JP3598914B2 - 多孔板用組立保持具固定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多孔板用組立保持具固定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤーハーネスを製造するに当たり、試作品の検討や少ロットの生産のために、多孔板が従来から採用されている。
【0003】
図7は従来例の斜視図である。
【0004】
同図に示すように、多孔板1は、金属等の板金部材に複数の孔2を等間隔に穿設したものである。
【0005】
上記多孔板1に採用される組立保持具3としては、図7に示すように、スリット4を区画するベース5とベース5に立設された脚部6と、脚部6の上部に設けられたワークホルダ7とを有するものが一般的である。
【0006】
上記組立保持具3を多孔板1に固定する方法としては、当該組立保持具3のベース5下面にボルトを突設して多孔板1の孔2に挿通し、そのボルトに多孔板1の裏面からナットを螺合することが一般的であった。しかしながら、その場合には、ボルトとナットの螺合作業を多孔板の表面と裏面とで行う必要があるので、組立保持具3の着脱作業が煩わしいという問題があった。
【0007】
そこで、図7に示す例では、市販の固定具10が使用されている。
【0008】
この固定具10は、ハンドル11と、ハンドル11に取り付けられた棒状の挿通部12と、挿通部12の下端近傍に設けられ、当該挿通部12の径方向外方に突出するロック姿勢と内方に退避してフリーの状態になるロック解除姿勢との間で変位する一対のピン13と、ピン13を操作するために上記ハンドル11から突出する押しボタン14とを有している。またハンドル11と挿通部12との間には、挿通部12よりも大径の段部12aが形成されている。
【0009】
図8は固定具10の操作手順を示す断面略図である。
【0010】
同図を参照して、上述のような固定具10で組立保持具3を多孔板1に固定するためには、図8(A)に示すように、予めベース5のスリット4を多孔板1の孔2に位置合わせし、押しボタン14を押して固定具10のピン13を退避させた後、スリット4を介して上記固定具10の挿通部12を多孔板1の孔2に挿通する。このとき、挿通部12には、環状の鉄板15及びゴム16が挿通されているので、上記ゴム16がベース5の上に載置されているとともに、上記段部12aを介して上記鉄板15によりベース5に押し付けられる状態になっている。この挿通動作において、ハンドル11を押し込んでゴム16を撓ませながら挿通部12を孔2内に貫通し、押しボタン14の押し下げを解除すると、一対のピン13がロック姿勢にロックされる。これにより図8(B)に示すように、上記段部12aに当接した鉄板15とピン13との間でゴム16が撓んだままの状態に保持されるので、その弾性付勢力により、固定具10はベース5を多孔板1上に挟圧し、止定することができる。
【0011】
さらに、止定されたロックを解除する場合には、図8(C)に示すように、押しボタン14を再度押し下げ、ピン13のロックを解除した後、ハンドル11を把持して引上げればよい。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述した固定具10を採用した場合には、着脱操作を多孔板1の表側だけで行うことができるので、ある程度、作業性を改善することができる。
【0013】
しかしながら、上記構成では、多孔板1に対して組立保持具3のベース5を押圧する力を得るために、ピン13と鉄板15との間に介装されるゴム16を採用しているので、装着時に作業者がゴム16の弾性力に抗してゴム16を撓ませることが必要になる。このため、作業者に大きな負担がかかり、作業性も悪かった。他方、ゴム16の付勢力を弱くすると、多孔板1に対して組立保持具3を止定する力も弱くなり、所期の止定力を得られなくなるという問題があった。
【0014】
さらに、ゴム16を採用した場合には、付勢力の経時劣化が比較的早期に生じるので、長期間にわたって強い止定力を維持することが困難であった。
【0015】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、長期間にわたり強い止定力を得ることができ、しかも着脱操作の容易な多孔板用組立保持具固定装置を提供することを課題としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、多数の孔が所定間隔で穿設された多孔板に、ワイヤーハーネスの組立保持具を着脱可能に固定する多孔板用組立保持具固定装置であって、上記組立保持具を上記多孔板に押圧する押圧部と、この押圧部と相対変位可能に設けられ、上記多孔板の孔に挿通可能な挿通部と、この挿通部の先端近傍部に設けられ、挿通部を上記孔に挿通したときに上記多孔板の背面に係合する係合位置及び係合を解除する係合解除位置の間で移動可能な係合部と、この係合部と押圧部とによって組立保持具を多孔板に挟圧するためのクランプ機構とを備え、上記クランプ機構は、係合部と押圧部との何れか一方と一体的に設けられるラック歯と、このラック歯を回動動作によって昇降可能に噛合した状態で上記係合部と押圧部との何れか他方と一体的に設けられる渦巻き歯と、この渦巻き歯を回動可能な状態で当該多孔板の表側に配置された回動ハンドルとを備えていることを特徴とする多孔板用組立保持具固定装置である。
