JP2774702B2 - 軟磁性薄膜およびそれを用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

軟磁性薄膜およびそれを用いた薄膜磁気ヘッド

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JP2774702B2
JP2774702B2 JP3078639A JP7863991A JP2774702B2 JP 2774702 B2 JP2774702 B2 JP 2774702B2 JP 3078639 A JP3078639 A JP 3078639A JP 7863991 A JP7863991 A JP 7863991A JP 2774702 B2 JP2774702 B2 JP 2774702B2
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彰宏 牧野
清策 鈴木
健 増本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、軟磁性薄膜に関し、
特に高密度記録に好適な性能を発揮する磁気ヘッドのコ
ア等として使用される軟磁性薄膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近来、磁気ディスク装置等に用いられる
磁気ヘッドは、磁気ディスク媒体に対する高密度記録化
および高効率化が進められ、その形状も益々小型化され
るとともに、高精度化がなされている。
【0003】こうした要求に対し、記録の寄与する磁極
先端部でのヘッド磁界分布が急峻で、高密度な記録を可
能とする小型な種々のタイプの薄膜磁気ヘッドが既に提
案され、又、MIG(メタルインギャップ)タイプヘッ
ド等、薄膜を用いた磁気ヘッドが実用化されている。
【0004】このような磁気ヘッドに用いられる軟磁性
薄膜において一般的に要求される諸特性は以下の通りで
ある。 飽和磁束密度が高いこと。 透磁率が高いこと。 低保磁力であること。 薄い形状が得やすいこと。
【0005】従って磁気ヘッドを製造する場合、これら
の観点から種々の合金系の軟磁性薄膜に関する材料研究
がなされている。
【0006】従来、このような要求に応える軟磁性材料
として、窒化鉄が知られている。これは、窒素雰囲気中
で、鉄をターゲットとしてイオンビーム蒸着、あるいは
スパッタリングを行うことにより薄膜状に形成され、飽
和磁束密度が極めて高い材料である。
【0007】さらに、センダスト、パーマロイ、けい素
鋼等の結晶質合金の他、最近ではFe基およびCo基など
の非晶質合金も使用されるようになってきている。
【0008】また、上述のような単層膜の代わりに、渦
電流損失を低減させる目的で、鉄を主体とする主磁性層
と酸化シリコン等の絶縁体を交互に積層した軟磁性積層
膜も開発されており、単層膜では得られなかった高い飽
和磁束密度と高い透磁率とを両立させることに成功して
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】近年において、高記録
密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するた
め、より好適で高性能な磁気ヘッド用の軟磁性薄膜材料
が望まれている。
【0010】ところで、磁気ヘッドを組み込んだ装置は
小型化、軽量化する傾向があり、移動に伴う振動にさら
されたり、悪環境のもとで使用されたりすることが多く
なっている。そこで、磁気ヘッドには、磁気特性が優秀
であって磁気テープに対する耐摩耗性が優れていること
はもちろん、湿度や腐食性の雰囲気中での耐用性、すな
わち、耐環境性や、耐振動性等が高いことが要求されて
いる。
【0011】そのため、ギャップ形成やケースへの組み
込み等をガラス溶着で行うことが必要となり、磁気ヘッ
ドの素材はヘッドの製造工程におけるガラス溶着工程の
高温に耐えうる熱安定性も含めて要求されてきている。
【0012】しかし、従来開発されている20KGを越
えるほどの極めて高い飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜
は、成膜が終了した段階では十分に保磁力が低くなら
ず、さらに、400℃程度の熱処理によっても保磁力が
上昇し、良好な軟磁気特性を示すものとはいえなかっ
た。
【0013】さらに、前記のセンダストは、軟磁気特性
には優れるものの、飽和磁束密度が約11KGと低い欠
点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる合
金組成においては、飽和磁束密度が約8KGと低い欠点
があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特
性に劣る欠点がある。
【0014】一方、非晶質合金において、Co基合金は
軟磁気特性に優れるものの飽和磁束密度が10KG程度
と不十分である。
【0015】また、Fe基合金は飽和磁束密度が高く、
15KGあるいはそれ以上のものが得られるが、軟磁気
特性が不十分である。
【0016】さらに、非晶質合金の熱安定性は十分では
なく、未だ未解決の面がある。
【0017】前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁
気特性を兼備することは難しい。
【0018】そこで本発明者らは、先に、前記の従来合
金と非晶質合金の課題を解決した高飽和磁束密度Fe系
軟磁性合金を平成3年3月18日付けで特許出願してい
る。
【0019】この特許出願に係る合金の1つは、次式で
示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度
Fe系軟磁性合金であった。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素で
あり、a≦0.05、b≦92原子%、x=6.5〜18原
子%、y=4〜10原子%、z=4.5原子%以下であ
る。
【0020】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 Fe b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素で
あり、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y=4〜
10原子%、z=4.5原子%以下である。
【0021】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
Cr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から選択される
元素であり、a≦0.05、b≦92原子%、x=6.5〜
18原子%、y=4〜10原子%、z=4.5原子%以
下、s=4〜10原子% である。
【0022】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 Fe b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
Cr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から選択される
元素であり、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y
=4〜10原子%、z=4.5原子%以下、s=4〜10
原子% である。
【0023】更に本発明者らは、前記合金の発展型の合
金として、平成3年3月18日付けで、以下に示す組成
の合金について特許出願をしている。
【0024】この特許出願に係る合金の1つは、次式で
