JP3598217B2 - 流量検出素子及び流量センサ並びに流量検出素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関の吸入空気量の計測等に用いられる、発熱体あるいは発熱体によって加熱された部分から流体への熱伝達現象に基づいて該流体の流速ないしは流量を計測する流量検出素子及び該流量検出素子を用いた流量センサ、並びに該流量検出素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流体の流速ないしは流量と、該流体中に配置された発熱体から流体への熱伝達量との間に成立するほぼ一義的な関数関係を利用して、該熱伝達量に基づいて流体の流速ないしは流量を検出するようにした感熱式流量検出素子、あるいは該流量検出素子を用いた流量センサは、従来より内燃機関の吸入空気量の検出等に広く用いられている。
【0003】
図12及び図13は、それぞれ、例えば特公平5−7659号公報に開示されている従来の感熱式流量検出素子の立面断面図及び平面図である。図12及び図13において、1はシリコン半導体よりなる平板状基材であり、2は窒化シリコンよりなる絶縁性の支持膜であり、4は感熱抵抗であるパーマロイよりなる発熱抵抗であり、5及び6はそれぞれ感熱抵抗であるパーマロイよりなる測温抵抗である。また、3は窒化シリコンよりなる絶縁性の保護膜である。発熱抵抗4及び両測温抵抗5、6の着膜部近傍において平板状基材1には空気スペース9が設けられ、これによりブリッジ13が形成されている。空気スペース9は、窒化シリコンに損傷を与えないエッチング液を用いて開口部8からシリコン半導体の一部を除去することにより形成されている。両測温抵抗5、6は、発熱抵抗4を挟んで計測流体の流れの方向に平面的に並んでいる。なお、7は感熱抵抗であるパーマロイよりなる比較抵抗である。
【0004】
このような従来の流量検出素子では、発熱抵抗4に通電する加熱電流が、図示していない制御回路によって、例えば比較抵抗7で検出された平板状基材1の温度より200℃だけ高い一定の温度になるように制御されている。ここで、発熱抵抗4の下方には空気スペース9が存在するので、発熱抵抗4で発生した熱はほとんど比較抵抗7には伝達されず、したがって比較抵抗7の温度は空気の温度とほぼ等しくなっている。
【0005】
発熱抵抗4で発生した熱は、支持膜2や保護膜3あるいは感熱抵抗膜を介して測温抵抗5、6に伝達される。図13に示すように、測温抵抗5と測温抵抗6とは、発熱抵抗4に対して互いに対称な位置に配置されているので、空気の流れがない場合は、測温抵抗5と測温抵抗6の抵抗値に差は生じない。しかしながら、空気の流れがある場合は、上流側の測温抵抗は空気によって冷却され、他方下流側の測温抵抗は発熱抵抗4から空気に伝達された熱の影響により上流側の測温抵抗ほどは冷却されない。例えば、矢印10で示す方向の空気の流れが生じた場合は、上流側の測温抵抗5は下流側の測温抵抗6よりも低温となり、両者の抵抗値の差は、空気の流速ないしは流量が大きいときほど拡大される。したがって、測温抵抗5と測温抵抗6の抵抗値の差を検出することにより、空気の流速ないしは流量を測定することができる。また、空気の流れの方向が矢印10と逆になった場合は、上流側の測温抵抗6の方が下流側の測温抵抗5より低温になるので、空気の流れの方向を検出することも可能である。
【0006】
図12及び図13に示す従来の流量検出素子はブリッジタイプの感熱式流量検出素子であるが、このほかダイヤフラムタイプの感熱式流量検出素子も従来より広く用いられている。図14及び図15は、それぞれ、従来のダイヤフラムタイプの感熱式流量検出素子の立面断面図及び平面図である。図14及び図15において、1〜10の各構成要素は、それぞれ、図12及び図13に示すブリッジタイプの流量検出素子の同一番号を付した構成要素と実質的に同じものである。そして、12は、平板状基材1の支持膜2が取り付けられた方の表面とは反対側の表面から該平板状基材1の一部をエッチング等により除去することにより形成された凹部である。したがって、支持膜2と保護膜3とは、発熱抵抗4及び両測温抵抗5、6を挟んでダイヤフラム14を形成することになる。このような構成によれば、図12及び図13に示すブリッジタイプの流量検出素子に比べて、高い強度を得ることができるものの、ダイヤフラム14が全周で支持されている関係上応答性が劣るといった特徴がある。なお、空気の流速ないしは流量の検出原理は、前記のブリッジタイプの流量検出素子の場合と同様である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の流量検出素子においては、保護膜3は一般にスパッタ法により形成されている。しかしながら、例えば図16に示すように、感熱抵抗膜11(発熱抵抗、測温抵抗、比較抵抗)の急峻な段差上にスパッタ法で成膜を行った場合には、該保護膜3にす15(保護膜の素材が欠如した部分)が入りやすく、このようにす15が入った場合は、保護膜3のカバレッジが不十分になることが多い。このようにす15が入った場合、各種耐環境試験の結果によれば、雰囲気中の水分や燃料等がす15等を通して流量検出素子内に侵入し、これにより抵抗値変動、腐食、クラック等が引き起こされ、流量検出素子の精度及び信頼性が劣化するといった問題点があった。
【0008】
この発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、発熱部を保護する絶縁性保護膜のカバレッジを向上させることができ、ひいて雰囲気中の水分や燃料等の侵入を防止することができ、抵抗値変動、腐食、クラック等を起こさない、精度及び信頼性の高い流量検出素子ないしは流量センサを提供すること、さらにはかかる流量検出素子を簡単な製造工程で製造することができる流量検出素子の製造方法を提供することを目的ないしは解決すべき課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされたこの発明の第1の態様に係る流量検出素子は、平板状の基材と、基材の上に配置された絶縁性の支持膜と、支持膜の上に配置された感熱抵抗膜と、感熱抵抗膜及び支持膜の上に配置された絶縁性薄膜と、絶縁性薄膜の上に配置された絶縁性の保護膜とを備え、基材の一部が除去されてなる流量センサ用の流量検出素子であって、絶縁性薄膜は、支持膜と感熱抵抗膜とで生じる段差を平滑化または低減して、感熱抵抗膜に対する保護膜のカバレッジを高めるものであることを特徴とするものである。
