JP3294938B2 - Fe系軟磁性合金 - Google Patents

Fe系軟磁性合金

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッド、トラン
ス、チョークコイル等に用いられる軟磁性合金に関する
ものであり、特に、軟磁気特性に優れたFe系軟磁性合
金に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ヘッド、トランス、チョークコイル
等に用いられる軟磁性合金において、一般的に要求され
る諸特性は以下の通りである。 飽和磁束密度が高いこと。 透磁率が高いこと。 低保磁力であること。 薄い形状が得やすいこと。 また、磁気ヘッドに対しては、前記〜に記載の特性
の他に、耐摩耗性の観点から以下の特性が要求される。 硬度が高いこと。
【0003】従って、軟磁性合金あるいは磁気ヘッドを
製造する場合、これらの観点から種々の合金系において
材料研究がなされている。従来、前述の用途に対して
は、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ
(Fe-Ni合金)、けい素鋼等の結晶質合金が用いら
れ、最近ではFe基およびCo基の非晶質合金も使用さ
れるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに磁気ヘッドの
場合、高記録密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に
対応するため、より好適な高性能磁気ヘッド用の磁性材
料が望まれている。また、トランス、チョークコイルの
場合は、電子機器の小型化に伴い、より一層の小型化が
必要であるため、より高性能の磁性材料が望まれてい
る。ところが、前述のセンダストは、軟磁気特性には優
れているものの、飽和磁束密度が約11KGと低い欠点
があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる合金
組成においては、飽和磁束密度が約8KGと低い欠点が
あり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特性
に劣る欠点がある。
【0005】更に、非晶質合金において、Co基合金は
軟磁気特性に優れているものの、飽和磁束密度が10K
G程度と不十分である。また、Fe基合金は飽和磁束密
度が高く、15KGあるいはそれ以上のものが得られる
が、軟磁気特性が不十分である。また、非晶質合金の熱
安定性は充分でなく、未だ未解決の面がある。前述のご
とく高飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を兼備すること
は難しい。
【0006】一方、従来、高飽和磁束密度を有し、低鉄
損のトランス用合金として、特開平1ー242757号
公報に開示されているように、 一般式(Fe 1-a1 a100-x-y-z-t Cu x Si y
z 2 t (ただし、M1はCoおよび/またはNiであり、M2
Nb,W,Ta,Mo,Zr,HfおよびTiからなる
群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a,x,
y,z,t はそれぞれ原子%で、0≦a≦0.3、0.1≦x
≦3、0≦y≦17、4≦z≦17、10≦y+z≦28、
0.1≦t≦5を満たす。)なる組成を示し、組織の少な
くとも50%が微細な結晶粒からなり、前記結晶粒の最
大寸法で測定した粒径の平均が1000オングストロー
ム以下の平均粒径を有する合金が知られている。
【0007】前述の微細結晶合金は、特公平4ー439
3号公報(U.S.P. No. 5,160,379)に開示
されているような、Fe-Si-B系の非晶質合金を出発
材料として開発されたものである。Fe-Si-B系合金
において、組織を非晶質化する元素はSiとBであり、
実用上十分な熱安定性を備えた合金のFe含有量は70
〜80原子%である。この非晶質合金は、従来のFe-
Si系合金よりも優れた磁気特性を有しているものであ
った。前記の特許出願に係る微細結晶合金は、Fe-S
i-B合金にCuと元素Mを添加したFe-M1-Cu-S
i-B-M3系のものであり、ここで元素M3 はNb,
W,Ta,Zr,Hf,Ti,Moから選択される少な
くとも1種の元素である。この系の合金において、Cu
を含有させることは必須の条件であり、Cuの添加によ
り、非晶質中に揺らぎを生じさせて微細結晶粒を生成さ
せ、組織を微細化することができるとされている。ま
た、Cuを含有させない場合は、結晶粒を微細化するこ
