JPH11144955A - 磁性体薄膜及びそれを用いた磁気ヘッド - Google Patents

磁性体薄膜及びそれを用いた磁気ヘッド

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JPH11144955A
JPH11144955A JP10246914A JP24691498A JPH11144955A JP H11144955 A JPH11144955 A JP H11144955A JP 10246914 A JP10246914 A JP 10246914A JP 24691498 A JP24691498 A JP 24691498A JP H11144955 A JPH11144955 A JP H11144955A
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magnetic
thin film
crystal grains
substrate
magnetic thin
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JP10246914A
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English (en)
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Masayoshi Hiramoto
雅祥 平本
Nozomi Matsukawa
望 松川
Hiroshi Sakakima
博 榊間
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波帯域でも優れた磁気特性を示す、結晶
質系の磁性体薄膜およびそれを用いた磁気ヘッドを提供
する。 【解決手段】 磁性結晶粒を母相とする磁性体薄膜であ
って、第1の方向に沿った磁性結晶粒の平均結晶サイズ
が、第1の方向に直交する第2の方向に沿った磁性結晶
粒の平均結晶サイズよりも小さい領域を含み、第1の方
向に沿った磁化を、第2の方向に沿った磁化よりも小さ
い外部磁界により実施し得る磁性体薄膜とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性体薄膜に関
し、特に、磁気インピーダンスセンサー等の磁気センサ
ー、磁気コイル及びインダクター等の磁気回路部品、磁
気記録ヘッド及び磁気再生ヘッドに適した軟磁性磁性体
薄膜に関するものである。また、本発明は、このような
磁性体薄膜を用いた磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録ヘッド、磁気インピーダ
ンスセンサー、マイクロインダクターのような磁気回路
部品等の軟磁性材料が用いられる磁気デバイス全般に対
して、数MHzから数GHzの高周波帯域において優れ
た磁気特性と高飽和磁気密度を両立する磁性材料が要求
されてきた。このような高周波帯域では、磁壁共鳴、強
磁性共鳴等に起因する損失により磁気特性が劣化するこ
とが知られている。従来、このような劣化を防ぐため
に、例えばキュリー温度の低いCo系アモルファス薄膜
材料では、膜面内での磁壁数を減らし、強磁性共鳴周波
数を高めるために、磁場中において熱処理又は成膜する
ことにより材料内部に強い一軸異方性を付与する手法が
とられてきた(千田他MAG-94-95 p77-83)。また、キュ
リー温度の高いFe又はFeCo系結晶質材料では、上
記の手法の他、膜面内の逆磁歪効果を用いて一軸異方性
磁界を付与する方法がとられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】磁性体の比透磁率
μr′及び強磁性共鳴周波数fkは、簡単には次式により
与えられることが知られている。 μr′(0)=4πMs・Hk (1) fk =(γ/2π)(4πMs・Hk1/2 (2) ここで4πMsは飽和磁化、Hkは材料に付与された一
軸異方性磁界、γはジャイロ磁気定数である。
【0004】(2)式からもわかるように、高周波帯域
磁気デバイスには、飽和磁化又は一軸異方性磁界が高い
ことが要求される。一般にCo系アモルファス材料では
飽和磁化が10kG程度と低いために、高い一軸異方性
磁界が必要となる。しかし、(1)式からわかるよう
に、一軸異方性磁界が高いと比透磁率が小さな値となっ
てしまう。また、このようなアモルファス系材料では、
高保磁力媒体に対する磁気記録には十分な程度に磁化で
きない。
【0005】一方、高い飽和磁化を有する、Fe系又は
FeCo系結晶質材料は、キュリー温度が高いために、
磁場中による熱処理や成膜を実施しても十分な一軸異方
性磁界が付与できない。また、異方性の大きさも制御し
にくい。
【0006】特に磁性体薄膜の作製に多用されるマグネ
トロンスパッタリング法では、ターゲットからの漏れ磁
界が一様ではないために、最適な一軸異方性の付与が困
難である。また、内部応力と飽和磁歪との積に比例する
逆磁歪効果により付与可能な一軸異方性磁界は、膜形状
による応力分布の制限を受ける。さらに、高い飽和磁歪
が、磁気特性そのものを低下させる。
【0007】近年、磁気デバイスの小型化の進展に伴
い、磁性体材料はこれまで以上に微細なパターンに加工
される傾向にある。たとえばMIGヘッド(Metal In G
apヘッド)やハードディスク用ヘッドのような磁気ヘッ
ドでは、磁性体薄膜は数百nm〜数μm程度の直方体形
状に加工される。このような形状では、形状異方性が相
対的に低下するために、磁化は、特定面内での回転以外
にも変動しやすくなる。
【0008】特に、いわゆるグラニュラー材料では、飽
和磁束密度は高いものの、膜構造が3次元的に等方とな
る。従って、磁化回転方向の自由度が大きいために磁化
回転面の制御が困難であった。また、微小領域における
磁気異方性を外部磁界により均一に付与するのは困難で
あった。
【0009】本発明は、かかる従来の課題を鑑み、高周
波帯域でも優れた磁気特性を示す、結晶質系の磁性体薄
膜およびそれを用いた磁気ヘッドを提供することを目的
とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の磁性体薄膜は、磁性結晶粒を母相とする磁
性体薄膜であって、第1の方向に沿った上記磁性結晶粒
の平均結晶サイズが、この第1の方向に直交する第2の
方向に沿った上記磁性結晶粒の平均結晶サイズよりも小
さい領域を含み、上記第1の方向に沿った磁化を、上記
第2の方向に沿った磁化よりも小さい外部磁界により実
施し得ることを特徴とする。
【0011】このような磁性体薄膜においては、上記領
域において、第1の方向に沿った磁性結晶粒間の磁気的
な相互作用が、第2の方向に沿った磁性結晶粒間の磁気
的な相互作用よりも大きくなる。そして、この磁性結晶
粒の磁気的な相互作用を利用することにより、高周波領
域においても優れた磁気特性を示す磁性体薄膜を得るこ
とができる。この磁性体薄膜は、例えば1T以上の高い
飽和磁束密度を有し得るものである。
【0012】また、前記目的を達成するために、本発明
の磁気ヘッドは、上記に記載した磁性体薄膜を含むこと
を特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】上述したように、本発明の磁性体
薄膜は、その好ましい形態においては、第1の方向にお
ける磁性結晶粒の平均結晶サイズが、第2の方向におけ
