JP2774708B2 - 軟磁性薄膜およびそれを用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

軟磁性薄膜およびそれを用いた薄膜磁気ヘッド

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JP2774708B2
JP2774708B2 JP3104943A JP10494391A JP2774708B2 JP 2774708 B2 JP2774708 B2 JP 2774708B2 JP 3104943 A JP3104943 A JP 3104943A JP 10494391 A JP10494391 A JP 10494391A JP 2774708 B2 JP2774708 B2 JP 2774708B2
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清策 鈴木
健 増本
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    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/08Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、軟磁性薄膜とそれを
用いた薄膜磁気ヘッドに関し、特に高密度記録に好適な
性能を発揮する磁気ヘッドとそのコア等として使用され
る軟磁性薄膜に関するものである。
【0002】近来、磁気ディスク装置等に用いられる磁
気ヘッドは、磁気ディスク媒体に対する高密度記録化お
よび高効率化が進められ、その形状も益々小型化される
とともに、高精度化がなされている。
【0003】こうした要求に対し、記録の寄与する磁極
先端部でのヘッド磁界分布が急峻で、高密度な記録を可
能とする小型な種々のタイプの薄膜磁気ヘッドが既に提
案され、実用化されている。
【0004】このような磁気ヘッドに用いられる軟磁性
薄膜において一般的に要求される諸特性は以下の通りで
ある。 飽和磁束密度が高いこと。 透磁率が高いこと。 低保磁力であること。 薄い形状が得やすいこと。
【0005】従って磁気ヘッドを製造する場合、これら
の観点から種々の合金系の軟磁性薄膜に関する材料研究
がなされている。
【0006】従来、このような要求に応える軟磁性材料
として、窒化鉄が知られている。これは、窒素雰囲気中
で、鉄をターゲットとしてイオンビーム蒸着、あるいは
スパッタリングを行うことにより薄膜状に形成され、飽
和磁束密度が極めて高い材料である。
【0007】さらに、センダスト、パーマロイ、けい素
鋼等の結晶質合金の他、最近ではFe基およびCo基など
の非晶質合金も使用されるようになってきている。
【0008】また、上述のような単層膜の代わりに、渦
電流損失を低減させる目的で、鉄を主体とする主磁性層
と酸化シリコン等の絶縁体を交互に積層した軟磁性積層
膜も開発されており、単層膜では得られなかった高い飽
和磁束密度と高い透磁率とを両立させることに成功して
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】近年において、高記録
密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するた
め、より好適で高性能な磁気ヘッド用の軟磁性薄膜材料
が望まれている。
【0010】ところで、磁気ヘッドを組み込んだ装置は
小型化、軽量化する傾向があり、移動に伴う振動にさら
されたり、悪環境のもとで使用されたりすることが多く
なっている。そこで、磁気ヘッドには、磁気特性が優秀
であって磁気テープに対する耐摩耗性が優れていること
はもちろん、湿度や腐食性の雰囲気中での耐用性、すな
わち、耐環境性や、耐振動性等が高いことが要求されて
いる。
【0011】そのため、ギャップ形成やケースへの組み
込み等をガラス溶着で行うことが必要となり、磁気ヘッ
ドの素材はヘッドの製造工程におけるガラス溶着工程の
高温に耐えうる熱安定性も含めて要求されてきている。
【0012】しかし、従来開発されている20KGを越
えるほどの極めて高い飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜
は、成膜が終了した段階では十分に保磁力が低くなら
ず、さらに、400℃程度の熱処理によっても保磁力が
上昇し、良好な軟磁気特性を示すものとはいえなかっ
た。
【0013】さらに、前記のセンダストは、軟磁気特性
には優れるものの、飽和磁束密度が約11KGと低い欠
点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる合
金組成においては、飽和磁束密度が約8KGと低い欠点
があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特
性に劣る欠点がある。
【0014】一方、非晶質合金において、Co基合金は
軟磁気特性に優れるものの飽和磁束密度が10KG程度
と不十分である。また、Fe基合金は飽和磁束密度が高
く、15KGあるいはそれ以上のものが得られるが、軟
磁気特性が不十分である。
【0015】さらに、非晶質合金の熱安定性は十分では
なく、未だ未解決の面がある。
【0016】前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁
気特性を兼備することは難しい。
【0017】そこで本発明者らは、先に、前記の従来合
金と非晶質合金の課題を解決した高飽和磁束密度Fe系
軟磁性合金を特願平2ー108308号明細書において
平成2年4月24日付けで特許出願している。
【0018】この特許出願に係る合金の1つは、次式で
示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度
合金であった。 (Fe1-a Co a)b Bx Ty T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
元素であり、a≦0.05、 b≦92原子%、 x=0.
