JP3627485B2 - 車両用圧力制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に車輪のスリップを防止するブレーキの圧力制御装置に関するもので、特にブレーキ圧力アクチュエータとその制御回路が一体で構成された圧力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より車両のブレーキ圧力を制御するシステムとして、アンチスキッドブレーキ、トラクションコントロール、スタビリティコントロールシステム等が提案されている。これらシステムは、ブレーキ圧力を発生するマスタシリンダ又はモータポンプによる圧力源と、各車輪に配設されたホイールシリンダとの間に配置される圧力制御用アクチュエータ(以下H/Uという)と、各車輪の回転速度、アクセルペダルの操作、又は車体加速度等を検出するセンサ類と、これらセンサ情報から前記H/Uを駆動する信号を出力するコントロールユニット(以下ECUという)とから構成されている。運転者が操作したブレーキ圧力、又はモータポンプにより発生したブレーキ圧力を、センサ情報に応じてECUが指令を出力し、前記H/Uの作動により減圧・保持・増圧制御することで車輪のスリップ防止、車両の操縦性・安定性を確保、又は車両の走行姿勢を制御するものである。
またこのシステムにおいて、従来H/Uはエンジンルームに、ECUは車室内に装着されていたが、最近H/UとECUが一体になり、エンジンルームに装着された装置が提案されている。
【0003】
例えば、従来装置として特表平5ー505446号公報に記載されたアンチスキッド装置があり、図9にその全体構成を示す。図9において、1は複数の電磁コイル3a、3b、3cを有したECUの断面図で、2は模式的に示した複数の弁体4a、4b、4cを有し、ブレーキ圧力を制御するH/Uである。この両装置は互いに嵌合され一体物として車両に装着される。なお弁体4a〜4cは、ドーム5a〜5cに内蔵されている。このドーム5a〜5cはコイル3a〜3cの中央の穴に挿入されて、所定位置に配置されるようになっている。またこれらコイルは、支持部材31に弾性保持部材30で保持されており、遊動可能となっている。8は電子回路部であり、外部接続するためのコネクタ10に接続され、コイル3a〜3cへ電力を供給するように電気的に接続されている。
【0004】
このように電気的部分と機械的部分が分離され、製品として完成すると一体になるような装置では、コイルに流す電流を効率よく弁体に伝達することと、一体・分離が簡単にできることが重要である。このためこの従来装置では、コイル3を弾性保持部材30(この例ではバネ)を用いて遊動し、ドーム5を挿入しやすく、かつ挿入後コイルをH/U2に押し付けるようにして、弁体とコイルの位置関係を決定している。車輪速センサ(図示せず)により検出された車輪速情報に応じて、電子回路部8は各電磁コイル3a〜3cを駆動する信号を出力する。この駆動信号によりコイルに電流が流れ、ブレーキ圧力を減圧・保持・増圧するように弁体4a〜4cが作動することにより、アンチスキッド制御を実施している。
【0005】
さらに、従来装置として特開平6ー298059号公報に記載された装置があり、図10にその構成を示す。図10において図9と同一符号は同一又は相当部分を示している。H/U部は前述と同等のため、ECU部のみを図示している。コイル3a〜3cは、コイルの全周に遊びを有した構成部分32に埋め込まれ、この構成部分32は支持部材31に固定されている。33はバネで、コイル3a〜3cをH/U2に押し付けるように作用する。この構造のECU1をH/U2に嵌合する場合、前述と同様に弁体4a〜4cを内蔵したドーム5a〜5cがコイル3a〜3cの穴にそれぞれ挿入され、バネ33によりコイルがH/U2の組み付け面に押し付けるように作用するため、ドームとコイルの位置関係は決定される。またコイル3a〜3cが構成部分32内で遊動するようになっており、嵌合の容易性を図っている。
また両従来例で部屋29は、電子回路部8を内蔵しているため防水する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来装置では、ECUとH/Uを一体に嵌合する際、コイルと電子回路部を接続する箇所28に応力がかかる構造であり、この応力が経年変化さらには熱ストレスにより電気的接続部にストレスが加わり、最悪の場合破損する可能性があった。
またコイル端子部を貫通させるための小穴が電子回路室に多く、電子回路室を防水することが複雑であった。