【0010】
この流量検出素子においては、感熱抵抗膜と保護膜との間に、感熱抵抗膜の段差を低減して保護膜のカバレッジを高める絶縁性薄膜が設けられているので保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0011】
この発明の第2の態様に係る流量検出素子は、第1の態様に係る流量検出素子において、絶縁性薄膜がケイ素(Si)及び酸素(O)を主成分とすることを特徴とするものである。なお、絶縁性薄膜は、例えば、感熱抵抗膜の上に、Si及びOを主成分とする流動性材料を塗布し、これを加熱して固化させた後、その上に保護膜を形成するなどといった手法で形成される。この流量検出素子においては、ケイ素及び酸素を主成分とする絶縁性薄膜によって感熱抵抗膜の段差が低減(解消)されるので、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0012】
この発明の第3の態様に係る流量検出素子は、第1又は第2の態様に係る流量検出素子において、絶縁性薄膜はSOG膜からなることを特徴とするものである。この流量検出素子において、SOG膜からなる絶縁性薄膜によって感熱抵抗膜の段差が平滑化、あるいは低減(解消)されるので、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0013】
この発明の第4の態様に係る流量検出素子は、第1〜第3の態様のいずれか一つに係る流量検出素子において、絶縁性薄膜の厚さが感熱抵抗膜の厚さの1/2以上であることを特徴とするものである。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜の上に形成する絶縁性薄膜の厚さを感熱抵抗膜の厚さの1/2以上としているので、感熱抵抗膜の段差を有効に低減することができ、ないしは感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを一層向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。さらに、流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなる。
【0014】
この発明の第5の態様に係る流量検出素子は、第1の態様に係る流量検出素子において、感熱抵抗膜と保護膜との間に絶縁性薄膜は設けられず、その代わりに、感熱抵抗膜の側部が下方に広がるテーパー状に形成され、該側部と感熱抵抗膜底面とがなすテーパー角を45度以下とすることにより、感熱抵抗膜に対する保護膜のカバレッジを高めていることを特徴とするものである。なお、テーパーは、例えば、支持膜の上の感熱抵抗膜をパターニングして発熱部を形成する際に、エッジ部分にテーパー角を持たせるなどといった手法により形成される。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜の側部のテーパー角が45度以下とされているので、該感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。さらに、流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなる。
【0015】
この発明の第6の態様に係る流量検出素子は、第5の態様に係る流量検出素子において、感熱抵抗膜と支持膜の当接部の外側において支持膜に、該支持膜がオーバーエッチングされてなる裾引き部が形成されていることを特徴とするものである。すなわち、支持膜をオーバーエッチングすることにより、該支持膜に裾を引かせたような形状を持たせたものである。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ支持膜をオーバーエッチングして裾を引かせた構造としているので、感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなる。
【0016】
この発明の第7の態様に係る流量検出素子は、第5又は第6の態様に係る流量検出素子において、感熱抵抗膜の側部と支持膜との界面部近傍において、該側部に、外方に向かってテーパー角が徐々に小さくなる裾引き部が形成されていることを特徴とするものである。すなわち、感熱抵抗膜の側部の支持膜との界面部分に、裾を引かせたような形状を持たせたものである。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ支持膜との界面部に裾を引かせた構造としているので、感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなる。
【0017】
この発明の第8の態様に係る流量検出素子は、第5〜第7の態様のいずれか1つに係る流量検出素子において、感熱抵抗膜の上側角部に、該角部が面取りされてなる肩部が形成されていることを特徴とするものである。なお、肩部は、例えば、支持膜の上の感熱抵抗膜をパターニングして発熱部を形成した後、ウエハ全面を軽くエッチングすることにより上側角部に面取りを施すなどといった手法により形成される。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ感熱抵抗膜の上側角部に面取りを施すことによって肩部を形成しているので、感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0018】
