JP4967203B2 - 薄膜部を有するセンサの製造方法 - Google Patents

薄膜部を有するセンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜部を有するセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜部を有するセンサには、薄膜部において金属配線を形成し、この金属配線における物性値の変化により物理量等をセンシングするようになっているものがある。
【0003】
例えば、熱式あるいは感熱式エアーフローセンサ(以下、単にフローセンサという。)では、基板上に白金等からなる金属配線によってヒータや温度計が形成されており、薄膜部表面のガス流れによるヒータの放熱量を温度計で検出し、流量を検出するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなエアフローセンサでは、感度向上、低消費電力化のために、ヒータ部分は薄膜構造(ブリッジ、メンブレン)となっている。このように薄膜構造とすると、その部分の強度が低下して破壊しやすくなるという問題がある。この強度低下の要因の発生メカニズムについて図9に基づいて説明する。図9はセンサの薄膜部の製造手順を示す工程図である。
【0005】
まず、基板(図示せず)上に、第1の絶縁膜101を形成し、その上に金属膜としてTi密着層102を介してPt膜103を成膜する(図9(a))。次に、アニール処理を行った後に、金属膜102、103上にレジスト104を形成する(図9(b))。このアニール処理により、Ti粒102はPt膜103内に拡散する。
【0006】
次に、イオンミリングにより、レジスト104を用いて金属膜102、103をパターニングして金属配線105を形成する(図9(c))。このとき、ミリング時に第1の絶縁膜101が大きく削れて、第1の絶縁膜101のテーパ角度が大きくなり、金属配線105と第1の絶縁膜101との段差部101aが形成されてしまう。また、イオンミリングによるTi粒のミリング速度はPtより遅いため、Ti粒102の形状が金属配線105のテーパ面に残る。
【0007】
また、Ti粒102が存在していた部位ではエッチング速度が遅くなるので、下地の第1の絶縁膜101にTi粒の102の形状が反映されて、第1の絶縁膜101表面に凹凸(エッチング残さ)101bが形成されることとなる。さらに、エッチング時間が短いと場所によってはPt/Ti粒が残り、これによっても凹凸が発生することとなる。
【0008】
次に、第1の絶縁膜101および金属配線105上に第2の絶縁膜106を形成する(図9(d))。この第2の絶縁膜106には、第1の絶縁膜101に形成された段差101aや金属配線105のテーパ面に形成された凹凸により、クラック(す)106a、106bが発生する。さらに、第1の絶縁膜101表面に形成された凹凸101bにより、薄膜構造部表面に凹凸が形成される。
【0009】
このようなクラックや凹凸が薄膜部に形成されると、その部位が破壊しやすくなり、機械的な強度が不足するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、薄膜部を有するセンサの製造方法において、薄膜部の強度を確保することが可能なセンサ製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、薄膜部(10)を有し、薄膜部(10)に第1の絶縁膜(22)と第2の絶縁膜(25)とが備えられているとともに、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との間に2種の金属材料を含む金属配線(3、5)が配置されているセンサの製造方法であって、第1の絶縁膜上に金属配線を構成する金属膜(23)を形成する金属膜形成工程と、金属膜形成工程の後に、金属膜の粒径が大きくなる熱処理を行う熱処理工程と、熱処理工程の後に、金属膜をイオンミリングによってエッチングすることにより金属配線を形成するエッチング工程と、エッチング工程の後に、金属配線上に第2の絶縁膜を形成する第2の絶縁膜形成工程とを有し、エッチング工程では、イオンミリングにおけるイオン入射角を金属配線に対して傾斜させ、イオンミリングによるイオン入射時に、第1の絶縁膜および金属膜を、これらの面方向に垂直な回転軸を中心に回転させ、エッチング工程において、金属膜上にレジスト(24)を形成した後、レジストを加熱により液状化させ、表面張力によりレジストのうち金属膜との界面の端部をテーパ状にし、レジストをマスクとして金属膜をエッチングすることを特徴としている。
