JP2004175049A - サーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタ、並びに、サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents
サーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタ、並びに、サーマルヘッドの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ドライバーICを封止材でもって良好に被覆することができ、しかも感熱記録媒体の搬送状態を安定させて良好な印画を形成することが可能な高信頼性のサーマルヘッド等を提供する。
【解決手段】複数の発熱抵抗体3を有する基板1の上面に、前記発熱抵抗体3の発熱を制御する複数のドライバーIC6を配列するとともに、これらドライバーIC6を封止材7で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材7の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠き8aが設けられた絶縁材8で囲繞するとともに、前記封止材7の一部を絶縁材8の上面及び絶縁材8の切欠き8aの内部まで延在させる。
【選択図】図2
【解決手段】複数の発熱抵抗体3を有する基板1の上面に、前記発熱抵抗体3の発熱を制御する複数のドライバーIC6を配列するとともに、これらドライバーIC6を封止材7で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材7の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠き8aが設けられた絶縁材8で囲繞するとともに、前記封止材7の一部を絶縁材8の上面及び絶縁材8の切欠き8aの内部まで延在させる。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとして用いられるサーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドは、例えば図6に示す如く、アルミナセラミックス等から成る基板11の上面に、多数の発熱抵抗体13と、これら発熱抵抗体13の発熱を制御する複数個のドライバーIC16とを略平行に配列させ、前記発熱抵抗体13を窒化珪素等から成る保護膜15で、前記ドライバーIC16をエポキシ樹脂を主成分とする封止材17で被覆した構造を有し、感熱紙やインクフィルム等の感熱記録媒体を発熱抵抗体13上に搬送しながら、多数の発熱抵抗体13を画像データに基づいて個々に選択的にジュール発熱させるとともに、感熱記録媒体を発熱抵抗体13上の保護膜表面に摺接させ、発熱抵抗体13の発した熱を保護膜15を介して感熱記録媒体に伝達させることによって印画を形成するようになっている。
【0004】
尚、前記封止材17は、ドライバーIC16を被覆することでドライバーIC16の回路形成面に設けられた集積回路を大気と遮断するためのものであり、エポキシ樹脂から成る場合、エポキシ樹脂の液状前駆体を、ディスペンサ等を用いてドライバーIC16の搭載領域に塗布するとともに、これを80℃〜200℃の温度で加熱・重合させることによって形成される。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−225539号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した封止材17を構成するエポキシ樹脂の液状前駆体は、その粘度が6〜15Pa・s(25℃)と比較的小さいことから、ドライバーIC16の搭載領域に上記液状前駆体を塗布すると、液状前駆体が外側に広がってドライバーIC全体を山状に被覆しきれずにドライバーICの上面角部が封止材17より一部露出することがある。
【0007】
このような場合、印画に際して感熱記録媒体が露出したドライバーICと接触すると、該ドライバーICの上面角部に引っ掛かってスティッキングを起こしたり、あるいは、感熱記録媒体の表面に傷がついたりして、良好な印画形成の妨げとなる問題点を有していた。
【0008】
そこで上記欠点を解消すべく、前記封止材17の形成に先立って、ドライバーIC16の搭載領域を、環状を成す絶縁材でもって取り囲むことにより、液状前駆体の広がりを防止することが提案されているが、このような場合、絶縁材の頂部を封止材17の頂部と同程度まで高くする必要があり、感熱記録媒体の走行の障害となる問題点を誘発する。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、ドライバーICを封止材でもって良好に被覆することができ、しかも感熱記録媒体の搬送状態を安定させて良好な印画を形成することが可能な高信頼性のサーマルヘッド及びサーマルプリンタ、並びにサーマルヘッドの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のサーマルヘッドは、前記切欠きが1個/mm〜4個/mmの密度で形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明のサーマルヘッドは、前記絶縁材の頂部が前記ドライバーICの上面よりも低く設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
また更に本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、該サーマルヘッド上に記録媒体を搬送するための搬送手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
更にまた本発明のサーマルヘッドの製造方法は、複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを樹脂材料からなる封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞する工程1と、該工程1で形成された絶縁材の内側に前記封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体を塗布するとともに、該塗布された液状前駆体の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させる工程2と、該工程2で塗布した液状前駆体を熱硬化させて封止材を形成する工程3と、を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞したことから、封止材を形成するにあたり、封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体をドライバーICの搭載領域に塗布する際に、液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材の内周に沿って設けられた切欠きによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC全体を封止材でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーICの上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッド並びにサーマルプリンタが実現される。
