JP3604173B2 - 殺菌剤およびそれを用いた殺菌方法 - Google Patents

殺菌剤およびそれを用いた殺菌方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、製紙、塗料、接着剤などの分野において、防腐および防黴処理に有用な殺菌剤および殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工業用水、例えば、製紙工程中のパルプスラリー循環冷却水を供給するための導管、送液路などの内壁、特に澱む箇所には、スライム(泥状微粒固形物)が付着し易く、しばしばスライム障害を引き起こす。このスライムの発生には細菌類、真菌類、藻類など、多種多様な生物群が関与しているため、1種類の殺菌剤で前記生物群を防徐し、スライム障害を十分に防止することはできない。そして、スライムがパルプスラリーの異物として混入すると、製品の品質を低下させるだけでなく紙切れを生じ、抄紙機の連続運転を阻害する要因となり生産効率を大幅に低下させる。
【0003】
また、上記製紙工業や、塗料、接着剤などの分野で用いられる合成樹脂水性エマルジョンや水性ラテックスは、保存中に微生物により腐敗し、粘度変化や着色だけでなく、悪臭を発生させる。さらに、例えば、コート紙製造用コーティングカラーなどに利用される澱粉糊を含むコーティング剤は、いずれも腐敗し易い。また、澱粉糊などを含むサイズ剤に黴が発生すると、供給ノズルを詰らせて、連続運転が困難となる。
【0004】
特開平2−134302号公報には、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールとハロニトロアルカノール系生物致死剤との組合せ、または2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールと非ハロニトロアルカノール系生物致死剤との組合せで構成された抗菌組成物が開示されている。また、工業用水などの防腐剤、防黴剤として、イソチアゾロン化合物が使用されている。例えば、特開平4−9305号公報には、イソチアゾロン化合物と、この化合物を溶解させるための水性溶媒と、安定化成分としてのニトロブロモ系化合物とを含む水性製剤が開示され、前記安定化成分としては、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどが記載されている。
【0005】
さらに、特公昭60−54281号公報には、2種類の殺菌剤を利用した殺菌剤として、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾロン誘導体と、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールや3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオールなどのハロゲン化脂肪族ニトロアルコールとを、前者/後者=1/10〜10/1(重量比)の割合で含む殺菌剤が開示されている。また、特開昭60−84203号公報には、高い効力を有する抗菌剤として、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾロン化合物と、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどのブロモニトロアルコールとを、前者/後者=4/1〜1/4(重量比)の割合で含む殺菌剤が開示されている。
【0006】
前記イソチアゾロン化合物とブロモニトロアルコールとを組合せた殺菌剤は、高い抗菌活性を示すため、工業用の被処理水、前記エマルジョンやコーティング剤などの防腐・防黴に有用である。しかし、前記殺菌剤は、効力の持続時間が短いため、頻繁に添加したり、過剰量の殺菌剤を添加する必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、少量であっても抗菌活性を長時間に亘り維持できる殺菌剤および殺菌方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、安定性が高く、高い抗菌活性を持続できる殺菌剤および殺菌方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、イソチアゾロン化合物とハロニトロアルコール類とを組合せた組成物において、ハロニトロアルコール類として、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールと2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとの割合が抗菌活性の持続性に大きく影響していること、前記2つの化合物を特定の割合で組合せて用いると、少量であっても高い抗菌活性を持続できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の殺菌剤は、下記式(I)
【0011】
【化2】
Figure 0003604173
(式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示す)
で表される化合物、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノール、および2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを含んでいる。この殺菌剤において、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールと2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとの割合は前者/後者=60〜75/40〜25(重量%)である。
【0012】
2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの総量は、例えば、前記式(I)で表される化合物1重量部に対して、3〜30重量部程度であってもよい。2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールにおけるハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子である場合が多い。
【0013】
前記有効成分で構成された殺菌剤は、種々の用途に利用でき、例えば、サイズ剤用などの工業用殺菌剤として有用である。
【0014】
本発明の方法では、前記殺菌剤を被殺菌液(被処理液)に添加することにより、殺菌する。この方法において、殺菌剤の添加量は、細菌などの微生物や生物の生育又は繁殖を阻害ないし致死させるのに有効な量、例えば、0.1〜10000ppm程度であってもよい。
【0015】
前記式(I)で表される化合物において、Rのハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。好ましいRは、水素原子、塩素原子又は臭素原子、特に塩素原子である。Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキル基が例示される。アルキル基のうち、炭素数1〜4程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基と、炭素数6〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。特に好ましいRには、水素原子、炭素数1〜3程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えばメチル基)、炭素数7〜9程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えばオクチル基)が含まれる。
【0016】
