどのプロピレン系樹脂;直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂などが用いられるが、予備発泡粒子を用いた成形体の機械的強度を保持するために、加熱発泡に供する発泡粒子の示差走査熱量測定において、2つの融点を含むピーク全体の吸熱量が30J/g以上、なかんづく50J/g以上となるような結晶性を示すものが好ましい。また、機械的強度以外の成形体の物性のバランスおよび成形時の融着性、適性範囲の広さなどを考慮したばあい、エチレン−プロピレンランダム共重合体および直鎖低密度ポリエチレンがとくに好適に使用される。
【0024】
また、前記ポリオレフィン系樹脂には、えられる発泡粒子、予備発泡粒子および成形体の物性をいちじるしく阻害しない範囲で、親水性の無機物および親水性の有機化合物を発泡造核剤として含有させることができる。
【0025】
後述するように、加熱発泡時に、水および/またはアルコールを発泡粒子に含有させ、これらを発泡助剤として利用することにより、加熱発泡効率がより改善されるが、ポリオレフィン系樹脂は疎水性の化合物であるので、これら親水性の物質を含有させることにより、発泡粒子中に発泡助剤である水および/またはアルコールを含有させやすくなる。
【0026】
前記親水性の無機物としては、たとえばタルク、シリカ、ホウ砂、リン酸ナトリウムなどがあげられる。また親水性の有機化合物としては、たとえば架橋ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性ポリマー、エチレン系アイオノマーなどがあげられる。これら親水性の物質の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100部に対して0.001〜20部程度であることが好ましい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂の発泡用樹脂粒子をうるには、たとえばポリオレフィン系樹脂に前記親水性の物質などを配合し、これを単軸あるいは2軸押出機などで溶融混練するなどすればよい。
【0028】
つぎに、前記発泡用樹脂粒子に発泡剤および融着防止剤を配合し、これを密閉容器内に供給して適切な条件にて発泡させることにより、前記のごとき特定の結晶構造を有し、その表面に融着防止剤が付着したポリオレフィン系樹脂発泡粒子がえられる。
【0029】
前記発泡剤としては、たとえば、後述するようにしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与する際に用いられる発泡剤などを用いることができ、その添加量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が所望の発泡倍率を有するように適宜調整すればよいが、たとえば前記発泡用樹脂粒子100部に対して0.1〜30部程度であることが好ましい。
【0030】
前記融着防止剤としては、従来分散剤または融着防止剤として用いられている物質がいずれも適用可能であるが、たとえば微粒状酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、ベントナイトなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、第三リン酸カルシウムが融着防止効果が高くとくに好ましい。かかる融着防止剤の添加量は、融着防止剤のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面への付着量が後述する範囲となるように調整すればよい。
【0031】
また、前記発泡用樹脂粒子には、たとえばn−パラフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの分散助剤を適宜配合してもよい。
【0032】
かくしてえられるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量は、前記加熱発泡に適した温度領域における発泡粒子の相互融着防止効果を充分に発現させるためには、0.001phr以上、好ましくは0.005phr以上であることが望ましく、また加熱発泡中の発泡粒子の相互融着はほぼ完全に防止することができるが、えられた予備発泡粒子を成形に供するばあいの融着性がいちじるしく低下するため、成形前に洗浄を行なわなければならなくなるおそれをなくすためには、0.3phr以下、好ましくは0.15phr以下、さらに好ましくは0.13phr以下であることが望ましい。
【0033】
また、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、そのDSC曲線において、通常、TLが90〜160℃程度、THが110〜180℃程度、TVが95〜175℃程度のものであり、また発泡倍率が2〜30倍程度、平均セル径が10〜500μm程度であることが好ましい。
【0034】
つぎに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与する。
【0035】
発泡能を付与する方法にはとくに限定がなく、たとえば従来より公知の方法によって行なわれる。たとえば、加熱発泡に供しようとするポリオレフィン系樹脂発泡粒子に、沸点が加熱発泡温度未満であり、かつポリオレフィン系樹脂を溶解させない発泡剤を、その量を適宜調整して含有させることによって行なわれる。このような発泡剤には種々のものがあるが、たとえば空気、チッ素ガス、炭酸ガスなどの無機ガスが、汎用性があり、燃焼性および毒性がなく、しかも加熱発泡時に気体であって、発泡粒子の内圧を高く保持しやすいという点からとくに好ましい。また、従来ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造に広範に用いられてきた、たとえばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどの低級脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類なども利用することが可能である。これらのなかで、ハロゲン化炭化水素類では、とくにオゾン層破壊の問題などを考慮して、分子中に塩素を含有しない、いわゆる第3世代フロンが好ましい。かかる発泡剤の量にはとくに限定がないが、通常加熱発泡時の発泡粒子内圧が0.1〜30kg/cm2(G)程度となるように調整することが好ましい。
【0036】
さらに、本発明においては、水および/またはアルコールが、加熱発泡中の蒸気圧こそ低いものの、発泡助剤として利用すると発泡効率がさらに上昇するという点から好適に用いられる。
【0037】
つぎに、前記のごとく発泡能が付与された発泡粒子を加熱させてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する。
【0038】
前記加熱発泡させる方法としては、たとえば熱風または蒸気を用いる方法などを採用することができるが、たとえば特開昭59−133233号公報に開示されるように、蒸気を用いた方法が発泡粒子に対する熱量の供給が早く、生産性が向上するという点からとくに好ましい。また、蒸気を用いるばあいには、加熱時間は、通常1分間程度であれば充分である。
【0039】
本発明の製造方法においては、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係、および前記加熱発泡させる温度と、TV、TLとの関係に大きな特徴がある。
【0040】
発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度と、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係は、前記したように、式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされるものであり、このとき前記tは、式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、TVは前記と同じ、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲である。
【0041】
前記加熱発泡させる温度tは、TL−30(℃)以上、好ましくはTL−25(℃)以上であり、かつTV(℃)以下、好ましくはTV−2(℃)以下である。
【0042】
前記tが前記下限値未満の温度であるばあいには、加熱温度が低すぎるため、発泡粒子をなす樹脂層が硬く、発泡効率εが低くなり、加熱発泡前後の発泡倍率の比が小さくなるので、好ましくない。
【0043】
ここで、発泡効率εは、以下の式(III):
【0044】
【数1】
【0045】
(式中、K0は加熱発泡前の発泡粒子の発泡倍率、Kは加熱発泡後の予備発泡粒子の発泡倍率、P0は加熱発泡直前の室温(23℃)における発泡粒子内圧[atm(abs)]、Tは加熱発泡温度(t+273.2(℃))、TrはPO測定時の室温(=23℃)を示す)で与えられる。
【0046】
すなわち、加熱発泡前後の発泡倍率が変化しないばあい(KO=K)、ε=0であり、また付与された発泡粒子内圧の温度換算値が加熱発泡により大気圧となるまでの体積膨張分が、加熱発泡前後の発泡粒子の体積膨張と等しくなるばあい、ε=1である。したがって、水あるいは水蒸気、アルコールなどの発泡助剤の作用が付加されたばあいには、ε>1となることがありうる。