【0016】
しかもこの場合、絶縁材の高さをドライバーICの上面よりも小さくしても、絶縁材に設けられる切欠きによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材を低く形成することで絶縁材が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0017】
また本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の外周を、内周に沿って複数の切欠きが設けられた環状の絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことから、封止材と絶縁材とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材や絶縁材に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材が剥離してしまうことが有効に防止される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの断面図、図2は図1のサーマルヘッドの平面図であり、1は基板、3は発熱抵抗体、5は保護膜、6はドライバーIC、7は封止材、8は絶縁材、8aは切欠きである。
【0019】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や表面にSiO2等の絶縁膜が形成された単結晶シリコン等の半導体材料によって矩形状をなすように形成されており、その上面には部分グレーズ層2や発熱抵抗体3,ドライバーIC6、封止材7、絶縁材8等が取着され、これらを支持する支持母材として機能する。
【0020】
また前記基板1の上面には、ガラス製の部分グレーズ層2が基板1の長手方向に帯状に被着され、その頂部付近には多数の発熱抵抗体3が設けられる。
【0021】
前記部分グレーズ層2は、例えば曲率半径1mm〜4mmの断面円弧状をなすように形成されており、その頂部の厚みは20μm〜160μmに設定される。
【0022】
この部分グレーズ層2は、低熱伝導性(熱伝導率:0.7W/m・K〜1.0W/m・K)のガラスにより形成されているため、その内部で発熱抵抗体3の発する熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答特性を良好に維持する作用、具体的には、発熱抵抗体3の温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0023】
更に前記部分グレーズ層2の頂部付近に設けられる多数の発熱抵抗体3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で主走査方向に直線状に配列されており、これらの発熱抵抗体3は各々がTaNやTaSiO,TiSiO等の電気抵抗材料により形成されているため、その両端に電気的に接続される電極パターン4等を介して電源電力が印加されるとジュール発熱を起こし、記録媒体に印画を形成するのに必要な温度、例えば130℃〜350℃の温度となる。
【0024】
また前記発熱抵抗体3に接続される電極パターン4は、発熱抵抗体3等に電力を供給する給電配線として機能するものであり、アルミニウムや銅等の金属材料から成り、部分グレーズ層2上から基板1の表面にかけて被着・導出された上、この導出部で後述するドライバーIC6の対応する端子等に電気的に接続される。
【0025】
また上述した多数の発熱抵抗体3や電極パターン4の表面には保護膜5が被着され、このような保護膜5によって多数の発熱抵抗体3や多数の電極パターン4が共通に被覆されている。
【0026】
前記保護膜5は、窒化珪素(Si3N4)やサイアロン(Si−Al−O−N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体3や電極パターン4を感熱記録媒体の摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0027】
また一方、上述した基板1の上面には複数個のドライバーIC6が発熱抵抗体3の配列に沿って略平行に配列される。
【0028】
前記ドライバーIC6は、各々の回路形成面(下面)に、シフトレジスタやラッチ回路,スイッチングトランジスタ等の電子回路が高密度に集積されており、多数の発熱抵抗体3を選択的に発熱させる作用、具体的には、外部より供給される画像データに基づいてスイッチングトランジスタのオン・オフを切り替え、各発熱抵抗体3への通電を制御する作用を為す。
【0029】
かかるドライバーIC6としては、例えば、電子回路や端子を下面に有したフリップチップ型ICが用いられ、従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC6の端子を対応する電極パターン4の導出部に半田接合させることによってドライバーIC6が電極パターン4に電気的に接続される。
【0030】
そして上述した複数個のドライバーIC6は、帯状を成す封止材7で共通に被覆され、またかかる封止材7は環状を成す絶縁材8で囲繞されている。
【0031】
前記封止材7は、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料により断面山状をなすように形成され、その一部が絶縁材8の上面及び後述する絶縁材8の切欠き8aの内部に延在された形になっており、ドライバーIC6を大気と遮断することでドライバーIC6の電子回路が大気中の水分等との接触により腐食されるのを有効に防止するとともに、ドライバーIC6を外力の印加(感熱記録媒体の接触等)より保護する作用を為す。
【0032】
一方、前記封止材7を囲繞する絶縁材8は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を主成分とし、アルミナ等のフィラ−を所定量有させた樹脂材料により頂部の高さがドライバーIC6の上面よりも低くなるように設定されており、また、その平面視形状が、先に述べた如く環状を成すように形成され、内周には複数の切欠き8aが1個/mm〜4個/mmの密度で設けられている。
【0033】