とは難しく、化合物相が生成され易くなって磁気特性が
劣化することが前述の特許公報に記載されている。
【0008】更にこの系の合金においては、CuとNb
との相互作用により結晶粒の成長を抑えることができ
る。従ってNbもしくはCuの単独添加のみでは、結晶
粒の成長は抑えられないことから、NbとCuの複合添
加は必須であるとされている。このことは、日本金属学
会誌第53巻第2号(1989年)の第241頁〜第2
48頁において、先に記載した特許出願の発明者らが発
表した内容において述べられている。なお、前記特公平
4ー4393号公報の第20図の組成図から、この系の
合金においてSi=0であれば、低磁歪が得られないこ
とがわかり、Siは磁歪を小さくする効果があるので、
磁歪を小さくするためにはSiの添加は必須である。
【0009】このような従来技術に対し本願発明者ら
は、全く異なる観点から、全く異なる成分系の材料を用
いて軟磁性材料の開発を進めており、その中に、前記セ
ンダスト、パーマロイ、けい素鋼などの従来技術に鑑み
て先に特許出願している特公昭60ー30734号公報
に見られるFe(Co,Ni)-Zr系合金がある。こ
のFe(Co,Ni)-Zr系の合金は、非晶質形成能
力の大きいZrを添加しているので、Zrの添加量を少
なくしても非晶質化を図ることができ、Feの濃度を9
0%以上とすることが可能である。更にZrと同様な非
晶質形成元素としてHfを用いることができるものであ
った。ところがこの系においてFe濃度が高い合金のキ
ュリー点は、室温付近であるがために、磁心材料として
は実用的な合金ではなかった。
【0010】次に本願発明者らは、Fe-Hf系の非晶
質合金を特殊な方法で一部結晶化させることで、平均結
晶粒径10〜20nm程度の微細結晶組織を得ることが
できることを知見し、1980年に、「CONFERENCE ON
METALLIC SCIENCE ANDTECHNOLGY BUDAPEST 」の第21
7頁〜第221頁において発表している。この発表時の
技術から鑑みると、Fe-Hf系合金においてはCu等
の元素を添加しなくとも組織の微細化が起こり得ること
が示唆される。このメカニズムについては明らかではな
いが、非晶質合金を作成する場合の急冷状態で既に組織
のゆらぎが存在し、このゆらぎが不均一核生成のサイト
となって均一かつ微細な核が多数生成するものと考えら
れる。
【0011】前述の通り、Fe-Hf系の合金は、非晶
質状態では良好な磁気特性を示さない。しかしこの合金
が、非磁性添加元素を必要とせずに微細化することを考
慮すると、Fe-Hf系非晶質合金を出発材料とするこ
とで、従来にない高いFe濃度の微細結晶合金が得ら
れ、従って先のFe-Si-B系の微細結晶合金よりもさ
らに高い飽和磁束密度を持つ新合金の出現が期待され
る。そこで本発明者らが更に研究を進めた結果、粒成長
を抑えるためには、Fe-M系微微結晶合金の熱的安定
性を高める必要があり、更に、粒成長の障壁となり得る
熱的に安定な非晶質相を粒界に残存させることが必要で
あり、そのような観点から非晶質合金の熱的安定性を高
める元素であるBに着目して研究を進めた。
【0012】その結果として本発明者らは先に、前記の
課題を解決した高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金を特願
平2−108308号明細書において、平成2年4月2
4日付けで特許出願している。
【0013】この特許出願に係る合金の1つは、次式で
示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度
であった。 (Fe1-aCoabxyT’z 但しTは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であ
り、且つ、Zr、Hfのいずれか、または両方を含み、
T’は、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Ptからなる
群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、a≦
0.05、b≦92原子%、x=0.5〜16原子%、y
=4〜10原子%、z=0.2〜4.5原子%である。
【0014】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度合金であった。 FebxyT’z 但しTは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であ
り、且つ、Zr、Hfのいずれか、又は両方を含み、
