JP2001250216A - 磁気記録媒体及びその製造法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造法

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JP2001250216A
JP2001250216A JP2000396293A JP2000396293A JP2001250216A JP 2001250216 A JP2001250216 A JP 2001250216A JP 2000396293 A JP2000396293 A JP 2000396293A JP 2000396293 A JP2000396293 A JP 2000396293A JP 2001250216 A JP2001250216 A JP 2001250216A
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thin film
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magnetic recording
maghemite
magnetite
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JP2000396293A
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English (en)
Inventor
Kenichi Nakada
健一 中田
Kosaku Tamari
耕作 田万里
Jun Kashima
純 香嶋
Teruaki Yamatoki
照章 山時
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Toda Kogyo Corp
Original Assignee
Toda Kogyo Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、磁気特性、殊に、保磁力角型比S
値が優れ、表面平滑性がより向上した磁気記録媒体に
関するものである。また、本発明は、スパッタ法によっ
てマグヘマイト薄膜からなる磁気記録媒体を得ることを
目的とする。 【解決手段】 基体と該基体上に形成されたマグヘマイ
ト薄膜とからなる磁気記録媒体において、前記マグヘマ
イト薄膜の膜厚が7〜50nmであり、その表面の中心
線平均粗さRaが0.1〜1.0nmであって、保磁力
角型比S値が0.50以上である磁気記録媒体は、ス
パッタ法によって基体上にマグネタイト薄膜を形成した
後、引き続きスパッタ室内において該マグネタイト薄膜
を酸素過剰雰囲気下でスパッタ処理してマグヘマイト薄
膜にして得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気特性、殊に、保磁
力角型比S値が優れ、表面平滑性がより向上した磁気
記録媒体に関するものである。また、本発明は、スパッ
タ法によってマグヘマイト薄膜からなる磁気記録媒体を
得ることを目的とする。
【0002】
【従来の技術】近年、ハードディスクなどの磁気記録装
置においては、情報機器やシステムの小型化と高信頼性
化の傾向が顕著であり、大容量のデータを取り扱うため
には、高密度記録化できる磁気記録媒体を必要とし、そ
の要求が益々高まってきている。
【0003】このような特性を満たす磁気記録媒体とし
ては、大きな保磁力を有するとともに、保磁力角型比S
が高く、磁気記録層と磁気ヘッドとの距離(磁気的ス
ペーシング)が低減できることが強く要求されている。
【0004】大きな保磁力を有する磁気記録媒体とし
て、基体と該基体上に形成された磁性薄膜とからなる磁
気記録媒体が広く知られている。
【0005】磁気記録媒体に実用化されている磁性薄膜
としては、大別してマグヘマイト等の酸化物磁性薄膜
(社団法人電子通信学会発行、「電子通信学会技術報
告」、(1981年)MR81−20、5〜12頁、社
団法人日本セラミックス協会発行「セラミックス」(1
986年)第24巻、第1号、第21〜24頁、特公昭
51−4086号公報、特公平5−63925号公報
等)とCoCr合金等の合金磁性薄膜とがある。
【0006】前者は、酸化物であるため耐酸化性や耐食
性に優れており、その結果、経時安定性に優れ、経時に
よる磁気特性の変化が小さいという特徴を有している。
