JP2008062517A - サーマルヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】単一ヒータの主走査方向における発熱温度の分布が調節できるサーマルヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルヘッド10では、支持基板11上にグレーズ層12が形成され、グレーズ層12上に、第1の電極14、第2の電極15および帯状の発熱部16から成る単一ヒータが形成され、全体が保護層17で被覆される。第1の電極14は複数の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnに分割されている。第2の電極15は支持基板11の長手方向の両端部に導出される。サーマルヘッドの副走査方向の縁端に取り出された複数の分岐電極は、リード線l1、l2・・・ln−1、lnにより、配線板18の回路配線にそれぞれ電気接続されるようになっている。第2の電極15の導出部はボンディングワイヤーWにより、配線板18の別の回路配線に電気接続される。
【選択図】図1
【解決手段】サーマルヘッド10では、支持基板11上にグレーズ層12が形成され、グレーズ層12上に、第1の電極14、第2の電極15および帯状の発熱部16から成る単一ヒータが形成され、全体が保護層17で被覆される。第1の電極14は複数の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnに分割されている。第2の電極15は支持基板11の長手方向の両端部に導出される。サーマルヘッドの副走査方向の縁端に取り出された複数の分岐電極は、リード線l1、l2・・・ln−1、lnにより、配線板18の回路配線にそれぞれ電気接続されるようになっている。第2の電極15の導出部はボンディングワイヤーWにより、配線板18の別の回路配線に電気接続される。
【選択図】図1
Description
本発明は、単一ヒータを有するサーマルヘッドに関し、詳しくは単一ヒータの発熱温度の分布を調節することができるサーマルヘッドに関する。
現在、ICカード、磁気カードのようなカード類あるいは記録用紙などのシート類として、画像の書き込みおよび消去可能なリライタブル感熱記録媒体が用いられるようになっている。
上記リライタブル感熱記録媒体は、可逆的な感熱特性を有する材料により構成され、例えば100℃〜200℃の温度領域で短時間(例えば0.001sec程度)加熱することにより発色する。そして、その発色の温度よりも低い70℃〜110℃の温度領域で長時間(例えば0.1sec程度)加熱するとその色が消えるという可逆的な特性を有する。ここで、このような感熱特性は発色剤等に依って異なってくるが、いずれにしても、可視像の記録と消去を多数回にわたり繰り返すことが可能になり、省資源やリサイクルに適した記録媒体としてその用途が広がっている。
このリライタブル感熱記録媒体の可視像を消去するための消去手段としては単一ヒータから構成されたサーマルヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている単一ヒータは、サーマルヘッドにおいて記録媒体が搬送される方向(副走査方向)に直交する方向(主走査方向)に配設され互いに対向する一対の電極と、両電極間に形成した発熱抵抗体とで構成される。しかし、この構造では、サーマルヘッドの端部の電極の端子から主走査方向に遠ざかるに従い、電極に通電する電圧の電流パスにおける降下が大きくなる。このため、主走査方向においてヒータでの発熱温度が、端部で高くなり中央部では低くなるという発熱温度の不均一化をもたらしていた。この発熱温度の不均一化は、リライタブル感熱記録媒体の消去特性の不均一性につながる。
そこで、電極の電流パスにおける電圧降下を考慮し発熱温度の均一化を図った電極パターンの単一ヒータが種々に提案されている。その中で、上記低消費電力の単一ヒータを有するサーマルヘッドの一例について図5,6を参照して説明する。ここで、図5はサーマルヘッドを示す表面の一部を切り欠いた上面図であり、図6は図5のX−X矢視の拡大横断面図である。
図5,6に示すように、支持基板101上にグレーズ層102が形成され、このグレーズ層102上に発熱抵抗体層103が形成されている。そして、上記発熱抵抗体層103上に、第1の電極104aおよび第2の電極104bが間隙Gを挟んで対向して配置されている。ここで、第1の電極104aおよび第2の電極104bからなる一対の電極104a,104b(以下104とする)は、発熱抵抗体層103に重層し電気接続している。このようにして、上記間隙Gに露出する発熱抵抗体層103がサーマルヘッドの主走査方向に帯状に形成された発熱部105となる。
