JP3618943B2 - インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吐出口からインク液滴を吐出し印字媒体に記録するインクジェット記録ヘッドおよび該ヘッドにより構成されたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録においては、インクを吐出し印字媒体に着弾させることにより、記録を行う。
しかし、インクジェット記録においては、着弾時にインクの飛び散り現象が発生していた。
図2及び図3に基づき着弾時のインクの飛び散り現象に関し以下に説明する。
図2(a)ではヘッドと印字ヘッドから吐出した液滴と印字媒体を図示している。(b)においては、液滴が印字媒体に着弾し、(c)は印字媒体に対し鋭角に跳ね返りミスト(以下ミストとも記す)が発生している様子を図示した。
さらに、図3は印字媒体上の一つのドットに複数の液滴が時間差をもって着弾する様子を図示したものであり、図3(c)には、印字媒体上に先に着弾したインク滴がある状態での着弾においてはより顕著に跳ね返りが発生している様子が示されている。
【0003】
上記のように発生するミストがインクジェット記録ヘッドのフェイス面に付着することにより、着弾ずれや、不吐出の原因になっていた。
また、基本色のインクそれぞれに対してインクジェットヘッドを同一の走査線上に配置した構成とし、これらのインクジェットヘッドによる走査の間に、これらのヘッド相互の距離に対応した時間、吐出信号を遅延させることにより、同一箇所に異なったインクジェットヘッドから吐出された複数のインク滴を重ね、上記基本色以外の中間色のドットを形成するカラー画像をプリントする場合において、飛び散りが特に顕著に発生していた。
【0004】
そこで、インクジェット記録ヘッドにおいては、フェイス面に撥水剤を形成することにより、吐出口付近のインク滴をはじくようにし、不吐やよれを防止していた。
また、従来のインクジェット記録装置においては、ある時間間隔ごとにフェイス面をワイピングや拭きを行うことにより、フェイス面に付着した、インク滴を除去し、上記の問題点に対応していた。
また、インクジェット記録においては、印字物に耐水性を付加するために、インクと反応する液体(以下耐水液と記す)を用いる方法がある。
具体的には、耐水液をインクジェット記録ヘッドから吐出させ、耐水液とインクを印字媒体上で混合させることにより、印字媒体上で反応が起こり耐水性を持つ。すなわち、カラーインクジェット記録と同様に耐水液とインクを重ねて着弾させていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のインクジェット記録装置においては、ワイピングや拭きをすることによりヘッド表面に形成された撥水剤がはがれたり、また、フェイス面の磨耗が発生することにより、ヘッドの寿命を短くするという問題があった。
また、耐水液を用いたインクジェット記録においては、耐水液とインクが反応して発生する堅牢な固着物が、着弾時の飛び散りにより印字ヘッドフェイス面に付着し、印字上の着弾ずれや、さらには印字ヘッドからインクが吐出しなくなる現象の結果として印字ドット抜けが発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来のものにおける課題を解決し、着弾時の跳ね返りによるミストがフェイス面の吐出口近辺に付着するのを防止し、ワイピングや拭きの回数の低減による、ヘッド寿命の延長を図ることのできるインクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、耐水液を用いたインクジェット記録において、着弾時の跳ね返りによるミストがフェイス面の吐出口近辺に付着するのを防止し、印字上の着弾ずれや印字ドット抜けのないインクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置をつぎのように構成したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明のインクジェット記録ヘッドは、記録素子基板に形成された吐出口列から、インク液滴を吐出し印字媒体に記録するインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクジェット記録ヘッドは、前記吐出口列が形成されたフェイス面上方の前記吐出口列の両側に隣接して、該フェイス面に対して隙間を介して設けられた構造物を有し、該構造物とフェイス面との隙間によって、前記インク液滴の吐出時に前記隙間の一端側に形成された空気供給口から吐出口近傍に空気の供給を可能に構成し、フェイス面の吐出口近傍から離れた個所に、印字媒体からの跳ね返りミストを誘導することを特徴としている。
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記構造物と記録ヘッドのフェイス面との間の隙間に、リブが設けられていることを特徴としており、その際、リブの幅を前記構造物の幅より狭く形成するようにしてもよい。
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記構造物を吐出口列に対し平行に配するようにすることを特徴としている。
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記構造物が、前記記録素子基板の支持部材に凹状態に形成した記録素子基板に対して配設する構成を採ることもできる。
さらに、本発明のインクジェット記録装置は、上記したいずれかのインクジェット記録ヘッドを構成する吐出口列が形成された記録素子基板を複数有するインクジェット記録ヘッドからなり、該インクジェット記録ヘッドを複数具備していることを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記したように印字ヘッドの吐出口近辺に構造物を設けることにより、ミストが印字ヘッドの吐出口近辺に付着するのを防止するものである。
