JP3597976B2 - 磁性薄膜およびこれを用いた磁気デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性薄膜およびこれを用いた磁気デバイスに関するものであり、さらに詳しくは、磁気記録ヘッド、磁気再生ヘッド、磁気インピ−ダンスセンサ−を始めとする磁気センサ−、磁気コイル、インダクタ−などの磁気回路部品、またはIH炊飯器、IHホットプレ−トなどの磁気誘導加熱部材として有用な軟磁性薄膜、およびこの軟磁性薄膜を用いた磁気ヘッド、磁気センサー、磁気回路部品、磁気誘導加熱部材などの磁気デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録密度の向上に伴う磁気記録ヘッドの書き込み能力の向上、あるいは磁気インピ−ダンスセンサ−の磁気インピ−ダンス変化率の向上、さらに磁気誘導加熱材の電磁−熱変換効率の向上など、軟磁性材料が用いられる磁気デバイス全般にわたり、優れた磁気特性と高飽和磁気密度を両立する磁性材料が要求されている。これらを満たす材料として近年、磁性元素を含む非晶質膜から、熱処理を施すことにより5〜20nm程度の粒状の磁性微結晶を析出させたFe−N系、Fe−C系材料などが開発されている(例えば、長谷川:日本応用磁気学会誌、14、319−322(1990)、NAGO IEEE,Trans,magn.,VOl.28,NO.5(1992))。これらの材料は、Co系アモルファス材と同様、磁性結晶粒のサイズを交換結合距離より充分小さくすることで、それぞれの微結晶粒が、隣接する他の微結晶粒と3次元的に強い交換相互作用を行い、その結果それぞれの結晶磁気異方性を相殺し、見かけの結晶磁気異方性を低下させることで軟磁気特性を実現していると考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら微結晶材料の内、析出または粒成長した微結晶粒子がほぼ磁性金属組成(例えばFe、FeCo)であるものについては、特に1.2T以上の高い飽和磁束密度を持つ材料において耐食性が課題となっている。そこで、例えばα−FeにAlなど不動態を形成する元素を固溶させることで耐食性の改善が試みられているが、不動態を形成するAlなどの耐食性元素は、基本的に、酸化物、窒化物生成自由エネルギ−が低いために、アモルファス化または微結晶化をするためなどに用いられる酸素、窒素、炭素、硼素などの軽元素と優先的に反応してしまい、耐食性元素がα−Fe微結晶に固溶した状態で残りにくい。さらにα−Feに耐食性を付与するに充分な量を添加した場合、飽和磁束密度が大きく低下してしまうという課題があった。
【0004】
一方、これらの磁性材料は例えば磁気ヘッドに用いる場合、磁気ヘッド作成に必要なガラスとの融着プロセスにおいて熱処理が施される。このときガラスの融点、基板とガラスおよび磁性膜の熱膨張係数、そして磁性材料の最適微結晶析出温度のマッチングが磁気ヘッドの特性を左右する。ヘッド化の熱処理温度としてはガラスの信頼性の観点から500℃以上が望ましく、磁性材料の最適熱処理温度もそれ以上であることが必要である。
【0005】
磁気ヘッドが例えばフェライト上に磁性薄膜を形成したメタルインギャップヘッド(MIGヘッド)である場合、熱処理温度が高過ぎればフェライトと磁性膜の界面反応が進行し、磁性膜/フェライト界面に生じる磁気劣化層が厚くなり、疑似ギャップノイズが大きくなる。磁気ヘッドが非磁性基板上に磁性薄膜と絶縁膜を積層形成したLAMヘッドなどの場合は、磁性膜とそれぞれの基板の熱膨張係数が異なるために、熱処理温度が高いほど、磁性膜と基板間の熱応力が大きくなり、逆磁歪効果による異方性エネルギ−増加のために膜の軟磁気特性が劣化する。このために、磁性材料の最適熱処理温度範囲は550℃以下程度であることが望ましい。
【0006】
しかしながら、前述のように耐食性元素を金属微結晶内に充分固溶した微結晶材料は、結晶構造を安定にし、磁歪定数を十分小さくするためなどには、600〜700℃近傍あるいはそれ以上の温度で熱処理しなければならないという課題があった。
【0007】
また、これら多くの微結晶磁性薄膜は、本質的に、単位体積当たりの磁性粒子間に存在する界面が多いために、熱処理時に界面エネルギ−をドライビィングフ−スとする磁性結晶粒の粒成長が著しく、良好な軟磁性を示す最適熱処理温度範囲が狭く、特性のばらつきや、使用温度範囲の限定が大きいという課題があった。
【0008】
他方、多くの薄膜材料に共通の課題として膜の内部応力による基板からの膜剥がれ、あるいは基板の微細な割れがある。例えば一般にスパッタリング法などで基板上に形成される膜の内部応力は、圧縮応力または引っ張り応力を持つ。基板と膜の付着強度が弱い時や基板材料の破壊強度が弱い時には、基板の形状、表面状態に依存して膜剥がれなどの問題が発生する。
【0009】
本発明は、軟磁性薄膜材料の高飽和磁束密度化に伴う熱安定性、耐食性など前述の諸問題に鑑み、結晶粒径構造およびサイズにおける諸条件、さらには元素組成を研究し、また最適構造を実現する下地層の条件、組成を研究することにより前記従来の課題を解決し、信頼性と軟磁気特性に優れた磁性薄膜およびこの薄膜を用いた磁気デバイスを提供することを目的とする。また、本発明は膜内部応力による基板からの剥がれ、基板の破壊の問題に鑑み、基板−磁性膜間の下地構造を研究することにより前記従来の課題を解決し、信頼性と軟磁気特性に優れた磁性薄膜および磁気デバイスを提供することも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するべく、本発明の磁性薄膜は、平均体積Vaと平均表面積Saとが下記関係式を満たす磁性結晶粒を母相とする磁性膜を含むことを特徴とする。
【0011】
Sa>4.84Va2/3 (1)
このような構成とすることにより、高い飽和磁束密度(例えば1.2T以上)を持ちながら優れた軟磁気特性を実現することができる。一つの磁性結晶粒は結晶学的にほぼ単結晶である。結晶内の異方性は主に結晶磁気異方性に支配され、また磁性膜内に存在する複数の隣接磁性結晶粒は、互いに交換結合を行っていると考えられる。このとき磁性結晶粒同士が互いに及ぼし合う交換力は、単位体積当たりに存在する磁性結晶粒が同数であれば、前記式(1)に示した範囲のように、磁性結晶粒の表面積が十分広いことで強くなり、軟磁気特性が向上する。
【0012】
前記磁性薄膜においては、磁性結晶粒が50nmを超える平均最大長を有することが好ましい。
【0013】
この好ましい例によれば、高い飽和磁束密度(例えば1.2T以上)を持ちながら優れた軟磁気特性と軟磁気特性の広い温度範囲での熱処理安定性が実現できる。一般に高飽和磁束密度の軟磁性材料が、ほぼ球状の磁性結晶粒(Sa<4.84Va2/3)の平均結晶粒径が20nm程度以下であるときに実現されているのに対して、磁性結晶粒の平均最大長が50nmを超える程度に大きくても、前記式(1)のように磁性結晶粒の表面積が十分に大きければ軟磁気特性が実現される。また、磁性結晶粒の平均最大長が上記範囲に示されるように十分に長ければ、平均結晶体積は、球状とみなせるような微細な結晶粒の磁性材料に比較すると、実質的に大きくなるために、磁性膜中の単位体積当たりの実質的な磁性結晶粒の全表面積または全界面の占める面積を減少させることができ、結果として、磁性体全体の熱処理時の粒成長のドライビングフォ−スが小さくなるから、熱処理安定性が向上する。
【0014】
また、前記磁性薄膜においては、磁性結晶粒が、略針状体、略柱状体またはこれらの組み合わせからなる多枝形状体からなり、この磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズが5nmよりも大きく60nmよりも小さいことが好ましい。
【0015】
この好ましい例によれば、高い飽和磁束密度(例えば1.2T以上)を持ちながら優れた軟磁気特性と軟磁気特性の広い温度範囲での熱処理安定性が実現し、さらに耐食性が向上する。
【0016】
広い温度範囲での熱安定性は、磁性薄膜の磁性結晶粒が、略柱状体、略針状体、または多枝形状結晶を構成する略針状部、略柱状部の長手方向の平均最大長(平均結晶サイズ)が50nm以上と従来の微結晶材料に比べて大きく、従って単位体積当たりの界面エネルギ−が小さいために粒成長しにくいことに起因する。また、一般には、柱状または針状の結晶構造を有することは、形状異方性による磁気特性の劣化が起こると認知されているが、本発明においては結晶粒体積あたりの表面積が大きいために結晶粒子同士が強い交換相互作用を行うことで形状磁気異方性を抑制し、軟磁気特性を向上させている。さらに耐食性の向上は、磁性結晶粒子のサイズおよび形状が前記範囲であれば、結晶粒子間の電気化学的ポテンシャルのばらつきに基づく各結晶粒子間での電位差が平均化され、局部電池効果による腐食の進行が抑制されることに起因する。なお、短手方向の平均結晶サイズが60nm以上である磁性薄膜では1.2T以上の高い飽和磁束密度の実現と軟磁気特性、耐食性の両立が困難となり、同サイズが5nm以下では広い温度範囲における良好な熱処理安定性を得られなくなる。
【0017】
本発明の磁性薄膜の別の構成は、略針状体または略柱状体の磁性結晶粒を母相とし、この磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズdSおよび長手方向の平均結晶サイズdLがそれぞれ下記関係式を満たす磁性膜を含むことを特徴とする。
【0018】
5nm<dS<60nm (2)
dL>100nm (3)
本発明の磁性薄膜のさらに別の構成は、略針状体または略柱状体が組み合わせからなる多枝形状結晶を含む磁性結晶粒を母相とし、前記略針状体または前記略柱状体の短手方向の平均結晶サイズdsおよび前記多枝形状結晶の平均最大長dlがそれぞれ下記関係式を満たす磁性膜を含むことを特徴とする。
【0019】
5nm<ds<60nm (4)
dl>50nm (5)
このような構成とすることにより、高い飽和磁束密度(例えば1.2T以上)を持ちながら優れた軟磁気特性と軟磁気特性の広い温度範囲での熱処理安定性が実現し、さらに耐食性が向上する。広い温度範囲での熱安定性は磁性薄膜の磁性結晶粒が、略柱状、略針状または多枝形状であって、平均粒径が従来の微結晶材料に比べて大きく、従って単位体積当たりの界面エネルギ−が小さいために粒成長しにくいことによる。また結晶粒子同士が強い交換相互作用を行うことで形状磁気異方性を抑制し、かつ互いの短手方向の結晶磁気異方性を相殺することで軟磁気特性を生み出している。さらに耐食性の向上は、磁性結晶粒子のサイズおよび形状が前記式(2)および(3)の範囲であれば(または前記式(4)および(3)の範囲であれば)、結晶粒子間の電気化学的ポテンシャルのばらつきに基づく各結晶粒子間での電位差が平均化され、局部電池効果による腐食の進行が抑制されることに起因する。なお、dS(またはds)が60nm以上では1.2T以上の高い飽和磁束密度の実現と軟磁気特性、耐食性の両立が困難となり、dS(またはds)が5nm以下では広い温度範囲での熱処理安定性が悪くなる。同様にdLが100nm以下(またはdlが50nm以下)となると熱安定性が悪くなる。