そして、後述するボンディングワイヤー接続のために一対の電極104の縁端部が露出され全体が保護膜106により被覆されている。このようにして、上記発熱抵抗体層103の発熱部105を有し、第1の電極104aおよび第2の電極104bの一対の電極104をそのリード電極とする単一ヒータがサーマルヘッドに形成される。
ここで、支持基板101は例えばアルミナセラミックスのような耐熱、絶縁体材料から成る。グレーズ層102はガラスやポリイミド樹脂等の低熱伝導性材料から成り、発熱部105の発する熱を蓄積あるいは放散する作用を為す。発熱抵抗体層103は、TaSiO等の電気抵抗体材料から成る。そして、一対の電極104はAl(アルミニウム)やCu(銅)等の低抵抗の金属材料から成る。上記保護膜106 はSi3N4(窒化珪素)やSiC(炭化珪素)等の硬質で緻密な無機質材料から成る。この保護膜106で一対の電極104、発熱部105を被覆しておくことにより、一対の電極104、発熱部105あるいは発熱抵抗体層103をリライタブル感熱記録媒体の摺接による磨耗、並びに大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護するようになっている。
そして、このサーマルヘッドでは、上記主要構成の他に、例えばフレキシブル配線板、プリント回路配線板等の配線板107が備えられており、第1の電極104aの上記露出部がボンディングワイヤーWにより、配線板107の回路配線に電気接続されている。同様に、第2の電極104bの上記露出部も配線板107の別の回路配線にボンディングワイヤーWを介して電気接続されている。そして、これ等のボンディングワイヤーWおよび保護層106の一部は、例えばモールド樹脂から成る封止材108によって気密封止されている。ここで、上記配線板107および支持基板101は、例えば放熱板109上に載置される構成になっている。なお、図5では図を簡明にするために封止材108の図示は省略してある。
上記サーマルヘッドを用いたリライタブル感熱記録媒体の可視像の消去では、画像の形成された例えばICカードあるいは記録用紙が、サーマルヘッドの保護膜106とプラテンローラとの間で挟圧され、副走査方向に所定の速度で搬送される。この搬送において、上記リライタブル感熱記録媒体は、発熱部105により加熱され、画像の消去に必要な所要の温度にされる。ここで、この加熱温度は、発熱部105に印加する予め設定された電源の電力および上記走査の速度により決まる。
特開2000−340346号公報
しかしながら、上記単一ヒータを有するサーマルヘッドの量産製造においては、支持基板101主面上に成膜する発熱抵抗体層103はその面内での膜厚バラツキあるいはその電気抵抗体材料の組成バラツキを有する。そして、これ等のバラツキは、発熱抵抗体層103のシート抵抗の分布となり、単一ヒータの主走査方向において、発熱部105の発熱温度に不均一性を生じさせるという問題があった。
また、従来の上記サーマルヘッドでは、記録媒体の幅寸法が増大して、単一ヒータの主走査方向の長さが増大し長尺化すると、たとえ低抵抗の金属材料によりリード電極を形成しても、電極の電流パスにおける電圧降下がより顕在化するようになる。そして、単一ヒータの主走査方向の発熱温度の均一化が難しくなるという問題があった。
そして、単一ヒータにおける発熱温度の均一性が低下すると、リライタブル感熱記録媒体の画像消去において可視像の消去ムラが生じ易くなる。ここで、発熱温度の不均一に起因する加熱過剰な感熱記録媒体の領域では、熱的損傷が生じ易くその再使用が難しくなる。一方、加熱不足になる感熱記録媒体の領域では、画像の消去が不充分で残像が生じ再度の消去作業が必要になってくる。
上述したようなサーマルヘッドにおける問題は、例えばカラープリンタ、フォトプリンタ等における画像の光沢層の形成すなわちオーバーコート層形成あるいは高精細な画像の定着においても同様に起こってくる。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、単一ヒータの主走査方向における発熱温度の均一化が簡便にできるサーマルヘッドを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明にかかるサーマルヘッドは、矩形状の支持基板上に形成した絶縁体材料から成る保温層と、前記保温層上に前記支持基板の長手方向に沿って形成した帯状の発熱抵抗体と、前記長手方向に沿って前記発熱抵抗体に接続し該発熱抵抗体を挟んで対向する第1の電極および第2の電極と、前記発熱抵抗体、前記第1の電極および前記第2の電極を被覆する絶縁体材料から成る保護層と、を備えたサーマルヘッドにおいて、前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の近傍から前記支持基板上の前記長手方向に直交する方向の縁端までに亘り設けられた複数のスリットにより、複数の分岐電極に分割されて抵抗調節され、前記第2の電極は、前記支持基板の長手方向の両端側に取り出される構成になっている。
