JP3603366B2 - 芳香族スルフィド重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ジハロベンゼン類等のジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物等のアルカリ金属硫化物との反応によるポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称する)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略称する)の製造方法に関するものである。さらに具体的には、本発明は、比較的簡便な装置で重合反応中の系内の水分量、溶媒量を特定割合にコントロールすることによって1バッチ当りのPASの生産性を向上させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PPSに代表されるPASの製造方法としては、従来工業的に広く用いられている(1)米国特許第3,354,129号明細書等に開示されているアルカリ金属硫化物、特に水和水を有する硫化ナトリウム(以下、硫化ナトリウム水和物と略称する)を極性溶媒中で加熱して該硫化ナトリウム水和物が含有する水を除去し、そこへジクロルベンゼンを加えて加熱重合させる方法がある。しかしこの方法では、原料の一つである含水硫化ナトリウム(前記硫化ナトリウム水和物や水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとの反応生成物である水性混合物を含む)の水分を除くのに、重合溶媒中で物理的に加熱留去する方法によっているので、充分な脱水が困難、すなわち硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物1モルに対して1〜1.5モルの水が系内に残存してしまい、残存水分量のコントロールが困難であり、その水分のために高分子量化ができない、あるいはアルカリ金属硫化物に対しての使用溶媒量を小さくすると分解反応が起こってしまうといった問題があった。
【0003】
また、(2)特開昭59−105027号公報は、有機極性溶媒、硫黄源、ジハロゲノ芳香族化合物等の原料を一括して仕込、反応系を昇温しながら脱水し、更に脱水を継続しながら重合反応を行うというものである。当該公報では硫黄源に対する溶媒のモル比(溶媒/硫黄源)は2/1〜15/1と非常に広い範囲が示唆されるが、系内の水分は無水との記載である。しかし系内を水が検出できないような無水状態とするのに長時間を要し、さらに反応速度が著しく遅くなるといった問題もある。
【0004】
(3)特開平4ー275334号公報にはアルカリ金属硫化物の水和物等の硫黄源と有機極性溶媒からなる水性の混合物(但し、有機極性溶媒1モル当たり硫黄源は0.36モル以上)を脱水し、その脱水混合物とポリハロ置換芳香族化合物を混合し、重合させ、重合途中にガス抜きを行って副生する水を除去しながら重合させる方法が開示されている。この方法では、反応初期には水が大量に存在するので重合初期の反応が遅く、結果的には反応に長時間を要するので生産性を向上させるという点では不利である。
【0005】
(4)特開昭60−104130号公報には、芳香族ジハロゲン化物(芳香族トリ−またはテトラハロゲン化物を少量含んでいても良い)及び有機溶媒の混合物に、150℃以上で含水アルカリ金属スルフィドを水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、系内を実質的に無水の状態にして重合反応を行うことを特徴とする高分子量PASの製造方法が開示されている。当該公報でもアルカリ金属スルフィドに対する溶媒のモル比(溶媒/アルカリ金属スルフィド)は2/1〜15/1と非常に広い範囲が示唆され、また重合反応も無水の状態で行う。しかしこの実質的に無水の状態では系内の水分量をあまりにも小さくしてしまうために、アルカリ金属スルフィドの溶媒への溶解性が小さくなり、そのため反応速度が遅くなって重合反応に長時間を要する、分解反応等の副反応が併発する等の問題があった。
【0006】
(5)特開平5ー239210号公報には、アルカリ金属硫化物の水和物等の硫黄源と有機極性溶媒からなる水性の混合物(但し、硫黄源に対する有機極性溶媒のモル比が0.15/1〜約0.9/1までの範囲である)を脱水し、その脱水混合物とポリハロ置換の芳香族化合物を混合し、重合させる方法が開示されている。この方法では、重合前に系内に残存する水を硫黄源1モル当たり1モル以下にコントロールすることが可能であるが、該水性混合物から脱水するのに高温を必要とするため硫黄源の劣化等の副反応が起こり重合反応に悪影響を及ぼし、再現性良く目的粘度のポリマーが得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
高い生産性でPASを製造するためには、反応容器の容積当たりの生産量を大きくすれば良いが、従来法の中でも比較的好適な方法である思われる例えば水和水を有するアルカリ金属硫化物と有機極性溶媒からなる水性混合物を調製し、これから脱水して低い水分量の水性混合物を得る特開平5ー239210号公報の方法でも、脱水に高温を必要とし硫黄源の劣化等を引き起こして安定的にPASを生産することができない。
【0008】