【0015】
このように金属膜に対してイオン入射角を傾斜させることで、金属配線の端部において、第1の絶縁膜の削れを抑制することができるので、第1の絶縁膜のテーパ角度を小さくすることができる。この結果、金属配線の端部における第1の絶縁膜の段差を小さくすることができ、金属配線の端部で発生する第2の絶縁膜のクラック発生を抑制することができる。これにより薄膜の強度を向上させることができる。
【0016】
また、請求項に記載の発明のように、イオン入射角を20°〜60°の範囲内とすることが、金属配線の端部における第1の絶縁膜のテーパ角度を小さくするために望ましい。
【0017】
また、発明では、イオンミリングによるイオン入射時に、第1の絶縁膜および金属膜を、これらの面方向に垂直な回転軸を中心に回転させることを特徴としている。これにより、イオンミリング時にイオン入射角を傾斜させた場合であっても、金属膜や第1の絶縁膜のテーパ角度を入射イオンの向きによらず、均一にすることができる。
【0018】
また、発明では、エッチング工程において、金属膜上にレジスト(24)を形成した後、レジストのうち金属膜との界面の端部をテーパ状にし、レジストをマスクとして金属膜をエッチングすることを特徴としている。
【0019】
これにより、イオン入射角を斜めにした場合に、エッチングイオンがレジストに当たって、金属膜のエッチングしたい部分がテーパ状にエッチングできなることを防止できる。また、テーパエッチングしたい膜とレジストとの間に設ける補助層が不要となる。
【0034】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。本第1実施形態では、本発明をフローセンサに適用している。図1は、本第1実施形態に係るフローセンサS1の斜視図であり、図2はこのフローセンサS1の断面図であって、図1におけるA−A断面を模式的に示す図である。
【0036】
図1に示すように基板1の裏面から空洞部6が設けられ、ダイアフラム部2が形成されている。基板1は、単結晶シリコン等で形成された半導体基板より構成されている。
【0037】
図2に示す様に、基板1には、一面(図中の上面)から他面(図中の下面)へと貫通する空洞部1aが形成されている。基板1の一面上には、空洞部1aの開口部を覆うように、下部絶縁膜21、22が形成されている。この下部絶縁膜21、22は、絶縁性のシリコン窒化膜(SiN)やシリコン酸化膜(SiO2)等により構成することができ、本例では、下側から第1のシリコン窒化膜21、第1のシリコン酸化膜(第1の絶縁膜)22が順次積層形成されてなるものである。
【0038】
第1のシリコン酸化膜22の上には、流体温度計3、測温体(流量検出体)4、ヒータ(発熱体)5が形成されている。これらの部材3〜5は、金属抵抗膜として構成される。本第1実施形態では、金属抵抗膜としてPt/Ti積層膜を用いている。第1のシリコン酸化膜22の上にTi密着層を介してPt膜が成膜され、Pt/Ti積層膜がパターニングされて、配線部3〜5が構成される。本例では各抵抗膜3〜5は平面蛇行形状にパターニングされている。
【0039】
流体温度計3、測温体4およびヒータ5は、本例では、流体の流れの方向(図1中の白抜き矢印)に対し、上流側からその順で配置されている。流体温度計3は、流体の温度を検出するもので、ヒータ5の熱がその温度検出に影響を及ぼさないようにヒータ5から十分離隔した位置に配設されている。ヒータ5は、流体温度計3で検出された温度より一定温度高い基準温度になるように、図示しない制御回路によって制御される。
【0040】
これら抵抗膜3〜5および第1のシリコン酸化膜22の上には、上部絶縁膜25、26が形成されている。この上部絶縁膜25、26は、下部絶縁膜21、22と同様に、絶縁性のシリコン窒化膜やシリコン酸化膜等により構成することができ、本例では、下側から第2のシリコン酸化膜(第2の絶縁膜)25、第2のシリコン窒化膜26が順次積層形成されてなるものである。
【0041】
また、図1に示すように、上記各抵抗膜3〜5は、基板1の端部まで引き回されており、その引き回し終端には、金やアルミ等よりなるパッド部7が形成されている。そして、このパッド部7を介してワイヤボンディング等により、各抵抗膜3〜5は上記制御回路等に電気的に接続されるようになっている。これらパッド部7は、上部絶縁膜25、26に形成された図示しない開口部を介して各抵抗膜3〜5に電気的に接続されている。
【0042】