前記式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−プロピル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−イソプロピル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどの2−アルキル−4−イソチアゾリン−3−オン;2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−ブロモ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−5−ブロモ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−5−ブロモ−4−イソチアゾリン−3−オンなどの2−アルキル−5−ハロ−4−イソチアゾリン−3−オンなどが例示される。これらのイソチアゾロン化合物は単独で又は二種以上組合せて使用できる。好ましいイソチアゾロン化合物(1)には、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンなどが含まれる。
【0017】
本発明の第1の特色は、前記式(I)で表される化合物と、特定の二種類のハロニトロアルコールとを組合わせる点にある。すなわち、本発明の殺菌剤は、前記式(I)で表されるイソチアゾロン化合物と、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(以下、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを単にハロニトロアルコール類という場合がある)とを含んでいる。ハロニトロアルコール類においてハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子又は臭素原子、特に臭素原子が好ましい。
【0018】
2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールの具体例としては、例えば、2,2−ジクロロ−2−ニトロエタノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−クロロ−2−ニトロエタノールなどが挙げられる。これらの化合物は一種又は二種以上組合せて使用できる。好ましい化合物には、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールが含まれる。
【0019】
2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの具体例としては、例えば、2−クロロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどが挙げられる。これらの化合物も一種又は二種以上組合せて使用できる。好ましい化合物には2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールが含まれる。
【0020】
本発明の殺菌剤において、好ましい化合物の組合せは次の通りである。
【0021】
(1)2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジクロロ−2−ニトロエタノールおよび2−クロロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの組合せ、
(2)2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジクロロ−2−ニトロエタノールおよび2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの組合せ、
(3)2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールおよび2−クロロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの組合せ、
(4)2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールおよび2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの組合せ、
(5)上記(1)〜(4)において、2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンに2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加した組合せ、
(6)上記(1)〜(4)において、2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンを2−オクチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンで置換した組合せなど。
【0022】
特に好ましい化合物の組合せには、前記(4)の組合せ、および(4)に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加した(5)の組合せが含まれる。
【0023】
本発明の第2の特色は、2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールに対して2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールを過剰量用い、高い抗菌活性を長期間に亘り安定に維持する点にある。すなわち、本発明では、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールと2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとを、前者/後者=55〜85/45〜15(重量%)、好ましくは55〜80/45〜20(重量%)程度の割合で使用する。上記有効成分の割合は、60〜75/40〜25(重量%)程度である場合が多い。2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールの割合が55重量%未満であると、短期間内に被処理液のpHが低下したり、抗菌活性を長期間に亘り維持するのが困難となり、85重量%を越えると抗菌活性が低下し易い。
【0024】
前記2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ハロニトロアルコール類)の総量は、高い抗菌活性を安定に維持できる範囲で選択でき、例えば、式(I)で表される化合物1重量部に対して3〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部程度である。なお、前記ハロニトロアコール類の総量は、式(I)で表される化合物1重量部に対して、10重量部以上、特に10重量部を越える量(例えば、10.5重量部や11重量部以上)である場合が多い。式(I)で表される化合物1重量部に対するハロニトロアルコール類の総量が3重量部未満であると、抗菌活性が低下し易く、40重量部を越えると経済性の点で不利となり易い。
【0025】
なお、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールの使用量は、通常、式(I)で表される化合物1重量部に対して5〜20重量部(好ましくは5.5〜17重量部、さらに好ましくは6〜15重量部)程度、2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの使用量は、通常、式(I)で表される化合物1重量部に対して3〜10重量部(好ましくは3.5〜9重量部、さらに好ましくは4〜8重量部)程度である。
【0026】
本発明の殺菌剤は、前記のように3つの有効成分を組合せているので、広い抗菌スペクトルを示す。そのため、多種多様の生物群が関与して、腐敗、黴や悪臭などが発生する被処理液であっても、1つの殺菌剤により効率よく殺菌できる。
【0027】
本発明の殺菌剤は、前記3種類の有効成分を含む限り、その形態は特に制限されず、例えば、粉剤、粒剤、微粉剤、ペースト剤などであってもよいが、通常、乳剤、水和剤、水溶剤、懸濁剤などの液剤、特に溶液状水性液剤として使用する場合が多い。
【0028】