以下にその原理について述べる。
インクジェット記録ヘッドから吐出されたインク滴が紙に着弾し跳ね返りミストは、図4に示す挙動を示す。
第一に吐出液滴流と同方向への空気の流れが発生し、その空気の流れが紙面上で跳ね返る。
そして、吐出液滴流近辺が低圧状態になっていることと、その吐出液滴流と同方向への気流に対し空気を供給するために、周囲から空気を引き込み矢印bのような気流が発生する。
この気流により、紙面に対し斜めに跳ね返ったミストが、フェイス面に付着する。
【0009】
そこで本発明では、図4の矢印bのような気流を発生させないように、印字ヘッド吐出口周辺に構造物を設ける。
気流を発生させない原理について、以下に述べる。図5に示すように、吐出液滴流近辺においては、矢印aのように吐出液滴流と同じ方向に気流が発生する。
矢印aのような気流を継続させるためには気流の根元に空気を供給しなければならない。
そこで、構造物とヘッドフェイス面の間に隙間を開けることにより、空気の供給口を設けてやる。
こうすることにより、吐出口周辺の気流は、フェイス面から紙の方向に流れるために、紙面上で跳ね返るミストはこの気流に乗り、吐出口周辺にくることがない(以下、吐出流効果と記す)。
【0010】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1におけるインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
1は、インクの吐出する吐出口が形成されている記録素子基板、2は記録基板上に複数配列され、インクを吐出するための開口である吐出口である。3は、記録素子基板1が固定されている支持部材である。7はインクジェッ卜記録ヘッドと記録装置との電気的な導通をとる手段であるコンタクトパッドである。
【0011】
本実施例においては、インクジェット記録ヘッドのフェイス面周辺につけた構造物4の厚みは0.2mm、構造物4のx方向長さ0.8mm、y方向長さは20mmである。
また、構造物4とヘッドフェイス面との隙間の距離は0.2mm、構造物4間の距離は0.7mmである。
直方体の構造物4とそれをヘッドにつける構造物4と一体化したリブ6がある。
そのリブ6の寸法は、x方向長さ0.8mm、y方向長さ0.3mmである。
また、構造物4の材料はSUSを用いている。
インクジェット記録ヘッドにおいては、吐出体積8.5pl、吐出速度18m/s、吐出口は600DPIの解像度で記録素子基板1上に配列されている。
また、インクジェット記録装置(不図示)である。
キャリッジの往復どちらでも印字をし、吐出口から紙までの距離は1.5mm、駆動周波数は8kHz、印字解像度は1200DPIである。
【0012】
ABCD断面でのヘッド吐出口2周辺図を図6に示す。
5は、インクにより画像が形成される紙である。
本実施例の構成において、印字後にインクジェット記録ヘッドのフェイス面を観察したところ、図6の斜線部のように、ミストが付着した。
すなわち、フェイス面と構造物4の隙間にミストが付着しているが、そこで留まり、吐出口2周辺には到達していない。
このように、吐出流効果により構造物4のないインクジェット記録ヘッドと比較して吐出口周辺のミスト量をかなり減少させることができた。
このことにより、従来のインクジェット記録装置よりワイピング回数を減らすことができ、ヘッドの寿命を延ばすことができた。
【0013】
本実施例では、構造物4の厚みは0.2mmであったが、ヘッドフェイス面との隙間の距離との合計長さが、フェイス面と紙との距離より小さければどんな長さでもよい。
また、構造物4の材料としては、SUSではなく、例えばPETやポリプロピレン等のプラスチックを用いることもできる。
このようなプラスチック材料を用いる時には、図7に示すように、構造物4とフェイス面との隙間にリブ6を設けることにより強度を保持できる。
【0014】
また記録素子基板1が、支持部材3に対し凹のように下がった構成においても、図8に示すヘッド吐出口2周辺の断面図のように構造物4を設けることで吐出流効果が得られる。
具体的には、記録素子基板1x方向長さは2.6mm、記録素子基板1が支持部材3に対し0.2mmだけ凹状態になっている。構造物の寸法は上記実施例と同じである。
この構成においても、斜線部のようにミストが付着するように、吐出流効果があり、吐出口2周辺へのミストの付着を防止することができる。
【0015】
[実施例2]
図9は、本発明の実施例2におけるインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
本実施例においては、耐水液を用いたカラーインクジェット記録装置を用いているために、インクジェット記録ヘッドは、記録素子基板1が3つ設けられている。
そして、記録装置には、二つのインクジェット記録ヘッドが搭載されている。
【0016】
本実施例においては、インクジェット記録ヘッドのフェイス面周辺につけた構造物4の厚みは0.2mm、構造物4のx方向長さ3mm、y方向長さは38mmである。また、構造物4とヘッドフェイス面との隙間の距離は0.1mm、構造物間の距離は1.0mmである。構造物の材料はSUSを用いている。
インクジェット記録ヘッドにおいては、吐出体積5pl、吐出速度15m/s、吐出口2は一つの記録素子基板1上に300DPIの解像度で列間の距離0.3mmで2列に合計512個が配列されている。
吐出口2から紙までの距離は1.5mm、駆動周波数は10kHz、印字解像度は1200DPIである。
ABCD断面図の吐出口周辺図を図10に示す。本実施例では、インクを吐出する吐出口が512個構成されているので、構造物4の強度を上げるためのリブが構造物4のy方向の間にあり斜線で示した。
