JP3611046B2 - 打抜機における抜型構造及び打抜機用切断刃 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はシート材から所定形状の打ち抜き片を打ち抜く打抜機における抜型の構造及び打抜機用切断刃に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9,10は従来の打抜機における抜型及び雌型部分の要部断面正面図を示す。
打抜機では、例えば、図9に示すように、上部スライダ1のチェース裏板3に抜型5が取り付けられ、また、下部定盤7のデッドプレート9に雌型11が取り付けられる。尚、前記チェース3は、打抜機の上部スライダ1に精度良く位置決め固定される汎用治具の一つであり、デッドプレート9は、打抜機の下部定盤7に精度良く位置決め固定される汎用治具の一つである。
【0003】
前記抜型5はベニヤ合板13に切断刃15が埋め込み固定される共に、切断刃15の両側にゴム等からなる取り外し部材17が取着されて構成され、雌型11には切断刃15の受け面1101が形成されている。
そして、雌型11上に合成樹脂製フィルムや薄紙、厚紙、段ボール等のシート材19が載置された後、図10に示すように、抜型5と雌型11が近接し、取り外し部材17が圧縮され、切断刃15の先端が受け面1101に圧接することで切れ線が形成され、シート材19から打ち抜き片1901が打ち抜かれる。
そして、打ち抜かれた状態で、切断刃15がシート材19に切り込んでいる関係上、シート材19と打ち抜き片1901は抜型5側に付着した状態となるが、抜型5と雌型11が開くと、取り外し部材17が弾性により元の状態に伸長してシート材19と打ち抜き片1901を押し出し、シート材19と打ち抜き片1901は抜型5から取り外される。
【0004】
図11はベニヤ合板と切断刃の分解斜視図、図12は同断面図を示す。
ベニヤ合板13は、一般に、厚みが18ミリメートル前後のものが用いられ、ベニヤ合板13には打ち抜き片1901の輪郭に対応させ、炭酸ガスレーザーにより幅が0.5〜2.0ミリメートル程度の溝1301が形成される。
そして、溝1301の内側のベニヤ合板13部分が抜落しないように、溝1301の延在方向に沿ってブリッジ1303と呼ばれる溝のない部分が複数設けられる。
また、切断刃15としては、厚みが0.7ミリメートル前後で幅が23.6ミリメートル前後の金属製薄板が用いられ、打ち抜き片1901の輪郭に対応させて曲げ加工され、ブリッジ1303に対応する箇所には欠部1501が形成される。
そして、図12に示すように、木槌等を用いて金属製薄板の切断刃15がベニヤ合板13の溝1301に嵌合される。
更に、ベニヤ合板13には、前記取り外し部材17が切断刃15の厚み方向の両側に沿ってベニヤ合板13の表面に貼着される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにベニヤ合板13を用いた抜型5では、ベニヤ合板13が反り易く、湿度等の影響も受け易いため、ベニヤ合板13自体を一定の品質に維持し難く、また、ベニヤ合板13に、切断刃15の厚みに対応させた一定の幅の溝1301をレーザーで形成すること自体が難しいため、高精度な抜型5を簡単に得られない問題があった。
また、切断刃15を構成する金属製薄板を所望形状に曲げ加工する作業は手作業でなされ、この作業には熟練が要求される。
また、打ち抜き時、切断刃15のつなぎ目1503や欠部1501に対応した刃先部分に高低差が生じたり、或は、溝1301幅の差異に起因し、また、曲げ加工部で発生する内側の圧縮応力と外側の引っ張り応力に起因して刃先部分に高低差が生じたりするため、打抜機を一旦停止させ、切断刃15の微調整を行う必要が生じ、生産性を低下させる不具合があった。
更に、ゴム等の取外し部材17を、抜型が変わる毎に切断刃15の厚み方向の両側に沿って貼着する作業は手間が掛かり面倒であった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、熟練した手作業を要せずに高精度な抜型を得られ、また、打ち抜き時にも刃先部分に高低差が生ぜず生産性を高めることができ、更には、面倒な弾性体の貼着作業を軽減できる打抜機における抜型構造及び打抜機用切断刃を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明は、切断刃が固定された抜型と、当接面を有する雌型との間にシート材を配置し、抜型と雌型を近付けて前記切断刃を当接面に圧接することでシート材から打ち抜き片を打ち抜く打抜機において、前記抜型は、ベースプレートと、このベースプレートに取り付けられた切断刃とで構成され、前記切断刃は、所定の幅、厚