る磁性結晶粒の平均結晶サイズよりも小さい領域を含ん
でいる。ここで、上記平均結晶サイズは、例えば、上記
両方向を含む面における、それぞれの方向に沿った結晶
粒の長さの平均値である。
【0014】この領域は、少なくとも、磁性結晶粒間に
磁気的な相互作用が及ぶ範囲を含むことが好ましい。こ
の範囲は、磁性結晶粒によって変化するが、一般に上記
領域は、例えば薄膜内の第1の方向及び第2の方向を含
む面内の直径100nm以上の範囲、さらに好ましくは
直径300nm以上の範囲を含むことが好ましい。この
ように局所的に結晶の大きさが異方的な分布を有する磁
性体薄膜においては、局所的な磁気異方性が生じる。あ
る結晶粒についての交換相互作用の大きさは、その結晶
粒から所定距離の範囲内に存在する結晶粒の数に影響さ
れるからである。
【0015】この磁気異方性によって、相互作用の影響
下にある結晶粒子群は、見かけ上一つの独立した結晶粒
子のように挙動し、その結果、さらに周囲の領域の磁性
結晶粒に影響を及ぼす。このようにして、局所的な磁気
異方性が磁性体薄膜全体の磁気異方性の発現に寄与す
る。磁性体薄膜全体に現れる磁気異方性は、見かけ上は
小さい場合もある。しかし、磁性結晶粒子群が一斉に磁
化回転を始める際には、局所的な磁気異方性が支配的と
なると考えられる。従って、局所的な磁気異方性が強い
上記磁性体薄膜によれば、高い強磁性共鳴周波数を得る
ことができる。
【0016】上記磁性体薄膜においては、特定の領域内
だけではなく、薄膜全体において磁性結晶粒の平均結晶
サイズの関係が上記所定の関係を満たすことが好まし
い。この好ましい例によれば、磁性体薄膜全体に均一に
異方性磁界が生じ、強磁性共鳴周波数が高くなるばかり
ではなく、磁性体薄膜内の磁壁数が減少するため、磁壁
共鳴も抑制できる。従って、高周波帯域においてさらに
優れた軟磁気特性を得ることができる。
【0017】上記のような平均結晶サイズの関係は、磁
性体薄膜の所定の面における磁性結晶粒の形状の異方性
を観察することにより確認することができる。例えば、
基板との界面に平行な面を磁化回転面とする磁性体薄膜
の場合、この面に現れている磁性結晶粒の短手方向は、
好ましくは所定の方向(第1の面内方向)に配向してい
る。一方、磁性結晶粒の長手方向は、第1の面内方向と
直交する方向(第2の面内方向)に配向している。この
ような磁性体薄膜においては、第1の面内方向が磁化容
易軸となり、第2の面内方向が磁化困難軸となる。第2
の面内方向においては、磁性結晶粒間の相互作用が相対
的に低くなり、結晶磁気異方性のキャンセリングも相対
的に低下するからである。もっとも、磁化回転面は、磁
性体薄膜の使用形態に依存し、上記面内方向に限られる
ものではない。
【0018】上記磁性体薄膜に含まれる磁性結晶粒は、
互いに交換相互作用を及ぼし得る結晶サイズを有してい
ることが好ましい。この磁性結晶粒の平均結晶サイズ
は、好ましくは、上記第1の方向について、2nm以上
200nm以下、さらに好ましくは2nm以上100n
m以下である。2nm未満では十分な磁化が発現しにく
くなり、200nmを超えると結晶粒間の相互作用が低
下する。
【0019】本発明の磁性体薄膜は、その好ましい形態
においては、上記第1の方向及び上記第2の方向を含む
断面において、少なくとも1つの方向に沿った磁性結晶
粒の平均結晶サイズが2nm以上200nm以下、より
好ましくは2nm以上100nm以下であり、磁性結晶
粒の少なくとも1つの等価な結晶面の平均方位(結晶面
の法線方向)が所定の方向に配向している領域を含んで
いる。このような磁性結晶粒における結晶方位の配向性
が磁性結晶粒子間の相互作用に異方性をもたらすことに
なる。
【0020】この領域は、上記と同様、薄膜内の第1の
方向及び第2の方向を含む面内の直径100nm以上の
範囲、さらに好ましくは直径300nm以上の範囲を含
むことが好ましい。このように各磁性結晶粒における特
定の結晶面(例えば(110)面)が局所的に配向して
いる磁性体薄膜においては、局所的な磁気異方性が生じ
る。従って、上記と同様、この形態の磁性体薄膜におい
ても、高い強磁性共鳴周波数を得ることができる。ま
た、この磁性体薄膜においても、特定の領域内だけでは
なく、薄膜全体において、特定の方向への磁性結晶粒の
平均結晶サイズが2nm以上200nm以下であり、同
種の結晶面が所定の方向に配向していることが好まし
い。
【0021】また、結晶方位が配向性を有する磁性体薄
膜においては、結晶磁気異方性に起因する各磁性結晶粒
の磁化困難軸も配向性を有する。この磁性体薄膜におい
ては、この磁化困難軸が、磁性体薄膜の磁化困難軸に沿
って配向していることが好ましい。さらに強い磁気異方
性を得ることができるからである。
【0022】本発明の磁性体薄膜は、平均結晶サイズと
結晶方位の双方が配向性を有する磁性体薄膜であっても
よい。例えば、結晶方位が配向性を有する磁性体薄膜に
おいては、平均結晶サイズが2nm以上200nm以下
となる方向が上記第1の方向であることが好ましい。
【0023】本発明の磁性体薄膜は、例えば、略針状又
は略柱状の磁性結晶粒を基板上に成長させることにより
実現することができる。この略針状又は略柱状の磁性結
晶粒は、その長手方向が、所定の方向に配向しているこ
とが好ましく、この配向方向が、基板との界面(基板の
表面)に対して傾斜していることが好ましい。
【0024】この傾きの程度は、特に限定するものでは
ないが、例えば、基板との界面の法線方向と、上記長手
方向とがなす角度により表示して、5°以上45°以下
が好ましい。
【0025】また、上記傾きの程度は、基板との界面に
垂直な断面において観察すれば、以下の関係が成立する
範囲であることが好ましい。
【0026】 0≦|αe|<|αh|<π/2[rad](90°) ここで、αeは、磁化容易軸に平行で基板との界面に垂
直な断面における磁性結晶粒の長手方向と上記界面の法
線方向とがなす角度であり、αhは、磁化困難軸に平行
で上記界面に垂直な断面における磁性結晶粒の長手方向
と上記界面の法線方向とがなす角度である。
【0027】上記傾きは、以下の関係が成立する範囲で
あることがさらに好ましい。 0≦|αe|<|αh|≦π/4[rad](45°)
【0028】略針状又は略柱状の磁性結晶粒が、基板と
の界面に対して傾いた状態で成長すれば、基板との界面
に対して平行な膜面(例えば薄膜の表面)においては、
磁性結晶粒が長粒状に観察される。従って、薄膜の表面
には、好ましくは、短手方向が第1の面内方向に配向
し、長手方向が第1の面内方向に直交する第2の面内方
向に配向した磁性結晶粒群が観察される。このような形
態において磁化回転面が基板との界面に平行な面となる
場合、上記で説明したように、結晶磁気異方性のキャン
セリングの強弱により、第1の面内方向が磁化容易軸と
なり、第2の面内方向が磁化困難軸となる。
【0029】磁化回転面が、基板との界面に対して平行
な膜面となる場合、この面における略針状又は略柱状の
磁性結晶粒の平均結晶幅(結晶粒短手方向の平均結晶サ
イズ)は、2nm以上200nm以下が好ましく、2n
m以上100nm以下がさらに好ましい。
【0030】上記磁性体薄膜においては、基板からの距
離により結晶構造が変化することがある。このような変
化を利用して、略針状又は略柱状の磁性結晶粒の平均結
晶サイズを調整してもよい。具体的には、基板との界面
から(この界面の法線方向に)500nm以下の範囲内
における磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズを
1、基板との界面から500nmを超える範囲におけ
る磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズをd2とする
と、d1>d2とすることが好ましい。
【0031】また、基板との界面から500nm以下の
範囲においては、磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイ
ズを2nm以上200nm以下とし、一方、基板との界
面から500nmを超える範囲においては、磁性結晶粒
の短手方向の平均結晶サイズを2nm以上100nm以
下とすることが好ましい。
【0032】上記磁性体薄膜においては、基板との界面
に平行な面における磁性結晶粒間の間隔が、前記面にお
ける磁性結晶粒の長手方向よりも短手方向において小さ
いことが好ましい。即ち、例えば薄膜の表面において、
磁性結晶粒の短手方向(第1の面内方向)の結晶粒の間
よりも、長手方向(第2の面内方向)の結晶粒の間に介
在物が多く、短手方向においては磁性結晶粒が密に詰ま
っている状態が好ましい。介在物が存在すると、磁性結
晶粒間の交換相互作用が抑制されるからである。
【0033】上記磁性体薄膜においては、略針状又は略
柱状の磁性結晶粒ではなく、このような磁性結晶粒を組
み合わせて形成される多枝形状体(多枝形状の磁性結晶
粒)が含まれていてもよい。この場合も、上記と同様、
多枝形状の幹部分を構成する主軸の磁性結晶粒、及び枝
部分を構成する略針状又は略柱状の磁性結晶粒を、基板
との界面に平行な面において観察したときに、その面内
における磁性結晶粒間の相互作用に配向性が生じること
が好ましい。従って、例えば、枝部を構成する磁性結晶
粒の形状、本数、成長していく角度等が、上記面内方向
により異なるように、多枝形状の磁性結晶粒を形成する
ことが好ましい。
【0034】多枝形状の磁性結晶粒が含まれる場合に
は、略針状又は略柱状の磁性結晶粒の長手方向と同様、
多枝形状体の幹部(主軸)が配向している方向が、基板
に対して傾いていることが好ましい。
【0035】なお、上記磁性体薄膜においては、特に制
限されないが、基板との界面に平行な面を磁化回転面と
することが好ましい。また、磁化回転面として、少なく
とも、基板との界面に垂直な面を含むことが好ましい。
【0036】以上に説明した磁性体薄膜によれば、好ま
しくは1T以上の高い飽和磁束密度を保持しながら磁場
中熱処理を行わずとも、異方性磁界を発生させることが
できる。
【0037】また、以上に説明した磁性体薄膜は、単層
の薄膜として使用してもよいが、目的とする磁気特性に
応じて他の薄膜と積層することにより、多層膜として用
いてもよい。
【0038】例えば、このような積層体は、上記磁性体
薄膜からなる磁性層と、酸化物、炭化物、窒化物及び硼
化物から選ばれる少なくとも1つを含む中間層とを含む
ことが好ましい。中間層は、少なくとも、磁性層と基板
との間に形成される。特に、磁性層と中間層とを交互に
積層した磁性体薄膜によれば、強磁性共鳴周波数の制御
が容易にできる。中間層の絶縁効果により、磁性層内の
過電流を抑制することができるからである。また、1層
あたりの膜厚を低減することにより、磁化回転面からの
磁化の不必要な立ち上がりを抑制することができるため
に、高周波帯域における優れた磁気特性を実現すること
が容易となる。さらに、磁気ヘッド、磁気回路部品等、
種々の磁気デバイスにおいて要求される微細加工を施し
ても、磁気異方性が分散しにくくなる。形状異方性や内
部応力等が影響しにくくなるからである。
【0039】また、上記磁性体薄膜は、中間層に、Mn
よりも、酸化物生成エネルギー及び窒化物生成エネルギ
ーから選ばれる少なくとも一方の生成エネルギーが高い
元素を、5原子%以上含むことが好ましい。微細パター
ンを形成するときにも、磁性層と中間層とのエッチング
レートの差が少なくなって、微細加工を施しやすいから
である。上記元素としては、具体的には、Fe、Co、
Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、P
t、Au、Zn及びCrから選ばれる少なくとも一つの
元素を用いることができる。
【0040】また、上記磁性体薄膜は、中間層と磁性層
との間に下地層を含み、上記下地層が、Fe及び上記磁
性層から選ばれる少なくとも一方の表面自由エネルギー
以下の表面自由エネルギーを有することが好ましい。こ
の好ましい例によれば、中間層の種類によらず、磁性層
において磁性結晶粒の好ましい形状又はサイズを実現す
ることが容易となる。下地層の膜厚は、0.1nm以上
が好ましい。下地層としては、Al、Ba、Ca、M
g、Si、Ti、V、Zn、Ga及びZrから選ばれる
少なくとも1つの元素の酸化物、窒化物、炭化物もしく
は硼化物、及び/又はC、Al、Si、Ag、Cu、C
r、Mg、Au、Ga及びZnから選ばれる少なくとも
一つの物質を用いることができる。
【0041】また、上記磁性体薄膜は、中間層と磁性層
との間に下地層を含み、上記下地層が、磁性結晶粒及び
アモルファス磁性体から選ばれる少なくとも一方を母相
とすることが好ましい。このような微細結晶粒を用いれ
ば、中間層の種類によらず、磁性層において磁性結晶粒
の好ましい形状又はサイズを実現することが容易とな
る。微細結晶粒の平均結晶サイズは、100nm以下が
好ましい。また、上記と同様、下地層の膜厚は、0.1
nm以上が好ましい。また、下地層に、窒素及び酸素の
少なくとも一方を5原子%以上含有させると、磁性層と
の界面が安定化して好ましい。
【0042】以上に説明したような磁性体薄膜は、磁気
センサー、磁気回路部品等の磁気デバイスに好適に用い
得るが、特に、MIG(Metal In Gap)ヘッド、LAM
ヘッド(積層型ヘッド;Lamination Head)及びハード
ディスク用ヘッド等の磁気ヘッドとして好適に用いるこ
とができる。
【0043】以下、このような磁気ヘッドの例について
図面を参照しながら説明する。
【0044】図1に示したMIGヘッドは、フェライト
からなる磁気コア1の磁気ギャップ4近傍に、本発明の
磁性体薄膜2を備えている。磁気ギャップ4は、両側よ
りガラス3により挟持されている。また、孔6は、図示
を省略する電磁コイルを通過させるために形成されたも
のである。
【0045】図2に示したLAMヘッドは、非磁性体1
1により本発明の磁性体薄膜16が挟持された構造を有
している。磁性体薄膜16は、絶縁層17との積層体と
して用いられる。この積層体は、磁気ギャップ12と直
交するように形成され、また積層された断面がテープ走
行面13に面するように配置されている。この磁気ヘッ
ドにも、図1の磁気ヘッドと同様、電磁コイルを巻き付
けるための孔14が形成される。
【0046】図3に示したハードディスク用ヘッドは、
基板40上に、再生下部シールド膜39、再生下部ギャ
ップ膜38、GMR(Giant Magnetoresistance)膜3
3及び硬質磁性膜35、再生上部ギャップ膜34、再生
上部シールド膜兼下部記録磁極36、記録ギャップ膜3
2が順に形成されている。また、硬質磁性膜35と再生
上部ギャップ膜34との間には、GMR部33に向かっ
て両側から端子37が介在している。さらに、記録ギャ
ップ膜32上には、所定の膜厚42を備え、幅を記録幅