示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度
Fe系軟磁性合金であった。 (Fe1-aa)b Bx Ly 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
以上の元素であり、a≦0.05、b≦93原子%、x=
6.5〜10原子%、y=4〜9原子%である。
【0025】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 Fe b Bx Ly 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、b≦93原子%、x=6.5〜
10原子%、y=4〜9原子%である。
【0026】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 (Fe1-aa)b Bx Ly Ds X 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも一方で
あり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から
選択される元素であり、a≦0.05、b≦93原子%、x
=6.5〜10原子%、y=4〜9原子%、sは4〜10
原子%である。
【0027】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。 Fe b Bx Ly D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも
一方であり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの
中から選択される元素であり、b≦93原子%、x=6.
5〜10原子%、y=4〜9原子%、sは4〜10原子%
である。
【0028】以上のように本発明者らは、前記各組成の
種々のFe系軟磁性合金を開発したわけであるが、前記
組成のFe系軟磁性合金について研究を重ねた結果、こ
のFe系軟磁性合金の薄膜においても、良好な磁気特性
が得られることが判明したので本願発明に到達した。
【0029】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、高飽和磁束密度と高透磁率を兼備し、高い熱
安定性を併せ持つ軟磁性薄膜を提供すること、および、
この優れた軟磁性薄膜を備えた薄膜磁気ヘッドを提供す
ることを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した発明
は前記課題を解決するために、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜であ
る。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Niからな
る群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、a≦
0.05、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y=
4〜10原子%、z=4.5原子%以下である。
【0031】請求項2に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 Fe b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Niからな
る群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、b≦
92原子%、x=6.5〜18原子%、y=4〜10原子
%、z=4.5原子%以下である。
【0032】請求項3に記載した発明は前記課題を解決
するために、非磁性基板上に、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と絶
縁層とコイル導体と前記組成の高飽和磁束密度Fe系軟
磁性合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層
と上部磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴と
する。 (Fe1-a a)b Bx Ly 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
以上の元素であり、a≦0.05、b≦93原子%、x=
6.5〜10原子%、y=4〜9原子%である。
【0033】請求項4に記載した発明は前記課題を解決
するために、非磁性基板上に、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と絶
縁層とコイル導体と前記組成の高飽和磁束密度Fe系軟
磁性合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層
と上部磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴と
する。 Fe b Bx Ly 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、b≦93原子%、x=6.5〜
10原子%、y=4〜9原子%である。
【0034】請求項5に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
Cr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から選択される
元素であり、a≦0.05、b≦92原子%、x=6.5〜
18原子%、y=4〜10原子%、z=4.5原子%以
下、s=4〜10原子% である。
【0035】請求項6に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 Fe b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
Cr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から選択される
元素であり、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y
=4〜10原子%、z=4.5原子%以下、s=4〜10
原子% である。
【0036】請求項7に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 (Fe1-aa)b Bx Ly Ds X 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも一方で
あり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から
選択される元素であり、a≦0.05、b≦93原子%、x
=6.5〜10原子%、y=4〜9原子%、sは4〜10原
子%である。
【0037】請求項8に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 Fe b Bx Ly D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
は2種以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも
一方であり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの
中から選択される元素であり、b≦93原子%、x=6.