【0017】
この発明によれば、多孔板の表側でクランプ機構の回動ハンドルを操作することにより、渦巻き歯が所定の方向に回動する。そして、この回動力が昇降力に変換されて渦巻き歯に噛合しているラック歯に伝達され、このラック歯を介し、係合部を昇降させる。したがって挿通部を多孔板の孔内に挿通させた後、係合部が係合位置にあるときに、係合部と押圧部とが相対的に近接する方向に渦巻き歯を回動することにより、係合部が押圧部との間で多孔板に組立保持具を締め付け、組立保持具を多孔板に止定することができる。ここでこの発明では、ラック歯と渦巻き歯とを採用しているので、ラック歯に作用する反力によっては渦巻き歯は回動しない。このため長期間にわたり強い止定力を維持することが可能になる。他方、渦巻き歯を上記と逆向きに回動させた場合には、係合部を下方に退避させ、組立保持具の止定を解除し、さらにはロック解除位置に係合部を移動させることができる。この発明において、係合部は挿通部と一体に変位することによりロック位置とロック解除位置に変位するものであってもよく、市販の固定具のように、挿通部と相対的に変位するものであってもよい。
【0018】
多くの場合、ラック歯は挿通部と一体化され、この挿通部を介して一体的に係合部に設けられる。
【0019】
このようにすると、渦巻き歯を定位置にて回動させることにより、係合部を変位させることができるので、構成が簡素化し、しかも操作性がよい。
【0020】
また好ましい態様において、上記挿通部は、クランプ機構に対して着脱可能に設けられている。
【0021】
このようにすると、市販の固定具を挿通部及び係合部として流用することが可能になる。また、挿通部がクランプ機構に対して着脱可能になっていることから、部品交換等、メンテナンス性も向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について詳述する。なお以下の説明において、従来の技術欄で説明したものと同等のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
図1及び図2は本発明の実施の一形態に係る固定装置20の使用例を示す斜視図であり、図3は図1の固定装置20の分解斜視図である。
【0024】
これらの図を参照して、図示の固定装置20は、市販の固定具10の挿通部12、ピン13をそれぞれ挿通部及び係合部として流用しているとともに、この固定具10をクランプさせるクランプ機構30を備えている。
【0025】
図3に示すように、このクランプ機構30は、中空のケース31と、ケース31内に回転自在に取り付けられた渦巻き歯32と、渦巻き歯32に噛合するラック歯33と、ラック歯33に取り付けられた昇降子34と、昇降子34をケース31の背面側に露出させた状態でケース31を閉じるカバー35とを有している。そして、ラック歯33に渦巻き歯32を螺合させた状態でカバー35によって両者の噛合状態を保持することにより、昇降子34のみをケース31の背面側に露出させた状態で昇降させることができるようになっている。
【0026】
上記渦巻き歯32は、曲率が連続的に変化することにより、一方の端部32aが他方の端部32bの内方に間隔を隔てて入り込む渦巻き形状に湾曲したリブ状の部材であり、両端部32a、32b間に上記ラック歯33を噛合させることにより、回転運動を昇降運動に変換してラック歯33に伝達するものである。上記渦巻き歯32を回転駆動するために、ケース31の前面に配置された回動ハンドル36が矩形のロッド36aを介して連結されており、この回動ハンドル36によって、渦巻き歯32は、双方向に回動できるようになっている。
【0027】
上記ラック歯33は、渦巻き歯32に対応して上下に間隔を隔てて並設された複数の噛み合い歯33aを備えているものである。
【0028】
上記昇降子34は、矩形の板材であり、その中央部には、市販の固定具10の挿通部12を挿通するための挿通孔34aが形成されている。そして、挿通孔34aに固定具10の挿通部12を挿通することにより、固定具10の挿通部上端に形成される段部12aが昇降子34の上面に載置されることになる。
【0029】
図示の例において、上記ケース31の底板31aは、組立保持具3のベース5を多孔板1に押圧する押圧部を構成するものであり、この底板31aには、上記挿通孔34aに上下に対向する挿通孔31bが形成されている。
【0030】
次に、図示の固定装置20による組立保持具3の装着手順について図1及び図2並びに図4及び図5を参照しながら説明する。
【0031】
図4及び図5は図1の固定装置20による組立保持具3の装着手順を示す背面略図である。
【0032】
まず、図2を参照して、上述した実施の形態では、組立保持具3のスリット4を所望の孔2に位置合わせする。次に、図2及び図4を参照して、固定具10の挿通部12をクランプ機構30の昇降子34の挿通孔34aから挿通してクランプ機構30に組付けた後、挿通部12の下端を組立保持具3のスリット4からこのスリット4に位置合わせされた孔2内に挿入する。この挿入手順は、従来の技術欄で説明したように、固定具10の押しボタン14を操作することによって行われる。
【0033】
