JP3614499B2 - 小型船舶の船外機の舵取り装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、チルトアップ自在かつ舵取り自在に設けられた船外機が例えば船体の最後尾に取着されてなる小型船舶の船外機の舵取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、小型船舶の船体に着脱自在に設けられる船外機として種々のものが提供されている。このような船外機が設けられてなる小型船舶は、一般に「モ−タボ−ト」と称され、上記船外機自体の向きを変えることで、舵取りを行えるようになっている。
【0003】
また、このようなモ−タボ−トでは、船外機の推進プロペラが浅瀬に干渉して破損することがないように、この船外機を跳ね上げて使用することができるように構成されている。このような跳ね上げ状態は「チルトアップ」と称される。上記モ−タボ−トでは、このチルトアップ状態においても舵取りが行えるように構成されているのが一般的である。
【0004】
なお、この舵取りを遠隔操作により行うことができるように構成されている機種がある。この機種では、上記船体側にピストン形油圧シリンダを固定し、この油圧シリンダのシリンダチュ−ブから突出したピストンロッドの先端に、ステアリングア−ムを取り付け、このステアリングア−ムを上記船外機の舵取りレバ−に連結してなる。
【0005】
そして、運転席に設けられたハンドルは、油圧発生回路に接続され、この油圧発生回路は上記油圧シリンダのシリンダチュ−ブに接続されている。したがって、このハンドルを操作することで上記油圧シリンダのシリンダチュ−ブから上記ピストンロッドを突没駆動することができ、上記ステアリングア−ムを介して上記船外機の舵取りを行えるようになっている。
【0006】
また、チルトアップ状態でも舵取りが行えるように、上記油圧シリンダのシリンダチュ−ブは、上記ピストンロッドの中心線を上記船外機のチルトアップ揺動中心線に一致させた状態で固定されている。
【0007】
このように構成することで、このチルトアップの際には、上記油圧シリンダのピストンロッドをその軸線回りに回転させるだけで対応することが可能となる。
【0008】
一方、従来、上述したような船外機を2機並列的に備えてなる機種がある。このような機種においては、上記船外機が2機別々にチルトアップ可能に設けられており、かつ、これらの船外機の舵取りを同時に行えるようになっている。
【0009】
すなわち、従来の船外機においては、一方の船外機が上述したように油圧シリンダによって舵取り可能に構成され、他方の船外機はこの一方の船外機にタイロッドによって連結されている。したがって、一方の船外機に舵取り動作を行わせると、これに連動して他方の船外機も同様に舵取り動作が行われるようになっている。
【0010】
そして、上記2機の船外機のうちの片方のみがチルトアップされたされた状態でも舵取り動作が行えるように、上記タイロッドの両端部は、それぞれの船外機の舵取り用レバ−に自在継手(二軸の角度を自由に変えることができる継手)を介して連結されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の船外機の舵取り機構には、以下に説明する解決すべき課題がある。
【0012】
第1に、上記タイロッドの存在により以下の課題がある。
【0013】
すなわち、上述した船外機を2機有するモ−タボ−トの場合、片方の船外機のみをチルトアップした際に、2機の船外機を連結するタイロッドがこれらの船外機のエンジンカバ−や周辺に位置する他の部品と干渉してしまうおそれがある。このため、スム−ズな操舵が行えないということがある。
【0014】
また、タイロッド連結のための構成として、上述したように自在継手を用いなければならず、構成が複雑となる。また、チルトアップすると、軸が捩じれてしまうので、駆動の抵抗になるということがある。このためには、捩じれに対する対応を設ける必要があるが、この構成も複雑となる。
【0015】
さらに、両者を上記タイロッドで連結したままで、片方の船外機のみをチルトアップすると、上記タイロッドの長さは変わらないので、上記2機の船外機の操舵方向にずれが生じるということがある。
【0016】
第2に、従来の構成では、上記油圧シリンダを上記ブラケットの揺動軸線上に固定する必要がある。このとき、上記油圧シリンダを固定するために、この油圧シリンダのシリンダチュ−ブ本体を上記ブラケットに捩じ込むようにしていた。このことにより以下の課題が生じる。
【0017】