5〜10原子%、y=4〜9原子%、sは4〜10原子%
である。請求項9に記載した発明は前記課題を解決する
ために、請求項1、2、5、6、7、8のいずれかに記
載の軟磁性薄膜が、非晶質合金あるいは非晶質相を含む
結晶質合金からなる成膜後の薄膜に、熱処理を施して一
部結晶化させて得られたものであることを特徴とする。
【0038】
【作用】本発明の軟磁性薄膜は、特定の組成の軟磁性合
金から形成されるもので、高飽和磁束密度と高透磁率を
兼ね備え、かつ低保磁力で、また、高い熱安定性を併せ
持つものである。
【0039】以下に本発明を更に詳細に説明する。前記
Fe系軟磁性合金膜の生成方法としては、合金膜をスパ
ッタ装置、蒸着装置等の薄膜成形装置により作成する方
法を採用することができる。
【0040】スパッタ装置としては、例えば、RF2層
スパッタ、DCスパッタ、マグネトロンスパッタ、3極
スパッタ、イオンビームスパッタ、対向ターゲット式ス
パッタ等の既存のものを使用することができる。
【0041】本発明の軟磁性薄膜は、前記組成の非晶質
合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金をスパッタ法、
蒸着法等の気相急冷法により得る工程と、これを加熱し
微細な結晶粒を形成する熱処理工程によって通常得るこ
とができる。
【0042】本発明のFe系軟磁性合金において、非晶
質相を得やすくするためには、非晶質形成能を有するT
i,Nb,Taの少なくとも1つ及びBを含む必要がある。
【0043】Bには本発明合金の非晶質形成能を高める
効果、および前記熱処理工程において磁気特性に悪影響
を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があると考えら
れ、このためB添加は必須である
【0044】TiとNbとTaにも同等の効果があるが、
これらの元素の中でもNbとTaは、融点の高い金属材料
であって熱的に安定であり、製造時に酸化しずらいもの
である。よってこれらの元素を添加している場合は、先
に本願発明者らがHfやZrを含有したFeB系の軟磁
性合金であり、非晶質とFeの微細結晶粒との混合組織
を有する材料を特許出願(特願平2−108308号
特開平5−093249号)しているが、それよりも製
造条件が容易で安価に製造することができ、コストの面
でも有利である。即ち、その本願発明者らが特許出願し
ている系の合金においては、真空雰囲気中において不活
性ガスを供給して酸化に留意しつつ製造する必要があっ
たが、本願発明の合金においては製造条件をゆるくする
ことができる。
【0045】T’で表わされているCu、Ni等は合金
が結晶化する温度を低下させ、熱処理後の組織の微細化
に寄与する。このT’成分を添加する場合、その配合比
zは4.5原子%以下、特に0.2〜4.5原子%である
ことが望ましい。zが0.2未満になると、熱処理後の
軟磁気特性が若干劣るが、飽和磁束密度が若干高くな
る。
【0046】これらの元素の中でもCuは特に好適であ
る。
【0047】Cu,Ni等の添加により、軟磁気特性が著
しく改善される機構については明らかではないが、結晶
化温度を示差熱分析法により測定したところ、Cu,Ni
等を添加した合金の結晶化温度は、添加しない合金に比
べてやや低い温度であると認められた。これは前記元素
の添加により非晶質相が不均一となり、その結果、非晶
質相の安定性が低下したことに起因すると考えられる。
また不均一な非晶質相が結晶化する場合、部分的に結晶
化しやすい領域が多数でき不均一核生成するため、得ら
れる組織が微細結晶粒組織となると考えられる。
【0048】また特に、Feに対する固溶度が著しく低
い元素であるCuの場合、相分離傾向があるため、加熱
によりミクロな組成ゆらぎが生じ、非晶質相が不均一と
なる傾向がより顕著になると考えられ、組織の微細化に
寄与するものと考えられる。
【0049】以上の観点からCu及びその同族元素、Ni
およびPd,Pt以外の元素でも結晶化温度を低下させる
元素には同様の効果が期待できる。またCuのようにFe
に対する固溶限が小さい元素にも同様の効果が期待でき
る。
【0050】以上、本発明に適用する高飽和磁束密度F
e系軟磁性合金に含まれる合金元素の限定理由を説明し
たが、これらの元素以外でも耐食性を改善するために、
Cr,MoあるいはRu,Rh,Irなどの白金族元素を添
加することも可能である。
【0051】また、必要に応じて、Y,希土類元素,Zn,
Cd,Ga,In,Ge,Sn,Pb,As,Sb,Bi,Se,Te,Li,B
e,Mg,Ca,Sr,Ba等の元素を添加することで磁歪を調
整することもできる。その他、H,N,O,S等の不可避
的不純物については所望の特性が劣化しない程度に含有
していても本発明の高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金の
組成と同一とみなすことができるのは勿論である。
【0052】本発明で使用するFe系軟磁性合金におけ
るFe,Co量のbは、元素T’zを含む合金においては9
2原子%以下である。これは、bが92原子%を越える
と高い透磁率が得られないためであるが、飽和磁束密度
10kG以上を得るためには、bが75原子%以上である
ことがより好ましい。また、元素T'zを含まない合金に
おいては、Fe,Ni,Co量を93原子%以下とする。
【0053】
【実施例】前記組成の合金の内、Fe80Nb712Cu1
の組成の合金を例に軟磁性薄膜を作成し、その磁気特性
と熱処理の効果について説明する。
【0054】まず、RF2極スパッタ装置を用いて、F
e80Nb712Cu1の組成の軟磁性薄膜を形成した。
【0055】使用したターゲットは、Feターゲット上
にNb,B,Cuの各ペレットを適宜配置して構成した複