みで前記打ち抜き片の輪郭に沿って延在しその内側に前記打ち抜き片に対応した形状の開口が形成された基板部と、基板部の厚み方向の一方の面に形成され前記ベースプレートの表面に合わされる下面と、基板部の厚み方向の他方の面をなす上面から基板部の厚み方向に基板部の幅よりも小さい寸法の幅で突設され打ち抜き片の輪郭に沿って延在する刃部とで枠状に構成され、前記ベースプレートには、打ち抜かれた打ち抜き片を抜型側から取り外す取り外し部材が互いに間隔をおいて脱着可能に多数取着されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ベースプレートには互いに間隔をおいて多数の取り付け孔が形成され、前記取り外し部材は前記取り付け孔に取着され前記刃部よりも高い高さの円柱状の弾性体で形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、切断刃が固定された抜型と、当接面を有する雌型との間にシート材を配置し、抜型と雌型を近付けて前記切断刃を当接面に圧接することでシート材から打ち抜き片を打ち抜く打抜機において、前記切断刃は、所定の幅、厚みで前記打ち抜き片の輪郭に沿って延在しその内側に前記打ち抜き片に対応した形状の開口が形成された基板部と、基板部の厚み方向の一方の面に形成され前記ベースプレートの表面に合わされる下面と、基板部の厚み方向の他方の面をなす上面から基板部の厚み方向に基板部の幅よりも小さい寸法の幅で突設され打ち抜き片の輪郭に沿って延在する刃部とで枠状に構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記切断刃が、前記基板部及び刃部の延在方向において分割された複数の分割体により構成されていることを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明に係る抜型は、ベースプレートと切断刃からなり、ベースプレートと切断刃は共に切削加工、レーザー加工により得ることができるので、品質が一定した高精度な抜型が得られる。
また、本発明に係る抜型ではベニヤ合板を用いていないので、従来のように刃先部分に高低差が生じることがなく、打抜機を停止させて行う切断刃の微調整作業を省け、打ち抜き作業の生産性を格段と高めることが可能となる。
また、多数の取り外し部材を予めベースプレートの取りつけるようにしたので、取り外し部材を貼着する面倒な作業を省ける。
また、切断刃は、金属製平板材から切削加工、レーザー加工により得ることができるので、品質が一定した高精度な切断刃が得られる。
また、切断刃は、所定幅の基板部と所定の高さの刃部とで内部に開口を有する枠状に形成されているので、切断刃の内側と外側に取り外し部材を位置させ、打ち抜き片の取り外しを円滑に行うことが可能となる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1は実施例に係る抜型の平面図、図2は図1のAーA線断面図を示す。
21は抜型で、抜型21は、ベースプレート23と、このベースプレート23に取り付けられた切断刃25とで構成されている。
抜型21は、従来と同様に、例えば、上部スライダ1のチェース裏板3に取り付けられて用いられる。
前記ベースプレート23は、図3に平面図で示すように、所定の厚みの金属製板材により形成され、ベースプレート23には縦横に一定の間隔をおいて多数のねじ孔27が形成されている。尚、ベースプレート23は、打抜き時の圧力に耐えられ、且つ、機械加工できるものであればよく、従って金属に限らず合成樹脂等を用いてもよい。
前記ねじ孔27はベースプレート23の上面から所定の深さで形成されている。
前記ねじ孔27には、図2に示すように、ゴムからなる円柱状の取り外し部材29が接着剤を介して脱着可能に取りつけられている。
【0011】
前記切断刃25は打ち抜き片の輪郭に沿って矩形枠状に形成され、内側に開口2501が形成されている。
切断刃25は、図4(A)、(B)に図2の拡大図で示すように、基板部31と刃部33から構成されている。
基板部31は、所定の幅、厚みで打ち抜き片の輪郭に沿って延在して形成され、基板部31の延在方向に間隔をおいた箇所に、ねじ挿通孔35を有するフランジ37が形成され、実施例では矩形を構成する四つの辺に一つずつフランジ37が形成され、各フランジ37のねじ挿通孔35の間隔は前記ベースプレート23の各ねじ孔27の間隔の整数倍の寸法で形成されている。
図2に示されるように、基板部31とフランジ37の厚み方向の一方の面はベースプレート23の表面に合わされる下面として形成されている。
