JP3626337B2 - ハロゲン化銀粒子及び写真感光材料並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関し、詳しくは金属錯体を含有することによって、高感度化及び/または照度不軌が改善されることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ということもある。)において、一般に用いられるドーパントとしては、正八面体型の六配位金属錯体がよく知られている。ここで、「ドーパント」とはハロゲン化銀結晶中に銀、またはハライドイオン以外に含ませる微量の不純物を指す。特に、中心金属が遷移金属である金属錯体は、ドーパントとしてはハロゲン化銀乳剤の改質を目的に多数の研究がなされている。
【0003】
写真の相反則が成立する場合(すなわち、相反則不軌が全くない場合)、写真乳剤の感度は、露光強度と露光時間の各値に関係なくそれらの積が同じ値であれば一定になる。
【0004】
本発明において、高照度相反則不軌は、露光量は同等であるが、露光時間が異なる場合に、写真乳剤の感度が露光時間が短いほど低くなる現象を意味する。同様に、低照度相反則不軌は、露光量が同等であるが、露光時間が異なる場合に、写真乳剤の感度が露光時間が長いほど低くなる現象を意味する。
【0005】
リサーチディスクロージャー第308118、I〜D章には、粒子核形成時、粒子成長時に導入された金属が、ドーパントとして粒子に入り、それらのレベル及び粒子内の位置に依存して写真性能を変えることができる、と述べられている。
【0006】
遷移金属化合物をハロゲン化銀粒子形成中に添加した場合と、ハロゲン化銀粒子の沈澱後に添加した場合とでは、ハロゲン化銀乳剤における遷移金属化合物の写真効果に顕著な差があることが知られている。前者の場合、遷移金属化合物はハロゲン化銀粒子の中にドーパントとして取り込まれ、その量はごくわずかにもかかわらず、写真性能を効果的に変えることが一般的に知られている。後者の場合、遷移金属化合物は粒子表面に吸着されるが、しばしば解膠剤との相互作用で粒子に近づくことができないことが多い。粒子形成後に遷移金属化合物を添加して、遷移金属化合物がハロゲン化銀粒子内部に取り込まれている場合と同じ効果を得るためには、より高濃度の遷移金属化合物を添加する必要がある。
【0007】
ハロゲン化銀粒子の形成中に乳剤に添加する金属ドーピングと、ハロゲン化銀粒子の形成後に乳剤に遷移金属化合物を添加することによる金属増感剤との技術上の差異については、粒子の沈澱中に導入される遷移金属化合物についてリサーチディスクロージャー第17643のIA章に記載があり、また化学増感中に導入される遷移金属化合物については同リサーチディスクロージャーIIIA章に記載がある。
【0008】
米国特許第4,126,472号には、ハロゲン化銀1モル当たり10−6から10−4モルの水溶性イリジウム塩の存在下でハロゲン化銀乳剤を熟成し、イリジウムを粒子表面改質剤として用いることが開示されている。しかしながら、ここでは四配位金属錯体の記載はない。
【0009】
欧州特許第242,190号には、3、4、5または6個のシアン化合物配位子を有する3価のロジウムのうち1種以上の錯体化合物の存在下で生成するハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤における高照度不軌の減少が開示されている。
【0010】
米国特許第3,690,888号には、多価金属イオンを含有するハロゲン化銀の製法において主としてアクリル系ポリマーからなる解膠剤の存在下にハロゲン化銀粒子を作る工程を含む方法が開示されている。多価金属イオンとして、特に、ビスマス、イリジウム、鉛、及び/またはオスミウムイオンが挙げられているが、四配位金属錯体に関する記載はない。
【0011】
これらの開示においては、遷移金属とともに配位子が粒子中に取り込まれることを明瞭に示し、遷移金属化合物の配位子に規定やその効果を記載するものではなかった。
【0012】
一方、米国特許第4,835,093号、4,933,272号、4,981,781号、5,037,732号、4,937,180号、4,945,035号等には、金属イオンと配位錯体を形成できる配位子が、粒子結晶構造に入ることができ、遷移金属イオン単独の組み込みによっては実現されない写真性能の改良を行うことができることが実証されている。
【0013】
欧州特許336,425号、同336,426号、特開平2−20853号、同2−20854号には、少なくとも四つのシアン配位子を有する六配位のレニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウム金属錯体の存在下において調製される、感度、階調及び経時安定性に優れ、且つ低照度不軌が改良されたハロゲン化銀乳剤が記載されている。
【0014】
また、欧州特許336,427号、特開平2−20852号には、ニトロシル又はチオニトロシル配位子を含む六配位のバナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、レニウム及びイリジウム金属錯体により中照度感度を低下させることなく低照度相反則不軌が改良されたハロゲン化銀乳剤が記載されている。
【0015】
更に欧州特許336,689号、特開平2−20855号には、六配位のレニウム錯体の配位子が、ハロゲン、ニトロシル、チオニトロシル、シアン、水、チオシアンの組み合わされた金属錯体により感度が制御され、低照度相反則不軌が改良された乳剤が開示されている。
【0016】
更にまた特開平3−118535号には六配位金属錯体の一つの配位子がカルボニルである遷移金属錯体、同3−118536号には六配位の金属錯体の二つの配位子が酸素である遷移金属錯体を内部に含有する乳剤が、写真性能について有効であることが開示されている。
【0017】
米国特許5,132,203号には、少なくとも四つのシアン配位子を有する六配位のVIII族金属錯体を亜表面に含有し、20〜350Åの粒子表面層には該錯体を含まない平板状粒子は高感度であることが開示されている。更に欧州特許508,910号には、六シアノ鉄錯体を亜表面にドープし、20〜350Åに表面層には該鉄錯体を含有せず、且つ増感色素を添加して色増感したハロゲン化銀乳剤が開示されている。これらの特許では六シアノ錯体は、粒子表面近くに存在させた方が感度が高いが、粒子表面には存在させない方がよいことを教示するものである。即ち、六配位シアノ金属錯体を粒子にドープする際、そのドープ位置はハロゲン化銀粒子の亜表面がよいが、表面そのものに錯体が存在した場合に、高感度を得る方法については全く開示されていない。
【0018】
六配位シアノ金属錯体とゼラチンとの相互作用により発生するシアンは、金イオンと安定な金シアノ錯体を形成して乳剤媒体中に安定に存在する。このため、金イオンはもはや、粒子表面に吸着することが困難となり化学増感による写真効果が低下することから、六配位シアノ金属錯体はハロゲン化銀粒子の亜表面にドープされてきたが、十分な感度を得ることができていなかった。
【0019】
特開平6−242537号には、ハロゲン化銀に六配位シアノ金属錯体をドープする工程において、ドープ中の一部、あるいは全てで、pHの値を7.0以上にすることにより、該錯体を粒子表面に存在させながら、その効果を最大限に引き出している。特開平6−289512号には、ハロゲン化銀に六配位シアノ金属錯体をドープする工程、及びそれ以後にアミノ基、またはカルボキシル基を無効にしたゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン、エステル化ゼラチン)、または酸化処理ゼラチンを存在させることにより、高感度を得る方法が開示されている。特開平8−29905号には、ハロゲン化銀粒子がゼラチンとシアノ錯体との反応を阻害する化合物、例えば亜鉛、セシウム、銅、鉛、カルシウム、バリウム、または、マグネシウムの塩の存在下で粒子形成をさせ高感度を得る方法が開示されている。