T’は、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Ptからなる
群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、b≦9
2原子%、x=0.5〜16原子%、y=4〜10原子
%、z=0.2〜4.5原子%である。
【0015】更に本発明者らは、前記合金の発展型の合
金として、平成2年8月31日付けで特願平2−230
135号明細書において、以下に示す組成の合金につい
て特許出願を行なっている。この特許出願に係る合金の
1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする
高飽和磁束密度合金であった。 (Fe1-aabxy 但し、QはCo、Niのいずれか又は両方であり、T
は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから
なる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且
つ、Zr、Hfのいずれか、または両方を含み、a≦
0.05、b≦93原子%、x=0.5〜8原子%、y=
4〜9原子%である。
【0016】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とするもの
である。 Febxy 但しTは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であ
り、且つ、Zr、Hfのいずれか、又は両方を含み、b
≦93原子%、x=0.5〜8原子%、y=4〜9原子
%である。
【0017】そこで、本願発明者らは、更に鋭意研究を
重ねた結果、先に出願した特願平2−108308号お
よび特願平2−230135号に記載の合金のT’のA
g、Au、Ni、Pd、Ptに代えて、これをGe、G
a、Al、Sn、Pd、Bi、Ruからなる選ばれた1
種又は2種以上の元素とすることにより、より優秀な透
磁率を有する軟磁性合金を得ることができることを知見
した。
【0018】本発明の目的は、前記特許出願の軟磁性合
金を発展させて製造しやすくするとともに、高飽和磁束
密度、高透磁率を兼備し、かつ高い機械的強度と高い熱
安定性を併せ持つFe系軟磁性合金を提供することであ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のFe系
軟磁性合金は、上記課題を解決するために、次式で示さ
れる組成からなることを特徴とするものである。 (Fe1-aabxyT’z 但しQはCo、Niのいずれかまたは両方であり、元素
QがCoのときTはZr、元素QがNiのときTはNb
であり、T’は、Gaであり、a≦0.05、b=75
〜92原子%、x =0.5〜18原子%、y=4〜10
原子%、z≦4.5原子%である。
【0020】請求項2に記載のFe系軟磁性合金は、上
記課題を解決するために、次式で示される組成からなる
ことを特徴とするものである。 FebxyT’z 但しTは、ZrまたはNbのいずれか1種の元素であ
り、T’は、Ge又はGaのいずれか1種の元素であ
り、b≦92原子%、x=0.5〜18原子%、y=4
〜10原子%、z≦4.5原子%である。
【0021】
【0022】
【0023】請求項に記載のFe系軟磁性合金は、、
上記課題を解決するために、先のいずれかに記載のFe
系軟磁性合金において、z=0.2〜2 原子%としたも
のである。
【0024】請求項に記載のFe系軟磁性合金は、上
記課題を解決するために、先のいずれかに記載のFe系
軟磁性合金において、元素Tが、Nbである場合、x=
6.5〜18原子%としたものである。
【0025】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の
軟磁性合金は、前記組成の非晶質合金あるいは非晶質相
を含む結晶質合金を溶湯から急冷することにより得る工
程あるいはスパッタ法あるいは蒸着法等の気相急冷法に
より得る工程と、これらの工程で得られたものを加熱し
微細な結晶粒を析出させる熱処理工程を実施することに
よって通常得ることができる。
【0026】本発明の軟磁性合金にはBが必ず添加され
ている。Bには軟磁性合金の非晶質形性能を高める効
果、および前記熱処理工程において、磁気特性に悪影響
を及ぼす化合物相の生成を制御する効果があると考えら
れ、このためB添加は必須である
【0027】また、軟磁性合金において、非晶質相を得
やすくするためには、非晶質形成能の高いZr、Hfの
いずれかを含む必要がある。従ってこれらの元素を含む
場合にBの添加量を少なくすることができるので、0.