こうして、本第1実施形態では、基板1の上に、下部絶縁膜21、22、抵抗膜3〜5、上部絶縁膜25、26が順次積層形成されている。そして、基板1の空洞部1a上においては、上記測温体4およびヒータ5が第1のシリコン酸化膜22と第2のシリコン酸化膜25とに挟まれて積層された薄膜部としてのメンブレン(薄膜構造部)10が形成されている。
【0043】
このようなフローセンサS1では、流体温度計3から得られる流体温度よりも一定温度高い温度になるようにヒータ5を駆動する。そして、流体が流れることにより、図1の白抜き矢印で示す順流においては、測温体4は熱を奪われて温度が下がり、白抜き矢印の逆方向である逆流では熱が運ばれて温度が上がるため、この測温体4と流体温度計3との温度差から流体の流量および流れ方向を検出するものである。このとき、流体温度計3および測温体4を形成している金属配線の抵抗値変動から温度を測定(検出)している。
【0044】
次に、上記構成のフローセンサS1の製造方法について図3に基づいて説明する。図3は、メンブレン10のうち任意の金属配線(ヒータまたは測温体)3、5における断面図である。なお、図3では図1で示した基板1の図示を省略している。
〔図3(a)に示す工程〕
まず、図1で示す基板1を用意し、この基板1上にプラズマCVD(PE−CVD)法または減圧CVD(LP−CVD)法等により第1のシリコン窒化膜21を成膜し、その上に、PE−CVD法等により第1のシリコン酸化膜(第1の絶縁膜)22を成膜する。
【0045】
次に、第1のシリコン酸化膜22上に抵抗膜3〜5の材料としての金属膜(Ti膜、Pt膜)23を蒸着法やスパッタ法により順次堆積させる(金属膜形成工程)。まず、密着層としてのTi膜を成膜し、次にPt膜を成膜する。その後、Pt/Ti膜23におけるPt、Tiの粒径が大きくなるように熱処理(アニール処理)を行う。この熱処理により、Pt/Tiの抵抗温度係数(TCR)を高めることができ、フローセンサの感度を向上させることができる。
【0046】
次に、Pt/Ti膜23上に、ヒータ3、流体温度計4、測温計5の形状となるようにレジスト24を塗布する。その後、ポストベークを通常の温度(100℃〜140℃)よりも高い温度で行う。具体的には、ポストベークを140℃〜180℃で30分程度行う。レジスト24は180℃程度で硬化し、エッチング後の剥離性が悪化するため、ポストベーク温度は180℃以下であることが望ましい。
【0047】
この結果、レジスト24が液状化して表面張力によりなだらかなテーパ形状となり、レジスト24端部におけるPt/Ti膜23の表面とレジスト24表面との角度が小さくなる。なお、レジスト24をテーパ化する方法としては、ポストベーク温度を高くする他に、露光時にフォーカスをずらす方法(デフォーカス露光)を用いることもできる。
〔図3(b)に示す工程〕
次に、レジスト24をマスクとしてPt/Ti膜23をエッチングする(エッチング工程)。本第1実施形態では、エッチングをフォトリソグラフィ法を用いたイオンミリングにより行っている。このとき、本第1実施形態では、イオンミリングのイオン入射角度を、第1のシリコン酸化膜22、Pt/Ti膜23に対して垂直ではなく、傾斜させるように構成している。このイオン入射角について図4に基づいて説明する。
【0048】
図4は、イオンミリングにおけるイオン入射角とエッチングレート(選択比)との関係を示している。図中黒丸がPtのエッチングレートを示し、黒三角がTiのエッチングレートを示している。ここでいう、入射角とは、対象物に対する垂直方向からの角度である。
【0049】
図4に示すように、PtおよびTiのエッチングレートは、イオン入射角に依存している。本第1実施形態では、イオンミリングにおけるイオン入射角を、PtとTiの選択比が同程度によるように設定している。具体的には、イオン入射角を20°〜60°の範囲内としている。
【0050】
これにより、PtのエッチングレートとTiのエッチングレートとの差を小さくすることができ、Ptのエッチング速度とTiのエッチング速度を近づけることができる。従って、イオンミリングによるPt/Ti膜23のエッチング時に、Ti粒が金属配線3、5のテーパ面に残ることを抑制でき、金属配線3、5のテーパ面に形成される凹凸を減少させることができる。
【0051】
また、Pt/Ti膜に対してイオン入射角を傾斜させることで、金属配線3、5端部において、第1のシリコン酸化膜22の削れを抑制することができるので、第1のシリコン酸化膜22のテーパ角度を小さくすることができる。このシリコン酸化膜22のテーパ角度を小さくするためにも、イオン入射角が20°〜60°の範囲内であることが望ましい。
【0052】