また、金属に比べ酸化物は硬いために保護膜が不要であ
り、磁気スペーシングが合金磁性薄膜媒体に比べ低減す
ることができ、高密度記録媒体として最適である。
【0007】マグヘマイト薄膜は、コバルトを含有する
ことによって保磁力を高くすることが試みられている
が、一方、コバルト含有量の増加にともなって熱などの
影響により経時安定性が悪くなるという傾向がある。
【0008】なお、本発明者らは、マグヘマイトの特定
の面における面間隔を制御することによってコバルト含
有量が少なくても高い保磁力を有するマグヘマイト薄膜
を完成している(特開平11−110731号公報、特
開平11−110732号公報)。
【0009】後者は、159kA/m(2000Oe)
程度以上の高い保磁力を有するが、合金材料自体が酸化
しやすく、その結果、経時安定性が悪く、磁気特性が劣
化し易いものである。
【0010】この酸化による磁気特性の劣化を防ぐため
合金磁性薄膜には、通常、5〜10nm程度の厚みのダ
イヤモンドライクカーボンやSiO等が保護膜として
表面にコーティングされており、その結果、保護膜の厚
み分だけ、磁気的なスペーシングが大きくなっている。
【0011】通常、オーバーライト特性を向上させる観
点から、保磁力角型比Sを最適化することが要求され
ている。この事実は、J.Magn.Soc.Jp
n.,Vol22,No.S1,108−112(19
98)の記載からも明らかである。
【0012】一方、磁気記録媒体において、磁気的スペ
ーシングを低減するためには、磁気ヘッドの浮上量を極
力低減し、且つ、常に安定に浮上させることが必要であ
る。従来のハードディスクドライブでは、磁気ヘッドの
静止時に磁気記録媒体と磁気ヘッドとがメニスカス力で
吸着するのを防ぐため、ある程度の表面粗さが必要とさ
れていた。現在ではハードシステムの改善によって吸着
防止のための表面粗さは不要となり、磁気記録媒体に用
いられる磁性薄膜が表面平滑性により優れていることが
要求されている。
【0013】また、磁気記録媒体の表面が平滑でない場
合には、媒体ノイズになって現れることが知られてお
り、ノイズを低減するためにも磁性薄膜の表面粗さを低
減する必要がある。
【0014】現在、酸化物磁性薄膜を用いた磁気記録媒
体は、磁性薄膜の厚さが50nm以下と非常に薄いた
め、磁性薄膜の表面性は基板の表面性に大きく依存して
いる。従って、表面平滑性に優れた基板を用いると共
に、磁性薄膜の表面をより平滑にする技術が要求されて
いる。
【0015】従来、マグヘマイト薄膜の製造法として
は、1)基体上にヘマタイト薄膜を形成し、該ヘマタイ
ト薄膜を230〜320℃の温度範囲で還元してマグネ
タイト薄膜に変態した後、該マグネタイト薄膜を290
〜330℃で酸化する方法、2)基体上にマグネタイト
薄膜を形成し、該マグネタイト薄膜を320℃以上で酸
化する方法、3)鉄及びM(M:Co、Cu、Rh、R
u、Os、Ti、V、Nbのうちのいずれか1種の元素
でXは0.01〜0.1)を含有する金属キレート、金
属カーボニル又はフェロセン類の蒸気と酸素ガスを磁場
を印加することにより高密度化した減圧プラズマ中で分
解させ、基体上に直接コバルト含有マグヘマイト薄膜を
形成する方法(特開平3−78114号)等が知られて
いる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】高い保磁力を維持した
まま、磁気特性、殊に保磁力角型比S及び表面平滑性
に優れたマグヘマイト薄膜からなる磁気記録媒体は、現
在最も要求されているところであるが、未だ得られてい
ない。
【0017】即ち、前出マグネタイトの製造法1)及び
2)は、マグネタイト薄膜を形成した後に、該薄膜を大
気中に取り出し、更に、290〜450℃の温度範囲で
酸化処理を行ってマグヘマイト薄膜を得る製造法である
が、290℃以上の高温で加熱する必要があるため、基
板からのマイグレーション等による磁気特性の劣化が問
題となり、また、用いる基板が耐熱性に優れたものを選
択する必要があり、使用する基板に制約があった。また
大気中に取り出すため、コンタミ等も問題となるもので
ある。
【0018】前出3)のコバルト含有マグヘマイト薄膜
の製造法は、50℃程度の基板温度でマグヘマイト薄膜
を形成することができるため、耐熱性のないポリエステ
ル、ポリスチレンテレフタレート、ポリアミド等のプラ
スチック基体を用いることができるが得られる磁気記録
