JP3613628B2 - 電磁弁装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用電磁弁等の各種圧力媒体の流路を開閉操作する電磁弁装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
この種の電磁弁装置としては、図７に示すようにハウジングａに形成した収容孔ｂ内に電磁弁ｃを組み込んで構成される。
この種の電磁弁ｃにあっては、圧力媒体の圧力により収容孔ｂから電磁弁ｃの抜け出しを防止するために、電磁弁ｃの大気側を剛性の高い押え板ｄで覆い、ボルトｅで固定しているが、電磁弁ｃの固定に多くの手数がかかるうえに、押え板ｄの取付分だけ外寸や重量が大きくなる難点がある。
【０００３】
また電磁弁ｃの他の固定手段としては、収容孔内に電磁弁をすべて収容した後、収容孔の口元に蓋材を螺着して固定することも知られている。
しかしこの固定手段にあっては、収容孔のねじ加工や蓋材のセットに手数がかかる問題がある。
【０００４】
また電磁弁ｃは圧力媒体の高い漏出防止性能が要求されていて、現在は電磁弁ｃに形成されたポートｆの片側又は両側に外装した環状のラバーシールｇによって収容孔との間のシール性を確保している。ラバーシールｇを用いたシール手段にあっては、圧力媒体の加圧時に押え板ｄが撓むため、圧力媒体の圧力が繰り返し変化する場合は電磁弁ｃに装着したラバ−シ−ルｇが収容孔ｂとの間で圧力を受けながら往復摺動を繰り返すために損傷し易く、シ−ル性に対する信頼性が低いといった問題がある。さらに電磁弁ｃが外気側へ移動した場合はその移動分だけ圧力媒体の消費液量が増すといった難点も指摘されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題点を解決するためになされたもので、電磁弁の固着固定と漏出防止工程を同時に行えて組立性に優れた電磁弁装置を提供することにある。さらに本発明は、圧力媒体の漏出防止性能の高い、電磁弁装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、電磁弁収容用の少なくとも１つの収容孔を有するハウジングと、スリーブ内に摺動自在に収容され、弁体を有するアマチュアと、内部に弁座を有し、前記弁体と弁機構を構成するバルブシートと、電磁力により前記アマチュアを作動させるコイルアセンブリとを備えた電磁弁装置において、バルブシートとアマチュアとスリーブとからなるアマチュアアセンブリが段付状の収容孔内に挿入され、前記アマチュアアセンブリがハウジングの一部を収容孔の孔底側へ向けて周状に塑性変形させて形成した第１かしめ部で固着されていると共に、アマチュアアセンブリを構成するバルブシートの底面が収容孔の孔底側に圧着され、収容孔とスリーブの間に外周に段付部を形成したカラーが配設され、ハウジングの一部を収容孔の孔底側へ向けて周状に塑性変形させて形成した第２かしめ部と前記第１かしめ部とによりカラーが挟圧されていて、前記カラーを介してアマチュアアセンブリがハウジングに固定されていると共に、圧力媒体側と大気側及び弁機構の前後の圧力媒体流路間が液密的にシールされていることを特徴とする、電磁弁装置である。
さらに本発明は、前記バルブシートの大気側端部に小径部を形成し、前記小径部とスリーブが同芯的に嵌合されてアマチュアアセンブリを構成していることを特徴とする、電磁弁装置である。
さらに本発明は前記いずれかの電磁弁装置において、バルブシートの底面に環状突起を形成し、前記環状突起が収容孔の孔底面に貫入されて弁機構の前後の圧力媒体流路間が液密的にシールされていることを特徴とする、電磁弁装置である。 さらに本発明は前記いずれかの電磁弁装置において、カラーが磁性材で形成されていることを特徴とする、電磁弁装置である。
【０００７】
【発明の実施の形態１】
以下図面を参照しながら本発明の一実施の態様について説明する。
【０００８】
＜イ＞電磁弁装置の構成
図１に電磁弁装置の一例を示す。
電磁弁装置は常閉式又は常開式の電磁弁１０とこの電磁弁１０を組み付けるハウジング２０とにより構成される。本例では常閉式の電磁弁１０について説明する。
電磁弁１０はハウジング２０に装着されるアマチュアアセンブリ３０と、アマチュアアセンブリ３０に外装するコイルアセンブリ４０とにより構成され、ハウジング２０に対してサブアセンブリ化されている。
ハウジング２０とアマチュアアセンブリ３０との固定手段及びシ−ル手段には、後述するカラー５０を介したハウジング２０の第１かしめ部Ａ及び第２かしめ部Ｂによる二重かしめ方式が採用される。