さらにECU部を組み立てる際、コイル端子部を所定の小穴へ挿入し、電気的接続処理をしなければならず、組立性が悪いという問題点があった。
【0007】
この発明は、前記のような問題点を解決するためになされたもので、ECUとH/Uとの嵌合の容易性を有した状態で、コイル端子部の応力緩和のためにコイル端子部と接続部材との位置関係が嵌合・分離により変位しにくい車両用圧力制御装置を得ることを第1の目的とするものである。
また電子回路室の防水性、及びECU部の組立性を向上した車両用圧力制御装置を得ることを第2の目的とするものである。
また電子回路部への機械的・熱的ストレスに対応できる車両用圧力制御装置を得ることを第3の目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両用圧力制御装置では、ハウジングに設けられた電子回路部、複数の電磁コイル部及びそれらを電気的に接続する導電性接続部材を有する第1ユニットと、複数の弁体及び圧力通路網を有する第2ユニットとを備え、この第2ユニットの突出した複数の弁体が前記第1ユニットの複数の電磁コイル部にそれぞれ挿入されるように構成されるものにおいて、第1ユニットは、複数の電磁コイル部を収納するコイルハウジングを備え、前記電磁コイル部は、コイルを巻着するボビン、このボビンに周設され磁路を形成する上部および下部ヨーク、及びこの下部ヨークと前記ボビンとの間に設けた弾性体から構成され、前記ボビンを前記上部ヨークとの間に介在させた前記コイルハウジングの一部に当接する当接手段を有し、前記コイルハウジングに対する前記ボビンの移動を抑制するように構成したものである。
【0009】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置では、第1ユニットは、複数の電磁コイル部を収納するコイルハウジングと、電子回路部を装着し、前記コイルハウジングに装着された中間部材と、この中間部材を覆うカバーとを備え、前記コイルハウジングには、前記電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、前記複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記コイルハウジングの一部に当接するように構成したものである。
【0010】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置では、第1ユニットは、内部ハウジングを有する第1室と、電子回路部を装着する第2室とを有する外部ハウジング、及び第2室を覆うカバーを備え、前記内部ハウジングには、電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記内部ハウジングの一部に当接するように構成したものである。
【0011】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置では、電磁コイル部は、コイルを巻着したボビンに間隙を介して装着する上部及び下部ヨークを備え、ハウジングの一部を前記ヨークとボビン間に介在し、前記下部ヨークと前記ボビンの間に弾性体を介在し、前記ボビンを前記ハウジングの一部に当接するように前記両ヨークを嵌合して構成され、弁体挿入時に、前記ハウジングに対して前記両ヨークが、前記間隙により遊動できるようにしたものである。
【0012】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置では、導電性接続部材の第1コンタクト部が1箇所に集合され、電子回路部装着部材の電子回路部装着側に表すように形成したものである。
【0013】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置では、電子回路部において、外部接続可能なコネクタ部との接続は、このコネクタ部と間隔をあけて電子回路部を配置して互いを電気的に接続し、前記電子回路部のハウジングへの固定は、前記コネクタ部との接続部、又は第1コンタクト部との接続部から遠い部分は少なくとも、ハウジングに遊嵌するように形成したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。
図1〜図3はこの発明の実施の形態1によるアンチスキッド制御装置を示す構造図である。図1は一体化された装置の半正面断面図で、図2は各ユニットが分離された状態を示している半側面断面図である。図3は一部部材を外し、内部構造が見えるようにした平面図である。この実施の形態では、弁体及び電磁コイルが8個(a〜h)装着されている。つまり4車輪に各々2個ずつ弁が装着され、常開弁4aと常閉弁4e(図示せず)の一対でブレーキ圧力制御するものである。また図1は図3のIーI線断面方向から、図2はIIーII線断面方向から見たものである。