本発明の構成により、単一ヒータの主走査方向における発熱温度の分布が調節でき、上記方向における発熱温度分布の均一化が容易になる。そして、リライタブル感熱記録媒体の画像消去および記録媒体のオーバーコート層の形成が、高品位性、高信頼性の下にできるようになる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略される。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる。ここで、図1は好適な一態様のサーマルヘッドを示す表面の一部を切り欠いた上面図である。なお、このサーマルヘッドの断面構造は図6で説明したのと同様になるのでその図示は省略される。
図1に示すように、サーマルヘッド10では、例えばアルミナ等のセラミックスから成る支持基板11の表面に保温層であるグレーズ層12が形成されている。そして、このグレーズ層12上に発熱抵抗体層13が形成されている。
そして、発熱抵抗体層13に重層して接続し間隙Gを挟んで対向する第1の電極14および第2の電極15が配設されている。このようにして、上記間隙Gにおいて露出する発熱抵抗体層13が、サーマルヘッドの主走査方向となる支持基板11の長手方向に沿い帯状に形成された、発熱抵抗体である発熱部16となる。ここで、発熱抵抗体層13は、後述するように、発熱抵抗体である発熱部16を除いて第1の電極14と第2の電極15の電極パターンと同一のパターンに形成するとよい。
ここで、本実施形態の特徴的事項となる第1の電極14は、支持基板11上において、発熱部16の近傍からその長手方向に直交する方向の縁端までに亘り設けられた複数のスリットにより、複数の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnに分割されている。この第1の電極の分割の程度は、発熱抵抗体層13のシート抵抗のバラツキあるいはサーマルヘッドのサイズによるが、その分岐電極の数にして例えば100〜1000個の程度になる。そして、これ等の分岐電極には、支持基板11の上記縁端においてそれぞれの外部接続端子が形成されている。また、第2の電極15は、支持基板11の長手方向の両端部まで取り出される。そして、第2の電極15の上記両端部まで取り出された導出部は、上記支持基板11の長手方向に直交する方向の縁端において外部接続端子になる。
そして、例えばリード線接続あるいはボンディングワイヤー接続のために、第1の電極14を構成する上記複数の分岐電極の外部接続端子および第2の電極15の外部接続端子が露出され、第1の電極14、第2の電極15および発熱抵抗体層13を被覆し絶縁体材料から成る保護層17が形成されている。このように、上記発熱抵抗体層13の発熱部16、分割した第1の電極14、および第2の電極15から成る単一ヒータがサーマルヘッド10に形成されている。
そして、上記主要構成の他に配線板18が備えられ、サーマルヘッド10の副走査方向の縁端に取り出された上記複数の分岐電極の外部接続端子が、リード線l1、l2・・・ln−1、lnにより、配線板18の回路配線にそれぞれ電気接続されるようになっている。また、サーマルヘッド10の主走査方向の両端部に取り出された第2の電極15はその露出した外部接続端子が、例えばボンディングワイヤーWにより、配線板18の別の回路配線に電気接続されている。
そして、これ等のリード線l1、l2・・・ln−1、lnおよびボンディングワイヤーWが形成された領域に、例えばモールド樹脂から成る封止材19が形成される。ここで、上記配線板18および支持基板11は、例えば放熱板上に載置される構成になっていると好適である。なお、上記リード線l1、l2・・・ln−1、lnに代えて、それぞれボンディングワイヤーが形成されるようになっていてもよい。
上記サーマルヘッド10において、支持基板11は、通常、耐熱性を有する絶縁体材料から成る絶縁基板であり、アルミナセラミックスの他に、シリコン、石英、炭化珪素等のセラミックスにより構成されてもよい。