41とする上部記録磁極31が形成されている。
【0047】このように、本発明の磁性体薄膜を、磁気
ヘッド、特に、磁性体薄膜と絶縁層とを積層して用いる
LAMヘッド、フェライトをコアとするMIGヘッド又
はハードディスク用記録ヘッドとして用いることによ
り、高周波帯域でも記録エラーが少ない磁気ヘッドを得
ることができる。LAMヘッドでは、成膜する磁性体薄
膜の異方性の方向を基板面に平行な面内方向に等方的に
分散させることにより、優れた高周波帯域での特性を得
ることができる。また、MIGヘッドでは、フェライト
基板面に対して平行な面内方向に異方性を付与すること
により、録再特性が向上する。また、ハードディスク用
ヘッドでは、基板面に対して平行な面内方向に異方性を
付与することにより、書き込み能力が向上する。
【0048】本発明の磁性体薄膜は、電着法、超急冷
法、気相成膜法等従来から用いられてきたいずれの手法
を用いても実現できるが、必要とされる膜厚が数十nm
から数μmの範囲であるときは、低ガス圧雰囲気におけ
る気相成膜法により作製することが好ましい。気相成膜
法としては、例えば高周波マグネトロンスパッタリング
法(RFスパッタリング法)、直流マグネトロンスパッ
タリング法(DCスパッタ法)、対向ターゲットスパッ
タリング法、イオンビームスパッタリング法等に代表さ
れるスパッタリング法が好ましい。特にDCマグネトロ
ンスパッタリング法を用いると、基板温度が室温以下で
あっても、成膜直後から優れた軟磁気特性を示す材料を
得ることが容易になる。
【0049】スパッタリング法により本発明の磁性体薄
膜を形成するためには、まず、飽和磁束密度、軟磁気特
性、磁性材料の抵抗値、耐食性等を考慮して磁性体薄膜
の組成を決定し、さらに組成のずれを考慮してスパッタ
リングターゲットの組成を決定する。そして、磁性体薄
膜と、合金ターゲットを不活性ガス中でスパッタリング
して基板上に成膜する、あるいは金属ターゲット上に添
加元素ペレットを配置してこれらを同時にスパッタリン
グして成膜する、あるいは添加物の一部をガス状態で装
置内に導入し反応性スパッタリングを行い成膜する。こ
こで、放電ガス圧、放電電力、基板の温度、基板のバイ
アス状態、ターゲット上方や基板近傍の磁場値、ターゲ
ットの形状および基板への入射粒子の方向のいずれかを
変化させることにより、本発明の磁性体薄膜の構造とと
もに、見かけの熱膨脹係数、膜の磁気特性等を制御でき
る。
【0050】また、成膜した磁性体薄膜を様々なデバイ
スとして加工する際のプロセス温度の最高値を考慮し、
その温度で内部応力が最低になるように成膜直後の内部
応力を制御することが好ましい。また、本発明の磁性体
薄膜の磁気異方性をさらに高める必要がある場合、磁場
中熱処理や、磁界中成膜と併用することも可能である。
【0051】用いる基板としては、例えば磁性体薄膜を
MIGヘッドに加工する場合には、フェライト基板を用
い、LAMヘッドに加工する場合には、非磁性絶縁基板
を用いる。また、IC回路部品として用いる場合には、
シリコーンウェハー等を基板として用いる。それぞれの
基板には、必要に応じてあらかじめ基板と磁性膜との反
応防止、結晶状態の制御、付着力の向上などのために、
下地層やバリア膜を形成してもよい。
【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明は以下の実施例により限定されるもの
ではない。例えば、以下の実施例においては、磁性体薄
膜に熱処理を施しているがこの熱処理は必須の工程では
ない。
【0053】以下の実施例中、膜構造はX線回折(XR
D)、透過型電子顕微鏡(TEM)および高分解能走査
型電子顕微鏡(HR−SEM)を用いて調査した。実施
例中で述べる磁性結晶粒とは、主にTEMの明視野像と
暗視野像との比較により、結晶学的に、ほぼ同一の結晶
方位を有すると考えられる、連続した結晶領域を指す。
また、組成分析はEPMAおよびRBS(ラザフォード
後方散乱分析)を用い、特に微小領域の組成はTEM付
随のEDSを用いて調査した。また、抗磁力は、BHル
ープトレーサーおよびSQUIDを用い、飽和磁束密度
はVSMを用い、数MHzから数GHzにかけての帯域
の透磁率は、ワンターンコイルを用いて調査した。以下
本発明の実施例の詳細を記す。
【0054】(実施例1)本実施例において、磁性体薄
膜は、RFマグネトロンスパッタリング法により成膜し
た。磁性体薄膜は、放電ガス圧、基板温度、基板への粒
子の入射角等のスパッタリング条件を変更し、またター
ゲットの組成、反応ガスの流量を変更して成膜した。な
お、基板は、ターゲットからの漏れ磁場の影響がほぼ無
視できる位置に配置した。また、以下の各サンプルの磁
性体薄膜の膜厚はいずれも3μmとした。磁気特性は、
480℃での熱処理後に測定した。結果を表1に示す。
【0055】・サンプルaa〜az、ba〜bz、ca
〜cfは次の条件で成膜した。 基板:非磁性セラミックス基板、3mm径の円盤状 基板入射角:0度、15度又は30度 基板温度:室温 磁性膜ターゲット:合金ターゲット ターゲットサイズ:3インチ 放電ガス圧:1〜4mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2〜4% 酸素流量比:0〜2% 放電電力:400W
【0056】なお、基板入射角は、基板表面の法線とス
パッタリングされた粒子が基板に入射する方向との間の
角度により表示する。
【0057】・サンプルdg〜djは上記条件から次の
条件を変更して成膜した。 磁性膜ターゲット:表中に記載の元素からなる合金ター
ゲット 窒素流量比:2〜4%→0%に変更 酸素流量比:0〜2%→0%に変更
【0058】・サンプルdk〜dmは上記条件から次の
条件を変更して成膜した。 基板温度:室温→300℃に変更
【0059】 (表1) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 異方性磁界[Oe] サンプル 膜組成[atom%] ―――――――――――――――― 入射角0° 入射角15° 入射角30° ――――――――――――――――――――――――――――――――――― aa (Fe98Ti1Ta1)93O2N5 0.3 7 18 ab (Fe98Ti1Hf1)93O2N5 0.2 4 16 ac (Fe98Ti1Zr1)93O2N5 0.3 3 10 ad (Fe98Ti1V1)93O2N5 0.1 6 15 ae (Fe98Ti1Cr1)93O2N5 0.4 5 13 af (Fe98Ti1Al1)93O2N5 0.2 4 12 ag (Fe98Ga1Ti1)93O2N5 0.3 6 12 ah (Fe98Ga1Zr1)93O2N5 0.4 5 15 ai (Fe98Ga1Hf1)93O2N5 0.2 4 14 aj (Fe98Ga1Ta1)93O2N5 0.6 6 13 ak (Fe98Ga1V1)93O2N5 0.3 8 15 al (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 0.3 7 13 am (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 0.5 6 17 an (Fe98Al1Ti0.5V0.5)93O2N5 0.4 4 16 ao (Fe98Al1V0.5Ta0.5)93O2N5 0.2 6 13 ap (Fe98Al1V0.5Hf0.5)93O2N5 