本発明は、硫黄源の劣化等の副反応が起こりにくい低温で脱水反応を行なうことにより、容易に脱水が可能で、バッチ当たりのポリマー収量を上げ、PASの生産性を向上させる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明は、水和物もしくは水性混合物の形態で提供される含水アルカリ金属硫化物を特定量の有機極性溶媒中に導入すると同時に脱水し、この脱水した該混合物にジハロ芳香族化合物と追加の有機極性溶媒とを加え重合反応するポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法が望ましい方法であることに基づくものである。
【0010】
詳しくは本発明は、含水アルカリ金属硫化物(A)とポリハロ芳香族化合物(B)とを有機極性溶媒(C)中で反応させて芳香族スルフィド重合体を製造する方法において、
工程1:前記アルカリ金属硫化物(A)の融点以上に加熱した、工程内の(溶媒)/(アルカリ金属硫化物)のモル比の値が1未満となる量の有機極性溶媒(C1)中に、前記アルカリ金属硫化物(A)を水が除去され得る速度で導入して脱水を行う工程、
工程2:工程1の脱水混合物(D)に、ポリハロ芳香族化合物(B)と追加の有機極性溶媒(C2)を加えて重合反応を行なう工程、
の連続した2工程からなることを特徴とする芳香族スルフィド重合体の製造方法にかかわる。
【0011】
このような条件下で製造を行う本発明方法では、低温での脱水が可能で硫黄源の劣化等が少なく、芳香族スルフィド重合体が非常に高い生産性で得ることができ、高分子量化も可能である。
【0012】
【構成】
本発明において、「ポリハロ芳香族化合物」及び「溶媒」という用語は言及されている各化合物ないし物質がそれぞれ定義された範囲内で混合物である場合を包含していることを理解されなければならない。例えば、「ポリハロ芳香族化合物」が複数種の化合物からなっており、生成芳香族スルフィド重合体が共重合体である場合を本発明は、1つの具体例として包含するものである。
【0013】
(アルカリ金属硫化物)
アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましいのは硫化リチウム及び硫化ナトリウムであり、特に好ましいのは硫化ナトリウムである。通常アルカリ金属硫化物中には、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属チオ硫化物が微量存在するので、これらと反応させるために、当量のアルカリ金属水酸化物を過剰に加える必要がある。また、これらのアルカリ金属硫化物は、反応中にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とから合成されてもよい。かかるアルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びその混合物が含まれる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。アルカリ金属水酸化物の中では水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。水硫化アルカリ金属化合物を用いる場合にはアルカリ金属水酸化物との混合物として使用する。この時使用するアルカリ金属水酸化物の量は、アルカリ金属水硫化物の硫黄源に対しモル比で0.93〜1.20の範囲が好ましい。
【0014】
本発明において用いるアルカリ金属硫化物(アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物からなるものも含む)は、水和物もしくは水性混合物の形態にて提供される含水物である。その形状も制限はなく、結晶、フレーク状、溶液状いずれでもよい。
【0015】
(ポリハロ芳香族化合物)
本発明において用いられるポリハロ芳香族化合物としては、以下のような化合物が含有される。
【0016】
1)ポリハロベンゼン類
2)ポリハロナフタレン類
3)ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホン、ジフェニルケトン類のポリハロゲン化物
上記のポリハロ芳香族化合物として例えばo−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼンなどのジハロベンゼン類;2,3−ジハロトルエン、2,5−ジハロトルエン、2,6−ジハロトルエン、3,4−ジハロトルエン、2,5−ジハロキシレン、1−エチル−2,5−ジハロベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ジハロベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−ジハロベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジハロベンゼンなどのジハロゲノアルキルまたはシクロアルキル置換ベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジハロベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジハロベンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジハロベンゼンなどのジハロゲノアリール置換ベンゼン類;4、4’−ジハロビフェニルなどのジハロゲノビフェニル類;1,4−ジハロナフタレン、1,6−ジハロナフタレン、2,6−ジハロナフタレンなどのジハロゲノナフタレン類、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,4,6−トリクロロナフタレンなど;4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0017】