合ターゲットを用い、Arガス雰囲気中あるいはAr+N
2ガス雰囲気中でスパッタを行って膜厚2μmの軟磁性薄
膜を形成した。
【0056】こうして製造された軟磁性薄膜について無
磁場アニール後における飽和磁束密度(Bs)と初透磁率
(μ、10mOe、1MHz)と保磁力(Hc)の測定を行っ
た。
【0057】さらに、昇温速度毎分10℃の示差熱分析
により求めたFe80Nb712Cu1合金の結晶化開始温
度は470℃であった。
【0058】この軟磁性薄膜の磁気特性に及ぼす熱処理
(600℃)の効果を調べた結果、熱処理前の合金の80
0A・Tでの磁束密度(B800)は2(KG)、透磁率
(μ)は100、保磁力(Hc)は20(Oe)であったのに
対し、熱処理後の合金の800A・Tでの磁束密度(B
800)は12(KG)、透磁率(μ)は2000、保磁力は
0.9Oeであり、熱処理により合金の磁気特性は著しく
向上した。
【0059】同様の効果は、500〜620℃の熱処理
によっても得られている。
【0060】よって本軟磁性薄膜の磁気特性は最適な熱
処理条件を適当に選ぶことにより調整することができ、
また磁場中焼鈍などにより磁気特性を改善することもで
きる。
【0061】また、この軟磁性薄膜の熱処理前後の構造
の変化をX線回折法により調べ、熱処理後の組織を透過
電子顕微鏡を用いて観察し、結果をそれぞれ第1図と第
2図に示す。
【0062】第1図より、急冷状態では非晶質に特有の
ハローな回折図形が、熱処理後には体心立方晶に独特の
回折図形がそれぞれ認められ、本合金の構造が熱処理に
より、非晶質から体心立方晶へと変化したことがわか
る。
【0063】そして第2図より、熱処理後の組織が、粒
径約100オンク゛ストロ-ム程度の微結晶から成ることがわか
る。
【0064】以上のごとく前記組成の合金からなる軟磁
性薄膜は、高飽和磁束密度でかつ軟磁気特性に優れた上
に保磁力が小さいものである。
【0065】更に、高い熱安定性を有する優れた特性を
得ることができるものである。
【0066】(製造例)本願発明の軟磁性薄膜を適用し
て第3図と第4図に示す薄膜磁気ヘッド10を製造し、
この薄膜磁気ヘッド10の磁気特性を測定した。
【0067】Fe系軟磁性合金として、Fe84Ti78
1なる組成の合金を用いた。
【0068】この薄膜磁気ヘッド10を製造するには、
非磁性基板1上に本願発明の軟磁性薄膜からなる下部磁
性層2を形成し、その上にSiO2などからなる第1絶縁
層3をスパッタリングや蒸着などにより形成する。
【0069】次に、その上にCuなどからなる第1層コ
イル導体4を形成し、その後、SiO2などからなる第
2絶縁層5をさらにその上に形成する。
【0070】次に、第1層コイル導体4間に第2層コイ
ル導体6を形成する。
【0071】その上にSiO2などからなる第3絶縁層8
を形成し、上部磁極9と下部磁極2とを磁気的に結合さ
せるための窓をあけるべく、テーパーエッチングを行
い、その後、SiO2などからなるギャップ層7を形成
し、後部ギャップ部分のギャップ層7のみエッチングす
る。
【0072】その上に本願発明の軟磁性薄膜からなる上
部磁性層9を形成する。
【0073】このようにして、2層スパイラル構造の薄
膜磁気ヘッド10が製造される。
【0074】透磁率(μ)(1MHz)は2000、保磁力
は0.8(Oe)、飽和磁束密度は15.8(KG)の優
れた磁気特性を発揮する薄膜を用いることにより、優れ
た性能の磁気ヘッドを得ることができることを確認でき
た。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように本発明の軟磁性薄膜
は、高飽和磁束密度と高透磁率を併せ持ち、また保磁力
を低く抑えることができ、さらに、高い熱安定性を備え
た優れた磁気特性を発揮する。また前記の軟磁性薄膜を
用い、非磁性基板上に下部磁性層と絶縁層とコイル導体
と上部磁性層とギャップ層を形成した薄膜磁気ヘッドと
することで、高飽和磁束密度と高透磁率を併せ持ち、ま
た保磁力を低く抑えることができ、さらに、高い熱安定
性を備えた高性能な薄膜磁気ヘッドを得ることができる
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】前記合金の熱処理前後の構造変化を示すX線回
折図形を示すグラフである。
【図2】前記合金の熱処理後の組織を示す顕微鏡写真の
模式図である。
【図3】実施例の2層スパイラルコイル構造の薄膜磁気
ヘッドを示す平面図である。
【図4】図3のA−A'断面図である。
【符号の説明】 1 基板 2 下部磁性層 3 第1層絶縁層 4 第1層コイル 5 第2層絶縁層 6 第2層コイル 7 ギャップ層 8 第3絶縁層 9 上部磁性層 10 薄膜磁気ヘッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内無番地 川内住 宅11−806 (56)参考文献 特開 昭64−28343(JP,A) 特開 平2−81408(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01F 10/14

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Niからな
    る群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、 a≦0.05、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y
    =4〜10原子%、 z=4.5原子%以下である。