【0020】
また、前記磁性薄膜においては、互いに隣接する磁性結晶粒の結晶方位が、少なくとも面内方向で異なることが好ましい。この好ましい例によれば、磁気異方性の相殺率が向上し、隣接する針状、柱状または多枝形状の結晶磁気異方性を見掛け上小さくすることで軟磁気特性を向上させることができる。
【0021】
また、前記磁性薄膜においては、C、B、OおよびNから選ばれる少なくとも1種の軽元素と、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素とを含むことが好ましい。
【0022】
例えば磁性膜をスパッタリング法により作製する場合、主にC、B、O、Nの元素が金属磁性元素中に固溶すること、Feより酸化物、窒化物生成自由エネルギ−が低い元素と反応することなどにより、基板上での初期成長過程で生じる島状結晶構造の結合や成膜途中における粒同士の結合を制御し、結晶粒を好ましい針状、柱状あるいは多枝形状など結晶粒体積当たり表面積が大きい形状とした膜構造を実現することができる。特に上記添加元素は複数組み合わせることで、様々な生成自由エネルギ−の反応生成物およびその中間反応物が生成されるため、全体としてわずかな添加物で前記膜構造を実現でき、結果として磁性金属の高飽和磁束密度が維持される。
【0023】
また、前記磁性薄膜においては、磁性結晶粒内に、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素を含むことが好ましい。
【0024】
従来の非晶質から析出させる微結晶材料では、熱処理過程により該元素の多くが粒界に析出してしまうのに対し、この好ましい例によれば、該元素が磁性金属結晶粒内に固溶した状態で成膜されるために、わずかな添加量でも磁性結晶粒表面に酸化保護膜を形成するに充分な固溶量を保つことができる。さらに該元素は基板上での初期粒形状を制御し、結果的には本発明の好ましい結晶粒形状およびサイズを持つ磁性膜を形成する働きを有する。
【0025】
また、前記磁性薄膜においては、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素が、IVa族元素、Va族元素、Al、Ga、Si、GeおよびCrから選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【0026】
これらの元素は少量の添加量で本発明の好ましい膜構造を実現でき、同時に高い耐食性と優れた磁気特性を両立できる。これは、これらの元素の磁性金属結晶内での拡散速度が比較的速いことに関係していると考えられる。
【0027】
また、前記磁性薄膜においては、前記磁性結晶粒の粒界に、炭化物、硼化物、酸化物、窒化物および金属から選ばれる少なくとも1種からなる微結晶またはアモルファスである粒界化合物が含まれることが好ましい。
【0028】
この好ましい例によれば、磁性結晶粒の粒形状が前記粒界化合物により制御され、本発明の好ましい結晶粒構造が実現できるとともに磁気特性の熱処理安定性が向上する。
【0029】
また、前記粒界化合物の平均最短長をTとすると、この粒界化合物の少なくとも30%の前記平均最短長Tが下記関係式を満たすことが好ましい。
0.1nm≦T≦3nm (6)
粒界化合物の平均最短長Tが0.1nmより小さければ、充分な粒成長抑制効果が期待できず、また3nmより大きければ、磁性結晶粒同士の交換結合を妨げ、飽和磁束密度を低下させるおそれがある。特に粒界化合物の少なくとも30%の平均最短長Tが0.1nm≦T≦3nmであるときに軟磁気特性と耐熱処理安定性が両立できることが確認された。
【0030】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を形成する少なくとも1層が、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素を含有することが好ましい。
【0031】
この好ましい例によれば、磁性膜と下地膜の拡散反応が抑制され、前述の好ましい結晶粒構造の初期形成膜近傍の熱安定が実現できる。例えば、該元素が固溶状態にあれば、磁性膜または下地膜などから拡散する酸素、窒素、炭素などの活性元素と反応し、さらに形成した反応生成物層が拡散防止障壁となる。また該元素が安定した化合物として存在する場合には、該化合物が完全な層を形成していなくとも、拡散する活性元素は、該化合物により拡散パスを狭められるとともに、拡散パス近傍で反応生成物を形成し、結果として拡散反応を抑制する。
【0032】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、Feよりも表面自由エネルギ−が低い物質からなることが好ましい。
【0033】
例えばスパッタリング法で本発明の磁性膜を形成する場合、特に磁性膜の初期形成粒の粒成長が抑制され、前述の好ましい結晶粒構造が基板近傍から実現できる。逆に表面自由エネルギ−がFeよりも大きければ、界面近傍の結晶が太くなりすぎ、基板近傍で磁気劣化層ができ、例えばフェライト上に磁性膜を形成するMIGヘッドの場合、このような磁気劣化層は、疑似ギャップ、あるいはヘッド再生感度の劣化の原因となる。また例えばLAMヘッドのように磁性膜が数十nmから数μmの比較的薄い間隔で絶縁層で分断される場合、過度に成長した初期形成粒の結晶性の影響が膜全体に残ることになる。また前記下地膜は界面に蓄積される自由エネルギ−を制御できるために、膜と下地、基板間の内部応力を小さくでき、逆磁歪効果による磁気劣化を抑制することもできる。下地層中、磁性膜以下の表面自由エネルギ−を持つ物質で形成された層の望ましい厚さは、0.1nm以上である。
【0034】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、Al、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物であることが好ましい。
【0035】
この好ましい例によれば、磁性膜と下地膜の反応が抑制され、磁性膜の初期形成粒の粒形状を制御できるため初期形成膜近傍から磁性膜の好ましい結晶粒構造が実現できるとともに内部応力の制御が可能になる。
【0036】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、C、Al、Si、Ag、Cu、Cr、Mg、Au、GaおよびZnから選ばれる少なくとも1つの物質からなることが好ましい。
【0037】
この好ましい例によれば、磁性膜の初期形成粒の粒形状を制御できるため初期形成膜近傍から本発明の磁性膜の好ましい結晶粒構造が実現できる。
【0038】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層BがAl、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1つの物質からなり、前記下地層Aが前記下地層Bを構成する物質の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなることが好ましい。
【0039】
この好ましい例によれば、磁性膜と下地層または基板との反応が抑制され、かつ磁性膜の初期形成粒の粒形状を制御できるため初期形成膜近傍から本発明の磁性膜の好ましい結晶粒構造が実現と内部応力の制御が可能になる。
【0040】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層AがAl、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1つの物質からなり、前記下地層Bが前記下地層Aを構成する物質の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなることが好ましい。
【0041】
この好ましい例によれば、磁性膜と下地層または基板との反応が抑制され、かつ磁性膜の初期形成粒の粒形状を制御できるため初期形成膜近傍から本発明の磁性膜の好ましい結晶粒構造が実現できる。
【0042】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層Aが、前記磁性膜に含まれる主構成元素から選ばれる少なくとも1つの元素と、酸素および窒素から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、かつ前記磁性膜よりも酸素または窒素を多く含み、前記下地層Bが、炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなることが好ましい。
【0043】
この好ましい例によれば、磁性膜と下地層または基板の反応が抑制され、かつ磁性膜の初期形成粒の粒形状を制御できるため、初期形成膜近傍から磁性膜の好ましい結晶粒構造が実現できる。
【0044】
ここで、主構成元素とは、磁性膜を構成する元素であって分析可能な程度に含まれている元素をいい、具体的には、磁性膜に少なくとも0.5原子%含まれている元素をいう。
【0045】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された主磁性層としての磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層Aが副磁性層と分断層とが少なくとも1層ずつ交互に積層されてなり、前記下地層Bが酸化物、窒化物、炭化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなることが好ましい。
【0046】
この好ましい例によれば、初期形成膜が分断層で微細化されるために初期形成粒の成長が抑制され、その上部において形成される磁性膜が本発明の好ましい結晶粒構造を実現しやすい。さらに下地層Bが、磁性膜と基板または下地膜との反応を抑制する。ここで分断層とは、磁性膜や副磁性層と組成を異にする金属、合金、炭化物、酸化物、窒化物、硼化物などからなる層であればよい。
【0047】
この場合、分断層が、磁性膜と少なくとも1種の元素を共有し、磁性膜よりも酸素または窒素を多く含有していることが好ましい。この好ましい例によれば、同一成分を共有しているために界面拡散が抑制され磁気特性の耐熱処理性が高くなる。
【0048】
また、副磁性層と分断層とは、それぞれの厚さ(副磁性層の厚さtM、分断層の厚さtS)が下記関係式を満たすことが好ましい。