粉剤などにおける固体担体としては、例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土などのクレー類、タルク類、シリカ類、アルミナ、活性炭などが挙げられ、これらの固体担体も一種又は二種以上使用できる。
【0029】
液剤における溶媒(液体担体)としては、前記3種類の有効成分を溶解又は分散可能な種々の溶媒、例えば、水及び/又は有機溶媒が使用できる。溶媒は水単独であってもよいが、有機溶媒と併用する場合が多い。
【0030】
有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭素水素類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの極性溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリンなどの多価アルコールとその誘導体などが挙げられる。多価アルコールの誘導体には、グリコール系溶媒、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカルビトール類、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが含まれる。これらの溶媒は一種又は二種以上混合して使用できる。
【0031】
好ましい溶媒には、水、アルコール類、多価アルコール類とその誘導体などの親水性有機溶媒(特に水溶性有機溶媒)が挙げられる。好ましい多価アルコールとその誘導体には、例えば、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなど)、セロソルブ類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、カルビトール類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)が含まれる。
【0032】
溶媒の使用量は、前記3つの有効成分による殺菌及び/又は抗菌活性が発現する有効濃度である限り特に制限されない。溶媒として水を用いる場合、通常、前記3種類の成分で構成された殺菌剤1重量部に対して、水1〜100重量部程度の範囲から選択でき、有機溶媒を単独で又は水と併用する場合、有機溶媒の使用量は、有効成分の総量1重量部に対して1〜100重量部程度の範囲から選択できる。
【0033】
なお、水と有機溶媒との割合は、前記殺菌剤の活性および安定性を損わない範囲で選択でき、例えば、水/有機溶媒=95/5〜5/95(重量比)、好ましくは10/90〜90/10(重量比)、さらに好ましくは25/75〜75/25(重量比)程度である。
【0034】
前記殺菌剤には、その目的、用途などに応じて、種々の添加剤、例えば、界面活性剤、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸とその塩、ポリビニルアルコールなどの安定剤、防錆剤などの助剤、ベントナイト、植物油、他の殺菌剤や殺虫剤、香料などを添加してもよい。
【0035】
界面活性剤としては、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、高分子系界面活性剤などを使用できる。これらの界面活性剤は一種または二種以上併用できる。好ましい界面活性剤には、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が含まれる。
【0036】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ショ糖エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体などが挙げられる。
【0037】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリカルボン酸とその塩、2−スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェート塩、リグニンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩などが挙げられる。前記塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0038】
界面活性剤の使用量は、例えば、液剤の場合、液剤100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部程度である場合が多い。
【0039】
なお、液剤において、式(I)で表されるイソチアゾロン化合物の濃度は、0.5〜10重量%、好ましくは0.8〜5重量%、さらに好ましくは1〜2重量%程度である場合が多い。
【0040】
前記液剤は、慣用の方法、例えば、必要に応じて界面活性剤や他の添加剤とともに、前記成分と溶媒とを撹拌手段により撹拌混合することにより調製できる。
【0041】
本発明の殺菌剤は、少量であっても長期に亘り安定した殺菌及び/又は抗菌活性を示すので、前記殺菌剤を、防腐や防黴などが必要とされる被殺菌液(被処理液)に添加することにより効率よく殺菌又は抗菌でき、高い防腐・防黴効果を維持できる。そのため、前記殺菌剤は、種々の用途、例えば、製紙パルプ工場、冷却水循環工程のスライムコントロール剤、殺菌洗浄剤として利用できるととともに、金属加工油剤、カゼイン、澱粉塗工液、表面サイズ剤、水性塗料、水性接着剤における防腐剤、防黴剤などの工業用殺菌剤として使用できる。
【0042】
製紙工程に用いる場合、パルプがスラリー状で存在する場所、例えば、パルプ濃度の比較的低いリフラー、フローボックス、白水ピットなどに殺菌剤を添加するのが好ましい。また、合成樹脂エマルジン、澱粉糊、にかわ、切削油などには、殺菌剤を直接添加してもよく、或いはその二次製品であるコーティングカラー、塗料、印刷インキ、接着剤、サイズ剤などに殺菌剤を添加してもよい。また、化粧用品、不織布、皮革などの殺菌処理などにも利用できる。
【0043】
本発明の殺菌剤は、イソチアゾロン化合物とハロニトロ化合物とを組合せた従来の殺菌剤に比べて、同一の添加量では、持続時間が約2倍以上となる。すなわち、1/2程度の添加量で、従来の殺菌剤と同等以上の抗菌活性を維持する。そのため、少量の添加により高い活性を維持でき、被処理液の性質、例えば、分散安定性、流動性などに悪影響を及ぼすことがない。
【0044】
殺菌剤の添加量は、被殺菌液(被処理液)の種類に応じて、0.1〜10000ppm、好ましくは1〜1000ppm、さらに好ましくは10〜500ppm程度の範囲から適当に選択できる。殺菌剤の添加量は、例えば、製紙工業用水の場合は用水量に対して0.1〜200ppm、好ましくは0.1〜50ppm程度、合成樹脂エマルジョンに対しては1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm程度、表面サイズ剤に対しては1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm程度、澱粉糊をバインダーとして用いるコーティングカラーに対しては1〜1000ppm、好ましくは10〜200ppm程度である。
【0045】
【発明の効果】
本発明の殺菌剤は、3成分のうち2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールと2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとを特定の割合で使用するので、少量であっても高い抗菌活性を長時間に亘り維持できる。また、殺菌剤は、安定性が高く、高い抗菌活性を持続できる。
【0046】
本発明の方法では、前記殺菌剤を用いるので、殺菌剤の使用量を低減できるとともに、高い抗菌活性により、被処理液を効率よく殺菌できる。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0048】
実施例1
