JP3603272B2 - 地下連続壁施工方法及び外殻付鉄筋籠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下連続壁(以下「連壁」という。)施工の際に溝壁が崩落することによって起こる様々な弊害を除去するための連壁施工方法、及びその方法に用いる鉄筋籠に関する。
【0002】
【従来の技術】
連壁工事は軟弱な沖積層において行われることが多く、しかもその地盤は粘土層の他に、比較的崩落しやすいシルト、砂、礫等の層を含むため、掘削の際に溝壁が崩落することが多い。そして従来より、コンクリート系連壁の施工においてこのようなことが起こった場合には、たとえそれが壁厚方向の溝壁崩落であるとしても、その領域について連壁本体領域と一体にコンクリートを打設してしまうことが一般的に行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溝壁崩落領域についてもコンクリートを打設することは、必要以上に大きな断面の連壁を構築することになり、材料の無駄を生じる。また、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合には、その増打ち部分の打設コンクリートをはつり取らなければならず、多大な労力・費用・工期を要する。
【0004】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑み、溝壁の崩落の有無にかかわらず必要最小限の断面の連壁を構築できるとともに、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合にはつり作業を要しない連壁施工方法、及びその方法に用いる鉄筋籠を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1記載の発明は、棒鋼を組み立ててなる鉄筋籠と、構築すべき地下連続壁の空間領域である本体領域と、掘削時の溝壁の崩落によって余分に生じた崩落領域と、を仕切るために前記鉄筋籠に固定された面板からなる外殻と、前記面板のうちエレメント間継手に係らない領域に面するものの外面を被装するようにこれに取り付けられ、当該領域に注入される裏込め材の漏出を防止する所定容量の袋と、を備え、前記袋は、対向する二の前記面板にそれぞれ取り付けられて、鉄筋籠を挿通する連通管によって互いに連通されており、当初は前記各面板に沿って収納されていて、その中に前記裏込め材が充填された場合に前記各崩落領域の形状に応じて拡がる、ことを特徴とする外殻付鉄筋籠である。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の外殻付鉄筋籠において、底面の少なくとも一部が網状であり、打設コンクリートの漏出を防止するために前記鉄筋籠のうち前記外殻に係る部分より下方を被包する袋をさらに備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3記載の発明は、地下連続壁を構築するために地盤を掘削して溝孔を形成する第1工程と、請求項1又は請求項2に記載の外殻付鉄筋籠を前記溝孔内に建込む第2工程と、その後、前記本体領域のみについてコンクリートを打設する第3工程と、その後又はこれと同時に、前記地盤と同程度の強度を有する裏込め材を、前記崩落領域のうちエレメント間継手に係らない領域のみに充填する第4工程と、を含むことを特徴とする地下連続壁施工方法である。
【0008】
かかる外殻付鉄筋籠及び地下連続壁施工方法において、面板は、構築すべき連壁の空間領域である本体領域と掘削時の溝壁の崩落によって余分に生じた崩落領域とを仕切るように鉄筋籠に固定されているため、当該鉄筋籠を掘削溝孔内に建込み、本体領域のみについてコンクリートを打設することにより、前記崩落領域に打設コンクリートが入り込むことなく、必要最小限の連壁躯体を得ることができる。また、前記崩落領域に充填する裏込め材は掘削地盤と同程度の強度を有するものであるため、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合に、前記裏込め材を充填した部分についてもその周辺地盤と同様に掘削することができ、はつり作業を要しない。しかも、裏込め材は崩落領域のうちエレメント間継手に係らない領域のみに充填するため、崩落領域のうちエレメント間継手に係る領域に裏込め材が回り込まず、エレメント間継手を防護したまま施工できる。
【0010】
また、対向する面板にそれぞれ取り付けられた袋同士を連通管によって互いに連通することによって、袋内に裏込め材を注入する際に連壁本体に偏圧力がかかることを回避でき、安全かつ適正な施工が担保される。
【0012】