5〜18原子%とすることができる。しかしながら、Z
r、Hf以外の元素を元素Tの1種として添加する場
合、Zr、Hf以外の元素の非晶質形成能力が低いため
に、Bの添加量を6.5〜18原子%とすることがより
好ましい。
【0028】そして、Zr、Hfはその一部を他の4A
〜6A族元素のうち、Ti、V、Nb、Ta、Mo、W
の内の1種又は2種以上と置換することができ、同等の
効果を得ることができる。これらの元素の中でもNbと
Taは、融点の高い金属材料であって熱的に安定であ
り、製造時に酸化しずらいものである。よって、これら
元素をZr、Hfに代えて添加している場合、あるいは
Zr、Hfを少なくして前記元素を多くした場合には、
先に本願発明者らが特許出願している材料においてHf
やZrを主体とするものよりも製造条件が容易で安価に
製造することができ、また、コストの面でも有利であ
る。即ち、先に本願発明者から特許出願している合金に
おいては、真空雰囲気中において不活性ガスを供給して
酸化に留意しつつ製造する必要があったが、本願発明の
合金においては製造条件を緩くすることができる。具体
的には、ノズル先端部に不活性ガスを部分的に供給しつ
つ、大気中で製造もしくは大気中の雰囲気で製造するこ
とができる。
【0029】更に、本発明においては、Ge又はGa
を、4.5原子%以下の量で含有されることが好まし
い。添加量が4.5原子%を超えると透磁率が劣化し、
添加効果が得られない。添加量が0.2原子%より少な
いと前記熱処理工程により優れた軟磁気特性を得ること
が難しいが、飽和磁束密度が若干向上するため、これら
の元素の含有量は0.2原子%以下でも良い。しかしな
がら、0.2〜2原子%の範囲の添加量がより好まし
く、この範囲の添加量で10000以上の透磁率が得ら
れる。
【0030】上記Ge、Gaの添加により、軟磁気特性
が改善される機構については明らかではないが、結晶化
温度を示差熱分析法により測定したところ、上記Ge、
aを添加した結晶化温度は、添加しない合金に比べて
やや低い温度であると認められた。これは前記元素の添
加により非晶質が不均一となり、その結果、非晶質の安
定性が低下したことに起因すると考えられる。不均一な
非晶質相が結晶化する場合、部分的に結晶化しやすい領
域が多数でき不均一核生成するため、得られる組成が微
細結晶粒組織となると考えられる。以上の観点から上記
元素以外の元素でも結晶化温度を低下させる元素には、
同様の効果が期待できる。
【0031】また、Feに対する固溶度が著しく低い元
素である場合についても、相分離傾向があるため、加熱
によりミクロな組成ゆらぎが生じ、非晶質相が不均一と
なる傾向が顕著になると考えられ、組織の微細化に寄与
するものと考えられる。
【0032】
【0033】更に、本発明合金におけるFe、Co量の
bは、75〜92原子%である。これは、bが92原子
%を超えると高い透磁率が得られないためであるが、飽
和磁束密度10kG以上を得るためには、bが75原子
%以上であることが好ましいのでこのような範囲とし
た。
【0034】
【実施例】以下に、本発明の軟磁性合金の組成限定理由
について実施例をもって詳細に説明する。 (実施例1)以下の各実施例に示す合金は、単ロール液
体急冷法により作成した。即ち、1つの回転している鋼
製ロール上に置かれたノズルより溶融金属をアルゴンガ
スの圧力により前記ロール上に噴出させ、急冷して薄帯
を得る。以上のように作成した薄帯の幅は約15mmで
あり、厚さは約20〜40μmであった。透磁率は、薄
帯を加工し、外径10mm、内径6mmのリング状とし
たもの、または、幅1mm、長さ60mmの短冊状の試
料を用い、インダクタンス法により測定した。実効透磁
率(μe)の測定条件は10mOe、1kHzとした。
なお、特に規定しない限り以下に示す実施例では、60
0℃〜700℃の温度で1時間焼き鈍しを行った後の磁
気特性を示す。
【0035】以下に示す組成からなる合金について、熱
処理を施して得られる軟磁性合金の透磁率の関係を調べ
た。熱処理は、赤外線イメージ炉を使用し、昇温速度1
00℃/分で加熱し、真空中、600℃〜700℃で1
時間保持したものである。熱処理後の冷却速度は40℃
/分で一定とした。測定結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】表1より、Ga、Ge、Sn、Pb、B
