JP3627228B2 - 水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法 - Google Patents

水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性、密着性、柔軟性に優れた水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗料の分野では、有機溶剤系のものが主流であったが、大気汚染防止、消防法上の規制、労働衛生等の観点から、水系のものが採用され始めている。この水性塗料用樹脂としては、カルボン酸塩を含有させたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が提案されている。特にポリウレタン樹脂は、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐久性、耐薬品性等が優れているため、塗料用樹脂としては最適である。特開平4−41517号公報には、ポリカーボネートポリオール、有機ジイソシアネート、鎖延長剤、カルボン酸ないしはカルボン酸塩含有の短鎖ジオールを用いたポリウレタンエマルジョンが開示されている。また、特開平6−313024号公報には、カルボン酸含有の低分子ジオールを開始剤としたポリカプロラクトンポリオールを用いた水性ポリウレタン樹脂が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
しかし、特開平4−41517号公報記載のポリウレタンエマルジョンは、その合成において、カルボン酸含有の低分子ジオールをそのまま用いている。このため、ポリウレタンを水分散させるためには、カルボン酸含有の低分子ジオールの導入量が多くなり、必然的にポリウレタンの特徴である柔軟性が損なわれている。また、特開平6−313024号公報記載の水性ポリウレタン樹脂は、ポリエステル(ポリカプロラクトン)ベースのために、耐水性等が不足している。
【0004】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題点を解決するために鋭意検討した結果、カルボン酸導入ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール、鎖延長剤、有機ジイソシアネート、中和剤を反応させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法及びスルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール、鎖延長剤、有機ジイソシアネートを反応させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法によって得られるポリウレタン樹脂が、耐久性に優れ、物性の調節が自由であり、また、これを用いた塗料が要求性能を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)である。
(1)有機溶剤中で、カルボン酸導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオール及び鎖延長剤からなるジオール成分と有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0以下で反応させ、所定分子量に達した後、中和剤にて中和させ、その後水を加えてから脱溶剤させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
該カルボン酸導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとカルボン酸含有ジオールとのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のカルボン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
【0006】
(2)カルボン酸導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオールと有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0超〜5.0で反応させて得られるイソシアネート末端のプレポリマーを中和剤にて中和し、その後水中で乳化分散させ、鎖延長剤で高分子量化させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
該カルボン酸導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとカルボン酸含有ジオールとのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のカルボン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
【0007】
(3)スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオール及び鎖延長剤からなるジオール成分と有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0以下で反応させ、所定分子量に達した後、水を加えてから脱溶剤させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
該スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとスルホン酸塩含有イソフタル酸ジメチルエステル化合物とのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のスルホン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
【0008】
(4)有機溶剤中で、スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオールと有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0超〜5.0で反応させて得られるイソシアネート末端のプレポリマーを水中で乳化分散させ、鎖延長剤で高分子量化させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
該スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとスルホン酸塩含有イソフタル酸ジメチルエステル化合物とのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のスルホン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法に用いられるポリカーボネートジオールは、カルボン酸又はスルホン酸塩エステルを導入されたポリカーボネートジオールを含有する。
【0010】
本発明に用いられるカルボン酸を導入されたポリカーボネートジオールのカルボン酸導入源は、以下の式(1)に示されるカルボン酸含有ジオールである。具体的なものとしては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等である。カルボン酸を導入されたポリカーボネートジオールの合成方法は、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとカルボン酸含有ジオールとのエステル交換反応によって合成する方法ある。反応時には、必要に応じて、テトラブチルチタネートのような触媒を用いても良い。
【0011】
【化1】
Figure 0003627228
【0012】
本発明に用いられるスルホン酸塩エステルを導入されたポリカーボネ−トジオールのスルホン酸塩エステル導入源は、以下の式(2)に示されるスルホン酸塩含有イソフタル酸ジメチルエステルである。具体的なものとしては、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル等である。スルホン酸塩エステルを導入されたポリカーボネ−トジオール合成方法は、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとスルホン酸塩含有ジメチルエステル化合物との脱メタノール反応である。反応時には、必要に応じて、テトラブチルチタネートのような触媒を用いても良い。
【0013】
【化2】
Figure 0003627228
【0014】
本発明に用いられるポリカーボネートジオールは、(a)ジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応、(b)ジオールとジアルキルカーボネートとの脱アルコール反応、(c)ジオールとアルキレンカーボネートとの脱グリコール反応等で得られる。このジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等がある。これらのジオールのなかで、好ましいのは、1、6−ヘキサンジオールである。
【0015】
本発明に用いられる鎖延長剤は、分子量が18〜500であり、具体的には、水、尿素、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等の低分子ジオールや、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシレンジアミン、ピペラジン等の低分子ジアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミンのような低分子アミノアルコール等がある。
【0016】
本発明に用いられる有機ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートや、これらの2種類以上の混合物がある。本発明で好ましい有機ジイソシアネートは、耐候性の良好な脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートであり、更に好ましくは、溶解性、耐候性の良いイソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート及び物性の良い水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0017】
本発明は、必要に応じて反応停止剤を用いても良い。反応停止剤の具体的なものとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、エチルアミン、ブチルアミン、プロピルアミンのような第1級アミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミンのような第2級アミン、場合によっては、前述したアミノアルコール等が用いられる。
【0018】
本発明によって得られる水性塗料用ポリウレタン樹脂の親水性極性基含有量は、0.1〜1.0mmol/g、好ましくは、0.2〜0.8mmol/gである。親水性極性基導入量が0.1mmol/g未満の場合は、ポリウレタン樹脂が水中に分散しない。また、1.0mmol/gを越えると、ポリウレタン塗膜の耐水性に乏しくなる。
【0019】
本発明の水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法は、以下に示す方法が挙げられる。すなわち、(1)有機溶剤中でジオール成分と有機ジイソシアネートを全イソシアネート基/全水酸基(以下R値と略称する)が1.0以下で反応させ、所定分子量に達したら、必要に応じて中和して、水を加えた後、脱溶剤して水性ポリウレタンエマルジョンを得る方法、(2)ジオール成分と有機ジイソシアネートをR値が1.0超〜5.0で反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得る。このとき、必要に応じて有機溶剤を用いることができる。次に得られたプレポリマーを必要に応じて中和し、その後水中で乳化分散させ、鎖延長剤で高分子量化させ、脱溶剤して水性ポリウレタンエマルジョンを得る方法、がある。このとき、必要に応じて、トリエチルアミン等のような第3級アミン系触媒やジブチルチンジラウレートのような有機金属触媒を用いても良い。
【0020】
先述の(1)、(2)の方法における有機溶剤は、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のイソシアネート基に不活性なものであれば特に制限はない。
【0021】
本発明によって得られる水性塗料用ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、3,000以上、好ましくは、5,000以上である。数平均分子量が5,000未満の場合は、ポリウレタン樹脂の強度が不足する。