そして、上記グレーズ層12は、発熱部16から発する熱を蓄積し保温する作用を有し、表面平滑性のある絶縁体材料であればよい。例えば酸化珪素から成るガラス膜、あるいはポリイミド樹脂等の低熱伝導性材料から成る。
上記発熱抵抗体層13は、例えばTaSiO、NbSiO、TaSiON、TiSiCO系の電気抵抗体材料からなる。そして、第1の電極14、第2の電極15の一対の電極は低抵抗になるほど好ましく、例えば、Al、CuあるいはAlCu合金等の金属を主材料に構成される。
そして、保護層17は、Si3N4、SiON(酸窒化珪素)やSiC等の硬質で緻密な絶縁体材料から成る。この保護層17は、発熱部16、上記一対の電極14,15を被覆し記録媒体の圧接あるいは摺接による磨耗、並びに大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する機能を有する。
次に、上記サーマルヘッド10の製造について述べる。先ず、Al2O3(アルミナ)セラミックスからなる細長の支持基板11の表面に、例えばSiO2(酸化珪素)のガラス粉末に適当な有機溶媒、溶剤を添加・混合して得たガラスペーストを周知のスクリーン印刷法で塗布形成する。そして、所定の温度で焼成し所要の膜厚のガラス膜から成るグレーズ層12を支持基板11表面に被着させる。このグレーズ層12その他にポリイミド樹脂等であってもよい。
グレーズ層12の材質および膜厚は、発熱部16で生じる熱の蓄積および放散を決める要素であり、可視像の印画および画像消去あるいはオーバーコート層形成における温度制御に大きく関係してくる。このために、この材質あるいは膜厚は例えばリライタブル感熱記録媒体の温度特性にあわせて適切に設定される。
次に、グレーズ層12上に、例えばスパッタ法により膜厚が0.05μm程度のTaSiO2膜、および例えば膜厚が0.5μ程度のAl膜あるいはAlCu合金膜を成膜する。そして、フォトエッチングプロセスにより上記Al膜あるいはAlCu合金膜と上記TaSiO2膜を同一パターン形状に加工して電極14,15のパターンを形成する。
引き続いて、フォトエッチングプロセスにより、発熱抵抗体層13の所定領域が帯状に露出するように上記Al膜あるいはAlCu合金膜をエッチング加工し発熱部16を形成する。このようにして、複数の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnから成る第1の電極14、および第2の電極15をパターニング形成する。そして、発熱抵抗体層13は、上述したように発熱抵抗体である発熱部16を除いて第1の電極14と第2の電極15の電極パターンと同一のパターンに形成される。
その後、スパッタ法により全面を被覆する保護層17を成膜する。ここで、保護層17は、例えば膜厚が2μm〜20μm程度のSi3N4膜等から成る。
次に、その表面に回路配線が形成されている配線板18および上記支持基板11をアルミ板等から成る放熱板上に接着剤を介して載置し固着する。そして、例えばリード線l1、l2・・・ln−1、lnの中で後述するように所要のリード線を選択的に配線板18の回路配線に電気接続する。同様に、サーマルヘッド10の両端部まで取り出した第2の電極15の外部接続端子を、ボンディングワイヤーWにより、配線板18の別の回路配線に電気接続する。
そして、最後に、周知の実装技術により、上記リード線l1、l2・・・ln−1、lnおよびボンディングワイヤーWを封止材19により気密封止する。このようにして、本実施形態のサーマルヘッド10が出来上がる。このリード線l1、l2・・・ln−1、lnの選択的接続では、全リード線を電気接続した後に所要のリード線を残し不要のリード線を切断する。
次に、図2を参照して、本実施形態の一変形例のサーマルヘッド10aについて簡単に説明する。この変形例の特徴は、上記リード線に替えたスイッチング素子S1、S2・・・Sn−1、Snを介して、第1の電極14を構成する複数の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnの所要の分岐電極を選択的に配線板18の回路配線と電気接続するところにある。ここで、その他の構成および製造方法は上記実施形態の場合と同様である。
このようなスイッチング素子は半導体デバイスにより構成されるとよい。このスイッチング素子を用いた選択的接続は、上記リード線あるいはボンディングワイヤーを用いる場合よりも、その選択操作が簡便になる。そして、この選択操作は駆動ICを用いた制御により行うと好適である。なお、この駆動ICは配線板18に実装させるとよい。