【0020】
しかしながら、これらの方法でも十分ではなく、また、これらの開示例では金属錯体の配位子の数を四配位に変更することにより、粒子表面に遷移金属化合物をドープし高感度を得る方法については全く触れられていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハロゲン化銀乳剤に四配位金属錯体をハロゲン化銀粒子中にドープすることにより、高感度及び/または照度不軌が改良されたハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の構成によって解決される。
1.支持体上に少なくとも一種のハロゲン化銀粒子を含む感光性層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、前記感光性層の少なくとも一種に含有されるハロゲン化銀粒子が、下記一般式(I)で表される四配位金属錯体を含有し、該ハロゲン化銀粒子が、イリジウム化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(I) (Z1)n[ML4](Z2)m
式中、Mは元素周期表の第4周期、第5周期、及び第6周期の鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金から選択される中心金属を、Lは配位子を、Z1はカウンターカチオンを、Z2はカウンターアニオンを、m,nはZ1,Z2が金属錯体の総電荷を中和させるに必要な数を表すものとする。
2.四配位金属錯体の配位子の少なくとも一つが、シアノ基であることを特徴とする前記1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
3.四配位金属錯体の少なくとも一つが、有機配位子によって占められていることを特徴とする前記1又は2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に使用される四配位金属錯体としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
一般式(I) (Z1)n[ML4](Z2)m
式中、Mは中心金属を、Lは配位子を、Z1はカウンターカチオンを、Z2はカウンターアニオンを、m,nはZ1,Z2が金属錯体の総電荷を中和させるに必要な数を表すものとする。以下、一般式(I)について詳細に説明する。
【0025】
式中、Mの中心金属としては、元素周期表の第4周期、第5周期、及び第6周期の鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金から選択される遷移金属であり、好ましくはニッケル、パラジウム、白金である。特に好ましくは、白金、パラジウムである。
【0026】
式中Lの配位子としては、カルボニル、アクア、アミン、トリフェニルホスフィンのような中性の配位子でもよいし、ハロゲン化物、シアノ、ニトロ、ヒドリド、ニトリト、スルフィト、アミド、アジド、シアナト、チオシアン、のようなアニオン性の配位子でもよい。また、ピリジン、ピラジン、ビピリジン、ピラゾール、イミダゾールのような有機配位子でもよい。特に、好ましくはシアノである。
【0027】
式中、Z1としてはプロトン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。Z2としてはハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等)、硝酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン等が挙げられ、好ましくはハロゲンイオンである。
【0028】
以下に、本発明で使用される四配位金属錯体の代表的な具体例を示す。
I−1 K2[PdII(CN)4]
I−2 K2[PdIICl4]
I−3 K2[PdIIBr4]
I−4 K2[PdII(NO2 )4]
I−5 K2[PdII(SCN)4]
I−6 K2[PtII(CN)4]
I−7 K2[PtIICl4]
I−8 K2[PtIIBr4]
I−9 K2[PtIII4]
I−10 K2[PtII(NO2)4]
I−11 K2[PtII(SCN)4]
I−12 [PtIICl(NO2)(NH3)2]
I−13 trans−[PtIICl2(NH3)2]
I−14 cis−[PtIICl2(NH3)2]
I−15 K2[CoII(NCO)4]
I−16 K2[CoIICl4]
I−17 [CoIICl2(H2O)2]
I−18 K2[NiII(CN)4]
I−19 K2[NiIICl4]
I−20 K2[NiII(SCN)4]
I−21 K[AuIII(CN)4]
I−22 K[AuIIICl4]
I−23 K[AuIIII4]
I−24 K[PtII(CN)3(py)] pyはピリジンである。
【0029】
I−25 K[PdII(CN)3(py)]
I−26 K[PtII(CN)3(bpy)] bpyはビピリジンである。
【0030】
I−27 K[PdII(CN)3(bpy)]
I−28 K[PtII(CN)3(pyz)] pyzはピラジンである。
【0031】
I−29 K[PdII(CN)3(pyz)]
I−30 [PtII(CN)(py)3]Cl
I−31 [PtII(CN)(pyz)3]Cl
I−32 [PtII(pyz)4 ]Cl2
I−33 [FeII(py)4 ]Cl2
I−34 [PdII(py)4 ]Cl2
I−35 [CoII(py)4 ]Cl2
I−36 [AgI(py)4]Cl
【0032】
本発明に用いられるイリジウム化合物には、例えば、特公昭43−4935号、同45−32738号の各公報に記載されている従来公知の化合物を用いることができ、具体的には三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、四塩化イリジウム、四臭化イリジウム、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム、へキサブロモイリジウム(III)酸カリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸カリウム等が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用でもよい。
【0033】
本発明により、高感度な写真乳剤が得られる原因は定かではないが、一つの説明として以下のような推定機構が考えられる。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤粒子中にドープされた本発明の四配位金属錯体は、六配位シアノ錯体と同様に浅い電子トラップを与える。これは、電子吸引性の大きな置換基を配位子として導入することにより、繊維金属化合物のd軌道の配位子場分裂におけるバンドギャップが大きくなり、金属錯体の最低空軌道(LUMO)がハロゲン化銀のCB近傍に存在するようになるためである。本発明の四配位金属錯体が、ドープされた乳剤粒子においては光電子は一時的にこの浅い電子トラップに捕獲される。
【0035】
光が粒子によって吸収されると正孔と電子の対が形成され、電子は粒子の結晶構造内を自由に動き回ることができる。シアノ配位子は、配位子場分裂が大きく浅い電子トラップを与えやすく、そのため高感度乳剤を与えやすい。本発明の四配位金属錯体がドープされた乳剤粒子においても、配位子の選択により浅い電子トラップの機能を付与することができるため、光電子は一時的にこの浅い電子トラップに捕獲される。本発明のように浅い電子トラップが高濃度に存在する場合には、電子が浅い電子トラップから出てきても、再び近くにある浅い電子トラップに捕獲される確率が高い。このように、光電子は浅いトラップに出たり入ったりしながら、比較的長い寿命を持つことが可能となり、これによって、銀核形成、すなわち潜像形成に寄与する確率を上げることができる。このように、潜像形成のために電子を粒子内にとどめることによって、乳剤の感度を増加させることができる。