この発明の第9の態様に係る流量検出素子は、第1の態様に係る流量検出素子において、感熱抵抗膜と保護膜との間に絶縁性薄膜が設けられず、その代わりに、感熱抵抗膜が支持膜に埋め込まれていることを特徴とするものである。なお、感熱抵抗膜の表面と支持膜の表面とは平坦(同一平面)になっているのが好ましい。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜が支持膜に埋め込まれているので、感熱抵抗膜の段差をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0019】
この発明の第10の態様に係る流量検出素子は、第1の態様に係る流量検出素子において、感熱抵抗膜と保護膜との間に絶縁性薄膜は設けられず、その代わりに、支持膜の上に感熱抵抗膜を埋め込む絶縁性の中間膜が設けられ、該感熱抵抗膜の表面と該中間膜の表面とが平坦(同一平面)になっていることを特徴とするものである。この流量検出素子においては、感熱抵抗膜が中間膜に埋め込まれ、かつ感熱抵抗膜の表面と中間膜の表面とが平坦になっているので、感熱抵抗膜の段差をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0020】
この発明の第11の態様に係る流量検出素子は、第1〜第10の態様のいずれか1つに係る流量検出素子において、感熱抵抗膜に対応する領域で基材が部分的に除去されてダイヤフラム構造をなすことを特徴とするものである。この流量検出素子においては、基材がダイヤフラム構造とされているので、該基材の熱伝導度が良くなり、該流量検出素子の流量検出精度が一層高められる。なお、ダイヤフラムは、できる限り薄い方が好ましい。
【0021】
この発明の第12の態様に係る流量センサは、第1〜第11の態様のいずれか1つに係る流量検出素子を用いて計測流体の流量を検出するようになっていることを特徴とするものである。この流量センサにおいては、第1〜第11の態様のいずれか1つに係る流量検出素子を用いているので、これらの流量検出素子の場合と同様の作用が生じる。
【0022】
この発明の第13の態様に係る流量検出素子の製造方法は、第9の態様に係る流量検出素子を製造するための方法であって、(a)支持膜の表面に溝部を形成した後、該支持膜の上に感熱抵抗膜を形成し、(b)感熱抵抗膜を(例えば、研磨により)支持膜の表面の位置まで除去して、溝部内にのみ感熱抵抗膜を残留させて、該溝部内の感熱抵抗膜を発熱部とし、(c)感熱抵抗膜及び支持膜の上に保護膜を形成するようにしたことを特徴とするものである。なお、感熱抵抗膜の表面と支持膜の表面とは平坦(同一平面)にするのが好ましい。この流量検出素子の製造方法においては、第9の態様にかかる流量検出素子を極めて容易に製造することができる。
【0023】
この発明の第14の態様に係る流量検出素子の製造方法は、第10の態様にかかる流量検出素子を製造するための方法であって、(a)支持膜の上に感熱抵抗膜からなる発熱部を形成し、(b)感熱抵抗膜及び支持膜の上に絶縁性の中間膜を形成し、(c)中間膜を感熱抵抗膜の表面の位置まで除去して、感熱抵抗膜の表面と中間膜の表面とを平坦にし、(d)感熱抵抗膜及び中間膜の上に保護膜を形成するようにしたことを特徴とするものである。この流量検出素子の製造方法においては、第10の態様にかかる流量検出素子を極めて容易に製造することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る流量検出素子の立面断面図である。図1において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11(発熱抵抗、測温抵抗、比較抵抗等の発熱部)が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、TEOSとH2O2の気相反応により生成された厚さ約0.15μmの酸化膜からなる絶縁性薄膜18(TEOS+H2O2酸化膜)が形成されている。この絶縁性薄膜18は成膜時に多少の流動性を持ち、図1に示すように、感熱抵抗膜11によって生ずる段差を低減するとともに、急峻な段差の変化を平滑化する効果を奏する。さらに、絶縁性薄膜18の上に、厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0025】
さらに、平板状基材1の支持膜2が配置されている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成された裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング等を施すことにより平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成されている。なお、このダイヤフラム14は、熱伝導度を良くして該流量検出素子の流量検出精度を高めるためにできる限り薄く形成されるのが好ましい。
【0026】
図1に示すように、この流量検出素子においては、感熱抵抗膜11の上にその急峻な段差を平滑化する絶縁性薄膜18が設けられているので、その上側の保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。なお、この実施の形態1を含め、以下に述べる全ての実施の形態では、ダイヤフラムタイプの流量検出素子を例として挙げているが、ブリッジタイプの流量検出素子の場合も同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0027】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る流量検出素子の立面断面図である。図2において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。
【0028】
さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約0.15μmのSOG(Spin On Glass)膜からなる絶縁性薄膜19(SOG塗布膜)が形成されている。このSOG膜(絶縁性薄膜19)は、ケイ素(Si)と酸素(O)を主成分としており(例えば、東京応化製SOG、Type-2:Si-Film用)非常に高い流動性を有している。このように、SOGを塗布してなる絶縁性薄膜19を設けることにより、図2に示すように、感熱抵抗膜11によって生ずる段差を低減するとともに、急峻な段差の変化を平滑化するといった効果を奏する。さらに、このSOG膜は約450℃以上でアニールすることにより固化する。さらに、絶縁性薄膜19の上に、厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜よりなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0029】
さらに、平板状基材1の支持膜2が配置されている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成された裏面保護膜16に写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング等を施すことにより平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成されている。
【0030】
図2に示すように、感熱抵抗膜11の上に、流動性塗布材料を用いて、急峻な段差を平滑化する効果を奏する絶縁性薄膜19を設けているので、保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。
【0031】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る流量検出素子の立面断面図である。図3において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約0.08μmのSOG(Spin On Glass)膜からなる絶縁性薄膜19が形成されている。このSOG膜はSiとOを主成分としており(例えば、東京応化製SOG、Type-2:Si-Film用)非常に高い流動性を有している。図3に示すように、このSOGの塗布膜厚が薄いと、高い流動性を持っていたとしても、急峻な段差変化を充分に平滑化することができない。このため、絶縁性薄膜19の上にスパッタ法等により保護膜3を形成しても、すが発生する可能性が大きく、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等が起きる可能性があり、流量検出素子の精度や信頼性を向上させることはできない。
【0032】
かくして、SOG等の流動性塗布材料の塗布膜厚とその上に形成された保護膜3のカバレッジとの関係を評価したところ、SOGの塗布膜厚が、平坦部で感熱抵抗膜11による段差の1/2以上あれば、保護膜3にす等が入ることがなく、良好なカバレッジが得られるということが判明した。したがって、絶縁性薄膜19の平坦部での厚さを感熱抵抗膜11の厚さ(段差)の1/2以上とすれば、保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなるので、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上することになる。
【0033】
さらに、SOG等の流動性塗布材料の膜厚が、平坦部で感熱抵抗膜11により生じる段差よりも充分に厚ければ、保護膜3を設けなくても、塗布後のSOGを熱処理により固化させるだけで充分なカバレッジが得られる。このような構成にすることにより、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上し、加えて、保護膜3が不要となるため、製造プロセスを簡略化することができ、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができる。
【0034】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4に係る流量検出素子の立面断面図である。図4において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。このドライエッチングにおいては、アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用いられ、イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂直面に対して30〜45度傾けてエッチングが行われた。こうすることにより、感熱抵抗膜11のテーパー角ないしはエッジ角20を、30〜45度にすることができる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0035】
さらに、平板状基材1の支持膜2が形成されている方の表面とは反対側の表面に形成された裏面保護膜16に写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング等を施すことにより平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、ダイヤフラム14が形成されている。
【0036】
図4に示すように、イオンシャワーの入射角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチングすることにより、感熱抵抗膜11は、そのエッジにテーパー角を持たせた形状(テーパー状)となる。このような構造とすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。また、製造プロセスを簡略化することができ、歩留まりの向上やコストの低減が図られる。
【0037】
しかしながら、イオンシャワーの入射角度を浅くし、感熱抵抗膜11のエッジのテーパー角が45度を越えると、その上に形成された保護膜3のカバレッジが悪化し、す等が発生しやすくなり、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等が発生することになる。
【0038】
実施の形態5.
