JP2004230583A - サーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能となる高性能のサーマルヘッド並びにサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】基板1の上面に、複数の発熱抵抗体3と、該発熱抵抗体3の両端に接続される一対の電極4(4a,4b)とを被着させ、発熱抵抗体3及び一対の電極4(4a,4b)を保護膜6で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜6上で、且つ少なくとも発熱抵抗体3の配列領域にわたり導電膜7を被着させるとともに、該導電膜7を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極4(4a,4b)の電位と略等しい電位に保持する。
【選択図】図3
【解決手段】基板1の上面に、複数の発熱抵抗体3と、該発熱抵抗体3の両端に接続される一対の電極4(4a,4b)とを被着させ、発熱抵抗体3及び一対の電極4(4a,4b)を保護膜6で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜6上で、且つ少なくとも発熱抵抗体3の配列領域にわたり導電膜7を被着させるとともに、該導電膜7を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極4(4a,4b)の電位と略等しい電位に保持する。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとして用いられるサーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドは、例えば図5に示す如く、アルミナセラミックスからなる基板21の上面に、直線状に配列される複数の発熱抵抗体23と、該発熱抵抗体23の両端に接続される一対の電極とを被着するとともに、これら発熱抵抗体23、一対の電極24を保護膜26で被覆した構造のものが知られており、感熱紙やインクフィルム等の記録媒体Mを保護膜26の表面に対して摺接させつつ発熱抵抗体23上に搬送しながら、多数の発熱抵抗体23を外部からの画像データに基づいて個々に選択的にジュール発熱させるとともに、その熱を保護膜26を介して記録媒体Mに伝導させることによって印画を形成するようになっている。
【0004】
なお、前記一対の電極24は、発熱抵抗体23の一端側に共通に接続され、発熱抵抗体23の配列に沿って帯状に配される共通電極24aと、発熱抵抗体23の他端側に個別に接続される個別電極24bとで構成されており、共通電極24aが所定の電位(例えば24V)に保持された外部電源のプラス端子に、個別電極24bが図示しないドライバーICのスイッチング素子を介してグランド電位(例えば0V)に保持された外部電源のグランド端子にそれぞれ接続され、ドライバーICのスイッチング素子がオン状態の時、前記発熱抵抗体23に電力が供給される。
【0005】
また前記保護膜26は、窒化珪素(Si3N4)やサイアロン(Si−Al−O−N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体23や一対の電極24を記録媒体Mの摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−47652号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のサーマルヘッドにおいては、記録媒体Mが保護膜表面に繰り返し摺接されると、記録媒体Mの表面に付着した静電気の一部が保護膜26上に蓄積され、保護膜26と発熱抵抗体23との間で放電を起こして保護膜26が絶縁破壊する恐れがあり、保護膜26を長期にわたり良好に機能させることが困難となる問題点があった。
【0008】
また、上述した従来のサーマルヘッドを動作させずに待機させておく場合、ドライバーIC内のスイッチング素子がオフ状態となっているため、共通電極24aや個別電極24bの電位は、共通電極24aが接続される外部電源のプラス端子の電位(24V)に保持される。一方、記録媒体Mや保護膜表面の電位は通常0Vに近い電位に保持され、記録媒体Mの表面に静電気が付着している場合、数百Vの高電位に保持される。それ故、保護膜26と発熱抵抗体23との間に大きな電位差を生じることとなり、保護膜26中には上方(基板21の下面側より上面側に向かう方向)もしくは下方に向かって大きな電界が発生する。このような状態を長時間放置すると、記録媒体Mの内部に存在するNa+やK+やCl―等のイオンが保護膜26中に侵入し、該侵入したイオンが発熱抵抗体23まで到達して発熱抵抗体23が腐食することがあり、発熱抵抗体23の発熱特性が劣化してサーマルヘッドの機能を低下させるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持することを特徴とするものである。