【0022】
本発明によって得られる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンを用いた水性塗料の調製方法は、前記水性ポリウレタンエマルジョンに、顔料や染料を仕込み、固形分や粘度調整のための水、塗料の表面張力を調節させるためのイソプロパノールやN−メチル−ピロリドンのような親水性有機溶剤、更に、ポリエチレンワックスのようなブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤等の添加剤を配合し、ボールミル、サンドグラインドミル等を用いて得られる。得られた塗料は、刷毛、スプレー等を用いて塗布される。なお、必要に応じて、塗布直前に水分散型ポリイソシアネート等のような硬化剤を配合しても良い。
【0023】
【実施例】
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中における部とは重量部、%は重量%をそれぞれ示す。
【0024】
カルボン酸導入ポリカーボネートジオールの合成
ポリカーボネートジオールAの合成
攪拌機、冷却管、温度計を備えた反応器に、ジメチロールプロピオン酸を67.0部、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量3,000のポリカーボネートジオールを909.8部、1,6−ヘキサンジオール23.2部仕込み、160℃に加温した。温度が180℃に達したところで、テトラブチルチタネートを0.05部仕込み、6時間反応させた。得られたカルボン酸含有ポリカーボネートジオールAの水酸基価は112.2mgKOH/g(数平均分子量=1,000)で、酸価は28.1mgKOH/g(カルボン酸含有量=0.5mmol/g)であった。
【0025】
ポリカーボネートジオールBの合成
ポリカーボネートジオールAと同様な反応器に、ジメチロールブタン酸を74.0部、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量3,000のポリカーボネートジオールを902.5部、1,6−ヘキサンジオール23.5部仕込み、160℃に加温した。温度が180℃に達したところで、テトラブチルチタネートを0.05部仕込み、6時間反応させた。得られたカルボン酸含有ポリカーボネートジオールBの水酸基価は112.2mgKOH/g(数平均分子量=1,000)で、酸価は28.1mgKOH/g(カルボン酸含有量=0.5mol/g)であった。
【0026】
スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールの合成
ポリカーボネートジオールCの合成
ポリカーボネートジオールAと同様な反応器に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを296.0部、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量1,000のポリカーボネートジオールを603.2部仕込み、180℃に加温した。温度が180℃に達したところで、テトラブチルチタネートを0.05部仕込み、4時間常圧で脱メタノール反応させた。その後、圧を徐々に0.5mmHgまで減圧し、さらに180℃で2時間させた。メタノールが出なくなったところで、圧を常圧に戻し、1,6−ヘキサンジオールを164.8部仕込み、エステル交換させた。得られたスルホン酸塩エステル含有ポリカーボネートジオールDの水酸基価は112.2mgKOH/g(数平均分子量=1,000)で、スルホン酸塩含有量は、1.0mmol/gであった。
【0027】
ポリカーボネートジオールDの合成
ポリカーボネートジオールAと同様な反応器に、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチルを156.0部、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量3,000のポリカーボネートジオールを789.0部、1,6−ヘキサンジオールを87.0部仕込み、180℃に加温した。温度が180℃に達したところで、テトラブチルチタネートを0.05部仕込み、4時間常圧で脱メタノール反応させた。その後、圧を徐々に0.5mmHgまで減圧し、さらに180℃で2時間させた。得られたスルホン酸塩エステル含有ポリカーボネートジオールCの水酸基価は56.1mgKOH/g(数平均分子量=2,000)で、スルホン酸塩含有量は、0.5mmol/gであった。
【0028】
水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法の合成
実施例1
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、先に合成したポリカーボネートジオールAを92.7部、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量1,000のポリカーボネートジオールを92.7部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次にイソホロンジイソシアネートを82.3部(R=2.0)、ジオクチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にて10時間反応させて、両末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液を得た。その後、トリエチルアミンを9.4部仕込んでカルボン酸を中和した後、水を700部仕込んで転相させ、イソホロンジアミンを29.9部、ジブチルアミンを2.4部仕込んで、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Aを得た。PU−Aの外観は乳白色液体、固形分は30.7%、数平均分子量は26,000であった。
【0029】
実施例2
実施例1と同様な反応装置に、ポリカーボネートジオールBを184.2部、ネオペンチルグリコールを19.2部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートを94.7部(R=0.98)、ジブチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、トリエチルアミンを9.3部仕込んでカルボン酸を中和した後、水を700部仕込んで転相させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Bを得た。PU−Bの外観は乳白色液体、固形分は30.7%、数平均分子量は40,000であった。