さらに、鉄筋籠のうち外殻に係る部分より下方を被包する袋を有する外殻付鉄筋籠を用いた場合には、袋中に打設されたコンクリートが当該袋の側面から漏れ出ることがないため、上方の溝壁崩落による崩落領域に下方から打設コンクリートが回り込むことを確実に防止できる。また、袋は面板に比べて軽く、安価であるため、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合の掘削深さ(以下「土留め深さ」という。)より上方に係る部分については外殻を固定し、土留め深さよりも下方に係る部分については袋を固定した外殻付鉄筋籠を用いれば、施工上有利であり、かつ上記目的を経済的に達成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略するものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る連壁施工方法の一実施形態を表す工程図であり、既存構造物Aの脇に連壁Wを構築する様子を同図(a)〜(d)に、この連壁Wを土留め壁として掘削を行う様子を同図(e)に縦断面図で示したものである。以下、第1工程を表す同図(a)より順に説明を行う。
【0015】
1.第1工程
同図(a)は、連壁Wの構築のために地盤Gの掘削を行い、溝孔を形成する第1工程を表す図である。ここで形成された溝孔は、構築すべき連壁Wの空間領域である本体領域Hのみならず、掘削時に壁厚方向の溝壁の崩落によって余分に生じた崩落領域h1,h2,h3を有する。地盤Gの条件等によって程度の差こそあれ、掘削時に溝壁の一部が崩落するいわゆる肌落ちが必ず起こるからである。特に、図示のような既存構造物Aの脇の地盤Gを掘削する場合には、既存構造物Aと溝壁との間隔が小さいほど肌落ちがひどくなり、崩落領域h1は大きなものとなる。なお、溝壁の崩壊を防止するために、溝孔内には安定液が満たしてある(同図中において安定液を網目模様で示している。)。
【0016】
2.第2工程
同図(b)は、前工程で形成した溝孔内に所定の外殻付鉄筋籠1を建込む第2工程を表す図である。この外殻付鉄筋籠1は、構築しようとする連壁Wの芯材となるものであり、図示しないガイドウォールを用いて溝孔内の所定位置に正確に建込まれる。なお、前記第1工程の後この第2工程の前に、超音波測定による溝壁測定、スライム処理、良液置換が行われることは言うまでもない。ここで、外殻付鉄筋籠1の構成は次のようなものである。
【0017】
(1)全体構成
外殻付鉄筋籠1の全体構成を表す斜視図を図2に示す。図示のように外殻付鉄筋籠1は、棒鋼を組み立ててなる直方体形状の鉄筋籠2と、この鉄筋籠2の対向する一対の側面を挟装する一対の面板3a,3bからなる外殻3と、面板3a,3bの外面を被装するようにそれぞれに取り付けられた袋4a,4bと、袋4a,4bを相互に連通する連通管5と、鉄筋籠2の足元をすっぽりと覆う袋6と、を備えている。
【0018】
(2)各部構成
▲1▼鉄筋籠2
棒鋼を組み立てて構成される鉄筋籠2は、構築される連壁Wの芯材としての役割を果たすものである。したがって、本発明における鉄筋籠は図示のものに限られず、溝孔形状や当該連壁Wの強度等を考慮した設計によって適宜定められる。
【0019】
▲2▼外殻3
ここで外殻3は、外殻付鉄筋籠1を溝孔内に建込んだときに本体領域Hと崩落領域h1,h2とを仕切ることを目的として、セパレーター3cにより鋼板製の面板3a,3bを当該連壁Wの壁厚間隔で対向させたものである。したがって、少なくとも各崩落領域h1,h2に対応する面積の面板がそれぞれに対応する位置に設けてあれば足りる。しかしここでは、各崩落領域h1,h2の位置及び大きさを超音波により測定した後にその結果に対応した面積の外殻3を製作し取付ける手間を省くため、大面積の一対の面板3a,3bを外殻3として用いることにしている。この面板3a,3bは、その上端辺を鉄筋籠1の上端に合わせてこれに固定されたときに、土留め深さ(図1においてDLで表示する。)よりも僅かに深い位置にその下端辺がくるような高さを有し、エレメント長に略等しい幅を有する。これだけの面積の外殻3を備えた外殻付鉄筋籠1であれば、少なくとも連壁Wの天端から土留め深さDLまでの溝壁に生じる崩落領域h1,h2に打設コンクリートCが入り込むことを防止できるので、後に当該連壁Wを土留め壁として掘削を行う場合にはつり作業を回避するという目的を達成できるからである。
【0020】
したがって、本発明における外殻3は、上記趣旨に沿ったものであれば、その材質や大きさ等については本実施形態に示したものに限られず、例えば面板3a,3bの高さを孔底に達するものとしてもよいし、各崩落領域h1〜h3と本体領域Hとを仕切るために必要最小限の面積のものとしても構わない。但し、本実施形態に示したように、土留め深さDLより上方に係る部分についてのみ外殻3を固定した外殻付鉄筋籠1とすれば、本発明の目的を経済的に達成することができる。この場合には、後に述べる袋6を用いるとさらに効果的である。
