JPH11287687A - 流量検出素子及び流量センサ並びに流量検出素子の製造方法 - Google Patents

流量検出素子及び流量センサ並びに流量検出素子の製造方法

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JPH11287687A
JPH11287687A JP10091594A JP9159498A JPH11287687A JP H11287687 A JPH11287687 A JP H11287687A JP 10091594 A JP10091594 A JP 10091594A JP 9159498 A JP9159498 A JP 9159498A JP H11287687 A JPH11287687 A JP H11287687A
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裕一 坂井
Akira Yamashita
彰 山下
Yukihisa Yoshida
幸久 吉田
Kazuhiko Tsutsumi
和彦 堤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 感熱式流量検出素子ないしは流量センサにつ
いて、保護膜のカバレッジ不足による抵抗値変動を減少
させ、測定精度や信頼性を向上させ、また製造プロセス
を簡略化する。 【解決手段】 感熱式流量検出素子ないしは流量センサ
においては、平板状基材1の表面に絶縁性の支持膜2が
形成され、この支持膜2上に感熱抵抗膜11(発熱部)
が形成されている。そして、感熱抵抗膜11ないし支持
膜2の上に、TEOS及びH22から形成された酸化膜
である絶縁性薄膜18が設けられ、この絶縁性薄膜18
の上に保護膜3が形成されている。この絶縁性薄膜18
によって、感熱抵抗膜11の段差が低減ないしは緩和さ
れ、これにより保護膜3のカバレッジ不足による抵抗値
変動が低減され、測定精度や信頼性が向上し、また製造
プロセスが簡略化される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば内燃機関の
吸入空気量の計測等に用いられる、発熱体あるいは発熱
体によって加熱された部分から流体への熱伝達現象に基
づいて該流体の流速ないしは流量を計測する流量検出素
子及び該流量検出素子を用いた流量センサ、並びに該流
量検出素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】流体の流速ないしは流量と、該流体中に
配置された発熱体から流体への熱伝達量との間に成立す
るほぼ一義的な関数関係を利用して、該熱伝達量に基づ
いて流体の流速ないしは流量を検出するようにした感熱
式流量検出素子、あるいは該流量検出素子を用いた流量
センサは、従来より内燃機関の吸入空気量の検出等に広
く用いられている。
【0003】図12及び図13は、それぞれ、例えば特
公平5−7659号公報に開示されている従来の感熱式
流量検出素子の立面断面図及び平面図である。図12及
び図13において、1はシリコン半導体よりなる平板状
基材であり、2は窒化シリコンよりなる絶縁性の支持膜
であり、4は感熱抵抗であるパーマロイよりなる発熱抵
抗であり、5及び6はそれぞれ感熱抵抗であるパーマロ
イよりなる測温抵抗である。また、3は窒化シリコンよ
りなる絶縁性の保護膜である。発熱抵抗4及び両測温抵
抗5、6の着膜部近傍において平板状基材1には空気ス
ペース9が設けられ、これによりブリッジ13が形成さ
れている。空気スペース9は、窒化シリコンに損傷を与
えないエッチング液を用いて開口部8からシリコン半導
体の一部を除去することにより形成されている。両測温
抵抗5、6は、発熱抵抗4を挟んで計測流体の流れの方
向に平面的に並んでいる。なお、7は感熱抵抗であるパ
ーマロイよりなる比較抵抗である。
【0004】このような従来の流量検出素子では、発熱
抵抗4に通電する加熱電流が、図示していない制御回路
によって、例えば比較抵抗7で検出された平板状基材1
の温度より200°Cだけ高い一定の温度になるように
制御されている。ここで、発熱抵抗4の下方には空気ス
ペース9が存在するので、発熱抵抗4で発生した熱はほ
とんど比較抵抗7には伝達されず、したがって比較抵抗
7の温度は空気の温度とほぼ等しくなっている。
【0005】発熱抵抗4で発生した熱は、支持膜2や保
護膜3あるいは感熱抵抗膜を介して測温抵抗5、6に伝
達される。図13に示すように、測温抵抗5と測温抵抗
6とは、発熱抵抗4に対して互いに対称な位置に配置さ
れているので、空気の流れがない場合は、測温抵抗5と
測温抵抗6の抵抗値に差は生じない。しかしながら、空
気の流れがある場合は、上流側の測温抵抗は空気によっ
て冷却され、他方下流側の測温抵抗は発熱抵抗4から空
気に伝達された熱の影響により上流側の測温抵抗ほどは
冷却されない。例えば、矢印10で示す方向の空気の流
れが生じた場合は、上流側の測温抵抗5は下流側の測温
抵抗6よりも低温となり、両者の抵抗値の差は、空気の
流速ないしは流量が大きいときほど拡大される。したが
って、測温抵抗5と測温抵抗6の抵抗値の差を検出する
ことにより、空気の流速ないしは流量を測定することが
できる。また、空気の流れの方向が矢印10と逆になっ
た場合は、上流側の測温抵抗6の方が下流側の測温抵抗
5より低温になるので、空気の流れの方向を検出するこ
とも可能である。
【0006】図12及び図13に示す従来の流量検出素
子はブリッジタイプの感熱式流量検出素子であるが、こ
のほかダイヤフラムタイプの感熱式流量検出素子も従来
より広く用いられている。図14及び図15は、それぞ
れ、従来のダイヤフラムタイプの感熱式流量検出素子の
立面断面図及び平面図である。図14及び図15におい
て、1〜10の各構成要素は、それぞれ、図12及び図
13に示すブリッジタイプの流量検出素子の同一番号を
付した構成要素と実質的に同じものである。そして、1
2は、平板状基材1の支持膜2が取り付けられた方の表
面とは反対側の表面から該平板状基材1の一部をエッチ
ング等により除去することにより形成された凹部であ
る。したがって、支持膜2と保護膜3とは、発熱抵抗4
及び両測温抵抗5、6を挟んでダイヤフラム14を形成
することになる。このような構成によれば、図12及び
図13に示すブリッジタイプの流量検出素子に比べて、
高い強度を得ることができるものの、ダイヤフラム14
が全周で支持されている関係上応答性が劣るといった特
徴がある。なお、空気の流速ないしは流量の検出原理
は、前記のブリッジタイプの流量検出素子の場合と同様
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
従来の流量検出素子においては、保護膜3は一般にスパ
ッタ法により形成されている。しかしながら、例えば図
16に示すように、感熱抵抗膜11(発熱抵抗、測温抵
抗、比較抵抗)の急峻な段差上にスパッタ法で成膜を行
った場合には、該保護膜3にす15(保護膜の素材が欠
如した部分)が入りやすく、このようにす15が入った
場合は、保護膜3のカバレッジが不十分になることが多
い。このようにす15が入った場合、各種耐環境試験の
結果によれば、雰囲気中の水分や燃料等がす15等を通
して流量検出素子内に侵入し、これにより抵抗値変動、
腐食、クラック等が引き起こされ、流量検出素子の精度
及び信頼性が劣化するといった問題点があった。
【0008】この発明は、上記従来の問題を解決するた
めになされたものであって、発熱部を保護する絶縁性保
護膜のカバレッジを向上させることができ、ひいて雰囲
気中の水分や燃料等の侵入を防止することができ、抵抗