すなわち、このような構成では、上記シリンダチュ−ブを上記ブラケットから取り外す場合に、このシリンダチュ−ブを回転させる必要があるので、上記シリンダチュ−ブに接続された2本の油圧チュ−ブをこのシリンダチュ−ブからいちいち取り外さなければならないということがある。
【0018】
また、この油圧シリンダを組み付ける場合には、上述とは反対に、上記シリンダチュ−ブを回転させて上記固定具に固定した後、このシリンダチュ−ブに上記油圧チュ−ブを取着する必要がある。
【0019】
このような作業は、非常に面倒である。また、油圧チュ−ブを取り外した際には油が流出する恐れがあり、また、取り付けた後にはエア抜きを行う必要がある。
【0020】
この発明は、このような事情に鑑みて成されたもので、個別にチルトアップ可能な2機の船外機を操舵する場合において、簡単な構成で機構的に無理がなく、かつ組み立ておよび分解が容易な船外機の舵取り装置を提供することを目的とするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、この請求項1に記載された発明は、並列に設けられた2機の船外機を有し、各船外機は船体に設けられた固定具に管状のチルト軸を中心にしてチルトアップ自在に設けられたブラケットに支持されかつこのブラケットに舵取り揺動自在に支持されてなる小型船舶の船外機の舵取り装置において、上記2機の船外機のいずれか一方のチルト軸にピストンロッドを同軸的に貫通させ、このピストンロッドの先端部を2機の船外機の間に導出させた油圧シリンダと、上記チルト軸に固定され、上記油圧シリンダを保持する保持手段と、一端部および他端部をそれぞれ上記ピストンロッドの先端部と一方の船外機の舵取りレバ−とに枢着された第1のステアリングア−ムと、上記ピストンロッドの中心軸回りに上記第1のステアリングア−ムと独立して回動自在に設けられ、一端部および他端部を上記ピストンロッドの先端部と他方の船外機の舵取りレバ−とに枢着された第2のステアリングア−ムとを有することを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された舵取り装置において、上記第1、第2のステアリングア−ムのいずれか一方は、上記ロッドにこのロッドの中心軸回りに回動自在に設けられたドラックリンクと、一端部をこのドラックリンクの回動端部に枢着され他端部を船外機の舵取りレバ−に枢着されたア−ム部材とからなることを特徴とする。
【0025】
請求項3に記載された発明は、請求項1記載の舵取り装置において、上記油圧シリンダは、端部にフランジ部が形成されてなるシリンダチュ−ブを有し、上記保持手段は、上記チルト軸に固定された取り付けフランジと、この取り付けフランジと上記シリンダチュ−ブのフランジ部とを固定する固定部品とを有することを特徴とするものである。
【0026】
【作用】
このような構成によれば、2つの船外機の片方のみがチルトアップされた場合でも、各船外機用の第1、第2のステアリングア−ムが独立して設けられているので、各船外機の舵取りを無理のなくスム−ズに行うことができる。
【0027】
上記ステアリングア−ムのいずれか一方を、上記ロッドにこのロッドの中心軸回りに回動自在に設けられたドラックリンクと、一端部をこのドラックリンクの回動端部に枢着されたア−ム部材とから構成することで、簡単な構成で上記作用を得ることができる。
【0028】
また、ステアリングア−ムを駆動するための油圧シリンダをチルトチュ−ブに固定するのに、油圧シリンダを直接チルトチュ−ブに固定するのではなく、保持手段を介しているので、取着あるいは取り外し時に、この油圧シリンダを回転させてチルトチュ−ブに捩じ込む必要がない。
【0029】
この場合、上記チルト軸に固定された取り付けフランジと、上記シリンダチュ−ブのフランジ部とを固定する固定部品で固定するようにすれば簡単な構成で上記作用を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0031】
図1(a)は、船外機1が取り付けられた小型船舶の船体2の最後部(船外機1の取り付け位置は最後部には限定されない)を示す概略構成図である。
【0032】
この船外機1は、アルミ合金製のアッパケ−シング3とロアケ−シング4とを連結してなるケ−シング5を有する。上記アッパケ−シング3上にはエンジン6(点線で示す)がマウントされていると共に、このエンジン6は上記アッパケ−シングに取着されたカウリング7によって覆い隠されている。
【0033】