【0047】
加熱発泡温度が低く、t<(TL−30)であるばあい、発泡効率が低く、ε<0.1となった。したがって、前記式(III)より、Kを大きくしたいばあいには、P0を大きくしなければならず、このためには、発泡能を付与するときの圧力を上げるか、あるいは発泡能を付与する時間を長くしなければならず、好ましくない。
【0048】
また、tが上限値をこえるばあいには、発泡粒子の相互融着および/または連泡化が生じるため、好ましくない。
【0049】
このように、加熱発泡させる温度tが式(II)で表わされる温度範囲であるばあいには、t−TVの上限温度(℃)とポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量C(phr)とのあいだに直線関係、すなわち前記式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
で表わされる関係が成立する。
【0050】
ある特定の発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量Cが決定されると、決定されたCおよびTVに基づき、発泡粒子の相互融着を生じずに、良好な加熱発泡を可能とする温度tの上限が一義的に定められる。この温度tの上限は、たとえばTVおよびCの異なる数種の発泡粒子を準備し、それぞれの発泡粒子について、数水準の加熱温度での加熱発泡評価実験を実施することにより求められる。
【0051】
図1に、前記上限温度t−TV(℃)と、融着防止剤の量C(phr)との関係を示す。図1から明らかなように、t−TVはCと直線関係にあり、図1中の連泡臨界線Aおよび融着臨界線Bで囲まれた右下の領域では相互融着が発生せず、ここが好ましい領域であり、逆に左上の領域では相互融着が発生した。また、このばあい、t−TV>0かつt−TV<49.1C−27.0の領域(連泡臨界線Aよりも上の領域)では、発泡粒子の相互融着は生じなかったが、えられた予備発泡粒子の連泡率が20%をこえてしまった。
【0052】
前記したように、式(I)および式(II)で表わされる条件となるようにポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着させる融着防止剤の量および発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度を調整することにより、発泡粒子の相互融着が生じず、気泡の独立性を維持したままで、高発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子がえられる。
【0053】
【実施例】
つぎに、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
なお、以下の実施例および比較例で用いたポリオレフィン系樹脂(基材樹脂)の融点および融解終了温度について、基材樹脂粒子約1〜10mgを精秤し、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)にて10℃/minの昇温速度で室温から220℃まで昇温してえられた吸熱ピークを融点とした。また、融解終了温度は、特開平60−23428号公報に記載の方法に準拠して測定した。
【0055】
実施例1および比較例1〜4
ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点:137℃、融解終了温度:157℃)を用い、単軸押出機(50mmφ、L/D=3)にて粒重量約1.8mgの発泡用樹脂粒子を作製した。この際、発泡造核剤としてタルク0.005phrを混合した。
【0056】
えられた発泡用樹脂粒子100部を、第1の密閉容器内に、水300部、融着防止剤として第三リン酸カルシウム1.4部および分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.03部とともに供給し、発泡温度138℃、発泡圧力17kg/cm2(G)の条件にて、直径4mmの円形オリフィスを通じて発泡させ、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。この際、発泡剤としてイソブタン13部を用いた。
【0057】
えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性として発泡倍率および平均セル径を以下に示す方法にしたがって調べた。その結果、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率が11.3倍、平均セル径が300μmの独立気泡構造を有する発泡粒子であった。
【0058】
また、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)を用いた示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す特殊な結晶構造を有し、TLが136.8℃、TVが149.4℃、THが156.7℃であった。
【0059】
つぎに、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子をpH3の塩酸水溶液で充分に洗浄、水洗したのち乾燥した。この乾燥したポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量を以下に示す方法にしたがって測定した。その結果、かかる融着防止剤の量は0.05phrであった。ついで、この発泡粒子を第2の密閉容器内に供給して空気により5kg/cm2(G)とし、室温にて約24時間放置して発泡能を付与した。第2の密閉容器から取り出したのち、内圧減少速度係数を求めると0.15であり、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は3.9atm(abs)であった。
【0060】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器内に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0061】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性として発泡倍率、発泡効率、連泡率および相互融着を以下に示す方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子]
(発泡倍率(K0))
発泡粒子約2gを精秤し、水没法により体積を測定し、発泡粒子の真比重を求めたのち、樹脂(組成物)の真比重を発泡粒子の真比重で除することにより求めた。
【0063】
(平均セル径)
発泡粒子断面を顕微鏡観察することにより求めた。
【0064】
(発泡粒子表面に付着した融着防止剤(第三リン酸カルシウム)の量(C))
メタバナジン酸アンモニウム0.022重量%、モリブデン酸アンモニウム0.54重量%および硝酸3重量%を含む水溶液(比色液)50.0mlとW(g)の発泡粒子とをコニカルビーカーにとり、1分間撹拌したのち、10分間放置した。えられた液相を光路長1.0cmの石英セルにとり、分光光度計により410nmでの吸光度Aを測定した。
【0065】
同一の比色液についてあらかじめ測定しておいた第三リン酸カルシウムの410nmでの吸光度係数μ(g/L・cm)を用い、以下の式に基づいて融着防止剤の量C(phr)を求めた。
【0066】
【数2】
【0067】
[ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子]
(発泡倍率(K))
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の発泡倍率(K0)と同様にして求めた。
【0068】
(発泡効率(ε))
式(III):
【0069】
【数3】
【0070】
(式中、K0、K、P0、TおよびTrは前記と同じ)に基づいて求めた。
【0071】
(連泡率)
空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1000型)を用い、えられた予備発泡粒子の独立気泡体積を求め、これを別途水没法により求めた見かけの体積で除してえられた独立気泡率(%)を、100から引くことにより求めた。
【0072】
(相互融着)
えられた予備発泡粒子を目視にて観察し、相互融着の有無を調べた。
【0073】
実施例2
融着防止剤の添加量を2.5部とし、第1の密閉容器から放出直後に充分に水洗を行ない、塩酸水溶液による洗浄を行なわなかったほかは、比較例3と同様にしてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0074】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0075】
実施例3〜5および比較例5
ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点:145℃、融解終了温度:161℃)を用い、タルクの添加量を0.01phrとし、塩酸水溶液による洗浄を行なわなかったほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。ただし、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は4.3atm(abs)であった。