図5(A)を参照して、上記押しボタン14の押し下げを解除すると、固定具10のピン13は、多孔板1の下面側で係止可能に突出する。次いで、クランプ機構30の回動ハンドル36(図1参照)を操作して、渦巻き歯32及びラック歯33(図3参照)を介し、昇降子34を上昇させることにより、この昇降子34に載置された固定具10が上昇する結果、図5(B)に示すように、遂にはピン13が多孔板1の下面に当接し、ケース31の底板31aとの間で組立保持具3のベース5を多孔板1の上面に挟圧する。
【0034】
このように上述した実施の形態では、多孔板1の表側でクランプ機構30の回動ハンドル36を操作することにより、渦巻き歯32(図3参照)からラック歯33を介し、固定具10を上方に浮揚させてケース31との間で多孔板1に組立保持具3を止定することができる。ここでこの実施形態では、ラック歯33と渦巻き歯32とを採用しているので、ラック歯33に作用する反力によっては渦巻き歯32は回動しない。このため長期間にわたり強い止定力を維持することが可能になる。
【0035】
他方、渦巻き歯32を上記と逆向きに回動させた場合には、ピン13を下方に退避させ、組立保持具3の止定を解除し、さらには押しボタン14の押し下げ操作によってロック解除位置にピン13を移動させることができる。したがって取り外し動作も容易に行うことが可能になる。
【0036】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0037】
例えば、図6に示す構成を採用することも可能である。図6は本発明の別の実施形態を背面側から示す斜視図である。
【0038】
同図に示す構成では、挿通部として、昇降子34にビス止めされて下方に垂下するロッド41を採用し、このロッド41の下端に、突設された突起42で係合部を構成している。
【0039】
この態様においては、ロッド41を多孔板の孔内でがさつく程度の寸法に設定し、固定装置20全体を変位させることにより、突起42が多孔板1の下面に係合可能な係合位置と係合解除位置との間で変位できるように構成される。
【0040】
また、クランプ機構30としては、挿通部に渦巻き歯を設け、ケースにラック歯を設けることも可能である。ただし、上述した各実施形態のように、挿通部にラック歯を設け、ケースに渦巻き歯を取り付けた場合には、定位置で渦巻き歯の回動操作を行うことができるので、一層操作性が高くなる。
【0041】
さらに上述した実施の形態では、組立保持具として電線を保持する電線用の組立保持具3を例示したが、これに限らず、ワイヤーハーネスに取り付けられるコネクタを保持するコネクタホルダや、クランプ等の外装部品を取り付けるパーツホルダ等、種々の組立保持具を固定する装置として適用してもよい。
【0042】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ラック歯と渦巻き歯とを採用して組立保持具を着脱可能に止定しているので、長期間にわたり強い止定力を得ることができ、しかも着脱操作を容易に行うことができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る多孔板用組立保持具固定装置の装着時の使用例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る多孔板用組立保持具固定装置の装着前の使用例を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1の多孔板用組立保持具固定装置の分解斜視図である。
【図4】図1の多孔板用組立保持具固定装置による組立保持具の装着手順を示す背面略図である。
【図5】図1の多孔板用組立保持具固定装置による組立保持具の装着手順を示す背面略図である。
【図6】本発明の別の実施形態を背面側から示す斜視図である。
【図7】従来の多孔板の斜視図である。
【図8】図7の固定具の操作手順を示す断面略図である。
【符号の説明】
1 多孔板
2 孔
3 組立保持具
10 固定具
12 挿通部
13 ピン(係合部)
20 多孔板用組立保持具固定装置
30 クランプ機構
31a 底板(押圧部)
32 渦巻き歯
33 ラック歯
36 回動ハンドル
41 ロッド(挿通部)
42 突起(係合部)

Claims (2)

  1. 多数の孔が所定間隔で穿設された多孔板に、ワイヤーハーネスの組立保持具を着脱可能に固定する多孔板用組立保持具固定装置であって、
    上記組立保持具を上記多孔板に押圧する押圧部と、
    この押圧部と相対変位可能に設けられ、上記多孔板の孔に挿通可能な挿通部と、
    この挿通部の先端近傍部に設けられ、挿通部を上記孔に挿通したときに上記多孔板の背面に係合する係合位置及び係合を解除する係合解除位置の間で移動可能な係合部と、
    この係合部と押圧部とによって組立保持具を多孔板に挟圧するためのクランプ機構とを備え、上記クランプ機構は、
    係合部と押圧部との何れか一方と一体的に設けられるラック歯と、
    このラック歯を回動動作によって昇降可能に噛合した状態で上記係合部と押圧部との何れか他方と一体的に設けられる渦巻き歯と、
    この渦巻き歯を回動可能な状態で当該多孔板の表側に配置された回動ハンドルと
    を備えていることを特徴とする多孔板用組立保持具固定装置。
  2. 請求項1記載の多孔板用組立保持具固定装置において、
    上記挿通部は、クランプ機構に対して着脱可能に設けられているものであることを特徴とする多孔板用組立保持具固定装置。
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