【０００９】
＜ロ＞ハウジング
アルミニウムやアルミニウム合金で構成されハウジング２０に段付状の収容孔２１が形成され、収容孔２１の孔奥側から大気側に向けて小径部２１ａ，中径部２１ｂ，大径部２１ｃが連続して形成されていると共に、中径部２１ｂと大径部２１ｃの境界部に段差面２１ｄが形成されている。
小径部２１ａの底面と中径部２１ｂの側面に夫々面して出・入口ポート２２、２３（又は２３，２２）が形成されている。
【００１０】
＜ハ＞電磁弁（図１，２）
アマチュアアセンブリ３０は、ハウジング２０の収容孔２１内に装着されるバルブシート３１と、バルブシート３１に装着されたスリーブ３２と、スリーブ３２内に収容されたアマチュア３３と、スリーブ３２の開口側に固着された磁性材製のマグネットコア３４とにより構成される。
【００１１】
有底構造のバルブシート３１の底部と側部に各出・入口ポート２２、２３に連通する流路３１ａ，３１ｂが穿設され、一方の流路３１ｂの一端に弁座３５が形成され、さらにバルブシート３１の底面に、入口ポート２３の周囲を囲みシール材として機能する尖鋭の環状突起３６が形成されている。
バルブシート３１の大気側端部である外周上半に受面３１ｃと小径部３１ｄが形成され、スリーブ３２の開口端部である他端にテーパ状の裾部３２ａが形成されている。バルブシート３１の小径部３１ｄとスリーブ３２の他端部の筒部３２ｂが嵌合可能な寸法に設定され、またバルブシート３１の受面３１ｃとスリーブ３２の他端部の裾部３２ａが接面可能な形状に形成されている。バルブシート３１の受面３１ｃとスリーブ３２の裾部３２ａの接合面の形状は段差形状であってもよく、図示する形状に限定されるものではない。
【００１２】
アマチュア３３の下端に弁体３７が形成され、前記弁座３５とにより両流路３１ａ，３１ｂ（出・入口ポート２２、２３）を開閉する弁機構を構成している。アマチュア３３はマグネットコア３４との間に縮設したばね３８のばね力で前記弁機構を閉じる方向に付勢されている。
これらのバルブシート３１，スリーブ３２，アマチュア３３の各部材は中心を同一線上に揃えた状態で予め一体に組み付けられている。
【００１３】
尚、スリーブ３２とバルブシート３１間やスリーブ３２とマグネットコア３４間の固着手段はかしめ或いはレーザ溶接等に限定されず、公知の連結手段を採用できる。
【００１４】
コイルアセンブリ４０は、スリーブ３２に外装可能に導線を巻回し、樹脂で覆って成形した筒状のコイル４１と、コイル４１を外装するヨークリング４２と、ヨークリング４２の開口部を封鎖する環状のヨーク４３とにより構成される。
【００１５】
そしてコイル４１の非通電時はアマチュア３３が励磁されず、ばね３８のばね力を受けて弁体３７が弁座３５に着座して流路を遮断し、またコイル４１に通電すると励磁されたアマチュア３３がばね３８を収縮しながらマグネットコア３４の接近方向に引き寄せられるため、弁体３７が弁座３５から離隔して流路を連通する。
【００１６】
＜ニ＞カラー
カラー５０は磁性材で形成された筒状体で、その内径がスリーブ３２とほぼ同径に形成され、その下面に押圧面５１が形成され、また外周面に段付部５２が形成されている。
【００１７】
【組立方法】
つぎに電磁弁装置の組立方法について説明する。
【００１８】
＜イ＞アマチュアアセンブリの製作（図１，２）
一般に電磁弁の性能安定性は弁機構を構成する弁体と弁座の組み付け精度に大きく影響される。本発明ではスリーブ３２をバルブシート３１の小径部３１ｄに同芯的に嵌合することで、弁体３７と弁座３５の芯ズレを防止して正確に組み付けできる。
またバルブシート３１をスリーブ３２に一体化することで、アマチュアアセンブリ３０のサブアセンブリ化が可能となる。
【００１９】
＜ロ＞アマチュアアセンブリの組み付け
検査済みのアマチュアアセンブリ３０をハウジング２０の収容孔２１に内挿し、以下の工程で一次かしめと二次かしめを行って、ハウジング２０への固着作業とシール処理を同時に行う。
【００２０】
（１）一次かしめ（図２，３）
アマチュアアセンブリ３０のバルブシート３１側を収容孔２１内に挿入する。この段階ではアマチュアアセンブリ３０はハウジング２０に固着されず、単にバルブシート３１の底面が収容孔２１の孔奥に接面すると共に、バルブシート３１の側面が中径部２１ｂに当接しているだけである。
