JP3342767B2 - Fe基軟磁性合金 - Google Patents
Fe基軟磁性合金Info
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Description
イル、磁気ヘッド等に用いられる軟磁性合金とそれを用
いた積層磁心の製造方法に関するものであり、特に、熱
に強く、高飽和磁束密度で軟磁気特性に優れたものに関
する。
ル等に用いられる軟磁性合金において一般的に要求され
る諸特性は以下の通りである 飽和磁束密度が高いこと。 透磁率が
高いこと。 低保磁力であること。 低磁歪で
あること。 薄い形状が得やすいこと。 また、磁気ヘッドに対しては、前記〜に記載の特性
の他に耐摩耗性の観点から以下の特性が要求される。 硬度が高いこと。 従って軟磁性合金あるいは磁気ヘッドを製造する場合、
これらの観点から種々の合金系において材料研究がなさ
れている。従来、前述の用途に対しては、センダスト、
パーマロイ、けい素鋼等の結晶質合金が用いられ、最近
ではFe基およびCo基の非晶質合金も使用されるよう
になってきている。
チョークコイルの場合、電子機器の小型化に伴い、より
一層の小型化が必要であるため、より高性能の磁性材料
が望まれている。また、磁気ヘッドの場合、高記録密度
化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するため、よ
り好適な高性能磁気ヘッド用の磁性材料が望まれてい
る。ところが、前記のセンダストは、軟磁気特性には優
れるものの、飽和磁束密度が約11KG(1.1T:テ
スラ)と低い欠点があり、パーマロイも同様に、軟磁気
特性に優れる合金組成においては、飽和磁束密度が約8
KG(0.8T)と低い欠点があり、けい素鋼(Fe-S
i系合金)は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特性に劣
る欠点がある。
軟磁気特性に優れるものの飽和磁束密度が10KG(1
T)程度と不十分である。また、Fe基合金は飽和磁束
密度が高く、15KG(1.5T)あるいはそれ以上の
ものが得られるが、軟磁気特性が不十分である。また、
非晶質合金の熱安定性は十分ではなく、未だ未解決の面
がある。従って前述の如く高飽和磁束密度と優れた軟磁
気特性を兼備することは難しい。
損のトランス用合金として、特開平1ー242757号
公報に開示されているように、 一般式(Fe 1-a M1 a)100-k-l-m-n Cu k Si l
B m M2 n (ただし、M1はCoおよび/またはNiであり、M2は
Nb,W,Ta,Mo,Zr,HfおよびTiからなる
群から選ばれた少なくとも1種の元素であ
り、a,k,l,m,n はそれぞれ原子%で、0≦a≦0.
3、0.1≦k≦3、0≦l≦17、4≦m≦17、10≦
l+m≦28、0.1≦n≦5を満たす。) なる組成を示し、組織の少なくとも50%が微細な結晶
粒からなり、前記結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平
均が1000オングストローム以下の平均粒径を有する
合金が知られている。
3号公報(U.S.P. No. 5,160,379)に開示
されているような、Fe-Si-B系の非晶質合金を出発
材料として開発されたものである。Fe-Si-B系合金
において、組織を非晶質化する元素はSiとBであり、
実用上十分な熱安定性を備えた合金のFe含有量は70
〜80原子%である。この非晶質合金は、従来のFe-
Si系合金よりも優れた軟磁気特性を有しているもので
あった。前記の特許出願に係る微細結晶合金は、Fe-
Si-B合金にCuと元素Mを添加したFe-M1-Cu-
Si-B-M3系のものであり、ここで元素M3 はNb,
W,Ta,Zr,Hf,Ti,Moから選択される少な
くとも1種の元素である。この系の合金において、Cu
を含有させることは必須の条件であり、Cuの添加によ
り、非晶質中に揺らぎを生じさせて微細結晶粒を生成さ
せ、組織を微細化することができるとされている。ま
た、Cuを含有させない場合は、結晶粒を微細化するこ
とは難しく、化合物相が生成され易くなって磁気特性が