【0076】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0077】
実施例6および比較例6〜7
ポリオレフィン系樹脂として、実施例3〜5および比較例5で用いられたエチレン−プロピレンランダム共重合体98重量%と、エチレン系アイオノマーとして、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン#1707」2重量%とからなる樹脂混合物100部に、タルク1部を添加したものを用い、実施例1で用いたものと同じ単軸押出機にて発泡用樹脂粒子をえた。えられた発泡用樹脂粒子の融点は147℃、融解終了温度は159℃であった。
【0078】
つぎに、第1の密閉容器からポリオレフィン系樹脂発泡粒子をうる際、水を発泡剤として使用し、発泡温度155℃、発泡圧力30kg/cm2(G)(チッ素ガス加圧)としたほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率が9.8倍、平均セル径が150μmであり、DSC曲線におけるTLが143.5℃、TVが155.6℃であった。
【0079】
つぎに、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子をpH1の塩酸水溶液で充分に洗浄したのち、第2の密閉容器内に入れ、チッ素ガスにて第2の密閉容器の内圧を8kg/cm2(G)とし、80℃の水槽中で3時間放置して発泡能を付与した。発泡能が付与された発泡粒子の内圧減少速度係数は1.7、加熱発泡直前の23℃での内圧は5.0atm(abs)であった。
【0080】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器内に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0081】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0082】
実施例7〜8および比較例8
ポリオレフィン系樹脂として、直鎖低密度ポリエチレン(融点:120℃、融解終了温度:132℃)を用い、タルクの添加量を0.01phrとしたほかは、実施例1と同様にして発泡用樹脂粒子をえた。
【0083】
つぎに、第1の密閉容器での発泡には水を発泡剤として使用し、発泡温度125℃、発泡圧力35kg/cm2(G)(空気加圧)で、融着防止剤である第三リン酸カルシウムの添加量を4.0部としたほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。
【0084】
また、第2の密閉容器での発泡能の付与は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の洗浄を行なわず、空気加圧により第2の密閉容器の内圧を8kg/cm2(G)とし、室温にて18時間放置することにより行なった。その結果、内圧減少速度係数は0.15、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は5.0atm(abs)であった。
【0085】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0086】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0087】
なお、これら実施例7〜8および比較例8で用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によるDSC曲線を図2に示す。
【0088】
実施例9〜11および比較例9〜10
ポリオレフィン系樹脂として、実施例7〜8および比較例8で用いられた直鎖低密度ポリエチレン95重量%と、エチレン系アイオノマーとして、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン#1856」5重量%とからなる樹脂混合物100部に、タルク0.1部を添加したものを用い、実施例1で用いたものと同じ単軸押出機にて発泡用樹脂粒子をえた。
【0089】
つぎに、前記発泡用樹脂粒子を用い、実施例7〜8および比較例8と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を作製したところ、発泡倍率が3.1倍、平均セル径が160μm、TLが108.6℃、TVが118.7℃の独立気泡構造を有するものであった。
【0090】
さらに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に、実施例7〜8および比較例8と同様にして発泡能を付与し、表1に示す条件で加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0091】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0092】
なお、表1中には、各ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のTLおよびTVならびにt−TLおよびt−TVもあわせて示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示された結果から、以下のことがわかる。
【0095】
(イ)実施例1と比較例1〜4とを比較して、実施例1のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例1〜3のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められ、また比較例4のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足しないばあいには、相互融着が認められるうえ、連泡率もきわめて高くなる。
【0096】
なお、発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が、このように0.05phrと少ないばあいには、比較的低い加熱温度で発泡粒子の相互融着が発生し、加熱発泡させる温度を高くすることができないことがわかる。
【0097】
(ロ)実施例2と比較例3とを比較して、実施例2のように、Cを0.49phrと多くし、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するようにしたばあいには、発泡倍率および発泡効率が高く、連泡率が低いうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられる。
【0098】
(ハ)実施例3〜5と比較例5とを比較して、実施例3〜5のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例5のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められる。
【0099】
なお、発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が、このように0.28phrと多いばあいには、比較的高い発泡温度に至るまで発泡粒子の相互融着が生じず、発泡効率および発泡倍率を高めることができることがわかる。
【0100】
(ニ)実施例6と比較例6〜7とを比較して、実施例6のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例6のように、t、TV、TLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、発泡効率がいちじるしく低くなり、また比較例7のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められる。
【0101】
なお、加熱発泡においては、融着防止剤の量を少なくしすぎると、発泡粒子の相互融着が生じやすいため、適性加熱温度条件幅が狭くなることがわかる。
【0102】
(ホ)実施例7〜8と比較例8とを比較して、実施例7〜8のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例8のように、加熱温度が高すぎ、t、TV、TLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、連泡率が41.7%といちじるしく高くなり、独立気泡構造を有する発泡粒子とはいえないものとなってしまう。
【0103】
なお、実施例7〜8および比較例8のように、融着防止剤の量が0.765phrと多いと、型内成形時の成形融着性が低下するため、型内成形前に、酸性水溶液で充分に洗浄し、型内成形時の融着防止剤の量が0.3phr以下となるようにした。
【0104】
(ヘ)実施例9〜11と比較例9〜10とを比較して、実施例9〜11のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例9〜10のように、加熱温度が高すぎ、t、TVおよびTLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、連泡率が20%をこえていちじるしく高くなり、独立気泡構造を有する発泡粒子とはいえないものである。
【0105】