【0011】
そして本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、前記導電膜の電位の切り換えを行うためのスイッチング手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持したことから、印画時には記録媒体に付着した静電気を導電膜を介してグランドに逃がすことができる上に、待機時には保護膜中に大きな電界が発生することを有効に防止することができる。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタが実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの平面図、図2は図1のサーマルヘッドの断面図、図3は印画時及び待機時における保護膜中の電界の方向を示す模式図であり、同図に示すサーマルヘッドは、大略的に、基板1の上面に、発熱抵抗体3や一対の電極4、保護膜6、導電膜7を設けた構造を有している。
【0014】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の絶縁材料や、表面に酸化珪素膜や窒化珪素膜が設けられた単結晶シリコン等の半導体材料等、種々の材料により矩形状を成すように形成されており、その上面には、複数の発熱抵抗体3や一対の電極4、保護膜6、導電膜7等が設けられ、これらを支持する支持母材として機能する。
【0015】
このような基板1は、アルミナセラミックスからなる場合、例えば、アルミナ・シリカ・マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶媒・有機溶剤を添加・混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによりセラミックグリーンシートを得、しかる後、該セラミックグリーンシートを矩形状に打ち抜いた上、高温(約1600℃)で焼成することによって製作される。
【0016】
また前記基板1の上面には、ガラス製の部分グレーズ層2が基板1の長手方向に帯状に被着され、その頂部付近には多数の複数の発熱抵抗体3が設けられる。
【0017】
前記部分グレーズ層2は、例えば曲率半径1mm〜4mmの断面円弧状をなすように形成されており、その頂部の厚みは20μm〜160μmに設定される。
【0018】
この部分グレーズ層2は、低熱伝導性(熱伝導率:0.7W/m・K〜1.0W/m・K)のガラスにより形成されているため、その内部で発熱抵抗体3の発する熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答特性を良好に維持する作用、具体的には、発熱抵抗体3の温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0019】
前記複数の発熱抵抗体3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列されており、各々がTaSiO系、TiSiO系、TiCSiO系等の電気抵抗材料から成っているため、その両端に接続される一対の電極4を介して外部からの電力が供給されるとジュール発熱を起こし、感熱紙に印画を形成するのに必要な温度、例えば150℃〜400℃の温度に発熱する。
【0020】
また、前記各発熱抵抗体3の両端に接続される一対の電極4は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属材料により形成されており、大略的に共通電極4aと個別電極4bとから構成されている。
【0021】
前記共通電極4aは、その一部が発熱抵抗体3の配列に沿って設けられ、かかる部分で発熱抵抗体3の一端側に共通に接続されており、一方、個別電極4bは発熱抵抗体3の他端側に個別に接続されている。
【0022】
このような共通電極4a及び個別電極4bは、共通電極4aが所定の電位(例えば24V)に保持された第1外部電源のプラス端子Vh1に、個別電極4bがドライバーIC5内のスイッチング素子を介してグランド電位(例えば0V)に保持された第1外部電源のグランド端子GND1にそれぞれ接続されているため、ドライバーIC5内のスイッチング素子がオン状態の時、第1外部電源より発熱抵抗体3に電力が供給されるようになっている。尚、スイッチング素子がオン状態の時、共通電極4a−第1外部電源のプラス端子Vh1間、並びに個別電極4bと第1外部電源のグランド端子GND1間の双方が接続状態にあるため、共通電極4aが約24Vに、個別電極4bが約0Vに保持される。一方、スイッチング素子がオフ状態の時、共通電極4a−第1外部電源のプラス端子Vh1間が接続状態にあるものの、個別電極4b−第1外部電源のグランド端子GND1間が非接続状態となるため、共通電極4a、個別電極4bは共に約24Vに保持される。
【0023】