これらのポリハロ芳香族化合物における複数個のハロゲン元素は、それぞれフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、それぞれは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0018】
上記ポリハロ芳香族化合物の中ではp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホンは、好適に使用される。中でも特にp−ジクロロベンゼンが好ましい。
【0019】
これらのポリハロ芳香族化合物は、単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。例えば、p−ジクロロベンゼンと4,4’−ジクロロベンゾフェノンあるいは4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとを組み合わせて使用すれば、
【0020】
【化1】
【0021】
単位と
【0022】
【化2】
【0023】
単位、もしくは
【0024】
【化3】
【0025】
単位とを含んだ重合物を得ることができる。
本発明で使用するポリハロ芳香族化合物の使用量は、アルカリ金属硫化物1モルあたり0.8〜1.3モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.10の範囲が高分子量のポリマーを得るのに好ましい。0.8モル未満または1.3モル以上では、充分な高分子量のポリマーを得られ難いので好ましくない。
【0026】
また、本発明の目的を逸脱しない範囲において、必要に応じて活性水素含有ハロ芳香族化合物、ハロ芳香族ニトロ化合物などの分岐剤もしくは分子量調整剤、有機金属塩などの重合添加剤、還元剤、不活性有機溶媒などを適当に選択し、反応系に添加して反応を行なってもよい。
【0027】
前記活性水素含有ハロ芳香族化合物とは、例えばアミノ基、チオ−ル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などの活性水素を持つ官能基を有するハロゲノ芳香族化合物のことであり、具体的には、2,3−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリンなどのジハロアニリン類;2,3,4−トリクロロアニリン、2,3,5−トリクロロアニリン、2,3,6−トリクロロアニリン、2,4,5−トリクロロアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、3,4,5−トリクロロアニリンなどのトリハロアニリン類;2,3,4,5−テトラクロロアニリン、2,3,5,6−テトラクロロアニリンなどのテトラハロアニリン類;2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロロジフェニルエ−テル、2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロロジフェニルエ−テルなどのジハロジアミノジフェニルエーテル類;及びこれらの化合物で、アミノ基がチオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基に置換された化合物などが挙げられる。また、これら活性水素含有ハロ芳香族化合物中の芳香族環を形成する炭素原子に結合した水素原子がアルキル基などの不活性基に置換している活性水素含有ハロ芳香族化合物も使用可能である。これらの各種活性水素含有ハロ芳香族化合物の中で、活性水素含有ジハロ芳香族化合物が好ましく、特にジクロロアニリンが好ましい。
【0028】
また、前記ハロ芳香族ニトロ化合物とは、ニトロ基を有する芳香族環にハロ原子が置換した化合物であり、具体的には、2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼンなどのモノまたはジハロニトロベンゼン類;2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエ−テルなどのジハロニトロジフェニルエ−テル類;3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホンなどのジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5−ジクロロ−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどのモノまたはジハロニトロピリジン類;あるいは各種ジハロニトロナフタレン類などが挙げられる。
【0029】
これらの活性水素含有ハロ芳香族化合物、ハロ芳香族ニトロ化合物などを使用することにより、必要に応じて生成する共重合体の分岐度を増加させたり、分子量を増加させたり、あるいは残存含塩量を低下せるなど、該共重合体の諸物性を改良することができる。
【0030】
また、分岐剤もしくは分子量調整剤としては、上記の化合物の他に、例えば、塩化シアヌルなどの3個以上の反応性ハロゲン原子を有する化合物なども使用可能である。本発明においては、これらの分岐剤もしくは分子量調整剤を1種類だけを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(有機極性溶媒)
本発明で使用される有機極性溶媒としては、たとえばアミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、環式有機リン化合物などの非プロトン性有機溶媒が望ましい。
【0032】
