JP3626622B2 - ポリエステル組成物およびその製造方法、ならびにそれからなるフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は不活性粒子を含有し、ポリエステル中の球状粗大粒子が極めて少なく、表面特性に優れたフィルムを造るのに有用なポリエステル組成物およびその製造方法、ならびにそれからなるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、その優れた力学特性、化学特性を有するため、フィルムや繊維などに広く用いられている。しかしながら、その透明性、光輝性を十分に生かしたフィルムや繊維を製造、加工する場合には、その製造過程、および加工工程において、往々にして工程不良を引き起こしていた。その原因は、多くの場合、摩擦係数が大きいことによる。
【0003】
従来、ポリエステルの摩擦係数を低下させる方法として、ポリエステル中に微粒子を存在させる方法が数多く提案されている。かかる提案は、以下の二つに大別することができる。
▲1▼ポリエステル合成時に使用する触媒などの一部または全部を反応工程で析出させる方法(内部粒子析出方式)
▲2▼炭酸カルシウム、酸化ケイ素などの微粒子を、ポリエステル製造時または製造後に添加する方法(外部粒子添加方式)
【0004】
しかしながら、▲1▼の内部粒子析出方式は、粒子がポリエステル成分の金属塩等であるため、ポリエステルとの親和性はある程度良好であるが、反面反応中に粒子を生成させる方法であるため、粒子量や粒子径のコントロール、あるいは粗大粒子の生成防止などが困難である。
【0005】
一方、▲2▼の外部粒子添加方式は、粒径や添加量などを適切に選定し、さらに粗大粒子を分級等により除去した微粒子を添加すれば、易滑性の面では優れたものとなる。なかでも、粒子が比較的単分散で、かつ球状の形状を有する合成粒子を添加する方法(例えば、特開昭63−191838号公報、特開平1−129038号公報、特開昭63−108037号公報参照)は、フィルムにした際の表面突起の均一性等に優れ、好ましいものである。
【0006】
ところが従来の球状粒子には、その製造工程において微量の粗大粒子が生成したり、あるいは混入するという問題があった。この粗大粒子がポリエステル中に入ると、例えば該ポリエステルをフィルムにした場合、フィルムの表面に粗大突起が形成され、磁気記録媒体としたときにドロップアウトの原因となっていた。
【0007】
特に、この突起は近年の高密度磁気記録媒体用途においては重大な欠陥となっている。粗大粒子の混入は高突起となるため、極めて微量でもフィルムへの影響が大きいのである。
【0008】
特開平8−225717号公報には、ポリエステル組成物中の粗大粒子量を限定する技術が示されているが、球状粗大粒子については開示されておらず、その技術ではフィルムの要求品質を満たすことができなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定の平均粒径を有する不活性粒子を含有するが、球状粗大粒子の極めて少ないポリエステル組成物およびその製造方法、ならびにそれからなるフィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、フィルム表面の粗大突起がポリマー中の極めて微量の球状粗大粒子によること、これが上記問題の原因であることをつきとめ、球状粗大粒子の数を特定値以下にすることにより、上記の問題を解決できることを見出した。本発明者は、かかる知見をもとにさらに研究を続け、本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は、平均粒径が0.005〜0.2μmで粒径の相対標準偏差が0.3以下の範囲内にある不活性粒子を含むポリエステル組成物において、粒子径が0.6μm以上であり、かつ粒径比が1.0〜1.2の範囲内にある球状粗大粒子の存在確率が、該不活性粒子に対して50/100万以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0012】
本発明はさらに、ポリエステルに添加する前記不活性粒子をスラリーに調製し、該スラリーを絶対濾過精度0.6μm以下のフィルターで複数回濾過する工程を含むことを特徴とする、上記ポリエステル組成物の製造方法、ならびにかかるポリエステル組成物よりなるフィルムである。
【0013】
本発明のポリエステル組成物を用いたフィルムにおいて、粗大突起発生が抑制される理由は、フィルムで特に高突起を形成するポリマー中の球状粗大粒子数を特定の値以下にしたことにある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等のような炭素数2〜10のポリメチレングリコール、あるいはシクロヘキサンジメタノールのような脂肪族ジオール等を挙げることができる。
【0015】
本発明におけるポリエステルとしては、例えばアルキレンテレフタレートおよび/またはアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。かかるポリエステルのうちでも、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートをはじめとして、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が好ましい。