【0030】
実施例3
実施例1と同様な反応装置に、ポリカーボネートジオールCを184.9部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、イソホロンジイソシアネート82.1部(R=2.0)、ジブチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にて10時間反応させた。その後、水を700部仕込んで転相させ、イソホロンジアミンを28.3部、ジブチルアミンを4.7部仕込んで、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Cを得た。PU−Cの外観は乳白色液体、固形分は30.0%、数平均分子量は16,000であった。
【0031】
実施例4
実施例1と同様な反応装置に、ポリカーボネートジオールDを200.4部、ネオペンチルグリコールを20.8部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートを76.4部(R=0.97)、ジブチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させた。次に、水を700部仕込んで転相させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Dを得た。PU−Dの外観は乳白色液体、固形分は29.9%、数平均分子量は33,000であった。
【0032】
比較例1
実施例1と同様な反応装置に、ジメチロールプロピオン酸を開始剤とした両末端水酸基含有で数平均分子量1,000のポリカプロラクトンジオールを92.7部、エチレングリコールを開始剤とした両末端水酸基で数平均分子量1,000のポリカプロラクトンジオールを92.7部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、イソホロンジイソシアネートを82.3部(R=2.0)、ジオクチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にて10時間反応させた。その後、トリエチルアミンを9.4部仕込んで、カルボン酸を中和した後、水を700部仕込んで転相させ、イソホロンジアミンを29.9部、ジブチルアミンを2.4部仕込んで、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Eを得た。PU−Eの外観は乳白色液体、固形分は30.7%、数平均分子量は32,000であった。
【0033】
比較例2
実施例1と同様な反応装置に、ジメチロールプロピオン酸を開始剤とした両末端水酸基含有で数平均分子量2,000のポリカプロラクトンジオールを200.4部、ネオペンチルグリコールを20.8部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートを77.5部(R=0.983)、ジブチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させた。次に、水を700部仕込んで転相させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性塗料用ポリウレタンエマルジョンPU−Fを得た。PU−Fの外観は乳白色液体、固形分は30.6%、数平均分子量は58,000であった。
【0034】
比較例3
実施例1と同様な反応装置に、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応で得られた数平均分子量1,000のポリカーボネートジオールを123.8部、ジメチロールプロピオン酸を24.9部、アセトンを300部仕込んでジオール成分を溶解させた。次に、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートを123.3部(R=1.5)、ジブチルチンジラウレートを0.03部仕込み、50℃にて10時間反応させた。その後、トリエチルアミンを18.8部仕込んでカルボン酸を中和した後、水を700部仕込んで転相させ、イソホロンジアミンを24.6部、ジブチルアミンを3.4部仕込んで、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、エバポレーターにて脱アセトンを行い、水性ポリウレタンエマルジョンPU−Gを得た。PU−Gの外観は乳白色液体、固形分は29.4%、数平均分子量は18,000であった。
表1、2に水性ポリウレタンエマルジョンPU−A〜Gを示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003627228
【0036】
【表2】
Figure 0003627228
【0037】
表1、2において
IPDI :イソホロンジイソシアネート
12MDI :水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート
DBTDL :ジブチルチンジラウレート
IPDA :イソホロンジアミン
NPG :ネオペンチルグリコール
DBA :ジブチルアミン
TEA :トリエチルアミン
DMPA−PCL−1000:ジメチロールプロピオン酸を開始剤とした両末端水酸基 で数平均分子量1,000のポリカプロラクトンジオー ル
DMPA−PCL−2000:ジメチロールプロピオン酸を開始剤とした両末端水酸基 で数平均分子量2,000のポリカプロラクトンジオー ル
EG−PCL−2000 :エチレングリコールを開始剤とした両末端水酸基で数平 均分子量2,000のポリカプロラクトンジオール
HG−PCD−1000 :1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートと の脱フェノール反応で得られた数平均分子量1,000 のポリカーボネートジオール
DMPA :ジメチロールプロピオン酸
【0038】
応用実施例1