前記アミド化合物の具体例としては、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルプロピオンアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジプロピルブチルアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミドなどを挙げることができる。
【0033】
前記ラクタム化合物の具体例としては、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドンなどを挙げることができる。
【0034】
前記尿素化合物の具体例としては、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などを挙げることができる。
また環式有機リン化合物の具体例としては1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホラン、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホラン、などを挙げることができる。
【0035】
これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。前記各種の溶媒の中でも、好ましいのはN−アルキルラクタム、およびN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチルピロリドンである。
【0036】
有機極性溶媒の使用量は、工程1の脱水時においては反応系内の水分量を低減するためアルカリ金属硫化物1モルに対して1モル未満であり、0.1〜0.9モルの範囲内にあることが最も好ましい。工程2の重合時においてはアルカリ金属硫化物に対してモル比で1〜6の範囲であり特に好ましくは1〜4の範囲である。該溶媒量がかかる範囲にあると反応が均一になり、また生産性の面からも好ましい。
【0037】
(脱水及び重合)
本発明における脱水工程(工程1)では、含水アルカリ金属硫化物(水和物もしくは水性混合物の形態で提供される)を加熱した有機極性溶媒中に水が除去され得る速度で導入し、脱水を行って脱水混合物を調製する。この工程1中に存在する有機極性溶媒の量は、(溶媒)/(アルカリ金属硫化物)のモル比の値が1未満、好ましくは0.1〜0.9の範囲の量である。
また当該溶媒の温度は、前記含水アルカリ金属硫化物の融点以上であればよく、好ましくは、150〜220℃の間である。より好ましくは脱水工程(工程1)内の水分量をアルカリ金属硫化物1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲にする。
【0038】
本発明の脱水工程(工程1)では、加熱された有機極性溶媒中に含水アルカリ金属硫化物の全量を水が除去され得る速度で導入することが望ましいが、予めその一部を加熱した有機極性溶媒中に存在させておき、残りの含水アルカリ金属硫化物を水が除去され得る速度で導入してもよい。しかしながら予め有機極性溶媒中に存在させておける含水アルカリ金属硫化物の量は、使用する含水アルカリ金属硫化物の量の50%以内が好ましい。
【0039】
含水アルカリ金属硫化物の脱水速度は、基本的に水が反応混合物から除去され得る速度であれば良く、その時間は好ましくは1〜5時間、さらに好ましくは1〜2時間である。導入は常圧下あるいは加圧下のいずれでもかまわない。さらに脱水助剤の存在下脱水を行えば更に効率的な脱水が可能である。脱水助剤としては水と共沸し、水と相溶しないものであればかまわない。その一例としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、p−ジクロロベンゼンの様なポリハロ芳香族化合物等が挙げられる。
【0040】
つぎの重合工程(工程2)では、脱水を行なったアルカリ金属硫化物の該混合物にジハロ芳香族化合物と追加の有機極性溶媒とを加えて重合反応させる。好適には重合反応開始後、系内から水分を除去し、さらに重合を行なうとよい。重合反応で遊離する水の除去時期としては基本的には重合反応が開始された後であれば良い。好ましくは、ポリハロ芳香族化合物の消費率が40%以上となった後がよい。さらに好ましくは、ポリハロ芳香族化合物の消費率が60%以上となった後がよい。なお、ここでいう消費率とは、ある時点でのポリハロ芳香族化合物の仕込量に占める反応量の割合の百分率で示す。遊離する水の除去方法としては一般に知られている方法でかまわない。例えば反応釜の上部バルブを開け凝集器へと導く方法は簡単であり好ましい。留出液は、ポリハロ芳香族化合物の融点以上の温度では、2相分離するので下相、即ちポリハロ芳香族化合物の相を系内に戻すことにより連続的に遊離する水の除去が可能である。遊離する水の除去により工程2の系内の水分量をアルカリ金属硫化物1モル当り0.1〜0.8モルにすることが好ましい。更に好ましくは重合反応(工程2)時の水分量が、脱水終了時(工程1)の水分量の80%以下であるとよい。
【0041】
本発明の工程2における重合は、上記諸成分からなる反応混合物を100〜300℃の範囲の温度に加熱することによって進行する。これは、経済的な見地から問題ない程度の反応速度を維持し、なおかつ異常反応による重合体や溶媒の分解が活発にならないので好ましい。特に180〜270℃の範囲が高分子量のものを迅速に得ることができるので好ましい。重合反応は、定温で行うこともできるが段階的にまたは連続的に昇温しながら行うこともできる。また重合は、バッチ方式、回分方式あるいは連続方式など通常の各重合方式を採用することができる。重合の際における雰囲気は、非酸化性雰囲気であることが望ましく、重合開始時に窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガスで系内を置換しておくことが好ましい。反応時間については、1〜50時間、好ましくは、2〜30時間の範囲である。また、重合圧力は、一般に0〜20Kg/cm2、好ましくは1〜10Kg/cm2の範囲である。