なお、実施例9〜11のように、融着防止剤の量が0.771phrと多いと、各水準において発泡粒子の相互融着が生じず、発泡効率を約0.4〜0.8とし、予備発泡粒子の発泡倍率を調整することができることがわかる。
【0106】
また、実施例9〜11および比較例9〜10のように、融着防止剤の量が0.771phrと多いと、型内成形時の成形融着性が低下するため、型内成形前に、酸性水溶液で充分に洗浄し、型内成形時の融着防止剤の量が0.3phr以下となるようにした。
【0107】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、加熱発泡中の発泡粒子の相互融着およびセル膜の破断による予備発泡粒子の連泡率の上昇を同時に防止しつつ、加熱発泡効率を高くし、発泡倍率が高いポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造することが可能となる。
【0108】
本発明の製造方法によってえられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、従来より公知の成形方法により、容易に成形が可能であり、緩衝材などの用途に好適に使用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(C)と、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる上限温度(t−TV)との関係を示す図面である。
【図2】実施例7〜8および比較例8で用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によるDSC曲線である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、たとえば型内発泡成形品の原料として好適に使用しうるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造するばあい、樹脂粒子を密閉容器内で分散剤とともに水系分散媒に分散させ、さらに揮発性発泡剤を導入し、ついで前記樹脂粒子をポリオレフィン系樹脂の軟化点温度以上の温度に加熱し、前記密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造する方法がよく知られている。
【0003】
また、たとえば前記方法を用い、示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法(たとえば特開昭59−176336号公報、特開昭63−183832号公報など)や、さらには該特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に発泡能を付与したのち加熱することにより、独立気泡構造を保持したまま、発泡倍率を向上させる方法がすでに公知である(特開昭60−23428号公報、特開昭60−90228号公報)。
【0004】
前記特開昭60−23428号公報には、特定の発泡倍率および気泡数の範囲を有し、DSC曲線に基材樹脂固有の固有ピークよりも高温側に高温ピークが現れる結晶構造を有する無架橋プロピレン系ランダム共重合体予備発泡粒子に、発泡能を付与したのち、加熱発泡により元の発泡倍率よりも高い発泡倍率を有する予備発泡粒子をうる方法が開示されている。
【0005】
また、前記特開昭60−90228号公報には、たとえば前記特開昭59−176336号公報、特開昭63−183832号公報などに記載のものと同様の特殊な結晶構造を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であり、内圧減少速度係数kがk≦0.30である予備発泡粒子に発泡能を付与する工程と、密閉容器内で該予備発泡粒子を、式:Tm−65<T<Tm−30(式中、Tmは基材樹脂の融解終了温度を示す)で表わされる温度T(℃)に加熱保持して容器の一端を解放し、予備発泡粒子を容器内よりも低圧の雰囲気下に放出する工程とからなる方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法における技術は、いずれもポリプロピレン系樹脂、とくにエチレン−プロプレンランダム共重合体に関するものであり、他のポリオレフィン系樹脂を用いたばあいの技術に関する開示がない。
【0007】
また、加熱温度に関しても、通常、好ましくは0.8〜1.5kg/cm2(G)の水蒸気(116〜127℃)または100℃以上の熱風を用いる旨の記載(特開昭60−23428号公報)、あるいは式:Tm−65<T<Tm−30(式中、Tmは基材樹脂の融解終了温度を示す)で表わされる温度T(℃)で加熱する旨の記載(特開昭60−90228号公報)はあるものの、特殊な結晶構造を有する予備発泡粒子を用いながら、その予備発泡粒子の結晶特性と加熱温度とを関連付けて目的を達成させる技術は開示されていない。
【0008】
さらに、こうしたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の加熱発泡を行なうばあいには、加熱温度が高すぎると、えられる予備発泡粒子の連泡率が増大し、こうした予備発泡粒子を用いて型内成形を行なったばあい、えられる成形体の機械的強度がいちじるしく低下したり、あるいは発泡粒子の相互融着が発生し、発泡粒子を成形機に供給する際、充填不良の原因となったりすることが想定され、これらの現象については、前記公報においても言及されている。
【0009】
そこで、本発明者らが、前記Tm=157℃のエチレン−プロピレンランダム共重合体を基材樹脂とし、製造後水および酸性水溶液などを用いて充分に洗浄を行なった、前記特殊な結晶構造を有する発泡粒子(発泡倍率11.3倍、平均セル径300μm、内圧減少速度係数k=0.15)を用い、水蒸気圧1.5kg/cm2(G)(約126℃)の水蒸気での加熱発泡(発泡時間30秒)を行なったところ、確かに、高発泡倍率でかつ独立気泡構造を有する予備発泡粒子をうることができたものの、発泡粒子の相互融着が生じ、成形時に、発泡粒子の充填不良が生じてしまった。
【0010】
加熱発泡法を利用して予備発泡粒子を製造するばあい、えられる予備発泡粒子の発泡倍率を大きくするための有力な手段の1つとして、加熱温度を上げ、発泡粒子内圧を高めるとともに、発泡粒子表面の樹脂層を軟化させることが考えられるが、前記のごとき発泡粒子の相互融着が発生してしまうと、実質上、これ以上加熱温度を上げることができず、えられる予備発泡粒子の発泡倍率を高めることができない。
【0011】
一方、前記特殊な結晶構造を有する予備発泡粒子を成形機に充填し、水蒸気にて加熱融着せしめ、所望の形状を有する発泡成形体をうるポリオレフィン系樹脂発泡成形体の製造方法において、成形融着性を支配する因子の1つとして、予備発泡粒子の表面の付着物量があることが知られている(たとえば特開平4−57838号公報)。
【0012】
すなわち、ポリオレフィン系樹脂粒子を密閉容器内で水系分散媒に分散させ、さらに揮発性発泡剤を導入し、ついで前記樹脂粒子をポリオレフィン系樹脂の軟化点温度以上の温度に加熱し、前記密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、ポリオレフィン系樹脂粒子とともに、分散剤あるいは融着防止剤などと呼ばれる無機粉末などを添加し、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面に付着させ、水系分散媒中では樹脂粒子の相互融着を防止し、予備発泡粒子の製造中あるいは製造後にこの表面付着物を洗浄、除去することにより、成形融着性を向上させる方法である。
【0013】
たとえば、特開平4−57838号公報に記載の方法においては、エチレン−プロピレンランダム共重合体ペレット100部(重量部、以下同様)に対し、分散剤としてパウダー状第三リン酸カルシウム3部およびn−パラフィンスルホン酸ナトリウム0.12部を添加し、予備発泡粒子の生成直後の洗浄方法を変更することにより、予備発泡粒子表面の付着物(主として第三リン酸カルシウム)量を変化させている。しかしながら、かかる付着物の量が3300ppm以上のばあい、成形融着性がいちじるしく低下し、成形体の融着率が0%となるといった問題が、かかる公報でも指摘されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、まず、前記予備発泡粒子表面の付着物の量によっては、加熱発泡中の発泡粒子の相互融着を防止または抑制することができるのではないかと考え、前記加熱発泡時の水蒸気圧1.5kg/cm2(G)で発泡粒子の相互融着が生じたばあいとまったく同じ条件で、原料発泡粒子表面の付着物の量を多くした際の加熱発泡実験を行ない、その結果、水蒸気圧を3kg/cm2(G)(=143℃)としても、発泡粒子の相互融着が生じないことを見出した。
【0015】
また、融解終了温度の異なるエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体にエチレン系アイオノマーを添加した樹脂組成物などのその他のポリオレフィン系樹脂またはその組成物についても前記と同様の実験を実施した。その結果、原料とする予備発泡粒子が有する2つの融点のうちの低温側の融点TLに対してTL−30(℃)未満の温度では、加熱発泡による発泡倍率の向上がいちじるしく小さく、2つの融点を示すピーク間の鞍部温度TV(℃)をこえる温度では、基材樹脂(組成物)の融解終了温度または原料発泡粒子表面の付着物の量に関係なく、発泡粒子の相互融着が発生するか、あるいは加熱発泡の結果、えられる予備発泡粒子の連泡率が20%以上となり、これらの理由により、良好な成形性を維持することが困難であることを見出した。