リブ6のx方向の長さは1mmである。また、ヘッドのxy面の断面図を図11に示す。このように、一つのリブのy方向長さは2mmであり、リブ間は10mmである。
【0017】
本実施例の構成において、印字後にインクジェット記録ヘッドのフェイス面を観察したところ、図10のように、ミストが付着した。
すなわち、フェイス面と構造物4の隙間にミストが付着しているが、そこで留まり、吐出口2周辺には到達していない。
このように、吐出流効果により構造物4のないインクジェット記録ヘッドと比較して吐出口周辺のミスト量をかなり減少させることができた。
本実施例では、リブのx方向幅を構造物のx方向幅より小さくし、かつ構造物のx方向中心にリブを設け、即ち構造物の吐出口側にはリブの無い状態にすることにより、リブのある構成において吐出流効果を上げている。
【0018】
このような構成にすることにより、吐出流効果により、ミストが吐出口2周辺にくることがないと共に、構造物4のx方向長さを1.5mmにすることにより、隣の記録素子1の吐出口からの吐出液滴が紙面に着弾するときのミストがフェイス面と構造物4の隙間に入りやすくなるのを防止した。
そして、耐水液を用いたインクジェット記録において、着弾時の跳ね返りによるミストがフェイス面の吐出口2近辺に付着するのを防止し、印字上の着弾ずれや印字ドット抜けを防止することができた。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、吐出口列の両側に構造物を配設した構成によって、上記した吐出流効果を得ることができ、構造物の設けられていないインクジェット記録ヘッドに比して、吐出口周辺のミスト量を著しく減少させることが可能となり、ワイピング回数の低減化によりヘッドの寿命の大幅な延長を図ることができる。
また、本発明は構造物の構成により、上記耐水液を用いたインクジェット記録において、着弾時の跳ね返りによるミストがフェイス面の吐出口近辺に付着するのを防止することができるため、耐水液とインクが反応して発生する堅牢な固着物が、印字ヘッドフェイス面上で発生するのを防ぐことが可能となり、印字上の着弾ずれや印字ドット抜けの防止を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図2】インクの印字媒体に対する着弾時の飛び散り現象を示す図であり、図2(a)は印字媒体から吐出した液滴と印字媒体との関係、図2(b)は液滴が印字媒体に着弾した状態、図2(c)はミストが発生している状態をそれぞれ示している。
【図3】印字媒体上の一つのドットに複数の液滴が時間差をもって着弾する様子を示す図であり、図3(a)は印字媒体から吐出した液滴と印字媒体との関係、図3(b)は液滴が印字媒体に着弾した状態、図3(c)はミストがより顕著に発生している状態をそれぞれ示している。
【図4】ミストの発生状態を原理的に説明するための図である。
【図5】本発明におけるミストの発生の防止を原理的に説明するための図である。
【図6】図1のインクジェット記録ヘッドにおけるABCD断面でのヘッド吐出口周辺を示す図である。
【図7】本発明の実施例1の一形態として構造物とフェイス面との間隙にリブを設けたインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図8】本発明の実施例1の一形態として記録媒体素子基板が支持部材に対して凹のように下がったものを用いた場合の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例2におけるインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドにおけるABCD断面でのヘッド吐出口周辺を示す図である。
【図11】本発明の実施例2におけるインクジェット記録ヘッドの断面を示す図である。
【符号の説明】
1:記録素子基板
2:吐出口
3:支持部材
4:構造物
5:紙
6:リブ
7:コンタクトパッド
Claims (6)
- 記録素子基板に形成された吐出口列から、インク液滴を吐出し印字媒体に記録するインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記インクジェット記録ヘッドは、前記吐出口列が形成されたフェイス面上方の前記吐出口列の両側に隣接して、前記フェイス面に対して隙間を介して設けられた構造物を有し、
前記構造物とフェイス面との隙間によって、前記インク液滴の吐出時に前記隙間の一端側に形成された空気供給口から吐出口近傍に空気の供給を可能に構成し、フェイス面の吐出口近傍から離れた個所に、印字媒体からの跳ね返りミストを誘導することを特徴とするインクジェット記録ヘッド。 - 前記構造物と記録ヘッドのフェイス面との間の隙間に、リブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記リブは、その幅が前記構造物の幅より狭く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記構造物が、吐出口列に対し平行であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記構造物が、前記記録素子基板の支持部材に凹状態に形成した記録素子基板に対して配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドを構成する吐出口列が形成された記録素子基板を複数有するインクジェット記録ヘッドからなり、該インクジェット記録ヘッドを複数具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。
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