【0016】
その際、表面平坦性、乾熱劣化性を損なわない程度であれば、全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の上記の芳香族ジカルボン酸であることができる。また、例えばアジピン酸、セバチン酸等のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸等であることもできる。
【0017】
さらに、全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記のグリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のような脂肪族ジオール、1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンのような芳香環を有する脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のようなポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
【0018】
また、本発明におけるポリエステルには、本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸のような芳香族オキシ酸、ω−ヒドロキシカプロン酸のような脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分およびオキシカルボン酸成分の総量に対し、20モル%以下で共重合あるいは結合するものも含まれる。
【0019】
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量であり、かつ、本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエルスリトール等を共重合したものも含まれる。
【0020】
さらに本発明におけるポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)のような添加剤を必要に応じて含有させることもできる。
【0021】
上記ポリエステルは知られており、公知の方法で製造することができる。上記ポリエステルとしては、ο−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が、0.4〜0.9のものが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリエステルに添加する不活性粒子とは、通常ポリエステルに添加され得るものであれば制限はないが、例えば無機粒子では酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられ、有機粒子では架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、メラミン/ホルムアルデヒド共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、硬化エポキシ樹脂、架橋ポリエステルなどを構成成分とする有機高分子粒子が挙げられる。
【0023】
不活性粒子の形状は球状、例えば粒径比(長径/短径)が1.0〜1.2の範囲内にあるものが好ましく、さらには真球状であるものが好ましい。かかる粒子はフィルムでの滑り性付与に効果的である。
【0024】
本発明における有機高分子粒子の製造法や構造あるいは表面処理等に関しては、本発明の範囲の粒子を得られるものであれば制限はない。製造法については、例えば乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード乳化重合、懸濁重合、分散重合、2段階膨張重合法等を挙げることができる。構造については、例えば有機異種ポリマーの複合粒子(コア/シェル型)、無機/有機の複合粒子(▲1▼有機粒子の表面を無機化合物で被覆、▲2▼金属または金属結合を一部、粒子構造に担持等)、中空粒子等を挙げることができる。また、表面処理については、シランカップリング処理、チタネートカップリング処理等を好ましく挙げることができる。
【0025】
本発明においては、これらの不活性粒子を1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも、ポリマーへの親和性に優れることより有機高分子粒子が好ましく、特に耐熱性にも優れるシリコーン樹脂粒子や架橋ポリスチレン粒子が好ましい。
【0026】
さらに、球状シリコーン樹脂粒子は、その構造等に特に制限はないが、例えば、下記式
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を表す。)
で表わされる結合単位が80重量%以上である球状シリコーン樹脂粒子が好ましい。
【0029】
球状シリコーン樹脂粒子の製造方法は公知であり、例えばオルガノトリアルコキシシランを加水分解し、縮合する方法(例えば特公昭40−14917号あるいは特公平2−22767号等)やメチルトリクロロシランを出発原料とするポリメチルシルセスキオキサン微粒子の製造方法(例えばベルギー国特許第572412号)などが挙げられる。