PU−Aを100に対して、水分散型ポリイソシアネート(商品名:アクアネート−200 日本ポリウレタン工業製)を3部仕込み、均一に混合した後、ポリエチレンコート紙にキャストして、25℃×10分+80℃×1分+25℃×3日の条件でキュアして、キャストフィルムを得た。
【0039】
応用実施例2〜4、応用比較例1〜3
応用実施例1と同様にして、PU−AをPU−B〜に代えて、キャストフィルムを得た。
【0040】
高温高湿試験
得られたキャストフィルムを、JIS K−K−6301の2号ダンベルの形に打ち抜き、試験片を高温高湿試験器にセットした。高温高湿条件は、70℃×95%RHとした。試験片を1週間毎に取り出して、軟化点を測定した。軟化点測定条件は、500g重/c■の荷重にて、昇温速度5℃/分である。軟化温度は、伸びの変化が急に変わるところ
とした。
表2に高温高湿試験結果を示す。
【0041】
【表3】
Figure 0003627228
【0042】
塗料性能試験
応用実施例5
PU−A100部に対して、N−メチル−ピロリドンを8部混合し、クリヤ塗料を配合した。これをアルミ板にドライで膜厚50μになるように塗布し、100℃にて1分間加温し、その後、室温にて3日静置して塗装サンプルを得た。
【0043】
応用実施例5〜8、応用比較例4〜6
応用実施例5と同様にしてPU−B〜Gを用いて塗装サンプルを作成した。
【0044】
得られた塗装サンプルは、密着性、柔軟性を評価した。密着性は、JIS K−5400の碁盤目テープ法、柔軟性は温冷くり返し法にて評価した。実施例5〜8、比較例4〜6の結果を表4に示す。
碁盤目テープ法:
塗膜にカッターガイドを用いてカッターナイフで1mm四方の100個のマス目状に切れ込みを入れ、その上からセロハンテープで圧着し、その後瞬間的にはがし、塗膜のはがれ状態を見た。
10:塗膜のはがれが認められない
8:塗膜のはがれが0〜5%
6:塗膜のはがれが5〜15%
4:塗膜のはがれが15〜35%
2:塗膜のはがれが35〜65%
0:塗膜のはがれが65%以上
温冷くり返し法:
塗膜を−20℃で1時間、50℃で1時間のサイクルで10サイクル後の塗膜外観を評価した
○:塗膜に曇り、白化、割れ等の異常が認められない
×:塗膜に異常が認められる
【0045】
【表4】
Figure 0003627228
【0046】
【発明の効果】
以上説明してきた通り、本発明によって得られた水性ポリウレタン樹脂は、従来の水性ポリウレタン樹脂より耐加水分解性に優れたものとなった。また、本発明によって得られた水性塗料用ポリウレタンエマルジョンを用いた水性塗料も、良好な密着性、柔軟性を発現した。

Claims (4)

  1. 有機溶剤中で、カルボン酸導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオール及び鎖延長剤からなるジオール成分と有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0以下で反応させ、所定分子量に達した後、中和剤にて中和させ、その後水を加えてから脱溶剤させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
    該カルボン酸導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとカルボン酸含有ジオールとのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のカルボン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
  2. カルボン酸導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオールと有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0超〜5.0で反応させて得られるイソシアネート末端のプレポリマーを中和剤にて中和し、その後水中で乳化分散させ、鎖延長剤で高分子量化させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
    該カルボン酸導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとカルボン酸含有ジオールとのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のカルボン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
  3. 有機溶剤中で、スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオール及び鎖延長剤からなるジオール成分と有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0以下で反応させ、所定分子量に達した後、水を加えてから脱溶剤させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
    該スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとスルホン酸塩含有イソフタル酸ジメチルエステル化合物とのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のスルホン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
  4. スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールを含有する数平均分子量500〜5,000のポリカーボネートオールと有機ジイソシアネートを、全イソシアネート基/全水酸基が1.0超〜5.0で反応させて得られるイソシアネート末端のプレポリマーを水中で乳化分散させ、鎖延長剤で高分子量化させる水性塗料用ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
    該スルホン酸塩エステル導入ポリカーボネートジオールが、極性基を含有しないポリカーボネートジオールとスルホン酸塩含有イソフタル酸ジメチルエステル化合物とのエステル交換反応によって合成されるものであり、エマルジョン中のポリウレタン樹脂のスルホン酸塩含有量が、0.1〜1.0mmol/gであることを特徴とする前記製造方法。
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