劣化することが前述の特許公報に記載されている。
との相互作用により結晶粒の成長を抑えることができ
る。従ってNbもしくはCuの単独添加のみでは、結晶
粒の成長は抑えられないことから、NbとCuの複合添
加は必須であるとされている。このことは、日本金属学
会誌第53巻第2号(1989年)の第241頁〜第2
48頁において、先に記載した特許出願の発明者らが発
表した内容において述べられている。なお、前記特公平
4ー4393号公報の第20図の組成図から、この系の
合金においてSi=0であれば、低磁歪が得られないこ
とがわかり、Siは磁歪を小さくする効果があるので、
磁歪を小さくするためにはSiの添加は必須である。
は、全く異なる観点から、全く異なる成分系の材料を用
いて軟磁性材料の開発を進めており、その中に、前記セ
ンダスト、パーマロイ、けい素鋼などの従来技術に鑑み
て先に特許出願している特公昭60ー30734号公報
に見られるFe(Co,Ni)-Zr系合金がある。こ
のFe(Co,Ni)-Zr系の合金は、非晶質形成能
力の大きいZrを添加しているので、Zrの添加量を少
なくしても非晶質化を図ることができ、Feの濃度を9
0%以上とすることが可能である。更にZrと同様な非
晶質形成元素としてHfを用いることができるものであ
った。ところがこの系においてFe濃度が高い合金のキ
ュリー点は、室温付近であるがために、磁心材料として
は実用的な合金ではなかった。
質合金を特殊な方法で一部結晶化させることで、平均結
晶粒径10〜20nm程度の微細結晶組織を得ることが
できることを知見し、1980年に、「CONFERENCE ON
METALLIC SCIENCE ANDTECHNOLGY BUDAPEST 」の第21
7頁〜第221頁において発表している。この発表時の
技術から鑑みると、Fe-Hf系合金においてはCu等
の元素を添加しなくとも組織の微細化が起こり得ること
が示唆される。このメカニズムについては明らかではな
いが、非晶質合金を作成する場合の急冷状態で既に組織
のゆらぎが存在し、このゆらぎが不均一核生成のサイト
となって均一かつ微細な核が多数生成するものと考えら
れる。
質状態では良好な磁気特性を示さない。しかしこの合金
が、非磁性添加元素を必要とせずに微細化することを考
慮すると、Fe-Hf系非晶質合金を出発材料とするこ
とで、従来にない高いFe濃度の微細結晶合金が得ら
れ、従って先のFe-Si-B系の微細結晶合金よりもさ
らに高い飽和磁束密度を持つ新合金の出現が期待され
る。そこで本発明者らが更に研究を進めた結果、粒成長
を抑えるためには、Fe-M系微微結晶合金の熱的安定
性を高める必要があり、更に、粒成長の障壁となり得る
熱的に安定な非晶質相を粒界に残存させることが必要で
あり、そのような観点から非晶質合金の熱的安定性を高
める元素であるBに着目して研究を進めた結果、Fe-
M-B系の合金を開発するに至っている。
重ねることにより、先に説明した特公平4ー4393号
公報(U.S.P. No. 5,160,379)に開示され
ている、Fe-M1-Cu-Si-B-M3系の合金では得ら
れない優れた特性を得られることを知見している。即
ち、前記Fe-M1-Cu-Si-B-M3系の合金は150
〜200℃の加熱処理によって急激に脆くなる性質があ
り、製品になるまでの間に加熱処理を伴うもの、あるい
は、特に熱処理は受けなくとも機械加工に伴って部分的
に前記温度に加熱される工程を伴うもの、例えば、薄帯
を適当な幅と長さに切断してからコイル状に巻回し、熱
処理されて製造されるトランス、ガラス溶着工程を経て
製造される接合型磁気ヘッド、あるいは、薄帯をプレス
打ち抜き加工してから積層し構成される積層型磁気ヘッ
ドなどには適用できない欠点があった。更に、レーザに
よる加工により積層コアを作製する場合、前記合金は1
50〜200℃の低い温度で脆くなるためにレーザ加工
による積層コアの作製にもこの合金を適用できない問題
があり、更に前記温度以上で行う温間プレス加工にも適
さない問題がある。
率を兼備し、かつ、高い機械強度と高い熱安定性を併せ
持ち、ガラス溶着時の熱やレーザ加工の熱、あるいは、
切断あるいはプレス加工などの機械加工の熱に耐えて加
工後も優れた軟磁気特性を発揮できる優れたFe基軟磁