上述した複数の発熱抵抗体3及び一対の電極4は、従来周知の薄膜形成技術、具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィー技術、エッチング技術等を採用することにより所定パターンを成すように基板1の上面に被着・形成される。
【0024】
更に前記ドライバーIC5は、各々の回路形成面(下面)に、シフトレジスタやラッチ回路,スイッチング素子、入出力端子等の電子回路が高密度に集積されており、複数の発熱抵抗体3を選択的に発熱させる作用、具体的には、外部より供給される画像データに基づいてスイッチング素子のオン・オフを切り替え、各発熱抵抗体3への通電を制御する作用を為す。
【0025】
尚、前記ドライバーIC5は、下面に電子回路を有したフリップチップ型ICである場合、例えば、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)を採用することにより、単結晶シリコンからなるインゴット(塊)を形成するとともに、これをダイヤモンドカッター等を用いて板状にスライスし、しかる後、該板体の下面に従来周知の半導体製造技術を採用することにより、シフトレジスタやラッチ回路等の電子回路を高密度に集積させることによって製作され、得られたドライバーIC5を従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC5の下面に設けられた端子を、対応する一対の電極4上の端子に半田を介して接合させることによって、ドライバーIC5が一対の電極4に電気的に接続される。
【0026】
一方、前記発熱抵抗体3及び一対の電極4上には保護膜6が被着されており、該保護膜6によって発熱抵抗体3や一対の一対の電極4が共通に被覆されている。
【0027】
前記保護膜6は、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si−Al−O−N)、炭化珪素(SiC)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体3や一対の電極4等を記録媒体Mの摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0028】
尚、上述した保護膜6は、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD(ChemicalVapor Deposition)法やスパッタリング等を採用し、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si−Al−O−N)、炭化珪素(SiC)等の無機質材料を発熱抵抗体3や一対の電極4等の上面に2μm〜20μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0029】
そして、前記保護膜6上には、発熱抵抗体3の配列領域にわたって導電膜7が被着されている。
【0030】
前記導電膜7は、TaB2やTiB2等のホウ化物、SiCやTiC、W2C等の炭化物、TaNやTiN,TaSiNO等の窒化物、あるいはTaSiO等、種々の電気抵抗材料により帯状を成すように形成されており、その一部、具体的には導電膜7の長手方向の一端側が後述するスイッチング手段SWを介して第2外部電源に接続されており、かかるスイッチング手段SWの切り換えにより、サーマルヘッドの印画時には導電膜7がグランド電位(例えば0V)に保持される第2外部電源のグランド端子GND2に接続される。一方、サーマルヘッドの待機時には導電膜7が電極4の電位(共通電極4aが接続される第1外部電源のプラス端子の電位)と略等しい電位(導電膜7と電極4との電位差Vaが±2V以内)に保持された第2外部電源のプラス端子Vh2に接続されている。
【0031】
このため、印画時においては、記録媒体Mが導電膜7に対して摺接する際に、記録媒体Mの表面に付着した静電気が0Vに保持された導電膜7を介して良好にグランドに逃がされることとなり、保護膜6の絶縁破壊を有効に防止して保護膜6を長期にわたり良好に機能させることが可能となる。
【0032】
一方、待機時においては、導電膜7と一対の電極4との間の電位差Vaを小さくすることで保護膜6中に大きな電界が発生することを有効に防止することができ、それ故、記録媒体M内に存在するNa+イオンやK+イオン、Cl−イオン等のイオンが発熱抵抗体3まで到達することで発熱抵抗体3が腐食されるといった不具合が有効に防止され、発熱抵抗体3の発熱特性を良好に維持することが可能となる。
【0033】
このとき、導電膜7と一対の電極4との間の電位差Vaを±1Vの範囲内に設定しておけば保護膜6中に発生する電界をより小さくすることができ、保護膜6中に膜欠陥が多い場合であっても、イオンが発熱抵抗体3まで到達して発熱抵抗体3が腐食されることを有効に防止することが可能となる。
【0034】
また導電膜7と保護膜6との間に発生する電界をできるだけ小さくするには、保護膜6の厚みdを大きくすることが好ましいが、保護膜6の厚みdを大きくすると、発熱抵抗体3の熱が記録媒体Mに伝導しにくくなり、サーマルヘッドの熱効率が低下するおそれがあることから、保護膜6の厚みdを4μm〜10μmの範囲内に設定することが好ましい。