【0016】
さらに、前記TL−30(℃)以上の温度かつTV(℃)以下の温度領域において、前記発泡粒子表面の付着物の量と発泡粒子の相互融着を生じる加熱発泡温度t(℃)との関係について検討を行なった結果、驚くべきことに、いずれのポリオレフィン系樹脂の発泡粒子のばあいにおいても、式:t−Tvで表わされる温度の上限値(かかる温度以上では発泡粒子の相互融着が生じてしまう)と発泡粒子表面に付着した融着防止剤の量とのあいだに直線関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記特殊な結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用い、加熱発泡法により、発泡粒子の相互融着が生じず、気泡の独立性を維持したままで、高発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をうることができる方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
▲1▼示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与したのち、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、前記加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係が式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされ、かつ加熱発泡させる温度が式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、tは加熱発泡させる温度、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法、
▲2▼前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が0.001〜0.3phrである前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法、および
▲3▼前記融着防止剤が第三リン酸カルシウムを主成分としたものである前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法
に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、前記したように、示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与したのち、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる方法において、前記加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係が式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされ、かつ加熱発泡させる温度が式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、tは加熱発泡させる温度、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲であることを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記示差走査熱量測定とは、たとえば特開昭60−23428号公報、特開昭60−90228号公報などに開示された方法と同様にして行ない、発泡粒子の結晶化特性を、示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温することにより測定する。
【0021】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡粒子では、前記示差走査熱量測定によるDSC曲線において、たとえば図2のグラフに示されるように、結晶化に伴う吸熱ピーク(融点)が2つ現れる。これらの2つのピークのうち、低温側のピーク(融点)をTL(℃)(図2中の符号α)、高温側のピーク(融点)をTH(℃)(図2中の符号β)とすると、通常、この2つの融点の温度差TH−TLは5〜20℃程度であり、図2に示されるように、これら2つのピークが全体として馬の鞍のような形を形成する。この鞍部において、DSC曲線が最も放熱側に寄った位置でもう1つの極値を有し、本発明においては、この温度を鞍部温度TV(℃)(図2中の符号γ)と定義する。
【0022】
前記のごとき特定の結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂の発泡用樹脂粒子を発泡剤にて発泡させることによって製造することができる。
【0023】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、たとえばポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−α−オレフィンターポリマーなどのプロピレン系樹脂;直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂などが用いられるが、予備発泡粒子を用いた成形体の機械的強度を保持するために、加熱発泡に供する発泡粒子の示差走査熱量測定において、2つの融点を含むピーク全体の吸熱量が30J/g以上、なかんづく50J/g以上となるような結晶性を示すものが好ましい。また、機械的強度以外の成形体の物性のバランスおよび成形時の融着性、適性範囲の広さなどを考慮したばあい、エチレン−プロピレンランダム共重合体および直鎖低密度ポリエチレンがとくに好適に使用される。
【0024】
また、前記ポリオレフィン系樹脂には、えられる発泡粒子、予備発泡粒子および成形体の物性をいちじるしく阻害しない範囲で、親水性の無機物および親水性の有機化合物を発泡造核剤として含有させることができる。
【0025】
後述するように、加熱発泡時に、水および/またはアルコールを発泡粒子に含有させ、これらを発泡助剤として利用することにより、加熱発泡効率がより改善されるが、ポリオレフィン系樹脂は疎水性の化合物であるので、これら親水性の物質を含有させることにより、発泡粒子中に発泡助剤である水および/またはアルコールを含有させやすくなる。
【0026】
前記親水性の無機物としては、たとえばタルク、シリカ、ホウ砂、リン酸ナトリウムなどがあげられる。また親水性の有機化合物としては、たとえば架橋ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性ポリマー、エチレン系アイオノマーなどがあげられる。これら親水性の物質の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100部に対して0.001〜20部程度であることが好ましい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂の発泡用樹脂粒子をうるには、たとえばポリオレフィン系樹脂に前記親水性の物質などを配合し、これを単軸あるいは2軸押出機などで溶融混練するなどすればよい。
【0028】
つぎに、前記発泡用樹脂粒子に発泡剤および融着防止剤を配合し、これを密閉容器内に供給して適切な条件にて発泡させることにより、前記のごとき特定の結晶構造を有し、その表面に融着防止剤が付着したポリオレフィン系樹脂発泡粒子がえられる。
【0029】
前記発泡剤としては、たとえば、後述するようにしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与する際に用いられる発泡剤などを用いることができ、その添加量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が所望の発泡倍率を有するように適宜調整すればよいが、たとえば前記発泡用樹脂粒子100部に対して0.1〜30部程度であることが好ましい。
【0030】
前記融着防止剤としては、従来分散剤または融着防止剤として用いられている物質がいずれも適用可能であるが、たとえば微粒状酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、ベントナイトなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、第三リン酸カルシウムが融着防止効果が高くとくに好ましい。かかる融着防止剤の添加量は、融着防止剤のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面への付着量が後述する範囲となるように調整すればよい。
【0031】
また、前記発泡用樹脂粒子には、たとえばn−パラフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの分散助剤を適宜配合してもよい。
【0032】
かくしてえられるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量は、前記加熱発泡に適した温度領域における発泡粒子の相互融着防止効果を充分に発現させるためには、0.001phr以上、好ましくは0.005phr以上であることが望ましく、また加熱発泡中の発泡粒子の相互融着はほぼ完全に防止することができるが、えられた予備発泡粒子を成形に供するばあいの融着性がいちじるしく低下するため、成形前に洗浄を行なわなければならなくなるおそれをなくすためには、0.3phr以下、好ましくは0.15phr以下、さらに好ましくは0.13phr以下であることが望ましい。
【0033】
また、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、そのDSC曲線において、通常、TLが90〜160℃程度、THが110〜180℃程度、TVが95〜175℃程度のものであり、また発泡倍率が2〜30倍程度、平均セル径が10〜500μm程度であることが好ましい。
【0034】
つぎに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与する。
【0035】
発泡能を付与する方法にはとくに限定がなく、たとえば従来より公知の方法によって行なわれる。たとえば、加熱発泡に供しようとするポリオレフィン系樹脂発泡粒子に、沸点が加熱発泡温度未満であり、かつポリオレフィン系樹脂を溶解させない発泡剤を、その量を適宜調整して含有させることによって行なわれる。このような発泡剤には種々のものがあるが、たとえば空気、チッ素ガス、炭酸ガスなどの無機ガスが、汎用性があり、燃焼性および毒性がなく、しかも加熱発泡時に気体であって、発泡粒子の内圧を高く保持しやすいという点からとくに好ましい。また、従来ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造に広範に用いられてきた、たとえばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどの低級脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類なども利用することが可能である。これらのなかで、ハロゲン化炭化水素類では、とくにオゾン層破壊の問題などを考慮して、分子中に塩素を含有しない、いわゆる第3世代フロンが好ましい。かかる発泡剤の量にはとくに限定がないが、通常加熱発泡時の発泡粒子内圧が0.1〜30kg/cm2(G)程度となるように調整することが好ましい。
【0036】
さらに、本発明においては、水および/またはアルコールが、加熱発泡中の蒸気圧こそ低いものの、発泡助剤として利用すると発泡効率がさらに上昇するという点から好適に用いられる。
【0037】
つぎに、前記のごとく発泡能が付与された発泡粒子を加熱させてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する。
【0038】
前記加熱発泡させる方法としては、たとえば熱風または蒸気を用いる方法などを採用することができるが、たとえば特開昭59−133233号公報に開示されるように、蒸気を用いた方法が発泡粒子に対する熱量の供給が早く、生産性が向上するという点からとくに好ましい。また、蒸気を用いるばあいには、加熱時間は、通常1分間程度であれば充分である。
【0039】
本発明の製造方法においては、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係、および前記加熱発泡させる温度と、TV、TLとの関係に大きな特徴がある。
【0040】
発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度と、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係は、前記したように、式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされるものであり、このとき前記tは、式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、TVは前記と同じ、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲である。
【0041】
前記加熱発泡させる温度tは、TL−30(℃)以上、好ましくはTL−25(℃)以上であり、かつTV(℃)以下、好ましくはTV−2(℃)以下である。
【0042】
前記tが前記下限値未満の温度であるばあいには、加熱温度が低すぎるため、発泡粒子をなす樹脂層が硬く、発泡効率εが低くなり、加熱発泡前後の発泡倍率の比が小さくなるので、好ましくない。
【0043】
ここで、発泡効率εは、以下の式(III):
【0044】
【数1】
【0045】
(式中、K0は加熱発泡前の発泡粒子の発泡倍率、Kは加熱発泡後の予備発泡粒子の発泡倍率、P0は加熱発泡直前の室温(23℃)における発泡粒子内圧[atm(abs)]、Tは加熱発泡温度(t+273.2(℃))、TrはPO測定時の室温(=23℃)を示す)で与えられる。
【0046】
すなわち、加熱発泡前後の発泡倍率が変化しないばあい(KO=K)、ε=0であり、また付与された発泡粒子内圧の温度換算値が加熱発泡により大気圧となるまでの体積膨張分が、加熱発泡前後の発泡粒子の体積膨張と等しくなるばあい、ε=1である。したがって、水あるいは水蒸気、アルコールなどの発泡助剤の作用が付加されたばあいには、ε>1となることがありうる。
【0047】
加熱発泡温度が低く、t<(TL−30)であるばあい、発泡効率が低く、ε<0.1となった。したがって、前記式(III)より、Kを大きくしたいばあいには、P0を大きくしなければならず、このためには、発泡能を付与するときの圧力を上げるか、あるいは発泡能を付与する時間を長くしなければならず、好ましくない。
【0048】
また、tが上限値をこえるばあいには、発泡粒子の相互融着および/または連泡化が生じるため、好ましくない。
【0049】
このように、加熱発泡させる温度tが式(II)で表わされる温度範囲であるばあいには、t−TVの上限温度(℃)とポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量C(phr)とのあいだに直線関係、すなわち前記式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
で表わされる関係が成立する。
【0050】
ある特定の発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量Cが決定されると、決定されたCおよびTVに基づき、発泡粒子の相互融着を生じずに、良好な加熱発泡を可能とする温度tの上限が一義的に定められる。この温度tの上限は、たとえばTVおよびCの異なる数種の発泡粒子を準備し、それぞれの発泡粒子について、数水準の加熱温度での加熱発泡評価実験を実施することにより求められる。
【0051】
図1に、前記上限温度t−TV(℃)と、融着防止剤の量C(phr)との関係を示す。図1から明らかなように、t−TVはCと直線関係にあり、図1中の連泡臨界線Aおよび融着臨界線Bで囲まれた右下の領域では相互融着が発生せず、ここが好ましい領域であり、逆に左上の領域では相互融着が発生した。また、このばあい、t−TV>0かつt−TV<49.1C−27.0の領域(連泡臨界線Aよりも上の領域)では、発泡粒子の相互融着は生じなかったが、えられた予備発泡粒子の連泡率が20%をこえてしまった。
【0052】
前記したように、式(I)および式(II)で表わされる条件となるようにポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着させる融着防止剤の量および発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる温度を調整することにより、発泡粒子の相互融着が生じず、気泡の独立性を維持したままで、高発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子がえられる。
【0053】
【実施例】
つぎに、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
なお、以下の実施例および比較例で用いたポリオレフィン系樹脂(基材樹脂)の融点および融解終了温度について、基材樹脂粒子約1〜10mgを精秤し、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)にて10℃/minの昇温速度で室温から220℃まで昇温してえられた吸熱ピークを融点とした。また、融解終了温度は、特開平60−23428号公報に記載の方法に準拠して測定した。
【0055】
実施例1および比較例1〜4
ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点:137℃、融解終了温度:157℃)を用い、単軸押出機(50mmφ、L/D=3)にて粒重量約1.8mgの発泡用樹脂粒子を作製した。この際、発泡造核剤としてタルク0.005phrを混合した。
【0056】
えられた発泡用樹脂粒子100部を、第1の密閉容器内に、水300部、融着防止剤として第三リン酸カルシウム1.4部および分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.03部とともに供給し、発泡温度138℃、発泡圧力17kg/cm2(G)の条件にて、直径4mmの円形オリフィスを通じて発泡させ、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。この際、発泡剤としてイソブタン13部を用いた。