【0015】
図1において、1は第1ユニットでECUを構成し、2は第2ユニットでH/Uを構成しており、ECUのみ断面図としている。第1ユニット1は、電子回路部8と電磁コイル部3a〜3hとを収納したハウジングとそれらを覆うカバー9とで構成されている。ハウジングは電磁コイル部3a〜3hを収納するコイルハウジング6と、電子回路部8を装着し、コイルハウジング6に装着された中間部材7とで形成されている。一方第2ユニット2は、模式的に示した常開弁及び常閉弁4a〜4d、4e〜4hを各々内蔵したドーム5a〜5h及びブレーキ通路他(図示せず)が内蔵されたユニットブロック2αで構成されている。なお電磁コイル3、弁体4及びドーム5は各々8個(a〜h)存在し、各車輪に各々2個ずつ配設されており、同様な構造・構成であるためその一部を用いて説明する。弁体4は電磁コイル3を励磁及び非励磁することにより、ブレーキ通路を連通及び遮断でき、非励磁時の弁状態により常開弁と常閉弁の2種類がある。この第1、第2ユニット1、2を嵌合すると、図1においてはドーム5a〜5dが、電磁コイル3a〜3dの中央穴へそれぞれ挿入される構造となっている。
【0016】
図2もECUを断面した半側面断面図である。13は導電性接続部材でバスバーと呼ばれ、電子回路部8と電気的に接続する第1のコンタクト部11と、電磁コイルの端子12b、12fと接続する第2のコンタクト部14b、14fとを有し、両コンタクト部を接続した形状をなしている。なお第2のコンタクト部はこの実施の形態では、8×2=16箇所有している。
電磁コイル部は、コイル15bを巻着し、端子12bを有したボビン16bと、このボビン16bに周設され磁路を形成する上部ヨーク17b及び下部ヨーク18bと、この下部ヨーク18bとボビン16bとの間に設けた弾性体19とで構成されている。この弾性体19は例えば板バネであり、ボビン16bをコイルハウジング6の一部に当接させている。このバネ19の圧力により、ボビン16bは図2の上下方向の移動を抑制されている。また上部ヨーク17bとボビン16bとの間にコイルハウジング6の一部を介在している。
【0017】
中間部材7は、電子回路部8を装着する部材で、バスバー13の第1コンタクト部11を挿入でき、電子回路部8近傍まで突設できるように形成されている。換言すれば、中間部材7はこれに穴をあけ、バスバー13の第1コンタクト部11が、電子回路部装着側に露出し、表し得るように形成されている。またコネクタ10のコンタクト部20も、同様に中間部材7に挿入できるようになっている。そしてコイルハウジング6とカバー9でこの中間部材7を挟み込んでいる。
またH/U2には図示していないが、従来装置と同様にブレーキ液を貯留するリザーバ、貯留したブレーキ液を増圧するためのモータポンプ、及びそれらを連通するブレーキ通路が内蔵されている。弁体及びモータポンプの駆動は、電子回路部8が車輪の挙動に応じて、ブレーキ圧を増圧・減圧・保持するよう電磁コイル3及びモータポンプに通電・遮断制御する。
【0018】
図3は、カバー9、電子回路部8、中間部材7及び第2ユニット2を取り除いた平面図である。コイルハウジング6に8個の電磁コイル3a〜3hが装着されている状態を示している。電磁コイルは、コイル線と一部を破線で図示したバスバー13と接続するため、端子12aをボビンに有している。この端子12aとバスバー13を例えば溶接し固定し、電気的接続を可能にしている。またバスバー13の一端の第1コンタクト部11は1箇所に集中している。外部接続可能なコネクタ10のコンタクト部20は、第1コンタクト部11と隣接する辺に位置している。
【0019】
図1〜図3及び図5(a)を用いて、電磁コイル部3及び組立順について説明する。まずコイルハウジング6にコイル15を巻着したボビン16を取り付ける。この際係止片21a(図1)によりボビン16は、一時的にコイルハウジング6に支持される。次に板バネ19α(図5)を下部ヨーク18αに配置して、ボビン16の穴に下部ヨーク18αの中央の突起部26βを挿入する。次に上部ヨーク17αを下部ヨーク18αと同心上に配置し、下部ヨーク18αと上部ヨーク17αとを嵌合させる。この際上部ヨーク17αとボビン16でコイルハウジング6の一部を挟持し、かつバネ19でボビン16をコイルハウジング6の一部に軽く当接した状態で、両ヨークを嵌合させる。そして下部ヨーク18αの複数の爪の一部を上部ヨーク17α側にかしめる。次にコイル端子12とバスバーの第2コンタクト部14を例えば溶接し接続する。以上の手順で電磁コイル部3がコイルハウジング6に一体化される。