【0021】
▲3▼袋4a,4b
袋4a,4bは、面板3a,3bの外面を被装するようにそれぞれに取り付けられた所定容量の袋であり、崩落領域h1,h2に注入される裏込め材Uがエレメント間継手に係る領域に回り込むのを防止する役割を果たす。具体的には、図3(a)に示すように崩落領域hがエレメント長方向のみで完結しておりエレメント間継手に係る領域ht に達していない場合には袋4a,4bがなくてもよいのであるが、同図(b)に示すように崩落領域hがエレメント長方向のみで完結しておらずエレメント間継手に係る領域ht と一体化している場合には袋4a,4bが必要となる。なぜなら、後者の場合において袋4a,4bがないと、崩落領域hのうちエレメント長方向に係る領域のみに裏込め材Uを充填しようとしても、必ず裏込め材Uはエレメント間継手に係る領域ht にまで回り込んでしまい後行エレメントの施工ができなくなってしまうからである。そして、これを避けるためには、先行エレメントに係る崩落領域hへの裏込め注入を、後行エレメントの構築が完了した後に行うことにするしか方法がなく、工程の自由度が制限される。
【0022】
したがって、以上の役割を考慮すれば、袋4a,4bは、その中に裏込め材Uが充填された場合には各崩落領域h1,h2一杯に拡がることのできる容量を有する必要がある。容量が不足すると各崩落領域h1,h2に裏込め材Uを充填することができず安定を欠くことになるからであり、請求項1において「所定容量の袋」と記載しているのはこのことを示している。また、袋4a,4bは、当初は面板3a,3bに沿って収納されていることが望ましい。当初においても面板3a,3bから突出しているとすれば外殻付鉄筋籠1の建込み時に溝壁の凹凸で袋4a,4bが破れやすくなるからであり、本実施形態においては、図2及び同図中の囲み部の拡大図である図4に示すように、袋4a,4bの鉛直方向に数本のひだを形成しておき、各ひだを面ファスナー4cで留め付けている。このようにしておけば、袋4a,4bは、当初は面板3a,3bに沿って収納されているにもかかわらず、その中に裏込め材Uが充填された場合には各崩落領域h1,h2の形状に応じて面ファスナー4cが剥がれて必要な大きさに拡がる。
【0023】
もちろん、袋4a,4bの四周は、プレート枠6a等をもって面板3a,3bに固定されているため、袋4a,4b内に充填される裏込め材Uの漏出を上下左右いずれの方向においても防止することができる。また、袋4a,4bは、裏込め材Uの漏出を確実に防止できる性能を有するとともに、外殻付鉄筋籠1を溝孔内に建込むときに溝壁の凹凸により容易に破れない程丈夫なものであることが必要とされるので、その材質は例えばキャンバスシート等が適している。
【0024】
▲4▼連通管5
連通管5は、鉄筋籠2の内部を挿通し、袋4a,4bを連通するパイプであり、袋4a,4b内の裏込め材Uの充填高さの不均衡により連壁Wに偏圧力がかかることを防止する役割を果たす。すなわち、袋4a,4b内に充填された裏込め材Uは連通管5の内部空洞を通過することができるため、袋4a,4bのうち裏込め材Uの充填高さが高い方から低い方へ裏込め材Uが流れることになり、その結果、袋4a,4bの裏込め材Uの充填高さは常に略等しく保たれる。なお、このような役割を果たすものであれば、連通管5の形状、材質、配置、数量等は自由に定め得る。
【0025】
▲5▼袋6
鉄筋籠2の足元をすっぽりと覆う袋6は、その上端開口が外殻3の下端近傍にプレート枠6aをもって密着固定されており、外殻3で仕切られた溝孔のうち内側、すなわち本体領域HにコンクリートCを打設したときに、本体領域Hの足元側方からその上方の崩落領域h1,h2へ打設コンクリートCが回り込むことを防止する役割を果たすものである。したがって袋6は、これに被包されるコンクリートCがその側面から漏出することを確実に防止できる性能を有するとともに、外殻付鉄筋籠1を溝孔内に建込むときに溝壁の凹凸により容易に破れない程丈夫なものであることが必要とされ、その材質としては例えばキャンバスシート等が適している。
【0026】
かかる見地から、本実施形態における袋6は全体としてキャンバスシート製となっているが、底面のみはメッシュシート製となっている。袋6の底面全面を網目の細かいキャンバスシート製とすると、浮力により外殻付鉄筋籠1を安定液中に建込むことが困難となるからである。但し、袋6の底面全面がメッシュシート製である必要はなく、その一部が安定液を通過させやすい網状のものとなっていればよい。
【0027】