値変動、腐食、クラック等を起こさない、精度及び信頼
性の高い流量検出素子ないしは流量センサを提供するこ
と、さらにはかかる流量検出素子を簡単な製造工程で製
造することができる流量検出素子の製造方法を提供する
ことを目的ないしは解決すべき課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされたこの発明の第1の態様に係る流量検出素子
は、(a)平板状の基材と、(b)基材の表面に配置さ
れた絶縁性の支持膜と、(c)支持膜の上に配置され該
支持膜によって支持された、感熱抵抗膜よりなる複数の
発熱部と、(d)発熱部の上に配置され該発熱部を保護
する絶縁性の保護膜とを備えていて、(e)計測流体の
流れの方向にみて上流側の発熱部と下流側の発熱部の加
熱電流の差に相当する量に基づいて計測流体の流量を計
測する感熱式の流量検出素子であって、(f)発熱部と
保護膜との間に、該発熱部の段差を低減(解消)する絶
縁性薄膜が設けられていることを特徴とするものであ
る。
【0010】この流量検出素子においては、発熱部(感
熱抵抗膜)と保護膜との間に、発熱部の段差を低減(解
消)する絶縁性薄膜が設けられているので、保護膜のカ
バレッジを向上させることができる。このため、発熱部
の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出
素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0011】この発明の第2の態様に係る流量検出素子
は、第1の態様に係る流量検出素子において、絶縁性薄
膜がケイ素(Si)及び酸素(O)を主成分とすること
を特徴とするものである。なお、絶縁性薄膜は、例え
ば、感熱抵抗膜からなる発熱部の上に、Si及びOを主
成分とする流動性材料を塗布し、これを加熱して固化さ
せた後、その上に保護膜を形成するなどといった手法で
形成される。この流量検出素子においては、ケイ素及び
酸素を主成分とする絶縁性薄膜によって発熱部(感熱抵
抗膜)の段差が低減(解消)されるので、保護膜のカバ
レッジを向上させることができる。このため、発熱部の
抵抗変化、腐食、クラック等がなくなる。
【0012】この発明の第3の態様に係る流量検出素子
は、第1又は第2の態様に係る流量検出素子において、
絶縁性薄膜の厚さが発熱部(感熱抵抗膜)の厚さの1/
2以上であることを特徴とするものである。この流量検
出素子においては、発熱部の上に形成する絶縁性薄膜の
厚さを発熱部の厚さの1/2以上としているので、発熱
部の段差を有効に低減することができ、ないしは発熱部
の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジ
を一層向上させることができる。このため、発熱部の抵
抗変化、腐食、クラック等がなくなる。さらに、流量検
出素子を製造するプロセスが簡素なものとなる。
【0013】この発明の第4の態様に係る流量検出素子
は、第1の態様に係る流量検出素子において、発熱部
(感熱抵抗膜)と保護膜との間に絶縁性薄膜は設けられ
ず、その代わりに、発熱部の側部が下方に広がるテーパ
状に形成され、該側部と発熱部底面とがなすテーパー角
が45度以下であることを特徴とするものである。な
お、テーパーは、例えば、支持膜の上の感熱抵抗膜をパ
ターニングして発熱部を形成する際に、エッジ部分にテ
ーパー角を持たせるなどといった手法により形成され
る。この流量検出素子においては、発熱部の側部のテー
パー角が45度以下とされているので、該発熱部の急峻
な勾配をなくすことができ、保護膜のカバレッジを向上
させることができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐
食、クラック等がなくなる。さらに、流量検出素子を製
造するプロセスが簡素なものとなる。
【0014】この発明の第5の態様に係る流量検出素子
は、第4の態様に係る流量検出素子において、発熱部
(感熱抵抗膜)と支持膜の当接部の外側において支持膜
に、該支持膜がオーバーエッチングされてなる裾引き部
が形成されていることを特徴とするものである。すなわ
ち、支持膜をオーバーエッチングすることにより、該支
持膜に裾を引かせたような形状を持たせたものである。
この流量検出素子においては、発熱部の側部にテーパー
角を持たせ、かつ支持膜をオーバーエッチングして裾を
引かせた構造としているので、発熱部の急峻な勾配をな
くすことができ、保護膜のカバレッジを向上させること
ができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラッ
ク等がなくなる。さらに、かかる流量検出素子を製造す
るプロセスが簡素なものとなる。
【0015】この発明の第6の態様に係る流量検出素子
は、第4又は第5の態様に係る流量検出素子において、
発熱部(感熱抵抗膜)の側部と支持膜との界面部近傍に
おいて、該側部に、外方に向かってテーパ角が徐々に小
さくなる裾引き部が形成されていることを特徴とするも
のである。すなわち、発熱部の側部の支持膜との界面部
分に、裾を引かせたような形状を持たせたものである。
この流量検出素子においては、発熱部の側部にテーパー
角を持たせ、かつ支持膜との界面部に裾を引かせた構造
としているので、発熱部の急峻な勾配をなくすことがで
き、保護膜のカバレッジを向上させることができる。こ
のため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくな
る。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが
簡素なものとなる。
【0016】この発明の第7の態様に係る流量検出素子
は、第4〜第6の態様のいずれか1つに係る流量検出素
子において、支持膜の上側角部に、該角部が面取りされ
てなる肩部が形成されていることを特徴とするものであ
る。なお、肩部は、例えば、支持膜の上の感熱抵抗膜を
パターニングして発熱部を形成した後、ウエハ全面を軽
くエッチングすることにより上側角部に面取りを施すな
どといった手法により形成される。この流量検出素子に
おいては、発熱部(感熱抵抗膜)の側部にテーパー角を
持たせ、かつ発熱部の上側角部に面取りを施すことによ
って肩部を形成しているので、発熱部の急峻な勾配をな
くすことができ、保護膜のカバレッジを向上させること
ができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラッ
ク等がなくなる。
【0017】この発明の第8の態様に係る流量検出素子
は、第1の態様に係る流量検出素子において、発熱部
(感熱抵抗膜)と保護膜との間に絶縁性薄膜が設けられ
ず、その代わりに、発熱部が支持膜に埋め込まれている
ことを特徴とするものである。なお、発熱部の表面と支
持膜の表面とは平坦(同一平面)になっているのが好ま
しい。この流量検出素子においては、発熱部が支持膜に
埋め込まれているので、発熱部の段差をなくすことがで
き、保護膜のカバレッジを向上させることができる。こ
のため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくな
る。
【0018】この発明の第9の態様に係る流量検出素子
は、第1の態様に係る流量検出素子において、発熱部
(感熱抵抗膜)と保護膜との間に絶縁性薄膜は設けられ
ず、その代わりに、支持膜の上に発熱部を埋め込む絶縁
性の中間膜が設けられ、該発熱部の表面と該中間膜の表
面とが平坦(同一平面)になっていることを特徴とする
ものである。この流量検出素子においては、発熱部が中