性合金を製造する方法を提供することである。
記課題を解決するために、Feと元素MとBからなり、
結晶組織の少なくとも50%以上が平均結晶粒径30n
m以下の体心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯
を急冷した後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300
℃以下の熱がかけられても最大歪が1であり、1.48
T以上の飽和磁束密度を有し、次式で示される組成から
なり、前記非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施
すことにより結晶組織が生成されることを特徴とするF
e基軟磁性合金。 Fe b B x M y 但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのいずれかを含み、
組成比b,x,yは、b=75〜93原子%、x=0.5〜1
2原子%、y=4〜9原子%なる関係を満足するものと
する。
ために、Feと元素MとBと元素Xからなり、結晶組織
の少なくとも50%以上が平均結晶粒径30nm以下の
体心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯を急冷し
た後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300℃以下の
熱がかけられても最大歪が1であり、1.48T以上の
飽和磁束密度を有し、次式で示される組成からなり、前
記非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施すことに
より結晶組織が生成されることを特徴とする。 Fe b B x M y X z ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのうちいずれかを含
み、XはCr,Ru,Rh,Irのうち1種または2種
以上であり、組成比b,x,y,zは、b=75〜93原子
%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、z≦5原
子%なる関係を満足するものとする。
ために、Feと元素MとBと元素X'からなり、結晶組
織の少なくとも50%以上が平均結晶粒径30nm以下
の体心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯を急冷
した後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300℃以下
の熱がかけられても最大歪が1であり、1.48T以上
の飽和磁束密度を有し、次式で示される組成からなり、
前記非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施すこと
により結晶組織が生成されることを特徴とするFe基軟
磁性合金。 Fe b B x M y X' t ただしMは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのいずれかを含み、
X’はSi,Al,Ge,Gaのうち1種または2種以
上であり、組成比b,x,y,tは、b=75〜93原子
%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、t≦4原
子%なる関係を満足するものとする。
溶湯を急冷して非晶質状態の合金薄帯とした場合に最大
歪の値が組成に応じて300〜500℃の温度領域まで
低下しない。このことは、本発明に係る合金の薄帯を部
分的に300〜500℃の温度に加熱する加工を施した
場合であっても合金薄帯自体が脆くならないことを意味
する。従ってプレス加工などの機械加工あるいはレーザ
加工や切断加工などにより本発明合金からなる薄帯を全
体的または部分的に加熱する処理を行っても本発明合金
の薄帯が脆くならないので、これらの加工を必要とする
トロイダルコアやトランスあるいは積層型磁気ヘッドに
本発明合金の薄帯を適用できる。また、本発明のFe基
軟磁性合金は結晶化後に飽和磁束密度が1.48T以上