【0035】
尚、印画時においては導電膜7の電位がグランド電位に保持されるため、保護膜中には上方向の電界が発生するため、かかる電界により記録媒体Mに存在するイオンが保護膜6中に侵入して発熱抵抗体3を腐食することが懸念されるが、印画時には記録媒体Mが導電膜7に対して摺接しており、その間、イオンが記録媒体Mより遊離しにくい上に、仮にイオンが記録媒体M内より遊離したとしても、印画時間は待機時間に比べて通常短く、記録媒体M内のイオンが発熱抵抗体3まで到達する時間はないことから、イオンが発熱抵抗体3まで到達しにくい状況である。従って、印画時において導電膜7の電位をグランド電位に保持したとしても、発熱抵抗体3が記録媒体M内のイオンによって腐食されるといった不具合は有効に防止される。
【0036】
上述したような導電膜7は、前記保護膜6と同様に、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD法やスパッタリング等を採用し、先に述べた電気抵抗材料を保護膜6の上面の所定領域に0.02μm〜0.2μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0037】
そして、上述したサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタは、図4に示す如く、スイッチング手段SWと、プラテンローラ9と、搬送ローラ10a、10b、10c、10dとを含んで構成されている。
【0038】
前記スイッチング手段SWは、リレーやスイッチングトランジスタ等からなり、外部より供給される制御信号に基づいてスイッチを切り換えて、導電膜7を第2外部電源のプラス端子もしくはグランド端子に選択的に接続する作用を為している。
【0039】
また前記プラテンローラ9は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に回転可能に支持され、記録媒体Mを発熱抵抗体3上の保護膜表面に押圧しつつ記録媒体Mを発熱抵抗体3の配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0040】
更に前記搬送ローラ10a,10b,10c,10dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し記録媒体Mの搬送方向上流側(ドライバーIC5側)と下流側(発熱抵抗体3側)に分かれて配設され、これらの搬送ローラ10a,10b,10c,10dと前述のプラテンローラ9とで記録媒体Mの走行を支持している。
【0041】
そして、これと同時に多数の発熱抵抗体3をドライバーIC5の駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を保護膜6や導電膜7を介し記録媒体Mに伝導させることによって所定の印画が形成される。
【0042】
尚、本発明は上述の実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更・改良が可能である。
【0043】
例えば、上述の実施形態において、前記保護膜6をSiを含む無機質材料、例えばSiCやSiO2,Si3N4,Si−Al−O−N等により、導電膜7を、Siを含む電気抵抗材料、すなわち、SiCやTaSiO、TaSiNO等により形成しておけば、保護膜と導電膜の双方にSiが含まれることとなり、両者のなじみが良くなって保護膜に対する導電膜の密着性を大幅に向上させることができる。
【0044】
また上述の実施形態において、前記導電膜7を発熱抵抗体3と同一材料により形成するようにしても良い。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持したことから、印画時には記録媒体に付着した静電気を導電膜を介してグランドに逃がすことができる上に、待機時には保護膜中に大きな電界が発生することを有効に防止することができる。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの平面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドの断面図である。
【図3】(a)及び(b)は印画時及び待機時における保護膜中の電界の方向を示す模式図である。
【図4】図1のサーマルヘッドを用いて構成されたサーマルプリンタの概略図である。
【図5】従来のサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・部分グレーズ層
3・・・発熱抵抗体
4・・・一対の電極
4a・・・共通電極
4b・・・個別電極
5・・・ドライバーIC
6・・・保護膜
7・・・導電膜
9・・・プラテンローラ
10a,10b,10c,10d・・・搬送ローラ
T・・・サーマルヘッド