i、Ru、Sb、Zn、を添加したものは、これらの元
素を添加しない比較例1、2に比べて、著しく優秀な透
磁率を示すことが判明した。よって、本発明においては
合金中にGa、Geを含有させることを限定した。な
お、上記組成はFe82Nb7101’合金のT’を表1
に示すような各種の元素に置き換えたものであるが、N
bをHfやZrと置換した合金で上記試験を行なった場
合においても、各合金は同様に高い透磁率を示した。ま
た、上記試験における昇温速度は100℃/分とした
が、本発明者らは、先に、特許出願している特願平5−
190674号におけるFe系軟磁性合金の製造方法の
中で、合金の熱処理時の透磁率は、昇温速度に大きく依
存することを知見している。よって、本発明合金におい
ても、同様に熱処理時の上記昇温速度を1.0℃/分以
上にすることが望ましい。よって、本発明合金の磁気特
性は、最適な熱処理条件を適当に選ぶことにより調整さ
れ、また磁場中の焼鈍などにより磁気特性を改善するこ
とができるものである。
【0038】次に、本発明合金の元素T’の含有量の限
定理由について、Geを例にとり以下に説明する。実施
例として図1にFe82Nb711-zGez合金のGe含有
量(z)と透磁率との関係を示す。
【0039】図1からGe量のz=0.2〜4.5原子%
の範囲で優れた実効透磁率が得やすいことが明らかであ
る。Ge量が0.2原子%以下になるとGe添加効果が
有効に得られにくく、またGe量が4.5原子%を超え
ると透磁率の劣化を招くので実用上好ましくない。しか
し、この系の合金は冷却速度を挙げることで透磁率の改
善ができるので、zは実質上0.2原子%以下でも良
い。なお、Ge以外についても上記とほぼ同様な結果を
得ている。よって、本発明合金における元素T’の含有
量の範囲は4.5原子%以下とした。また、透磁率で1
0000を超える値とするためには、z=0.2〜2原
子%の範囲とすることが好ましいことも明らかになっ
た。
【0040】次に、Fe82Nb710Ge1合金の熱処理
後の組織を透過電子顕微鏡を用いて観察した結果を図3
に示す。図3より、熱処理後の組織が、粒径約100μ
m程度の微結晶からなることが判る。また、Fe82Nb
710Ge1合金について熱処理前後の硬さの変化を調べ
たところ、ビッカーズ硬さで急冷状態の900DPNか
ら650℃熱処理後には1400DPNと著しく高い値
を示し、磁気ヘッド用材料に好適な硬さを有しているこ
とも判明した。
【0041】(実施例2)Fe84-zNb79T’zで示
される組成の合金薄帯を単ロール急冷法により作製し、
飽和磁束密度、保磁力、電気抵抗、透磁率、コアロスの
z量依存性について調査した。作製された薄帯の幅は約
15mmであり、厚さは約15〜25μmであった。飽
和磁束密度は、振動式磁束計を用いて10kOeの磁場
で、保磁力は直流BーHトレーサーを用い、10 Oe
で磁場を反転して測定した。電気抵抗は、四端子法によ
り測定し、1kHzおよび100kHzにおける透磁率
はインピーダンスアナライザーにより5mOeの磁場で
測定した。また、コアロスは、交流磁化特性測定装置を
用いBmー2kGauss、f=100kHzの条件で測定
した。透磁率、コアロスの測定試料は外径10mm、内
径6mmのリング状とした。また、以下に示す測定結果
はいずれも昇温速度40℃/分、保持温度650℃、保
持時間1時間の真空中熱処理を行った結果である。
【0042】図3に飽和磁束密度とz量の関係を示す。z
量を増加しても飽和磁束密度の低下の割合はわずかであ
り、本発明合金においてはT’で示される元素を添加し
た後も高い飽和磁束密度を維持できることがわかった。
図4に保磁力とz量の関係を示す。z量を増加しても保磁
力の増大はわずかであり、本発明合金においては、T’
で示される元素を添加した後も小さな保磁力を維持でき
ることがわかった。
【0043】図5に電気抵抗とz量の関係を示す。z量の
増加に伴い電気抵抗も増大した。一般に高周波領域で磁
性材料を使用する場合、渦電流損失を低減する観点か
ら、電気抵抗の大きい磁性材料が望まれる。図5から、
元素T’で示される元素を添加することにより、無添加
の場合に比べて電気抵抗を増大できることが判明した。
従って本発明に係る系の合金は高周波領域における渦電