このエンジン6は、上記アッパケ−シング3とロアケ−シング4とに亘って設けられたドライブシャフト9を回転駆動するようになっている。また、上記ロアケ−シング4の下端には、推力発生プロペラ10が軸線を略水平にして設けられており、このプロペラ10は、図に11で示すプロペラシャフトを介して上記ドライブシャフト9の下端に動力伝達自在に連結されている。
【0034】
したがって、この船外機1は、上記エンジン6を作動させることで、上記プロペラ10を回転駆動することができ、このプロペラ10(プロペラシャフト11)の回転軸線方向の推進力を発生させるようになっている。
【0035】
また、この船外機1はチルトアップ自在かつ舵取り自在に設けられている。すなわち、上記船体2の最後尾には図に13で示す固定具が取着されており、この固定具13には、図に14で示すブラケットが、チルトチュ−ブと称される管状の水平軸15(チルト軸)を介して上下方向に揺動自在に設けられている。そして、上記船外機1のアッパケ−シング3は、このブラケット14上に図に16で示す舵取り軸によって舵取り揺動自在に支持されている。
【0036】
また、上記船外機1のアッパケ−シング3からは、同1(a)、(b)に示すように、舵取りレバ−17が船体2側に延出されており、この舵取りレバ−17を駆動することで上記船外機1を図に(ロ)で示す舵取り軸16の垂直軸線回りに揺動させ、操舵を行えるようになっている。
【0037】
このような構成によれば、この船外機1は、上記ブラケット14を固定具13に対して、図1(b)に示す上記チルトチュ−ブ15の水平軸線(イ)回りに上下方向に揺動させることで、図1(a)に実線で示すチルトダウンの状態から同図に一点鎖線で示すチルトアップの状態に跳ね上げることができるようになっている。また、このチルトアップの状態においても、上記舵取りレバ−17を操作することで、上記舵取り軸16の軸線(ロ)を支点とした舵取り動作を行えるようになっている。
【0038】
また、この船外機1は、図示しないリバ−スロック機構やチルトロック機構によってそのチルトアップあるいはチルトダウンの姿勢が保たれるようになっている。また、例えば油圧駆動機構を用いることで、この船外機1のチルトアップを行う人手によらず行えるようにしても良い。
【0039】
次に、この船外機1の舵取り装置について図2以下を参照して説明する。
【0040】
この実施例においては、上記船外機1は並列に2機設けられている。図2はこの2機の船外機1を示す斜視図であり、図3(a)はその上面図、図3(b)は正面図である。
【0041】
この2機の船外機1は、所定の間隔を存して並列に設けられ、各図に19で示す舵取り機構(舵取り装置)によって舵取り駆動することができるようになっている。
【0042】
この舵取り機構19は、図中右側に位置する船外機1のチルトチュ−ブ15に固定された往復形の油圧シリンダ20と、この油圧シリンダ20のピストンロッド21の先端と各船外機1の舵取りレバ−17とを連結する右側ステアリングア−ム22(第1のステアリングア−ム)および左側ステアリングア−ム23(第2のステアリングア−ム)とからなる。
【0043】
図4は、右側の船外機1の取り付け部を拡大して示す正面図である。図中13は一対の固定具であり、14はブラケットである。このブラケット14を揺動自在に保持するための上記管状のチルトチュ−ブ15は、一端部15aおよび他端部15bをそれぞれ一対の固定具13の側面から所定寸法突出させた状態で固定具13間に回転不能に架設されている。
【0044】
また、このチルトチュ−ブ13の一端部15aおよび他端部15bには雄ねじが形成されている。このうち、このチルトチュ−ブ15の一端部15aには、上記油圧シリンダを固定するためのロックナット25および取り付けフランジ26(保持手段)がこの順で螺着されている。
【0045】
すなわち、この取り付けフランジ26には、前記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27に形成されたフランジ部27aが図に28で示す一対の固定部品(ボルトおよびナット)によって固定されている。
【0046】
そして、上記ロックナット25は、上記シリンダチュ−ブ27のフランジ部27aが上記取り付けフランジ26に固定された後に、この取り付けフランジ26側へ締め込まれ、この取付フランジ26および油圧シリンダ20をこのチルトチュ−ブ15に回転不能に固定する機能を奏するものである。
【0047】
一方、この油圧シリンダ20のピストンロッド21は、上記管状のチルトチュ−ブ15を貫通してこのチルトチュ−ブ15の他端部15bから外部(左側)に延出されている。