【0042】
重合体の回収は、反応終了時にまず反応混合物を減圧下または常圧下で加熱して溶媒だけを留去し、ついで缶残固形物を水、アセトン、メチルエチルケトンあるいはアルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、中和、水洗、濾別および乾燥することによって行うことができる。また別法としては、反応終了後の反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素あるいは脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合反応溶媒に可溶でありかつ少なくとも生成重合体に対しては貧溶媒であるもの)を沈降剤として加え、重合体及び無機塩などの固体状生成物を沈降させ、それを濾別、洗浄および乾燥することによって行うこともできる。これらの場合の「洗浄」は、抽出の形でも実施することができる。すなわち、反応終了後の反応混合物に反応溶媒(もしくは、それと同等の低分子量重合体の溶解度を有する溶媒)を加えた後、濾別して低分子量重合体を除き、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素あるいは脂肪族炭化水素などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、中和、水洗および乾燥する事によって行うこともできる。
【0043】
(生成重合体)
本発明の方法によって得られる重合体(粉体で得られることが、普通である)は、従来の芳香族スルフィド重合体粉末と比較して高分子量でかつ易酸化処理性の線状重合体であるために、必要に応じて重合体粉末そのままで若干の酸化処理を施すことによって高溶融粘度であっても曳糸性の優れたものとなり、強靱な耐熱性フィルム、シートおよび繊維などに極めて容易に加工できる。さらにまた、射出成形、押出成形および回転成形などによって種々のモールド物に加工することができ、これらは肉厚のものであってもクラックが入り難い。
【0044】
本発明による重合体は、熱可塑性重合体の範疇にはいるものであるから熱可塑性重合体の適用可能な各種の改変が可能である。従って、例えばこの重合体は、カーボン黒、炭酸カルシウム粉末、シリカ粉末、酸化チタン粉末などの粉末状充填剤、または炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト、ポリアラミド繊維などの繊維状充填剤を充填して使用することができる。また、この重合体はポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルフォン、ポリアリーレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、ABSなどの合成樹脂の一種以上を混合して使用することもできる。
【0045】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
〈物性評価〉
得られた重合体の溶融粘度(η)は、ポリマー粉末約2gを直径1.12cmの円筒状のタブレットにプレスし、島津製高化式フローテスターを用いて316℃、10Kg荷重、ノズル孔径0.5mm、長さ1.0mmの条件で測定した。
【0047】
〔実施例1〕
4リットルのオートクレーブにNーメチルピロリドン(以後、NMPと略称)397g(4モル)を入れアルカリトラップを装備し、窒素雰囲気下開放系に昇温を開始した。内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融したNa2S3水和物660g(5モル)の滴下を開始し(脱水時NMP/Na2S=0.80モル比)、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下した。この工程中、滴下と同時に留出が始まり、留出液を回収し成分を分析した結果、この工程中水が10.8モル留出したことがわかった。つまり、反応系内には76g(4.2モル)の水が脱水されずに残っていることになる(系内のH2O/Na2S=0.84モル比)。180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP1090g(11モル)及びpージクロロベンゼン(以後、DCBと略称)735g(5モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入した(使用したNMPの総量=20モル、総NMP/Na2S=4.0モル比)。その後、220℃で2時間保持し、さらに260℃で1時間保持して反応を終了した。
【0048】
その後冷却し、スラリーを20リットルの水に注いで1時間撹拌した後、濾過した。得られたポリマーを20リットルの熱湯で1時間撹拌して濾過した。濾過後、80℃で12時間減圧乾燥し、白色の粉末状のポリアリーレンスルフィドを得た。このポリマーの溶融粘度は、290ポイズであった。
【0049】
〔実施例2〕
