JP3618059B2 - 加熱体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リライタブル感熱記録媒体に形成されている可視像を消去するための消去手段等として使用される加熱体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去するための消去手段として加熱体が使用されている。
【0003】
リライタブル感熱記録媒体は、例えば130℃〜170℃の温度領域で短時間加熱(同一領域を0.001秒程度加熱する)されることにより発色し、この領域よりも高い100℃〜110℃の温度領域で長時間加熱(同一領域を約0.1秒程度加熱する)されることにより色が消えるという可逆的な特性を有していることから、可視像の記録と消去を繰り返すことができ、省資源やリサイクルに適したものとして注目されている。
【0004】
このようなリライタブル感熱記録媒体の可視像を消去するための加熱体としては、例えば図4に示す如く、矩形状をなす絶縁基板21の長手方向に沿って発熱抵抗体22を帯状に被着させるとともに該発熱抵抗体22の両端に一対の電極23a,23b を電気的に接続させた構造のものが知られており、リライタブル感熱記録媒体を前記発熱抵抗体22上に搬送しながら一対の電極23a,23b 間に所定の電力を印加し、リライタブル感熱記録媒体が発熱抵抗体22上を通過する間、発熱抵抗体22をジュール発熱させ続け、該発熱した熱でリライタブル感熱記録媒体を加熱し、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去することによって消去手段として機能する。
【0005】
尚、前記発熱抵抗体22は、TaSiO等の電気抵抗材料を従来周知のスパッタリング法等によって略一定幅、略一定厚みに被着・形成してなり、そのシート抵抗は全域にわたり略均一になっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の加熱体を用いてリライタブル感熱記録媒体の可視像を消去する場合、加熱体の表面の温度を100℃〜110℃という狭い温度領域内に制御する必要がある。
【0007】
しかしながら、加熱体の絶縁基板21は矩形状をなしていることから中央域では熱が蓄積され易い反面、両端域では熱が逃げ易く、前述した如くシート抵抗が均一な帯状発熱抵抗体22を長時間、発熱させ続けると長手方向の中央域と両端域とで20度〜30度の極めて大きな温度差が生じる。このため、加熱体の表面を長手方向にわたって100℃〜110℃という狭い温度領域内に制御することは困難で、加熱体の長手方向両端域の温度を上記温度領域内に設定しようとすると中央域の温度が過度に高温となってリライタブル感熱記録媒体の中央域に不要な印画が形成される欠点があり、逆に中央域の温度を上記温度領域内に設定しようとすると両端域の温度が可視像の消去に必要な温度まで到達せず、可視像が十分に消去されなくなるという欠点を有していた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の加熱体は、矩形状をなす絶縁基板の長手方向に沿って、略一定幅、略一定厚みの帯状発熱抵抗体と、該帯状発熱抵抗体の幅方向の両側で帯状発熱抵抗体の長辺に沿って接続される一対の電極とを配設し、前記帯状発熱抵抗体に複数のスリットを設けて、前記帯状発熱抵抗体を複数の区画に区分するとともに、該区画毎の発熱抵抗体のシート抵抗が長手方向の中央域で高く、両端域で低くなしてある加熱体であって、前記一対の電極の一方の電極の直下に、前記区画毎の発熱抵抗体に1対1に対応する複数のトリミング用電極が配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベースとなる加熱体を添付図面に基づいて詳細に説明する。(第1形態)図1は本発明の第1形態に係る加熱体の平面図、図2は図1のX−X線断面図であり、1 は絶縁基板、3は帯状発熱抵抗体、4a,4bは一対の電極である。
【0011】
前記絶縁基板1 はアルミナセラミックス等のセラミック材料によって矩形状をなすように形成されており、その上面でグレーズ層2 や発熱抵抗体3 ,一対の電極4a,4b 等を支持するための支持母材として機能する。
【0012】
尚、前記絶縁基板1 は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、該グリーンシートを所定形状に打ち抜いた上、低温(約1600℃)で焼成することにより製作される。
【0013】
また前記絶縁基板1 の上面には、その全域にわたってグレーズ層2 が被着・形成されている。
【0014】
前記グレーズ層2 は、ガラスやポリイミド樹脂等の高熱伝導性材料から成り、例えば50μm〜150μmの厚みを有し、加熱体の表面温度が短時間でリライタブル感熱記録媒体に形成されている可視像の消去に必要な所定の温度となるように発熱抵抗体3 の発する熱を蓄積及び放散する作用を為す。
【0015】
尚、前記グレーズ層2 は、例えばガラスから成る場合、ガラス粉末に適当な有1 溶媒、溶剤を添加・混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって絶縁基板1 の上面全域にわたって150μm〜200μmの厚みに印刷・塗布し、これを低温(約900℃)で焼き付けることによって略一定の厚み(±10μm以内)に被着・形成される。
【0016】
そして前記グレーズ層2 の上面には、絶縁基板1 の長手方向に沿って帯状の発熱抵抗体3 が被着・形成される。