図5は、この発明の実施の形態5に係る流量検出素子の立面断面図である。図5において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。このドライエッチングにおいては、アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用いられ、イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂直面に対して30〜45度傾けてエッチングが行われ、さらにオーバーエッチングが10〜20%行われた。これにより、実施の形態4の場合と同様に感熱抵抗膜11のテーパー角ないしはエッジ角20を30〜45度にすることができ、かつ感熱抵抗膜11の周辺の支持膜2に裾引き部21を形成することができる。すなわち、裾を引いたような形状に加工することができる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0039】
さらに、平板状基材1の支持膜2が形成されている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成された裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング法等により平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成されている。
【0040】
図5に示すように、イオンシャワーの入射角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチングし、さらにオーバーエッチングを施すことにより、感熱抵抗膜11のエッジにテーパー角を持たせた上に、周辺の支持膜2が裾を引いた形状になる。このような構造とすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。また、製造プロセスを簡略化することができ、歩留まりの向上やコストの低減が図られる。
【0041】
実施の形態6.
図6は、この発明の実施の形態6に係る流量検出素子の立面断面図である。図6において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。このドライエッチングにおいては、アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用いられ、イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂直面に対して45〜65度傾けてエッチングが行われた。これにより、感熱抵抗膜11のエッジ部に裾引き部22を形成することができ、すなわちエッジが裾を引いたように加工することができ、急峻な角度変化を緩和することができる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0042】
さらに、平板状基材1の支持膜2が形成されている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成された裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング法等により平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成されている。
【0043】
図6に示すように、イオンシャワーの入射角を45〜65度に設定して感熱抵抗膜11をエッチングすることにより、感熱抵抗膜11を、そのエッジが裾を引いたような形状に加工することができる。このような構造にすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。また、製造プロセスを簡略化することができ、歩留まりの向上やコストの低減が図られる。
【0044】
しかしながら、イオンシャワーの入射角度を65度以上に深くすると、エッチング速度が非常に遅くなり実用的ではない。これと同時に、隣のパターンの影響を受け、エッチング形状が変わるというパターン依存性が顕著に現れる。このため、感熱抵抗膜11に裾を引かせるには、イオンシャワーの入射角が45〜65度であることが望ましい。
【0045】
実施の形態7.
図7は、この発明の実施の形態7に係る流量検出素子の立面断面図である。図7において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。このドライエッチングにおいては、アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用いられ、まずイオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂直面に対して30〜45度傾けてエッチングが行われ、次に入射角度を0度(垂直)に戻してウエハ全面に対して軽くエッチングが行われた。これにより、実施の形態4の場合と同様に感熱抵抗膜11のテーパー角ないしはエッジ角20を30〜45度にすることができ、かつ感熱抵抗膜11の上側角部を面取りしてなる肩部23を形成することができる。すなわち、感熱抵抗膜11の上側角部を面取りを施したような形状に加工することができる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜からなる保護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0046】
さらに、平板状基材1の支持膜2が形成されている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成された裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチングホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング等により、平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成されている。
【0047】
図7に示すように、イオンシャワーの入射角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチングした後、イオンシャワーの入射角を0度に戻してウエハ全面を軽くエッチングすることにより、感熱抵抗膜11のエッジにテーパー角を持たせた上に、感熱抵抗膜11の上側角部に面取りを施したような形状とすることができる。このような構造にすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部及び肩部23での急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。なお、2回目のウエハ全面に対するエッチングについては、必ずしもドライエッチングである必要はなく、ウエットエッチング等の他のエッチング手法を用いても同様の効果が得られる。
【0048】
実施の形態8.