0.3 6 14 aq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 0.5 3 16 ar (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 0.7 4 15 as (Fe98Si1Ti0.5V0.5)93O2N5 0.6 6 13 at (Fe98Si1Al0.5Ti0.5)93O2N5 0.9 5 12 au (Fe98Si1Al0.5Ta0.5)93O2N5 0.7 6 16 av (Fe98Si1Al0.5Hf0.5)93O2N5 0.5 4 11 aw (Fe98Si1Al0.5V0.5)93O2N5 0.6 5 16 ax (Fe98Si1Al0.5Zr0.5)93O2N5 1.0 7 19 ay (Fe98Ge1Al0.5Nb0.5)93O2N5 0.4 5 18 az (Fe98Ge1Al0.5Ta0.5)93O2N5 0.6 5 15 ba (Fe98Ti1Ta1)92N8 0.7 3 12 bb (Fe98Ti1Hf1)92N8 0.6 5 15 bc (Fe98Ti1Zr1)92N8 0.5 6 13 bd (Fe98Ti1V1)92N8 0.3 4 14 be (Fe98Ti1Cr1)92N8 0.2 5 12 bf (Fe98Ti1Al1)92N8 0.3 6 14 bg (Fe98Ga1Ti1)92N8 0.2 8 15 bh (Fe98Ga1Zr1)92N8 0.4 8 12 bi (Fe98Ga1Hf1)92N8 0.6 7 13 bj (Fe98Ga1Ta1)92N8 0.6 6 17 bk (Fe98Ga1V1)92N8 0.7 6 16 bl (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)92N8 0.9 5 12 bm (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)92N8 0.5 5 15 bn (Fe98Al1Ti0.5V0.5)92N8 0.2 7 13 bo (Fe98Al1V0.5Ta0.5)92N8 0.6 8 19 bp (Fe98Al1V0.5Hf0.5)92N8 0.7 7 12 bq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)92N8 0.5 6 15 br (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)92N8 0.5 5 17 bs (Fe98Si1Ti0.5V0.5)92N8 0.7 8 16 bt (Fe98Si1Al0.5Ti0.5)92N8 0.6 8 20 bu (Fe98Si1Al0.5Ta0.5)92N8 0.8 7 15 bv (Fe98Si1Al0.5Hf0.5)92N8 0.3 5 13 bw (Fe98Si1Al0.5V0.5)92N8 0.7 6 12 bx (Fe98Si1Al0.5Zr0.5)92N8 0.1 5 11 by (Fe98Ge1Al0.5Nb0.5)92N8 0.3 6 16 bz (Fe98Ge1Al0.5Ta0.5)92N8 0.6 7 17 ca (Fe76Si19Al3Ti2)93O1N6 0.1 3 8 cb (Fe76Si19Al3Ti2)92N8 0.2 4 9 cc (Fe76Si19Al3V2)93O1N6 0.1 3 6 cd (Fe76Si19Al3V2)92N8 0.1 4 7 ce (Fe77Si19Al3Ta1)92N8 0.1 2 5 cf (Fe76Si19Al3Nb2)92N8 0.1 3 6 dg Fe73Si18Al9 0.3 0.2 0.3 dh NiFe 1.5 1.5 1.7 di CoNbZrTa 1.7 2.2 2.3 dj CoZrTa 1.3 1.8 2.2 dk (Fe98Ti1Ta1)93O2N5 0.5 0.7 1.5 dl (Fe98Ti1Hf1)93O2N5 0.3 0.6 1.2 dm (Fe98Ti1Zr1)93O2N5 0.3 0.9 2.1 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0060】表1に示した異方性磁界は、基板表面に平
行な方向(薄膜の表面に平行な方向)において、直交す
る2方向において測定した飽和磁界の差の最大値を示し
たものである。
【0061】得られた磁性体薄膜の基板表面に垂直な膜
断面を観察すると、磁性体薄膜は、略針状又は略柱状に
成長した磁性結晶粒群を母相としていた。また、この磁
性結晶粒群は、基板への粒子の入射角方向に成長してい
た。
【0062】入射角を15度又は30度として形成した
サンプルaa〜cfの薄膜の表面を観察すると、磁性結
晶粒群は、長手方向が一定の方向に配向した長粒状の集
合体として観察された。このとき、磁性結晶粒の長手方
向が磁化困難軸に、短手方向が磁化容易軸に対応してい
た。
【0063】磁性結晶粒は、入射角を15度から30度
へと大きくすることにより、さらに傾斜して成長し、そ
の結果、薄膜表面において観察される磁性結晶粒群の長
短辺比は拡大した。また、表1に示したように、入射角
を大きくするに従って異方性磁界も大きくなった。しか
し、入射角を45度より大きくすると、長短辺比は逆に
小さくなり、異方性磁界も小さくなる傾向を示した。ま
た、入射角が90度に近づくにつれて軟磁気特性が劣化
する傾向が観察された。従って、基板への粒子の入射角
は、5度以上45度以下が好ましい。
【0064】また、入射角を15度又は30度として形
成したサンプルaa〜cfの基板に平行な膜面におい
て、磁性結晶粒の平均結晶幅(短手方向の平均結晶サイ
ズ)は、2nm〜100nmであった。この平均結晶幅
は、薄膜の厚さに応じて変化し、基板表面から500n
m以下の領域においては2nm〜200nmの範囲であ
ったのに対し、基板表面から500nmを超える領域に
おいては2nm〜100nmの範囲であった。
【0065】一方、サンプルdg及びdhの平均結晶幅
は、250nm〜300nm程度であり、サンプルdk
〜dmの平均結晶幅は、210nm〜230nm程度で
あった。また、サンプルdi及びdjにおいては、アモ
ルファス相が観察され、含まれる結晶粒の結晶幅は、最
大でも2nm程度であった。これらのサンプルにおいて
は、入射角を調整しても強い異方性磁界は得られなかっ
た。このように、平均結晶幅が、2nm〜200nmで
あることが異方性磁界を発生させるために好ましいこと
が確認された。
【0066】大きな異方性磁界を示した入射角を30度
として形成したサンプルaa〜cfの磁性体薄膜を、基
板表面に垂直で磁性結晶粒の成長方向に平行な膜断面に
おいて観察すると、シャドー効果によると考えられる結
晶粒間の隙間が観察された。この結晶粒の隙間には異方
性があり、上記磁性体薄膜を、基板に平行な膜断面にお
いて観察すると、上記隙間の影響により、磁性結晶粒の
長手方向における結晶粒間の間隔が、短手方向における
結晶粒間の間隔よりも大きくなっていた。換言すれば、
磁性結晶粒は、短手方向においてより密にパッキングさ
れている状態であった。表1に示した結果から、このよ
うな結晶粒のパッキング状態の異方性も、異方性発現に
寄与していると考えられる。
【0067】なお、サンプルaa〜cf(基板入射角0
°を除く)の磁性体薄膜の飽和磁束密度は1.3〜1.