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体(ロームアンドハース社製、ケーソンWT、有効成分濃度10.5重量%)10.7重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ナガセ化成(株)製、BNPD)5.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体(ケイ・アイ化成(株)製、ジブニロールA−75、有効成分濃度75.8重量%)19.8重量部とを混合し、エチレングリコールを添加して総量100重量部とした。
【0049】
実施例2
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体14.3重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体26.0重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0050】
実施例3
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体10.7重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール5.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体9.9重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0051】
比較例1
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体53.5重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール15.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体19.8重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0052】
比較例2
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体10.7重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール7.5重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体6.6重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0053】
比較例3
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体14.3重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール20.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体13.2重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0054】
比較例4
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体10.7重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール15.0重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体6.6重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0055】
比較例5
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体17.9重量部、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール5.0重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0056】
比較例6
2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オンの工業用原体15.7重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの工業用原体10.6重量部とを混合し、エチレングリコールで100重量部とした。
【0057】
前記実施例1〜3および比較例1〜6で調製した殺菌剤の組成を表1に示す。
【0058】
前記実施例および比較例で調製した殺菌剤を、それぞれ、表面サイズ剤250mlに表1に示す濃度で添加し、33℃で密封保存した。そして、試料調製時から14日間に亘り、試料中の生菌数をブイヨン寒天培地を用いて測定するとともに、試料のpHも測定した。なお、前日と比較して菌数の増加が認められない日数を、菌の生育抑制日数とし、培地のpHが約8から4程度に急激に低下する現象が生じるまでの日数を、pH維持日数として表1に示した。
【0059】
【表1】
Figure 0003604173
表1より明らかなように、三種類の有効成分のうち二種類の有効成分を特定の割合で組合せた実施例の殺菌剤は、比較例の殺菌剤に比べて、約1/2の添加量であっても、比較例の殺菌剤と同等又はそれ以上の高い抗菌活性を長時間に亘って維持できる。また、実施例の殺菌剤は、pHを長時間に亘り安定に維持でき、被処理液に悪影響を及ぼすこともない。

Claims (9)

  1. 下記式(I)
    Figure 0003604173
    (式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示す)
    で表される化合物、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノール、および2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを含み、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールと2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとの割合が前者/後者=60〜75/40〜25(重量%)であり、式(I)で表される化合物1重量部に対して、2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを総量3〜40重量部含む殺菌剤。
  2. 式(I)で表される化合物において、R1が水素原子又は塩素原子でありR2が炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数7〜9のアルキル基である請求項1記載の殺菌剤。
  3. 2,2−ジハロ−2−ニトロエタノールおよび2−ハロ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールにおけるハロゲン原子が、塩素原子又は臭素原子である請求項1記載の殺菌剤。
  4. 2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールおよび2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを含む請求項1記載の殺菌剤。
  5. 2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾリン−3−オン1重量部に対して、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとの割合が前者/後者=60〜75/40〜25(重量%)である薬剤を総量5〜30重量部含む請求項1記載の殺菌剤。
  6. 工業用殺菌剤である請求項1記載の殺菌剤。
  7. サイズ剤用の殺菌剤である請求項1記載の殺菌剤。
  8. 請求項1記載の殺菌剤を被殺菌液に添加する殺菌方法。
  9. 殺菌剤0.1〜10000ppmを添加する請求項記載の殺菌方法。
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