0.5nm≦tM≦100nm (7)
0.05nm≦tS≦10nm (8)
この好ましい例によれば、効果的に初期粒成長を抑制できるため、その上部に形成される磁性膜が前述の好ましい結晶粒構造を実現しやすい。
【0049】
なお、副磁性層と分断層の積層された厚さの合計は300nm以下とすることが好ましい。tMの厚さが0.5nmより小さいか、100nmより大きくすると積層された下地の磁気特性が劣化する。tMの厚さを30nm以下とすると、初期形成膜近傍の内部応力が減少し、基板−磁性薄膜間の応力緩和が実現できる。一方、分断層は0.05nmより小さいと効果が得難くなり、10nmよりも大きくすると、積層下地上の主磁性膜との磁気結合が弱くなり好ましくない。
【0050】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜のうち、少なくとも基板と接する層が、アモルファス磁性体または平均粒径dが下記関係式を満たす磁性結晶粒を母相とする微細磁性層であることが好ましい。
【0051】
d≦20nm (9)
一般に、スパッタリング法などで形成された薄膜材料は、成膜直後に内部応力が存在し、内部応力の値、基板と膜との付着強度、膜の厚さ、基板の破壊強度などに応じて、膜剥がれ、基板の破壊が発生する。この最大の原因は膜の内部応力であるが、実際に性能の高い機能性膜の成膜条件は、成膜直後の内部応力が最低である場合とは限らない。発明者は、内部応力を持ちながらも、膜剥がれ、基板の破壊の少ない条件を調べるために様々な検討を重ねた結果、以下のようなメカニズムを想定し、それを実証することで前記構成に至った。
【0052】
すなわち、膜形成に用いられる基板の表面荒さは、数nmから数百nm程度(例えば3nm〜800nm)であるが、実際に基板表面にはさらに原子オ−ダ−の鋭利な先端形状を有する研磨痕などが残存している。一般に、スパッタリング法を用いて基板上に膜を形成した場合、その初期形成過程では基板上に島状構造が発生し、この島状結晶の隙間にこの種の溝が残存しやすい。膜剥がれの一つの要因として、このような溝部分による基板表面と膜との界面に生じる隙間の存在が挙げられる。膜が内部応力を有する場合には、残存した溝にこの内部応力が集中することになり、鋭利な先端形状の溝からの基板割れが生じやすくなる。従って、一つの解決策として、基板表面の溝をなくすことが考えられる。またもう一つの解決策として、鋭利な先端溝を埋め込むことが考えられる。
【0053】
以上のことから、アモルファス磁性体を母相とするか、あるいは平均結晶粒を20nm以下に微細化した微細化下地層を薄膜の下地として形成することで膜剥がれや、基板割れが抑制できる。前記平均粒径が20nmより大きければこの効果は徐々に失われていく。
【0054】
前述のように薄膜材料の共通課題として、膜剥がれ、基板破壊があるが、磁性材料においては、成膜後に膜を成膜温度よりも数百度程度高い温度で熱処理し、さらに熱処理した状態で基板と膜の熱応力を含む内部応力がゼロ近辺にする必要がある。熱処理により膜内部に応力緩和が起こるために、成膜直後と熱処理後における膜内部応力には著しい差が生じる。従って、薄膜材料の中でも特に磁性薄膜においては、わずかに数μmの膜厚でも膜剥がれや、基板割れが起こりやすく、本発明の範囲の微細化層を設ける意義、効果は大きい。
【0055】
また、特にMIGヘッドなどではフェライトと磁性膜間に設けられる微細化層が非磁性であれば疑似ギャップの原因となるために、磁性材料による微細磁性層であることが好ましい。
【0056】
前記磁性薄膜においては、微細磁性層の厚さtrと、磁性膜の厚さtfとが下記関係式を満たすことが好ましい。
10nm<tr<tf/3 (10)
微細磁性層の厚さが10nm以下では基板割れ抑制の効果が得難くなる。これは基板表面の凹凸を充分埋めることができないためであると考えられる。また微細磁性層の厚さが磁性膜の厚さの1/3程度以上でないと主磁性膜の特性を充分に活かすことが困難となる。なお、微細磁性層trの最大厚さは、好ましくは300nm程度であり、この程度の厚さがあれば割れ抑制効果と磁気特性の両立が実現しやすい。
【0057】
また、前記磁性薄膜においては、前記微細磁性層と前記磁性膜とが少なくとも1種の共通元素を有することが好ましい。
【0058】
この好ましい例によれば、微細磁性層と磁性膜が共通元素を持つことにより、互いの層の電気化学ポテンシャルが近くなり、異種層間での局部電池効果による腐食が抑制され、また微細磁性層と磁性膜が連続して形成される場合は各層の適度な相互拡散により、異種層間での剥がれが抑制される。
【0059】
前記共通元素は、微細磁性層または磁性膜に含まれる元素中、酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が最も低い元素を含むことが好ましい。
【0060】
この好ましい例によれば、微細磁性層、磁性層間での腐食の進行がさらに抑制される。また、微細磁性層と磁性膜とが連続して形成されるさらに好ましい例によれば、各層の過度な相互拡散による磁気的劣化層形成の抑制ができる。
【0061】
また、前記共通元素は、酸素、窒素、炭素および硼素から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。これらの元素の添加により、前述の好ましいしい磁性膜の結晶粒および微細磁性層の構造を容易に実現できる。
【0062】
また、前記微細磁性層は、IIIa族、IVa族、Va族から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。IIIa族、IVa族、Va族元素は、酸化物、窒化物生成自由エネルギ−がFeより低く耐食性に優れている。また添加量を制御することでCo、Feを微細化し易く、前記微細磁性層を形成しやすい。
【0063】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記磁性膜中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C1(原子量%)、前記下地層A中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C2(原子量%)、前記下地層B中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C3(原子量%)が下記関係式を満たすことが好ましい。
【0064】
0≦C1≦C3<C2 (11)
この好ましい例によれば、下地層Aまたは下地層Bは少なくとも一方が微細磁性層として働き、特に基板側の下地層Bが主にその役割を持つ。磁性膜と接する下地層Aは、酸素、窒素、炭素、硼素から選ばれた少なくとも1つの元素の含有量が多くより微細な組織を持つために、単に微細磁性層としての役割だけでなく磁性膜の初期形成粒の粒成長抑制効果を持ち、磁性薄膜全体の磁気特性を向上させる。
【0065】
また、前記磁性薄膜においては、少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記磁性膜中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C1(原子量%)、前記下地層A中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C2(原子量%)、前記下地層B中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C3(原子量%)が下記関係式を満たすことが好ましい。
【0066】
0≦C1≦C2≦C3 (12)
この好ましい例によれば、下地層Aまたは下地層Bは少なくとも一方が微細磁性層として働き、特に基板側の下地層Bが主にその役割を持つ。磁性膜と接する下地層Aは、過度に粒成長しやすい磁性膜の初期形成粒を、磁性膜より酸素、窒素、炭素、硼素から選ばれる少なくとも1つの元素の含有量を多くすることで抑制することができ、磁性薄膜全体の磁気特性を向上させる。
【0067】
前記式(12)において、元素群濃度C1とC3とが相違する場合には、層界面における濃度差を緩和するように、元素群濃度C2が膜厚方向においてほぼ連続的に変化していることが好ましい。
【0068】
この好ましい例によれば、下地層A内で、酸素、窒素、炭素および硼素から選ばれる少なくとも1つの元素の含有量が連続的に変調されることで、互いの層の過度な相互拡散による磁気劣化層の形成を抑制することができる。また結晶粒の形状、サイズが連続的に変化するために下地層Bから磁性膜への磁気的連続性が向上し、軟磁気特性が向上する。
【0069】
また、前記微細磁性層を含む前記磁性薄膜は、凹凸を有する基板上に形成したものであることが好ましい。
【0070】
例えば、MIGヘッドの作製プロセスの一つとして、基板平行方向に数〜数百μm(例えば5μm〜500μm)の間隔で、また基板垂直方向に数μm〜数mm(例えば1μm〜3mm)の凹凸形状を持つ基板上に膜形成をする場合がある。この場合、基板単位体積当たりに対する膜付着面積が増加するために、基板表面近傍にかかる全膜応力が増加することになり、必然的に、膜剥がれや、基板割れの確率が増加する。従って、基板の形状が凹凸を持つ場合、微細化下地層を形成することで膜剥がれ、基板割れが抑制できる。
【0071】
また、前記磁性薄膜は、高抵抗基板または高抵抗材料上に、下地膜または磁性膜が形成されたものであることが好ましい。
【0072】
基板または材料の抵抗値が数十μΩcm程度以下であれば、磁性膜、下地層、または磁性薄膜との間で局部電池が構成され腐食が起こりやすくなる。本発明の下地層または磁性膜を形成する好ましい基板または材料の抵抗値は数百μΩcm以上(例えば200μΩcm以上)である。
【0073】
また、前記磁性薄膜が、バリア層を形成した基板上に形成された磁性薄膜であって、前記バリア層が、Al、Si、CrおよびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物または窒化物からなり、下記関係式を満たす厚さduを有することが好ましい。
【0074】
0.5nm<du<10nm (13)
基板上に高抵抗材料であるAl、Si、CrおよびZrから選ばれる少なくとも1種以上の酸化物または窒化物を形成することで、基板の抵抗値が低くても、基板と、下地膜または磁性膜間での局部電池効果による腐食が抑制され、また熱処理時には基板と下地膜または磁性膜間の拡散反応が抑制できる効果がある。バリア膜の厚さは、0.5nmより厚ければ前記効果を得ることができるが、10nm以上となると、例えばMIGヘッドを形成した場合、疑似ギャップの原因となるために好ましくない。
【0075】