【0017】
前記発熱抵抗体3 は、その幅と厚みが略一定(平均幅、平均厚みに対し夫々±3%以内)となるようにスパッタ膜等で形成されており、TaSiOやTaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO系の電気抵抗材料から成っているため、後述する一対の電極4a,4b を介して電源電力が供給されるとジュール発熱を起こし、リライタブル感熱記録媒体に形成されている可視像を消去するのに必要な所定の温度、例えば100℃〜110℃の温度となる。
【0018】
更に前記発熱抵抗体3 は、そのシート抵抗が長手方向の中央域で高く、両端域(エッジから全長の10%〜25%に相当する領域)で低くなっている。
【0019】
このシート抵抗は、発熱抵抗体3 の長手方向中央域で97Ω/□〜103Ω/□に、また長手方向両端域で中央域のシート抵抗の70%〜90%に相当する68Ω/□〜93Ω/□に設定されており、帯状発熱抵抗体3 の幅方向に通電がなされると長手方向中央域と両端域とで発生する熱エネルギーが相違する。
【0020】
具体的には、発熱抵抗体3 の長手方向両端域では、中央域よりも多くの熱エネルギーが発生するようになっており、それ故、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去するにあたって帯状発熱抵抗体3 を長時間、発熱させ続ける際に、絶縁基板1 の両端域より多くの熱が逃げようとしても両端域の温度が大幅に低下することはなく、加熱体表面の温度を長手方向にわたり均一化(±3度以内)することができるようになる。従って発熱抵抗体3 の温度制御を容易になすことができ、これによってリライタブル感熱記録媒体に不要な印画を形成することなく、リライタブル感熱記録媒体の全領域にわたって可視像を確実に消去することが可能となる。
【0021】
また前記発熱抵抗体3 のシート抵抗を長手方向中央域から両端域に向かって漸次小さくなるように可変させておけば、発熱抵抗体3 の温度分布に不連続なところがなくなり、リライタブル感熱記録媒体の可視像をより確実に消去することができる利点がある。従って発熱抵抗体3 のシート抵抗を長手方向中央域から両端域に向かって漸次小さくなるように可変させておくことが好ましい。
【0022】
尚、前記発熱抵抗体3 は、まずTaSiO等から成るシート抵抗が均一な帯状抵抗体3’を従来周知のスパッタリング法、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用し、所定厚み、所定パターンに被着させることによって形成し、しかる後、帯状抵抗体3’の中央域に所定波長(200nm〜700nm)のレーザーを酸素雰囲気中もしくは大気雰囲気中で所定時間(100msec〜1000msec)照射し、この部分を150℃〜200℃の温度に加熱するとともに該加熱部の表面付近に酸素を多量に結合させ、この部分の導電性を低下させることによって中央域のシート抵抗が両端域よりも高くなるように調整したり、或いは、帯状抵抗体3’の両端域に所定波長(200nm〜700nm)のレーザーを例えば真空雰囲気中や窒素雰囲気中で所定時間(1nsec〜100nsec)照射して該照射部の抵抗体3’を300℃〜700℃の温度でアニールし、この部分の導電性を向上させることによって両端域のシート抵抗が中央域よりも高くなるように調整する等して所定のシート抵抗分布をもった発熱抵抗体3 が得られる。
【0023】
また前述した発熱抵抗体3 の幅方向の両側には、発熱抵抗体3 の長辺に沿って電気的に接続された一対の電極4a,4b が配設される。
【0024】
前記一対の電極4a,4b はAl(アルミニウム)やCu(銅)等の金属により例えば0.5μm〜2.0μmの厚みをもって形成され、該各電極4a,4b を外部電源の各端子に接続し、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去する際に両者間に所定の電位差を設けることで発熱抵抗体3 に電源電力が印加される。この場合、一対の電極4a,4b は発熱抵抗体3 の長辺に沿って電気的に接続されているため、駆動時の電流は発熱抵抗体3 の幅方向に流れることとなる。
【0025】
尚、前記一対の電極4a,4b は、Alを従来周知のスパッタリング法等によって所定パターンに被着させた上、これを従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用し、所定パターンに加工することにより形成される。
【0026】
また更に前記発熱抵抗体3 や一対の電極4a,4b の上面には保護膜5 が被着されている。
【0027】
前記保護膜5 はSi3 N4 (窒化珪素)やSiC(炭化珪素)等の硬質で緻密な無機質材料から成り、該保護膜5 で発熱抵抗体3 や一対の電極4a,4b を被覆しておくことにより発熱抵抗体3 や一対の電極4a,4b をリライタブル感熱記録媒体の摺接による磨耗、並びに大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護するようになっている。
【0028】
前記保護膜5 は従来周知のスパッタリング法やプラズマCVD法等を採用することによって例えば2μm〜10μmの厚みに被着・形成される。
【0029】