このような絶縁材8の切欠き8aは、封止材7を形成するにあたり、絶縁材8の内側(ドライバーIC6の搭載領域)に塗布された封止材7を構成する樹脂材料の液状前駆体の流出をせき止めて、液状前駆体が外側に大きく広がることを有効に防止するためのものであり、これによって封止材7の形状が断面山状に良好に保持される。
【0034】
従って、前記ドライバーIC6の一部が封止材7より露出することなく、ドライバーIC6の全体が封止材7でもって良好に被覆されることとなり、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッドが実現される。
【0035】
しかもこの場合、絶縁材8の高さをドライバーIC6の上面よりも低くしたとしても、絶縁材8に設けられる切欠き8aによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材8を低く形成して絶縁材8が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0036】
また、ドライバーIC6を被覆する封止材7の外周を、内周に沿って複数の切欠き8aが設けられた環状の絶縁材8で囲繞するとともに、前記封止材7の一部を絶縁材8の上面及び絶縁材8の切欠き8aの内部まで延在させたことから、封止材7と絶縁材8とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材7や絶縁材8に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材7が剥離してしまうことが有効に防止される。
【0037】
そして、上述のようなサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタには、図3に示す如く、感熱記録媒体をサーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に搬送する搬送手段として、プラテンローラ9や搬送ローラ10a,10b,10c,10d等が配設される。
【0038】
前記プラテンローラ9は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に回転可能に支持され、感熱記録媒体を発熱抵抗体3上の保護膜表面に押圧しつつ感熱記録媒体を発熱抵抗体3の配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0039】
また前記搬送ローラ10a,10b,10c,10dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し感熱記録媒体の搬送方向上流側(ドライバーIC6側)と下流側(発熱抵抗体3側)に分かれて配設され、これらの搬送ローラ10a,10b,10c,10dと前述のプラテンローラ9とで感熱記録媒体の走行を支持している。
【0040】
そして、これと同時に多数の発熱抵抗体3をドライバーIC6の駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を保護膜5を介し感熱記録媒体に伝達させることによって所定の印画が形成される。
【0041】
このとき、感熱記録媒体の一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、それ故、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルプリンタが実現される。
【0042】
次に上述したサーマルヘッドの製造方法について図4を用いて詳細に説明する。
図4は図1のサーマルヘッドの製造方法を説明するための各工程の断面図である。
まず、上面に先に述べた部分グレーズ層2、発熱抵抗体3、電極パターン4、保護膜5が順次、被着・形成された基板1を準備する(図4(a))。
【0043】
前記基板1は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状に成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法等を採用することによってセラミックグリーンシートを形成し、これを所定形状に打ち抜いた上、高温(約1600℃)で焼成することにより製作される。
【0044】
また前記部分グレーズ層2は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を添加・混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板1の上面に帯状に印刷・塗布し、これを高温(900℃〜1200℃)で焼き付けることによって形成される。
【0045】
更に前記発熱抵抗体3及び電極パターン4は、部分グレーズ層2の形成後、従来周知の薄膜形成技術を採用することにより所定パターンに形成される。具体的には、発熱抵抗体3がTaSiO、電極パターンがAlから成る場合、従来周知のスパッタリングによってTaSiOからなる抵抗薄膜及びAlからなる金属薄膜を基板1や部分グレーズ層2の上面に順次積層するとともに、該積層体を従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用することによって所定パターンに加工することによって発熱抵抗体3及び電極パターン4が同時に形成される。
【0046】
一方、前記発熱抵抗体3及び電極パターン4を被覆する保護膜5は、従来周知の薄膜形成技術、例えばスパッタリングを採用し、上述の無機質材料を発熱抵抗体3や電極パターン4等の上面に2μm〜20μmの厚みに被着させることにより形成される。
次に、封止材7の形成や、ドライバーIC6の搭載に先立って、基板1上に環状の絶縁材8をドライバーIC6の搭載予定領域を囲繞するように形成する(図4(b))。
【0047】
前記絶縁材8は、例えば、エポキシ樹脂からなる樹脂ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法を採用することによって基板上の所定領域に印刷・塗布するとともに、これを140℃〜160℃の温度で焼き付けることによって切欠き8aと同時に形成される。尚、前記絶縁材8は10μm〜50μmの厚みに形成される。
【0048】
また、かかる絶縁材8の形成の際に用いられるスクリーン印刷用のマスクには、絶縁材8の平面視形状に対応するパターンをもった開口部が設けられ、これによって上記ペーストが絶縁材8の切欠き8aに対応するパターンに印刷・塗布される。
次に、前記基板上の絶縁材8の内側に、発熱抵抗体3の発熱を制御するドライバーIC6を搭載する(図4(c))。
【0049】
前記ドライバーIC6は、例えば、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)を採用することにより、単結晶シリコンからなるインゴット(塊)を形成するとともに、これをダイヤモンドカッター等を用いて板状にスライスし、しかる後、該板体の一主面に従来周知の半導体製造技術を採用することにより、シフトレジスタやラッチ回路等の電子回路を高密度に集積させることによって製作される。