オートクレーブにNMP99g(1モル)を入れ昇温を開始した。内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融したNa2S3水和物660g(5モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下した(脱水時NMP/Na2S=0.20モル比)。180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP1386g(14モル)及びpージクロロベンゼン(以後DCBと略称)735g(5モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入した(総NMP/Na2S=4.0モル比)。その他は、実施例1と同様にして行なった。反応条件と結果は表1に示した。
【0050】
〔実施例3〕
オートクレーブにNMP397g(4モル)を入れ昇温を開始した。内温が210℃に到達した後、130℃に加熱した溶融Na2S3水和物660g(5モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下した(脱水時NMP/Na2S=0.80モル比)。180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP1089g(11モル)及びDCB735g(5モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入した(総NMP/Na2S=4.0モル比)。その他は、実施例1と同様にして行った。反応条件と結果は表1に示した。
【0051】
〔実施例4〕
オートクレーブにNMP297g(3.0モル)を入れ昇温を開始した。内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融Na2S3水和物792g(6.0モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下し(脱水時NMP/Na2S=0.50モル比)、180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP891g(9モル)及びDCB882g(6モル)をNMP594g(6モル)に溶解したものを圧入し、使用したNMPの総量を18モルにして行った(総NMP/Na2S=3.0モル比)。その他は、実施例1と同様にして行った。反応条件と結果はそれぞれ表1に示した。
【0052】
〔実施例5〕
オートクレーブにNMP139g(1.4モル)を入れ昇温を開始し、内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融Na2S3水和物924g(7.0モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下し(脱水時NMP/Na2S=0.20モル比)、180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP554g(5.6モル)及びDCB1029g(7モル)をNMP693g(7モル)に溶解したものを圧入し、使用したNMPの総量を14モルにして行った(総NMP/Na2S=2.0モル比)。その他は、実施例1と同様にして行った。反応条件と結果はそれぞれ表1に示した。
【0053】
〔実施例6〕
オートクレーブにNMP79g(0.8モル)を入れ昇温を開始し、内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融Na2S3水和物1056g(8.0モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下し(脱水時NMP/Na2S=0.10モル比)、180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP317g(3.2モル)及びDCB1176g(8モル)をNMP792g(8モル)に溶解したものを圧入し、使用したNMPの総量を12モルにして行った(総NMP/Na2S=1.5モル比)。その他は、実施例1と同様にして行った。反応条件と結果はそれぞれ表1に示した。
【0054】
〔実施例7〕
オートクレーブにNMP396g(4モル)及びNa2S3水和物330g(2.5モル)を入れ昇温を開始した。内温が180℃に到達後、130℃に加熱して溶融したNa2S3水和物330g(2.5モル)を1時間かけて滴下した(脱水時NMP/Na2S=0.80モル比)。180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP1089g(11モル)及びDCB735g(5モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入し、使用したNMPの総量を20モルにして行った(総NMP/Na2S=4.0モル比)。その他は実施例1と同様に行なった。反応条件と結果は表1に示した。
【0055】
〔実施例8〕
実施例1と同様にして反応を行ない、220℃2時間保持後にオートクレーブに付属したバルブを開けて凝集器へと導き、反応に伴って遊離する水の除去を行なった。その際、水とDCBが留出するがDCBは反応器中へ戻した。その他は、実施例1と同様にして行った。反応条件と結果は表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
〔比較例1〕