SW・・・スイッチング手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとして用いられるサーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドは、例えば図5に示す如く、アルミナセラミックスからなる基板21の上面に、直線状に配列される複数の発熱抵抗体23と、該発熱抵抗体23の両端に接続される一対の電極とを被着するとともに、これら発熱抵抗体23、一対の電極24を保護膜26で被覆した構造のものが知られており、感熱紙やインクフィルム等の記録媒体Mを保護膜26の表面に対して摺接させつつ発熱抵抗体23上に搬送しながら、多数の発熱抵抗体23を外部からの画像データに基づいて個々に選択的にジュール発熱させるとともに、その熱を保護膜26を介して記録媒体Mに伝導させることによって印画を形成するようになっている。
【0004】
なお、前記一対の電極24は、発熱抵抗体23の一端側に共通に接続され、発熱抵抗体23の配列に沿って帯状に配される共通電極24aと、発熱抵抗体23の他端側に個別に接続される個別電極24bとで構成されており、共通電極24aが所定の電位(例えば24V)に保持された外部電源のプラス端子に、個別電極24bが図示しないドライバーICのスイッチング素子を介してグランド電位(例えば0V)に保持された外部電源のグランド端子にそれぞれ接続され、ドライバーICのスイッチング素子がオン状態の時、前記発熱抵抗体23に電力が供給される。
【0005】
また前記保護膜26は、窒化珪素(Si3N4)やサイアロン(Si−Al−O−N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体23や一対の電極24を記録媒体Mの摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−47652号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のサーマルヘッドにおいては、記録媒体Mが保護膜表面に繰り返し摺接されると、記録媒体Mの表面に付着した静電気の一部が保護膜26上に蓄積され、保護膜26と発熱抵抗体23との間で放電を起こして保護膜26が絶縁破壊する恐れがあり、保護膜26を長期にわたり良好に機能させることが困難となる問題点があった。
【0008】
また、上述した従来のサーマルヘッドを動作させずに待機させておく場合、ドライバーIC内のスイッチング素子がオフ状態となっているため、共通電極24aや個別電極24bの電位は、共通電極24aが接続される外部電源のプラス端子の電位(24V)に保持される。一方、記録媒体Mや保護膜表面の電位は通常0Vに近い電位に保持され、記録媒体Mの表面に静電気が付着している場合、数百Vの高電位に保持される。それ故、保護膜26と発熱抵抗体23との間に大きな電位差を生じることとなり、保護膜26中には上方(基板21の下面側より上面側に向かう方向)もしくは下方に向かって大きな電界が発生する。このような状態を長時間放置すると、記録媒体Mの内部に存在するNa+やK+やCl―等のイオンが保護膜26中に侵入し、該侵入したイオンが発熱抵抗体23まで到達して発熱抵抗体23が腐食することがあり、発熱抵抗体23の発熱特性が劣化してサーマルヘッドの機能を低下させるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持することを特徴とするものである。
【0011】
そして本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、前記導電膜の電位の切り換えを行うためのスイッチング手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持したことから、印画時には記録媒体に付着した静電気を導電膜を介してグランドに逃がすことができる上に、待機時には保護膜中に大きな電界が発生することを有効に防止することができる。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタが実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの平面図、図2は図1のサーマルヘッドの断面図、図3は印画時及び待機時における保護膜中の電界の方向を示す模式図であり、同図に示すサーマルヘッドは、大略的に、基板1の上面に、発熱抵抗体3や一対の電極4、保護膜6、導電膜7を設けた構造を有している。
【0014】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の絶縁材料や、表面に酸化珪素膜や窒化珪素膜が設けられた単結晶シリコン等の半導体材料等、種々の材料により矩形状を成すように形成されており、その上面には、複数の発熱抵抗体3や一対の電極4、保護膜6、導電膜7等が設けられ、これらを支持する支持母材として機能する。
【0015】