【0050】
また前記ドライバーIC6の基板1上への搭載は、ドライバーIC6がフリップチップ型ICから成る場合、従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC6の回路形成面に設けられる端子を、電極パターン4上に設けられる電極に半田接合させることによってドライバーIC6と電極パターン4とを電気的に接続させることによって行われる。
最後に、ドライバーIC6の搭載領域を被覆するように封止材7を形成することによってサーマルヘッドが完成する(図4(d)、(e))。
【0051】
前記封止材7は、例えば無機質フィラーを所定量、添加・混合したエポキシ樹脂の液状前駆体を、ディスペンサ等を用いてドライバーIC6の搭載領域に塗布するとともに、これを80℃〜200℃の温度で加熱・重合させることによって0.4mm〜2mmの厚みに形成される
このとき、封止材7を構成する樹脂材料の液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材8の内周に沿って設けられた切欠き8aによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC6の全体を封止材7でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッドが実現される。
【0052】
しかもこの場合、絶縁材8の高さをドライバーIC6の上面よりも小さくしても、絶縁材8に設けられる切欠き8aによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材8を低く形成して絶縁材8が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0053】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0054】
例えば上述の実施形態においては、前記複数のドライバーIC6を封止材7で共通に被覆するとともに、該封止材7を絶縁材8で囲繞するようにしたが、これに代えて、図5に示す如く、前記複数のドライバーIC6を封止材7’で個々に被覆するとともに、該封止材7’の各々を切欠き8’aを有する絶縁材8’で囲繞するようにしても構わない。
【0055】
また上述の実施形態において、前記封止材7を構成する樹脂材料に無機質フィラ−を所定量、添加・混合することで封止材7の熱伝導率や硬度を調整するようにしても良いことは言うまでもない。
【0056】
更に上述の実施形態において、絶縁材8の熱伝導率を封止材7の熱伝導率よりも大きく設定しておけば、ドライバーIC6の駆動に伴って発生するドライバーIC自体の発する熱が封止材7に過度に篭ることなく良好に絶縁材に吸収されるようになり、サーマルヘッドを長時間にわたり連続的に使用したとしても、ドライバーIC6が過度に高温となることを有効に防止し、ドライバーIC6を長期にわたり良好に機能させることが可能となる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞したことから、封止材を形成するにあたり、封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体をドライバーICの搭載領域に塗布する際に、液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材の内周に沿って設けられた切欠きによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC全体を封止材でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーICの上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッド並びにサーマルプリンタが実現される。
【0058】
しかもこの場合、絶縁材の高さをドライバーICの上面よりも小さくしても、絶縁材に設けられる切欠きによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材を低く形成することで絶縁材が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0059】
また本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の外周を、内周に沿って複数の切欠きが設けられた環状の絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことから、封止材と絶縁材とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材や絶縁材に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材が剥離してしまうことが有効に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの断面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドの平面図である。
【図3】図1のサーマルヘッドを用いたサーマルプリンタの構成を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は図1のサーマルヘッドの製造方法を説明するための各工程の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るサーマルヘッドの平面図である。
【図6】従来のサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・部分グレーズ層
3・・・発熱抵抗体
4・・・電極パターン
5・・・保護膜
6・・・ドライバーIC
7,7’・・・封止材
8,8’・・・絶縁材
8a,8’a・・・切欠き
9・・・プラテンローラ
10a,10b,10c,10d・・・搬送ローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとして用いられるサーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の印画デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドは、例えば図6に示す如く、アルミナセラミックス等から成る基板11の上面に、多数の発熱抵抗体13と、これら発熱抵抗体13の発熱を制御する複数個のドライバーIC16とを略平行に配列させ、前記発熱抵抗体13を窒化珪素等から成る保護膜15で、前記ドライバーIC16をエポキシ樹脂を主成分とする封止材17で被覆した構造を有し、感熱紙やインクフィルム等の感熱記録媒体を発熱抵抗体13上に搬送しながら、多数の発熱抵抗体13を画像データに基づいて個々に選択的にジュール発熱させるとともに、感熱記録媒体を発熱抵抗体13上の保護膜表面に摺接させ、発熱抵抗体13の発した熱を保護膜15を介して感熱記録媒体に伝達させることによって印画を形成するようになっている。