間膜に埋め込まれ、かつ発熱部の表面と中間膜の表面と
が平坦になっているので、発熱部の段差をなくすことが
でき、保護膜のカバレッジを向上させることができる。
このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなく
なる。
【0019】この発明の第10の態様に係る流量検出素
子は、第1〜第9の態様のいずれか1つに係る流量検出
素子において、絶縁発熱部に対応する領域で基材が部分
的に除去されてダイヤフラム構造をなすことを特徴とす
るものである。この流量検出素子においては、基材がダ
イヤフラム構造とされているので、該基材の熱伝導度が
良くなり、該流量検出素子の流量検出精度が一層高めら
れる。なお、ダイヤフラムは、できる限り薄い方が好ま
しい。
【0020】この発明の第11の態様に係る流量センサ
は、第1〜第10の態様のいずれか1つに係る流量検出
素子を用いて計測流体の流量を検出するようになってい
ることを特徴とするものである。この流量センサにおい
ては、第1〜第9の態様のいずれか1つに係る流量検出
素子を用いているので、これらの流量検出素子の場合と
同様の作用が生じる。
【0021】この発明の第12の態様に係る流量検出素
子の製造方法は、第8の態様に係る流量検出素子を製造
するための方法であって、(a)支持膜の表面に溝部を
形成した後、該支持膜の上に感熱抵抗膜を形成し、
(b)感熱抵抗膜を(例えば、研磨により)支持膜の表
面の位置まで除去して、溝部内にのみ感熱抵抗膜を残留
させて、該溝部内の感熱抵抗膜を発熱部とし、(c)発
熱部及び支持膜の上に保護膜を形成するようにしたこと
を特徴とするものである。なお、発熱部の表面と支持膜
の表面とは平坦(同一平面)にするのが好ましい。この
流量検出素子の製造方法においては、第8の態様にかか
る流量検出素子を極めて容易に製造することができる。
【0022】この発明の第13の態様に係る流量検出素
子の製造方法は、第9の態様にかかる流量検出素子を製
造するための方法であって、(a)支持膜の上に感熱抵
抗膜からなる発熱部を形成し、(b)発熱部及び支持膜
の上に絶縁性の中間膜を形成し、(c)中間膜を発熱部
の表面の位置まで除去して、発熱部の表面と中間膜の表
面とを平坦にし、(d)発熱部及び中間膜の上に保護膜
を形成するようにしたことを特徴とするものである。こ
の流量検出素子の製造方法においては、第9の態様にか
かる流量検出素子を極めて容易に製造することができ
る。
【0023】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は、この発明
の実施の形態1に係る流量検出素子の立面断面図であ
る。図1において、1は例えば厚さ約400μmのシリ
コンウエハからなる平板状基材であり、この平板状基材
1の上に、厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁
性の支持膜2がスパッタ法等により形成されている。さ
らに、支持膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等
よりなる感熱抵抗膜11(発熱抵抗、測温抵抗、比較抵
抗等の発熱部)が蒸着法やスパッタ法等により着膜され
ている。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチ
ング法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニ
ングが行われ、これにより電流路が形成されている。さ
らに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、TEOS
とH22の気相反応により生成された厚さ約0.15μ
mの酸化膜からなる絶縁性薄膜18(TEOS+H22
酸化膜)が形成されている。この絶縁性薄膜18は成膜
時に多少の流動性を持ち、図1に示すように、感熱抵抗
膜11によって生ずる段差を低減するとともに、急峻な
段差の変化を平滑化する効果を奏する。さらに、絶縁性
薄膜18の上に、厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜か
らなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成され
ている。
【0024】さらに、平板状基材1の支持膜2が配置さ
れている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成され
た裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチング
ホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング
等を施すことにより平板状基材1の一部が除去されて凹
部12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成
されている。なお、このダイヤフラム14は、熱伝導度
を良くして該流量検出素子の流量検出精度を高めるため
にできる限り薄く形成されるのが好ましい。
【0025】図1に示すように、この流量検出素子にお
いては、感熱抵抗膜11の上にその急峻な段差を平滑化
する絶縁性薄膜18が設けられているので、その上側の
保護膜3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくな
る。このため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、ク
ラック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が
向上する。なお、この実施の形態1を含め、以下に述べ
る全ての実施の形態では、ダイヤフラムタイプの流量検
出素子を例として挙げているが、ブリッジタイプの流量
検出素子の場合も同様の効果が得られることは言うまで
もない。
【0026】実施の形態2.図2は、この発明の実施の
形態2に係る流量検出素子の立面断面図である。図2に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に厚
さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜2
がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持膜
2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱
抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されてい
る。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチング
法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニング
が行われ、これにより電流路が形成されている。
【0027】さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の
上に、厚さ約0.15μmのSOG(Spin On Glass)膜
からなる絶縁性薄膜19(SOG塗布膜)が形成されて
いる。このSOG膜(絶縁性薄膜19)は、ケイ素(S
i)と酸素(O)を主成分としており(例えば、東京応
化製SOG、Type-2:Si-Film用)非常に高い流動性を
有している。このように、SOGを塗布してなる絶縁性
薄膜19を設けることにより、図2に示すように、感熱