【0048】
なお、このピストンロッド21の長さによっては、船体2の取り付けスペ−スの関係上、上記油圧シリンダ20をチルトチュ−ブ15に組み付ける場合の支障となる場合がある。このため、上記ピストンロッド21は、その中途部に設けられた連結部29で2分割可能に構成されている。この2分割されたピストンロッド21は、図に示す凹凸で互いに相対回転不能に組み合わされ、かつピン30によって分離不能に止められている。
【0049】
次に、このピストンロッド21の先端部に設けられた右側ステアリングア−ム22と左側ステアリングア−ム23について説明する。
【0050】
右側用ステアリングア−ム22は、上記ピストンロッド21の先端にこのピストンロッド21の軸線(イ)回りに回転自在に取着されたドラックリンク31と、このドラックリンク31と上記右側船外機1の舵取りレバ−17とを接続する右側ア−ム32(ア−ム部材)とからなる。
【0051】
上記ドラックリンク31は、図5に示すようにリング状に形成された基端部31aを有し、この基端部31aを上記ピストンロッド21の先端に対して同軸上に取着される先端部品33の細径部33aに外挿されることでこのピストンロッド21の軸線回りに回転自在に設けられている。なお、上記ピストンロッド21の先端面と上記ドラックリンク31の基端部31a間には、図に34で示すワッシャが介装されている。
【0052】
また、上記右側ア−ム32は、一端部32aを上記ドラックリンク21の先端部31bにこのドラックリンク31の軸線回りに回動自在に取着され、他端部32bを図4に示すように上記左側船外機1の舵取りレバ−17に回動自在に取着されている。
【0053】
なお、この右側ア−ム32は、一端部32aの回動軸線(ドラックリンク31の軸線)と、他端部32bの回動軸線とが互いに平行になるように形成される。このため、この右側ロッド32は直線状ではなく、図2、図3(a)に示すように中途部で屈曲された形状をなす(この図3(a)では、各回動軸線は紙面と垂直な方向)。
【0054】
なお、スム−ズな舵取り動作を行うために、右側ア−ム32の一端部32aおよび他端部32bの回動軸線は、前述した船外機1の舵取り軸16の軸線(ロ)と平行となっている。
【0055】
一方、上記左側用ステアリングア−ム23は図3(b)に示すように、略L字状の左側ア−ム36からなる。図5に示すように、この左側ア−ム36の基端部36aは、上記ピストンロッド21の先端に固定された先端部品33に、このピストンロッド21の軸線と直交する軸線回りに回動自在に取着されている。
【0056】
また、上記左側ア−ム36の他端部36bは、図3(b)に示すように、上記左側船外機1の舵取りレバ−17の先端部に回動自在に取着されている。前記右側ア−ム32と同様に、この左側ア−ム36は、基端部36aの回動軸線と他端部36bの回動軸線が互いに平行となるように形成されている(図3(a)では、各回動軸線は紙面と垂直な方向)。また、これらの回動軸線は、上記左側船外機1の舵取り軸16の軸線(ロ)と平行になるように構成され、スム−ズな舵取りが行えるようになっている。
【0057】
一方、船体2側に設けられた図示しない運転席には、図2に示すハンドル37(操舵手段)が設けられている。このハンドル37は、油圧発生回路38および、この油圧発生回路38から導出された油圧ライン39を介して上記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27に接続されている。
【0058】
すなわち、このハンドル37を操作することで、油圧発生回路38に必要な油圧を発生させることができ、このことにより上記油圧シリンダ20を作動させて上記ピストンロッド21を突没駆動することができるようになっている。
【0059】
このことで、このピストンロッド21の先端部に取着された左右のステアリングア−ム22、23を介して上記2機の船外機1は同時に舵取り駆動されるようになっている。
【0060】
次に、この舵取り機構19の動作について説明する。
【0061】
まず、2機ともにチルトダウンの状態にある場合について図2を参照して説明する。なお、説明の便宜上、各ステアリングア−ム22、23の関節部に図2および図3に示すようにA〜Eの符号を付して説明することとする。
【0062】
この場合には、例えば、上記ピストンロッド21が突出駆動されると、右側ステアリングア−ム22全体(関節A、B、C)が図中左側に移動し、上記右側の船外機1は図に矢印で示す方向に転舵する。このとき、前述した軸線回りに回動自在に設けられた関節B、Cで相対回動運動が行われ、スム−ズな舵取りが行われる。