4リットルのオートクレーブにNMP594g(6モル)を入れアルカリトラップを装備し窒素雰囲気下開放系に昇温を開始した。内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融したNa2S3水和物660g(5モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下した(脱水時NMP/Na2S=1.20モル比)。この工程中、滴下と同時に留出が始まり、留出液を回収し成分を分析した結果、この工程中水が8.4モル留出したことがわかった。つまり、反応系内には119g(6.6モル)の水が脱水されずに残っていることになる(系内のH2O/Na2S=1.32モル比)。180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP891g(9モル)及びDCB735g(5モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入した(使用したNMPの総量=20モル、総NMP/Na2S=4.0モル比)。その後、220℃で2時間保持し、さらに260℃で1時間保持して反応を終了した。反応条件と結果はそれぞれ表2に示した。
【0058】
〔比較例2〕
4リットルのオートクレーブにNMP712g(7.2モル)を入れアルカリトラップを装備し窒素雰囲気下開放系に昇温を開始した。内温が180℃に到達した後、130℃に加熱して溶融したNa2S3水和物792g(6モル)の滴下を開始し、内温をその温度に保ちながら2時間かけて滴下し(脱水時NMP/Na2S=1.20モル比)、180℃で滴下終了後に系を閉じ220℃に昇温した。引き続きNMP178g(1.8モル)及びDCB882g(6モル)をNMP594g(6モル)に溶解したものを圧入し、使用したNMPの総量を15モル(総NMP/Na2S=2.5モル比)にして行った。その他は、比較例1と同様にして行った。反応条件と結果はそれぞれ表2に示した。
【0059】
〔比較例3〜4〕
特開平5−239210の実施例に示された様にアルカリ金属硫化物とアルカリ金属硫化物1モルあたり1モル以下のNMPの水性混合物を脱水した。
【0060】
〔比較例3〕
4リットルのオートクレーブにNMP178g(1.8モル)及びNa2S3水和物792g(6モル)を入れアルカリトラップを装備し窒素雰囲気下開放系に昇温を開始した。内温が160℃に到達した位より留出が始まり、内温が240℃に達するまで90分で昇温した(脱水時NMP/Na2S=0.30モル比)。その間に279g(15.5モル)の水が留出した。つまり系内に、2.5モルの水が除去されずに残っていることになる(H2O/Na2S=0.42モル比)。240℃に到達後、系を閉じ220℃まで冷却し、引き続きNMP1109g(11.2モル)及びDCB882g(6モル)をNMP495g(5モル)に溶解したものを圧入した(使用したNMPの総量=18モル、総NMP/Na2S=3.0モル比)。その後、220℃で2時間保持し、さらに260℃で1時間保持して反応を終了した。その他は、実施例1と同様にした。反応条件と結果はそれぞれ表2に示した。
【0061】
〔比較例4〕
4リットルのオートクレーブにNMP475g(4.8モル)及びNa2S3水和物792g(6モル)を入れアルカリトラップを装備し窒素雰囲気下開放系に昇温を開始し、内温が240℃に達するまで90分で昇温した(脱水時NMP/Na2S=0.80モル比)。240℃に到達後、系を閉じ220℃まで冷却し、引き続きNMP811g(8.2モル)及びDCB882g(6モル)をNMP500g(5モル)に溶解したものを圧入し使用したNMPの総量=18モル、総NMP/Na2S=3.0モル比にして反応を行なった。その他は、比較例1と同様にした。反応条件と結果はそれぞれ表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
本発明方法によれば、低温で脱水が可能でありアルカリ金属硫化物の劣化等が起こりにくく、結果的に同一反応時間内で高分子量のポリマーが得られかつ、反応容器の容積当たりのポリマーの生産量が大きく、再現性に優れた商業生産における経済効率の高いPASの製造方法が提供できる。
Claims (7)
- 含水アルカリ金属硫化物(A)とポリハロ芳香族化合物(B)とを有機極性溶媒(C)中で反応させて芳香族スルフィド重合体を製造する方法において、
工程1:前記アルカリ金属硫化物(A)の融点以上に加熱した、工程内の(溶媒)/(アルカリ金属硫化物)のモル比の値が1未満となる量の有機極性溶媒(C1)中に、前記アルカリ金属硫化物(A)を水が除去され得る速度で導入して脱水を行う工程、
工程2:工程1の脱水混合物(D)に、ポリハロ芳香族化合物(B)と追加の有機極性溶媒(C2)を加えて重合反応を行なう工程、
の連続した2工程からなることを特徴とする芳香族スルフィド重合体の製造方法。 - 工程1内の(溶媒)/(アルカリ金属硫化物)のモル比の値が0.1〜0.9の範囲にある量の有機極性溶媒(C1)を用いる請求項1記載の方法。
- 脱水終了時(工程1)の水分量が、アルカリ金属硫化物1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲にある請求項1または2記載の方法。
- 工程2における有機極性溶媒の総量(C1+C2)が、アルカリ金属硫化物1モルに対して1.0〜4.0モルの範囲にある請求項1に記載の方法。
- 重合反応開始後、ポリハロ芳香族化合物の消費率が40%以上となった後に遊離した水を工程2の系内から除去し、系内の水分量をアルカリ金属硫化物1モルに対して0.1〜0.8モルの範囲とする請求項3に記載の方法。
- 重合反応(工程2)時の水分量が、脱水終了時(工程1)の水分量の80%以下である請求項5記載の方法。
- ポリハロ芳香族化合物(C)がジハロベンゼンであり、得られるポリマーがポリフェニレンスルフィドである請求項1に記載の方法。
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