図8(a)〜(d)は、それぞれ、この発明の実施の形態8に係る流量検出素子の製造途上における立面断面図であり、該流量検出素子の製造工程を順次示している。図8(a)〜(d)において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパッタ法等により形成されている。
【0049】
そして、この流量検出素子の製造工程においては、図8(a)に示すように、支持膜2の上に、写真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路となる深さ約0.2μmの溝24が形成される。さらに、図8(b)に示すように、溝24が形成された支持膜2の上に、全面的に、白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜される。この後、図8(c)に示すように、化学機械研磨法(CMP法)等により、感熱抵抗膜11の表面(白金膜表面)を平坦化し、溝24に埋め込まれた感熱抵抗膜11(白金)のみを残す。すなわち、感熱抵抗膜11の表面と支持膜2の表面とを同一平面とする。さらに、図8(d)に示すように、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる保護膜3がスパッタ法等により形成される。なお、図示していないが、この実施の形態8に係る流量検出素子においても、平板状基材1の一部が除去され、ダイヤフラムが形成されている。
【0050】
かくして、図8(d)に示すように、流量検出素子は、感熱抵抗膜11が支持膜2に埋め込まれた構造となり、感熱抵抗膜11に起因する段差は生じない。このため、保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しなくなる。よって、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。
【0051】
なお、この実施の形態8では、感熱抵抗膜11及び支持膜2の平坦化にCMP法を用いているが、平坦化手法はこれに限られるものではなく、レジストエッチバック等のその他の平坦化手法によっても同様の平坦化は可能である。
【0052】
実施の形態9.
図9(a)〜(c)は、それぞれ、この発明の実施の形態9にかかる流量検出素子の製造途上における立面断面図であり、該流量検出素子の製造工程を順次示している。図9(a)〜(c)において、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さらに、この支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。この感熱抵抗膜11は、写真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成されている。
【0053】
そして、この流量検出素子の製造工程においては、図9(a)に示すように、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約0.5μmの絶縁性の酸化シリコン膜25(中間膜)がスパッタ法あるいは蒸着法等により形成される。この後、図9(b)に示すように、化学機械研磨(CMP法)等により感熱抵抗膜11の表面(白金膜表面)が露出する(顔を出す)まで酸化シリコン膜25の表面を平坦化する。すなわち、感熱抵抗膜11の表面と酸化シリコン膜25の表面とを同一平面とする。さらに、図9(c)に示すように、感熱抵抗膜11ないし酸化シリコン膜25の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成される。なお、図示していないが、この実施の形態9に係る流量検出素子においても、平板状基材1の一部が除去され、ダイヤフラムが形成されている。
【0054】
かくして、図9(c)に示すように、流量検出素子は、感熱抵抗膜11が酸化シリコン膜25に埋め込まれかつ感熱抵抗膜11と酸化シリコン膜25とが平坦化された構造となっているので、保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しない。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。
【0055】
なお、この実施の形態9では、感熱抵抗膜11及び酸化シリコン膜25の平坦化にCMP法を用いているが、平坦化手法はこれに限られるものではなくレジストエッチバック等のその他の平坦化手法によっても同様の平坦化は可能である。さらに、感熱抵抗膜11の上に酸化シリコン膜25の一部残存していても、表面の平坦性が確保できていれば、同様の効果を奏する。
【0056】
実施の形態10.