と高く、透磁率が高い優れた軟磁気特性を発揮する。
本合金の第1の例として、Fe b B x M yの組成式で
示され、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのうちいずれかを含
み、組成比b,x,yは、b=75〜93原子%、x=0.5
〜12原子%、y=4〜9原子%の関係を満足するもの
を用いることができる。本合金の第2の例として、(F
e 1-a Z a)b B x M yの組成式で示され、Zは、N
i,Coのうち1種または2種を示し、組成比a,b,
x,yは、a≦ 0.2、b=75〜93原子%、x=0.5〜
12原子%、y=4〜9原子%の関係を満足するものを
用いることができる。
y X zの組成式で示され、X はCr,Ru,Rh,I
rのうち1種または2種以上であり、組成比b,x,y,z
は、b=75〜93原子%、x=0.5〜12原子%、y=
4〜9原子%、z≦5原 子%の関係を満足するものを用
いることができる。本発明合金の第4の例として、(F
e 1-a Z a)b B x M y X zの組成式で示され、組
成比a,b,x,y,zは、a≦0.1、b=75〜93原子
%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、z≦5原
子%の関係を満足するものを用いることができる。
y X' tなる組成式で示され、X’はSi,Al,G
e,Gaのうち1種または2種以上であり、組成比b,
x,y,tは、b=75〜93原子%、x=0.5〜18原子
%、y=4〜9原子%、t≦ 4原子%の関係を満足する
ものを用いることができる。本合金の第6の例として、
(Fe 1-a Z a)b B x M yX' tの組成式 で示さ
れ、組成比a,b,x,y,tは、a≦0.2、b=75〜93
原子%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、t≦
4原子%の関係を満足するものを用いることができる。
y Xz X' tの組成式で示され、組成比b,x,y,z,t
は、b=75〜93原子%、x=0.5〜12原子%、y=
4〜9原子%、z≦5原子%、t≦4原子%の関係を満
足するものを用いることができる。本合金の第8の例と
して、(Fe 1-a Z a)b B x M y Xz X' tの組成
式で示され、組成比a,b,x,y,z,tは、a≦0.2、b
=75〜93原子%、x=0.5〜12原子%、y=4〜
9原子%、z≦5原子%、t=≦4原子%の関係を満足す
るものを用いることができる。
前記の組成とすることが好ましい理由を説明する。前記
組成の合金にはBが必ず添加されている。Bには、軟磁
性合金の非晶質形成能を高める効果、および熱処理工程
において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑
制する効果があると考えられ、このためB添加は必須で
ある。本来、α-Feに対してZr、Hfはほとんど固
溶しないが、前記組成の合金の全体を急冷して非晶質化
することで、ZrとHfを過飽和に固溶させ、この後に
施す熱処理によりこれら元素の固溶量を調節して一部結
晶化し、微細結晶相として析出させることで、得られる
軟磁性合金の軟磁気特性を向上させ、薄帯の磁歪を小さ
くできる。また、微結晶相を析出させ、その微結晶相の
結晶粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の障害とな
り得る非晶質相を粒界に残存させることが必要であると
考えられる。更に、この粒界非晶質相は、熱処理温度の
上昇によってα-Feから排出されるZr,Hf,Nb
等のM元素を固溶することで、軟磁性を劣化させるFe
-M系化合物の生成を抑制すると考えられる。よってF
e-Zr(Hf)系の合金にBを添加することが重要と
なる。
粒界の非晶質相が不安定となるため、十分な添加効果が
得られない。また、Xが12原子%を超えるとB-M系お
よびFe-B系のほう化物の生成傾向が強くなり、この
結果、微細結晶組織を得るための熱処理条件が制約さ
れ、良好な軟磁気特性が得られなくなる。このBの含有