次に電子回路部8を中間部材7に固定する。次にこの中間部材7の穴から、バスバー13及びコネクタ10のコンタクト部20を露出し表すようにして、この中間部材7をコイルハウジング6に、例えば接着他により装着する。次に電子回路部8と第1コンタクト部11及びコネクタ10のコンタクト部20をそれぞれ電気的に接続する。最後にカバー9を中間部材7に装着する。以上のようにして第1ユニット1は組立られる。この場合、ボビン16をコイルハウジング6の一部に当接する当接手段は、バネ19と両ヨーク17、18で構成される。
【0020】
さらに電磁コイル部周辺について説明を加える。図2ではECU1とH/U2が分離されているため、バネ19はあまり圧縮されていない。この状態から図1のように、ECU1とH/U2を一体化しようとすると、このバネ19は圧縮され、ボビン16bはコイルハウジング6に圧接される。両ヨークは一体化されており、ボビン16bをコイルハウジング6に当接させているため、上部ヨーク17とコイルハウジング6間に間隙ができる(図1)。このバネの圧縮により、電磁コイル3を第2ユニット2に当接でき、ドーム5bが電磁コイル3bと所定位置に配置できる。つまりバネ19には、ボビン16をコイルハウジング6に当接する目的と、電磁コイル部3を第2ユニット2に当接する2つの目的がある。さらにコイル端子12bとバスバーの第2コンタクト部14bの位置関係は、ECU1とH/U2が分離又は一体化されても変わらない。そのためこの構造は、端子12bとバスバーの第2コンタクト部14bの接合部のストレスに対して、大きなメリットがある。
【0021】
この装置は通常エンジンルームへ装着されるため、また電磁コイルを通電するため、温度変化がー20℃付近から+100℃以上になると考えられる。この熱ストレスによる膨張について考える。コイルハウジング6やボビン16bの材料であるプラスチック、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)の線膨張係数を約30×10−6mm/℃、バスバー13の材料である黄銅の線膨張係数を約18×10−6mm/℃、及び部品の全長を50mmとすると、約0.08mmの変位があることになる。さらに嵌合による変位は、構造に依存するが熱による変位の数倍以上あると考えられるため、例えばハンダによる接合を行うと、接合面の耐久性は乏しく、ハンダに亀裂が入り最悪の場合破断する。電気溶接とすると接合面ではなく別の弱い所、例えば端子が破損する可能性がある。そのため、変位量はできるだけ少なくすることが必要であり、この実施の形態では接合面は嵌合・分離されても変位はなく、熱による変位だけとなっている。コイル端子12の長さは数mmと短く、またバスバー13とコイル端子12の材料を例えば黄銅とすると、その膨張も同程度と考えられる。そのため熱による変位はほとんど無視できるほど小さいものとなる。さらにバスバー13の撓みでその変位を吸収する作用もある。
【0022】
また上部・下部ヨーク17、18とボビン16は、両ヨークがボビンに対しても遊動できるように、ドーム5の挿入穴径方向に若干の間隙を有している。さらに両ヨークはコイルハウジング6を介在しているが、コイルハウジング6のヨーク及びボビン用の穴が大きくあいて間隙を有しているため、両ヨークはコイルハウジング6に対して、その間隙により遊動できる構造となっている。図4はこの構造を示している要部説明図である。図4は図3から電磁コイル部3を取り除き、電磁コイル部3を組立する前のコイルハウジング6の一部であり、穴41、42があいている。図中、点点模様で示した部分は、コイルハウジング部材が存在している。この構造によりH/U2を嵌合する際、ドーム5が挿入しやすくなっている。つまりドームは固定されており、第2ユニット2が持っている寸法公差を、遊動する電磁コイル側で吸収することができるため、挿入が容易となる。
【0023】
さらに電磁コイルの端子は端子用の小穴に挿入するのではなく、比較的大きな穴41、42があいたコイルハウジング6に装着する。また図1に示した21dは突起を有した係止片で、ボビン16dをコイルハウジング6に支持している。これらにより、電磁コイル部の組立性を向上させている。この場合、ボビン16をコイルハウジング6の一部に当接する当接手段は、係止片21で構成される。またこの係止片は、別部品を用いてハウジングとボビンを支持してもよい。
【0024】
実施の形態2.