図10及び図11は、それぞれ、上記の各実施の形態に係る流量検出素子を用いた流量センサの1つの実施の形態を示す正面図及び側面断面図である。図10及び図11において、31は流量検出素子であり、32は検出管路であり、33は流体の通路である主通路であり、34は格子状の整流器であり、35は制御回路が収められたケースであり、36は該流量センサに電源を供給したり出力を取り出すためのコネクタである。なお、矢印10は、通常の状態における計測流体(空気)の流れの方向を示している。このように、この実施の形態10にかかる流量センサには実施の形態1〜9に係る流量検出素子が組み込まれているので、各実施の形態に係る流量検出素子と同様の効果を奏する。
【0057】
【発明の効果】
この発明によれば、以下に示すような顕著な効果を奏する。すなわち、この発明の第1の態様にかかる流量検出素子によれば、感熱抵抗膜と保護膜との間に、支持膜と感熱抵抗膜とで生じる段差を平滑化または低減して保護膜のカバレッジを高める絶縁性薄膜が設けられているので、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0058】
この発明の第2の態様に係る流量検出素子によれば、ケイ素及び酸素を主成分とする絶縁性薄膜によって感熱抵抗膜の段差が低減(解消)されるので、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0059】
この発明の第3の態様に係る流量検出素子によれば、絶縁性薄膜は、SOG膜からなるので、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0060】
この発明の第4の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜の上に形成する絶縁性薄膜の厚さを感熱抵抗膜の厚さの1/2以上としているので、感熱抵抗膜による段差を有効に低減することができ、ないしは感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを一層向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を一層向上させることができる。さらに、流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができる。
【0061】
この発明の第5の態様に係る流量検出素子では、感熱抵抗膜の側部のテーパー角が45度以下とされ、感熱抵抗膜の急峻な勾配がなくなり、保護膜のカバレッジが高められている。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。さらに、流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができる。
【0062】
この発明の第6の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ支持膜をオーバーエッチングして裾を引かせた構造としているので、感熱抵抗膜の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができる。
【0063】
この発明の第7の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ支持膜との界面部に裾を引かせた構造としているので、感熱抵抗膜の側部の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができる。
【0064】
この発明の第8の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜の側部にテーパー角を持たせ、かつ感熱抵抗膜の上側角部に面取りを施すことによって肩部を形成しているので、感熱抵抗膜の側部の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0065】
この発明の第9の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜が支持膜に埋め込まれているので、感熱抵抗膜の段差をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0066】
この発明の第10の態様に係る流量検出素子によれば、感熱抵抗膜が中間膜に埋め込まれ、かつ感熱抵抗膜の表面と中間膜の表面とが平坦になっているので、感熱抵抗膜の段差をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させることができる。このため、感熱抵抗膜の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0067】
この発明の第11の態様に係る流量検出素子によれば、基材がダイヤフラム構造とされているので、該基材の熱伝導度が良くなり、該流量検出素子の流量検出精度ひいては信頼性が一層高められる。
【0068】
この発明の第12の態様に係る流量センサによれば、第1〜第11の態様のいずれか1つに係る流量検出素子を用いているので、これらの流量検出素子の場合と同様の効果を奏する。
【0069】
この発明の第13の態様に係る流量検出素子の製造方法によれば、第9の態様にかかる流量検出素子を極めて容易に製造することができ、その製造コストが低減される。
【0070】
この発明の第14の態様に係る流量検出素子の製造方法によれば、第10の態様にかかる流量検出素子を極めて容易に製造することができ、その製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図4】この発明の実施の形態4に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図5】この発明の実施の形態5に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図6】この発明の実施の形態6に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図7】この発明の実施の形態7に係る感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、それぞれ、この発明の実施の形態8に係る感熱式流量検出素子の製造途上における立面断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、それぞれ、この発明の実施の形態9に係る感熱式流量検出素子の製造途上における立面断面図である。