抵抗膜11によって生ずる段差を低減するとともに、急
峻な段差の変化を平滑化するといった効果を奏する。さ
らに、このSOG膜は約450°C以上でアニールする
ことにより固化する。さらに、絶縁性薄膜19の上に、
厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜よりなる絶縁性の保
護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0028】さらに、平板状基材1の支持膜2が配置さ
れている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成され
た裏面保護膜16に写真製版法等を用いてエッチングホ
ール17が形成された後、例えばアルカリエッチング等
を施すことにより平板状基材1の一部が除去されて凹部
12が形成され、これによりダイヤフラム14が形成さ
れている。
【0029】図2に示すように、感熱抵抗膜11の上
に、流動性塗布材料を用いて、急峻な段差を平滑化する
効果を奏する絶縁性薄膜19を設けているので、保護膜
3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。こ
のため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック
等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上す
る。
【0030】実施の形態3.図3は、この発明の実施の
形態3に係る流量検出素子の立面断面図である。図3に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、
厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜
2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持
膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感
熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されて
いる。感熱抵抗膜11は写真製版法、ウエットエッチン
グ法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニン
グが行われ、これにより電流路が形成されている。さら
に、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約0.
08μmのSOG(Spin On Glass)膜からなる絶縁性
薄膜19が形成されている。このSOG膜はSiとOを
主成分としており(例えば、東京応化製SOG、Type-
2:Si-Film用)非常に高い流動性を有している。図3に
示すように、このSOGの塗布膜厚が薄いと、高い流動
性を持っていたとしても、急峻な段差変化を充分に平滑
化することができない。このため、絶縁性薄膜19の上
にスパッタ法等により保護膜3を形成しても、すが発生
する可能性が大きく、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐
食、クラック等が起きる可能性があり、流量検出素子の
精度や信頼性を向上させることはできない。
【0031】かくして、SOG等の流動性塗布材料の塗
布膜厚とその上に形成された保護膜3のカバレッジとの
関係を評価したところ、SOGの塗布膜厚が、平坦部で
感熱抵抗膜11による段差の1/2以上あれば、保護膜
3にす等が入ることがなく、良好なカバレッジが得られ
るということが判明した。したがって、絶縁性薄膜19
の平坦部での厚さを感熱抵抗膜11の厚さ(段差)の1
/2以上とすれば、保護膜3のカバレッジが向上し、す
等が発生しにくくなるので、感熱抵抗膜11の抵抗値変
化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精
度や信頼性が向上することになる。
【0032】さらに、SOG等の流動性塗布材料の膜厚
が、平坦部で感熱抵抗膜11により生じる段差よりも充
分に厚ければ、保護膜3を設けなくても、塗布後のSO
Gを熱処理により固化させるだけで充分なカバレッジが
得られる。このような構成にすることにより、感熱抵抗
膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該
流量検出素子の精度や信頼性が向上し、加えて、保護膜
3が不要となるため、製造プロセスを簡略化することが
でき、歩留まりの向上やコストの低減を図ることができ
る。
【0033】実施の形態4.図4は、この発明の実施の
形態4に係る流量検出素子の立面断面図である。図4に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、
厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜
2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持
膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感
熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されて
いる。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング
法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路
が形成されている。このドライエッチングにおいては、
アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用
いられ、イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂
直面に対して30〜45度傾けてエッチングが行われ
た。こうすることにより、感熱抵抗膜11のテーパー角
ないしはエッジ角20を、30〜45度にすることがで
きる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、
厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の保
護膜3がスパッタ法等により形成されている。
【0034】さらに、平板状基材1の支持膜2が形成さ
れている方の表面とは反対側の表面に形成された裏面保
護膜16に写真製版法等を用いてエッチングホール17
が形成された後、例えばアルカリエッチング等を施すこ
とにより平板状基材1の一部が除去されて凹部12が形
成され、ダイヤフラム14が形成されている。
【0035】図4に示すように、イオンシャワーの入射
角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチング
することにより、感熱抵抗膜11は、そのエッジにテー
パー角を持たせた形状(テーパー状)となる。このよう
な構造とすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の
急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜
3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。こ