かくして上述した第1形態の加熱体は、リライタブル感熱記録媒体を発熱抵抗体3 上に搬送しながら一対の電極4a,4b 間に所定の電力を印加し、リライタブル感熱記録媒体が発熱抵抗体3 上を通過している間、発熱抵抗体3 をジュール発熱させ続け、該発熱した熱でリライタブル感熱記録媒体を加熱し、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去することによって消去手段として機能する。
【0030】
次に、本発明の実施形態(第2の実施形態)となる加熱体について説明する。尚、先に述べた第1形態と同一の構成要素については同一の参照符を使用して説明を省略し、ここでは第1形態の加熱体と相違する点についてのみ説明することとする。
【0031】
図2は本発明の第2形態に係る加熱体の平面図であり、6 は帯状発熱抵抗体、7 はスリット、8 はトリミング用電極である。
【0032】
この第2形態の加熱体が第1形態のものと相違する点は、帯状発熱抵抗体6 の幅方向に複数のスリット7 を一定の間隔で設けて帯状発熱抵抗体6 を複数の区画61… 6n に区分し、帯状発熱抵抗体6 のシート抵抗をこの区画61… 6n 毎に異ならせている点である。これらの区画61… 6n は、各々の長さ及び幅が略一定で、一列状に配列されており、長手方向の中央域の区画ではシート抵抗が高く、両端域の区画ではシート抵抗が低くなしてある。
【0033】
また前記スリット7 は、その幅が10μm以下になしてあるため、その両側に位置する区画からの熱拡散によってスリット部も良好に温度上昇させることができ、リライタブル感熱記録媒体の可視像を確実に消去することができる。
【0034】
更にこの第2形態においては、発熱抵抗体6には一対の電極4a,4b以外に複数のトリミング用電極8が設けられており、該トリミング用電極8は前述した各区画に1対1に対応するようにして一方の電極4aの直下に配され、該電極4aに共通接続されている。
【0035】
かかる第2形態の加熱体においても帯状発熱抵抗体6 のシート抵抗が長手方向の中央域の区画で高く、両端域の区画で低くなっているため、発熱抵抗体6 の幅方向に通電がなされると長手方向中央域の区画では、中央域の区画よりも多くの熱エネルギーが発生するようになっており、それ故、リライタブル感熱記録媒体の可視像を消去するにあたって帯状発熱抵抗体6 を長時間、発熱させ続ける際に、絶縁基板1 の両端域より多くの熱が逃げようとしても両端域の温度が大幅に低下することはなく、加熱体表面の温度を長手方向にわたり均一化(±3度以内)することができる。従って発熱抵抗体6 の温度制御が容易で、リライタブル感熱記録媒体に不要な印画を形成することなく、リライタブル感熱記録媒体の全領域にわたって可視像を確実に消去することが可能となる。
【0036】
また第2形態の加熱体においては、発熱抵抗体6の各区画61…6nに1対1に対応してトリミング用電極8が設けられているため、これらトリミング用電極8と他方の電極4bとを使って各区画61…6nにパルストリミングを施すことで発熱抵抗体6のシート抵抗を比較的簡単に調整することができる。具体的には、一方の電極4aをトリミング用電極8上に被着させる前の段階で、発熱抵抗体6の両端域の区画に対して、例えば真空雰囲気中もしくは窒素雰囲気中で100W/mm2〜200W/mm2、0.01msec〜0.20msecのトリミングパルスを印加し、発熱抵抗体6の両端域を300℃〜700℃の温度でジュール発熱させて自身をアニールし、この部分の導電性を向上させることによって両端域のシート抵抗を低下させるか、或いは、発熱抵抗体6の中央域の区画に対して、酸素雰囲気中もしくは大気雰囲気中で5W/mm2〜10W/mm2、100msec〜1000msecのトリミングパルスを印加し、発熱抵抗体6の中央域を150℃〜200℃の温度でジュール発熱させるとともに該発熱部の表面付近に多量の酸素を結合させてこの部分の導電性を低下せしめ、両端域のシート抵抗を上昇させることにより行なわれる。
【0037】
尚、本発明は上述した第1,第2形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、改良等が可能である。
【0038】
【発明の効果】
本願発明の加熱体は、発熱抵抗体の各区画に1対1に対応してトリミング用電極が設けられているため、これらトリミング用電極と他方の電極とを使って各区画にパルストリミングを施すことで発熱抵抗体のシート抵抗を比較的簡単に調整することができるという作用を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1形態に係る加熱体の平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】本発明の第2形態に係る加熱体の平面図である。
【図4】従来の加熱体の平面図である。
【符号の説明】
1 ・・・絶縁基板、3,6 ・・・帯状発熱抵抗体、4a,4b ・・・一対の電極
Claims (1)
- 矩形状をなす絶縁基板の長手方向に沿って、略一定幅、略一定厚みの帯状発熱抵抗体と、該帯状発熱抵抗体の幅方向の両側で帯状発熱抵抗体の長辺に沿って接続される一対の電極とを配設し、前記帯状発熱抵抗体に複数のスリットを設けて、前記帯状発熱抵抗体を複数の区画に区分するとともに、該区画毎の発熱抵抗体のシート抵抗が長手方向の中央域で高く、両端域で低くなしてある加熱体であって、前記一対の電極の一方の電極の直下に、前記区画毎の発熱抵抗体に1対1に対応する複数のトリミング用電極が配設されていることを特徴とする加熱体。
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