【0004】
尚、前記封止材17は、ドライバーIC16を被覆することでドライバーIC16の回路形成面に設けられた集積回路を大気と遮断するためのものであり、エポキシ樹脂から成る場合、エポキシ樹脂の液状前駆体を、ディスペンサ等を用いてドライバーIC16の搭載領域に塗布するとともに、これを80℃〜200℃の温度で加熱・重合させることによって形成される。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−225539号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した封止材17を構成するエポキシ樹脂の液状前駆体は、その粘度が6〜15Pa・s(25℃)と比較的小さいことから、ドライバーIC16の搭載領域に上記液状前駆体を塗布すると、液状前駆体が外側に広がってドライバーIC全体を山状に被覆しきれずにドライバーICの上面角部が封止材17より一部露出することがある。
【0007】
このような場合、印画に際して感熱記録媒体が露出したドライバーICと接触すると、該ドライバーICの上面角部に引っ掛かってスティッキングを起こしたり、あるいは、感熱記録媒体の表面に傷がついたりして、良好な印画形成の妨げとなる問題点を有していた。
【0008】
そこで上記欠点を解消すべく、前記封止材17の形成に先立って、ドライバーIC16の搭載領域を、環状を成す絶縁材でもって取り囲むことにより、液状前駆体の広がりを防止することが提案されているが、このような場合、絶縁材の頂部を封止材17の頂部と同程度まで高くする必要があり、感熱記録媒体の走行の障害となる問題点を誘発する。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、ドライバーICを封止材でもって良好に被覆することができ、しかも感熱記録媒体の搬送状態を安定させて良好な印画を形成することが可能な高信頼性のサーマルヘッド及びサーマルプリンタ、並びにサーマルヘッドの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のサーマルヘッドは、前記切欠きが1個/mm〜4個/mmの密度で形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明のサーマルヘッドは、前記絶縁材の頂部が前記ドライバーICの上面よりも低く設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
また更に本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、該サーマルヘッド上に記録媒体を搬送するための搬送手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
更にまた本発明のサーマルヘッドの製造方法は、複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを樹脂材料からなる封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、前記封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞する工程1と、該工程1で形成された絶縁材の内側に前記封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体を塗布するとともに、該塗布された液状前駆体の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させる工程2と、該工程2で塗布した液状前駆体を熱硬化させて封止材を形成する工程3と、を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞したことから、封止材を形成するにあたり、封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体をドライバーICの搭載領域に塗布する際に、液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材の内周に沿って設けられた切欠きによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC全体を封止材でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーICの上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッド並びにサーマルプリンタが実現される。
【0016】
しかもこの場合、絶縁材の高さをドライバーICの上面よりも小さくしても、絶縁材に設けられる切欠きによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材を低く形成することで絶縁材が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0017】
また本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の外周を、内周に沿って複数の切欠きが設けられた環状の絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことから、封止材と絶縁材とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材や絶縁材に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材が剥離してしまうことが有効に防止される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの断面図、図2は図1のサーマルヘッドの平面図であり、1は基板、3は発熱抵抗体、5は保護膜、6はドライバーIC、7は封止材、8は絶縁材、8aは切欠きである。
【0019】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や表面にSiO2等の絶縁膜が形成された単結晶シリコン等の半導体材料によって矩形状をなすように形成されており、その上面には部分グレーズ層2や発熱抵抗体3,ドライバーIC6、封止材7、絶縁材8等が取着され、これらを支持する支持母材として機能する。