【0030】
前記式におけるRは、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を表すが、かかるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。また、これらは2種類以上であってもよい。
【0031】
Rが複数の基であるもの、例えばメチル基とエチル基であるものについては、メチルトリメトキシシランとエチルトリメトキシシランの混合物を出発原料として製造することができる。もっとも、製造コストや合成方法の容易さなどを考慮すると、Rがメチル基のシリコーン樹脂微粒子(ポリメチルシルセスキオキサン)粒子が好ましい。
【0032】
かかる球状シリコーン樹脂粒子は、乳化重合、分散重合、ソープフリー乳化重合、シード重合等の方法で製造されるが、なかでも界面活性剤の存在下で製造された粒子が、粗大粒子が少ない点で好ましい。
【0033】
この界面活性剤としては、陰イオン系あるいは非イオン系のものが好ましく、例えば陰イオン系のものとしてはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数は4〜20、好ましくは8〜15)、アルキルサルフェート(アルキル基の炭素数4〜20)、脂肪酸石鹸等が挙げられ、なかでもアルキルスルホン酸ナトリウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを好ましく挙げることができる。
【0034】
また非イオン系のものとしてはポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数は4〜15)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキル基の炭素数は4〜15)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が好ましく例示でき、なかでもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノニルフェノールのエチレンオキシド付加物を好ましく挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、非イオン系のものと陰イオン系のものを併用するのがより好ましい。
【0035】
このような界面活性剤を用いずに、球状シリコーン樹脂粒子を製造した場合、不定形の粗大粒子が多くなり、スラリー調製での濾過工程で目詰まりを発生しやすく好ましくない。
【0036】
さらに、球状架橋ポリスチレン粒子についても、その製法等は限定されるものではない。球状架橋ポリスチレン粒子は、スチレンモノマー、メチルスチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、ジクロルスチレンモノマー等のスチレン誘導体モノマーの他に、ブタジエンの共役ジエンモノマー、アクロニトリルのような不飽和ニトリルモノマー、メチルメタアクリレートのようなメタアクリル酸エステルのモノマー、不飽和カルボン酸のような官能性モノマー、ヒドロキシエチルメタクリレートのようなヒドロキシルを有するモノマー、グリシジルメタクリレートのようなエポキシド基を有するモノマー、不飽和スルホン酸等から選ばれる1種もしくは2種以上のモノマーと、重合体粒子を3次元構造にするための架橋剤として、多官能ビニル化合物、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジアリルフタレート等とを、水溶性高分子が保護コロイドとして溶存した水性媒体中で乳化重合させて、重合体粒子のエマルジョンを調製し、このエマルジョンから重合体粒子を回収して得ることができる。
【0037】
本発明における不活性粒子は平均粒径が0.005〜0.2μmの範囲内にある粒子である。この平均粒径が0.2μmを超えると、後述する絶対濾過精度0.6μm以下のフィルターでの濾過において、目詰まりが発生しやすくなり好ましくない。一方、0.005μm未満では、フィルムの走行性が不十分となり好ましくない。
【0038】
さらに、不活性粒子の粒径の下記式で示される相対標準偏差は0.3以下、特に好ましくは0.12以下である。この相対標準偏差が0.5を超えるように過度に大きいと、フィルムにした際の突起均一性が不十分となり好ましくない。
【0039】
【数1】
【0040】
また不活性粒子の添加量は0.001〜5重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.005〜2重量%である。この添加量が少なすぎるとフィルムにした際の滑り性が悪くなり、一方添加量が多すぎるとポリマー中での分散性が十分でなくなる等の問題が生じる。
【0041】
本発明における球状粗大粒子は、粒子径が0.6μm以上であり、かつ粒径比(最大径/最小径)が1.0〜1.2のものである。そして、その存在確率は、不活性粒子全体に対して50/100万以下(個数単位)である必要がある。この確率が500/100万を超えるように過度に大きいと、フィルムにした際に、球状粗大粒子を起因とする高突起が多く生じることにより、該フィルムをベースとした磁気記録媒体のドロップアウトが発生しやすくなる。
【0042】