上記のように、イオンミリング時にイオン入射角を傾斜させた場合には、Pt/Ti膜23や第1のシリコン酸化膜22のテーパ角度が入射イオンの向きによって変わらないこととなるので、本第1実施形態では、イオンミリング時に基板1を、これらの面方向に垂直な回転軸を中心に回転させている。
【0053】
また、イオン入射角を斜めにすると、入射角によってはエッチングイオンがレジスト24に当たって、Pt/Ti膜23のエッチングしたい部分がテーパ状にエッチングできない場合がある。通常は、テーパエッチングしたい膜23とレジスト24との間に補助層を設けることで対処しているが、本第1実施形態では、上記のようにレジスト24の端部をテーパ化することで、Pt/Ti膜23のテーパエッチングを可能としている。これにより、補助層が不要となり工程を簡略化できる。
〔図3(c)に示す工程〕
次に、金属配線3、5および第1のシリコン酸化膜22上に、PE−CVD法等により第2のシリコン酸化膜(第2の絶縁膜)25を成膜した後、このシリコン酸化膜25の上に、プラズマCVD法または減圧CVD法等により第2のシリコン窒化膜26を成膜する(第2の絶縁膜形成工程)。
【0054】
その後、図示していないが、上記パッド部7の形成のために上部絶縁膜25、26に開口を形成し、蒸着やスパッタ等によりパッド部7を形成する。
【0055】
以上のように、本第1実施形態によれば、エッチング工程におけるイオンミリング時のイオン入射角度を、PtとTiのエッチングレートが同程度になるようにすることで、Ti粒によって金属配線3、5のテーパ面に形成される凹凸を低減することができる。これにより、金属配線3、5のテーパ面における第2のシリコン酸化膜25のクラック発生を抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0056】
また、エッチング工程におけるイオンミリング時のイオン入射角度を傾斜させることで、金属配線3、5端部における第1のシリコン酸化膜22の削れを抑制することができるので、第1のシリコン酸化膜22のテーパ角度を小さくすることができる。これにより、金属配線3、5端部における第1のシリコン酸化膜22の段差を小さくすることができ、金属配線端部で発生する第2のシリコン酸化膜25のクラック発生を抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図5、図6に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態に比較して、Ti粒の影響により第1のシリコン酸化膜22上に形成される凹凸(エッチング残さ)を除去する凹凸低減用エッチング工程を行う点が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本第2実施形態におけるフローセンサS1の製造方法について図5に基づいて説明する。図5は、メンブレン部10のうち任意の金属配線(ヒータまたは測温体)3、5における断面図である。なお、図5では図1で示した基板1の図示を省略している。
〔図5(a)に示す工程〕
この工程は、上記第1実施形態で図3(a)に基づいて説明した下部絶縁膜21、22、Pt/Ti膜23、レジスト24の形成と同様であるので説明を省略する。
〔図5(b)に示す工程〕
次に、レジスト24をマスクとしてPt/Ti膜23をエッチングする。本第2実施形態では、エッチングをフォトリソグラフィ法を用いたイオンミリングにより行っている。このとき、本第1実施形態では、イオンミリングのイオン入射角度を、第1のシリコン酸化膜22、Pt/Ti膜23に対して垂直としている。図5(b)に示すように、イオンミリングを実行してPt/Ti膜23をエッチングして金属配線3、5を形成した後には、第1のシリコン酸化膜22上に凹凸(エッチング残さ)22aが形成されている。
〔図5(c)に示す工程〕
次に、第1のシリコン酸化膜22に形成された凹凸22aを低減する凹凸低減用エッチング工程を行う。具体的には、イオンミリングを継続してオーバエッチングを行い、第1のシリコン酸化膜22の表面を削る。オーバエッチングは、第1のシリコン酸化膜22上の凹凸22aが残らない程度であって、凹凸22aが薄膜構造部10の耐圧低下に起因しない程度に行う。このオーバエッチングによる第1のシリコン酸化膜22の削れ量Aについて図6に基づいて説明する。
【0059】
図6は、オーバエッチング時間と単位面積当たりの残さ数との関係を示している。Pt/Ti膜23の厚さは、例えば280nmである。図6によれば、第1のシリコン酸化膜22の削れ量AがPt/Ti膜厚(280nm)Bの約30%程度(80nm)以上となったときに、第1のシリコン酸化膜22表面の残さ数が薄膜構造部10の耐圧に影響を及ばさない程度になる。従って、オーバエッチングによる第1のシリコン酸化膜22の削れ量Aの下限値を、Pt/Ti膜厚Bの30%とすることができる。