【0020】
また前記基板1の上面には、ガラス製の部分グレーズ層2が基板1の長手方向に帯状に被着され、その頂部付近には多数の発熱抵抗体3が設けられる。
【0021】
前記部分グレーズ層2は、例えば曲率半径1mm〜4mmの断面円弧状をなすように形成されており、その頂部の厚みは20μm〜160μmに設定される。
【0022】
この部分グレーズ層2は、低熱伝導性(熱伝導率:0.7W/m・K〜1.0W/m・K)のガラスにより形成されているため、その内部で発熱抵抗体3の発する熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答特性を良好に維持する作用、具体的には、発熱抵抗体3の温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0023】
更に前記部分グレーズ層2の頂部付近に設けられる多数の発熱抵抗体3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で主走査方向に直線状に配列されており、これらの発熱抵抗体3は各々がTaNやTaSiO,TiSiO等の電気抵抗材料により形成されているため、その両端に電気的に接続される電極パターン4等を介して電源電力が印加されるとジュール発熱を起こし、記録媒体に印画を形成するのに必要な温度、例えば130℃〜350℃の温度となる。
【0024】
また前記発熱抵抗体3に接続される電極パターン4は、発熱抵抗体3等に電力を供給する給電配線として機能するものであり、アルミニウムや銅等の金属材料から成り、部分グレーズ層2上から基板1の表面にかけて被着・導出された上、この導出部で後述するドライバーIC6の対応する端子等に電気的に接続される。
【0025】
また上述した多数の発熱抵抗体3や電極パターン4の表面には保護膜5が被着され、このような保護膜5によって多数の発熱抵抗体3や多数の電極パターン4が共通に被覆されている。
【0026】
前記保護膜5は、窒化珪素(Si3N4)やサイアロン(Si−Al−O−N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱抵抗体3や電極パターン4を感熱記録媒体の摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0027】
また一方、上述した基板1の上面には複数個のドライバーIC6が発熱抵抗体3の配列に沿って略平行に配列される。
【0028】
前記ドライバーIC6は、各々の回路形成面(下面)に、シフトレジスタやラッチ回路,スイッチングトランジスタ等の電子回路が高密度に集積されており、多数の発熱抵抗体3を選択的に発熱させる作用、具体的には、外部より供給される画像データに基づいてスイッチングトランジスタのオン・オフを切り替え、各発熱抵抗体3への通電を制御する作用を為す。
【0029】
かかるドライバーIC6としては、例えば、電子回路や端子を下面に有したフリップチップ型ICが用いられ、従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC6の端子を対応する電極パターン4の導出部に半田接合させることによってドライバーIC6が電極パターン4に電気的に接続される。
【0030】
そして上述した複数個のドライバーIC6は、帯状を成す封止材7で共通に被覆され、またかかる封止材7は環状を成す絶縁材8で囲繞されている。
【0031】
前記封止材7は、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料により断面山状をなすように形成され、その一部が絶縁材8の上面及び後述する絶縁材8の切欠き8aの内部に延在された形になっており、ドライバーIC6を大気と遮断することでドライバーIC6の電子回路が大気中の水分等との接触により腐食されるのを有効に防止するとともに、ドライバーIC6を外力の印加(感熱記録媒体の接触等)より保護する作用を為す。
【0032】
一方、前記封止材7を囲繞する絶縁材8は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を主成分とし、アルミナ等のフィラ−を所定量有させた樹脂材料により頂部の高さがドライバーIC6の上面よりも低くなるように設定されており、また、その平面視形状が、先に述べた如く環状を成すように形成され、内周には複数の切欠き8aが1個/mm〜4個/mmの密度で設けられている。
【0033】
このような絶縁材8の切欠き8aは、封止材7を形成するにあたり、絶縁材8の内側(ドライバーIC6の搭載領域)に塗布された封止材7を構成する樹脂材料の液状前駆体の流出をせき止めて、液状前駆体が外側に大きく広がることを有効に防止するためのものであり、これによって封止材7の形状が断面山状に良好に保持される。
【0034】
従って、前記ドライバーIC6の一部が封止材7より露出することなく、ドライバーIC6の全体が封止材7でもって良好に被覆されることとなり、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッドが実現される。
【0035】
しかもこの場合、絶縁材8の高さをドライバーIC6の上面よりも低くしたとしても、絶縁材8に設けられる切欠き8aによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材8を低く形成して絶縁材8が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0036】
また、ドライバーIC6を被覆する封止材7の外周を、内周に沿って複数の切欠き8aが設けられた環状の絶縁材8で囲繞するとともに、前記封止材7の一部を絶縁材8の上面及び絶縁材8の切欠き8aの内部まで延在させたことから、封止材7と絶縁材8とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材7や絶縁材8に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材7が剥離してしまうことが有効に防止される。
【0037】
そして、上述のようなサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタには、図3に示す如く、感熱記録媒体をサーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に搬送する搬送手段として、プラテンローラ9や搬送ローラ10a,10b,10c,10d等が配設される。
【0038】
前記プラテンローラ9は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱抵抗体3上に回転可能に支持され、感熱記録媒体を発熱抵抗体3上の保護膜表面に押圧しつつ感熱記録媒体を発熱抵抗体3の配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0039】