  2. 【請求項2】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 Fe b Bx Ly T'z 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Niからな
    る群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、 b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y=4〜10原
    子%、z=4.5原子%以下である。
  3. 【請求項3】 非磁性基板上に、次式で示される組成の
    高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と
    絶縁層とコイル導体と前記組成の高飽和磁束密度Fe系
    軟磁性合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性
    層と上部磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴
    とする薄膜磁気ヘッド。 (Fe1-a a)b Bx Ly 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
    LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
    以上の元素であり、 a≦0.05、b≦93原子%、x=6.5〜10原子%、y
    =4〜9原子%である。
  4. 【請求項4】 非磁性基板上に、次式で示される組成の
    高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と
    絶縁層とコイル導体と前記組成の高飽和磁束密度Fe系
    軟磁性合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性
    層と上部磁性 層間にギャップ層を介在させたことを特徴
    とする薄膜磁気ヘッド。 Fe b Bx Ly 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、 b≦93原子%、x=6.5〜10原子%、y=4〜9原子
    %である。
  5. 【請求項5】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 (Fe1-a Co a)b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
    Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
    であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
    Cr、Mo、W、 Ru、Rh、Irの中から選択される元素であり、 a≦0.05、b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y
    =4〜10原子%、 z=4.5原子%以下、s=4〜10原子% である。
  6. 【請求項6】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 Fe b Bx Ly T'z D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、T'はCu,Ag,Au,Ni,Pd,
    Pt からなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
    であり、DはZrとHfの少なくとも一方であり、Xは
    Cr、Mo、W、 Ru、Rh、Irの中から選択される元素であり、 b≦92原子%、x=6.5〜18原子%、y=4〜10原
    子%、z=4.5原子%以下、s=4〜10原子% であ
    る。
  7. 【請求項7】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 (Fe1-a a)b Bx Ly Ds X 但し、MはCo,Niのいずれか、または、両方であり、
    LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又は2種
    以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも一方で
    あり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの中から
    選択される元素であり、 a≦0.05、b≦93原子%、x=6.5〜10原子%、y
    =4〜9原子%、sは4〜10原子%である。
  8. 【請求項8】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 Fe b Bx Ly D s X 但し、LはTi,Nb,Taからなる群から選ばれた1種又
    は2種以上の元素であり、DはZrとHfの少なくとも
    一方であり、XはCr、Mo、W、Ru、Rh、Irの
    中から選択される元素であり、 b≦93原子%、x=6.5〜10原子%、y=4〜9原子
    %、sは4〜10原子%である。
  9. 【請求項9】 請求項1、2、5、6、7、8のいずれ
    かに記載の軟磁性薄膜が、非晶質合金あるいは非晶質相
    を含む結晶質合金からなる成膜後の薄膜に、 熱処理を施して一部結晶化させて得られたものであるこ
    とを特徴とする軟磁性薄膜。
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