次に実施の形態2において、特に電磁コイル部について図5を用いて説明する。電磁コイル部は、コイル15を巻着しコイル端を端子12に接続したボビン16と、上部ヨーク17と、下部ヨーク18と、下部ヨーク18とボビン16間に設けたバネ19とで構成されている。図5(a)は実施の形態1で用いた電磁コイル部であり、下部ヨーク18αがコの字の形状をしており、下部と上部ヨーク18α、17αを嵌合できるように下部ヨーク18αに突起部を有し、上部ヨーク17αにその突起を挿入する穴、切り欠きがある。また両ヨークにはボビン16を納め、磁力の通路を確保するための円筒形の突起部26α、26βを有している。磁力は上部ヨーク17αから突起部26α、弁体のプランジャ(図示せず)、下部ヨークの突起部26β、下部ヨーク18α、そして再度上部ヨーク17αとつながる。これにより弁体のプランジャが移動する。またこの突起部26α、26βの外径とボビンの穴の内径はわずかな間隙を有し、ヨークにボビンが内接するように形成されている。一方バネ19αは下部ヨーク18αがコの字型をしているため、複数個連なった形状をとることができる。この実施の形態ではコイル数8個の内4個ずつの2組のバネとしている。
【0025】
次に図5(b)は、実施の形態2の電磁コイル部であり、下部ヨーク18βを円筒形にしたものである。ヨークを円筒形にして、磁力の通路を図5(a)に比較して効率を向上させている。そのためヨークの厚みは図5(a)に比べ薄くできる。一方バネ19βは単品となる。さらにボビン16をコイルハウジング6に当接させるための係止片をこのバネ19βに設けている。この係止片19γの先端部をコイルハウジング6の一部に引っかけて、ボビン16とコイルハウジング6を当接させる。そのためこの係止片19γの長さは、ボビン16の高さとコイルハウジング6の厚みで決定される。この状態で上部・下部ヨーク17β、18βによりコイルハウジング6を挟持する。なおボビン16は図5(a)のものと同一のため、図示していない。この場合、ボビン16をコイルハウジング6の一部に当接する当接手段は、バネ19βとその係止片19γである。
【0026】
以上説明したように、電磁コイル部はコイルを巻着したボビン16を上部・下部ヨーク17、18内に納め、下部ヨーク18とボビン16の間に弾性体19を設け、弁体を内蔵したドーム5をボビン、ヨークに挿入した後、コイルに電気を供給し励磁及び非励磁し、弁体の例えばプランジャを移動させることにより、ブレーキ通路を連通及び遮断するように作動させるものであればよい。そのためボビン、ヨーク及び弾性体の形状は種々変更できる。上部及び下部ヨーク17、18で介在するコイルハウジング6の一部とは遊動でき、また両ヨークはボビン16とも遊動できるように形成又は組立されることにより、電磁コイルの組立性及びECU1とH/U2の嵌合性を容易にしている。
【0027】
また、板バネ19によりボビン16をコイルハウジング6の一部に当接させる方法のほかに、係止片21を適当な長さにすることによりボビン16をコイルハウジング6に当接させてもよい。さらにまた、ボビン16とコイルハウジング6の当接面に凹凸を付け嵌合することにより互いを当接してもよい。
【0028】
実施の形態3.
次に実施の形態3について図6を用いて説明する。図6において図1又は図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。図1又は図2との相違点は、電磁コイル部3を保持する部材及びその周辺部の形状である。ECU1の外部ハウジング26は、内部ハウジング22を収納する第1室と電子回路部8を装着する第2室の2つの部屋を有し、それらは仕切部材26αで仕切られている。22は、電磁コイル部3b、3fとバスバー13を所定位置に装着する内部ハウジングである。バスバー13が配置された内部ハウジング22は、第1コンタクト部11が仕切部材26αの穴から第2室に挿入され、外部ハウジング26に固定されている。
また電磁コイル部は、上部・下部ヨーク17、18で内部ハウジング22の一部を介在し、ボビン16は内部ハウジング22に当接している。実施の形態1と同様に上部・下部ヨーク17、18は、内部ハウジング22と遊動し、ボビン16は両ヨークと間隙を有し内接している。
【0029】
内部ハウジング22を介することにより、電磁コイル部3とバスバー13を組み付けた内部ハウジングサブアッシーとして取り扱うことができ、工作性を向上することが可能である。なお組立手順は実施の形態1と同様に、電磁コイル部3を内部ハウジング22に取り付ける。その後この内部ハウジング22を外部ハウジング26に例えば接着他により装着する。
【0030】
実施の形態4.