【0036】
本発明の四配位金属錯体のd軌道レベルは、六配位シアノ錯体よりも、さらにハロゲン化銀のCBに近い位置にあると考えられ、六配位シアノ錯体よりも高感度が得られると考えられる。
さらに、照度不軌についても、本発明の四配位金属錯体を用いることにより、理由は不明であるが、六配位シアノ錯体よりも改善されることが見出された。
【0037】
四配位金属錯体のハロゲン化銀粒子中の濃度分布は添加銀量で50%以上で高い方が好ましく、該錯体を高濃度に含有する表面層の粒子全体に対する比率は50%以下がよく、好ましくは30%がよく、より好ましくは20%以下である。また、四配位金属錯体の濃度は、好ましくは1×10−8〜5×10−4モル/銀モル、より好ましくは1×10−6〜5×10−5モル/銀モルである。四配位金属錯体はハロゲン化銀粒子中で浅いトラップとなって露光で発生した電子を捕獲するので、該錯体が粒子の内部に存在すると潜像が粒子内部に形成される可能性が高くなる。写真乳剤粒子では内部潜像形成型乳剤(例えば、オートポジ乳剤)を除けば殆どの乳剤は潜像を粒子表面に形成するため、本発明での錯体はできるだけ粒子表面近くに存在する方が高い感度を得るのに有利である。
【0038】
四配位金属錯体のハロゲン化銀粒子中のドープ量、ドープ率については、ドープされた該錯体の中心金属を原子吸光法、ICP法(Inductively Coupled Plasma Spectrometry; 誘導結合高周波プラズマ分光分析法)及びICPMS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry; 誘導結合プラズマ質量分析法)等を用いることにより定量することができる。
【0039】
次に、本発明に用いるハロゲン化銀粒子について説明する。
本発明のハロゲン化銀粒子は、臭化銀、塩化銀、沃化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀である。それ以外の銀塩、例えばロダン銀、硫化銀、セレン化銀、炭酸銀、リン酸銀、有機酸銀が別粒子として、あるいはハロゲン化銀粒子の一部分として含まれていてもよい。現像、脱銀、(漂白、定着及び漂白定着)工程の迅速化が望まれる時には塩化銀含有量が多いハロゲン化銀粒子が望ましい。また適度に現像を抑制させる場合には沃化銀を含有することが好ましい。好ましい沃化銀含量は目的の感光材料によって異なる。例えばX−ray感材では0.1〜15モル%、グラフィックアーツ及びマイクロ感材では0.1〜5モル%が好ましい範囲である。カラーネガに代表される撮影感材の場合には好ましくは、1〜30%の沃化銀を含むハロゲン化銀粒子であり、さらに好ましくは5〜20モル%、特に好ましくは8〜15モル%である。沃臭化銀粒子に塩化銀を含有させるのは格子ひずみを緩和させる上で好ましい。
【0040】
本発明のハロゲン化銀粒子はその粒子中に、特公昭43−13162号、特開昭61−215540号、同60−222845号、同60−143331号、同61−75337号などに開示されているような粒子の内部と表層が異なるハロゲン組成を有するコア−シェル型あるいは二重構造型の粒子であることが好ましい。また単なる二重構造でなく、特開昭60−222844号に開示されているような三重構造、あるいはそれ以上の多層構造にすることや、コア−シェルの二重構造の粒子の表面に異なる組成を有するハロゲン化銀を薄くつけたりすることができる。
【0041】
2つ以上のハロゲン化銀が混晶として、あるいは構造をもって存在するハロゲン化銀の場合に粒子間のハロゲン組成分布を制御することが重要である。粒子間のハロゲン組成分布の測定法に関しては特開昭60−254032号に記載されている。粒子間のハロゲン分布が均一であることは望ましい特性である。特に変動係数20%以下の均一性の高い乳剤は好ましい。別の好ましい形態は粒子サイズとハロゲン組成に相関がある乳剤である。例として大サイズ粒子ほどヨード含量が高く、一方、小サイズほどヨード含量が低いような相関がある場合である。目的より逆の相関、他のハロゲン組成での相関を選ぶことができる。この目的のために組成の異なる2つ以上の乳剤を混合させることが好ましい。
【0042】
ハロゲン化銀粒子の表面近傍のハロゲン組成を制御することは重要である。表面近傍の沃化銀含量を高くする、あるいは塩化銀含量を高くすることは、色素の吸着性や現像速度を変えるので目的に応じて選ぶことができる。表面近傍のハロゲン組成を変える場合に、粒子全体を包み込む構造でも、粒子の一部分にのみ付着させる構造のどちらも選ぶことができる。例えば(100)面と(111)面からなる14面体粒子の一方の面のみハロゲン組成を変える、あるいは平板粒子の主平面と側面の一方のハロゲン組成を変える場合である。
【0043】
本発明のハロゲン化銀粒子は双晶面を含まない正常晶でも、日本写真学会編、写真工業の基礎、銀塩写真編(コロナ社)、P.163に解説されているような例、例えば双晶面を一つ含む一重双晶、平行な双晶面を2つ以上含む平行多重双晶、非平行な双晶面を2つ以上含む非平行多重双晶などから目的に応じて選んで用いることができる。また形状の異なる粒子を混合させる例は米国特許第4,865,964号に開示されているが、必要によりこの方法を選ぶことができる。正常晶の場合には(100)面からなる立方体、(111)面からなる八面体、特公昭55−42737号、特開昭60−222842号に開示されている(110)面からなる12面体粒子を用いることができる。さらに、Journalof Imaging Science、30巻、247頁、1986年に報告されているような(211)を代表とする(hll)面粒子、(331)を代表とする(hhl)面粒子、(210)面を代表とする(hk0)面粒子と(321)面を代表とする(hkl)面粒子も調製法に工夫を要するが、目的に応じて選んで用いることができる。(100)面と(111)面が一つの粒子に共存する14面体粒子、(100)面と(110)面が共存する粒子など、2つの面あるいは多数の面が共存する粒子も目的に応じて選んで用いることができる。粒子の撮影面積の円相当直径を粒子厚みで割った値をアスペクト比と呼び、平板状粒子の形状を規定している。アスペクト比が1より大きい平板状粒子は本発明のハロゲン化銀粒子として使用できる。平板状粒子は、クリーブ著「写真の理論と実際」(Cleve,Photography Theory and Practice(1930)、131頁;ガトフ著、フォトグラフィク・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographicc Science and Engineering)、第14巻、248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同第4,414,310号、同第4,433,048号、同第4,439,520号及び英国特許第2,112,157号などに記載の方法により調整することができる。平板状粒子を用いた場合、被覆力が上がること、増感色素による色増感効率が上がることなどの利点があり、先に引用した米国特許第4,434,226号に詳しく述べられている。粒子の全投影面積の80%以上の平均アスペクト比として、1以上100以下が望ましい。より好ましくは2以上20以下であり、特に好ましくは3以上10以下である。平板状粒子の形状として三角形、六角形、円形などを選ぶことができる。米国特許第4,797,354号に記載されているような六辺の長さがほぼ等しい正六角形は好ましい形態である。
【0044】
平板状粒子の粒子サイズとして粒子の投影面積の円相当直径を用いることが多いが、米国特許第4,748,106号に記載されているような平均直径が0.6μm以下の粒子は高画質化にとって好ましい。また平板状粒子の形状として粒子厚みを0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下に限定するのは鮮鋭度を高める上で好ましい。さらに特開昭63−163451号に記載されている粒子の厚みと双晶面の面間距離を規定した粒子も好ましいものである。