【0060】
オーバエッチングによる第1のシリコン酸化膜22の削れ量Aの上限値は、第2のシリコン酸化膜25の膜厚Cにより決定される。具体的には、削れ量Aの上限値=第2のシリコン酸化膜25の膜厚C−Pt/Ti膜厚Bとなる。すなわち、第1のシリコン酸化膜22の削れ量AとPt/Ti膜厚Bとの合計が第2のシリコン酸化膜25の膜厚Cを超える場合には、第2のシリコン酸化膜25によりPt/Ti膜からなる金属配線3、5を覆うことが困難になるからである。また、第1のシリコン酸化膜22の削れ量Aの上限値は、第1のシリコン酸化膜22の膜厚より小さくなければならない。
〔図5(d)に示す工程〕
この工程は、上記第1実施形態で図3(c)に基づいて説明した上部絶縁膜25、26の形成と同様であるので説明を省略する。
【0061】
以上のように、本第2実施形態によれば、エッチング工程におけるイオンミリングで第1の絶縁膜22を、ミリング残さが残らない程度にオーバエッチングすることにより、薄膜構造部10表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態は、上記第2実施形態に比較して、第1のシリコン酸化膜22の凹凸低減用エッチング工程の内容が異なるものである。上記各実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
上記第2実施形態では、図5(b)に基づいて説明したように、Pt/Ti膜23をエッチングする際にイオンミリングのイオン入射角度をPt/Ti膜23に対して垂直としたが、本第3実施形態でのPt/Ti膜23エッチング時におけるイオン入射角は、Pt/Ti膜23に対して垂直でもよく、傾斜していてもよい。
【0064】
次に、第1のシリコン酸化膜22の凹凸軽減用エッチング工程を行う。凹凸軽減用エッチング工程として、本第3実施形態ではシリコン酸化膜22のエッチングレートの速い条件でエッチングを行う。シリコン酸化膜22のエッチングレートの速い条件の具体例について、イオン入射角とエッチングレートとの関係を示す図4に基づいて説明する。
【0065】
図4中白抜き菱形は酸化シリコンを示している。図4に示すように、イオン入射角が30°以上の場合に、酸化シリコンのエッチングレートが充分速くなっていることが分かる。従って、第1のシリコン酸化膜22のオーバエッチングを行う際に、イオンミリングのイオン入射角を30°以上とすることが望ましい。
【0066】
本第3実施形態の凹凸低減エッチングによる第1のシリコン酸化膜22の削れ量は、上記第2実施形態と同様に金属膜厚Bの30%を下限値とし、第2のシリコン酸化膜25の膜厚Cから金属膜厚Bを引いた値が上限値となる。
【0067】
以上の本第3実施形態によっても、第1の絶縁膜22に形成される凹凸22aを低減させることができ、薄膜構造部10表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本第4実施形態は、上記第2実施形態に比較して、上記第3実施形態と同様に第1のシリコン酸化膜22の凹凸低減用エッチング工程の内容が異なるものである。上記各実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本第4実施形態においても上記第3実施形態と同様に、Pt/Ti膜23をエッチングする際にイオンミリングのイオン入射角度は、Pt/Ti膜23に対して垂直でもよく、傾斜していてもよい。
【0070】
次に、第1のシリコン酸化膜22の凹凸軽減用エッチング工程を行う。凹凸軽減用エッチング工程として、本第4実施形態では等方性のエッチングを行う。このように等方性エッチングを行った場合には、異方性エッチングを行う場合に比較して、第1のシリコン酸化膜22表面をよりなめらかにすることができる。
【0071】
等方性エッチングとしては、例えばエッチング液にフッ酸(HF)を用いたウェットエッチングを行うことができる。さらにウェットエッチングに限らず、CF4ガス等を用いた等方性のドライエッチングを行ってもよい。
【0072】
本第4実施形態の凹凸低減エッチングによる第1のシリコン酸化膜22の削れ量は、上記第2実施形態と同様に金属膜厚Bの30%を下限値とし、第2のシリコン酸化膜25の膜厚Cから金属膜厚Bを引いた値が上限値となる。
【0073】