また前記搬送ローラ10a,10b,10c,10dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し感熱記録媒体の搬送方向上流側(ドライバーIC6側)と下流側(発熱抵抗体3側)に分かれて配設され、これらの搬送ローラ10a,10b,10c,10dと前述のプラテンローラ9とで感熱記録媒体の走行を支持している。
【0040】
そして、これと同時に多数の発熱抵抗体3をドライバーIC6の駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を保護膜5を介し感熱記録媒体に伝達させることによって所定の印画が形成される。
【0041】
このとき、感熱記録媒体の一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、それ故、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルプリンタが実現される。
【0042】
次に上述したサーマルヘッドの製造方法について図4を用いて詳細に説明する。
図4は図1のサーマルヘッドの製造方法を説明するための各工程の断面図である。
まず、上面に先に述べた部分グレーズ層2、発熱抵抗体3、電極パターン4、保護膜5が順次、被着・形成された基板1を準備する(図4(a))。
【0043】
前記基板1は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状に成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法等を採用することによってセラミックグリーンシートを形成し、これを所定形状に打ち抜いた上、高温(約1600℃)で焼成することにより製作される。
【0044】
また前記部分グレーズ層2は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を添加・混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板1の上面に帯状に印刷・塗布し、これを高温(900℃〜1200℃)で焼き付けることによって形成される。
【0045】
更に前記発熱抵抗体3及び電極パターン4は、部分グレーズ層2の形成後、従来周知の薄膜形成技術を採用することにより所定パターンに形成される。具体的には、発熱抵抗体3がTaSiO、電極パターンがAlから成る場合、従来周知のスパッタリングによってTaSiOからなる抵抗薄膜及びAlからなる金属薄膜を基板1や部分グレーズ層2の上面に順次積層するとともに、該積層体を従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用することによって所定パターンに加工することによって発熱抵抗体3及び電極パターン4が同時に形成される。
【0046】
一方、前記発熱抵抗体3及び電極パターン4を被覆する保護膜5は、従来周知の薄膜形成技術、例えばスパッタリングを採用し、上述の無機質材料を発熱抵抗体3や電極パターン4等の上面に2μm〜20μmの厚みに被着させることにより形成される。
次に、封止材7の形成や、ドライバーIC6の搭載に先立って、基板1上に環状の絶縁材8をドライバーIC6の搭載予定領域を囲繞するように形成する(図4(b))。
【0047】
前記絶縁材8は、例えば、エポキシ樹脂からなる樹脂ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法を採用することによって基板上の所定領域に印刷・塗布するとともに、これを140℃〜160℃の温度で焼き付けることによって切欠き8aと同時に形成される。尚、前記絶縁材8は10μm〜50μmの厚みに形成される。
【0048】
また、かかる絶縁材8の形成の際に用いられるスクリーン印刷用のマスクには、絶縁材8の平面視形状に対応するパターンをもった開口部が設けられ、これによって上記ペーストが絶縁材8の切欠き8aに対応するパターンに印刷・塗布される。
次に、前記基板上の絶縁材8の内側に、発熱抵抗体3の発熱を制御するドライバーIC6を搭載する(図4(c))。
【0049】
前記ドライバーIC6は、例えば、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)を採用することにより、単結晶シリコンからなるインゴット(塊)を形成するとともに、これをダイヤモンドカッター等を用いて板状にスライスし、しかる後、該板体の一主面に従来周知の半導体製造技術を採用することにより、シフトレジスタやラッチ回路等の電子回路を高密度に集積させることによって製作される。
【0050】
また前記ドライバーIC6の基板1上への搭載は、ドライバーIC6がフリップチップ型ICから成る場合、従来周知のフェースダウンボンディング、即ち、ドライバーIC6の回路形成面に設けられる端子を、電極パターン4上に設けられる電極に半田接合させることによってドライバーIC6と電極パターン4とを電気的に接続させることによって行われる。
最後に、ドライバーIC6の搭載領域を被覆するように封止材7を形成することによってサーマルヘッドが完成する(図4(d)、(e))。
【0051】
前記封止材7は、例えば無機質フィラーを所定量、添加・混合したエポキシ樹脂の液状前駆体を、ディスペンサ等を用いてドライバーIC6の搭載領域に塗布するとともに、これを80℃〜200℃の温度で加熱・重合させることによって0.4mm〜2mmの厚みに形成される
このとき、封止材7を構成する樹脂材料の液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材8の内周に沿って設けられた切欠き8aによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC6の全体を封止材7でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーIC6の上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッドが実現される。
【0052】
しかもこの場合、絶縁材8の高さをドライバーIC6の上面よりも小さくしても、絶縁材8に設けられる切欠き8aによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材8を低く形成して絶縁材8が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0053】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0054】