【0045】
また、粒子サイズ分布の狭い単分散の平板状粒子を用いるとさらに好ましい結果が得られることがある。米国特許第4,797,354号及び特開平2−838号には平板化率が高く単分散の六角平板状粒子の製造法が記載されている。また、欧州特許第514,742号にはポリアルキレンオキサイドプロックコポリマーを用いて粒子サイズ分布の変動係数が10%未満の平板状粒子を製造する方法についての記載がある。これらの平板状粒子を本発明に用いることは好ましい。さらに、粒子厚みの変動係数が30%以下の厚みの均一性が高い粒子も好ましい。
【0046】
平板状粒子の場合には透過型の電子顕微鏡により転位線の観察が可能である。転位線を全く含まない粒子、数本の転位を含む粒子あるいは多数の転位を含む粒子を目的に応じて選ぶことは好ましい。また粒子の結晶方位の特定の方向に対して直線的に導入された転位あるいは曲った転位を選ぶこともできるし、粒子全体に渡って導入する、あるいは粒子の特定の部分にのみ導入する、例えば粒子のフリンジ部に限定して転位を導入する、などの中から選ぶことができる。転位線の導入は平板状粒子の場合だけでなく正常晶粒子あるいはジャガイモ粒子に代表される不定型粒子の場合にも好ましい。この場合にも粒子の頂点、稜などの特定の部分に限定することは好ましい形態である。
【0047】
本発明のハロゲン化銀粒子は欧州特許第96,727B1号、同第64,412B1号などに開示されているような粒子に丸みをもたらす処理、あるいは西独特許第2,306,447C2号、特開昭60−221320号に開示されているような表面の改質を行ってもよい。
【0048】
粒子表面が平坦な構造が一般的であるが、意図して凹凸を形成することは場合によって好ましい。特開昭58−106532号、同60−221320号に記載されている結晶の一部分、例えば頂点あるいは面の中央に穴をあける方法、あるいは米国特許第4,643,966号に記載されているラッフル粒子がその例である。
【0049】
本発明のハロゲン化銀粒子及び最終的に得られる粒子の粒子サイズは電子顕微鏡を用いた投影面積の円相当直径、投影面積と粒子厚みから算出する粒子体積の球相当直径あるいはコールターカウンター法による体積の球相当直径等により評価できる。球相当直径として0.05μm以下の超微粒子から、10μmを越える粗大粒子の中から選んで用いることができる。好ましくは0.1μm以上3μm以下の粒子を感光性ハロゲン化組粒子として用いることである。
【0050】
本発明のハロゲン化銀粒子または最終的に得られる粒子は粒子サイズ分布の広い、いわゆる多分散乳剤でも、サイズ分布の狭い単分散乳剤でも目的に応じて選んで用いることができる。サイズ分布を表す尺度として粒子の投影面積相当直径あるいは体積の球相当直径の変動係数を用いる場合がある。単分散乳剤を用いる場合、変動係数が25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下のサイズ分布の乳剤を用いるのがよい。
【0051】
単分散乳剤を粒子数あるいは重量で平均粒子サイズの±30%以内に全粒子の80%以上が入るような粒子サイズ分布と規定する場合もある。また感光材料が目標とする階調を満足させるために、実質的に同一の感色性を有する乳剤層において粒子サイズの異なる2種以上の単分散ハロゲン化銀乳剤を同一層に混合または別層に重層塗布することができる。さらに2種類以上の多分散ハロゲン化銀乳剤あるいは単分散乳剤と多分散乳剤との組合わせを混合あるいは重層して使用することもできる。
【0052】
本発明のハロゲン化銀粒子は、グラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chimie et PhysiquePhotographique Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry(Focal Press,1966)、ゼリグマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al,Making andCoating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせ等のいずれを用いてもよい。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀粒子の生成する液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀粒子が得られる。
【0053】
乳剤調製用の反応容器にあらかじめ沈澱形成したハロゲン化銀粒子を添加する方法、米国特許第4,334,012号、同第4,301,241号、同第4,150,994号は場合により好ましく、これら種結晶として用いることができるし、成長用のハロゲン化銀として供給する場合も有効である。後者の場合粒子サイズの小さい乳剤を添加するのが好ましく、添加方法として一度に全量添加、複数回に分散して添加あるいは連続的に添加するなどの中から選んで用いることができる。また表面を改質させるために種々のハロゲン組成の粒子を添加することも場合により有効である。
【0054】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成の大部分あるいはごく一部分をハロゲン変換法によって変換させる方法は米国特許第3,477,852号、同第4,142,900号、欧州特許第273,429号、同第273,430号、西独公開特許第3,819,241号などに開示されており、有効な粒子形成法である。より難溶性の銀塩に変換するのに可溶性ハロゲンの溶液あるいはハロゲン化銀粒子を添加することができる。一度に変換する、複数回に分割して変換する、あるいは連続的に変換するなどの方法から選ぶことができる。
【0055】
粒子成長を一定濃度、一定流速で可溶性銀塩とハロゲン塩を添加する方法以外に、英国特許第1,469,480号、米国特許第3,650,757号、同第4,242,445号に記載されているように濃度を増加させる、あるいは流速を変化させる粒子形成法は好ましい方法である。濃度を増加させる、あるいは流速を増加させることにより、供給するハロゲン化銀量を添加時間の一次関数、二次関数、あるいはより複雑な関数で変化させることができる。また必要により供給ハロゲン化銀を減量することも場合により好ましい。さらに溶液組成の異なる複数個の可溶性銀塩を添加する、あるいは溶液組成の異なる複数個の可溶性ハロゲン塩を添加する場合に、一方を増加させ、もう一方を減少させるような添加方式も有効な方法である。
【0056】
可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩の溶液を反応させる時の混合器は米国特許第2,996,287号、同第3,342,605号、同第3,415,650号、同第3,785,777号、西独公開特許第2,556,885号、同第2,555,364号に記載されている方法の中から選んで用いることができる。
【0057】
熟成を促進する目的に対してハロゲン化銀溶剤が有用である。例えば熟成を促進するのに過剰量のハロゲンイオンを反応器中に存在せしめることが知られている。また他の熟成剤を用いることもできる。これらの熟成剤は銀及びハロゲン化物塩を添加する前に反応器中の分散媒中に全量を配合しておくことができるし、ハロゲン化物塩、銀塩または解膠剤を加えるとともに反応器中に導入することもできる。別の変形態様として、熟成剤をハロゲン化銀塩及び銀塩添加段階で独立して導入することもできる。
【0058】