【0063】
また、上記左側の船外機1については、上記左側ステアリングア−ム23全体(関節D、E)が左側に移動することで右側の船外機1と同方向に舵取り動作が成される。また、この際、前述した軸線回りに回動自在に設けられた関節D、Eで相対回動運動が成されることで、スム−ズな舵取りが行われる。
【0064】
次に、左側の船外機1のみをチルトアップにした場合について図6を参照して説明する。
【0065】
この場合、上記左側船外機1は、上記ブラケット14の揺動中心軸(イ)すなわちチルトチュ−ブ15を中心として、チルトアップする。これに伴い、上記左側用ステアリングア−ム23およびピストンロッド21が、このピストンロッド21の軸線(イ)回りに回動する。
【0066】
上記チルトチュ−ブ15とピストンロッド21の中心線は一致しており、かつ上記ピストンロッド21は右側のチルトチュ−ブ15内で回転自在に保持されている。このため、このチルトアップの際に、この左側ステアリングア−ム23に無理な力がかかるということはない。
【0067】
また、このチルトアップを任意の角度で停止させた場合でも、関節Dと関節Eの回動軸線および上記船外機1の舵取り軸16の軸線(ロ)は平行に保たれる。したがってチルトアップ前と同様にスム−ズな舵取り動作を行える。
【0068】
一方、上記右側ステアリングア−ム22については、関節Aにおいて上記ピストンロッド21と独立に回動自在に連結されているから、左側船外機1のチルトアップの影響を受けて無理な力が加わるということがなく、チルトアップ前と同じ状態が保たれる。
【0069】
したがって、前述した場合と同様に、2機の船外機1を同時に、かつスム−ズな舵取りを行うことができる。
【0070】
次に、右側の船外機1のみをチルトアップした場合を図7に基づいて説明する。
【0071】
この場合には、上記右側ステアリングア−ム22(ドラックリンク31および右側ア−ム32)が、チルトアップ前の回動軸線の関係(関節B、Cの回動軸線と舵取り軸16の回動軸線(ロ)(図3(b)に示す)の平行関係)を維持しながら、上記右側船外機1と一緒にチルトアップする。このとき、上記ドラックリンク31は、上記ピストンロッド21と独立に、このピストンロッド21の中心軸線(イ)回りに回動するから、左側ステアリングア−ム23に無理な力がかかるということがない。
【0072】
したがって、上述した左側船外機1のみをチルトアップした場合と同様に、各船外機1を同時かつスム−ズに操舵することができる。
【0073】
次に、この機構の分解方法について説明する。
【0074】
この分解は、点検等のため上記船外機を船体から取り外す場合等に行う。
【0075】
まず、図5に示すように、上記ピストンロッド21の先端から先端部品33を取り外すことで、このピストンロッド21と各ステアリングア−ム22、23を分離させる。
【0076】
次に、上記油圧シリンダ20を上記チルトチュ−ブ15から取り外す。このためには、図8に示すように、まず、上記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27と上記取り付けフランジ26とを連結する固定部品28を取り外す。ついで、上記シリンダチュ−ブ27を右側に引きながら、上記ピストンロッド21を上記チルトチュ−ブ15内から引き抜く。
【0077】
途中、このピストンロッド21の連結部29が上記シリンダチュ−ブ15の一端部15aから右側に抜けたならば、この連結部29に取着してあるピン30を引き抜くことで、このピストンロッド21を2分割する。
【0078】
そして、最後に、上記シリンダチュ−ブ15内に残った上記ピストンロッド21を引き抜くことでこの駆動機構19の分解は終了する。なお、組み立てる場合は、これと反対の動作により行うことができる。
【0079】
一方、この実施例の変形例として、上記ピストンロッド21の先端から上記各ステアリングア−ム22、23を取り外さずに分解を行うことも可能である。この方法は、上記ピストンロッド21の連結部29がピストンチュ−ブ27よりに設けられている場合に採ることが可能である。
【0080】
この場合、上記ピストンロッド21を上記シリンダチュ−ブ27内に最大に没入させた状態、すなわち、舵を右(図2に示す矢印と反対の方向)に切った状態で分解を開始する。
【0081】