前記刃部33は、図2、図4に示されるように、基板部31の厚み方向の他方の面をなす上面で基板部31の幅中央から基板部の厚み方向に基板部の幅よりも小さい寸法の幅で三角形状に突設され、打ち抜き片の輪郭に沿って延在して形成されている。
【0012】
前記切断刃25はSKS材等から構成されている。
切断刃25の製作は次のようになされる。
図5に斜線(イ)で示すように、まず、切断刃25の輪郭よりも大きな平板材41からフライス盤により、基板部31及びフランジ37の下面が加工され、次いで斜線(ロ)で示すように、刃部33と基板部31の上面とフランジ37の上面が加工される。
次に、想像線(ハ)で示すように、レーザーにより基板部31の内側面と外側面並びにフランジ37の側面が加工され、これにより切断刃25の内側と外側の不要な板材部分が切り落とされ、次に、焼き入れされ、内側に開口2501を有する切断刃25が得られる。
尚、このようなフライス盤及びレーザーによる加工は、例えば、NC制御により与えられたデータ通りに自動的になされる。
【0013】
切断刃25のベースプレート23への取り付けは、まず、フランジ37のねじ挿通孔35に対応した箇所の取り外し部材29をねじ孔27から取り外す。
次に、図2に示すように、各フランジ37のねじ挿通孔35にねじ43を挿通し、ねじ孔27に締結し、これにより切断刃25がベースプレート23に取着される。
尚、前記取り外し部材29はベースプレート23に取り付けられた状態で、前記刃部33よりも僅かに高くなるように形成されている。
【0014】
本実施例による抜型21は、ベースプレート23と切断刃25からなり、ベースプレート23は切削加工で得られ、切断刃25は、金属製平板材から切削加工され、次いで、レーザー加工により得ることができるので、品質が一定した高精度な抜型21が得られる。
そして、抜型21ではベニヤ合板13を用いていないので、従来のように刃先部分に高低差が生じることがなく、打抜機を停止させて行う切断刃の微調整作業を省け、打ち抜き作業の生産性を格段と高めることが可能となる。
また、多数の取り外し部材29を予めベースプレート23に取りつけるようにしたので、抜型21が変わる毎に取り外し部材を貼着する面倒な作業を省け、打ち抜き作業の生産性を高める上で有利となる。
また、切断刃25は、金属製平板材により形成されているにも拘らず、所定幅の基板部31と所定の高さの刃部33とで内部に開口2501を有する枠状に形成されているので、切断刃25の内側と外側に取り外し部材29を位置させることができ、打ち抜き片の取り外しを円滑に行うことが可能となる。
【0015】
尚、実施例では全てのねじ孔27に取り外し部材29を取着した場合について説明したが、例えば、ねじ孔27の間隔を小さくしてより多くのねじ孔27を形成し、ねじ孔27の一つおきに取り外し部材29を取着するようにしてもよく、このようにねじ孔27の数を増やしておくと、切断刃25をベースプレート23に取着する上で有利となる。
【0016】
次ぎに、図6を参照して切断刃の取付け構造の変形例を説明する。
図6(A)は切断刃の取付け構造の要部平面図、図6(B)は同断面正面図を示す。
この変形例では、切断刃25自体をベースプレート23に締結せず、押え具51を用いて切断刃25をベースプレート23に取り付けている。
押え具51は所定の幅で形成され、押え具51の一端に前記基板部31に係止可能な係止部5101が形成され、他端に膨出部5103が形成され、中間部にねじ挿通孔5105が形成されている。
切断刃25のベースプレート23の取付けは、切断刃25の延在方向に間隔をおいて複数の押え具51を配置し、各押え具51の膨出部5103をベースプレート23上に載せ、係止部5101を基板部31上に係止させ、ねじ挿通孔5105に挿通したねじ53をねじ孔27に結合し、締結することでなされる。
このように切断刃25とは別体の押え具51を設けると、フランジ37を省けるので、ねじ挿通孔35とねじ孔27の間隔を考慮せずに切断刃25を形成できる。
この場合、切断刃25の形状に対応させてベースプレート23上に、基板部31を嵌合させる溝を形成し、この溝に基板部31を嵌込むようにしてもよく、このような溝を予め形成しておけば、切断刃25の位置決めが簡単に行われる。
【0017】
図7は取り外し部材の変形例を示す。
この変形例では、取り外し部材61を金属材で形成し、コイルスプリング63を用いている。
取り外し部材61は小径部6101と大径部6103とで構成され、これに対応してベースプレート23には小径部6501と大径部6503からなる取り付け孔65が形成されている。
取り外し部材61はその大径部6103が取り付け孔65の大径部6503に挿入され、小径部6101が取り付け孔65の小径部6501を挿通してベースプレート23上に突出し、大径部6103の下面に小径部6101を突出する方向に付勢するコイルスプリング63が挿入され、ベースプレート23の下面に蓋板67が取着されている。