媒体の保磁力値は高々135kA/m(1700Oe)
程度である。
【0019】そこで、本発明は、高い保磁力を低下させ
ることなく、磁気特性、殊に保磁力角型比Sに優れ、
且つ、磁性層の表面平滑性を向上させることができるマ
グヘマイト薄膜を工業的、経済的に有利に得ることを技
術的課題とする。
【0020】
【課題を解決する為の手段】前記技術的課題は、次の通
りの本発明によって達成できる。
【0021】即ち、本発明は、基体と該基体上に形成さ
れたマグヘマイト薄膜とからなる磁気記録媒体におい
て、前記マグヘマイト薄膜の膜厚が7〜50nmであ
り、その表面の中心線平均粗さRaが0.1〜1.0n
mであって、保磁力角型比S値が0.50以上である
ことを特徴とする磁気記録媒体である(本発明1)。
【0022】また、本発明は、基体と該基体上に形成さ
れるマグヘマイト薄膜とからなる磁気記録媒体におい
て、前記基体と前記マグヘマイト薄膜との間にNaCl
型構造を有する酸化物、Cr金属及びCr合金から選ば
れる一種からなる下地膜を形成するとともに、前記マグ
ヘマイト薄膜の膜厚が7〜50nmであり、その表面の
中心線平均粗さRaが0.1〜1.0nmであって、保
磁力角型比S値が0.50以上であることを特徴とす
る磁気記録媒体である。(本発明2)。
【0023】また、本発明は、スパッタ法によって基体
上にマグネタイト薄膜を形成した後、引き続き大気中に
取り出すことなくスパッタ室内において該マグネタイト
薄膜を酸素過剰雰囲気下でスパッタ処理してマグヘマイ
ト薄膜にすることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体
の製造法である。
【0024】また、本発明は、基体上にNaCl型構造
を有する酸化物、Cr金属及びCr合金から選ばれる一
種からなる下地膜を形成し、次いで、スパッタ法によっ
て該下地膜上にマグネタイト薄膜を形成した後、引き続
き大気中に取り出すことなくスパッタ室内において該マ
グネタイト薄膜を酸素過剰雰囲気下でスパッタ処理して
マグヘマイト薄膜にすることを特徴とする本発明2の磁
気記録媒体の製造法である。
【0025】本発明の構成をより詳しく説明すれば、次
の通りである。
【0026】先ず、本発明に係る磁気記録媒体について
述べる。
【0027】本発明に係る磁気記録媒体は、基体と該基
体上に形成されているマグヘマイト薄膜とからなる。
【0028】本発明における基体は、ポリエチレンナフ
タレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)等のプラスチック基板、ガラス基板、アルミ基板
等の基体材料を使用することができ、好ましくはガラス
基板である。
【0029】本発明におけるマグヘマイト薄膜は、マグ
ヘマイト薄膜の下地膜として、NaCl型構造を有する
酸化物薄膜、Cr金属薄膜、Cr合金薄膜から選ばれる
1種の下地膜を用いることができる。
【0030】NaCl型構造を有する酸化物薄膜として
は、ニッケル酸化物薄膜、マグネシウム酸化物薄膜、コ
バルト酸化物薄膜などであり、Cr合金薄膜としては、
CrMo薄膜、CrW薄膜、CrV薄膜、CrTi薄膜
などである。好ましくはニッケル酸化物薄膜、Cr薄
膜、CrMo薄膜である。下地膜を用いることによっ
て、磁気特性、特に保磁力が向上するとともに、本発明
の目的とする表面平滑性がより向上する。本発明におけ
る下地膜の膜厚は10〜200nmが好ましく、より好
ましくは10〜100nmである。200nm以上の場
合にはマグヘマイト薄膜の表面平滑性が悪くなる。
【0031】また、前記下地膜の配向面を制御すること
によって、得られる磁気記録媒体の配向を制御すること
ができる。例えば、下地膜としてニッケル酸化物薄膜を
用いた場合、X線回折スペクトルにおいてニッケル酸化
物薄膜の(111)面のピーク強度が(200)面のピ
ーク強度に対して0.5以上であれば、長手方向の磁気
記録媒体が得ることができ、ニッケル酸化物薄膜の(2
00)面が基体の表面に平行に優先配向させた場合に
は、垂直磁化膜からなる磁気記録媒体が得られる。
【0032】本発明におけるマグヘマイト薄膜の膜厚
は、7〜50nmである。好ましくは7〜45nm、よ
り好ましくは7〜40nmである。膜厚が7nm未満の
場合には159kA/m(2000Oe)以上の保磁力
値を有する磁気記録媒体が得られ難い。50nmを越え
る場合には信号を記録した際に磁性薄膜の深層部まで均