次に発明の実施の形態4において、特に防水性について図1〜3及び5を用いて説明する。電磁コイル部3を収納している部屋の防水は、実施の形態1及び3共、コイルハウジング6の周囲の溝に例えばパッキン25を挿入することにより、パッキンと第2ユニットとの接合により達成する。電磁コイル部を収納している部屋の防水性は、電子回路室29の防水性ほど厳しくなくてもよい。また熱によりこの装置の温度が上昇している時に、走行中の水がかかる場合がある。この場合呼吸作用により水滴を吸い込むことがあるため、車両装着方向により水抜き穴又はECU内外の気圧変化を起こさせないようなフィルタ等の必要性がある。例えば電磁コイル部収納室には水抜き穴を設け、電子回路室29にはフィルタ(共に図示せず)を設けることができる。
【0031】
電子回路室29の防水性を確保するため実施の形態1においては、中間部材7とコイルハウジング6の周囲24βに凹凸を設け、防水性接着剤を流し込むことができる。又は互いの周囲24βを振動溶着することにより防水性を確保する。また中間部材7とカバー9の周囲24αも同様な方法で防水性を確保する。さらにまた、図3で表したように第1コンタクト部11及びコネクタ部のコンタクト部20の周囲24γも同様な処理を行う。この防水用溝の幅・深さ及び防水方法により、防水レベルを可変することができる。以上により電子回路室29の防水性を確保できる。また防水と装着の両者を接着方法で成し遂げている。
【0032】
実施の形態3における電子回路室29の防水は、内部ハウジング22の周囲23αとコンタクト部11の周囲23βと外部ハウジング26の仕切部材26αの接触面とにより、前述と同様な方法で行う。また外部ハウジング26とカバー9も同様に周囲24αにおいて防水処理を行う。
このように各部材の周囲に溝を設け、かつ小穴を多数設けないような形状・構造をとることにより、防水性確保を容易にすることができる。
【0033】
実施の形態5.
次に発明の実施の形態5において、特に電子回路部について図7を用いて説明する。図1又は図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。電子回路部8は、第1・第2ユニットの嵌合面と略同一面積内に収納されており、第1コンタクト11及びコネクタ10とのコンタクト部20と接続されている。特にコネクタ10近傍まで電子回路基板が張り出していない。コネクタ挿脱、コイルハウジング6(又は26)のひけ及び熱ストレスにより、コネクタ部は肉厚が薄く剛性が少なく変形しやすい。そのため、電子回路基板をコネクタ部にまで拡張していると、基板にストレスが加わることになり、電気接続不良を引き起こし、電子回路動作不具合を発生させる可能性がある。図7のように基板端をコネクタ部から離れた所で止めると、前述のような問題を引き起こすことがない。この実施の形態では、コネクタ部のピンが、基板近傍まで延長され、ワイヤボンディングにて電気的接続しているが、コネクタピンと電子回路部を可撓性のあるジャンパ線で接続してもよい。
【0034】
第1コンタクト11は電磁コイル数8個に対し、共通電源ライン2本及び各コイル8個の接続箇所を有し、さらにブレーキ圧力を増圧するためのポンプモータ(図示せず)の駆動ライン2箇所の計12箇所を要している。一方コネクタのコンタクト部20は使用コネクタピンの数と同数の接続箇所がある。電流容量が必要な箇所は(例えば電源・グランドライン、ポンプモータライン)、ワイヤボンディング線径を太くしたり、複数本ボンディングして電流容量を確保している。
【0035】
また電子回路部8を中間部材7又は外部ハウジング26に固定する際、第1コンタクト部11及びコネクタとのコンタクト部20の周辺を固着するが、これらより離れた箇所は固着しない。この実施の形態では3箇所をネジで固着し、他端は単なる位置決めとなるよう基板の穴にハウジングの突部を挿入している(27)。これにより、熱ストレスはネジ部を起点に考えることができる。ハウジング材料PBTの線膨張係数は前述のとおり約30×10−6、基板をガラスエポキシ材とすると約14×10−6mm/℃となる。基板長を100mmとすると、両者の熱による変位は約0.2mmとなる。基板の4隅を固着していたならば、この変位は基板にストレスとして加わることになる。そのため少なくとも1隅はハウジングに基板を固着せず、遊嵌させることにより、この変位を逃がすようにする。
【0036】