尚、このように取り外し部材61を構成した場合、切断刃25のフランジ37の取り付けは、例えば、フランジ37のねじ挿通孔35、取り付け孔65の小径部6501を挿通したねじに取り付け孔65の大径部6503内でナットを締結することでなされる。
【0018】
図8は切断刃の別実施例を示す。
切断刃71は前記実施例と同様に矩形枠状に形成され、内部に開口7101が形成されている。
切断刃71はその延在方向で分割された複数の分割体7103で構成され、各分割体7103は前記切断刃25と同様に基板部31と刃部33とフランジ37で形成されている。
第2実施例に係る切断刃71によっても、前記切断刃25と同様な作用効果が得られ、第2実施例に係る切断刃71は、抜型が大型化した場合に適用される。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る抜型によれば、熟練した手作業を要せずに高精度な抜型を得られ、また、打ち抜き時にも刃先部分に高低差が生ぜず、更には、面倒な弾性体の貼着作業を軽減でき、打抜機による打ち抜き作業の生産性を格段と高めることが可能となる。
また、本発明に係る打抜機用切断刃によれば、熟練した手作業を要せずに高精度な打抜機用切断刃を得られ、打ち抜き時にも刃先部分に高低差が生ぜず、金属製平板材から形成されているにも拘らず、刃部の厚み方向の両側に取り外し部材を配置できるので、打ち抜き片の取り外しも円滑に行え、打抜機による打ち抜き作業の生産性を格段と高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る抜型の平面図である。
【図2】図1のAーA線断面図である。
【図3】ベースプレートの平面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ図2の要部拡大図である。
【図5】切断刃の製作手順の説明図である。
【図6】(A)は切断刃の取付け構造の要部平面図、(B)は同断面正面図である。
【図7】取り外し部材の変形例の要部正面図である。
【図8】切断刃の別実施例の平面図である。
【図9】従来の打抜機における抜型及び雌型部分の要部断面正面図である。
【図10】従来の打抜機における抜型及び雌型部分の要部断面正面図である。
【図11】ベニヤ合板と切断刃の分解斜視図である。
【図12】ベニヤ合板と切断刃の断面図である。
【符号の説明】
21 抜型
23 ベースプレート
25 切断刃
2501 開口
29 取り外し部材
31 基板部
33 刃部
Claims (4)
- 切断刃が固定された抜型と、当接面を有する雌型との間にシート材を配置し、抜型と雌型を近付けて前記切断刃を当接面に圧接することでシート材から打ち抜き片を打ち抜く打抜機において、
前記抜型は、ベースプレートと、このベースプレートに取り付けられた切断刃とで構成され、
前記切断刃は、所定の幅、厚みで前記打ち抜き片の輪郭に沿って延在しその内側に前記打ち抜き片に対応した形状の開口が形成された基板部と、基板部の厚み方向の一方の面に形成され前記ベースプレートの表面に合わされる下面と、基板部の厚み方向の他方の面をなす上面から基板部の厚み方向に基板部の幅よりも小さい寸法の幅で突設され打ち抜き片の輪郭に沿って延在する刃部とで枠状に構成され、
前記ベースプレートには、打ち抜かれた打ち抜き片を抜型側から取り外す円柱状の取り外し部材が互いに間隔をおいて脱着可能に多数突設されている、
ことを特徴とする打抜機における抜型構造。 - 前記ベースプレートには互いに間隔をおいて多数の取り付け孔が形成され、前記取り外し部材は前記取り付け孔に取着され前記刃部よりも高い高さの円柱状の弾性体で形成されている請求項1記載の打抜機における抜型構造。
- 切断刃が固定された抜型と、当接面を有する雌型との間にシート材を配置し、抜型と雌型を近付けて前記切断刃を当接面に圧接することでシート材から打ち抜き片を打ち抜く打抜機において、
前記切断刃は、所定の幅、厚みで前記打ち抜き片の輪郭に沿って延在しその内側に前記打ち抜き片に対応した形状の開口が形成された基板部と、基板部の厚み方向の一方の面に形成され前記ベースプレートの表面に合わされる下面と、基板部の厚み方向の他方の面をなす上面から基板部の厚み方向に基板部の幅よりも小さい寸法の幅で突設され打ち抜き片の輪郭に沿って延在する刃部とで枠状に構成されている、
ことを特徴とする打抜機用切断刃。 - 前記切断刃は、前記基板部及び刃部の延在方向において分割された複数の分割体により構成されている請求項3記載の打抜機用切断刃。
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