まず、上記シリンダチュ−ブ27を上記同様の方法により上記取り付けフランジ26から取り外した後、この上記ピストンロッド21を上記連結部29が露出するまで上記チルトチュ−ブ15内から引き抜く。ついで、露出した連結部29から上記ピン30を引き抜くことでこの連結を解除する。
【0082】
連結を解除したならば、上記チルトチュ−ブ15内に残っているピストンロッド21を上記ステアリングア−ム22、23と共に上記とは反対の方向(ステアリングア−ム22、23側)に引き抜くようにする。
【0083】
このようにすれば、上記ステアリングア−ム22、23とピストンロッド21の分解を行わなくとも、上記船外機1を船体2から取り外すことができるようになる。
【0084】
以上述べた構成によれば、以下に説明する効果を得ることができる。
【0085】
第1に、船外機1を2機設けた場合において、片方の船外機1のみをチルトアップした状態であっても、両方の船外機1を同時に、かつスム−ズに操舵することができる効果がある。
【0086】
この効果を、図9、図10に示す従来構成と同様の構成を有する舵取り機構を参照して説明する。
【0087】
すなわち、従来の構成は、2機の船外機1の舵取りレバ−17どうしを図に40で示すタイロッドで連結していた。このような構成であると、片方の船外機1のみを図10に示すようにチルトアップする際に、チルトアップの角度にもよるが、船外機1のカウリング7や右側のステアリングア−ム41あるいは他の周辺部品に干渉してしまうおそれがあった。
【0088】
また、片方の船外機1をチルトアップすると、各船外機1の舵取りレバ−17の角度や高さが変化するため、上記タイロッド40の両端部40a、40bを自在継手としなければならない。また、片方をチルトアップすると、軸が捩じれて無理な力がかかってしまうので、これを解消するための構成を設ける必要がある。このため、構成が複雑化していた。
【0089】
さらに、両者を上記タイロッド40で連結したままで、片方の船外機1のみをチルトアップすると、上記タイロッド40の長さは変わらないので、上記2機の船外機1の操舵方向にずれが生じるということもあった。
【0090】
一方、この発明によれば、上記タイロッド40が不要になる。そして、各船外機1をチルトアップした場合でも、前述したように船外機1と各駆動用のステアリングア−ム22、23の位置関係(回動軸の関係)は変更されない。したがって、このステアリングア−ム22、23が船外機1のカウリング7等と干渉することはない。
【0091】
また、前述したように片方の船外機1のチルトアップによって、このチルトアップした船外機1のステアリングア−ムやチルトアップしていない方の船外機1のステアリングア−ムに無理な力が加わることがない。したがって、チルトアップした際でも、チルトダウンと同様にスム−ズな操舵が行える。さらに、片方の船外機1のチルトアップに伴って2機の船外機1の操舵方向にずれが生じるということもない。
【0092】
これらのことにより、従来の舵取り機構の欠点を解消した舵取り装置を得ることができる効果がある。
【0093】
第2に、構成が簡単で、分解および組み立てが非常に容易に行える効果がある。
【0094】
すなわち、前述したようにタイロッド40を用いた従来の構成では、このタイロッド40の両端部に40a、40b自在継手を設ける必要があり、さらに、このタイロッド40の捩じれや片方の船外機1のチルトアップに伴う操舵方向のずれを防止するにはさらに複雑な機構を設ける必要があった。
【0095】
これに対して、この発明の操舵装置によれば、このような複雑な構成を設ける必要がないという効果がある。
【0096】
また、従来の構成では、上記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27を上記チルトチュ−ブ15に直接螺着していた。すなわち、上記シリンダチュ−ブ27をその軸線回りに回転させて、上記固定具13に固定されたチルトチュ−ブ15の一端部15aに捩じ込んでいた。
【0097】
このため、この油圧シリンダ20の取り付けや分解時には、油圧ライン39の絡まりを防止するために、上記シリンダチュ−ブ27から油圧ライン39、39を取り外した状態で行わなければならず、油圧ライン39からの油漏れの心配や、面倒なエア抜きを行わなければならないということがあった。
【0098】
これに対して、この発明では、上記チルトチュ−ブ15の一端部15aに、取り付けフランジ26およびロックナット25を設け、この取り付けフランジ26と油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27のフランジ部27aとを固定部品29を用いて締結することで、上記油圧シリンダ20を上記チルトチュ−ブ15に固定するようにした。