量は、1.5T以上の高飽和磁束密度を得るためには1
0原子%以下であることが好ましいが、B量を10〜1
8原子%の範囲とすると合金の電気抵抗を増加させるこ
とができ、高周波での渦電流損失を低減できるので、1
0〜18原子%の範囲としても良い。このように適切な
量のBを添加することで析出する微細結晶相の平均結晶
粒径が30nm以下になる。
において、非晶質相を得やすくするためには、非晶質形
成能の特に高いZr、Hf、Nbのいずれかを含む必要
がある。また、Zr、Hf、Nbはそれらの一部を他の
4A〜6A族元素のうち、Ti、V、Ta、Mo、Wと
置換することができる。本発明の合金において、M元素
は、比較的遅い拡散種であり、M元素の添加は微細結晶
核の成長速度を小さくする効果を持つと考えられ、組織
の微細化に不可欠である。しかし、M元素の添加量Yが
4原子%より小さくになると、核成長速度を小さくする
効果が失われ、この結果、結晶粒径が粗大化し良好な軟
磁性が得られない。Fe-Hf-B系合金の場合、Hf=
5原子%での平均結晶粒径は13nmであるのに対して
Hf=3原子%では39nmと粗大化する。Y量が9原
子%を超えると、M-B系またはFe-M系の化合物の生
成傾向が大きくなり、良好な特性が得られないほか、液
体急冷後のテープ状合金が脆化し、所定のコア形状に加
工することが困難となる。よって、Yの範囲を4〜9原
子%とした。
組成式において、Fe、Co、Ni量のbは、93原子
%以下である。これは、bが93原子%を超えると液体
急冷法によって非晶質単相を得ることが困難になり、こ
の結果、熱処理してから得られる合金の組織が不均一に
なるため高い透磁率が得られないためである。また、飽
和磁束密度10kG以上を得るためには、bが75原子
%以上であることがより好ましいのでbを75〜93原
子%とした。
物の生成自由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に安定
であり、製造時に酸化しずらいものである。よってこれ
らの元素を添加している場合は、製造条件が容易で安価
に製造することができ、また、コストの面でも有利であ
る。これらの元素を添加して前記軟磁性合金を製造する
場合に、具体的には、溶湯を急冷する際に使用するるつ
ぼのノズルの先端部に、不活性ガスを部分的に供給しつ
つ大気中で製造もしくは大気中の雰囲気で製造すること
ができる。
説明したが、これらの元素以外でも耐食性を改善するた
めに、Cr、Ru、Rh、Irなどの白金族元素を添加
することも可能である。これらの元素は5原子%よりも
多く添加すると、飽和磁束密度の劣化が著しくなるた
め、添加量は5原子%以下に抑える必要がある。また、
必要に応じて、Y、希土類元素、Zn、Cd、Ga、I
n、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、T
e、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等の元素を添
加することで合金の磁歪を調整することもできる。その
他、前記合金において、H、N、O、S等の不可避的不
純物については所望の特性が劣化しない程度に含有して
いても本発明で用いる軟磁性合金の組成と同一とみなす
ことができるのは勿論である。
ように合金原料を混合して溶解し合金溶湯を得た後、回
転している銅製などの金属ロールに溶湯を噴出して急冷
する液体急冷法を実施する。この液体急冷法により非晶
質状態のリボン状の薄帯を得ることができる。この薄帯
を得たならば、これを必要な長さや幅に切断するか、所
望の形状に打ち抜き加工してトランス用、磁気ヘッド用
などとして使用することができる。
〜700℃で加熱した後に冷却する熱処理を施すことが
好ましい。この熱処理により非晶質相の中に微細結晶相
が析出して磁気特性が向上する。
スのコアを製造する場合の例について説明する。前記組
成の合金の薄帯を用意したならば、この薄帯を図1
(a)に示すような巻枠1に巻き付けておき、この巻枠
1から薄帯2を繰り出しつつローラ状のカッターなどの
切断装置3で所定の幅の複数の薄帯4に切断し、他の巻
枠5に巻き取る。この例では1つの薄帯2から3本の薄
帯4に切断するので、図1(b)に示すような状態とな