本発明における球状粗大粒子の存在確率は、ポリエステル組成物を溶媒で溶解および/または解重合した後に不活性粒子を取出し、該粒子をスラリーとし、公称目開き0.6μmの直孔性メンブレンフィルターで濾過した際の、フィルター上の残査球状粒子数と、濾過に供した不活性粒子の重量を、該粒子の平均粒径および密度をもとに粒子数に換算した値を用いて求める。ここで、平均粒径は面積円相当径より求め、完全球状粒子として個数換算する。
【0043】
本発明における球状粗大粒子の形態としては、例えば単一球状体および微小粒子の造粒/集合球状体等を挙げることができる。
【0044】
本発明の評価に用いるフィルターは、直孔性メンブレンフィルターである必要がある。その他の多孔質状、繊維状等のフィルターでは、フィルター表面でケークが発生したり、球状粗大粒子がフィルター内部に埋没する等の問題点が生じ好ましくない。
【0045】
本発明においてポリエステルに添加する不活性粒子スラリーとしては、不活性粒子合成直後のスラリーをそのまま、あるいは該スラリーの溶媒を有機溶媒で置換した後に、後述のスラリー調製を実施したものでもよい。また、濾過または遠心分離機などで処理して該粒子を取出した後に洗浄や乾燥等を実施し、さらに再度スラリー化したものでもよい。
【0046】
ポリエステル添加用スラリーの分散媒としては特に制限はなく、公知の媒体が使用できる。例えば水、有機溶媒、およびこれらの混合体があげられる。特に、ポリエステル製造時の添加を想定すると、ポリエステルの原料となるグリコール成分、なかでもコスト面よりエチレングリコールが好ましい。
【0047】
また、前記スラリーの濃度は40重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。この濃度が40重量%より高いとスラリーの粘度が高くなり、実質的に濾過が困難となり好ましくない。なお、このスラリーには本発明の効果を妨げない範囲で分散剤、消泡剤等を含有させてもよい。
【0048】
前記スラリー中の球状粗大粒子の数を減少させる方法としては、特に制限はないが、分級、前段濾過(プレ濾過)などの公知のスラリー調製方法が用いられる。これらの調製法は各々の方法を単回行っても複数回行ってもよい。あるいは各々の方法を複合して繰り返し実施してもよい。この操作は、後述する絶対濾過精度0.6μm以下のフィルターでのスラリー調製にいたる前調製として実施することが好ましい。なお、該スラリーは凝集体や不定形粒子を含んでいる場合があり、その際は分散、解砕等の処理を併用した方がよい。
【0049】
絶対濾過精度0.6μm以下のフィルターによるスラリー濾過調製は、球状粗大粒子の除去に有効であり、複数回濾過処理をすることが粗大粒子低減のために好ましい。ここでの絶対濾過精度は、グラスビーズ通過試験またはANSI B93,31−1973に基づく試験法による。
【0050】
本発明において不活性粒子をポリエステル組成物に分散含有させる時期は任意でよい。ポリエステル製造工程では、例えばテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸などを原料とする直接重合法のエステル化段階、あるいはジメチレンテレフタレートやジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを原料とするエステル交換法のエステル交換時期に、不活性粒子スラリーを添加する方法が挙げられる。また、例えばベント式押出し機を用い、溶融したポリエステルと水あるいは有機溶媒などの分散媒に分散させた不活性粒子スラリーとを押出し機内で混合し、気化した分散媒をベントを介して除去する方法などが挙げられる。
【0051】
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ポリエステル中にその他の不活性粒子を添加して、組み合わせて用いてもよい。これらの粒子としては、例えば酸化珪素、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、酸化ジルコニウム、カーブンブラック、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、メラミン/ホルムアルデヒド共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、硬化エポキシ樹脂、架橋ポリエステル等があげられる。前記アルミナとしては結晶形態として種々のものをとることができるが、α型、γ型、θ型、δ型、κ型のアルミナが好ましく、特にγ型、θ型、δ型のアルミナが好ましい。
【0052】
本発明のポリエステル組成物をフィルムに適用する場合、公知の方法が適用できる。例えばポリエステルを溶融押出し、急冷して未延伸フィルムを得、次いて該未延伸フィルムを2軸方向に延伸し、熱固定し、必要であれば弛緩熱処理することによって製造できる。その際のフィルムの表面特性、密度、熱収縮率等の物性は、延伸条件およびその他の製造条件により変化するので、必要に応じ、適宜選択する。
【0053】
このフィルムは単層フィルムでもよいが、前記ポリエステル組成物を含有する層を少なくとも片面に積層した積層フィルムでもよい。また、フィルムは延伸フィルム、特に2軸延伸フィルムであることが好ましい。特に、本発明のポリエステル組成物は球状粗大粒子が極めて少ないという特徴を生かし、磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの製造に最も好ましく使用できる。