本実施形態の変形例としては、上記一変形例以外にも種々の態様がある。例えば、配線板18に多数の可変抵抗を配置し、図1で説明したリード線l1、l2・・・ln−1、lnとそれぞれに電気接続する。この場合には、全てのリード線は上記可変抵抗を介して配線板18の回路配線に接続される。そして、後述するように、発熱部16の長手方向の発熱温度分布が均一化するようにそれぞれの可変抵抗の抵抗値を調節するようにしてもよい。ここで、可変抵抗は、例えばトリミングが容易にできる炭素被覆抵抗器などが好適である。この場合において、その他の構成および製造方法は上記実施形態の場合と同様になる。
第1の電極14の分岐電極D1、D2・・・Dn−1、Dnをそれぞれに可変抵抗を介して配線板18の回路配線に接続する上記態様は、上記リード線あるいはスイッチング素子を用いる場合よりも、第1の電極14において抵抗の微細な調節が可能になる。そして、サ−マルヘッドにおいて、その主走査方向の単一ヒータの発熱温度は、簡便にしかも極めて高い均一性を有するようにできる。
次に、上述した本実施形態のサーマルヘッドの動作機構について図3を参照して説明する。
図3は、例えば図1,2に示すサーマルヘッド(10,10a)において、発熱部16の一端から主走査方向である長手方向位置を横軸にとり、縦軸に電流パス抵抗と発熱温度を示した模式図である。ここで、電流パスは、第1の電極の外部接続端子から、第1の電極14、発熱部16、第2の電極15を経て、第2の電極の端部側の外部接続端子に至る電流経路である。
電極を形成する電極薄膜の厚さを一定とすると、電流パスが長いほど、パス抵抗が高くなり、電流が流れにくくなる。
図1の構造では主走査方向にライン状に配列された複数の発熱部に対して、第1の電極14は端部側の発熱部に対して電流パスが長く、第2の電極15は中央部側の発熱部に対して電流パスが長い。第1の電極14と第2の電極15の電流パスの組み合わせで各々の発熱部に対する電流パス抵抗が決まり、発熱部の発熱温度がきまる。
図3はその一例を示しており、パス抵抗特性は第1の電極14の分岐により調節される。
電極を形成する電極薄膜の厚さを一定とすると、電流パスが長いほど、パス抵抗が高くなり、電流が流れにくくなる。
図1の構造では主走査方向にライン状に配列された複数の発熱部に対して、第1の電極14は端部側の発熱部に対して電流パスが長く、第2の電極15は中央部側の発熱部に対して電流パスが長い。第1の電極14と第2の電極15の電流パスの組み合わせで各々の発熱部に対する電流パス抵抗が決まり、発熱部の発熱温度がきまる。
図3はその一例を示しており、パス抵抗特性は第1の電極14の分岐により調節される。
上記電流パスにおいて、通常では、発熱抵抗体層13のシート抵抗は、第1の電極14あるいは第2の電極15のシート抵抗より3桁程度高くなる。この場合、電流パス抵抗は、発熱部16の電流パス分が大部分を占める。そして、支持基板11上における発熱抵抗体層13のシート抵抗の分布は、そのバラツキが5%程度であっても、単一ヒータの発熱温度分布の均一性に大きく影響するようになる。
この場合、図3は、例えば上記発熱抵抗体層13のシート抵抗のバラツキにより、電流パス抵抗が発熱部16の長手方向の中央領域で高くなり、その両端側で低くなることを示す。そして、この電流パス抵抗の分布の傾向とは逆に、発熱部の発熱温度は、その中央領域で低く、両端部で高くなる。そこで、本実施形態では、第1の電極14のパターンをスリットにより分割し多数の分岐電極にして、電流パスの断面積を変え、その抵抗を調節することで、上記発熱部16における電流パス抵抗のバラツキを補償する。
例えば、図1に示したリード線l1、l2・・・ln−1、lnのうち上記長手方向の両端側のリード線は選択して切断し、その中央領域のリード線を接続させると、上記第2の電極15および第1の電極14に亘る電流パスの抵抗が、その両端側で高くなり、発熱部の長手方向の中央領域で相対的に低下する。このように調節することにより、電流パス抵抗の分布が発熱部の長手方向位置で一様化する。それと共に、発熱温度分布も発熱部の長手方向で均一化するようになる。
図2に示したスイッチング素子S1、S2・・・Sn−1、Snを取り付けたサーマルヘッド10aの場合も全く同様にして、発熱部16の長手方向の発熱温度分布を調節することができる。この場合、上述したように駆動ICを用いて、上記接続/切断の選択制御をするとその作業性が極めて高くなる。