9Tであった。
【0068】以上のサンプルにおいて、O、NをB、C
に一部置換あるいは全部置換した場合も、ほぼ同じ磁気
特性と結晶構造との相関が得られた。また上記磁性体薄
膜をDCマグネトロンスパッタリング法で作製したとこ
ろ、放電ガス圧を0.5〜2mTorr、投入電力を1
00Wに変更することにより、ほぼ同様の組成と結晶構
造を得ることができ、さらにこの方法により成膜した磁
性体薄膜は、成膜直後から異方性磁界と優れた軟磁気特
性を示すことが確認された。また、これらの磁性体薄膜
は、520℃の熱処理後においても軟磁気特性を示し
た。また、これらの磁性体薄膜の異方性磁界は、膜厚が
30nm程度まで薄くなった場合でも同様に観察され
た。
【0069】(実施例2)本実施例においては実施例1
で作製した磁性体薄膜の微細加工に伴う磁気異方性の変
化を調査した。加工後の磁性体形状は3×3×3μmと
した。また、本実施例においては、基板面内方向及び基
板面垂直方向の飽和磁界を測定し、磁化困難軸方向の値
から磁化容易軸方向の値を引くことで異方性磁界を求め
た。飽和磁界の測定にはSQUIDを用いた。結果を表
2に示す。
【0070】・実施例1のサンプルal〜as(基板入
射角:0度又は15度)を次の条件で加工した。 基板:非磁性セラミックス基板 加工法:ダイシングソー 膜形状:3×3×3μm 切り出し角:基板面に垂直 測定方位:X軸(加工前の膜状態での膜面内磁化困難軸
方向) 測定方位:Y軸(加工前の膜状態での膜面内容易磁化軸
方向) 測定方位:Z軸(加工前の膜状態での膜面垂直方向) 異方性磁界:|X軸の飽和磁界−Y軸の飽和磁界|、X
−Yで表記 |Z軸の飽和磁界−Y軸の飽和磁界|、Z−Yで表記 ここで、膜面とは基板表面に平行な面である。
【0071】また、比較のために、実施例1のサンプル
dg(基板入射角:15度)を上記と同様に加工した。
【0072】また、実施例1のサンプルdi及びdj
(基板入射角:15度)を成膜直後に磁場中で熱処理し
てそれぞれ6Oe、7Oeの異方性磁界を付与し、サン
プルea及びebとした。
【0073】 (表2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 異方性磁界[Oe] サンプル 膜組成[atom%] ―――――――――――――――― 入射角 X−Y Z−Y ――――――――――――――――――――――――――――――――――― al (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 15 7 27 am (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 15 6 21 an (Fe98Al1Ti0.5V0.5)93O2N5 15 4 36 ao (Fe98Al1V0.5Ta0.5)93O2N5 15 6 28 ap (Fe98Al1V0.5Hf0.5)93O2N5 15 6 26 aq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 15 3 27 ar (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 15 4 20 as (Fe98Si1Ti0.5V0.5)93O2N5 15 6 30 al (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 0 0.2 40 am (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 0 0.3 38 an (Fe98Al1Ti0.5V0.5)93O2N5 0 0.2 33 ao (Fe98Al1V0.5Ta0.5)93O2N5 0 0.3 41 ap (Fe98Al1V0.5Hf0.5)93O2N5 0 0.2 39 aq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)93O2N5 0 0.1 35 ar (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)93O2N5 0 0.3 37 as (Fe98Si1Ti0.5V0.5)93O2N5 0 0.0 2.5 dg Fe73Si18Al9 15 0.2 2.5 ea CoNbZrTa 15 1.8 1.9 eb CoZrTa 15 2.2 2.0 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0074】表2に示すように、基板表面に対して磁性
結晶粒が斜めに成長した磁性体薄膜を加工した磁性体
(入射角が15度のサンプルal〜as)は、磁化容易
軸方向をY軸とするとそれと直角に交わるX軸及びZ軸
方向のいずれも磁化困難軸となる。このような磁性体に
おいては、X軸の磁気異方性が比較的小さいために、X
軸方向に外部磁界を付与すると、磁化回転は主にXY面
内で起こる。従って、入射角が15度のサンプルal〜
asは、膜面内で高い透磁率が必要な高周波用デバイス
の磁性部分に適している。
【0075】一方、基板表面に対して磁性結晶粒が垂直
に成長した磁性体薄膜を加工した磁性体(入射角0度の
サンプルal〜as)では、X軸、Y軸がいずれも磁化
容易軸とみなせるために、膜面垂直方向に透磁率の高周
波特性が要求されるデバイスの磁性部分に適している。
【0076】サンプルdgでは、Z軸方向の異方性磁界
は比較的大きいが、容易磁化方向の磁性結晶幅が100
nmよりかなり厚いために、十分な強さの異方性磁界が
発現していない。また、サンプルea及びebのよう
に、磁場中処理したアモルファス磁性体は、微細加工前
に6又は7Oeであった異方性磁界が加工後に小さくな
っている。このように、磁場中の熱処理により付与した
異方性磁界は、微細加工した後の低下の程度が大きい。
【0077】異方性磁界が強い入射角0度のサンプルa
l〜asでは、磁化困難軸方向であるZ軸方向に沿った
平均結晶方位が<110>軸で、磁化容易軸方向である
X軸、Y軸方向については無配向状態であった。このよ
うに、磁性結晶粒の所定の結晶軸(結晶面)が一定の方
向に配向していることが、異方性磁界の発現のためには
さらに好ましい。また、入射角15度のサンプルal〜
asでは、入射角0度のサンプルal〜asとは異な
り、基板面に垂直方向に配向している面が(110)面
からずれていた。<110>軸は結晶磁気異方性の磁化
困難軸方向である。従って、強い異方性を発現するため
には、磁性体の磁化困難軸方向と、磁性体を構成する磁
性結晶粒子の結晶磁気異方性の磁化困難軸方向との一致
が好ましいことがわかる。
【0078】(実施例3)本実施例では、RFマグネト
ロンスパッタリング法を用いて成膜した磁性体薄膜につ
いて、放電ガス圧等のスパッタリング条件により変化す
る結晶形状等の膜構造と磁気特性との関係を調査した。
結果を表3にまとめて示す。結晶形状はSEM又はTE
Mによる観察により評価した。また、以下のサンプルの
膜厚は3μmとし、磁気特性は520℃真空中での熱処
理後の値である。また、異方性磁界の値は、下記に条件
で示すようにターゲットの長手方向の飽和磁界から短手
方向の飽和磁界を引いた差により示す。
【0079】・サンプルは次の条件で成膜した。 基板:非磁性セラミックス基板、磁気測定時には3mm
径の円盤状に加工 基板温度:水冷 磁性膜ターゲット:FeAlSiTi合金ターゲット ターゲットサイズ:5インチ×15インチ 放電ガス圧:2〜8mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2% 酸素流量比:1% 放電電力:2kW
【0080】
【0081】サンプルja〜jcにおいては、略針状又
は略柱状の磁性結晶粒、および略柱状部又は略針状部の
結晶粒により構成される多枝形状の磁性結晶粒を母相と
する構造を有していた。表3に示したように、放電ガス
圧が高くなるにつれて、ターゲット長手方向を磁化困難
軸とし、短手方向を磁化容易軸とする異方性磁界が強く
なった。
【0082】これらのサンプルの膜の磁化容易軸及び磁
化困難軸に平行な断面で構造を比較したところ、いずれ
の断面でもガス圧が高くなるほど多枝形状の主軸(幹
部)から成長している枝部の体積、本数、及び幹部と枝
部とがなす角の大きさのいずれかが大きくなっており、
その傾向は磁化困難軸方向でさらに強く見受けられた。
また、略針状又は略柱状の磁性結晶粒の平均結晶幅(短