アンモニア、チオシアン酸塩(例えば、ロダンカリ、ロダンアンモニウム)、有機チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,574,628号、同第3,021,215号、同第3,057,724号、同第3,038,805号、同第4,276,374号、同第4,297,439号、同第3,704,130号、同第4,782,013号、特開昭57−104926号などに記載の化合物)、チオン化合物(例えば、特開昭58−82408号、同55−77737号、米国特許第4,782,013号などに記載されている四置換チオウレアや、特開昭53−144319号に記載されている化合物)や、特開昭57−202531号に記載されているハロゲン化銀粒子の成長を促進しうるメルカプト化合物、アミン化合物(例えば、特開昭54−100717号など)等があげられる。
【0059】
本発明の乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0060】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロース硫酸エステルの如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルビラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0061】
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan,No.16,P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0062】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法の中から選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0063】
米国特許第3,772,031号に記載されているようなカルコゲナイド化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0064】
本発明のハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セレン増感、金増感、パラジウム増感または貴金属増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施すことができる。2種以上の増感法を組み合わせることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができる。一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増感核を作った場合である。
【0065】
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲナイド増感と貴金属増感の単独または組合わせであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James,The Theory of the Photographic Process,4thed,Macmillan,1977)67〜76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、また、リサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,773,031号、同第3,857,711号、同第3,901,714号、同第4,226,018号、及び同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8及び温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウムまたはこれら増感剤の複数の組合わせとすることができる。貴金属増感においては、例えば、金、白金、パラジウムの貴金属塩を用いることができる。中でも特に金増感、パラジウム増感及び両者の併用が好ましい。金増感の場合には、例えば、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドの公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2[PdX6]またはR2[PdX4]で表される。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表す。Xはハロゲン原子を表し塩素、臭素または沃素原子を表す。
【0066】
具体的には、例えば、K2[PdCl4]、(NH4)2[PdCl6]、Na2[PdCl4]、(NH4)2[PdCl4]、Li2[PdCl4]、Na2[PdCl6]またはK2[PdBr4]が好ましい。金化合物及びパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0067】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物及び米国特許第3,857,711号、同第4,226,018号及び同第4,054,457号に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンの如き、化学増感の過程でカブリを抑制し、かつ感度を増大するものとして知られて化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号、特開昭58−126526号及び前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0068】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当たり1×10−4〜1×10−7モルである、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲は1×10−3〜5×10−7である。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10−2〜1×10−6である。
【0069】
本発明のハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当たり1×10−4〜1×10−7であり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7モルである。
【0070】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感において、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、例えば、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素等)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合わせて用いた方が好ましい場合がある。
【0071】
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわち、チアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類:メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類{特に、4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)チトラアザインデン類}、ペンタアザインデン類のようなカブリ防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。カブリ防止剤及び安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のカブリ防止及び安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0072】