【0054】
フィルムの製造方法としては、例えば未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+60)℃の温度(ただし、Tgはポリエステルのガラス転移点温度を表す)で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg〜(Tg+70)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸させるとよい。さらに、必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。全延伸倍率は面積延伸倍率として9倍以上が好ましく、12〜35倍がさらに好ましく、15〜30倍が特に好ましい。また、2軸延伸フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度(但し、Tmはポリエステルの融点を表す)で熱固定することができ、例えば180〜250℃の温度で熱固定することが好ましい。熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0055】
【実施例】
本発明における種々の物性値や特性は、以下のようにして測定されたものであり、そのように定義される。
【0056】
1)粒子の平均粒径
▲1▼粉体からの場合
電顕試料台上に、粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないように散在させ、金スパッター装置により、この表面に金薄膜蒸着層を厚み20nm〜30nmで形成させる。これを走査型電子顕微鏡にて20,000〜100,000倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子の長径、短径、および面積円相当径を求める。そして、これらの値から平均粒径を算出する。
【0057】
▲2▼フィルム中の粒子の場合
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッタリング装置(JFC−1100形イオンエッチング装置)を用いてフィルム表面にイオンエッチング処理を施す。処理条件は、ベルジャー内に試料を置き、約10−3Torrの真空状態まで真空度を上げ、電圧0.25KV、電流12.5mAにて約10分間イオンエッチングを行う。
さらに、同装置にてフィルム表面に金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて20,000〜100,000倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子の長径、短径、および面積相当径を求める。そして、これらの値から平均粒径を算出する。
【0058】
2)ポリマー中の球状粗大粒子の存在確率
▲1▼ポリマー解重合法
球状粒子を含有するポリマーを適量サンプリングし、エチレングリコール(ポリマー成分が残留する場合はトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールを使用)を過剰に加え、解重合を行う。次に、遠心分離または濾過にて粒子を取出し、エタノールにて該粒子の洗浄を十分に行う。次に、取出した粒子をエタノールに希釈分散させ、直孔性メンブレンフィルター(公称目開き0.6μm:野村マイクロサイエンス製ニュークリアポアフィルター)を用いて濾過する。濾過が終了した時点で、さらにエタノールでフィルター表面を洗浄濾過する。なお、濾過速度が遅い場合は超音波分散処理を併用してもよい。濾過後、フィルターを乾燥し、フィルターに金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて1000〜4000倍で観察し、フィルター上の球状粒子のみをカウントする。
濾過に使用した粉体重量を該粒子の平均粒径および密度より個数換算して、
(フィルター上の球状粒子数)/(濾過に使用した全粒子個数)により存在確率を求める。
【0059】
▲2▼ポリマー溶解法
球状粒子を含有するポリマーを適量採取し、これにE−sol液(1,1,2,2−テトラクロルエタン:フェーノール=40:60wt%)を過剰に加え、撹拌しつつ120〜140℃まで昇温し、約3〜5時間保持し、ポリエステルを溶解させる。ここで、結晶化部分などが溶解しない場合は、一度、加温されたE−sol液を急冷した後、再度、前述の溶解作業を行う。次に遠心分離または濾過にて粒子を取出し、E−sol液にて粒子に残留するポリマー成分を除去した後、有機溶媒に希釈分散させ、直孔性メンブレンフィルター目開き(公称目開き0.6μm:野村マイクロサイエンス製ニュークリアポアフィルター)を用いて濾過を行う。なお、濾過速度が遅い場合は超音波分散処理を併用してもよい。濾過が終了した時点でさらに有機溶媒でフィルター表面を洗浄濾過する。濾過後、フィルターを乾燥し、フィルターに金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて1000〜4000倍で観察し、フィルター上の球状粒子のみをカウントする。存在確率については前記▲1▼と同様の手法で求める。