手方向の平均結晶サイズ)は、2〜100nmの範囲に
入っていた。平均結晶幅は、ガス圧が高いほど大きくな
る傾向があった。また、基板表面近傍500nmまでの
領域では多枝形状は少なく基板表面の法線方向に対して
傾いて成長した柱状晶が多く観察された。この基板面に
対する柱状晶の成長方向は一定ではなく、その平均結晶
幅は2〜200nmの範囲に入っていた。
【0083】一方、サンプルjd〜jf、ka及びkc
においては、磁性結晶粒が略針状又は略柱状の結晶粒の
みで構成されていた。サンプルkcでは異方性磁界は大
きいものの、抗磁力が高く軟磁気特性が劣化していた。
サンプルkcの結晶粒の形状は柱状で、この柱状晶の結
晶幅は200nmを超えていた。一方、サンプルka
は、針状の結晶粒により構成されていた。
【0084】なお、すべてのサンプルの飽和磁束密度
は、1.3〜1.4Tであった。
【0085】サンプルja〜jfの基板表面に平行な面
の構造を暗視野で観察したところ、100nm程度以上
の長さを有する領域において、結晶方位の揃った結晶粒
断面が点在しており、これは多枝形状をなす磁性結晶粒
の幹部及び枝部の結晶粒断面であることが確認された。
また、この結晶粒断面は、基板の長手方向(ターゲット
の長手方向)に沿って長くなっていた。このように、上
記サンプルにおいては、基板表面に平行な面(磁化回転
面)において、平均結晶サイズが異方的な分布を有して
いた。
【0086】また、基板表面に平行な面における結晶粒
断面の暗視野像の回折線が、この面にほぼ垂直な結晶面
からの電子線回折であることを考慮すれば、磁化回転面
に平行な面内における一定の領域(例えば少なくとも1
00nmの範囲を含む領域)において、結晶方位が、面
内の方向に対して異方的な分布を有することが異方性発
現のためには好ましい。
【0087】また、磁化困難軸方向では、膜面内におい
てこの方向に異方性をもって成長した多枝形状の磁性結
晶粒により結晶方位が比較的揃った領域が形成されてい
た。このように磁化困難軸方向に沿った平均結晶方位
が、磁化容易軸方向に沿った平均結晶方位より高い配向
性を有することが好ましい。
【0088】なお、磁性結晶粒の多枝形状は、基板に入
射する粒子の入射角が周期的に変化する、例えば基板と
ターゲットとが相対的に移動しながら成膜するような手
段を用いても実現できることが確認された。この場合、
移動方向およびターゲットの形状から、基板に入射する
粒子の入射角に異方性を付与することが重要である。た
とえば、基板に対してターゲットが回転するカルーセル
タイプのスパッタリング装置を用いる場合、入射粒子は
90度より小さくなければ十分な異方性を得られないこ
とが確認された。
【0089】また上記で示した元素からなる磁性体薄膜
以外で、実施例1で示した条件で作製できる磁性体で
も、上記と同様な結果が得られることが確認された。こ
のように、本発明の磁性体薄膜の特性は、組成依存性で
はなく構造依存性の効果によるところが大きい。また、
多枝形状の主軸が基板面に対して傾斜するように配向性
を付与しても異方性は増大できることを確認した。
【0090】また、上記磁性体薄膜をDCマグネトロン
スパッタリング法で作製したところ、ほぼ同様の組成と
結晶構造を得ることができ、さらにこの方法により成膜
した磁性体薄膜は、成膜直後から異方性磁界と優れた軟
磁気特性を示すことが確認された。また、これらの磁性
体薄膜は、520℃の熱処理後においても軟磁性特性を
示した。また、これらの磁性体薄膜の異方性磁界は、膜
厚が30nm程度まで薄くなった場合でも同様に観察さ
れた。
【0091】(実施例4)本実施例では、RFマグネト
ロンスパッタリング法を用い、放電ガス圧、基板温度
等、基板入射角のスパッタ条件、及び添加元素、反応ガ
ス流量比を変え、組成及び結晶形状等の膜構造、共鳴周
波数を調査した。なお、基板はターゲットからの漏れ磁
場の影響がほぼ無視できる位置に配置して成膜した。ま
た、共鳴周波数は、μ”が最大となる周波数とした。表
4の強磁性共鳴周波数の計算値(fk)は、100nm
単層膜の異方性磁界と飽和磁化を用い次式により求め
た。 fk =(γ/2π)(4πMs・Hk1/2
【0092】・サンプルfl〜fsは次の条件で成膜し
た。 構成:表中の磁性体(膜厚:100nm)と、Al23
(膜厚:50nm)との積層膜(磁性層2層、非磁性層
は下地層を含め2層、磁性層/下地層/Al 23層/磁
性層/下地層/Al23層/基板) 基板:非磁性セラミックス基板、10mm径の円盤状 基板入射角:15度 基板温度:室温 磁性膜ターゲット:合金ターゲット ターゲットサイズ:3インチ 放電ガス圧:3mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2〜4% 放電電力:400W
【0093】・サンプルgl〜gsは次の条件で成膜し
た。 構成:表中の磁性体(膜厚:100nm)と、Al23
(膜厚:50nm)との積層膜(磁性層2層、非磁性層
は下地層を含め2層、磁性層/下地層/Al 23層/磁
性層/下地層/Al23層/基板) 基板:非磁性セラミックス基板、10mm径の円盤状に
加工 基板温度:水冷 磁性膜ターゲット:合金ターゲット ターゲットサイズ:5インチ×15インチ 放電ガス圧:5mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2〜4% 放電電力:2kW
【0094】また、比較のために、上記と同様の条件に
より以下の構成の膜も成膜した(表4においては、「単
層膜」として示す。) 構成:表中の磁性体単層膜(膜厚:100nm)、下地
層、Al23層(膜厚:50nm)、(磁性層/下地層
/Al23層/基板)
【0095】ここで、下地層は、表中の磁性体の窒化物
からなる、微結晶およびアモルファスにより構成される
厚さ1nmの層とした。
【0096】 (表4) [GHz] ――――――――――――――――――――――――――――――――――― サンプル fk計算値 μ”の最大周波数 計算値 単層膜 積層膜 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― fl (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)92N8 0.9 0.7 1.2 fm (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)92N8 0.9 0.7 1.1 fn (Fe98Al1Ti0.5V0.5)92N8 0.0 0.9 1.3 fo (Fe98Al1V0.5Ta0.5)92N8 1.1 1.0 1.3 fp (Fe98Al1V0.5Hf0.5)92N8 1.0 1.0 1.3 fq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)92N8 0.9 0.8 1.2 fr (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)92N8 0.9 0.8 1.2 fs (Fe98Si1Ti0.5V0.5)92N8 1.1 1.2 1.3 gl (Fe98Al1Ti0.5Nb0.5)92N8 1.1 1.0 1.5 gm (Fe98Al1Ti0.5Ta0.5)92N8 1.1 1.1 1.4 gn (Fe98Al1Ti0.5V0.5)92N8 1.2 1.2 1.5 go (Fe98Al1V0.5Ta0.5)92N8 1.2 1.1 1.6 gp (Fe98Al1V0.5Hf0.5)92N8 1.2 1.1 1.4 gq (Fe98Si1Ti0.5Nb0.5)92N8 1.1 1.0 1.5 gr (Fe98Si1Ti0.5Ta0.5)92N8 1.0 0.9 1.2 gs (Fe98Si1Ti0.5V0.5)92N8 1.2 1.3 1.4 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0097】磁性体薄膜は、サンプルfl〜fsについ
ては、略針状又は略柱状の磁性結晶粒が粒子が入射して
くる方向に成長していた。一方、サンプルgl〜gsに
ついては、略針状又は略柱状の磁性結晶粒及びこれらが
組み合わされた多枝形状の磁性結晶粒が、多枝形状の主
軸(幹部)が基板面に傾くように成長していた。特にタ
ーゲットの中央部に対向する位置に配置された基板に成
膜されたものに関しては、幹部がターゲット長手方向に
比較的ランダムに傾いて成長していた。