のため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック
等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上す
る。また、製造プロセスを簡略化することができ、歩留
まりの向上やコストの低減が図られる。
【0036】しかしながら、イオンシャワーの入射角度
を浅くし、感熱抵抗膜11のエッジのテーパー角が45
度を越えると、その上に形成された保護膜3のカバレッ
ジが悪化し、す等が発生しやすくなり、感熱抵抗膜11
の抵抗値変化、腐食、クラック等が発生することにな
る。
【0037】実施の形態5.図5は、この発明の実施の
形態5に係る流量検出素子の立面断面図である。図5に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、
厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパ
ッタ法等により形成されている。さらに、支持膜2の上
に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜
11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。感
熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング法等を用
いてパターニングが行われ、これにより電流路が形成さ
れている。このドライエッチングにおいては、アルゴン
イオンによるイオンシャワーエッチング法が用いられ、
イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂直面に対
して30〜45度傾けてエッチングが行われ、さらにオ
ーバーエッチングが10〜20%行われた。これによ
り、実施の形態4の場合と同様に感熱抵抗膜11のテー
パー角ないしはエッジ角20を30〜45度にすること
ができ、かつ感熱抵抗膜11の周辺の支持膜2に裾引き
部21を形成することができる。すなわち、裾を引いた
ような形状に加工することができる。さらに、感熱抵抗
膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化
シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ法等に
より形成されている。
【0038】さらに、平板状基材1の支持膜2が形成さ
れている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成され
た裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチング
ホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング
法等により平板状基材1の一部が除去されて凹部12が
形成され、これによりダイヤフラム14が形成されてい
る。
【0039】図5に示すように、イオンシャワーの入射
角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチング
し、さらにオーバーエッチングを施すことにより、感熱
抵抗膜11のエッジにテーパー角を持たせた上に、周辺
の支持膜2が裾を引いた形状になる。このような構造と
することにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の急峻な角
度変化が緩和され、その上に形成される保護膜3のカバ
レッジが向上し、す等が発生しにくくなる。このため、
感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなく
なり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上する。ま
た、製造プロセスを簡略化することができ、歩留まりの
向上やコストの低減が図られる。
【0040】実施の形態6.図6は、この発明の実施の
形態6に係る流量検出素子の立面断面図である。図6に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、
厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜
2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持
膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感
熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されて
いる。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング
法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路
が形成されている。このドライエッチングにおいては、
アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用
いられ、イオンシャワーの入射角をシリコンウエハの垂
直面に対して45〜65度傾けてエッチングが行われ
た。これにより、感熱抵抗膜11のエッジ部に裾引き部
22を形成することができ、すなわちのエッジが裾を引
いたように加工することができ、急峻な角度変化を緩和
することができる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持
膜2の上に、厚さ約1.0μmの窒化シリコン膜からな
る絶縁性の保護膜3がスパッタ法等により形成されてい
る。
【0041】さらに、平板状基材1の支持膜2が形成さ
れている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成され
た裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチング
ホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング
法等により平板状基材1の一部が除去されて凹部12が
形成され、これによりダイヤフラム14が形成されてい
る。
【0042】図6に示すように、イオンシャワーの入射
角を45〜65度に設定して感熱抵抗膜11をエッチン
グすることにより、感熱抵抗膜11を、そのエッジが裾
を引いたような形状に加工することができる。このよう
な構造にすることにより、感熱抵抗膜11のエッジ部の
急峻な角度変化が緩和され、その上に形成される保護膜
3のカバレッジが向上し、す等が発生しにくくなる。こ
のため、感熱抵抗膜11の抵抗値変化、腐食、クラック
等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性が向上す
る。また、製造プロセスを簡略化することができ、歩留
まりの向上やコストの低減が図られる。
【0043】しかしながら、イオンシャワーの入射角度
を65度以上に深くすると、エッチング速度が非常に遅
くなり実用的ではない。これと同時に、隣のパターンの
影響を受け、エッチング形状が変わるというパターン依
存性が顕著に現れる。このため、感熱抵抗膜11に裾を
引かせるには、イオンシャワーの入射角が45〜65度
であることが望ましい。
【0044】実施の形態7.図7は、この発明の実施の
形態7に係る流量検出素子の立面断面図である。図7に
おいて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハ
からなる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、
厚さ約1μmの窒化シリコン膜からなる絶縁性の支持膜
2がスパッタ法等により形成されている。さらに、支持
膜2の上に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感
熱抵抗膜11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されて
いる。感熱抵抗膜11は写真製版後、ドライエッチング
法等を用いてパターニングが行われ、これにより電流路
が形成されている。このドライエッチングにおいては、
アルゴンイオンによるイオンシャワーエッチング法が用
いられ、まずイオンシャワーの入射角をシリコンウエハ
の垂直面に対して30〜45度傾けてエッチングが行わ
れ、次に入射角度を0度(垂直)に戻してウエハ全面に
対して軽くエッチングが行われた。これにより、実施の
形態4の場合と同様に感熱抵抗膜11のテーパー角ない
しはエッジ角20を30〜45度にすることができ、か
つ感熱抵抗膜11の上側角部を面取りしてなる肩部23
を形成することができる。すなわち、感熱抵抗膜11の
上側角部を面取りを施したような形状に加工することが
できる。さらに、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上
に、厚さ約0.8μmの窒化シリコン膜からなる保護膜
3がスパッタ法等により形成されている。
【0045】さらに、平板状基材1の支持膜2が形成さ
れている方の表面とは反対側の表面(裏面)に形成され
た裏面保護膜16に、写真製版法等を用いてエッチング
ホール17が形成された後、例えばアルカリエッチング
等により、平板状基材1の一部が除去されて凹部12が
形成され、これによりダイヤフラム14が形成されてい
る。
【0046】図7に示すように、イオンシャワーの入射
角を前記のように設定して感熱抵抗膜11をエッチング
した後、イオンシャワーの入射角を0度に戻してウエハ
全面を軽くエッチングすることにより、感熱抵抗膜11
のエッジにテーパー角を持たせた上に、感熱抵抗膜11
の上側角部に面取りを施したような形状とすることがで
きる。このような構造にすることにより、感熱抵抗膜1
1のエッジ部及び肩部23での急峻な角度変化が緩和さ
れ、その上に形成される保護膜3のカバレッジが向上
し、す等が発生しにくくなる。このため、感熱抵抗膜1
1の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量
検出素子の精度や信頼性が向上する。なお、2回目のウ
エハ全面に対するエッチングについては、必ずしもドラ
イエッチングである必要はなく、ウエットエッチング等
の他のエッチング手法を用いても同様の効果が得られ
る。
【0047】実施の形態8.図8(a)〜(d)は、そ
れぞれ、この発明の実施の形態8に係る流量検出素子の
製造途上における立面断面図であり、該流量検出素子の
製造工程を順次示している。図8(a)〜(d)におい
て、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハから
なる平板状基材であり、この平板状基材1の上に、厚さ
約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパッタ
法等により形成されている。
【0048】そして、この流量検出素子の製造工程にお
いては、図8(a)に示すように、支持膜2の上に、写
真製版法、ウエットエッチング法あるいはドライエッチ
ング法等を用いてパターニングが行われ、これにより電
流路となる深さ約0.2μmの溝24が形成される。さ
らに、図8(b)に示すように、溝24が形成された支
持膜2の上に、全面的に、白金等よりなる感熱抵抗膜1
1が蒸着法やスパッタ法等により着膜される。この後、
図8(c)に示すように、化学機械研磨法(CMP法)
等により、感熱抵抗膜11の表面(白金膜表面)を平坦
化し、溝24に埋め込まれた感熱抵抗膜11(白金)の
みを残す。すなわち、感熱抵抗膜11の表面と支持膜2
の表面とを同一平面とする。さらに、図8(d)に示す
ように、感熱抵抗膜11ないし支持膜2の上に、厚さ約
1.0μmの窒化シリコン膜からなる保護膜3がスパッ
タ法等により形成される。なお、図示していないが、こ
の実施の形態8に係る流量検出素子においても、平板状
基材1の一部が除去され、ダイヤフラムが形成されてい
る。
【0049】かくして、図8(d)に示すように、流量
検出素子は、感熱抵抗膜11が支持膜2に埋め込まれた
構造となり、感熱抵抗膜11に起因する段差は生じな
い。このため、保護膜3のカバレッジが向上し、す等が
発生しなくなる。よって、感熱抵抗膜11の抵抗値変
化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検出素子の精
度や信頼性が向上する。
【0050】なお、この実施の形態8では、感熱抵抗膜
11及び支持膜2の平坦化にCMP法を用いているが、
平坦化手法はこれに限られるものではなく、レジストエ
ッチバック等のその他の平坦化手法によっても同様の平
坦化は可能である。
【0051】実施の形態9.図9(a)〜(c)は、そ
れぞれ、この発明の実施の形態9にかかる流量検出素子
の製造途上における立面断面図であり、該流量検出素子
の製造工程を順次示している。図9(a)〜(c)にお
いて、1は例えば厚さ約400μmのシリコンウエハか
らなる平板状基材であり、この平板状基材の上に、厚さ
約1μmの窒化シリコン膜からなる支持膜2がスパッタ
法等により形成されている。さらに、この支持膜2の上
に、例えば厚さ0.2μmの白金等よりなる感熱抵抗膜
11が蒸着法やスパッタ法等により着膜されている。こ
の感熱抵抗膜11は、写真製版法、ウエットエッチング
法あるいはドライエッチング法等を用いてパターニング
が行われ、これにより電流路が形成されている。
【0052】そして、この流量検出素子の製造工程にお
いては、図9(a)に示すように、感熱抵抗膜11ない
し支持膜2の上に、厚さ約0.5μmの絶縁性の酸化シ
リコン膜25(中間膜)がスパッタ法あるいは蒸着法等
により形成される。この後、図9(b)に示すように、
化学機械研磨(CMP法)等により感熱抵抗膜11の表
面(白金膜表面)が露出する(顔を出す)まで酸化シリ
コン膜25の表面を平坦化する。すなわち、感熱抵抗膜
11の表面と酸化シリコン膜25の表面とを同一平面と
する。さらに、図9(c)に示すように、感熱抵抗膜1
1ないし酸化シリコン膜25の上に、厚さ約1.0μm
の窒化シリコン膜からなる絶縁性の保護膜3がスパッタ
法等により形成される。なお、図示していないが、この
実施の形態9に係る流量検出素子においても、平板状基
材1の一部が除去され、ダイヤフラムが形成されてい
る。
【0053】かくして、図9(c)に示すように、流量
検出素子は、感熱抵抗膜11が酸化シリコン膜25に埋
め込まれかつ感熱抵抗膜11と酸化シリコン膜25とが
平坦化された構造となっているので、保護膜3のカバレ
ッジが向上し、す等が発生しない。このため、感熱抵抗
膜11の抵抗値変化、腐食、クラック等がなくなり、該
流量検出素子の精度や信頼性が向上する。
【0054】なお、この実施の形態9では、感熱抵抗膜
11及び酸化シリコン膜25の平坦化にCMP法を用い
ているが、平坦化手法はこれに限られるものではなくレ
ジストエッチバック等のその他の平坦化手法によっても
同様の平坦化は可能である。さらに、感熱抵抗膜11の