【0060】
3)球状粗大粒子の粒径比
2)で取出した球状粗大粒子を、走査型電子顕微鏡にて5,000〜50,000倍で観察し、最大径と最小径を求め、これから粒径比(最大径/最小径)を求める。
【0061】
4)フィルムでの粗大突起数の評価
フィルム表面にアルミニウムを蒸着し、微分干渉顕微鏡にて目視観察し、最長径1μm以上の突起数を測定した。測定面積は0.25cm2で評価した。
[4段階判定]
◎ 0〜3個 粗大突起数が少なく、非常に良好
○ 3超〜10個 粗大突起数が普通
△ 10超〜20個 粗大突起数が多い
× 20個超 粗大突起数が非常に多い
【0062】
[実施例1]
(1)球状シリコーン樹脂粒子のスラリー化
メチルトリアルコキシシランを原料とし、乳化剤としてノニルフェノールのエチレンオキシド付加物とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用い、水溶液中にて反応合成されたシリコーン樹脂粒子(平均粒径0.17μm、相対標準偏差0.30)約10Kgを用い、これにエチレングリコール約90Kgを加え、吸引分散攪拌機にて2時間攪拌分散処理を行った後、媒体攪拌型粉砕機にてスラリーを2時間高流量自循処理を行った。その後、目開き2μmのプリーツタイプフィルターにて1回濾過処理(プレ濾過)を行い、スラリーの前調製とした。この前調製スラリーにつき、さらに、絶対濾過精度0.5μmのフィルターで5回連続パス処理を実施した。
【0063】
(2)球状シリコーン樹脂粒子含有マスターポリマーの製造
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料として、常法により、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜燐酸を加え、さらにエステル交換反応末期に上記(1)で調製した球状シリコーン樹脂粒子スラリーを、該粒子として0.2重量%(ジメチルテレフタレートに対し)相当量加え、続いて重合反応を行い、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0064】
(3)ポリエステルのフィルム化
(2)で得られた球状シリコーン樹脂粒子含有マスターポリマーのペレットと、滑剤を含まないポリエチレンテレフタレートペレットとを表1に示す含有量となる割合で混合した。これらを170℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度280〜300℃で溶融した。この溶融ポリマーを1mmのスリット状ダイを通して表面温度20℃の回転冷却ドラム上に押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを75℃に予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒーター1本にて加熱して3.6倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、105℃にて横方向に3.7倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを205℃の温度で5秒間熱固定し、厚み15μmの熱固定二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0065】
[比較例5]
スラリー調製での絶対濾過精度0.5μmのフィルターでの濾過処理回数を1パスへ変更する以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
ジメチルテレフタレートの代わりにメチル−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いて球状シリコーン樹脂粒子含有マスターポリマーの製造およびポリエステルのフィルム化を実施した。回転冷却ドラムの表面温度を60℃、縦延伸時の予熱温度を120℃、赤外線ヒーターの表面温度を950℃、横延伸温度を125℃、さらに熱固定温度を215℃で10秒間とする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0067】
[実施例4]
(1)アルミナのスラリー化
不活性粒子として平均粒径0.22μmのアルミナ(結晶形態θ型)を用いる以外は実施例1と同じように行ってアルミナスラリーを調製した。
【0068】
(2)アルミナ含有マスターポリマーの製造
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料として、常法により、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜燐酸を加え、さらにエステル交換反応末期に上記(1)で調製したスラリーを、該粒子として1.0重量%(ジメチルテレフタレートに対し)相当量加え、続いて重合反応を行い、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0069】
(3)ポリエステルのフィルム化