る。この工程において、長尺の薄帯2を連続切断する
と、切断装置3のカッター部分は加熱状態となり、薄帯
2の切断部分では部分的に200〜300℃程度の温度
に加熱されるが、前記組成の合金は200〜300℃の
温度域では脆くならないので切断の際に薄帯を傷めるこ
とはない。
2(b)に示すように巻枠5から取り出して絶縁テープ
とともにロール状に巻き付けて磁心本体(トロイダルコ
ア本体)6を形成する。ここで用いる絶縁テープは、高
電圧駆動時の層間における絶縁破壊を防止し、また、渦
電流損失を小さくして発熱を抑えるなどの目的で設けら
れ、樹脂系皮膜や樹脂テープ、無機質系材料皮膜や無機
質材料製テープあるいは水ガラス中にアルミナやマグネ
シア、窒化ほう素、珪砂、石英などの無機質系粒子を分
散させたもの、あるいは、これらの無機質系粒子を樹脂
テープにコーティングしたり、コーティング後に必要に
応じて焼き付けたたものなどが適宜用いられる。絶縁テ
ープを構成する樹脂材料として、アルキド樹脂を有機溶
剤に溶解した溶剤型ワニステープ、スチレンモノマと不
飽和ポリエステル樹脂からなる無溶剤型ワニスのテー
プ、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシエ
ステル系樹脂などを例示することができる。なお、前記
薄帯4と絶縁テープを同時に巻き付ける代わりに、絶縁
層を薄帯4に被覆してから巻き付け加工しても良い。前
記絶縁層を薄帯4に被覆するには、例えば薄帯4の表面
に、電気泳動法で無機質粒子を付着させる方法、あるい
は、溶射により被覆する方法、スパッタや真空蒸着によ
り無機質層を被覆する方法などを適宜用いることができ
る。また、珪砂、石英などを単独であるいは混合して樹
脂中に注入して絶縁層2を製造することもできる。
体6を図3に示すような加熱炉7に挿入して500〜7
00℃に温度に加熱し、薄帯4の内部に微細結晶相を生
成させる。この熱処理により薄帯を構成する軟磁性合金
の軟磁気特性が向上するとともに、硬度が高くなる。
に樹脂液9に浸漬させて樹脂被覆10を形成し、図5に
示すように巻線11を巻き付けることで図5に示すトロ
イダルコア(積層磁心)12を得ることができる。ま
た、前記の工程において、樹脂被覆を行う代わりに、図
4(b)に示すように磁心本体6を収納容器14と蓋体
15からなる収納ケースに挿入し、その後に巻線加工を
施してトロイダルコアを製造しても良い。
コア12を製造する場合、製造途中の工程において切断
加工のように薄帯2に部分的に熱が加わる工程があった
としても前記組成の合金薄帯であるならば、脆化により
薄帯を損傷させることなくトロイダルコア12を製造で
きる。このように得られたトロイダルコア12は、前記
組成の軟磁性合金を主体として構成されているので、
1.3〜1.64T(テスラ)程度の極めて優れた飽和磁
束密度を発揮し、100kHz程度の高周波域における
コアロスが少なくなり、発熱が少なく特性劣化を生じな
いものとなる。よって、トロイダルコア12の小型軽量
化に寄与する。
によりトロイダルコア12を製造したが、薄帯4からリ
ングを打ち抜き加工により製造し、このリングを積層し
て積層磁心を形成しても良い。即ち、薄帯4から打ち抜
き加工によりリングを複数枚形成し、これらのリングの
間に絶縁層を介在させた状態で積層することで積層磁心
を形成することができる。ここでの絶縁層を構成する材
料は先に説明した絶縁層を構成するものと同等のものを
用いることができる。この例の構造の積層磁心にあって
も優れた軟磁気特性を示すリングを積層して構成されて
いるので、優れた軟磁気特性と少ないコアロスを示し、
磁心の小型軽量化に寄与する。
ズルから種々の組成の合金溶湯をArガスの圧力により
ロール表面に噴出させ、急冷して厚さ20〜23μmの
合金薄帯を複数得た。得られた合金薄帯試料は、Fe90
Zr7B3なる組成(厚さ20μm)と、Fe94Nb7B9
なる組成(厚さ22μm)と、Fe73.5Si13.5B9N
b3Cu1なる組成(厚さ21μm)のものである。続い
て各試料において、薄帯を種々の温度でアニール処理
し、その後、曲げ試験を行い、最大歪を測定した。曲げ
試験は、2本のロッドと薄帯試料を用い、2本のロッド