【0057】
えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性として発泡倍率および平均セル径を以下に示す方法にしたがって調べた。その結果、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率が11.3倍、平均セル径が300μmの独立気泡構造を有する発泡粒子であった。
【0058】
また、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)を用いた示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す特殊な結晶構造を有し、TLが136.8℃、TVが149.4℃、THが156.7℃であった。
【0059】
つぎに、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子をpH3の塩酸水溶液で充分に洗浄、水洗したのち乾燥した。この乾燥したポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量を以下に示す方法にしたがって測定した。その結果、かかる融着防止剤の量は0.05phrであった。ついで、この発泡粒子を第2の密閉容器内に供給して空気により5kg/cm2(G)とし、室温にて約24時間放置して発泡能を付与した。第2の密閉容器から取り出したのち、内圧減少速度係数を求めると0.15であり、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は3.9atm(abs)であった。
【0060】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器内に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0061】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性として発泡倍率、発泡効率、連泡率および相互融着を以下に示す方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子]
(発泡倍率(K0))
発泡粒子約2gを精秤し、水没法により体積を測定し、発泡粒子の真比重を求めたのち、樹脂(組成物)の真比重を発泡粒子の真比重で除することにより求めた。
【0063】
(平均セル径)
発泡粒子断面を顕微鏡観察することにより求めた。
【0064】
(発泡粒子表面に付着した融着防止剤(第三リン酸カルシウム)の量(C))
メタバナジン酸アンモニウム0.022重量%、モリブデン酸アンモニウム0.54重量%および硝酸3重量%を含む水溶液(比色液)50.0mlとW(g)の発泡粒子とをコニカルビーカーにとり、1分間撹拌したのち、10分間放置した。えられた液相を光路長1.0cmの石英セルにとり、分光光度計により410nmでの吸光度Aを測定した。
【0065】
同一の比色液についてあらかじめ測定しておいた第三リン酸カルシウムの410nmでの吸光度係数μ(g/L・cm)を用い、以下の式に基づいて融着防止剤の量C(phr)を求めた。
【0066】
【数2】
【0067】
[ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子]
(発泡倍率(K))
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の発泡倍率(K0)と同様にして求めた。
【0068】
(発泡効率(ε))
式(III):
【0069】
【数3】
【0070】
(式中、K0、K、P0、TおよびTrは前記と同じ)に基づいて求めた。
【0071】
(連泡率)
空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1000型)を用い、えられた予備発泡粒子の独立気泡体積を求め、これを別途水没法により求めた見かけの体積で除してえられた独立気泡率(%)を、100から引くことにより求めた。
【0072】
(相互融着)
えられた予備発泡粒子を目視にて観察し、相互融着の有無を調べた。
【0073】
実施例2
融着防止剤の添加量を2.5部とし、第1の密閉容器から放出直後に充分に水洗を行ない、塩酸水溶液による洗浄を行なわなかったほかは、比較例3と同様にしてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0074】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0075】
実施例3〜5および比較例5
ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点:145℃、融解終了温度:161℃)を用い、タルクの添加量を0.01phrとし、塩酸水溶液による洗浄を行なわなかったほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。ただし、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は4.3atm(abs)であった。
【0076】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0077】
実施例6および比較例6〜7
ポリオレフィン系樹脂として、実施例3〜5および比較例5で用いられたエチレン−プロピレンランダム共重合体98重量%と、エチレン系アイオノマーとして、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン#1707」2重量%とからなる樹脂混合物100部に、タルク1部を添加したものを用い、実施例1で用いたものと同じ単軸押出機にて発泡用樹脂粒子をえた。えられた発泡用樹脂粒子の融点は147℃、融解終了温度は159℃であった。
【0078】
つぎに、第1の密閉容器からポリオレフィン系樹脂発泡粒子をうる際、水を発泡剤として使用し、発泡温度155℃、発泡圧力30kg/cm2(G)(チッ素ガス加圧)としたほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。このポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率が9.8倍、平均セル径が150μmであり、DSC曲線におけるTLが143.5℃、TVが155.6℃であった。
【0079】
つぎに、このポリオレフィン系樹脂発泡粒子をpH1の塩酸水溶液で充分に洗浄したのち、第2の密閉容器内に入れ、チッ素ガスにて第2の密閉容器の内圧を8kg/cm2(G)とし、80℃の水槽中で3時間放置して発泡能を付与した。発泡能が付与された発泡粒子の内圧減少速度係数は1.7、加熱発泡直前の23℃での内圧は5.0atm(abs)であった。
【0080】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器内に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0081】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0082】
実施例7〜8および比較例8
ポリオレフィン系樹脂として、直鎖低密度ポリエチレン(融点:120℃、融解終了温度:132℃)を用い、タルクの添加量を0.01phrとしたほかは、実施例1と同様にして発泡用樹脂粒子をえた。
【0083】
つぎに、第1の密閉容器での発泡には水を発泡剤として使用し、発泡温度125℃、発泡圧力35kg/cm2(G)(空気加圧)で、融着防止剤である第三リン酸カルシウムの添加量を4.0部としたほかは、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子をえた。
【0084】
また、第2の密閉容器での発泡能の付与は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の洗浄を行なわず、空気加圧により第2の密閉容器の内圧を8kg/cm2(G)とし、室温にて18時間放置することにより行なった。その結果、内圧減少速度係数は0.15、加熱発泡直前の発泡能が付与された発泡粒子の23℃での内圧は5.0atm(abs)であった。
【0085】
さらに、前記発泡能が付与された発泡粒子を第3の密閉容器に供給したのち、表1に示す条件にて加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0086】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0087】
なお、これら実施例7〜8および比較例8で用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によるDSC曲線を図2に示す。
【0088】
実施例9〜11および比較例9〜10