流損失を少なくできることが判明した。
【0044】図6に透磁率とz量の関係を示す。この結
果から、1kHz付近の透磁率を向上させるためには、
0.2〜2原子%、より好ましくは、1原子%程度の添
加が最も効果的であることがわかる。また、透磁率の高
周波特性を改善し、周波数依存性の平坦な特性を得るた
めには2原子%以上の添加が効果的であることがわか
る。しかし、4.5原子%を超えて添加すると、実施例
1の場合と同様に、透磁率の劣化を招くので実用上好ま
しくない。図7にコアロスとz量の関係を示す。元素
T’で示される元素を添加することにより、無添加の場
合に比べてコアロスを低減できることが判明した。
【0045】(実施例3)Fe83Nb79T’1で示さ
れる組成の合金薄帯を単ロール急冷法により作製し、透
磁率およびコアロスの熱処理温度依存性について調査し
た。作製された薄帯の幅は約15mmであり、厚さは約
15〜25μmであった。透磁率はインピーダンスアナ
ライザーを用いて5mOeの磁場で測定した。また、コ
アロスは交流磁化特性測定装置を用い、Bm=2kGau
ss、f=100kHzの条件で測定した。透磁率、コア
ロスの測定試料は外径10mm、内径6mmのリング状
とした。また、熱処理は昇温速度40℃/分、保持時間
1時間とし、保持温度を400〜650℃まで変化させ
て行った。
【0046】図8には透磁率の熱処理温度依存性を示
す。T’で示される元素を添加した合金は、500〜6
50℃の最適熱処理温度範囲において、無添加の合金に
比べて大きな透磁率を示した。また、Ga、Geを添加
した合金の場合には、10000以上の透磁率がより低
温域で得られており、熱処理温度を低くできる工業的な
利点もあることが判明した。
【0047】図9にコアロスの熱処理温度依存性を示
す。T’で示される元素を添加した合金は、600〜6
50℃の最適熱処理温度範囲において、無添加の合金に
比べてコアロスが低減されていることが明らかである。
また、Ga、Geを添加した場合は、より低温の熱処理
で低いコアロスを得ることができることが判明した。
【0048】(実施例4)本発明による種々の組成の合
金薄帯を単ロール法により作製し、飽和磁束密度と、保
磁力と、透磁率と、コアロスについて調査した。作製さ
れた薄帯の幅は約15mmであり、厚さは約15〜25
μmであった。飽和磁束密度は、振動式磁束計を用いて
10kOeの磁場で、保磁力は直流BーHトレーサーを
用い、10 Oeで磁場を反転して測定した。1kHz
および100kHzにおける透磁率はインピーダンスア
ナライザーにより5mOeの磁場で測定した。また、コ
アロスは、交流磁化特性測定装置を用いBmー2kGau
ss、f=100kHzの条件で測定した。測定試料は外
径10mm、内径6mmのリング状とした。また、以下
に示す測定結果はいずれも昇温速度40℃/分、保持温
度600℃または650℃、保持時間1時間の真空中熱
処理を行った結果である。
【0049】次に、上記実施例によって作製された各組
成の試料を表2〜表4に示す。表2は、T=Nbの場合
の薄帯の厚さ(t)、飽和磁束密度(Bs)、保磁力
(Hc)、コアロスをそれぞれ示すものであり、表3
は、同じくT=Nbの場合の熱処理温度、飽和磁束密
度、保磁力、透磁率、コアロスの測定値、表4はT=Z
rの場合の同じ測定値を示すものである。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】表2〜4からわかるように、添加元素を
T’を加えることにより、T’を添加していない比較例
と比較して透磁率と、コアロスがともに優れた値を示し
ていることがわかる。
【0054】以上の如く本発明合金は、前述の組成を有
する非晶質合金を熱処理により結晶化させ、超微細結晶
粒を主とする組織を得ることにより、軟磁気特性に優
れ、更に高い硬さと高い熱安定性を有する優れた特性を
得ることができる。また、本発明合金における軟磁性合
金の組成にNbを含有させた場合には、前記Nbは高融
点金属であって、熱に強く、製造時に酸化しずらいの
で、製造条件が緩く、製造しやすい特徴がある。よっ
て、本発明の軟磁性合金は、磁気ヘッド用、トランス
用、チョークコイル用として好適であって、これらの用
途に供した場合、これら性能向上と小型化と軽量化をな