また、本発明の磁性薄膜の別の構成は、(MaX1 bZ1 c)100−dAdにより示される組成を有する磁性膜を含むことを特徴とする。
【0076】
ただし、MはFe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の磁性金属元素であり、X1はSi、Al、GaおよびGeから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Z1はIVa族、Va族およびCrから選ばれる少なくとも1種の元素であり、AはOおよびNの少なくとも1種の元素であり、a、b、cおよびdは、以下の関係式を満たす数値である。
【0077】
0.1≦b≦26
0.1≦c≦5
a+b+c=100
1≦d≦10
【0078】
Mは好ましくはFeを主成分とする。X1は主として結晶内に一部固溶し耐食性を向上させ、また結晶内での拡散過程さらにはAとの反応過程で、結晶粒の粒形状を制御する効果がある。X1の添加量が26原子%を超えると飽和磁束密度が低下しすぎ、また0.1原子%より少ない添加量では効果がない。また、Z1は磁歪を正にする働きを持つとともに添加元素X1と同様、耐食性、粒形状の制御に効果がある。Z1の添加量は0.1原子%以上から効果が現れるものの5原子%を超えると、飽和磁束密度の低下ばかりでなく、例えばスパッタリング法で膜を形成した場合、成膜直後に非晶質化がすすみ、好ましい結晶粒構造の形成が困難になる場合がある。元素X1および元素Z1は、耐食性、粒形状制御においては基本的には同様の働きを有することになるが、拡散速度、酸化物または窒化物生成自由エネルギ−、反応生成物の臨界核サイズがそれぞれ異なるために、例えば本発明の磁性薄膜をスパッタリング法で形成する場合、成膜直後から熱処理において複数の中間反応を持つ反応過程が生じる。このために単一反応過程を持つ磁性薄膜にくらべ添加物量そのものが少なくても熱処理安定性が高くなる。また、Aは1原子%以上から10原子%の範囲では本発明の好ましい結晶粒構造を形成するが10原子%を超えると成膜直後の非晶質化の促進、あるいは結晶粒内に固溶している好ましいX1、Z1元素量との反応による耐食性、磁気特性の劣化、さらには結晶粒内へのA元素の固溶量増大による軟磁気特性の劣化を招く。この磁性膜は、前述の下地層、バリア層または基板と適宜組み合わせて磁性薄膜とすることが好ましい。
【0079】
また、本発明の磁性薄膜の別の構成は、(MaX2 bZ2 c)100−dAdにより示される組成を有する磁性膜を含むことを特徴とする。
【0080】
ただし、MはFe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の磁性金属元素であり、X2はSiおよびGeから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Z2はIVa族、Va族、Al、GaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の元素であり、AはOおよびNの少なくとも1種の元素であり、a、b、cおよびdは、以下の関係式を満たす数値である。
【0081】
0.1≦b≦23
0.1≦c≦8
a+b+c=100
1≦d≦10
【0082】
Mは好ましくはFeを主成分とする。X2は主として結晶内に一部固溶し磁歪定数を正または負に調整する働きをするとともに、磁性結晶の結晶磁気異方性を小さくするばかりでなく耐食性を向上させ、また結晶内での拡散過程さらにはAとの反応過程で、結晶粒の粒形状を制御する効果がある。X2の添加量が23原子%を超えると飽和磁束密度が低下しすぎ、また0.1原子%より少ない添加量では効果がない。またZ2は磁歪を正にする働きを持つとともに添加元素X2と同様、耐食性、粒形状の制御に効果がある。Z2の添加量は0.1原子%以上から効果が現れるものの8原子%を超えると、飽和磁束密度の低下ばかりでなく、例えばスパッタリング法で膜を形成した場合、成膜直後に非晶質化がすすみ、好ましい結晶粒構造の形成が困難になる場合がある。元素X2および元素Z2は、耐食性、粒形状制御においては基本的には同様の働きを有することになるが、拡散速度、酸化物または窒化物生成自由エネルギ−、反応生成物の臨界核サイズがそれぞれ異なるために、例えば本発明の磁性薄膜をスパッタリング法で形成する場合、成膜直後から熱処理において複数の中間反応を持つ反応過程が生じる。このために単一反応過程を持つ磁性薄膜にくらべ添加物量そのものが少なくても熱処理安定性が高くなる。さらにAは、1原子%以上から10原子%の範囲では好ましい結晶粒構造を形成するが10原子%を超えると成膜直後の非晶質化の促進、あるいは結晶粒内に固溶している好ましいX2、Z2元素量との反応による耐食性、磁気特性の劣化、さらには結晶粒内へのA元素の固溶量増大による軟磁気特性の劣化を招く。この磁性膜は、前述の下地層、バリア層または基板と適宜組み合わせて磁性薄膜とすることが好ましい。
【0083】
本発明の磁性薄膜の別の構成は、(FeaSibAlcTd)100−eNeにより示される組成を有する磁性膜を含むことを特徴とする。
【0084】
ただし、Tは、TiおよびTaから選ばれる少なくとも1種の元素であり、a、b、c、dおよびeは、以下の関係式を満たす数値である。
【0085】
10≦b≦23
0.1≦d≦5
0.1≦c+d≦8
a+b+c+d=100
1≦e≦10
【0086】
ここで、柱状、針状、多枝形状などの、体積当たりの表面積が大きい形状を持つ磁性結晶粒は、主にFeSiで形成され、また粒界にはAl−N、Ta(Ti)−N、Si−Nなどの窒化物生成自由エネルギ−が小さい反応生成物が形成されていると考えられる。
【0087】
SiはFeに固溶し規則化した場合、b2またはDo3構造をとることで結晶磁気異方性を低下させる効果があることが知られているが、特に本発明の場合、X線による構造解析の結果それらの回折線は確認されていない。しかしながら、他の元素を固定してSi量を上記の範囲で変化させた場合、磁歪が正から負へ変化することが確認されている。従って、本発明の磁性結晶粒を主として形成しているFeSi合金は規則度が低いもののやや結晶磁気異方性を下げていると推定される。上記のSi含有量の範囲ではT(Ta、Ti)は0.1原子%より少ないと耐食性、磁気特性改善の効果はあるが熱安定性改善の効果が弱い。また5原子%より多いと飽和磁束密度が減少する。またAl、Tの合計が8原子%を超えると飽和磁束密度の低下とともに磁歪定数が大きくなるために好ましくない。この磁性膜は、前述の下地層、バリア層または基板と適宜組み合わせることで磁性薄膜とすることが好ましい。
【0088】
また、本発明の磁性薄膜の別の構成は、(FeaSibAlcTid)100−e−fNeOfにより示される組成を有する磁性膜を含むことを特徴とする。
【0089】
10≦b≦23
0.1≦d≦5
0.1≦c+d≦8
a+b+c+d=100
1≦e+f≦10
0.1≦f≦5
【0090】
ここで柱状、針状、多枝形状などの、体積当たりの表面積が大きい形状を持つ磁性結晶粒は、主にFeSiで形成され、また粒界にはAl−N、Al−O、Ti−N、Ti−O、SiN、Si−Oなどの窒化物生成自由エネルギ−が小さい反応生成物が形成されていると考えられる。上記のSi含有量の範囲ではTiは0.1原子%より少ないと耐食性、磁気特性改善の効果はあるが熱安定性改善の効果が弱い。また5原子%より多いと飽和磁束密度が減少する。またAl、Tiの合計が8原子%を超えると飽和磁束密度の低下とともに磁歪定数が大きくなるために好ましくない。Nは単独でも効果がある元素であるが、特にOと複合添加することで、さらに磁気特性が向上する。これは反応生成物の増加による効果であると考えられる。また、Oは添加量が0.1原子%以下ではその効果が明瞭でなく、また5原子%より多く添加すると飽和磁束密度の劣化、磁歪定数の増加などが起こる。この磁性膜は、前述の下地層、バリア層または基板と適宜組み合わせて磁性薄膜とすることが好ましい。
【0091】
前記磁性薄膜は、高飽和磁束密度と高い透磁率を有し、さらに耐熱処理安定性、耐食性に優れており、各種の磁気デバイスに適用することができる。特に、高保持力媒体への記録能力と、高再生感度、さらに耐環境性が要求される磁気ヘッドに用いることが好ましい。
【0092】
【発明の実施の形態】
本発明の構造、組成を有する磁性薄膜は、低ガス圧雰囲気で形成することができ、例えば高周波マグネトロンスパッタリング、直流スパッタリング、対向タ−ゲットスパッタリング、イオンビ−ムスパッタリング、ECRスパッタリングなどに代表されるスパッタリング法で成膜することができる。具体的には、本発明の磁性膜の組成からの組成ずれを考慮して組成決定した合金タ−ゲットを不活性ガス中でスパッタし基板上に成膜する、金属タ−ゲット上に添加元素ペレットを配置して同時にスパッタし成膜する、あるいは添加物の一部をガス状態で装置内に導入し反応性スパッタを行い成膜することなどにより、実施すればよい。この際、放電ガス圧、放電電力、基板の温度、基板のバイアス状態、タ−ゲット上および基板近傍の磁場値、タ−ゲット形状、基板への粒子の入射方向などを変化させることで、磁性膜の構造、熱膨張係数、基板とタ−ゲット位置による膜特性などが制御できる。
【0093】
また、熱蒸着、イオンプレーティング、クラスターイオンビーム蒸着、反応性蒸着、EB蒸着、MBEなどに代表される蒸着法や超急冷法により磁性薄膜を成膜することも可能である。
【0094】
用いる基板としては、例えば本発明の磁性膜をMIGヘッドに加工する場合には、フェライト基板を用い、LAMヘッドに加工する場合には、非磁性絶縁基板を用いることが好ましい。それぞれの基板は、必要に応じあらかじめ基板と磁性膜の反応防止、結晶状態制御などの目的で下地層やバリア膜を形成してもよい。
【0095】
磁性薄膜を磁気ヘッドとして用いる場合には、それぞれの形状の磁気ヘッドプロセスに必要なヘッド加工プロセスを行うが、磁性膜の磁気特性は、ヘッド加工プロセスの熱処理条件を経た状態で測定することになる。成膜プロセスを制御することで下記実施例中の組成の磁性膜は成膜直後でもすべて軟磁気特性を示し、本発明の磁性薄膜は、薄膜ヘッドなど低温形成プロセスで用いる場合でも使用することができる。
【0096】
以下の実施例および参考例中、膜構造はX線回折(XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)、高分解能走査型電子顕微鏡(HR−SEM)により、分析した。実施例および参考例中で述べる磁性結晶粒とは、主にTEMの明視野像と暗視野像の比較により、結晶学的にほぼ同一の結晶方位を持つと考え得る連続した結晶領域を指す。組成分析はEPMA、RBS(ラザフォ−ド後方散乱分析)により、特に微小領域の組成はTEM付随のEDSにより、また、抗磁力はBHル−プトレ−サ−、飽和磁束密度はVSMにより、さらに、耐食性はJIS C0024の環境試験法塩水噴霧試験法に準じ、または純水中にサンプルを浸積することによりそれぞれ評価した。以下に本発明の実施例および参考例の詳細を記す。