の先端部の間にロッドと平行に配置した薄帯を挟み、2
本のロッドを徐々に接近させて薄帯を山状に折り曲げる
ものとし、このように山状に折り曲げていった場合に薄
帯が折れて切れたときのロッドの端面間の幅をLとし、
薄帯の厚さをtとした場合に、t/(L−t)の値を最
大歪(λf)と定義することにした。その結果を図6に
示す。
は、2本のロッドが折り曲げられた薄帯を介して接触す
るまで薄帯が切れずに折れ曲がったことを意味し、それ
より値が低下した場合は、山状に折り曲げている途中で
薄帯が折れて切れたことを意味する。図6に示す結果か
ら、本発明に係るFe90Zr7B3とFe84Nb7B9なる
組成の軟磁性合金試料は、最大歪の低下し始める温度が
380〜500℃の温度であるので、400〜500℃
のアニール処理後でも脆くなりにくいことを意味し、F
e73.5Si13.5B9Nb3Cu1なる組成の比較例合金試
料は100〜200℃のアニール処理で極めて脆くなる
ことが明らかになった。
大歪と硬度(Hv)のアニール温度依存性を測定した結
果を示すものである。図7に示す結果から、この組成の
合金試料は約450℃以上の熱処理を行うことで硬度が
向上し始め、最大歪が低下し始めるので、製造工程の途
中において、450℃以下の温度で加工されることがあ
っても脆くならないことが明らかである。
を示すものである。この図に示す結果から、As-Quenche
d(急冷後未熱処理)状態の試料と450℃で1時間熱
処理した試料と470℃で1時間熱処理した試料のいず
れの試料であっても約550℃の温度に加熱することで
bcc構造のFeの析出による熱放出が見られ、これに
より微細結晶組織に変わることが明らかである。
さ22μm)の最大歪と硬度と比抵抗のアニール温度依
存性を測定した結果を示すものである。図9に示す結果
から、この組成の合金試料は350℃以上の熱処理を行
うことで硬度が向上し始め、最大歪が低下し始めるの
で、製造工程の途中において350℃以下の温度で加工
されることがあっても脆くならないことが明らかであ
る。
なる組成の試料(厚さ21μm)の最大歪と硬度と比抵
抗のアニール温度依存性を測定した結果を示すものであ
る。図10に示す結果から、この組成の合金試料は約1
50℃以上の熱処理を行うことで硬度が向上し始め、最
大歪が低下し始めるので、製造工程の途中において15
0〜250℃以下の温度で加工されることがあると脆く
なることが明らかである。この系の合金がこのような温
度で脆化するのは、Feに対する固溶度が著しく低く、
相分離傾向があるCuを含んでいるためであると思われ
る。即ち、FeとCuを含む合金の場合、非晶質相が不
均一となる傾向がより顕著であるため脆化するものと推
定している。
材料を調製し、これをノズル付きのるつぼ内で高周波溶
解して合金溶湯を得、これを高速回転している銅ロール
にノズルから吹き出させて急冷する液体急冷法を実施
し、厚さ15〜20μmの合金薄帯を得た。得られた薄
帯を外径10mm、内径6mmの円環状に打ち抜き加工
したものを)600〜650℃で1時間加熱する熱処理
を施し、次いで絶縁紙を貼り付けて絶縁処理した。この
絶縁処理済みの円盤体を20枚重ねて磁心を形成し、巻
線を施し、凌和電子(株)製の交流磁化試験装置(MM
S0375)を用いてコアロスを測定した。その結果を
表1に示す。
明に係る磁心は、1.4〜1.64テスラ(T)の範囲の
優れた飽和磁束密度を示し、100kHzにおけるコア
ロスも少なく極めて優秀な特性を発揮した。
成の軟磁性合金であり、合金溶湯を急冷した後の非晶質
状態の合金薄体が300℃以下の熱がかけられても最大
歪が1であるので、100〜300℃程度の熱が作用す
る加工処理がなされても脆化することがないので、温間
プレスや打ち抜き加工などの機械加工、切断加工が可能
であり、加工後に熱処理しても1.48T以上の高い飽
和磁束密度と低いコアロスを示す特徴がある。
溶湯から急冷して得た非晶質状態の合金薄体を用いて積
層磁心とするならば、積層磁心を製造する途中の工程に
おいて300℃以下に加熱されることがあっても、脆化
することがないので、温間プレスや打ち抜き加工などの
機械加工、切断加工などの処理を経てから巻き付け加工