あるいは、リード線l1、l2・・・ln−1、lnにそれぞれ電気接続した可変抵抗の抵抗値を調節することにより、発熱部16の電流パス抵抗のバラツキを相殺して、電流パス抵抗の分布を発熱部の長手方向位置で一様化することができる。この可変抵抗の抵抗値の調節は、例えば周知の炭素被膜抵抗器のトリミングにより極めて簡便に行える。
上記電流パスにおいて、記録媒体の幅寸法が増大して、単一ヒータの主走査方向の長さが増大し長尺化すると、第1の電極14あるいは第2の電極15の電流パス抵抗分も大きく影響するようになる。この場合においても、上述したのと全く同様な調節をすることにより、電流パス抵抗の分布が発熱部の長手方向位置で一様化する。そして、単一ヒータにおける発熱温度分布が発熱部の長手方向で均一化する。
ここで、上述したリード線l1、l2・・・ln−1、lnの選択的な切断、スイッチング素子S1、S2・・・Sn−1、Snの選択的接続、あるいは可変抵抗等の調節は、次のようにして行うとよい。初めに、サーマルヘッドに対して、プラテンローラにより感熱記録媒体を狭圧し圧送した後の上記感熱記録媒体の色濃度により発熱温度分布を測定する。その後に、上記色濃度が主走査方向で均一になるように、リード線l1、l2・・・ln−1、lnの選択的な切断、スイッチング素子S1、S2・・・Sn−1、Snの選択的接続、あるいは可変抵抗の調節を行う。あるいは、サーマルヘッドの製造工程において、支持基板11主面に成膜した発熱抵抗体層13のシート抵抗分布を測定して、そのバラツキを補償するように上記調節を行う。
上述したように調節した上記サーマルヘッド(10,10a)は、例えばサーマルプリンタ等に取り付けられ、その制御装置から通電パルス例えば方形波形の電圧パルスが配線板18を介して単一ヒータの第1の電極14および第2の電極15に印加される。この通電パルスの印加により発熱部16の長手方向において一様に電流が流れてジュール熱が均一に発生する。そして、この均一化した熱がサーマルヘッド10の副走査方向に圧送される記録媒体を加熱する。
例えば、上記サーマルヘッド10を用いたリライタブル感熱記録媒体の可視像の消去では、画像の形成された例えばICカードあるいは記録用紙が、サーマルヘッドの保護層17と例えばプラテンローラとの間で挟圧され、副走査方向に所定の速度で搬送される。この搬送において、上記リライタブル感熱記録媒体は、上記主走査方向に帯状に均一化された発熱により加熱され、画像の消去に必要な所要時間のあいだ所要温度にされる。ここで、この加熱温度は、上述した記録媒体の感熱温度に合わせて設定され、所要時間のあいだ上記加熱温度になるような通電パルスが第1の電極14と第2の電極15に印加されることになる。
また、上記サーマルヘッド10を用いたオーバーコート層形成では、例えば熱融着により画像が転写形成された記録媒体が、サーマルヘッドの保護層17と例えばプラテンローラで摺接され、副走査方向に所定の速度で搬送される。ここで、記録媒体は、上記主走査方向に帯状に均一化した発熱により加熱され、オーバーコート層形成に必要な時間のあいだ所要温度にされる。ここで、上記加熱温度になるように通電パルスが第1の電極14と第2の電極15に印加されることになる。また、画像の定着の場合もオーバーコート層形成と同様になされる。
次に、本実施形態の単一ヒータを有するサーマルヘッドの発熱温度の均一性について、図4を参照し図5,6で説明した従来例の単一ヒータの場合と比較して説明する。図4は横軸に単一ヒータの発熱部の長手方向位置をとり、縦軸にその位置での発熱温度を示す。ここで、比較に用いた従来例の単一ヒータは、本実施形態で第1の電極を複数の分岐電極に分割する以外は全く同じになっている。なお、サーマルヘッドはA3サイズの記録媒体に対応できる大きさのものである。そして、第1の電極を接地電位に固定し、第2の電極を正電位にして発熱させた単一ヒータの温度分布である。
本実施形態のサーマルヘッドは、その変形例の場合であっても、図4の実線に示すような略均一化した発熱温度の分布を有する。これに対して、従来例の場合では、単一ヒータの主走査方向の両端近傍で温度が高くなりその中間領域で温度が低くなる温度分布となる。更に、この場合には、発熱抵抗体層13のシート抵抗のバラツキに起因する波打ち状の発熱温度分布がみられる。このように、本実施形態のサーマルヘッドの単一ヒータでは、上述したように第1の電極14の分岐電極の接続/切断あるいは可変抵抗を制御することにより発熱温度の均一性を大幅にしかも簡便に向上させることができる。