そこで図３に示すように収容孔２１（大径部２１ｃ）に環状のかしめ具６０を挿入して段差面２１ｄを押圧する。かしめ具６０の押圧によりハウジング２０の一部の母材が収容孔２１の孔奥側へ塑性変形し、スリーブ３２の裾部３２ａに圧着して第１かしめ部Ａを形成する。第１かしめ部Ａはスリーブ３２とバルブシート３１を収容孔２１の孔奥側へ押圧してアマチュアアセンブリ３０をハウジング２０に固定する固定部材として機能すると共に、収容孔２１の中径部２１ｂと大径部２１ｃの間を液密的にシールするシール材としても機能する。
さらに第１かしめ部Ａはスリーブ３２の裾部３２ａに均等に押圧力が作用することから、アマチュアアセンブリ３０が収容孔２１に対して正確な位置関係（垂直）に取り付けられる。
またかしめ具６０の加圧により、バルブシート３１が収容孔２１の孔底に圧着され、出口ポート２２と入口ポート２３（又は出口ポート２３と入口ポート２２）の間が同時にシールされる。特にバルブシート３１底面の環状突起３６が収容孔２１の孔底面に貫入して入口ポート２３の周囲をシールするため、両ポート２２，２３間のシール性がより良くなる。
【００２２】
（２）二次かしめ（図４）
一次かしめ完了後、図４に示すように収容孔２１とアマチュアアセンブリ３０との間にカラー５０内挿し、収容孔２１の口元側周縁部をかしめ具６０で押圧する。これによりハウジング２０の一部の母材が収容孔２１の孔奥側へ塑性変形し、カラー５０の段付部５２の全周囲に圧着する第２かしめ部Ｂを形成する。
第２かしめ部Ｂはカラー５０を介したアマチュアアセンブリ３０の固定機能とシール機能を並有する。
また二次かしめに用いたかしめ具６０の押圧力はカラー５０を通じて第１かしめ部Ａのかしめ力としても作用すると共に、入口ポート２３の周囲をシールするバルブシート３１の環状突起３６の押圧力としても作用することで、第１かしめ部Ａの固着機能とシール機能が増強され、さらに入口ポート２３のシール効果も増強される。
さらに第１かしめ部Ａの形成によりアマチュアアセンブリ３０の取り付けが多少傾いて取り付けられたとしても、カラー５０がアマチュアアセンブリ３０の傾きを修正する。
【００２３】
＜ハ＞コイルアセンブリの組み付け（図１）
アマチュアアセンブリ３０をハウジング２０に固着したら、ハウジング２０から突出するアマチュアアセンブリ３０にコイルアセンブリ４０を外装して固定する。
コイルアセンブリ４０の固着手段としてヨーク４３の端から突出するマグネットコア３４に止め輪４４を装着して固定する。
尚、電磁弁装置を必要に応じて解体する場合は上記した逆の手順で行えば良い。
【００２４】
【発明の実施の形態２】
実施の形態１ではかしめ具６０を使用して第１かしめ部Ａを形成する場合について説明したが、カラー５０を収容孔２１内にセットし、カラー５０を押圧して第１かしめ部Ａを形成しても良い。
本例の場合、かしめ具６０によるかしめ工程を省略できるうえに、直接かしめたカラー５０とハウジング２０の母材のなじみが良くなりシール性能が良くなるといった利点が得られる。
【００２５】
【発明の実施の形態３】
また前記した実施の形態１は出・入口ポート２２、２３（又は２３，２２）のシール手段として、バルブシート３１の底面に形成した尖鋭の環状突起３６を収容孔２１の孔底に貫入させてシールするシール手段を採用する場合について説明したが、バルブシート３１の外周にラバーシールを装着してシールする公知のシール手段を適用してもよい。
【００２６】
【発明の実施の形態４】
図５に常開弁の電磁弁に適用した他の形態を示す。
本例において先の実施の形態１と同一の部位は同一の符号を記して詳しい説明を省略する。
本例の電磁弁は先の実施の形態１の電磁弁と比べて主に異なるところは、スリーブ３２内に収容したアマチュア３３を封入するため、スリーブ３２の開口をプラグ３９で閉塞する点と、収容孔２１に嵌着したバルブシート３１がマグネットコアを兼用する点、通電時に弁体３７が弁座３５に着座して流路を遮断する点である。
また図示しないが、バルブシート３１の一部に一方向弁（チェック弁）を組み込む場合もある。
【００２７】
【発明の実施の形態５】
以上はサブアセンブリ化したアマチュアアッセンブリを組み付ける場合について説明したが、図６に示すようにサブアセンブリ化していないタイプに適用してもよい。
図６は収容孔２１内にバルブシート３１の単体を収容した後、このバルブシート３１にアマチュア３３を内蔵するスリーブ３２を載置した状態で、第１かしめ部Ａを形成して、バルブシート３１とスリーブ３２の固着工程と、アマチュアアッセンブリ３０のハウジング２０への固着工程とを同時に行うものである。