本発明のハロゲン化銀粒子に吸着させる分光増感色素としてはメチン色素があり、従ってまた最終的に得られる写真乳剤も、メチン色素類その他によって分光増感されることが本発明の効果を発揮するのに好ましい。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、及び複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、すなわち、例えば、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換されていてもよい。
【0073】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する核として、例えば、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオキサソリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核及びチオバルビツール酸核のような5〜6員複素環核を適用することができる。
【0074】
これらの増感色素は単独で用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0075】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、かつ強色増感を示す物質を、乳剤中に含んでよい。
【0076】
本発明の好ましい分光増感色素の添加時期はハロゲン化銀粒子形成後、微粒子添加前である。もっとも普通には化学増感の完了後塗布前までの時期に行われるが、米国特許第3,628,969号、及び同第4,225,666号に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行うことも、特開昭58−113928号に記載されているように化学増感に先立って行うこともでき、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することもできる。さらにまた米国特許第4,255,666号に教示されているようにこれらの前記化合物を分けて添加すること、すなわちこれらの化合物の一部を化学増感に先立って添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0077】
添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり、4×10−6〜8×10−3モルで用いることができるが、より好ましいハロゲン化銀粒子サイズ0.2×1.2μmの場合は約5×10−5〜2×10−3モルがより有効である。
【0078】
本発明で得られる乳剤を感光材料とする際には、前記の種々の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
これらの添加剤は、より詳しくはリサーチ・ディスクロージャーItem17643(1978年12月)、同Item18716(1979年11月)及び同Item308119(1989年12月)に記載されている。
【0079】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、さらに、いずれかの通常の方法により、種々の写真感光材料に使用することができる。重要な1つの態様として、本発明のハロゲン化銀乳剤は、少なくとも2層のハロゲン化銀乳剤層を有する多層写真感光材料に使用することが適している。例えばカラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルムのような多層写真感光材料である場合、本発明のハロゲン化銀乳剤は上層側、下層側どちらか一方に用いてもよく、共に用いてもよい。
【0080】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。以下に示す本発明の要件を満足する乳剤調製、乳剤及び写真要素の実施例を参照することにより、本発明をよりよく理解できる。感度はカブリ+0.2の濃度を与える露光量E(Eは単位;クルス・秒で表す)の逆数の対数の相対値で表す。
【0081】
参考例1
種晶乳剤−1の調製以下のようにして種晶乳剤を調整した。特公昭58−58288号に記載の混合攪拌機を用いて、35℃に調整した下記溶液A1に硝酸銀水溶液(1.161モル)と、臭化カリウムと沃化カリウムの混合水溶液(沃化カリウム2モル%)を、銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を0mVに保ちながら同時混合法により2分を要して添加し、核形成を行った。続いて、60分の時間を要して液温を60℃に上昇させ、炭酸ナトリウム水溶液でpHを5.0に調整した後、硝酸銀水溶液(5.902モル)と、臭化カリウムと沃化カリウムの混合水溶液(沃化カリウム2モル%)を、銀電位を9mVに保ちながら同時混合法により、42分を要して添加した。添加終了後40℃に降温しながら、通常のフロキュレーション法を用いて直ちに脱塩、水洗を行った。
【0082】
得られた種晶乳剤は、平均球換算直径が0.24μm、平均アスペクト比が4.8、ハロゲン化銀粒子の全投影面積の90%以上が最大辺長比率(各粒子の最大辺長と最小辺長との比)が1.0〜2.0の六角状の平板状粒子からなる乳剤であった。この乳剤を種晶乳剤−1と称する。
【0083】
【0084】
<沃化銀微粒子乳剤SMC−1の調製>
0.06モルの沃化カリウムを含む6.0重量%のゼラチン水溶液5リットルを激しく攪拌しながら、7.06モルの硝酸銀水溶液と7.06モルの沃化カリウム水溶液、各々2リットルを10分を要して添加した。この間pHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。粒子調製後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを5.0に調整した。得られた沃化銀微粒子の平均球換算粒径は0.05μmであった。この乳剤をSMC−1とする。
【0085】
比較乳剤(乳剤1−1)
0.178モル相当の種晶乳剤−1とHO(CH2CH2O)m[CH(CH3)CH2O]19.8(CH2CH2O)nH(m−n=9.77)の10%エタノール溶液0.5mlを含む、4.5重量%の不活性ゼラチン水溶液700mlを75℃に保ち、pAgを8.4、pHを6.0に調製した後、激しく攪拌しながら同時混合法により以下の手順で粒子形成を行った。
1)2.077モルの硝酸銀水溶液と0.218モルのSMC−1、及び臭化カリウム水溶液を、pAgを8.8、pHを6.0に保ちながら添加した。
2)続いて溶液を60℃に降温し、pAgを9.8に調整した。その後、0.71モルのSMC−1を添加し、2分間熟成を行った。(転位線の導入)
3)0.91モルの硝酸銀水溶液と0.079モルのSMC−1、及び臭化カリウム水溶液を、pAgを9.8、pHを5.0に保ちながら添加した。
【0086】
得られた乳剤は、粒径(同体積の立方体1辺長)0.65μm、平均アスペクト比6.5、粒子内部から沃化銀含有率2/9.5/X/8.0モル%(Xは転位線導入位置)のハロゲン組成を有する平板状粒子からなる乳剤であった。この乳剤を電子顕微鏡で観察したところ乳剤中の粒子の全投影面積の60%以上の粒子にフリンジ部と粒子内部双方に5本以上の転位線が観察された。表面沃化銀含有率は11.9モル%であった。
【0087】
(比較乳剤1−2の調製)
乳剤1−1の調製の1)工程において、添加銀量の50%を添加した段階でK4[Fe(CN)6]を水溶液で1×10−5モル/モルAg添加した。この乳剤を乳剤1−2とする。
【0088】
(比較乳剤1−3の調製)