以上の本第4実施形態によっても、第1の絶縁膜22に形成される凹凸22aを低減させることができ、薄膜構造部10表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0074】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本第5実施形態は、上記各実施形態に比較して、Pt/Ti膜23のPt/Ti粒径を大きくするための熱処理工程(アニール)を行う時期が異なるものである。上記各実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
上記各実施形態では、Pt/Ti粒径を大きくするための熱処理工程を、Pt/Ti膜23の成膜後であってレジスト24の形成前に行ったが、本第5実施形態では、第2のシリコン酸化膜25の形成後に上記熱処理を行うように構成している。
【0076】
この結果、Pt/Ti膜23のイオンミリング時には、Pt薄膜内へのTiの拡散が起こらない状態でミリングを行うことができる。これにより、Pt/Ti膜23では、イオンミリングによりエッチングを行う際に、部分的にエッチングの進み具合の違う部位がなくなり、第1のシリコン酸化膜22の表面に形成される凹凸22aを低減させることができる。
【0077】
以上の本第5実施形態によっても、薄膜構造部10表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0078】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本第6実施形態は、上記各実施形態に比較して、金属膜23のうち酸化膜に対する密着層としてTi以外の金属材料を用いる点が異なるものである。上記各実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
上記各実施形態では、金属膜23を構成する材料としてPtの他に、シリコン酸化膜に対する密着層としてTiを用いた。TiはPtとミリングレートが異なり、また、アニール時にPt膜内に拡散、凝集するという特質を持っており、これらの原因によりPt/Ti膜のミリング時に部分的にエッチングの進み具合が異なる結果となる。
【0080】
そこで、本第6実施形態では、Ptを含む金属膜23における密着層として、シリコン酸化膜と密着性があり、かつ、Ptとミリングレートが同程度の材料からなる膜を用いている。このような膜としては、例えばAlからなる膜を用いることができる。
【0081】
また、Ptを含む金属膜23における密着層として、シリコン酸化膜と密着性があり、かつ、アニール時にPt膜内に拡散、凝集しない材料からなる膜を用いることもできる。
【0082】
上記条件を満たす密着層を用いることで、Ptを含む金属膜23のミリング時に、部分的にエッチングの進み具合が異なる部位がなくなり、第1のシリコン酸化膜22表面に形成される凹凸22aを低減させることができる。
【0083】
以上の本第6実施形態によっても、薄膜構造部10表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。これにより薄膜構造部10の強度を向上させることができる。
【0084】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態を図7、図8に基づいて説明する。本第7実施形態では、薄膜構造部(メンブレン)10を構成する絶縁膜の表面粗さを規定している。上記各実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
図7は、薄膜構造部10を構成する絶縁膜21、22、25、26の断面構成を示し、図8は薄膜構造部10を構成する絶縁膜21、22、25、26の表面粗さ(凹凸の高さ)Eと耐圧との関係を示している。なお、ここでいう絶縁膜21、22、25、26の表面粗さEは、薄膜構造部10のうち金属膜23が形成されていない部分であって絶縁膜21、22、25、26のみから構成されている部分の凹凸の高さのことであり、複数の凹凸高さのうち最大値を用いている。
【0086】
図8中の実線は、絶縁膜21、22、25、26の膜厚Dが1.3μmの場合を示している。また、実線の下側の破線は実線で示す膜厚の0.75倍である場合を示し、実線の上側の破線は実線で示す膜厚の1.5倍である場合を示している。
【0087】
図8に示すように、絶縁膜21、22、25、26の膜厚Dが1.3μmに対して絶縁膜の表面粗さEが50nm以下であると、薄膜構造部10が充分な耐圧を確保できることが分かる。この充分な耐圧を確保できる絶縁膜の表面粗さEは、絶縁膜21、22、25、26の膜厚Dに依存している。具体的には図8に示すように、絶縁膜21、22、25、26の膜厚Dが0.75倍の場合には、表面粗さEを20nm以下にすることが望ましい。すなわち、絶縁膜の膜厚Dが薄くなれば表面粗さEを小さくする必要があり、絶縁膜の膜厚Dが厚くなれば表面粗さEを大きくできる。