【0097】
(参考例1)
参考例1は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、放電ガス圧や基板温度などのスパッタ条件、添加元素、反応ガス流量比を変え、組成および結晶形状などの膜構造を調べた結果である。結果を(表1)〜(表3)にまとめて示す。膜断面は、図2に示すTEM断面略図のように、略針状または略柱状とみなせる磁性結晶粒がほぼ基板面に対して垂直に成長した構造を有していた。
【0098】
結晶形状は、結晶粒長手方向の平均サイズdL、短手方向の平均サイズdSにより評価した。なお、長手方向のサイズは、膜の粒成長方向に平行な破断面のSEM観察、あるいは研磨面をイオンミリングした後、TEM観察を行うことで見積もった。ただし、粒成長方向に完全に平行な膜断面を観察することが困難であるため、実際のdLは、厳密には表中の値より長い可能性があるが、ここでは、ほぼ平行な膜断面の観察により得られた値を平均サイズdLとする。また、短手方向のサイズdSは、前述と同様、完全に平行な膜断面を観察することが困難であること、および結晶粒の形状を考慮して、断面観察されるエリアにおいて、最も太い幅を持つ結晶粒群についての平均値を採用した。なお、以下のサンプルの膜厚は3μmであり、磁気特性は520℃真空中での熱処理後の値である。
【0099】
参考例1の成膜条件を以下に示す。
・参考例aa〜az、ba〜bz条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2〜4%
酸素流量比:0.5〜2%
放電電力:400W
また上記参考例条件から下記の条件を変更することで比較例実験を行った。
・比較例ca〜cc条件
基板温度:室温→300℃に変更
・比較例cd〜bf条件
放電ガス圧:1〜4mTorr→8〜12mTorrに変更
・比較例cg〜ch条件
窒素流量比:2〜4%→5〜7%に変更
酸素流量比:0.5〜2%→2〜7%に変更
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
以上の参考例のO、NをB、Cに一部置換または全部置換した場合もほとんど同じ磁気特性と結晶構造との相関を得た。
【0104】
また、参考例中のサンプルは、いずれも隣接する磁性結晶粒の結晶方位が面内方向でランダムになっていた。
【0105】
また、上記参考例の磁性膜をDCマグネトロンスパッタで作製したところ、放電ガス圧を0.5〜2mTorr、投入電力を100Wに変更することでほぼ同様の組成と結晶構造を得ることができ、さらに成膜直後から優れた軟磁気特性を示すことが確認された。
【0106】
上記参考例のいずれのサンプルも基板面に対して平行な面で膜構造を観察すると、変形した円形、変形した楕円形、またはこれらの形状が組み合わされた構造を有しており、磁性結晶粒の平均体積Vaに対する平均表面積Saは、十分にSa>4.84Va2/3の関係を満足していることが確認された。
【0107】
上記参考例および比較例のサンプルを純水中に6時間浸漬したところ、比較例ca〜cfのサンプルは基板表面が見えるまで腐食していたのに対し、参考例中サンプルは腐食が見られたものの完全腐食には至らなかった。また比較例cg、chのサンプルは耐食性が一番良好であったが、全サンプルの中で飽和磁束密度の低下が目立って大きかった。
【0108】
(実施例2)
実施例2は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、放電ガス圧、基板温度、タ−ゲット形状、入射粒子の方向などのスパッタ条件や結晶形状などの膜構造と磁気特性の関係を調べた結果である。結果を(表4)および(表5)にまとめて示す。
【0109】
結晶形状の評価としては、磁性結晶粒が略柱状、略針状の形状であるものについては、結晶粒長手方向の平均サイズをdL、短手方向の平均サイズをdSと表記する。また略柱状部、略針状部が合成された多枝形状を有する磁性結晶粒に関しては、それぞれの部位の短手方向をds、多枝形状の磁性結晶粒の最大長をdlとする。dL,dS,dsおよびdlの測定方法は、参考例1と同様である。また、以下のサンプルの膜厚は3μmで磁気特性は520℃真空中での熱処理後の値である。
【0110】
実施例2の成膜条件を以下に示す。
・実施例aa〜ag条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:水冷〜250℃
磁性膜タ−ゲット:FeAlSiTi合金タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2〜4%
酸素流量比:0.5〜2%
放電電力:400W
また上記の実施例aa〜ag条件から下記の条件を変更することで比較例実験を行った。
・比較例ca〜ce条件
上記基板温度:300℃または液体窒素冷却に変更
・実施例ba〜bg条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:水冷〜250℃
磁性膜タ−ゲット:FeAlSiTi合金タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:5インチ×15インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2〜4%
酸素流量比:0.5〜2%
放電電力:2kW
また上記の実施例ba〜bz条件から下記の条件を変更することで比較例実験を行った。
・比較例da〜de条件
上記基板温度:300℃または液体窒素冷却に変更
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
以上の実施例aa〜agにおいては、図2に示すTEM断面略図のように磁性結晶粒が略柱状または略針状の結晶粒を母相とし、基板に対してほぼ垂直方向に成長した構造を持っていた。一方、実施例ba〜bgにおいては、図1に示すTEM断面略図のように、磁性結晶粒が、略柱状または略針状の結晶粒および略柱状部または略針状部が2つ以上接合した多枝形状の結晶粒を母相とする構造を有していた。これは実施例aa〜agと比較してタ−ゲットサイズが大きいために、基板に入射する斜め粒子が多く、結晶粒の成長条件が変化したためと考えられる。なお、上記多枝形状は、基板に入射する粒子の入射角が周期的に変化する、例えば基板−タ−ゲット間の位置関係を変化させながら成膜するような手段を用いても実現できることが確認された。
【0114】
参考例1と同様、実施例2のいずれのサンプルも、基板面に対して平行な面で膜構造を観察すると、変形した円形、変形した楕円形、またはこれらの形状が組み合わされた構造を有しており、磁性結晶粒の平均体積Vaに対する平均表面積Saは、十分にSa>4.84Va2/3の関係を満足していることが確認された。
【0115】
また、比較例サンプルでは(1)dl>50nm、(2)5nm<dS<60nm(3)dL>100nmのいずれかの条件を満足していないものに関して磁気特性が悪い。
【0116】
なお、以上の実施例および比較例のサンプルの組成は、(FeaSibAlcTid)100−e−fNeOfなる組成式で表せば、aが75〜77、bが18〜21、cが1〜4、dが1〜4、eが1〜2、fが4〜9の範囲であった。同一成膜条件でほぼ同一な膜構造を形成した場合に、この程度の範囲の組成変化では上記の実施例と比較例との間にみられるような磁気特性の変化は観察されなかった。
【0117】
また、実施例2のO、NをB、Cに一部置換または全部置換した場合、または参考例1で作製した組成と同じ組成でタ−ゲットサイズなどを変えることにより膜構造を多枝形状にした場合においても、前述の好ましい結晶粒サイズの範囲内において優れた磁気特性が得られた。
【0118】
また、実施例中のサンプルはいずれも隣接する磁性結晶粒の結晶方位が面内方向でランダムになっていた。
【0119】
また、上記実施例の磁性膜をDCマグネトロンスパッタで作製したところ、放電ガス圧を0.5〜2mTorr、投入電力を100Wに変更することでほぼ同様の組成と結晶構造を得ることができ、さらに成膜直後から優れた軟磁気特性を示すことが確認された。
【0120】
上記実施例および比較例のサンプルを0.5規定の塩水中に50時間浸漬したところ、比較例サンプルが膜表面または膜基板界面でわずかに変色したのに対して、実施例中サンプルは変化がなかった。
【0121】
(参考例3)
参考例3は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、放電ガス圧、基板温度などのスパッタ条件、添加元素、反応ガス流量比を変え、組成および結晶形状などの膜構造を調べた結果である。結果を(表6)にまとめて示す。
【0122】
結晶粒形状、粒界状態は、前述のように、膜断面、膜平行面のTEM観察を行うことにより見積もった。結晶粒界化合物の平均最短厚TもTEM観察から見積もった値である。なお、以下のサンプルの膜厚は3μmである。
【0123】
参考例3の成膜条件を以下に示す。
・サンプルa〜i条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:2〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2〜4%
酸素流量比:0.5〜2%
放電電力:400W
真空中熱処理温度:500℃
また上記条件から下記の条件を変更することでさらに実験を行った。
・サンプルj〜r条件
上記真空中熱処理温度:500℃→600℃に変更
【0124】
【表6】
【0125】
なお上記参考例では、結晶粒サイズは、すべて前述の好ましい結晶粒サイズの範囲に入っており、磁気特性の差は、粒界化合物の厚さに起因すると考えられる。また、参考例のO、NをB、Cに一部または全部置換した場合も同様の磁気特性と粒界構造との相関が得られた。
【0126】
参考例3の参考例a〜iのサンプルは純水に24時間浸漬した後も、腐食は認められなかった。純水中で腐食が確認された(参考例1)中の参考例aa〜azサンプルと、参考例3中の参考例a〜iサンプルは、結晶粒の構造、粒界化合物のサイズなどの基本的な相違は認められないものの、TEM付随のEDSで調べたところ、参考例aa〜az結晶粒内には、Feより酸化物または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素がほとんど認められなかったのに対して、参考例a〜iにおいては10数原子%以上存在していることが確認された。
【0127】