5〜16原子%、 y=4〜10原子%、 z=0.2〜
4.5原子%である。
【0019】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度合金であった。 Fe b BxTy T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
元素であり、b≦92原子%、 x=0.5〜16原子
%、 y=4〜10原子%、z=0.2〜4.5原子%であ
る。
【0020】更に本発明者らは、前記合金の発展型の合
金として、先に、以下に示す組成の合金について特許出
願を行っている。
【0021】この特許出に係る合金の1つは、次式で示
される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度合
金であった。 (Fe1-a Q a)b Bx Ty 但し、QはCo,Niのいずれか、叉は両方を含み、T
はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群から選ば
れた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,Hfの
いずれか、又は両方を含み、 a≦0.05、 b≦93
原子%、 x=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%で
ある。
【0022】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度合金であった。 Fe b BxTy 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、 b≦93原子%、x
=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%である。
【0023】以上のように本発明者らは、前記各組成の
種々のFe系軟磁性合金を開発したわけであるが、前記
組成のFe系軟磁性合金について研究を重ねた結果、こ
のFe系軟磁性合金の薄膜においても、良好な磁気特性
が得られることが判明したので本願発明に到達した。
【0024】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、高飽和磁束密度と高透磁率を兼備し、高い熱
安定性を併せ持つ軟磁性薄膜を提供すること、および、
この優れた軟磁性薄膜を備えた薄膜磁気ヘッドを提供す
ることを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した発明
は前記課題を解決するために、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜であ
る。 (Fe1-a Co a)b Bx Ty T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
元素であり、 a≦0.05、 b≦92原子%、 x=
0.5〜16原子%、 y=4〜10原子%、z=4.5原
子%以下である。
【0026】請求項2に記載した発明は前記課題を解決
するために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe
系軟磁性合金からなる軟磁性薄膜である。 Fe b Bx Ty Cuz 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、b≦92原子%、x=
0.5〜16原子%、 y=4〜10原子%、z=4.5原
子%以下である。
【0027】請求項3に記載した発明は前記課題を解決
するために、非磁性基板上に、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と絶
縁層とコイル導体と前記高飽和磁束密度Fe系軟磁性合
金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層と上部
磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴とする。 Fe b Bx Ty T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
元素であり、b≦92原子%、x=0.5〜16原子%、y
=4〜10原子%、z=4.5原子%以下である。
【0028】請求項4に記載した発明は前記課題を解決
するために、非磁性基板上に、次式で示される組成の高
飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と絶
縁層とコイル導体と前記高飽和磁束密度Fe系軟磁性合
金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層と上部
磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴とする。 (Fe 1-a a )b Bx Ty 但し、QはCo,Niのいずれか、又は両方を含み、T
はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群から選ば
れた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,Hfの