乳剤1−1の調製の1)工程において、添加銀量の50%を添加した段階でK4[Ru(CN)6]を水溶液で1×10−5モル/モルAg添加した。この乳剤を乳剤1−3とする。
【0089】
(比較乳剤1−4の調製)
乳剤1−1の調製の1)工程において、添加銀量の50%を添加した段階でK3[Ir(CN)6]を水溶液で1×10−5モル/モルAg添加した。この乳剤を乳剤1−4とする。
【0090】
(参考例の乳剤1−5〜1−12の調製)
乳剤1−2の調製において、K4[Fe(CN)6]の代わりに化合物I−1、I−2、I−6、I−18、I−24、I−25、I−28、I−29を1×10−5モル/モルAg添加した。これらの乳剤を乳剤1−5〜1−12とする。
【0091】
(増感)
次に、上記乳剤1−1〜1−12それぞれに、次に示す増感を施した。
乳剤試料0.5モルを40℃で溶融し、分光増感色素1及び色素2及び色素3を合計被覆率が約70%になるように1:1:1の割合で添加した。その後、トリフォスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン酸カリウムを添加し、常法に従い、最適に化学増感を施した後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン(TAI)、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール(PMT)を添加した。
【0092】
【化1】
【0093】
(単層感材試料作製)
増感が施された乳剤1−1〜1−12を、灰色銀ハレーション防止層で被覆した酢酸セルロースフィルム支持体にそれぞれ塗布し、この乳剤層を、界面活性剤とビス(ビニルスルホニル)メタン硬膜剤(ゼラチン総重量に対して1.75重量%)とを含有する4.3g/m2ゼラチン層でオーバーコートした。乳剤塗布量は0.646gAg/m2であり、この層には、カプラー1、界面活性剤及びゼラチン総量1.08g/m2も含有させた。このようにして、乳剤1−1〜1−12に対してそれぞれ単層感材試料101〜112を得た。
【0094】
【化2】
【0095】
(評価)
このようにして得られた試料101〜112を、それぞれ白色光にて0.01秒ウェッジ露光し、以下の処理工程に従って発色現像した後、光学濃度計(コニカ製PDA−65型)を用いて感度測定した。試料101の感度を100としたときのそれぞれの相対感度を表1に示す。
【0096】
<処理>
処理工程 処理時間 処理温度
発色現像 2分50秒 38±0.3℃
漂 白 45秒 38±2.0℃
定 着 1分30秒 38±2.0℃
安 定 60秒 38±5.0℃
乾 燥 1分 55±5.0℃
発色現像液、漂白液、定着液、安定液は、以下のものを使用した。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
表1を見ても明らかなように、本発明の金属錯体を添加した乳剤(乳剤1−5〜1−12)を用いた試料105〜112は感度が飛躍的に向上していることがわかり、従来にない高感度な写真乳剤を得ることができた。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1
(比較乳剤2−1の調製)
乳剤1−1の調製の1)工程において、転位線導入後、K4[Fe(CN)6]及びK2[IrCl6]を水溶液でそれぞれ5×10−6モル/モルAg添加した。この乳剤を乳剤2−1とする。
【0103】
(本発明の乳剤2−2〜2−5の調製)
乳剤2−1の調製の工程において、K4[Fe(CN)6]に代えて、化合物I−1、I−6、I−26、I−27を5×10−6モル/モルAg添加した。これらの乳剤をそれぞれ乳剤2−2〜2−5とする。
【0104】
(増感、単層感材試料作成及び評価)
上記乳剤2−1〜2−5について参考例1と同様に増感、単層試料を作成し、試料201〜205を得た。このようにして得られた試料201から205について、参考例1と同様に感度を測定した。参考例1で作成した試料101の感度を100としたときのそれぞれの相対感度を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
表2から明らかなように、本発明の金属錯体を添加した乳剤2−2〜2−5を用いた試料202〜205は、感度が飛躍的に向上していることがわかり、従来にない高感度な写真乳剤を得ることができた。
【0107】
参考例2
次に、照度不軌改良の参考例を記す。
(比較乳剤3−1の調製)
乳剤1−1の調製の1)工程において、転位線導入後、K2[IrCl6]を水溶液で1×10−7モル/モルAg添加した。この乳剤を乳剤3−1とする。
【0108】
(参考例の乳剤3−2〜3−5の調製)
乳剤3−1の調製の工程において、K2[IrCl6]の代わりに、化合物I−1、I−6、I−28、I−29を1×10−7モル/モルAg添加した。これらの乳剤をそれぞれ乳剤3−2〜3−5とする。
【0109】
(増感、単層感材試料作成及び評価)
上記乳剤3−1〜3−5について参考例1と同様に増感、単層試料を作成し、試料301〜305を得た。このようにして得られた試料301〜305について、表3記載の露光時間の露光を与え、参考例1と同様に感度を測定した。参考例1で作成した試料101の感度を100としたときのそれぞれの相対感度を表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
表3から明らかなように、本発明の金属錯体を添加した乳剤3−2〜3−5を用いた試料302〜305は、高照度、低照度不軌共に感度が飛躍的に向上していることがわかり、従来にない照度不軌改良効果のある写真乳剤を得ることができた。
【0112】
参考例3
下引き層を施したトリアセチルセルロースフィルム支持体上に下記に示すような組成の各層を順次支持体側から形成して多層カラー写真感光材料試料401を作成した。
【0113】
添加量は特に記載のない限り1m2当たりのグラム数を示す。また、ハロゲン化銀とコロイド銀は銀に換算して示し、増感色素(SDで示す)は銀1モル当たりのモル数で示した。
【0114】
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.16
UV−1 0.3
CM−1 0.123
CC−1 0.044
OIL−1 0.167
ゼラチン 1.33
【0115】
第2層:中間層
AS−1 0.160
OIL−1 0.20
ゼラチン 0.69
【0116】
第3層:低感度赤感色性層
沃臭化銀a 0.20
沃臭化銀b 0.29
SD−1 2.37×10−5
SD−2 1.2×10−4
SD−3 2.4×10−4
SD−4 2.4×10−6
C−1 0.32
CC−1 0.038
OIL−2 0.28
AS−2 0.002
ゼラチン 0.73
【0117】
第4層:中感度赤感色性層
沃臭化銀c 0.10
沃臭化銀d 0.86
SD−1 4.5×10−5
SD−2 2.3×10−4
SD−3 4.5×10−4
C−2 0.52
CC−1 0.06
DI−1 0.047
OIL−2 0.46
AS−2 0.004
ゼラチン 1.30
【0118】
第5層:高感度赤感色性層
沃臭化銀c 0.13
沃臭化銀d 1.18
SD−1 3.0×10−5
SD−2 1.5×10−4
SD−3 3.0×10−4
C−2 0.047
C−3 0.09
CC−1 0.036
DI−1 0.024
OIL−2 0.27
AS−2 0.006
ゼラチン 1.28
【0119】
第6層:中間層
OIL−1 0.29
AS−1 0.23
ゼラチン 1.00
【0120】
第7層:低感度緑感色性層
沃臭化銀a 0.19
沃臭化銀b 0.062
SD−4 3.6×10−4
SD−5 3.6×10−4
カプラー1 0.18
CM−1 0.033
OIL−1 0.22
AS−2 0.002
AS−3 0.05
ゼラチン 1.61
【0121】
第8層:中間層
OIL−1 0.26
AS−1 0.054