この実施の形態では、コンタクト部周辺の3隅をネジで固着したが、2隅又は3隅を図8のように基板をハウジングに遊嵌してもよい。例えば図8(a)はハウジングから突出した係止用突出部材で、台座と張り出し部で基板を挟持するが、基板の穴と突出部材の首部は間隙を有している。一方(b)は凸形状台座を基板の穴に挿入し、ネジ止めしたものであり、凸部は基板の穴と間隙を有し、さらに首部は基板厚みより長いものである。そのためネジを締めても基板が締め上げられることはない。このような構造で基板とハウジングを止めると、前述の熱ストレスによる変位を吸収できることになる。図8のような遊嵌構造にした場合は、ワイヤボンディング接続のループ形を慎重に選択して、熱ストレス等による変位をこのループ形で吸収させるようにする必要がある。また弾力性を有する接着剤で電子回路部を装着してもよい。
【0037】
【発明の効果】
この発明の車両用圧力制御装置は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0038】
この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、電磁コイル部は、コイルを巻着するボビン、このボビンに周設され磁路を形成する上部及び下部ヨーク、及びこの下部ヨークと前記ボビンとの間に設けた弾性体から構成され、前記ボビンを前記上部ヨークとの間に介在させたコイルハウジングの一部に当接する当接手段を有し、前記ボビンの移動を抑制するように構成したので、ECUとH/Uとの嵌合・分離を可能にした状態で、電磁コイル部の電気的接続部の応力を緩和できる効果がある。
【0039】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、第1ユニットは、複数の電磁コイル部を収納するコイルハウジングと、電子回路部を装着し、前記コイルハウジングに装着された中間部材と、この中間部材を覆うカバーとを備え、前記コイルハウジングには、前記電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、前記複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記コイルハウジングの一部に当接するように構成したので、ECUとH/Uとの嵌合・分離を可能にした状態で、電磁コイル部の電気的接続部の応力を緩和できる効果がある。
【0040】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、第1ユニットは、内部ハウジングを有する第1室と、電子回路部を装着する第2室とを有する外部ハウジング、及び第2室を覆うカバーを備え、前記内部ハウジングには、電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記内部ハウジングの一部に当接するように構成したので、ECUとH/Uとの嵌合・分離を可能にした状態で、電磁コイル部の電気的接続部の応力を緩和できる効果がある。
【0041】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、電磁コイル部は、コイルを巻着したボビンに間隙を介して装着する上部及び下部ヨークを備え、ハウジングの一部を前記ヨークとボビン間に介在し、前記下部ヨークと前記ボビンの間に弾性体を介在し、前記ボビンを前記ハウジングの一部に当接するように前記両ヨークを嵌合して構成され、弁体挿入時に、前記ハウジングに対して前記両ヨークが、前記間隙により遊動できるようにしたので、ECUとH/Uとの嵌合・分離を可能にし、嵌合を容易にした状態で、電磁コイル部の電気的接続部の応力を緩和できる効果がある。
【0042】
また、この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、導電性接続部材の第1コンタクト部が1箇所に集合され、電子回路部装着部材の電子回路部装着側に表すように形成したので、ECU室の防水性確保を容易にする効果がある。
【0043】
さらにまた、この発明に係る車両用圧力制御装置によれば、電子回路部において、外部接続可能なコネクタ部との接続は、このコネクタ部と間隔をあけて電子回路部を配置して互いを電気的に接続し、前記電子回路部のハウジングへの固定は、前記コネクタ部との接続部、又は第1コンタクト部との接続部から遠い部分は少なくとも、ハウジングに遊嵌するように形成したので、電子回路部に対する機械的・熱的応力を緩和できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による車両用圧力制御装置全体を示す半正面断面図である。
【図2】実施の形態1による車両用圧力制御装置の半側面断面図で、装置を2分割して示す。
【図3】実施の形態1による車両用圧力制御装置の一部部材を取り除いた平面図である。
【図4】実施の形態1による車両用圧力制御装置の要部説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1及び2による電磁コイル部の部品図である。