いずれか、又は両方を含み、 a≦0.05、 b≦93
原子%、 x=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%以
下である。 請求項5に記載した発明は前記課題を解決す
るために、次式で示される組成の高飽和磁束密度Fe系
軟磁性合金からなることを特徴とする。 Fe b Bx Ty 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
Hfのいずれか、又は両方を含み、 b≦93原子%、
x=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%である。
【0029】本発明の軟磁性薄膜は、特定の組成の軟磁
性合金から形成されるもので、高飽和磁束密度と高透磁
率を兼ね備え、かつ低保磁力で、また、高い熱安定性を
併せ持つものである。
【0030】以下に本発明を更に詳細に説明する。前記
Fe系軟磁性合金膜の生成方法としては、合金膜をスパ
ッタ装置、蒸着装置等の薄膜成形装置により作成する方
法を採用することができる。
【0031】スパッタ装置としては、例えば、RF2層
スパッタ、DCスパッタ、マグネトロンスパッタ、3極
スパッタ、イオンビームスパッタ、対向ターゲット式ス
パッタ等の既存のものを使用することができる。
【0032】本発明の軟磁性薄膜は、前記組成の非晶質
合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金をスパッタ法、
蒸着法等の気相急冷法により得る工程と、これを加熱し
微細な結晶粒を形成する熱処理工程によって通常得るこ
とができる。本発明のFe系軟磁性合金において、非晶
質相を得やすくするためには、非晶質形成能の高いZr、
Hfのいずれかを含む必要がある。またZr、Hfはその
一部を他の4A〜6A族元素のうち、Ti,V,Nb,Ta,
Mo,Wと置換することが出来る。
【0033】ここでCrを含めなかったのは、Crが他の
元素に比べ非晶質形成能が劣っているからであるが、Z
r,Hfを適量添加したならば、更にCrを添加しても良い
のは勿論である。
【0034】Bには本発明の軟磁性薄膜の非晶質形成能
を高める効果、および前記熱処理工程において磁気特性
に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果がある
と考えられ、このためB添加は必須である。
【0035】
【0036】本発明の軟磁性薄膜に用いるFe系軟磁性
合金において、Cu,Niおよびこれらと同族元素のうち
から選ばれた少なくとも1種または2種以上の元素を
T’成分として添加する場合、その配合比zは、4.5
重量%以下、特に0.2〜4.5重量%であるとが望ま
しい。また、これらの元素の中でもCuは特に好適であ
る。
【0037】前記T’成分の配合比zが、0.2原子%
以下である場合は、熱処理後の冷却速度を速めることが
望ましい。図5は、Fe88Cu13Zr8なる組成の軟磁
性合金の試料を650℃に1時間加熱した後、種々の冷
却速度で冷却した後の透磁率を測定した結果を示す、冷
却速度と透磁率の関係のグラフである。このグラフか
ら、冷却速度を速めると透磁率が向上することが判る。
前記z成分が0.2原子%以下になると、透磁率が低下
する傾向があるが、前述のように冷却速度を速めること
によって、透磁率が低下する傾向を打ち消すことができ
る。
【0038】Cu,Ni等の添加により、軟磁気特性が著
しく改善される機構については明らかではないが、結晶
化温度を示差熱分析法により測定したところ、Cu,Ni
等を添加した合金の結晶化温度は、添加しない合金に比
べてやや低い温度であると認められた。
【0039】これは前記元素の添加により非晶質相が不
均一となり、その結果、非晶質相の安定性が低下したこ
とに起因すると考えられる。
【0040】また不均一な非晶質相が結晶化する場合、
部分的に結晶化しやすい領域が多数でき、不均一な核生
成をするため、得られる組織が微細結晶粒組織となると
考えられる。
【0041】また特にFeに対する固溶度が著しく低い
元素であるCuの場合、相分離傾向があるため、加熱に
よりミクロな組成ゆらぎが生じ、非がより顕著になると
考えられ、組織の微細化に寄与するものと考えられる。
【0042】以上の観点からCu及びその同族元素、Ni
およびPd,Pt以外の元素でも結晶化温度を低下させる
元素には同様の効果が期待できる。またCuのようにFe
に対する固溶限が小さい元素にも同様の効果が期待でき
る。
【0043】以上、本発明の軟磁性薄膜に適用する高飽
和磁束密度Fe系軟磁性合金に含まれる合金元素の限定
理由を説明したが、これらの元素以外でも耐食性を改善
するために、Cr,Ruその他の白金族元素を添加するこ
とも可能である。また、必要に応じて、Y,希土類元素,
Zn,Cd,Ga,In,Ge,Sn,Pb,As,Sb,Bi,Se,Te,L
i,Be,Mg,Ca,Sr,Ba等の元素を添加することで磁歪
を調整することもできる。
【0044】その他、H,N,O,S等の不可避的不純物
については、所望の特性が劣化しない程度に含有してい
ても本発明の高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金の組成と