また、袋6の上端開口が密閉されているのは、その接合部から打設コンクリートCが漏出することを防止するためである。さらに、袋6の上端開口の固定位置を外殻3の下端近傍としているのは、外殻3と袋6とを重複させると、その重複部分に打設コンクリートCが充填されて、外殻3の外側に打設コンクリートCが回り込むことになるからである。
【0028】
なお前にも触れたが、本実施形態において、鉄筋籠2に対して土留め深さDLより上方に係る部分については外殻3を、土留め深さDLより下方に係る部分については袋6を固定して、上下二段構成の外殻付鉄筋籠1としたのは、施工的、経済的な理由に基づく。すなわち、後に当該連壁Wを土留め壁として掘削を行うことを考えると、土留め深さDLより上方に生じた崩落領域h1,h2に打設コンクリートCが入り込むことは許容できないが、土留め深さDLより下方に生じた崩落領域h3に打設コンクリートCが入り込むことは特に問題を生じない。一方、外殻3は一般的に重量が大きく高価であるため、必要な部分についてのみ使用することとし、残りの部分については必要な性能を満たすことを条件として、できる限り軽く安い材料を用いれば施工的、経済的に有利である。そこで、鉄筋籠2のうち土留め深さDLより上方に係る部分については固い鋼板製の面板3a,3bからなる外殻3を添装するとともに、土留め深さDLより下方に係る部分については柔軟性のある袋6を添装することとしたものである。この場合、土留め深さDLより下方に係る部分の袋6中に打設されたコンクリートCは、本体領域Hを越えて崩落領域h3にもはらみだし溝孔一杯に拡がるが、土留め深さDLより上方に係る部分の外殻3内に打設されたコンクリートCは、面板3a,3bによりせき止められるため、本体領域Hを越えて崩落領域h1,h2にはらみだすことがない。しかも、袋6の上端辺は外殻3の下端に密着固定されているため、土留め深さDLより上方の崩落領域h1,h2に打設コンクリートCが回り込むこともない。
【0029】
▲6▼その他
外殻付鉄筋籠1において、鉄筋籠2のエレメント間継手に係る二側面には接合鋼板7、キャンバスシート8、H形鋼9が固定されている。これらは単にエレメント間継手の一形式として採用されているものであるから、本発明の必須構成要素ではなく、他の継手形式を採用した場合はそれに従うことになる。なお、H形鋼9が接合鋼板7の外側に凸設されているのは、この外殻付鉄筋籠1が先行エレメントとして用いることを想定しているからであり、後行エレメントとして用いる場合にはH形鋼9を有しないものとなる。
【0030】
3.第3工程
図1(c)は、第2工程の後、本体領域HのみについてコンクリートCを打設する第3工程を表す図である。このコンクリートCの打設は、トレミー管10及び図示しない安定液回収ポンプを用いて、溝孔内の安定液を下方から徐々に打設コンクリートCに置換していく作業である。ここで、コンクリートCの打設の対象領域を本体領域Hのみに限定したのは、本体領域Hに打設されるコンクリートCが正規の連壁Wの躯体になるとともに、崩落領域h1,h2にコンクリートCが打設されると、わざわざ外殻3を具備する外殻付鉄筋籠1を溝孔内に建込んだことが無意味になるからである。なお、土留め深さDLより下方の崩落領域h3には、袋6を介して打設コンクリートCが入り込むが、土留めの目的に関する限り何ら問題ないことは前述した通りである。
【0031】
4.第4工程
図1(d)は、第3工程の後又は第3工程と同時に、崩落領域h1,h2に、地盤Gと同程度の強度を有する裏込め材U、例えばCB液等を注入・充填する第4工程を表す図である。第3工程において本体領域HのみについてコンクリートCを打設したが、崩落領域h1,h2には安定液が残存しているため、このまま放置しておくことはできない。そこで、この残存安定液をCB液等の地盤Gと同程度の強度を有する裏込め材Uで置換することが本工程の目的である。ここで、裏込め材Uの強度を地盤Gと同程度と規定したのは、それ以上の強度とすれば後に当該連壁Wを土留め壁として掘削を行うことが困難となり、それ以下の強度とすれば原地盤Gが保有していた基本的な地耐力が損なわれ、安定を欠くことになるからである。なお、あくまで「同程度」であるので、厳密に同一である必要は全くない。
【0032】
また、裏込め材Uを注入するための裏込め材注入管11は、本工程直前に各崩落領域h1,h2に挿入してもよいが、袋4内にその先端を挿入した状態で外殻付鉄筋籠1の外殻3の外面に予め固定しておくと挿入の手間が省けて便利である。そして、小断面の崩落領域h2については、ゆっくりと裏込め材Uを注入することにより安定液と裏込め材Uとの比重差を利用して前者を後者に置換することができるが、比較的大きな断面の崩落領域h1については、安定液回収ポンプの利用も考える。