【0099】
したがって、このシリンダチュ−ブ27を回転させなくとも上記チルトチュ−ブ15に上記油圧シリンダ20を固定することができる。したがって、上記シリンダチュ−ブ27から油圧ライン39を取り外すことなく、この機構の分解および組み立てを行うことができる。
【0100】
また、上記実施例では、上記油圧シリンダ20のピストンロッド21をその軸方向中途部で2分割した。そして両者をピン30で接続することで、容易に分割することができるようにした。
【0101】
このことで、船体2におけるスペ−スが限られている場合に、上記ピストンロッド21の長さが、この油圧シリンダ20の組み付けの支障になることを有効に防止できる。また、両者をピン30で結合することで、上記チルトチュ−ブ15内では分割することなく、このピストンロッド21をチルトチュ−ブから引き抜いた際には容易に分割する構成とすることができる。したがって、この機構の分解および組み立てが非常に容易に行える効果がある。
【0102】
なお、この発明は、上記一実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0103】
例えば、上記右側および左側ステアリングア−ム22、23の構成は、上記一実施例に限定されるものではない。すなわち、このステアリングア−ムの条件として、各ステアリングア−ムが上記ピストンロッド21の中心軸(イ)回りに独立に回動可能になっており、両方のア−ムが各船外機1の舵取り軸16の軸線(ロ)と平行な回動軸線回りに回動可能になっていることが必要である。したがって、この条件を満たせば、種々変形可能である。
【0104】
例えば、上記一実施例では、上記右側ステアリングア−ム22は、右側ア−ム32がドラックリンク31の先端に略直角を成して取着されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、上記右側ア−ム32´が左側ステアリングア−ム23同様にL字形をなし、その基端部32´aをドラックリンク31に同軸的に取着されているものであっても良い。
【0105】
そして、このための構成としは、例えばこの図に示すようなものが考えられる。すなわち、上記右側ア−ム32´の基端部32´aに鍔部43を設け、この鍔部43を、上記ドラックリンク31の上端面およびこれに螺着されるカバ−44とによって回動自在に保持するようにすれば良い。
【0106】
また、上記一実施例では、上記右側ステアリングア−ム22が、ドラックリンク31と右側ア−ム32の2つの部品に分割され、上記右側ステアリングア−ム23は、1本のL字状のア−ム36であったが、図12に示すように、上記左側ステアリングア−ム23が、2つのア−ム部品45、46に分割され、上記右側ステアリングア−ム22が1本のL字状ア−ム47であっても良い。
【0107】
このような構成であっても上記一実施例の機構と同様の作用を奏し、これにより、同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、上記一実施例では、上記油圧シリンダ20をチルトチュ−ブ15に固定する保持手段として、取り付けフランジ26、ロックナット25および固定部品29を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば図13(a)、(b)に示すような構成であっても良い。
【0109】
すなわち、この構成では、上記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27の先端部50に雄ねじを設け、この先端部50とチルトチュ−ブ15の一端部15aのどうしを図13に示すカップリング51を用いて連結するものである。
【0110】
このカップリング51は、軸方向に係合する内側ナット52と外側ナット53とからなり、まず、図13(a)に示すように内側ナット52を上記チルトチュ−ブ15の一端部15aに螺着する。ついで上記外側ナット53を回転駆動することで、この外側ナット53を上記油圧シリンダ20のシリンダチュ−ブ27の先端部50に螺着する。
【0111】
このような構成であっても、上記シリンダチュ−ブ27を回転させることなく、この油圧シリンダを上記チルトチュ−ブ15の一端部15aに固定することができるので、上記一実施例と同様の効果を得ることができる。
【0112】