同一とみなすことができるのは勿論である。
【0045】本発明で用いるFe系軟磁性合金における
Fe,Co量のbは、92原子%以下である。これは、後述
するように、bが92原子%を越えると高い透磁率が得
られないためであるが、飽和磁束密度10kG以上を得
るためには、bが75原子%以上であることがより好ま
しい。
【0046】
【実施例】前記組成の合金の内、Fe86Zr76Cu1の組
成の合金を例に軟磁性薄膜を作成し、その磁気特性と熱
処理の効果について説明する。
【0047】まず、RF2極スパッタ装置を用いて、F
e86Zr76Cu1の組成の軟磁性薄膜を形成した。
【0048】使用したターゲットは、Feターゲット上
にZr,B,Cuの各ペレットを適宜配置して構成した複合
ターゲットを用い、Arガス雰囲気中あるいはAr+N2
ガス雰囲気中でスパッタを行って膜厚2μmの軟磁性薄
膜を形成した。
【0049】こうして製造された軟磁性薄膜について静
磁場アニール後における飽和磁束密度(Bs)と初透磁率
(μ、10mOe、1MHz)と保磁力(Hc)の測定を行っ
た。
【0050】尚、透磁率と保磁力の測定は、軟磁性薄膜
の磁化困難軸方向で行った。
【0051】さらに、昇温速度毎分10℃の示差熱分析
により求めたFe86Zr76Cu1合金の結晶化開始温度は
503℃であった。
【0052】この軟磁性薄膜の磁気特性に及ぼす熱処理
(600℃)の効果を調べた結果、熱処理前の合金の飽和
磁束密度(Bs)は7KG、透磁率(μ)は150、保磁力
(Hc)は8Oeであったのに対し、熱処理後の合金の飽和
磁束密度(Bs)は15KG、透磁率(μ)は1900、保
磁力は0.31Oeであり、熱処理により合金の磁気特
性は著しく向上した。
【0053】同様の効果は、500〜620℃の熱処理
によっても得られている。
【0054】また、透磁率に及ぼす冷却速度の影響を調
べたところ、600℃で1時間保持後、水焼入れにより
急冷した本合金の実効透磁率1900に対し、空冷した
場合、その値は1050となり、熱処理後の冷却速度も
重要であり、100℃/分以上の冷却速度で急冷するこ
とが好ましい。
【0055】よって本軟磁性薄膜の磁気特性は最適な熱
処理条件を適当に選ぶことにより調整することができ、
また磁場中焼鈍などにより磁気特性を改善することもで
きる。
【0056】また、この軟磁性薄膜の熱処理前後の構造
の変化をX線回折法により調べ、熱処理後の組織を透過
電子顕微鏡を用いて観察し、結果をそれぞれ第1図と第
2図に示す。
【0057】第1図より、急冷状態では非晶質に特有の
ハローな回折図形が、熱処理後には体心立方晶に独特の
回折図形がそれぞれ認められ、本合金の構造が熱処理に
より、非晶質から体心立方晶へと変化したことがわか
る。
【0058】そして第2図より、熱処理後の組織が、粒
径約100オンク゛ストロ-ム程度の微結晶から成ることがわか
る。
【0059】以上のごとく前記組成の合金からなる軟磁
性薄膜は、高飽和磁束密度でかつ軟磁気特性に優れた上
に保磁力が小さいものである。
【0060】更に、高い熱安定性を有する優れた特性を
得ることができるものである。
【0061】(製造例) 本願発明の軟磁性薄膜を適用して第3図と第4図に示す
薄膜磁気ヘッド10を製造し、この薄膜磁気ヘッド10
の磁気特性を測定した。
【0062】Fe系軟磁性合金として、Fe86Zr76Cu
1なる組成の合金を用いた。
【0063】この薄膜磁気ヘッド10を製造するには、
非磁性基板1上に本願発明の軟磁性薄膜からなる下部磁
性層2を形成し、その上にSiO2などからなる第1絶縁
層3をスパッタリングや蒸着などにより形成する。
【0064】次に、その上にCuなどからなる第1層コ
イル導体4を形成し、その後、SiO2などからなる第
2絶縁層5をさらにその上に形成する。
【0065】次に、第1層コイル4間に第2層コイル導
体6を形成する。
【0066】その上にSiO2などからなる第3絶縁層8
を形成し、上部磁極9と下部磁極2とを磁気的に結合さ
せるための窓をあけるべく、テーパーエッチングを行
い、その後、SiO2などからなるギャップ層7を形成
し、後部ギャップ部分のギャップ層7のみエッチングす
る。
【0067】その上に本願発明の軟磁性薄膜からなる上
部磁性層9を形成する。
【0068】このようにして、2層スパイラル構造の薄
膜磁気ヘッド10が製造される。
【0069】得られた薄膜磁気ヘッド10の透磁率(μ)
(1MHz)は1900、保磁力は0.31Oe、飽和磁束
密度は15KGを示し、優れた磁気特性を発揮する薄膜
磁気ヘッドを得ることができることを確認できた。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように本発明の軟磁性薄膜
は、高飽和磁束密度と高透磁率を併せ持ち、また保磁力
を低く抑えることができ、さらに、高い熱安定性を備え
た優れた磁気特性を発揮する。また前記の軟磁性薄膜を
用い、非磁性基板上に下部磁性層と絶縁層とコイル導体
と上部磁性層とギャップ層を形成した薄膜磁気ヘッドと
することで、高飽和磁束密度と高透磁率を併せ持ち、ま
た保磁力を低く抑えることができ、さらに、高い熱安定
性を備えた高性能な薄膜磁気ヘッドを得ることができる
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】前記合金の熱処理前後の構造変化を示すX線回