例えば上述の実施形態においては、前記複数のドライバーIC6を封止材7で共通に被覆するとともに、該封止材7を絶縁材8で囲繞するようにしたが、これに代えて、図5に示す如く、前記複数のドライバーIC6を封止材7’で個々に被覆するとともに、該封止材7’の各々を切欠き8’aを有する絶縁材8’で囲繞するようにしても構わない。
【0055】
また上述の実施形態において、前記封止材7を構成する樹脂材料に無機質フィラ−を所定量、添加・混合することで封止材7の熱伝導率や硬度を調整するようにしても良いことは言うまでもない。
【0056】
更に上述の実施形態において、絶縁材8の熱伝導率を封止材7の熱伝導率よりも大きく設定しておけば、ドライバーIC6の駆動に伴って発生するドライバーIC自体の発する熱が封止材7に過度に篭ることなく良好に絶縁材に吸収されるようになり、サーマルヘッドを長時間にわたり連続的に使用したとしても、ドライバーIC6が過度に高温となることを有効に防止し、ドライバーIC6を長期にわたり良好に機能させることが可能となる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞したことから、封止材を形成するにあたり、封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体をドライバーICの搭載領域に塗布する際に、液状前駆体の一部が外側に広がろうとしても、絶縁材の内周に沿って設けられた切欠きによって良好にせき止められることとなり、ドライバーIC全体を封止材でもって良好に被覆することができる。従って、感熱記録媒体の搬送時にその一部がドライバーICの上面角部に接触してスティッキングが発生したり、あるいは傷がついたりすることは殆どなく、感熱記録媒体の走行を安定化させて良好な印画を形成することができる高性能のサーマルヘッド並びにサーマルプリンタが実現される。
【0058】
しかもこの場合、絶縁材の高さをドライバーICの上面よりも小さくしても、絶縁材に設けられる切欠きによって液状前駆体の広がりを良好にせき止めることができることから、絶縁材を低く形成することで絶縁材が感熱記録媒体の走行の障害物となることを有効に防止できる。
【0059】
また本発明によれば、ドライバーICを被覆する封止材の外周を、内周に沿って複数の切欠きが設けられた環状の絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことから、封止材と絶縁材とを強固に接着することができる。従って、サーマルヘッドの搬送時やプリンタ組み込み時等に、封止材や絶縁材に大きな外力が印加されたとしても、絶縁材が剥離してしまうことが有効に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの断面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドの平面図である。
【図3】図1のサーマルヘッドを用いたサーマルプリンタの構成を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は図1のサーマルヘッドの製造方法を説明するための各工程の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るサーマルヘッドの平面図である。
【図6】従来のサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・部分グレーズ層
3・・・発熱抵抗体
4・・・電極パターン
5・・・保護膜
6・・・ドライバーIC
7,7’・・・封止材
8,8’・・・絶縁材
8a,8’a・・・切欠き
9・・・プラテンローラ
10a,10b,10c,10d・・・搬送ローラ
Claims (5)
- 複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、
前記封止材の外周を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞するとともに、前記封止材の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させたことを特徴とするサーマルヘッド。 - 前記切欠きが1個/mm〜4個/mmの密度で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
- 前記絶縁材の頂部が前記ドライバーICの上面よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッド。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のサーマルヘッドと、該サーマルヘッド上に記録媒体を搬送するための搬送手段とを備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
- 複数の発熱抵抗体を有する基板の上面に、前記発熱抵抗体の発熱を制御する複数のドライバーICを配列するとともに、これらドライバーICを樹脂材料からなる封止材で被覆してなるサーマルヘッドにおいて、
前記封止材の形成に先立って、ドライバーICの搭載領域を、平面視形状が環状を成し、その内周に沿って複数の切欠きが設けられた絶縁材で囲繞する工程1と、
該工程1で形成された絶縁材の内側に前記封止材を構成する樹脂材料の液状前駆体を塗布するとともに、該塗布された液状前駆体の一部を絶縁材の上面及び絶縁材の切欠きの内部まで延在させる工程2と、
該工程2で塗布した液状前駆体を熱硬化させて封止材を形成する工程3と、を備えたサーマルヘッドの製造方法。
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Cited By (2)
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JP2018167439A (ja) * | 2017-03-29 | 2018-11-01 | 京セラ株式会社 | サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ |
WO2024014066A1 (ja) * | 2022-07-11 | 2024-01-18 | ローム株式会社 | サーマルプリントヘッド |
-
2002
- 2002-11-29 JP JP2002346650A patent/JP2004175049A/ja active Pending
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WO2024014066A1 (ja) * | 2022-07-11 | 2024-01-18 | ローム株式会社 | サーマルプリントヘッド |
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