さらに、上記一実施例では、2分割されたピストンロッド21どうしを連結するのに、互いの凹凸を組み合わせてピン30で止めるようにしていたが、これに限定されるものではない。
【0113】
例えば、図14に示すように、一方のピストンロッド21に雌ねじを設け、他方のピストンロッドに雄ねじを設けることで、両者を連結するようにしても良い。なお、この場合は、連結工具として例えばレンチを用いるために、図に示すような面取り48、49を設けておいても良い。
【0114】
なお、上記一実施例では、上記船外機1は船体2の最後部に取着されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、船体2の中間部に取着されるものであっても良い。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したこの発明によれば、個別にチルトアップ可能な2機の船外機を操舵する場合において、片方の船外機のみをチルトアップした場合であっても機構的な無理なく各船外機を操舵することができる。しかも、この場合でも2機の船外機に舵取り方向のずれが生じることがない。
【0116】
また、油圧シリンダを回転させて捩じ込むという動作を経ることなく、この油圧シリンダをチルトチュ−ブから着脱することができるので、油圧シリンダの油圧ラインを取り外すことなくこの装置の組み立ておよび分解を行える。
【0117】
これらのことより、舵取り装置の耐久性およびメンテナンス性が向上する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の船外機を示す概略構成図。
【図2】同じく、斜視図。
【図3】同じく、上面図および正面図。
【図4】同じく、拡大して示す正面図。
【図5】同じく、ステアリングア−ムの分解図。
【図6】同じく、動作を示す斜視図。
【図7】同じく、動作を示す斜視図。
【図8】同じく、油圧シリンダの固定を示す分解図。
【図9】従来の舵取り装置を示す斜視図。
【図10】従来の舵取り装置の動作を示す斜視図。
【図11】他の実施例を示すステアリングア−ムの拡大正面図。
【図12】他の実施例を示すステアリングア−ムの拡大正面図。
【図13】他の実施例を示す油圧シリンダの固定部分の拡大縦断面図。
【図14】他の実施例を示すピストンロッドの連結部の斜視図。
【符号の説明】
1…船外機、2…船体、13…固定具、14…ブラケット、15…チルトチュ−ブ(チルト軸)、17…舵取りレバ−、19…舵取り機構(舵取り装置)、20…油圧シリンダ、21…ピストンロッド、22…右側ステアリングア−ム、23…左側ステアリングア−ム、26…取り付けフランジ(保持手段)、27…シリンダチュ−ブ、27a…フランジ部、28…固定部品(保持手段)。
Claims (3)
- 並列に設けられた2機の船外機を有し、各船外機は船体に設けられた固定具に管状のチルト軸を中心にしてチルトアップ自在に設けられたブラケットに支持されかつこのブラケットに舵取り揺動自在に支持されてなる小型船舶の船外機の舵取り装置において、
上記2機の船外機のいずれか一方のチルト軸にピストンロッドを同軸的に貫通させ、このピストンロッドの先端部を2機の船外機の間に導出させた油圧シリンダと、
上記チルト軸に固定され、上記油圧シリンダを保持する保持手段と、
一端部および他端部をそれぞれ上記ピストンロッドの先端部と一方の船外機の舵取りレバ−とに枢着された第1のステアリングア−ムと、
上記ピストンロッドの中心軸回りに上記第1のステアリングア−ムと独立して回動自在に設けられ、一端部および他端部を上記ピストンロッドの先端部と他方の船外機の舵取りレバ−とに枢着された第2のステアリングア−ムと
を有することを特徴とする小型船舶の船外機の舵取り装置。 - 請求項1記載の小型船舶の船外機の舵取り装置において、
上記第1、第2のステアリングア−ムのいずれか一方は、上記ロッドにこのロッドの中心軸回りに回動自在に設けられたドラックリンクと、
一端部をこのドラックリンクの回動端部に枢着され他端部を船外機の舵取りレバ−に枢着されたア−ム部材とからなる
ことを特徴とする小型船舶の船外機の舵取り装置。 - 請求項1記載の小型船舶の船外機の舵取り装置において、
上記油圧シリンダは、端部にフランジ部が形成されてなるシリンダチュ−ブを有し、
上記保持手段は、上記チルト軸に固定された取り付けフランジと、この取り付けフランジと上記シリンダチュ−ブのフランジ部とを固定する固定部品とを有する
ことを特徴とする小型船舶の船外機の舵取り装置。
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