上に酸化シリコン膜25の一部残存していても、表面の
平坦性が確保できていれば、同様の効果を奏する。
【0055】実施の形態10.図10及び図11は、そ
れぞれ、上記の各実施の形態に係る流量検出素子を用い
た流量センサの1つの実施の形態を示す正面図及び側面
断面図である。図10及び図11において、31は流量
検出素子であり、32は検出管路であり、33は流体の
通路である主通路であり、34は格子状の整流器であ
り、35は制御回路が収められたケースであり、36は
該流量センサに電源を供給したり出力を取り出すための
コネクタである。なお、矢印10は、通常の状態におけ
る計測流体(空気)の流れの方向を示している。このよ
うに、この実施の形態10にかかる流量センサには実施
の形態1〜9に係る流量検出素子が組み込まれているの
で、各実施の形態に係る流量検出素子と同様の効果を奏
する。
【0056】
【発明の効果】この発明によれば、以下に示すような顕
著な効果を奏する。すなわち、この発明の第1の態様に
かかる流量検出素子によれば、発熱部(感熱抵抗膜)と
保護膜との間に、発熱部の段差を低減させる絶縁性薄膜
が設けられているので、保護膜のカバレッジを向上させ
ることができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、
クラック等がなくなり、流量検出素子の精度や信頼性を
向上させることができる。
【0057】この発明の第2の態様に係る流量検出素子
によれば、ケイ素及び酸素を主成分とする絶縁性薄膜に
よって発熱部(感熱抵抗膜)の段差が低減(解消)され
るので、保護膜のカバレッジを向上させることができ
る。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等が
なくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上させる
ことができる。
【0058】この発明の第3の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)の上に形成する絶縁性
薄膜の厚さを発熱部の厚さの1/2以上としているの
で、発熱部の段差を有効に低減することができ、ないし
は発熱部の急峻な勾配をなくすことができ、保護膜のカ
バレッジを一層向上させることができる。このため、発
熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量
検出素子の精度や信頼性を一層向上させることができ
る。さらに、流量検出素子を製造するプロセスが簡素な
ものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減を図る
ことができる。
【0059】この発明の第4の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)の側部のテーパー角が
45度以下とされているので、該発熱部の急峻な勾配を
なくすことができ、保護膜のカバレッジを向上させるこ
とができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラ
ック等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向
上させることができる。さらに、流量検出素子を製造す
るプロセスが簡素なものとなるので、歩留まりの向上や
コストの低減を図ることができる。
【0060】この発明の第5の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部の側部にテーパー角を持たせ、かつ支
持膜をオーバーエッチングして裾を引かせた構造として
いるので、発熱部の急峻な勾配をなくすことができ、保
護膜のカバレッジを向上させることができる。このた
め、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、
該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができ
る。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが
簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減
を図ることができる。
【0061】この発明の第6の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)の側部にテーパー角を
持たせ、かつ支持膜との界面部に裾を引かせた構造とし
ているので、発熱部の急峻な勾配をなくすことができ、
保護膜のカバレッジを向上させることができる。このた
め、発熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、
該流量検出素子の精度や信頼性を向上させることができ
る。さらに、かかる流量検出素子を製造するプロセスが
簡素なものとなるので、歩留まりの向上やコストの低減
を図ることができる。
【0062】この発明の第7の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)の側部にテーパー角を
持たせ、かつ発熱部の上側角部に面取りを施すことによ
って肩部を形成しているので、発熱部の急峻な勾配をな
くすことができ、保護膜のカバレッジを向上させること
ができる。このため、発熱部の抵抗変化、腐食、クラッ
ク等がなくなり、該流量検出素子の精度や信頼性を向上
させることができる。
【0063】この発明の第8の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)が支持膜に埋め込まれ
ているので、発熱部の段差をなくすことができ、保護膜
のカバレッジを向上させることができる。このため、発
熱部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量
検出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0064】この発明の第9の態様に係る流量検出素子
によれば、発熱部(感熱抵抗膜)が中間膜に埋め込ま
れ、かつ発熱部の表面と中間膜の表面とが平坦になって
いるので、発熱部の段差をなくすことができ、保護膜の
カバレッジを向上させることができる。このため、発熱
部の抵抗変化、腐食、クラック等がなくなり、該流量検
出素子の精度や信頼性を向上させることができる。
【0065】この発明の第10の態様に係る流量検出素
子によれば、基材がダイヤフラム構造とされているの
で、該基材の熱伝導度が良くなり、該流量検出素子の流
量検出精度ひいては信頼性が一層高められる。
【0066】この発明の第11の態様に係る流量センサ
によれば、第1〜第10の態様のいずれか1つに係る流
量検出素子を用いているので、これらの流量検出素子の
場合と同様の効果を奏する。
【0067】この発明の第12の態様に係る流量検出素
子の製造方法によれば、第8の態様にかかる流量検出素
子を極めて容易に製造することができ、その製造コスト
が低減される。
【0068】この発明の第13の態様に係る流量検出素
子の製造方法によれば、第9の態様にかかる流量検出素
子を極めて容易に製造することができ、その製造コスト