ポリエステルのフィルム化において、実施例1で得られた球状シリコーン樹脂粒子含有マスターポリマーと、上記(2)で調製したマスターポリマーと、滑剤種を含まないポリエチレンテレフタレートとを表1に示す含有量となる割合で混合する以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0070】
[実施例5]
(1)球状シリカのスラリー化
不活性脂粒子として平均粒径0.1μmの球状シリカ(相対標準偏差=0.12)を用いる以外は実施例1と同様に行って球状シリカのスラリーを調製した。
【0071】
(2)球状シリカ含有マスターポリマーの製造
上記(1)で調製した球状シリカスラリーを、該粒子として1.0重量%(ジメチルテレフタレートに対し)相当量加える以外は実施例1と同様に行って、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0072】
(3)ポリエステルのフィルム
ポリエステルのフィルム化において、実施例1で得られた球状シリコーン樹脂粒子含有マスターポリマーと、上記(2)で調製したマスターポリマーと、滑剤種を含まないポリエイレンテルフタレートとを表1に示す含有量となる割合で混合する以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0073】
[比較例6]
不活性粒子を架橋ポリスチレン粒子(平均粒径=0.18μm、相対標準偏差0.5)に変更し、スラリー調製の際のスラリー濃度を約5重量%とし、さらに架橋ポリスチレン粒子のポリエステル中での含有量を0.01重量%にする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0074】
[実施例7]
不活性粒子をシリカ粒子(平均粒径=0.10μm、相対標準偏差0.15)に変更し、スラリー化の際の媒体攪拌型粉砕機による処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
スラリー調製での絶対濾過精度0.5μmのフィルターでの濾過処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。なお、球状粗大粒子の粒径比は1.08であった。
【0076】
[比較例2]
スラリー調製での目開き2μmのプリーツタイプフィルター(プレ濾過)および絶対濾過精度0.5μmのフィルターでの濾過処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。なお、球状粗大粒子の粒径比は1.08であった。
【0077】
[比較例3]
スラリー調製での目開き2μmのプリーツタイプフィルター(プレ濾過)および絶対濾過精度0.5μmのフィルターでの濾過処理を行わない以外は、実施例6と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。なお、球状粗大粒子の粒径比は1.10であった。
【0078】
[比較例4]
スラリー調製での目開き2μmのプリーツタイプフィルター(プレ濾過)および絶対濾過精度0.5μmのフィルターでの濾過処理を行わない以外は、実施例7と同様にしてフィルムを得た。得られたポリマー特性およびフィルム特性を表1に示す。なお、球状粗大粒子の粒径比は1.01であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
表1に示すように、ポリマー中の球状粗大粒子を特定の値以下にしたポリエステル組成物を用いたフィルムは、粗大突起が極めて少なく、磁気記録媒体のベースフィルムとして特に有用である。
Claims (7)
- 平均粒径が0.005〜0.2μmで粒径の相対標準偏差が0.3以下の範囲内にある不活性粒子を含むポリエステル組成物において、粒子径が0.6μm以上であり、かつ粒径比(最大径/最小径)が1.0〜1.2の範囲内にある球状粗大粒子の存在確率が、該不活性粒子に対して50/100万以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 前記不活性粒子の含有量が0.001〜5重量%である、請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 前記不活性粒子の形状が球状である、請求項1または請求項2に記載のポリエステル組成物。
- 前記不活性粒子が有機高分子粒子である、請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- ポリエステル組成物がポリアルキレンテレフタレートおよび/またはポリアルキレンナフタレートからなる組成物である、請求項1から請求項4のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 請求項1から請求項5のいずれかに記載のポリエステル組成物を製造する方法であって、ポリエステルに添加する前記不活性粒子の粒径の相対標準偏差が0.3以下であり、かつ前記不活性粒子をスラリーに調製し、該スラリーを絶対濾過精度0.6μm以下のフィルターで複数回濾過する工程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項1から請求項5のいずれかに記載のポリエステル組成物よりなるフィルム。
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