一な磁化状態になり難く、良好な記録再生特性が得られ
難い。
【0033】なお、マグヘマイトは、一般式γ−Fe2
3で示されるが、本発明においては若干のFe2+を含
むものであってもよい。
【0034】マグヘマイト薄膜には、保磁力向上のため
にコバルトを所定量添加してもよい。コバルト量はFe
に対して20重量%以下であり、好ましくは1〜10重
量%である。20重量%を越える場合には経時安定性に
優れた磁気記録媒体が得られない。
【0035】なお、マグヘマイト薄膜の諸特性向上のた
めに通常使用されることがあるコバルト以外のMn、N
i、Cu、Ti、Zn、Cr、B等を必要によりFeに
対しモル比で0.005:1〜0.04:1程度含有さ
せてもよく、この場合には、高い保磁力を有する磁気記
録媒体が得られやすくなる。
【0036】マグヘマイト薄膜の表面粗さのうち中心線
平均粗さRaは0.1〜1.0nmである。1.0nm
を超える場合には本発明の効果が得られない。好ましく
は0.1〜0.9nm、より好ましくは0.1〜0.8
nmである。
【0037】マグヘマイト薄膜の保磁力角型比S
は、0.50〜0.90であり、好ましくは0.55〜
0.90である。保磁力角型比が0.5未満の場合に
は、オーバーライト特性が悪くなり、磁気記録媒体とし
て適さない。
【0038】マグヘマイト薄膜の表面粗さのうち最大高
さRmaxは1〜12nmが好ましい。12nmを超え
る場合には本発明の効果が得られない。より好ましくは
1〜10nm、更により好ましくは1〜9nmである。
【0039】本発明に係る下地層を有さない磁気記録媒
体及び酸化物薄膜からなる下地層を有する磁気記録媒体
の電気抵抗値は50〜3000MΩが好ましく、より好
ましくは50〜2500MΩ、更により好ましくは50
〜2000MΩである。電気抵抗値が50MΩ未満の場
合には、マグヘマイト薄膜中にマグネタイトが残存して
いることが予想されるため好ましくない。また、下地膜
として、Cr金属又はCr合金を用いた場合には、磁気
記録媒体の表面電気抵抗値は0.1〜10MΩが好まし
い。
【0040】本発明に係る磁気記録媒体は、飽和磁化値
(印加磁界1590kA/m(20kOe)における磁
化の値)が29〜53Wb/m3(230〜420em
u/cm)、好ましくは30〜53Wb/m3(24
0〜420emu/cm)、より好ましくは31〜5
3Wb/m3(250〜420emu/cm)であっ
て、保磁力値が159kA/m(2000Oe)以上で
あり、より好ましくは199〜1194kA/m(25
00〜15000Oe)である。
【0041】次に、本発明に係る磁気記録媒体の製造法
について述べる。
【0042】本発明に係る磁気記録媒体は、スパッタ法
によって基体上に形成したマグネタイト薄膜を形成した
後、引き続き大気中に取り出すことなくスパッタ室内に
おいて該マグネタイト薄膜を酸素過剰雰囲気下でスパッ
タ処理してマグヘマイト薄膜にすることによって得るこ
とができる。
【0043】本発明に用いるスパッタ装置は、特に限定
されるものではなく、スパッタ法の実施に当たって汎用
されている周知のスパッタ反応装置である。
【0044】本発明においては、マグネタイト薄膜の形
成及び過剰酸素雰囲気下でのスパッタ処理を同一のスパ
ッタ室内で連続して行ってもよく、また、別にスパッタ
室を併設することによって、マグネタイト薄膜の形成と
酸素過剰雰囲気下でのスパッタ処理を大気中に取り出す
ことなく別々のスパッタ室内で行ってもよい。工業的な
生産性を考慮した場合、マグネタイト薄膜の形成と酸素
過剰雰囲気下でのスパッタ処理は別々のスパッタ室内で
行うことが好ましい。
【0045】なお、マグネタイト薄膜を形成させるFe
もしくはFeの合金ターゲットと該マグネタイト薄膜を
マグヘマイト薄膜にするために、酸素過剰雰囲気下で用
いるFeもしくはFeの合金ターゲットとは別々のもの
であることが好ましい。
【0046】マグネタイト薄膜は、ターゲット、基体を
保持するホルダー、真空室等から構成される周知のスパ
ッタ装置、例えばC−3102(日電アネルバ株式会社
製)、SH−250H−T06(日本真空技術株式会社
製)等を用い、FeもしくはFeの合金をターゲットと
して酸素及び希ガスからなる混合ガスを導入し、混合ガ
ス中の酸素流量(CCM)とマグネタイトの堆積速度
(nm/秒)とを制御しながら、基体上にマグネタイト
薄膜を形成させる。
【0047】マグネタイトの堆積速度(nm/秒)に対