このような基板1は、アルミナセラミックスからなる場合、例えば、アルミナ・シリカ・マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶媒・有機溶剤を添加・混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによりセラミックグリーンシートを得、しかる後、該セラミックグリーンシートを矩形状に打ち抜いた上、高温(約1600℃)で焼成することによって製作される。
【0016】
また前記基板1の上面には、ガラス製の部分グレーズ層2が基板1の長手方向に帯状に被着され、その頂部付近には多数の複数の発熱抵抗体3が設けられる。
【0017】
前記部分グレーズ層2は、例えば曲率半径1mm〜4mmの断面円弧状をなすように形成されており、その頂部の厚みは20μm〜160μmに設定される。
【0018】
この部分グレーズ層2は、低熱伝導性(熱伝導率:0.7W/m・K〜1.0W/m・K)のガラスにより形成されているため、その内部で発熱抵抗体3の発する熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答特性を良好に維持する作用、具体的には、発熱抵抗体3の温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0019】
前記複数の発熱抵抗体3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列されており、各々がTaSiO系、TiSiO系、TiCSiO系等の電気抵抗材料から成っているため、その両端に接続される一対の電極4を介して外部からの電力が供給されるとジュール発熱を起こし、感熱紙に印画を形成するのに必要な温度、例えば150℃〜400℃の温度に発熱する。
【0020】
また、前記各発熱抵抗体3の両端に接続される一対の電極4は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属材料により形成されており、大略的に共通電極4aと個別電極4bとから構成されている。
【0021】
前記共通電極4aは、その一部が発熱抵抗体3の配列に沿って設けられ、かかる部分で発熱抵抗体3の一端側に共通に接続されており、一方、個別電極4bは発熱抵抗体3の他端側に個別に接続されている。
【0022】
このような共通電極4a及び個別電極4bは、共通電極4aが所定の電位(例えば24V)に保持された第1外部電源のプラス端子Vh1に、個別電極4bがドライバーIC5内のスイッチング素子を介してグランド電位(例えば0V)に保持された第1外部電源のグランド端子GND1にそれぞれ接続されているため、ドライバーIC5内のスイッチング素子がオン状態の時、第1外部電源より発熱抵抗体3に電力が供給されるようになっている。尚、スイッチング素子がオン状態の時、共通電極4a−第1外部電源のプラス端子Vh1間、並びに個別電極4bと第1外部電源のグランド端子GND1間の双方が接続状態にあるため、共通電極4aが約24Vに、個別電極4bが約0Vに保持される。一方、スイッチング素子がオフ状態の時、共通電極4a−第1外部電源のプラス端子Vh1間が接続状態にあるものの、個別電極4b−第1外部電源のグランド端子GND1間が非接続状態となるため、共通電極4a、個別電極4bは共に約24Vに保持される。
【0023】
上述した複数の発熱抵抗体3及び一対の電極4は、従来周知の薄膜形成技術、具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィー技術、エッチング技術等を採用することにより所定パターンを成すように基板1の上面に被着・形成される。
【0024】
更に前記ドライバーIC5は、各々の回路形成面(下面)に、シフトレジスタやラッチ回路,スイッチング素子、入出力端子等の電子回路が高密度に集積されており、複数の発熱抵抗体3を選択的に発熱させる作用、具体的には、外部より供給される画像データに基づいてスイッチング素子のオン・オフを切り替え、各発熱抵抗体3への通電を制御する作用を為す。
【0025】
尚、前記ドライバーIC5は、下面に電子回路を有したフリップチップ型ICである場合、例えば、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)を採用することにより、単結晶シリコンからなるインゴット(塊)を形成するとともに、これをダイヤモンドカッター等を用いて板状にスライスし、しかる後、該板体の下面に従来周知の半導体製造技術を採用することにより、シフトレジスタやラッチ回路等の電子回路を高密度に集積させることによって製作され、得られたドライバーIC5を従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC5の下面に設けられた端子を、対応する一対の電極4上の端子に半田を介して接合させることによって、ドライバーIC5が一対の電極4に電気的に接続される。
【0026】