を施して得られる積層磁心を製造しても脆化することな
く、結晶化後に目的の1.48T以上の高い飽和磁束密
度と低いコアロスが得られる。よって、本発明により、
高周波域における損失の少ない飽和磁束密度の高い小型
化軽量化した積層磁心を提供できる。
置を用いて切断している状態を示す斜視図、図1(b)
は同切断状態の薄帯を示す平面図である。
トロイダルコア本体を製造している状態を示す側面図、
図2(b)は同状態を示す説明図である。
を示す断面図である。
樹脂被覆している状態を説明するための断面図、図4
(b)は熱処理後のトロイダルコア本体をケースに収納
している状態を示す分解斜視図である。
ある。
の関係を示す図である。
ール温度の関係を示す図である。
ある。
とアニール温度の関係を示す図である。
ール温度の関係を示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 Feと元素MとBからなり、結晶組織の
少なくとも50%以上が平均結晶粒径30nm以下の体
心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯を急冷した
後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300℃以下の熱
がかけられても最大歪が1であり、1.48T以上の飽
和磁束密度を有し、次式で示される組成からなり、前記
非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施すことによ
り結晶組織が生成されることを特徴とするFe基軟磁性
合金。 Fe b B x M y 但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのいずれかを含み、
組成比b,x,yは、b=75〜93原子%、x=0.5〜1
2原子%、y=4〜9原子%なる関係を満足するものと
する。 - 【請求項2】 Feと元素MとBと元素Xからなり、結
晶組織の少なくとも50%以上が平均結晶粒径30nm
以下の体心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯を
急冷した後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300℃
以下の熱がかけられても最大歪が1であり、1.48T
以上の飽和磁束密度を有し、次式で示される組成からな
り、前記非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施す
により結晶組織が生成されることを特徴とするFe基軟
磁性合金。 Fe b B x M y X z ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのうちいずれかを含
み、XはCr,Ru,Rh,Irのうち1種または2種
以上であり、組成比b,x,y,zは、b=75〜93原子
%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、z≦5原
子%なる関係を満足するものとする。 - 【請求項3】 Feと元素MとBと元素X'からなり、
結晶組織の少なくとも50%以上が平均結晶粒径30n
m以下の体心立方構造の微細結晶粒からなり、合金溶湯
を急冷した後に得られる非晶質状態の合金薄帯が300
℃以下の熱がかけられても最大歪が1であり、1.48
T以上の飽和磁束密度を有し、次式で示される組成から
なり、前記非晶質状態に500〜700℃の熱処理を施
すことにより結晶組織が生成されることを特徴とするF
e基軟磁性合金。 Fe b B x M y X' t ただしMは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元
素であり、かつ、Zr,Hf,Nbのいずれかを含み、
X’はSi,Al,Ge,Gaのうち1種または2種以
上であり、組成比b,x,y,tは、b=75〜93原子
%、x=0.5〜12原子%、y=4〜9原子%、t≦4原
子%なる関係を満足するものとする。
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