する混合ガス中の酸素流量(CCM)は、Feもしくは
Feの合金ターゲットを酸化してマグネタイト薄膜を得
るための各種条件、例えば、装置の種類、構造、成膜レ
ート、全ガス圧、基体温度、スパッタリングターゲット
面積等により種々相違する。
【0048】本発明における、マグヘマイト薄膜を得る
際の酸素過剰雰囲気下とは、Fe又はFe合金ターゲッ
トが酸化され、マグネタイトの成膜速度が著しく減少す
る酸素分圧の領域である。このときカソードの電流値
は、ターゲットが酸化されていない状態と比べて大幅に
上昇し、また電圧値は大幅に下降している。通常、Fe
もしくはFeの合金ターゲットが酸化された状態では、
ターゲットに酸化鉄皮膜が生じ、マグネタイトの成膜は
困難になる。本発明では、かかる酸素過剰雰囲気下でス
パッタすることにより、ターゲットから鉄イオンが弾き
出されるものと考えられる。
【0049】具体的には、本発明に使用したスパッタ成
膜装置では、酸化処理での酸素流量をFO2(CC
M)、マグネタイトの堆積速度をR(nm/秒)とする
と、 FO2/R≧12 となる領域が酸素過剰雰囲気下である。例えば、R=
2.0(nm/秒)の時、FO2=24(CCM)以上
がターゲットが酸化する酸素流量となる。また、R=
1.0(nm/秒)の時、FO2=12(CCM)以上
がターゲットが酸化する酸素流量となる。
【0050】本発明における酸素過剰雰囲気下でのスパ
ッタ処理は、マグネタイト薄膜の基体温度が30〜25
0℃の温度範囲、好ましくは80〜200℃の温度範囲
で行う。基板温度が上記範囲外の場合には、十分な効果
が得られない。
【0051】本発明における酸素過剰雰囲気下でのスパ
ッタ処理の時間は、1〜30秒が好ましく、より好まし
くは1〜10秒である。時間が1秒未満では、十分な効
果を得ることができない。反応時間が30秒を超える場
合には、磁気特性が低下するため好ましくない。
【0052】また、下地膜として、ニッケル酸化物薄
膜、マグネシウム酸化物薄膜及びコバルト酸化物薄膜、
Cr金属、CrW、CrV、CrTi、CrMoを用い
る場合には、常法によってあらかじめ基体上に前記各薄
膜を成膜し、次いで、前記と同様にしてマグネタイト薄
膜を形成させた後にマグヘマイト薄膜にすればよい。
【0053】
【発明の実施の形態】本発明の代表的な実施の形態は、
次の通りである。
【0054】マグネタイト薄膜及びマグヘマイト薄膜の
磁性層の厚さは、成膜前にマジックペンで基板に線を書
き、成膜後、有機溶剤にてこの線を取り除くとともに、
この上に堆積した膜を同時に除去する。このようにして
できた段差を触針式表面粗さ計(DEKTAK製)によ
り測定し、薄膜の膜厚を算出した。
【0055】マグネタイト薄膜のマグヘマイト薄膜への
酸化の確認は、その目安の一つである薄膜の表面電気抵
抗の変化により行った。即ち、下地層を形成していない
マグネタイト薄膜及び酸化物薄膜を形成したマグネタイ
ト薄膜の表面電気抵抗は0.001〜0.5MΩである
のに対し、マグヘマイト薄膜の表面電気抵抗は50〜3
000MΩへと上昇、変化する。また、金属又は合金の
下地膜を形成した場合には、マグネタイト薄膜の表面電
気抵抗値は0.1〜50kΩであり、マグヘマイト薄膜
の表面電気抵抗値は0.1〜10MΩに上昇する。表面
電気抵抗の測定は、Insulation Teste
rDM−1527(三和電気計器株式会社製)で2探針
間の距離を10mmにして測定した。
【0056】各薄膜のX線回折パターンは、「X線回折
装置RINT2000」(理学電機株式会社製)で測定
した値で示した。測定条件は、使用管球:Cu、管電
圧:40kV、管電流:200mA、縦型ゴニオメータ
ー、 サンプリング幅:0.020°、発散スリット:
0.2mm、散乱スリット:OPEN、受光スリット:
5.0mmで、入射角(θ)が0.2°、回折角(2
θ)が10.00°から70.00°の領域を測定し
た。
【0057】マグネタイト薄膜及びマグヘマイト薄膜の
表面粗さ(中心線平均粗さRa、最大粗さRmax)
は、原子間力顕微鏡(デジタルインストウルメンツ D
I.製)を用い、5μm四方の領域で評価した。
【0058】磁気記録媒体の保磁力及び飽和磁化等の磁
気特性は、「振動試料型磁力計VSM」(東英工業株式
会社製)を用いて測定した値で示した。最大印可磁界を
1590kA/m(20kOe)で測定した。
【0059】<磁気記録媒体の製造>インラインディス