また、本参考例の磁性膜を、斜め入射成分の多いスパッタリング法で形成することにより、結晶粒形状を前述の好ましいサイズを有する多枝形状にした場合でも、同様の効果があることが確認された。
【0128】
また、上記参考例の磁性膜をDCマグネトロンスパッタで作製したところ、放電ガス圧を0.5〜2mTorr、投入電力を100Wに変更することでほぼ同様の組成と結晶構造を得ることができ、さらに成膜直後から優れた軟磁気特性を示すことが確認された。
【0129】
(参考例4)
参考例4は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、基板上に様々な下地膜を形成し、その上に同一条件の磁性膜を形成し、膜構造と磁気特性を調べた結果である。結果を(表7)にまとめて示す。参考例、比較例とも、磁性膜としては同一の条件で形成した(Fe80Si17Al1Nb2)94O1N5を用いた。
【0130】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2%
酸素流量比:0.5%
放電電力:400W
磁性膜の結晶状態はXRDを用いて調べた。なお、以下のサンプルの膜厚は1μmであり、表中の磁気特性は、真空中500℃30分の熱処理後の値である。
【0131】
また、下地膜の成膜条件を以下に示す。
・下地膜成膜条件
基板:非磁性セラミック基板
基板温度:室温
下地膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0〜20%
酸素流量比:0〜20%
放電電力:100W
なお、下地膜の膜厚は2nmである。
【0132】
【表7】
【0133】
表面自由エネルギ−値は測定法によって値が変化するために、表には、Feの表面自由エネルギ−値との大小関係のみを示す。XRDおよびTEM分析結果から、サンプルr〜vでは粒成長が著しく、磁気特性劣化の原因になっていると考えられる。また、上記下地膜は、非晶質の割合が高く、便宜上分子式で表記しているが、実際には正確な化学両論比組成からずれている。さらに本実施例の効果を調べるためにサンプルaとサンプルiについて、それぞれ単結晶基板のMgOとアルミナ基板を用いて磁気特性を調べたところ、いずれもさらに磁気特性が向上することが確認された。また、本参考例の下地膜は、前述の好ましい結晶粒構造を持つ他の磁性薄膜でも同様の効果があることも確認された。
【0134】
(参考例5)
参考例5は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、基板上に様々な下地膜を形成し、その上に同一条件の磁性膜を形成し、基板と膜の反応を調べた結果である。結果を(表8)にまとめて示す。参考例、比較例とも磁性膜として参考例4と同一の条件で形成した(Fe80Si17Al1Nb2)94O1N5を用いた。
【0135】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2%
酸素流量比:0.5%
放電電力:400W
下地膜の成膜条件を以下に示す。
・下地膜成膜条件
基板:フェライト基板
基板温度:室温
下地膜タ−ゲット:元素または化合物タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0〜20%
酸素流量比:0〜20%
放電電力:100W
サンプルa〜kの下地膜は、まずフェライト基板上に表に示した単一元素の膜を厚さ1nmに形成し、次いで同元素の酸化物、炭化物、窒化物を厚さ1nmに形成したものである。サンプルl〜vの下地膜は、同元素の酸化物、窒化物、炭化物のみを厚さ2nmに形成したものである。
【0136】
下地膜形成後、磁性膜を15nm、次いで酸化防止膜として厚さ5nmのアルミナを形成し、さらに700℃で熱処理し、その後の膜表面の変色状態により、フェライト基板と膜の反応の有無を調べた。
【0137】
【表8】
【0138】
表よりわかるように、サンプルa〜kの下地構造を採用することで、フェライトのような反応しやすい基板を用いても、膜との相互拡散を抑制することができる。また、サンプルa〜kの構造の下地膜上に、磁性膜を3μm形成したところ、参考例4とほぼ同じ磁気特性が得られた。
【0139】
また、本参考例の磁性膜を、斜め入射成分の多いスパッタリング法で形成することにより、前述の好ましい結晶粒の多枝形状にした場合でも、同様の効果があることが確認された。
【0140】
(参考例6)
参考例6は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、基板上に様々な下地膜を形成し、その上に同一条件の磁性膜を形成し、膜構造と磁気特性を調べた結果である。結果を(表9)にまとめて示す。参考例、比較例とも磁性膜として同一の条件で形成した(Fe79Si17Al1Ta3)92N8を用いた。
【0141】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:4%
放電電力:400W
磁性膜の結晶状態はXRDを用いて調べた。なお、以下のサンプルの膜厚は1μmであり、表中の磁気特性は、真空中500℃30分熱処理後の値である。
【0142】
下地膜の成膜条件を以下に示す。
・下地膜成膜条件
基板:非磁性セラミック基板
基板温度:室温
下地膜タ−ゲット:各元素タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタガス:Ar
放電電力:100W
なお、下地膜の膜厚は2nmである。
【0143】
【表9】
【0144】
XRDおよびTEM分析結果から、サンプルr〜uでは粒成長が著しく、磁気特性の劣化原因になっていると考えられる。サンプルa〜jの下地膜は、前述の好ましい結晶粒構造を有する他の磁性薄膜でも効果を発揮し得ることが確認された。また、上記参考例の下地は基板上に直接成膜したが、基板と下地膜間に、酸化物、炭化物、窒化物、硼化物などの化合物からなる薄膜を挟むことで基板と膜の界面反応を抑制できることも確認された。
【0145】
(参考例7)
参考例7は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、基板上に様々な下地膜を形成し、その上に磁性膜を形成し、膜構造と磁気特性を調べた結果である。結果を(表10)にまとめて示す。参考例、比較例には(Fe75Si20Al3Ti2)94O1N5を用いた。
【0146】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:FeSiAlTi合金タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2%
酸素流量比:0.5%
放電電力:300W
以下のサンプルの膜厚合計は3μmであり、表中の磁気特性は真空中500℃30分の熱処理後の値である。以下、サンプルa〜oの下地膜を下地膜a〜o(多層膜の場合は基板側からa1、a2、、、)と表記する。
【0147】
下地膜a〜cは、基板上にバリア膜a1〜c1としてアルミナを厚さ4nmに形成し、次いで、下地膜a2〜c2として磁性膜と同じタ−ゲットを用い、Ar+窒素ガス中またはAr+酸素ガス中で、厚さ0.5nm〜10nmの窒化層または酸化層を形成した。
【0148】
下地膜a〜cの成膜条件を以下に示す。
下地膜d〜lは、基板上にバリア膜d1〜l1としてアルミナを厚さ4nmに形成し、次いで副磁性層d2〜l2として磁性膜と同条件下で厚さが0.3nm〜200nmとなるように形成し、次いで分断層d3〜l3として磁性膜と同じタ−ゲットを用いAr+O2ガス雰囲気で厚さ0.03〜15nmの酸化物層を形成した。
【0149】
下地膜d〜lの成膜条件を以下に示す。
また、下地膜m、nは基板上にバリア膜m1、n1としてアルミナを厚さ4nmに形成し、次いで副磁性層m2〜n2として主磁性膜と同じ(Fe75Si20Al3Ti2)94O1N5を厚さ10nmまたは100nmに形成し、次いで分断層l3〜n3として窒化シリコンタ−ゲットを用いAr+O2ガス雰囲気で窒化シリコン層を厚さ2nmに形成した。
【0150】
下地膜d〜kの成膜条件を以下に示す。
下地膜oは基板上にバリア膜として膜厚4nmのアルミナのみを形成した。
【0151】
下地膜oの成膜条件は以下のとおりである。
・下地膜o成膜条件
基板:フェライト基板
基板温度:室温
バリア膜タ−ゲット:アルミナタ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:4mTorr
スパッタガス:Ar
放電電力:100W
【0152】
【表10】
【0153】
本参考例は膜そのものが前述の好ましい結晶粒構造と組成を有しているために、優れた磁気特性を保っているが、サンプルa〜c、e、g〜nは、さらに磁気特性が向上している。なお、*印のサンプルjは分断層の膜厚が15nmと厚く、例えばMIGヘッドのメタル材料として用いた場合、この分断層が疑似ギャップを生じることになるおそれがある。しかし、LAMタイプのヘッドに用いる場合には全く問題はない。また、**印のサンプルlは、抗磁力は低いが、ヒステリシスカ−ブが階段状になっており、MIGヘッドに用いる場合にはこの副磁性層の磁気特性がヘッド出力を決定づけるために好ましくない。しかし、やはりLAMヘッドとして用いる場合には全く問題はない。
【0154】
本参考例の下地構造は、本発明の好ましい構造または好ましい組成の磁性膜であれば、本参考例と同様に磁気特性を改善する効果がある。また、この下地膜に用いることのできる組成には特に限定はなく、例えばアルミナの代わりに他の酸化物、または窒化物、炭化物、硼化物のいずれを用いても同様の効果を得ることができる。また、サンプルa〜cの場合は、磁性膜タ−ゲットの酸化物、窒化物を用いたが、硼化物、炭化物であってもよい。また、サンプルe〜nでは、副磁性層として主磁性層と同じ磁性膜を形成したが、メタル磁性層であれば同様の効果を得ることができる。また、分断膜として主磁性層の酸化物または窒化シリコンを用いたが、主磁性層と結晶構造の異なる、アモルファス、金属元素、非金属元素であれば同様の効果を得られることが確認された。
【0155】
(参考例8)
参考例8は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、添加元素、反応ガス流量比を変えて磁気特性を調べた結果である。結果を(表11)にまとめて示す。なお、以下のサンプルの膜厚は3μmで磁気特性は520℃真空中での熱処理後の値である。
【0156】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0〜8%
放電電力:400W
【0157】
【表11】
【0158】