一方、前記発熱抵抗体3及び一対の電極4上には保護膜6が被着されており、該保護膜6によって発熱抵抗体3や一対の一対の電極4が共通に被覆されている。
【0027】
前記保護膜6は、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si−Al−O−N)、炭化珪素(SiC)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体3や一対の電極4等を記録媒体Mの摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0028】
尚、上述した保護膜6は、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD(ChemicalVapor Deposition)法やスパッタリング等を採用し、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si−Al−O−N)、炭化珪素(SiC)等の無機質材料を発熱抵抗体3や一対の電極4等の上面に2μm〜20μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0029】
そして、前記保護膜6上には、発熱抵抗体3の配列領域にわたって導電膜7が被着されている。
【0030】
前記導電膜7は、TaB2やTiB2等のホウ化物、SiCやTiC、W2C等の炭化物、TaNやTiN,TaSiNO等の窒化物、あるいはTaSiO等、種々の電気抵抗材料により帯状を成すように形成されており、その一部、具体的には導電膜7の長手方向の一端側が後述するスイッチング手段SWを介して第2外部電源に接続されており、かかるスイッチング手段SWの切り換えにより、サーマルヘッドの印画時には導電膜7がグランド電位(例えば0V)に保持される第2外部電源のグランド端子GND2に接続される。一方、サーマルヘッドの待機時には導電膜7が電極4の電位(共通電極4aが接続される第1外部電源のプラス端子の電位)と略等しい電位(導電膜7と電極4との電位差Vaが±2V以内)に保持された第2外部電源のプラス端子Vh2に接続されている。
【0031】
このため、印画時においては、記録媒体Mが導電膜7に対して摺接する際に、記録媒体Mの表面に付着した静電気が0Vに保持された導電膜7を介して良好にグランドに逃がされることとなり、保護膜6の絶縁破壊を有効に防止して保護膜6を長期にわたり良好に機能させることが可能となる。
【0032】
一方、待機時においては、導電膜7と一対の電極4との間の電位差Vaを小さくすることで保護膜6中に大きな電界が発生することを有効に防止することができ、それ故、記録媒体M内に存在するNa+イオンやK+イオン、Cl−イオン等のイオンが発熱抵抗体3まで到達することで発熱抵抗体3が腐食されるといった不具合が有効に防止され、発熱抵抗体3の発熱特性を良好に維持することが可能となる。
【0033】
このとき、導電膜7と一対の電極4との間の電位差Vaを±1Vの範囲内に設定しておけば保護膜6中に発生する電界をより小さくすることができ、保護膜6中に膜欠陥が多い場合であっても、イオンが発熱抵抗体3まで到達して発熱抵抗体3が腐食されることを有効に防止することが可能となる。
【0034】
また導電膜7と保護膜6との間に発生する電界をできるだけ小さくするには、保護膜6の厚みdを大きくすることが好ましいが、保護膜6の厚みdを大きくすると、発熱抵抗体3の熱が記録媒体Mに伝導しにくくなり、サーマルヘッドの熱効率が低下するおそれがあることから、保護膜6の厚みdを4μm〜10μmの範囲内に設定することが好ましい。
【0035】
尚、印画時においては導電膜7の電位がグランド電位に保持されるため、保護膜中には上方向の電界が発生するため、かかる電界により記録媒体Mに存在するイオンが保護膜6中に侵入して発熱抵抗体3を腐食することが懸念されるが、印画時には記録媒体Mが導電膜7に対して摺接しており、その間、イオンが記録媒体Mより遊離しにくい上に、仮にイオンが記録媒体M内より遊離したとしても、印画時間は待機時間に比べて通常短く、記録媒体M内のイオンが発熱抵抗体3まで到達する時間はないことから、イオンが発熱抵抗体3まで到達しにくい状況である。従って、印画時において導電膜7の電位をグランド電位に保持したとしても、発熱抵抗体3が記録媒体M内のイオンによって腐食されるといった不具合は有効に防止される。
【0036】
上述したような導電膜7は、前記保護膜6と同様に、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD法やスパッタリング等を採用し、先に述べた電気抵抗材料を保護膜6の上面の所定領域に0.02μm〜0.2μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0037】
そして、上述したサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタは、図4に示す如く、スイッチング手段SWと、プラテンローラ9と、搬送ローラ10a、10b、10c、10dとを含んで構成されている。