クスパッタリング装置C−3102(日電アネルバ株式
会社製)を用いて、基体とターゲットの距離を85mm
に設定して、ガラス基板上に、常温で、酸素流量10C
CM、酸素分圧0.015Pa、全圧0.094Paの
酸素とアルゴンからなる雰囲気中で、金属ターゲット
(Ni)をスパッタリングして1nm/秒の付着速度
で、NiO薄膜を100nmの厚みで形成した。次い
で、このNiO薄膜上に、150℃で、酸素流量22C
CM、酸素分圧0.03Pa、全圧0.38Paの酸素
とアルゴンからなる雰囲気中で、金属合金(Fe+3w
t%Co)ターゲットをスパッタリングして2nm/秒
の付着速度で、Co含有マグネタイト薄膜を40nmの
厚みで形成した。
【0060】得られた薄膜を引き続き同一装置内で15
0℃で、酸素流量74CCM、酸素分圧0.12Pa、
全圧0.40Paの酸素とアルゴンからなる酸素過剰雰
囲気下で、金属合金(Fe+3wt%Co)ターゲット
をスパッタリングしてCo含有マグヘマイト薄膜を得
た。
【0061】得られたCo含有マグヘマイト薄膜の膜厚
は、40nm、表面粗度のうち、Raが0.8nm、R
maxが9nm、保磁力が259kA/m(3250O
e)、保磁力角型比Sが0.62であった。
【0062】
【作用】先ず、本発明において最も重要な点は、スパッ
タ法によりマグネタイト薄膜を形成し、次いで、該マグ
ネタイト薄膜からマグヘマイト薄膜を得る全ての処理が
大気中に取り出すことなく真空装置内で行えるという点
である。
【0063】従来、マグヘマイト薄膜を得るためにはマ
グネタイト薄膜を成膜した後、大気中に取り出して、酸
化処理を行うことが必要であったが、本発明では、全て
の処理が真空装置内で行えるため、汚れがつきにくく、
操作も簡単になるものである。また、大気中で加熱処理
を行う場合には、昇温時間や冷却時間を含めて全体とし
て数時間が必要となるが、本発明ではその必要がほとん
どないため、マグヘマイト薄膜の作製にかかる時間を大
幅に短縮することが出来る。
【0064】本発明に係る製造法では、低温で処理する
ことができるので、従来の製造法では使用できなかった
PET、PEN等のプラスチック基板も使用することが
でき、また、基板からのマイグレーション等による磁気
特性の劣化が防止できる。
【0065】本発明に係る製造法において、マグネタイ
ト薄膜がマグヘマイト薄膜に変化する理由について本発
明者は、マグネタイト薄膜に対してFe3+をスパッタ
することによって、スパッタされたFe3+がマグネタ
イト薄膜上で酸化剤として作用しFe2+→Fe3+
の酸化反応が促進され、また、酸化剤として作用し
たFe3+は還元されてFe2+となるが再度上記の反
応が起こり、連鎖的に反応が続くため、結果として全体
がマグヘマイト薄膜になるものと推定している。
【0066】図1に、本発明の製造法によって得られ
た、ニッケル酸化物上に形成したマグヘマイト薄膜のX
線回折を示す。図に示すとおり、全ての回折ピークがマ
グヘマイトの回折ピークであって、マグネタイトの回折
ピークは見られないことから、本発明の製造法によって
明らかにマグヘマイトに変化していることが分かる。ま
た、マグヘマイト以外のニッケル酸化物等のピークが確
認されないことから、マグヘマイト層へのニッケル酸化
物及び/又はガラス基板のマイグレーションが起こって
いないと考えられる。
【0067】本発明に係る磁気記録媒体が表面平滑性に
優れる理由について本発明者は、マグネタイト薄膜を低
温で処理することができるので、結晶粒の増大が防止さ
れ均一にマグヘマイトに変化するためと考えている。ま
た、均一にマグヘマイトに変化するため磁気特性の低下
も抑制されているものと考えている。
【0068】
【実施例】次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0069】実施例1〜8、比較例1〜3;コバルト含
有マグネタイトの薄膜形成時のコバルト量、酸素流量及
び膜厚、マグヘマイトへの変化の際の基板温度を種々変
化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして
磁気記録媒体を得た。なお、実施例1はガラス基板上に
直接マグネタイト薄膜を形成した後、前記発明の実施の
形態と同様にして磁気記録媒体を得た。
【0070】実施例9 ガラス基板上に常温で、全圧0.37Paのアルゴン雰
囲気でMgO焼結ターゲットをスパッタリングして0.