ゼラチン 0.80
【0122】
第9層:中感度緑感色性層
沃臭化銀e 0.54
沃臭化銀f 0.54
分光増感色素1 3.7×10−4
分光増感色素2 7.4×10−5
分光増感色素3 5.0×10−5
カプラー1 0.17
M−1 0.33
CM−1 0.024
CM−2 0.029
DI−2 0.024
DI−3 0.005
OIL−1 0.73
AS−3 0.035
AS−2 0.003
ゼラチン 1.80
【0123】
第10層:高感度緑感色性層
沃臭化銀f 1.19
分光増感色素1 4.0×10−4
分光増感色素2 8.0×10−5
分光増感色素3 5.0×10−5
カプラー1 0.065
CM−2 0.026
CM−1 0.022
DI−3 0.003
DI−2 0.003
OIL−1 0.19
OIL−2 0.43
AS−3 0.017
AS−2 0.014
ゼラチン 1.23
【0124】
第11層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 0.05
OIL−1 0.18
AS−1 0.16
ゼラチン 1.00
【0125】
第12層:低感度青感色性層
沃臭化銀b 0.22
沃臭化銀a 0.08
沃臭化銀h 0.09
SD−6 6.5×10−4
SD−7 2.5×10−4
カプラー2 0.77
DI−4 0.017
OIL−1 0.31
AS−2 0.002
ゼラチン 1.29
【0126】
第13層:高感度青感色性層
沃臭化銀h 0.41
沃臭化銀i 0.61
SD−6 4.4×10−4
SD−7 1.5×10−4
カプラー2 0.23
OIL−1 0.10
AS−2 0.004
ゼラチン 1.20
【0127】
第14層:第1保護層
沃臭化銀j 0.30
UV−1 0.055
UV−2 0.110
OIL−2 0.30
ゼラチン 1.32
【0128】
第15層:第2保護層
PM−1 0.15
PM−2 0.04
WAX−1 0.02
D−1 0.001
ゼラチン 0.55
【0129】
上記沃臭化銀の特徴を下記に表示する(平均粒径とは同体積の立方体の一辺長)。
【0130】
【0131】
なお、本発明の代表的なハロゲン化銀粒子の形成例として、沃臭化銀d.fの製造例を以下に示す。また、沃臭化銀jについては特開平1−183417号、同1−183644号、同1−183645号、同2−166442号に関する記載を参考に作成した。
【0132】
<沃臭化銀dの調製>
0.178モル相当の種晶乳剤−1とHO(CH2CH2O)m{CH(CH3)CH2O}19.8(CH2CH2O)nH(m+n=9.77)の10%エタノール溶液0.5mlを含む、4.5重量%の不活性ゼラチン水溶液700mlを75℃に保ち、pAgを8.4、pHを5.0に調整した後、激しく攪拌しながら同時混合法により以下の手順で粒子形成を行った。
1)3.093モルの硝酸銀水溶液と0.287モルのSMC−1、及び臭化カリウム水溶液を、pAgを8.4、pHを5.0に保ちながら添加した。
2)続いて溶液を60℃に降温し、pAgを9.8に調製した。その後、0.071モルのSMC−1を添加し、2分間熟成を行った(転位線の導入)。
3)0.959モルの硝酸銀水溶液と0.03モルのSMC−1及び臭化カリウム水溶液を、pAgを9.8、pHを5.0に保ちながら添加した。
【0133】
尚、粒子形成を通して各溶液は、新核の生成や粒子間のオストワルド熟成が進まないように最適な速度で添加した。上記添加終了後に40℃で通常のフロキュレーション法を用いて水洗処理を施した後、ゼラチンを加えて再分散し、pAgを8.1、pHを5.8に調整した。
【0134】
得られた乳剤は、粒径(同体積の立方体1辺長)0.74μm、平均アスペクト比5.0、粒子内部から沃化銀含有率2/8.5/X/3モル%(Xは転位線導入位置)のハロゲン組成を有する平板状粒子からなる乳剤であった。この乳剤を電子顕微鏡で観察したところ乳剤中の粒子の全投影面積の60%以上の粒子にフリンジ部と粒子内部双方に5本以上の転位線が観察された。表面沃化銀含有率は6.7モル%であった。
【0135】
<沃臭化銀fの調製>
沃臭化銀dの調製において、1)の工程でpAgを8.8、かつ添加する硝酸銀量を2.077モル、SMC−1の量を0.218モルとし、3)の工程で添加する硝酸銀量を0.91モル、SMC−1の量を0.079モルとした以外は沃臭化銀dと全く同様にして沃臭化銀fを調製した。
【0136】
得られた乳剤は、粒径(同体積の立方体1辺長)0.65μm、平均アスペクト比6.5、粒子内部から沃化銀含有率2/9.5/X/8.0モル%(Xは転位線導入位置)のハロゲン組成を有する平板状粒子からなる乳剤であった。この乳剤を電子顕微鏡で観察したところ乳剤中の粒子の全投影面積の60%以上の粒子にフリンジ部と粒子内部双方に5本以上の転位線が観察された。表面沃化銀含有率は11.9モル%であった。
【0137】
上記各乳剤に前述の増感色素を添加、熟成した後、トリフォスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン酸カリウムを添加し、常法に従い、かぶり、感度関係が最適になるように化学増感を施した。
【0138】
また、沃臭化銀a,b,c,e,h,iについても、上記沃臭化銀d.fに準じて作成し、分光増感、化学増感を施した。
【0139】
尚、上記の組成物の他に、塗布助剤SU−1、SU−2、SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、安定剤ST−1、ST−2、カブリ防止剤AF−1、重量平均分子量:10,000及び重量平均分子量:1,100,000の2種のポリビニルピロリドン(AF−2)、抑制剤AF−3、AF−4、AF−5、硬膜剤H−1、H−2及び防腐剤Ase−1を添加した。
上記試料に用いた化合物の構造を以下に示す。
【0140】
【化3】
【0141】
【化4】
【0142】
【化5】
【0143】
【化6】
【0144】
【化7】
【0145】
【化8】
【0146】
【化9】
【0147】
【化10】
【0148】
上記多層試料で第10層の沃臭化銀fを乳剤1−9に置き換え、参考例1(但し発色現像時間は3分15秒)と同様の評価を行った。
参考例3のような多層カラー感光材料においても、本発明の効果は参考例1と同様に顕著であることを確認した。
【0149】
【発明の効果】
以上の実施例において明らかなように、本発明により高感度である乳剤及び/または照度不軌が改良された乳剤を得ることができた。
Claims (3)
- 支持体上に少なくとも一種のハロゲン化銀粒子を含む感光性層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、前記感光性層の少なくとも一種に含有されるハロゲン化銀粒子が、下記一般式(I)で表される四配位金属錯体を含有し、該ハロゲン化銀粒子が、イリジウム化合物を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(I) (Z1)n[ML4](Z2)m
式中、Mは元素周期表の第4周期、第5周期、及び第6周期の鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金から選択される中心金属を、Lは配位子を、Z1はカウンターカチオンを、Z2はカウンターアニオンを、m,nはZ1,Z2が金属錯体の総電荷を中和させるに必要な数を表すものとする。 - 四配位金属錯体の配位子の少なくとも一つが、シアノ基であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 四配位金属錯体の少なくとも一つが、有機配位子によって占められていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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