【図10】この発明の実施の形態10に係る流量センサの正面図である。
【図11】図10に示す流量センサの側面断面図である。
【図12】従来のブリッジタイプの感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図13】図12に示す従来の流量検出素子の保護膜を取り除いた状態における平面図である。
【図14】従来のダイヤフラムタイプの感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【図15】図14に示す従来の流量検出素子の保護膜を取り除いた状態における平面図である。
【図16】従来の感熱式流量検出素子の立面断面図である。
【符号の説明】
1 平板状基材、2 支持膜、3 保護膜、4 発熱抵抗、5 測温抵抗、6 測温抵抗、7 比較抵抗、8 開口部、9 空気スペース、10 矢印、11 感熱抵抗膜、12 凹部、13 ブリッジ、14 ダイヤフラム、15 スパッタ膜中のす、16 裏面保護膜、17 エッチングホール、18 TEOS+H2O2酸化膜、19 SOG塗布膜、20 感熱抵抗膜のテーパー角(エッジ角)、21 支持膜の裾引き部、22 感熱抵抗膜の裾引き部、23 感熱抵抗膜の肩部、24 支持膜に形成された溝、25 酸化シリコン膜、31 流量検出素子、32 検出管路、33 主通路、34 整流器、35 ケース、36コネクタ。
Claims (14)
- 平板状の基材と、前記基材の上に配置された絶縁性の支持膜と、前記支持膜の上に配置された感熱抵抗膜と、前記感熱抵抗膜及び前記支持膜の上に配置された絶縁性薄膜と、前記絶縁性薄膜の上に配置された絶縁性の保護膜とを備え、前記基材の一部が除去されてなる流量センサ用の流量検出素子であって、
前記絶縁性薄膜は、前記支持膜と前記感熱抵抗膜とで生じる段差を平滑化または低減して、前記感熱抵抗膜に対する前記保護膜のカバレッジを高めるものであることを特徴とする流量検出素子。 - 前記絶縁性薄膜がケイ素及び酸素を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の流量検出素子。
- 前記絶縁性薄膜は、SOG膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の流量検出素子。
- 前記絶縁性薄膜の厚さが前記感熱抵抗膜の厚さの1/2以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の流量検出素子。
- 平板状の基材と、前記基材の上に配置された絶縁性の支持膜と、前記支持膜の上に配置された感熱抵抗膜と、前記感熱抵抗膜及び前記支持膜の上に配置された絶縁性の保護膜とを備え、前記基材の一部が除去されてなる流量センサ用の流量検出素子であって、
前記感熱抵抗膜の側部は前記支持膜に対して角度を有するテーパー状に形成され、前記感熱抵抗膜の側部と前記感熱抵抗膜の底面とがなすテーパー角を45度以下とすることにより、前記感熱抵抗膜に対する前記保護膜のカバレッジを高めていることを特徴とする流量検出素子。 - 前記感熱抵抗膜と前記支持膜の当接部の外側において前記支持膜に、該支持膜がオーバーエッチングされてなる裾引き部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の流量検出素子。
- 前記感熱抵抗膜の側部と前記支持膜との界面部近傍において、該側部に、外方に向かってテーパー角が徐々に小さくなる裾引き部が形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の流量検出素子。
- 前記感熱抵抗膜の上側角部に、該角部が面取りされてなる肩部が形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1つに記載の流量検出素子。
- 平板状の基材と、前記基材の上に配置された絶縁性の支持膜と、前記支持膜の上に配置された感熱抵抗膜と、前記感熱抵抗膜及び前記支持膜の上に配置された絶縁性の保護膜とを備え、前記基材の一部が除去されてなる流量センサ用の流量検出素子であって、
前記感熱抵抗膜を前記支持膜に埋め込むことにより、前記感熱抵抗膜に対する前記保護膜のカバレッジを高めていることを特徴とする流量検出素子。 - 平板状の基材と、前記基材の上に配置された絶縁性の支持膜と、前記支持膜の上に配置された感熱抵抗膜と、前記感熱抵抗膜及び前記支持膜の上に配置された絶縁性の保護膜とを備え、前記基材の一部が除去されてなる流量センサ用の流量検出素子であって、
前記支持膜と前記保護膜との間に前記感熱抵抗膜を埋め込む絶縁性の中間膜が設けられ、前記感熱抵抗膜の表面と前記中間膜の表面とを平坦にすることにより、前記感熱抵抗膜に対する前記保護膜のカバレッジを高めていることを特徴とする流量検出素子。 - 感熱抵抗膜に対応する領域で前記基材が部分的に除去されてダイヤフラム構造をなすことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の流量検出素子。
- 請求項1から11のいずれか1つに記載の流量検出素子を用いて計測流体の流量を検出するようになっていることを特徴とする流量センサ。
- 請求項9に記載された流量検出素子の製造方法であって、
支持膜の表面に溝部を形成した後、該支持膜の上に感熱抵抗膜を形成し、前記感熱抵抗膜を前記支持膜の表面の位置まで除去して、前記溝部内にのみ前記感熱抵抗膜を残留させて、該溝部内の感熱抵抗膜を発熱部とし、前記感熱抵抗膜及び前記支持膜の上に保護膜を形成するようにしたことを特徴とする流量検出素子の製造方法。 - 請求項10に記載された流量検出素子の製造方法であって、
支持膜の上に感熱抵抗膜からなる発熱部を形成し、前記発熱部及び前記支持膜の上に絶縁性の中間膜を形成し、前記中間膜を前記感熱抵抗膜の表面の位置まで除去して、前記感熱抵抗膜の表面と前記中間膜の表面とを平坦にし、前記感熱抵抗膜及び前記中間膜の上に保護膜を形成するようにしたことを特徴とする流量検出素子の製造方法。
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