しえる効果がある。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、
定組成のFeZrB系あるいはFeNbB系にGaかG
eを特定量添加しているので、従来の実用合金より優れ
た飽和磁束密度を示すとともに、実用に充分な低い保磁
力を示す。しかも、透磁率が従来の実用合金よりも高
く、組成に応じて10000を超える透磁率が容易に得
られるとともに、高い周波数域においても充分に高い透
磁率を示す。更に、低周波域においては勿論、高周波域
に至るまで低いコアロスを実現できる。更にまた、組成
に応じて磁歪を制御することも容易にできる。しかも本
発明の軟磁性合金は、高い機械強度を有し、高い熱的安
定性も兼ね備えている。
【0056】また、本発明の先の組成の合金においてN
bを添加したものは、いずれも熱的に安定であるので、
製造時に酸化反応や還元反応で変質するおそれが低く、
製造時の条件が有利になる利点がある。
【0057】以上のことから本発明の軟磁性合金は、磁
気記録媒体の高保磁力化に対応することが必要な磁気ヘ
ッド、より一層小型化が要求されているトランス、チョ
ークコイル用として好適であって、これらの用途に供し
た場合、これらの性能の向上と小型軽量化をなし得る効
果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例の合金の一例におけるG
a量と透磁率の関係を示す片対数グラフである。
【図2】本発明における実施例の合金の一例の熱処理後
の組成を示す顕微鏡写真の模式図である。
【図3】飽和磁束密度と元素T’の添加量との関係を示
す図である。
【図4】保磁力と元素T’の添加量との関係を示す図で
ある。
【図5】電気抵抗と元素T’の添加量との関係を示す図
である。
【図6】透磁率と元素T’の添加量との関係を示す図で
ある。
【図7】コアロスと元素T’の添加量との関係を示す図
である。
【図8】Fe84Nb79およびFe 83Nb79T’1
組成の試料における透磁率と熱処理温度との関係を示す
図である。
【図9】Fe84Nb79およびFe 83Nb79T’1
組成の試料におけるコアロスと熱処理温度との関係を示
す図である。
フロントページの続き (72)発明者 牧野 彰宏 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アル プス電気株式会社内 (72)発明者 増本 健 宮城県仙台市青葉区上杉3丁目8−22 (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内無番地 川内住 宅11−806 (56)参考文献 特開 平1−294847(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 C22C 45/02 H01F 1/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式で示される組成からなることを特徴
    とするFe系軟磁性合金。 (Fe1-aabxyT’z 但しQはCo、Niのいずれかまたは両方であり、元素
    QがCoのときTはZr、元素QがNiのときTはNb
    であり、 T’は、Gaであり、 a≦0.05、 b=75〜92原子%、 x=
    0.5〜18原子%、 y=4〜10原子%、 z≦
    4.5原子%である。
  2. 【請求項2】 次式で示される組成からなることを特徴
    とするFe系軟磁性合金。 FebxyT’z 但しTは、ZrまたはNbのいずれか1種の元素であ
    り、T’は、Ge又はGaのいずれか1種の元素であ
    り、 b≦92原子%、 x≦0.5〜18原子%、 y=4〜10原子%、 z≦4.5原子%である。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のFe系軟磁性合
    金において、 z=0.2〜2原子%であることを特徴とするFe系軟
    磁性合金。
  4. 【請求項4】 請求項1、2、3のいずれかに記載のF
    e系軟磁性合金において、元素TがNbである場合、x
    =6.5〜18原子%であることを特徴とする Fe系軟
    磁性合金。
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