ポリオレフィン系樹脂として、実施例7〜8および比較例8で用いられた直鎖低密度ポリエチレン95重量%と、エチレン系アイオノマーとして、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン#1856」5重量%とからなる樹脂混合物100部に、タルク0.1部を添加したものを用い、実施例1で用いたものと同じ単軸押出機にて発泡用樹脂粒子をえた。
【0089】
つぎに、前記発泡用樹脂粒子を用い、実施例7〜8および比較例8と同様にしてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を作製したところ、発泡倍率が3.1倍、平均セル径が160μm、TLが108.6℃、TVが118.7℃の独立気泡構造を有するものであった。
【0090】
さらに、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に、実施例7〜8および比較例8と同様にして発泡能を付与し、表1に示す条件で加熱発泡を行なってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をえた。
【0091】
えられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性および途中えられたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0092】
なお、表1中には、各ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のTLおよびTVならびにt−TLおよびt−TVもあわせて示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示された結果から、以下のことがわかる。
【0095】
(イ)実施例1と比較例1〜4とを比較して、実施例1のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例1〜3のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められ、また比較例4のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足しないばあいには、相互融着が認められるうえ、連泡率もきわめて高くなる。
【0096】
なお、発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が、このように0.05phrと少ないばあいには、比較的低い加熱温度で発泡粒子の相互融着が発生し、加熱発泡させる温度を高くすることができないことがわかる。
【0097】
(ロ)実施例2と比較例3とを比較して、実施例2のように、Cを0.49phrと多くし、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するようにしたばあいには、発泡倍率および発泡効率が高く、連泡率が低いうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられる。
【0098】
(ハ)実施例3〜5と比較例5とを比較して、実施例3〜5のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例5のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められる。
【0099】
なお、発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が、このように0.28phrと多いばあいには、比較的高い発泡温度に至るまで発泡粒子の相互融着が生じず、発泡効率および発泡倍率を高めることができることがわかる。
【0100】
(ニ)実施例6と比較例6〜7とを比較して、実施例6のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例6のように、t、TV、TLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、発泡効率がいちじるしく低くなり、また比較例7のように、t、TVおよびCが式(I)で表わされる関係を満足しないばあいには、相互融着が認められる。
【0101】
なお、加熱発泡においては、融着防止剤の量を少なくしすぎると、発泡粒子の相互融着が生じやすいため、適性加熱温度条件幅が狭くなることがわかる。
【0102】
(ホ)実施例7〜8と比較例8とを比較して、実施例7〜8のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例8のように、加熱温度が高すぎ、t、TV、TLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、連泡率が41.7%といちじるしく高くなり、独立気泡構造を有する発泡粒子とはいえないものとなってしまう。
【0103】
なお、実施例7〜8および比較例8のように、融着防止剤の量が0.765phrと多いと、型内成形時の成形融着性が低下するため、型内成形前に、酸性水溶液で充分に洗浄し、型内成形時の融着防止剤の量が0.3phr以下となるようにした。
【0104】
(ヘ)実施例9〜11と比較例9〜10とを比較して、実施例9〜11のように、t、TV、TLおよびCが式(I)および式(II)で表わされる関係をいずれも満足するばあいには、発泡倍率、発泡効率および連泡率がいずれも良好であるうえ、相互融着がないすぐれた予備発泡粒子がえられるのに対し、比較例9〜10のように、加熱温度が高すぎ、t、TVおよびTLが式(II)で表わされる関係を満足しないばあいには、連泡率が20%をこえていちじるしく高くなり、独立気泡構造を有する発泡粒子とはいえないものである。
【0105】
なお、実施例9〜11のように、融着防止剤の量が0.771phrと多いと、各水準において発泡粒子の相互融着が生じず、発泡効率を約0.4〜0.8とし、予備発泡粒子の発泡倍率を調整することができることがわかる。
【0106】
また、実施例9〜11および比較例9〜10のように、融着防止剤の量が0.771phrと多いと、型内成形時の成形融着性が低下するため、型内成形前に、酸性水溶液で充分に洗浄し、型内成形時の融着防止剤の量が0.3phr以下となるようにした。
【0107】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、加熱発泡中の発泡粒子の相互融着およびセル膜の破断による予備発泡粒子の連泡率の上昇を同時に防止しつつ、加熱発泡効率を高くし、発泡倍率が高いポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造することが可能となる。
【0108】
本発明の製造方法によってえられたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、従来より公知の成形方法により、容易に成形が可能であり、緩衝材などの用途に好適に使用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(C)と、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させる上限温度(t−TV)との関係を示す図面である。
【図2】実施例7〜8および比較例8で用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によるDSC曲線である。
Claims (3)
- 示差走査熱量測定によるDSC曲線において2つの融点を示す結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子に発泡能を付与したのち、発泡能が付与された発泡粒子を加熱発泡させるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、前記加熱発泡させる温度と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量との関係が式(I):
t−TV≦49.1C−27.0 (I)
(式中、tは加熱発泡させる温度(℃)、Cはポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量(phr)、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)を示す)で表わされ、かつ加熱発泡させる温度が式(II):
TL−30≦t≦TV (II)
(式中、tは加熱発泡させる温度、TVはDSC曲線における2つの融点を示すピーク間の鞍部温度(℃)、TLは前記2つの融点のうちの低温側の融点(℃)を示す)で表わされる温度範囲であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。 - ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の表面に付着した融着防止剤の量が0.001〜0.3phrである請求項1記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
- 融着防止剤が第三リン酸カルシウムを主成分としたものである請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
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