が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態3に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態4に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態5に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態6に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態7に係る感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図8】 (a)〜(d)は、それぞれ、この発明の実
施の形態8に係る感熱式流量検出素子の製造途上におけ
る立面断面図である。
【図9】 (a)〜(c)は、それぞれ、この発明の実
施の形態9に係る感熱式流量検出素子の製造途上におけ
る立面断面図である。
【図10】 この発明の実施の形態10に係る流量セン
サの正面図である。
【図11】 図10に示す流量センサの側面断面図であ
る。
【図12】 従来のブリッジタイプの感熱式流量検出素
子の立面断面図である。
【図13】 図12に示す従来の流量検出素子の保護膜
を取り除いた状態における平面図である。
【図14】 従来のダイヤフラムタイプの感熱式流量検
出素子の立面断面図である。
【図15】 図14に示す従来の流量検出素子の保護膜
を取り除いた状態における平面図である。
【図16】 従来の感熱式流量検出素子の立面断面図で
ある。
【符号の説明】
1 平板状基材、2 支持膜、3 保護膜、4 発熱抵
抗、5 測温抵抗、6 測温抵抗、7 比較抵抗、8
開口部、9 空気スペース、10 矢印、11 感熱抵
抗膜、12 凹部、13 ブリッジ、14 ダイヤフラ
ム、15 スパッタ膜中のす、16 裏面保護膜、17
エッチングホール、18 TEOS+H22酸化膜、
19 SOG塗布膜、20 感熱抵抗膜のテーパー角
(エッジ角)、21 支持膜の裾引き部、22 感熱抵
抗膜の裾引き部、23 感熱抵抗膜の肩部、24 支持
膜に形成された溝、25 酸化シリコン膜、31 流量
検出素子、32 検出管路、33 主通路、34 整流
器、35 ケース、36コネクタ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堤 和彦 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平板状の基材と、 前記基材の表面に配置された絶縁性の支持膜と、 前記支持膜の上に配置され該支持膜によって支持され
    た、感熱抵抗膜よりなる複数の発熱部と、 前記発熱部の上に配置され前記発熱部を保護する絶縁性
    の保護膜とを備えていて、 計測流体の流れの方向にみて上流側の発熱部と下流側の
    発熱部の加熱電流の差に相当する量に基づいて前記計測
    流体の流量を計測する感熱式の流量検出素子であって、 前記発熱部と前記保護膜との間に、該発熱部の段差を低
    減する絶縁性薄膜が設けられていることを特徴とする流
    量検出素子。
  2. 【請求項2】 前記絶縁性薄膜がケイ素及び酸素を主成
    分とすることを特徴とする請求項1に記載の流量検出素
    子。
  3. 【請求項3】 前記絶縁性薄膜の厚さが前記発熱部の厚
    さの1/2以上であることを特徴とする請求項1又は2
    に記載の流量検出素子。
  4. 【請求項4】 平板状の基材と、 前記基材の表面に配置された絶縁性の支持膜と、 前記支持膜の上に配置され該支持膜によって支持され
    た、感熱抵抗膜よりなる複数の発熱部と、 前記発熱部の上に配置され前記発熱部を保護する絶縁性
    の保護膜とを備えていて、 計測流体の流れの方向にみて上流側の発熱部と下流側の
    発熱部の加熱電流の差に相当する量に基づいて前記計測
    流体の流量を計測する感熱式の流量検出素子であって、 前記発熱部の側部が下方に広がるテーパ状に形成されて
    いて、該側部と発熱部底面とがなすテーパー角が45度
    以下であることを特徴とする流量検出素子。
  5. 【請求項5】 前記発熱部と前記支持膜の当接部の外側
    において前記支持膜に、該支持膜がオーバーエッチング
    されてなる裾引き部が形成されていることを特徴とする
    請求項4に記載の流量検出素子。
  6. 【請求項6】 前記発熱部の側部と前記支持膜との界面
    部近傍において、該側部に、外方に向かってテーパ角が
    徐々に小さくなる裾引き部が形成されていることを特徴
    とする請求項4又は5に記載の流量検出素子。
  7. 【請求項7】 前記支持膜の上側角部に、該角部が面取
    りされてなる肩部が形成されていることを特徴とする請
    求項4〜6のいずれか1つに記載の流量検出素子。
  8. 【請求項8】 平板状の基材と、 前記基材の表面に配置された絶縁性の支持膜と、 前記支持膜の上に配置され該支持膜によって支持され
    た、感熱抵抗膜よりなる複数の発熱部と、 前記発熱部の上に配置され前記発熱部を保護する絶縁性
    の保護膜とを備えていて、 計測流体の流れの方向にみて上流側の発熱部と下流側の
    発熱部の加熱電流の差に相当する量に基づいて前記計測
    流体の流量を計測する感熱式の流量検出素子であって、 前記発熱部が前記支持膜に埋め込まれていることを特徴
    とする流量検出素子。
  9. 【請求項9】 平板状の基材と、 前記基材の表面に配置された絶縁性の支持膜と、 前記支持膜の上に配置され該支持膜によって支持され
    た、感熱抵抗膜よりなる複数の発熱部と、 前記発熱部の上に配置され前記発熱部を保護する絶縁性
    の保護膜とを備えていて、 計測流体の流れの方向にみて上流側の発熱部と下流側の
    発熱部の加熱電流の差に相当する量に基づいて前記計測
    流体の流量を計測する感熱式の流量検出素子であって、 前記支持膜の上に前記発熱部を埋め込む絶縁性の中間膜
    が設けられ、該発熱部の表面と該中間膜の表面とが平坦
    になっていることを特徴とする流量検出素子。
  10. 【請求項10】 絶縁発熱部に対応する領域で前記基材
    が部分的に除去されてダイヤフラム構造をなすことを特
    徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の流量検出
    素子。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか1つに記載
    の流量検出素子を用いて計測流体の流量を検出するよう
    になっていることを特徴とする流量センサ。
  12. 【請求項12】 請求項8に記載された流量検出素子を
    製造するための方法であって、支持膜の表面に溝部を形
    成した後、該支持膜の上に感熱抵抗膜を形成し、 前記感熱抵抗膜を前記支持膜の表面の位置まで除去し
    て、前記溝部内にのみ前記感熱抵抗膜を残留させて、該
    溝部内の感熱抵抗膜を発熱部とし、 前記発熱部及び前記支持膜の上に保護膜を形成するよう
    にしたことを特徴とする流量検出素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項9に記載された流量検出素子を
    製造するための方法であって、支持膜の上に感熱抵抗膜
    からなる発熱部を形成し、 前記発熱部及び前記支持膜の上に絶縁性の中間膜を形成
    し、 前記中間膜を前記発熱部の表面の位置まで除去して、前
    記発熱部の表面と前記中間膜の表面とを平坦にし、 前記発熱部及び前記中間膜の上に保護膜を形成するよう
    にしたことを特徴とする流量検出素子の製造方法。
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