【0033】
5.土留め工程
このように、第1工程乃至第4工程を経て連壁Wが構築された訳であるが、この連壁Wを土留め壁として掘削を行う場面を表した図が、図1(e)である。土留め掘削の対象地盤は崩壊領域h2といえども原地盤Gと同一強度であるので、従来のように増打ち部分のはつりをせずとも、同図に示すように円滑に土留め掘削を行うことが可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、崩落領域に打設コンクリートが入り込むことなく、必要最小限の連壁躯体を得ることができるため、必要以上に大きな断面の連壁を構築することによる材料の無駄を回避することができ、工費削減を図ることができる。また、崩落領域に充填する裏込め材は掘削地盤と同程度の強度を有するものであるため、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合には、裏込め材を充填した部分についてもはつり作業をせずにその周辺地盤と同様に掘削することができ、従来はつり作業に費していた多大な労力・費用・工期を省くことができる。しかも、裏込め材は崩落領域のうちエレメント間継手に係らない領域のみに充填するため、エレメント間継手を防護したまま施工でき、工程の自由度が高まる。
【0036】
さらに、対向する面板にそれぞれ取り付けられた袋同士を連通管によって互いに連通することによって、袋内に裏込め材を注入する際に連壁本体に偏圧力がかかることを回避でき、安全かつ適正な施工が担保される。
【0037】
さらに、鉄筋籠のうち外殻に係る部分より下方を被包する袋を有する外殻付鉄筋籠を用いた場合には、袋中に打設されたコンクリートが当該袋の側面から漏れ出ることがないため、上方の溝壁崩落による崩落領域に下方から打設コンクリートが回り込むことを確実に防止できる。また、袋は面板に比べて軽く、安価であるため、後に当該連壁を土留め壁として掘削を行う場合の掘削深さより上方に係る部分については外殻を固定し、土留め深さよりも下方に係る部分については袋を固定した外殻付鉄筋籠を用いれば、施工上有利であり、かつ上記目的を経済的に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る連壁施工方法の一実施形態を表す工程図である。
【図2】本発明に係る外殻付鉄筋籠の一実施形態を表す斜視図である。
【図3】溝壁崩落の態様を表した平面図である。
【図4】図2の囲み部の拡大図である。
【符号の説明】
1 … 外殻付鉄筋籠
2 … 鉄筋籠
3 … 外殻
3a … 面板
3b … 面板
3c … セパレーター
4a … 袋
4b … 袋
4c … 面ファスナー
5 … 連通管
6 … 袋
6a … プレート枠
7 … 接合鋼板
8 … キャンバスシート
9 … H形鋼
10 … トレミー管
11 … 裏込め材注入管
A … 既存構造物
C … コンクリート
DL … 土留め深さ
G … 地盤
H … 本体領域
h … 崩落領域
h1 … 崩落領域
h2 … 崩落領域
h3 … 崩落領域
ht … エレメント間継手に係る領域
U … 裏込め材
W … 連壁
Claims (3)
- 棒鋼を組み立ててなる鉄筋籠と、
構築すべき地下連続壁の空間領域である本体領域と、掘削時の溝壁の崩落によって余分に生じた崩落領域と、を仕切るために前記鉄筋籠に固定された面板からなる外殻と、
前記面板のうちエレメント間継手に係らない領域に面するものの外面を被装するようにこれに取り付けられ、当該領域に注入される裏込め材の漏出を防止する所定容量の袋と、
を備え、
前記袋は、対向する二の前記面板にそれぞれ取り付けられて、鉄筋籠を挿通する連通管によって互いに連通されており、当初は前記各面板に沿って収納されていて、その中に前記裏込め材が充填された場合に前記各崩落領域の形状に応じて拡がる、
ことを特徴とする外殻付鉄筋籠。 - 底面の少なくとも一部が網状であり、打設コンクリートの漏出を防止するために前記鉄筋籠のうち前記外殻に係る部分より下方を被包する袋をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の外殻付鉄筋籠。
- 地下連続壁を構築するために地盤を掘削して溝孔を形成する第1工程と、
請求項1又は請求項2に記載の外殻付鉄筋籠を前記溝孔内に建込む第2工程と、
その後、前記本体領域のみについてコンクリートを打設する第3工程と、
その後又はこれと同時に、前記地盤と同程度の強度を有する裏込め材を、前記崩落領域のうちエレメント間継手に係らない領域のみに充填する第4工程と、
を含むことを特徴とする地下連続壁施工方法。
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