2nm/秒の付着速度で、MgO薄膜を70nmの厚み
で形成した。次いで、発明の実施の形態と同様にして磁
気記録媒体を得た。MgO薄膜は(200)面が基体面
に平行に配向した膜であって、マグヘマイト薄膜は(4
00)面が基体面と平行に優先配向しており、垂直磁気
記録媒体が得られた。
【0071】実施例10、11 ガラス基板上に常温で、全圧0.37Paのアルゴン雰
囲気でCr、CrMo合金ターゲットをスパッタリング
して3nm/秒の付着速度でCr、CrMo合金を形成
した。次いで、発明の実施の形態と同様にして磁気記録
媒体を得た。
【0072】比較例1は実施例1と同様にしてマグネタ
イト薄膜を形成した後、大気中320℃で酸化処理して
磁気記録媒体を得た。比較例2は発明の実施の形態と同
様にしてマグネタイト薄膜を形成した後、大気中320
℃で酸化処理して磁気記録媒体を得た。比較例3は発明
の実施の形態と同様にしてマグネタイト薄膜を形成した
後、引き続き、真空装置内で基板温度を200℃、酸素
流量を74CCMとし、スパッタ処理を行わない以外は
発明の実施の形態と同様にして磁気記録媒体を得た。
【0073】このときの製造条件を表1に、磁気記録媒
体の諸特性を表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【発明の効果】本発明に係る磁気記録媒体は、表面平滑
性及び磁気特性に優れるので高密度記録用磁気記録媒体
として好適である。
【0077】本発明に係る磁気記録媒体の製造法は、低
温でしかも大気中に取り出すことなく全ての処理が真空
装置内できるので、磁気記録媒体の製造法として好適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る製造法で形成したマグヘマイト
薄膜のX線回折パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山時 照章 広島県大竹市明治新開1番4 戸田工業株 式会社大竹創造センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体と該基体上に形成されたマグヘマイ
    ト薄膜とからなる磁気記録媒体において、前記マグヘマ
    イト薄膜の膜厚が7〜50nmであり、その表面の中心
    線平均粗さRaが0.1〜1.0nmであって、保磁力
    角型比S値が0.50以上であることを特徴とする磁
    気記録媒体。
  2. 【請求項2】 基体と該基体上に形成されるマグヘマイ
    ト薄膜とからなる磁気記録媒体において、前記基体と前
    記マグヘマイト薄膜との間に、NaCl型構造を有する
    酸化物薄膜、Cr金属薄膜及びCr合金薄膜から選ばれ
    る一種からなる下地膜を形成するとともに、前記マグヘ
    マイト薄膜の膜厚が7〜50nmであり、その表面の中
    心線平均粗さRaが0.1〜1.0nmであって、保磁
    力角型比S値が0.50以上であることを特徴とする
    磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 スパッタ法によって基体上にマグネタイ
    ト薄膜を形成した後、引き続き大気中に取り出すことな
    くスパッタ室内において該マグネタイト薄膜を酸素過剰
    雰囲気下でスパッタ処理してマグヘマイト薄膜にするこ
    とを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造法。
  4. 【請求項4】 基体上にNaCl型構造を有する酸化物
    薄膜、Cr金属薄膜及びCr合金薄膜から選ばれる一種
    からなる下地膜を形成し、次いで、スパッタ法によって
    該下地膜上にマグネタイト薄膜を形成した後、引き続き
    大気中に取り出すことなくスパッタ室内において該マグ
    ネタイト薄膜を酸素過剰雰囲気下でスパッタ処理してマ
    グヘマイト薄膜にすることを特徴とする請求項2記載の
    磁気記録媒体の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003203324A (ja) * 2001-10-24 2003-07-18 Toda Kogyo Corp 垂直磁気記録媒体
WO2004008440A1 (ja) * 2002-07-15 2004-01-22 Sony Corporation 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法

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