【0088】
絶縁膜の表面粗さEが絶縁膜21、22、25、26の膜厚Dに対して10%以内であれば、薄膜構造部10の耐圧は実用上充分なものとなる。従って、絶縁膜の表面粗さEを絶縁膜の膜厚Dに対して10%以内に制御することで薄膜構造部10の機械的強度が確保できる。絶縁膜の表面粗さを制御するために、各膜の成膜条件を適切な条件で行うことができる。
【0089】
この表面粗さEはできるだけ小さい方が望ましい。このため、薄膜構造部10の耐圧をより充分なものとするために、例えば絶縁膜の膜厚Dが1.3μmの場合には絶縁膜の表面粗さEを50nm以下とすることがより望ましい。すなわち、絶縁膜の表面粗さEを絶縁膜の膜厚Dの4%以内とすることがより望ましい。
【0090】
また、薄膜構成部10を構成するすべての絶縁膜21、22、25、26の各表面粗さを、各絶縁膜21、22、25、26の膜厚の10%以内に制御することが望ましい。
【0091】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では本発明のセンサ製造方法をフローセンサに適用したが、これに限らず、薄膜部を有し、この薄膜部に金属配線が形成されているセンサ一般に対して本発明を適用することができる。例えば、赤外線センサ、湿度センサ、ガスセンサ等に適用することができる。また、薄膜がダイアフラム状でなくとも、基板の凹部の開口部に薄膜部を配置するようなブリッジ状の薄膜部を有するセンサにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】上記第1実施形態のフローセンサの斜視図である。
【図2】図1のフローセンサのA−A断面図である
【図3】上記第1実施形態の薄膜部の製造工程図である。
【図4】イオンミリングのイオン入射角とエッチングレートとの関係を示す特性図である。
【図5】上記第2実施形態の薄膜部の製造工程図である。
【図6】オーバエッチング時間と第1のシリコン酸化膜表面のエッチング残さ数との関係を示す特性図である。
【図7】上記第7実施形態の薄膜構造部を構成する絶縁膜の概略断面図である。
【図8】上記第7実施形態の薄膜構成部の表面粗さと耐圧との関係を示す特性図である。
【図9】従来の薄膜部における問題点を示す工程図である。
【符号の説明】
S1…フローセンサ、1…基板、3…流体温度計、4…測温体、5…ヒータ、21…第1のシリコン窒化膜、22…第1のシリコン酸化膜、23…金属膜、24…レジスト、25…第2のシリコン酸化膜、26…第2のシリコン窒化膜。

Claims (2)

  1. 薄膜部(10)を有し、前記薄膜部(10)に第1の絶縁膜(22)と第2の絶縁膜(25)とが備えられているとともに、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に2種の金属材料を含む金属配線(3、5)が配置されているセンサの製造方法であって、
    前記第1の絶縁膜上に前記金属配線を構成する金属膜(23)を形成する金属膜形成工程と、
    前記金属膜形成工程の後に、前記金属膜の粒径が大きくなる熱処理を行う熱処理工程と、
    前記熱処理工程の後に、前記金属膜をイオンミリングによってエッチングすることにより前記金属配線を形成するエッチング工程と、
    前記エッチング工程の後に、前記金属配線上に前記第2の絶縁膜を形成する第2の絶縁膜形成工程とを有し、
    前記エッチング工程では、前記イオンミリングにおけるイオン入射角を前記金属配線に対して傾斜させ
    前記イオンミリングによるイオン入射時に、前記第1の絶縁膜および前記金属膜を、これらの面方向に垂直な回転軸を中心に回転させ、
    前記エッチング工程において、前記金属膜上にレジスト(24)を形成した後、前記レジストを加熱により液状化させ、表面張力により前記レジストのうち前記金属膜との界面の端部をテーパ状にし、前記レジストをマスクとして前記金属膜をエッチングすることを特徴とする薄膜部を有するセンサの製造方法。
  2. 前記2種類の金属材料の一方は白金であり他方はチタンであり、前記イオンミリングのイオン入射角度は20°〜60°の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜部を有するセンサの製造方法。
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