本実施形態では、第1の電極14、第2の電極15および帯状の発熱部16から構成された単一ヒータの第1の電極14に対して複数のスリットを形成し複数の分岐電極に分割する。そして、それぞれの分岐電極は、適宜に選択されて配線板18の回路配線に電気接続できるようになっている。あるいは、それぞれに可変抵抗を介して回路配線に電気接続するようになっている。このために、サ−マルヘッドにおいて主走査方向の単一ヒータの発熱温度分布は、上記分岐電極の電気接続あるいは可変抵抗を調節することにより、極めて簡便に均一化することができる。そして、発熱抵抗体層13にシート抵抗の分布があっても、また、主走査方向において単一ヒータの長さが増大し長尺化しても、容易に発熱温度分布の均一化ができ、しかもその製造歩留まりが大幅に向上する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
例えば、第1の電極14および第2の電極15は、上記実施形態のようなものに限らず種々の電極パターンであってもよい。第1の電極14は矩形状の電極パターンであっても構わない。
また、発熱抵抗体13は、上記実施形態のようなパターンに限定するものでなく種々のパターンであってもよい。例えば、帯状のパターンであっても構わない。
また、サーマルヘッドに供給される通電パルスは、方形波形の他に、正弦波形、のこぎり波形等、時間的に変化する波形であってもよい。更に、上記パルス状の電圧に限定されるものではなく、所定の時間に一定の電圧が印加されるようなものであっても構わない。
10…サーマルヘッド,11…支持基板,12…グレーズ層,13…発熱抵抗体層,14…第1の電極,15…第2の電極,16…発熱部,17…保護層,18…配線板,19…封止材,20…放熱板,G…間隙,W…ボンディングワイヤー,D1、D2・・・Dn−1、Dn…分岐電極,l1、l2・・・ln−1、ln…リード線,S1、S2・・・Sn−1、Sn…スイッチング素子
Claims (5)
- 矩形状の支持基板上に形成した絶縁体材料から成る保温層と、前記保温層上に前記支持基板の長手方向に沿って形成した帯状の発熱抵抗体と、前記長手方向に沿って前記発熱抵抗体に接続し該発熱抵抗体を挟んで対向する第1の電極および第2の電極と、前記発熱抵抗体、前記第1の電極および前記第2の電極を被覆する絶縁体材料から成る保護層と、を備えたサーマルヘッドにおいて、
前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の近傍から前記支持基板上の前記長手方向に直交する方向の縁端までに亘り設けられた複数のスリットにより、複数の分岐電極に分割されて抵抗調節され、前記第2の電極は、前記支持基板の長手方向の両端側に取り出されていることを特徴とするサーマルヘッド。 - 前記複数の分岐電極のうち所要の分岐電極が、前記縁端において、前記発熱抵抗体の長手方向における発熱温度分布が均一化するように前記配線板の回路配線に電気接続し、前記第2の電極は、前記両端側において、前記配線板の別の回路配線に電気接続していることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
- 前記所要の分岐電極は、リード線あるいはボンディングワイヤーにより前記配線板の回路配線に電気接続していることを特徴とする請求項2に記載のサーマルヘッド。
- 前記所要の分岐電極は、スイッチング素子を介して前記配線板の回路配線に電気接続していることを特徴とする請求項2に記載のサーマルヘッド。
- 前記複数の分岐電極は、それぞれに可変抵抗を介して前記配線板の回路配線に電気接続し、前記第2の電極は、前記両端側において、前記配線板の別の回路配線に電気接続していることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
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JP2006242965A JP2008062517A (ja) | 2006-09-07 | 2006-09-07 | サーマルヘッド |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN102233741A (zh) * | 2010-04-21 | 2011-11-09 | 阿尔卑斯电气株式会社 | 热敏头 |
-
2006
- 2006-09-07 JP JP2006242965A patent/JP2008062517A/ja not_active Withdrawn
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