本例にあっては、バルブシート３１の単体とスリーブ３２の固着作業を収容孔２１内で行う点が先の実施の形態と異なる点であり、その他の構造や工程はこれまでの実施の形態と同様であるから、同一の部位については同一の符号を付してその説明を省略する。
本例にあっては、バルブシート３１とスリーブ３２の固着作業を第１かしめ部Ａの形成工程で同時に行えるから、サブアセンブリ化する場合のようなバルブシート３１とスリーブ３２の独立した固着工程を省略できる利点がある。
尚、図６では常閉式の電磁弁１０に適用した場合を示すが、常開式の電磁弁に適用しても良い。
【００２８】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
＜イ＞ 第１かしめ部及びバルブシートの圧力側端部により、電磁弁のハウジングへの固定工程と、大気側と圧力媒体との間及び圧力媒体流路内のシール工程とを同時に行え、組立性に優れた電磁弁装置を提供できる。
さらに第２かしめ部の併設により、第１かしめ部の固着効果とシール効果が増強され、固着効果とシール効果に対する信頼性の高い電磁弁装置が得られる。
＜ロ＞スリーブをバルブシートの小径部に同芯的に嵌合して芯ズレを防止した高精度で安定した品質の電磁弁が得られると共に、電磁弁のサブアセンブリ化が図れ、輸送の際や組立工程での取扱い性が向上する。
＜ハ＞ 損傷し易いラバーシールを使用しないので、ラバーシールによる圧力媒体の漏出の心配がないうえに、ラバーシールの部品管理や装着作業を一切省略できる。
＜ニ＞ 電磁弁が二重のかしめによりハウジングに強固に固着して電磁弁が圧力媒体によって移動するのを確実に防止できる。
そのため、従来の固着手段である押え板やボルト等の剛性部材の使用が不要となり、装置の小型軽量化が図れる。
また電磁弁装置が例えば圧力媒体が高圧を発生する車両制動用に用いた場合は、ブレーキ液の消費液量の増加を回避してブレーキペダルのストロークロスの発生を防止できる。
＜ホ＞ カラーにアマチュアアセンブリの固着機能と、磁路構成機能の両機能を持たせたので装置の構造が簡単となり、この点でも装置のより一層の小型軽量化と低廉化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１に係る電磁弁装置の断面図
【図２】アマチュアアセンブリをハウジングに装着する際における一部を省略した電磁弁装置の断面図
【図３】アマチュアアセンブリを第１かしめ部により固着する工程における一部を省略した電磁弁装置の断面図
【図４】アマチュアアセンブリを第２かしめ部により固着する工程における一部を省略した電磁弁装置の断面図
【図５】電磁弁が常開式である場合の電磁弁装置の断面図
【図６】サブアセンブリ化していない電磁弁に適用した他の電磁弁装置の部分断面図
【図７】従来の電磁弁装置の説明図

Claims (4)

1. 電磁弁収容用の少なくとも１つの収容孔を有するハウジングと、スリーブ内に摺動自在に収容され、弁体を有するアマチュアと、内部に弁座を有し、前記弁体と弁機構を構成するバルブシートと、電磁力により前記アマチュアを作動させるコイルアセンブリとを備えた電磁弁装置において、
   バルブシートとアマチュアとスリーブとからなるアマチュアアセンブリが段付状の収容孔内に挿入され、
   前記アマチュアアセンブリがハウジングの一部を収容孔の孔底側へ向けて周状に塑性変形させて形成した第１かしめ部で固着されていると共に、
   アマチュアアセンブリを構成するバルブシートの底面が収容孔の孔底側に圧着され、
   収容孔とスリーブの間に外周に段付部を形成したカラーが配設され、ハウジングの一部を収容孔の孔底側へ向けて周状に塑性変形させて形成した第２かしめ部と前記第１かしめ部とによりカラーが挟圧されていて、前記カラーを介してアマチュアアセンブリがハウジングに固定されていると共に、
   圧力媒体側と大気側及び弁機構の前後の圧力媒体流路間が液密的にシールされていることを特徴とする、
   電磁弁装置。
2. 請求項１において、前記バルブシートの大気側端部に小径部を形成し、前記小径部とスリーブが同芯的に嵌合されてアマチュアアセンブリを構成していることを特徴とする、電磁弁装置。
3. 請求項１または請求項２において、バルブシートの底面に環状突起を形成し、前記環状突起が収容孔の孔底面に貫入されて弁機構の前後の圧力媒体流路間が液密的にシールされていることを特徴とする、電磁弁装置。
4. 請求項１〜請求項３のいずれかにおいて、カラーが磁性材で形成されていることを特徴とする、電磁弁装置。

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