折図形を示すグラフ
【図2】前記合金の熱処理後の組織を示す顕微鏡写真の
模式図
【図3】実施例の2層スパイラルコイル構造の薄膜磁気
ヘッドを示す平面図
【図4】図3のA−A'断面図である。
【図5】冷却速度と透磁率の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 基板 2 下部磁性層 3 第1層絶縁層 4 第1層コイル 5 第2層絶縁層 6 第2層コイル 7 ギャップ層 8 第3絶縁層 9 上部磁性層 10 薄膜磁気ヘッドド
フロントページの続き (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内無番地 川内住 宅11−806 (56)参考文献 特開 昭64−28343(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01F 10/14

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 (Fe1-a Co a)b Bx Ty T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
    ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
    Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
    i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
    元素であり、 a≦0.05、 b≦92原子%、 x=0.5〜16原子
    %、 y=4〜10原子%、 z=4.5原子%以下であ
    る。
  2. 【請求項2】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 Fe b Bx Ty Cuz 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
    ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
    Hfのいずれか、又は両方を含み b≦92原子%、 x=0.5〜16原子%、 y=4〜10
    原子%、z=4.5原子%以下である。
  3. 【請求項3】 非磁性基板上に、次式で示される組成の
    高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と
    絶縁層とコイル導体と前記高飽和磁束密度Fe系軟磁性
    合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層と上
    部磁性層間にギャップ層を介在させたことを特徴とする
    薄膜磁気ヘッド。 Fe b Bx Ty T'z 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
    ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
    Hfのいずれか、又は両方を含み、T'はCu,Ag,Au,N
    i,Pd,Ptからなる群から選ばれた1種又は2種以上の
    元素であり、 b≦92原子%、 x=0.5〜16原子%、 y=4〜10
    原子%、z=4.5原子%以下である。
  4. 【請求項4】 非磁性基板上に、次式で示される組成の
    高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金からなる下部磁性層と
    絶縁層とコイル導体と前記高飽和磁束密度Fe系軟磁性
    合金からなる上部磁性層を形成し、前記下部磁性層と上
    部磁性層間に ギャップ層を介在させたことを特徴とする
    薄膜磁気ヘッド。 (Fe 1-a a )b Bx Ty 但し、QはCo,Niのいずれか、又は両方を含み、T
    はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群から選ば
    れた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,Hfの
    いずれか、又は両方を含み、 a≦0.05、 b≦93
    原子%、 x=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%以
    下である。
  5. 【請求項5】 次式で示される組成の高飽和磁束密度F
    e系軟磁性合金からなることを特徴とする軟磁性薄膜。 Fe b Bx Ty 但しTはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群か
    ら選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr,
    Hfのいずれか、又は両方を含み、 b≦93原子%、
    x=0.5〜8原子%、 y=4〜9原子%である。
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