上記のサンプルすべてについてJIS規格に準じた塩水噴霧試験を行ったところ、参考例として示したサンプルはすべて良好な耐食性を示した。
【0159】
比較例agは、参考例ahと窒素以外は同じ組成であり、窒素がないために磁性結晶粒子内に存在する耐食性元素が多いにもかかわらず、ahよりも低い耐食性を示した。このように、耐食性向上には微量の窒素添加が効果的である。また、比較例acは400℃程度の熱処理温度では良好な磁気特性を示したが、520℃では表記のように劣化した。一方、参考例aeは、微量添加のTa効果により、磁気特性の熱処理安定性が向上していることが確認された。
【0160】
*印の参考例aaは、軟磁気特性、耐食性ともに良好であったが飽和磁束密度が1T以下と低い。しかし、飽和磁束密度はフェライト以上であり、最も優れた耐食性を持つために磁気コイルなどの用途には充分な特性を有する。また、**印の参考例bdは、軟磁気特性はよいが塩水噴霧試験でわずかに腐食が見られた。しかし、耐環境性が比較的要求されない、室内据え置き型のVTRやハ−ドデスクには十分使用できる性能を有する。また、本参考例で記したFeSiAiTaN材料は、本発明の好ましい下地上に形成することでさらに磁気特性が改善する。
【0161】
また、本参考例の磁性膜を、斜め入射成分の多いスパッタリング法で形成することにより結晶粒形状を前述の好ましいサイズの多枝形状にした場合でも、同様の効果があることが確認された。
【0162】
(参考例9)
参考例9は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、添加元素、反応ガス流量比を変え磁気特性を調べた結果である。結果を(表12)にまとめて示す。なお、以下のサンプルの膜厚は3μmで磁気特性は520℃真空中での熱処理後の値である。
【0163】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0〜8%
放電電力:400W
【0164】
【表12】
【0165】
上記のサンプルすべてについてJIS規格に準じた塩水噴霧試験を行ったところ、参考例に挙げたサンプルは、すべて良好な耐食性を示した。参考例8と同様、比較例agと参考例ahとの比較から、耐食性向上に微量の窒素添加が効果的であることがわかった。また、比較例acと参考例aeとの比較から、微量添加のTi効果により磁気特性の熱処理安定性が向上していることがわかる。
【0166】
上記*印の参考例aaは、軟磁気特性、耐食性ともに良好であったが飽和磁束密度が1T以下と低い。しかし、飽和磁束密度はフェライト以上であり、最も優れた耐食性を持つために磁気コイルなどの用途には充分な特性を有する。また、**印のついた参考例bdは、軟磁気特性はよいが塩水噴霧試験でわずかに腐食が見られた。しかし、耐環境性が比較的要求されない、室内据え置き型のVTRやハ−ドデスクには十分使用できる性能を有する。また本参考例で記したFeSiAiTiN材料は前述の好ましい下地上に形成することでさらに磁気特性が改善する。
【0167】
また先の(参考例8)ではTaを本参考例ではTiを使用したが、TaまたはTiをZr、Hf、V、Nb、Crの中から選ばれる少なくとも1種と、一部または全部置換、あるいはSiをGeに、AlをGaまたはCrに一部または全部置換しても、同様に優れた耐食性と磁気特性を持つことが確認された。
【0168】
また、本参考例の磁性膜を斜め入射成分の多いスパッタリング法で形成することで結晶粒形状を前述の好ましいサイズの多枝形状にした場合でも、同様の効果があることが確認された。
【0169】
(参考例10)
参考例10は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、添加元素、反応ガス流量比を変え磁気特性を調べた結果である。結果を(表13)〜(表15)にまとめて示す。なお、以下のサンプルの膜厚は3μmで磁気特性は520℃真空中での熱処理後の値である。
【0170】
磁性膜の成膜条件を以下に示す。
・磁性膜成膜条件
基板:非磁性セラミックス基板
基板温度:室温
磁性膜タ−ゲット:Feタ−ゲット上に元素または化合物チップを配置した複合タ−ゲット
タ−ゲットサイズ:3インチ
放電ガス圧:1〜4mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0〜8%
酸素流量比:0.5〜2%
放電電力:400W
【0171】
【表13】
【0172】
【表14】
【0173】
【表15】
【0174】
上記のサンプルすべてについてJIS規格に準じた塩水噴霧試験を行ったところ、参考例に挙げたサンプルはすべて良好な耐食性を示した。参考例9と参考例10は、添加軽元素をそれぞれ窒素または窒素+酸素にした場合の磁気特性を調査したものであるが、両参考例を比較すると、全体的に窒素単独添加よりも窒素+酸素を添加したほうが磁気特性が向上することがわかる。
【0175】
上記*印の参考例aa、abは、軟磁気特性、耐食性ともに良好であるが飽和磁束密度が1T以下と低い。しかし、飽和磁束密度はフェライト以上であり、最も優れた耐食性を持つために磁気コイル等の用途には充分な特性を有する。また、**印の参考例bdは、軟磁気特性はよいが塩水噴霧試験でわずかに腐食が見られた。しかし、耐環境性が比較的要求されない、室内据え置き型のVTRやハ−ドデスクには十分使用できる性能を有する。また、本参考例で記したFeSiAiTiON材料は前述の好ましい下地上に形成することでさらに磁気特性が改善する。
【0176】
本参考例のTiをTa、Zr、Hf、V、Nb、Crの中から選ばれる少なくとも1種と一部または全部置換、あるいはSiをGeに、AlをGaまたはCrに一部または全部置換しても、同様に優れた耐食性と磁気特性を持つことが確認された。
【0177】
また、本参考例の磁性膜を斜め入射成分の多いスパッタリング法で形成することで結晶粒形状を前述の好ましいサイズの多枝形状にした場合でも、同様の効果があることが確認された。
【0178】
(参考例11)
一般に、フェライト上に形成されたメタル磁性膜は、フェライトとの局部電池効果、あるいは膜界面の隙間効果などで腐食が進行し、磁気ヘッドとしての経時変化を起こす。参考例11では、磁気ヘッドとしての信頼性を確認するために、MIGヘッドを試作し、まず試作後のMIGヘッドの自己録再特性を測定し、次いで同じMIGヘッドに塩水噴霧試験を行い、試験後の磁気特性の変化を見た。比較としてメタルコアにセンダスト(FeAlSi下地層Bi)を使用したMIGヘッドの特性変化を示す。
【0179】
ヘッド仕様を以下に示す。
・ヘッド仕様
トラック幅:17μm
ギャップデプス:12.5μm
ギャップレングス:0.2μm
タ−ン数N:16
フェライト上のバリア膜:アルミナ4nm
磁性膜厚:4.5μm
C/N特性:
相対速度=10.2m/s
録再周波数=20.9MHz
テ−プ:MPテ−プ
【0180】
【表16】
【0181】
以上のように本発明の磁性膜は磁気ヘッドに使用すると、ヘッド特性を高め、かつ高い信頼性を持つ磁気ヘッドにすることができる。
【0182】
(参考例12)
参考例12は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、凹凸のある基板上に、様々な下地膜を形成することで、基板割れ抑制および磁気特性に優れた下地膜を調べたものである。
【0183】
2mm×28mm×1mtのフェライト基板上に、15μm×2mm×15μmtの凹凸形状を100個加工した割れ試験基板を準備した。この試験基板上に、アルミナバリア膜を3nm作製し、引き続いて窒素、酸素、Nb、YまたはHfの添加量を様々に変えて結晶粒径を制御し作製した様々な下地膜を100nm形成し、最上部にFeSiAlTiON膜を10μm形成した。この磁性薄膜を520℃で熱処理した後、膜のみを化学エッチングにて除去し、凹凸基板部の割れ率を調べた。一方、平板のガラス基板上に、それぞれの下地膜単層を3μm形成し、熱処理後の平均結晶粒径をXRDで調べた。割れ率と、平均結晶粒径を(表17)に示す。
【0184】
下地膜の成膜条件を以下に示す。
・窒素添加下地膜成膜条件
基板温度:水冷
タ−ゲット:FeSiAlTi
タ−ゲットサイズ:5×15インチ
放電ガス圧:8mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:2〜20%
酸素流量比:0%
放電電力:2kW
・酸素添加下地膜成膜条件
基板温度:水冷
タ−ゲット:FeSiAlTi
タ−ゲットサイズ:5×15インチ
放電ガス圧:8mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0%
酸素流量比:2〜10%
放電電力:2kW
・Nb、YまたはHf添加下地膜成膜条件
基板温度:水冷
タ−ゲット:FeSiAlタ−ゲット上に10mm角のNb、Y、またはHfチップを複数枚乗せたタ−ゲット
タ−ゲットサイズ:5×15インチ
放電ガス圧:8mTorr
スパッタ主ガス:Ar
窒素流量比:0%
酸素流量比:0%
放電電力:2kW
【0185】
【表17】
【0186】
以上の実施例から、下地膜が材料によらず、平均結晶粒径が20nm以下のときに、基板割れを抑制できることがわかる。
【0187】
以上の結果を踏まえ、前述の平均結晶粒径が30nmまたは20nmである窒素添加の下地100nmを用いて下記のようなMIGヘッドを試作した。結果を(表18)にまとめて示す。
【0188】
ヘッド仕様を以下に示す。
・ヘッド仕様
トラック幅:17μm
ギャップデプス:12.5μm
ギャップレングス:0.2μm
タ−ン数N:16
フェライト上のバリア膜:アルミナ3nm
磁性膜厚:9μm
C/N特性:
相対速度=10.2m/s
録再周波数=20.9MHz
テ−プ:MPテ−プ
【0189】
【表18】
【0190】
このように下地膜が本発明の好ましい範囲にあることで磁気ヘッドの特性が向上することがわかる。
【0191】
次に(表18)で効果のあった窒素添加により20nmに微細化した下地層100nm上に,さらに粒径2nmまで微細化するように窒素添加量を増やした下地層を2nm形成し、上記と同じ条件でヘッド化した。また,同様に窒素添加により20nmまで微細化した下地層100nm上にさらに形成する磁性薄膜の窒素添加量までなだらかに窒素添加量を減少させた下地層を30nm形成し、上記と同じ条件でヘッド化した。この結果を(表19)に示す。
【0192】
【表19】
【0193】
このように下地膜が前記の好ましい範囲にあることで磁気ヘッドの特性がさらに向上することがわかる。
【0194】
次に、(表17)の参考例に示す微細化下地層(微細磁性層)を0.5規定の塩水に100時間浸漬試験を行ったところ、結晶粒径が5nm程度まで微細化された窒素添加膜および酸素添加膜において、わずかな界面腐食が観察されたが、IIIa族(Y)、IVa族(Hf)、Va族(Nb)の元素添加による微細化下地層のサンプルでは全く腐食が見られなかった。