【図6】この発明の実施の形態3による車両用圧力制御装置の半側面断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1〜5による車両用圧力制御装置の一部部材を取り除いた平面図である。
【図8】この発明の実施の形態5による電子回路取り付け部の断面図である。
【図9】従来のアンチスキッド制御装置による半正面断面図で、装置を2分割して示す。
【図10】他の従来のアンチスキッド制御装置によるECU部の断面図である。
【符号の説明】
1 第1ユニット、2 第2ユニット、3a〜3h 電磁コイル、4a〜4h弁体、5a〜5h ドーム、6 コイルハウジング、7 中間部材、8 電子回路部、9 カバー、11 第1コンタクト部、12a〜12h 端子、13 接続部材、14a〜14h 第2コンタクト部、15a〜15h コイル、16a〜16h ボビン、17a〜17h 上部ヨーク、18a〜18h 下部ヨーク、19 弾性体、22 内部ハウジング、26 外部ハウジング。

Claims (6)

  1. ハウジングに設けられた電子回路部、複数の電磁コイル部およびそれらを電気的に接続する導電性接続部材を有する第1ユニットと、複数の弁体および圧力通路網を有する第2ユニットとを備え、この第2ユニットの突出した複数の弁体が前記第1ユニットの複数の電磁コイル部にそれぞれ挿入されるように構成され、前記第1ユニットと第2ユニットは嵌合・分離できる車両用圧力制御装置において、
    前記第1ユニットは、前記複数の電磁コイル部を収納するコイルハウジングを備え、前記電磁コイル部は、コイルを巻着するボビン、このボビンに周設され磁路を形成する上部及び下部ヨーク、及びこの下部ヨークと前記ボビンとの間に設けた弾性体から構成され、
    前記ボビンと前記上部ヨークの間に介在された前記コイルハウジングの一部に前記ボビンを前記弾性体により当接させて前記第1ユニットと第2ユニットの嵌合・分離によっても前記ボビンと前記コイルハウジングの当接状態を維持し、前記コイルハウジングに対する前記ボビンの移動を抑制するように構成したことを特徴とする車両用圧力制御装置。
  2. 第1ユニットは、複数の電磁コイル部を収納するコイルハウジングと、電子回路部を装着し、前記コイルハウジングに装着された中間部材と、この中間部材を覆うカバーとを備え、
    前記コイルハウジングには、前記電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、前記複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記コイルハウジングの一部に当接するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用圧力制御装置。
  3. 第1ユニットは、内部ハウジングを有する第1室と、電子回路部を装着する第2室とを有する外部ハウジング、及び第2室を覆うカバーを備え、
    前記内部ハウジングには、電子回路部と接続する第1のコンタクト部と、複数の電磁コイル部と接続する第2のコンタクト部とを有する導電性接続部材を配置し、かつ前記複数の電磁コイル部のボビンを前記内部ハウジングの一部に当接するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用圧力制御装置。
  4. 電磁コイル部は、コイルを巻着したボビンに間隙を介して装着する上部及び下部ヨークを備え、ハウジングの一部を前記ヨークとボビン間に介在し、前記下部ヨークと前記ボビンの間に弾性体を介在し、前記ボビンを前記ハウジングの一部に当接するように前記両ヨークを嵌合して構成され、
    弁体挿入時に、前記ハウジングに対して前記両ヨークが、前記間隙により遊動できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用圧力制御装置。
  5. 導電性接続部材の第1コンタクト部が1箇所に集合され、電子回路部装着部材の電子回路部装着側に表すように形成したことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の車両用圧力制御装置。
  6. 電子回路部において、外部接続可能なコネクタ部との接続は、このコネクタ部と間隔をあけて電子回路部を配置して互いを電気的に接続し、前記電子回路部のハウジングへの固定は、前記コネクタ部との接続部、又は第1コンタクト部との接続部から遠い部分は少なくとも、ハウジングに遊嵌するように形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用圧力制御装置。
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