【0038】
前記スイッチング手段SWは、リレーやスイッチングトランジスタ等からなり、外部より供給される制御信号に基づいてスイッチを切り換えて、導電膜7を第2外部電源のプラス端子もしくはグランド端子に選択的に接続する作用を為している。
【0039】
また前記プラテンローラ9は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に回転可能に支持され、記録媒体Mを発熱抵抗体3上の保護膜表面に押圧しつつ記録媒体Mを発熱抵抗体3の配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0040】
更に前記搬送ローラ10a,10b,10c,10dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し記録媒体Mの搬送方向上流側(ドライバーIC5側)と下流側(発熱抵抗体3側)に分かれて配設され、これらの搬送ローラ10a,10b,10c,10dと前述のプラテンローラ9とで記録媒体Mの走行を支持している。
【0041】
そして、これと同時に多数の発熱抵抗体3をドライバーIC5の駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を保護膜6や導電膜7を介し記録媒体Mに伝導させることによって所定の印画が形成される。
【0042】
尚、本発明は上述の実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更・改良が可能である。
【0043】
例えば、上述の実施形態において、前記保護膜6をSiを含む無機質材料、例えばSiCやSiO2,Si3N4,Si−Al−O−N等により、導電膜7を、Siを含む電気抵抗材料、すなわち、SiCやTaSiO、TaSiNO等により形成しておけば、保護膜と導電膜の双方にSiが含まれることとなり、両者のなじみが良くなって保護膜に対する導電膜の密着性を大幅に向上させることができる。
【0044】
また上述の実施形態において、前記導電膜7を発熱抵抗体3と同一材料により形成するようにしても良い。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持したことから、印画時には記録媒体に付着した静電気を導電膜を介してグランドに逃がすことができる上に、待機時には保護膜中に大きな電界が発生することを有効に防止することができる。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させること、並びにサーマルヘッドの待機時における発熱抵抗体の腐食を有効に防止することを同時に可能とする高性能のサーマルヘッド及びサーマルプリンタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの平面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドの断面図である。
【図3】(a)及び(b)は印画時及び待機時における保護膜中の電界の方向を示す模式図である。
【図4】図1のサーマルヘッドを用いて構成されたサーマルプリンタの概略図である。
【図5】従来のサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・部分グレーズ層
3・・・発熱抵抗体
4・・・一対の電極
4a・・・共通電極
4b・・・個別電極
5・・・ドライバーIC
6・・・保護膜
7・・・導電膜
9・・・プラテンローラ
10a,10b,10c,10d・・・搬送ローラ
T・・・サーマルヘッド
SW・・・スイッチング手段
Claims (2)
- 基板の上面に、複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の両端に接続される一対の電極とを被着させ、発熱抵抗体及び一対の電極を保護膜で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、
前記保護膜上で、且つ少なくとも発熱抵抗体の配列領域にわたり導電膜を被着させるとともに、該導電膜を、印画時にグランド電位に、待機時に前記一対の電極の電位と略等しい電位に保持することを特徴とするサーマルヘッド。 - 請求項1に記載のサーマルヘッドと、前記導電膜の電位の切り換えを行うためのスイッチング手段とを備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
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2003
- 2003-01-28 JP JP2003018667A patent/JP2004230583A/ja active Pending
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