【0195】
次に、下地層の最適な厚さを求めるために、窒素添加材料の下地層膜厚を1〜500nmまで変化させて割れ率を調べた結果を(表20)にまとめて示す。なお、窒素添加下地層の作成条件は、平均結晶粒径20nmの条件を選んだ。
【0196】
【表20】
【0197】
以上の参考例から、微細磁性層の好ましい厚さは10nm以上であり、さらに好ましい厚さは300nm以上であることがわかる。また、本参考例では、基板としてフェライト、膜として磁性体を用いたが、本発明の微細化下地層は、基本的に内部応力が存在する薄膜全体について有効である。
【0198】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁性薄膜によれば、従来の平均結晶粒径が小さい微結晶材料に比べ、単位体積中の界面エネルギ−の総量が小さいために、熱処理による粒成長が抑制され、軟磁気特性を広い温度範囲で安定化することができる。また、磁性膜は、成膜直後から結晶質であるために、非晶質化のために多量の添加物を必要とせず、従って飽和磁束密度が高くでき、また成膜直後から高飽和磁束密度ヘッド用材料として使用し得る。また結晶粒のサイズにより、局部電池による腐食が小さく耐食性に優れた磁性膜を得ることができる。
【0199】
また、基板と磁性膜との間の下地膜に微細化層を含ませる本発明の好ましい態様によれば、基板表面状態や形状によらず、膜剥がれや基板破壊が抑制された膜形成が実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】多枝形状の結晶粒を有する磁性膜の膜成長方向からみた概略図(ただし、下地膜、基板は省略している。)
【図2】柱状または針状の結晶粒を持つ磁性膜の膜成長方向からみた概略図(ただし、下地膜、基板は省略している。)
Claims (31)
- 平均体積Vaと平均表面積Saとが下記関係式を満たす磁性結晶粒を母相とする磁性膜を含み、
Sa>4.84Va2/3
磁性結晶粒が、略柱状部または略針状部が2つ以上接合した多枝形状の結晶粒を母相とする構造を有しており、前記略針状部または前記略柱状部の短手方向の平均結晶サイズが5nmよりも大きく60nmよりも小さい、磁性薄膜。 - 磁性結晶粒が50nmを超える平均最大長を有する請求項1に記載の磁性薄膜。
- 略針状体と略柱状体との組み合わせからなる多枝形状結晶を含む磁性結晶粒を母相とし、前記略針状体または前記略柱状体の短手方向の平均結晶サイズdsおよび前記多枝形状結晶の平均最大長dlがそれぞれ下記関係式を満たす磁性膜を含むことを特徴とする磁性薄膜。
5nm<ds<60nm
dl>50nm - 互いに隣接する磁性結晶粒の結晶方位が、少なくとも面内方向で異なる請求項1〜3のいずれかに記載の磁性薄膜。
- C、B、OおよびNから選ばれる少なくとも1種の軽元素と、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 磁性結晶粒内に、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素を含む請求項1〜5のいずれかに記載の磁性薄膜。
- Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素が、IVa族元素、Va族元素、Al、Ga、Si、GeおよびCrから選ばれる少なくとも1種の元素である請求項5または6に記載の磁性薄膜。
- 前記磁性結晶粒の粒界に、炭化物、硼化物、酸化物、窒化物および金属から選ばれる少なくとも1種からなる微結晶またはアモルファスである粒界化合物が含まれる請求項1〜7のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 前記粒界化合物の平均最短長をTとすると、この粒界化合物の少なくとも30%の前記平均最短長Tが下記関係式を満たす請求項8に記載の磁性薄膜。
0.1nm≦T≦3nm - 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する少なくとも1層が、Feよりも酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が低い元素を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、Feよりも表面自由エネルギ−が低い物質からなる請求項1〜10のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、Al、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物である請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜を構成する層のうち少なくとも前記磁性膜と接する層が、C、Al、Si、Ag、Cu、Cr、Mg、Au、GaおよびZnから選ばれる少なくとも1つの物質からなる請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層BがAl、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1つの物質からなり、前記下地層Aが前記下地層Bを構成する物質の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなる請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層AがAl、Ba、Ca、Mg、Si、Ti、V、Zn、GaおよびZrから選ばれる少なくとも1つの物質からなり、前記下地層Bが前記下地層Aを構成する物質の炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなる請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層Aが、前記磁性膜に含まれる主構成元素から選ばれる少なくとも1つの元素と、酸素および窒素から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、かつ前記磁性膜よりも酸素または窒素を多く含み、前記下地層Bが、炭化物、酸化物、窒化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなる請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された主磁性層としての磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記下地層Aが副磁性層と分断層とが少なくとも1層ずつ交互に積層されてなり、前記下地層Bが酸化物、窒化物、炭化物および硼化物から選ばれるいずれかの化合物からなる請求項1〜11のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 分断層が、磁性膜と少なくとも1種の元素を共有し、磁性膜よりも酸素または窒素を多く含有している請求項17に記載の磁性薄膜。
- 副磁性層の厚さtMと、分断層の厚さtSとがそれぞれ下記関係式を満たす請求項17または18に記載の磁性薄膜。
0.5nm≦tM≦100nm
0.05nm≦tS≦10nm - 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜のうち、少なくとも基板と接する層が、アモルファス磁性体または平均粒径dが下記関係式を満たす磁性結晶粒を母相とする微細磁性層である請求項1〜19のいずれかに記載の磁性薄膜。
d≦20nm - 微細磁性層の厚さtrと、磁性膜の厚さtfとがそれぞれ下記関係式を満たす請求項20に記載の磁性薄膜。
10nm<tr<tf/3 - 微細磁性層と磁性膜とが少なくとも1種の共通元素を有する請求項20または21に記載の磁性薄膜。
- 共通元素が、微細磁性層または磁性膜に含まれる元素中、酸化物および/または窒化物生成自由エネルギ−が最も低い元素を含む請求項22に記載の磁性薄膜。
- 共通元素が、酸素、窒素、炭素および硼素から選ばれる少なくとも1種の元素である請求項22または23に記載の磁性薄膜。
- 微細磁性層が、IIIa族、IVa族、Va族から選ばれる少なくとも1種の元素を含む請求項20〜24のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記磁性膜中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C1(原子量%)、前記下地層A中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C2(原子量%)、前記下地層B中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C3(原子量%)が下記関係式を満たす請求項20〜25のいずれかに記載の磁性薄膜。
0≦C1≦C3<C2 - 少なくとも1層からなる下地膜と、この下地膜上に形成された磁性膜とを含み、前記下地膜が前記磁性膜と接する下地層Aおよびこの下地層Aと接する下地層Bを含み、前記磁性膜中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C1(原子量%)、前記下地層A中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C2(原子量%)、前記下地層B中の酸素、窒素、炭素および硼素からなる元素群濃度C3(原子量%)が下記関係式を満たす請求項20〜25のいずれかに記載の磁性薄膜。
0≦C1≦C2≦C3 - 元素群濃度C1とC3とが相違し、層界面における濃度差を緩和するように、元素群濃度C2が膜厚方向においてほぼ連続的に変化している請求項27に記載の磁性薄膜。
- 凹凸を有する基板上に形成された請求項20〜28のいずれかに記載の磁性薄膜。
- 高抵抗基板または高抵抗材料上に形成された請求項10〜29のいずれかに記載の磁性薄膜。
- バリア層を形成した基板上に形成された磁性薄膜であって、前記バリア層が、Al、Si、CrおよびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物または窒化物からなり、下記関係式を満たす厚さduを有する請求項8〜30のいずれかに記載の磁性薄膜。
0.5nm<du<10nm
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