【0098】上記サンプルにおいて、平均結晶幅は2〜
200nmの範囲であった。表4の結果より、単層膜の
μ”の最大周波数は、計算値とほぼ一致した値となって
いることがわかる。一方、中間層と積層された磁性体薄
膜は、計算値の強磁性共鳴周波数よりも高い共鳴周波数
が得られた。このように、磁性層を中間層と積層する
と、磁性体薄膜の強磁性共鳴周波数が単層膜よりも大き
くなる効果を得ることができる。
【0099】また、上記磁性体薄膜をリフトオフ法を用
いて50μm×2000μm×膜厚の短冊状に加工し、
それぞれ、μ”が最大になる周波数を調べたところ、1
0mm径のサンプルに比較して、単層のサンプルでは
μ”がブロードに広がった。このように、中間層との積
層構造は、磁性体薄膜の微細加工時にも、一軸内部応力
等の磁気異方性分散要因を低減させることができる。
【0100】中間層及び磁性層の厚みを変化させて、こ
の積層効果を調べたところ、使用する周波数が数百MH
z〜数GHz帯である場合、材料の抵抗率によっても変
化するが、磁性体の厚みが10nm〜3μmの範囲、ま
た中間層の厚みが1nm〜100nmの範囲で積層効果
があることが確認された。特にGHz帯では、中間層厚
みは10〜100nmであることが効果的である。
【0101】中間層の材料としては、使用周波数帯にお
ける初透磁率が10以下の材料が好ましく、さらに抵抗
が200μΩcm以上の炭化物、酸化物、窒化物又は硼
化物が特に好ましい。特に、Al、Ba、Ca、Mg、
Si、Ti、V、Zn、Ga及びZrから選ばれる少な
くとも一つの元素の炭化物、硼化物、酸化物又は窒化物
が好適である。また、平均結晶粒径が100nm以下の
微結晶磁性体又はアモルファス磁性体を、中間層又は下
地層(磁性層直下に形成する層)として用いた場合に、
本発明の効果を得るために好ましい結晶構造を実現しや
すい。なお、これらの物質を単層の磁性層の下地層とし
て用いた場合にも同様の効果が確認された。
【0102】なお、平均結晶粒径が100nm以下の微
結晶磁性体、あるいはアモルファス磁性体中に、窒素又
は酸素を5原子%以上含ませると、磁性層との界面が安
定化する。なお、下地層の厚みとしては、成膜する基板
の平坦さにもよるが、0.1nm〜30nmの範囲とす
ると、上記好ましい平均結晶幅を有する磁性体の結晶構
造が得られやすい。
【0103】次に表中の実施例サンプルの中間層(Al
23)中に、Fe,Co,Ni,Cu,Ru,Rh,P
d,Ag,Os,Ir,Pt,Au,Zn,Cr等のM
nよりも酸化物又は窒化物生成自由エネルギーが高い元
素が、1〜10原子%程度含有されるように作製した。
それぞれのサンプルをRIE(反応性イオンエッチン
グ)を用いて1μm×1μm×膜厚の形状に加工したと
ころ、Al23のみの中間層を有するサンプルでは、磁
性膜と中間層とのエッチングレートの差による段差がわ
ずかに生じた。一方、上記元素を添加した中間層におい
ては、特に添加元素量が、5原子%以上のサンプルにお
いて上記段差形状を充分に小さくすることができた。こ
のように、Mnより酸化物又は窒化物生成自由エネルギ
ーが高い元素の添加により、微細加工時の形状制御が容
易になることが確認された。
【0104】(実施例5)図1と同様のMIGヘッドを
作製した。結果を表5に示す。 ・ヘッド仕様 トラック幅:17μm ギャップデプス:12.5μm ギャップレングス:0.2μm ターン数N:16 フェライト上のバリア膜:アルミナ3nm 磁性膜厚:4.5μm ・C/N特性 相対速度=10.2m/s 録再周波数=20.9MHz テープ:MPテープ ・磁性体部の作製条件 ・実施例A 基板:フェライト基板 基板入射角:0度又は15度 基板温度:室温 磁性膜ターゲット:複合ターゲット ターゲットサイズ:3インチ 放電ガス圧:3mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2〜4% 放電電力:400W ・実施例B 基板:フェライト基板 基板温度:水冷 磁性膜ターゲット:合金ターゲット ターゲットサイズ:5インチ×15インチ 放電ガス圧:5mTorr スパッタ主ガス:Ar 窒素流量比:2〜4% 放電電力:2kW
【0105】 (表5) ――――――――――――――――――――――――――――――― 録再出力[dB] コア磁性薄膜 実施例A 実施例B 0度 15度 ――――――――――――――――――――――――――――――― (Fe76Si19Al3Ti2)93O1N6 +58.5 +59.0 +59.2 (Fe76Si19Al3Ti2)92N8 +57.6 +58.7 +58.9 (Fe76Si19Al3V2)93O1N6 +57.8 +58.5 +58.7 (Fe76Si19Al3V2)92N8 +58.0 +59.1 +59.0 (Fe77Si19Al3Ta1)92N8 +58.2 +59.0 +59.5 (Fe76Si19Al3Nb2)92N8 +57.7 +58.5 +59.0 ―――――――――――――――――――――――――――――――
【0106】実施例Aは図1に示すフェライト部に対し
て入射角を15度とすることにより、膜面内に磁気異方
性を設けたものであるが、この場合のヘッド出力は磁化
困難軸が膜面内に形成されていれば、その方向に殆ど影
響されず、優れた値を示した。しかし、実施例Aで基板
への入射角を0度とした場合のヘッド出力は、明らかに
低くなった。また、実施例Bでは、磁性膜は、略針状も
しくは略柱状、又は多枝形状を有する磁性体が、膜面内
において磁気異方性を有するように成膜されている。こ
の場合も、実施例Aで入射角を15度としたときと同
様、出力の向上が確認された。また、上記組成以外で
も、上記の結晶構造を有する磁性体薄膜を使用すること
により、ヘッド出力が向上することも確認された。
【0107】次に、図2と同様のLAM型ヘッドを作製
した。使用した磁性体は実施例1で用いたサンプルaa
〜cf(入射角15度)の磁性体とした。次に、厚み5
00nmの上記磁性体と厚み5nmのAl23とを交互
に積層し、3μmの磁性体薄膜(図2の16)を作製し
た。さらに、この磁性体薄膜と厚み150nmのAl 2
3(図2の17)とを交互に積層して、全体として約
19μmの厚みを有する積層磁性体(Aタイプ)を作製
した。
【0108】また、構成される磁路内の面内異方性が同
一方向となるように磁性体薄膜を成膜した。この厚さ3
μmの面内異方性の向きが揃った磁性体薄膜を、互いの
磁化困難軸方向が60度ずつずれるように厚さ150n
mのAl23と積層することにより、全体として約19
μmの厚みを有する積層磁性体(Bタイプ)を作製し
た。それぞれの積層体を用いたLAMヘッドの記録再生
特性の周波数依存性(10MHzから40MHz)を調
べたところ、Bタイプの積層磁性体を用いたヘッドで
は、すべて2〜3dB高い値を示した。また、磁性体薄
膜16として、面内で磁気異方性を示す多枝形状の磁性
結晶粒を含む磁性体をAl23と積層したヘッドに関し
ても、面内で磁気異方性が等方的になるように作製する
と、優れた録再特性が得られた。
【0109】次に、図3に示したと同様のハードディス
ク用ヘッドを作製した。磁極31に、上記実施例1及び
実施例3において好ましい特性が得られた本発明の厚さ
200nm〜1000nmの磁性体薄膜と、厚さ5〜5
0nmのAl23又はSiO 2とを交互に積層し、全体
で厚さ4μm(図中の42に相当)とした積層磁性体を
用いた。なお、記録幅41は500nmとした。それぞ
れの磁性層は磁化困難軸が図3における面垂直方向にな
るように成膜した。このようにして得られたいずれのヘ
ッドでも、高記録密度が実現できた。
【0110】また本発明の磁気異方性を有する磁性体薄
膜は、ハードディスク用ヘッドの再生上部シールド膜拳
兼記録下部磁極36、あるいは再生下部シールド膜39
に使用することにより、さらにビットエラーの少ない磁
気記録ヘッドを実現することができた。また、Al23
又はSiO2中に、Mnより酸化物または窒化物生成自
由エネルギーが高い元素を5原子%以上含有させること
により、さらにヘッドの形状加工が容易になることが確
認された。
【0111】
【発明の効果】以上のように本発明の磁性体薄膜では、
磁性結晶粒を母相とし、第1の方向に沿った磁性結晶粒
間の磁気的な相互作用が、第1の方向に直交する第2の
方向に沿った磁性結晶粒間の磁気的な相互作用よりも大
きい磁性体薄膜とすることにより、従来の磁場中熱処理
法や磁界中成膜法を用いることなく、高飽和磁束密度を
有する軟磁性体に対して高い一軸異方性を付与すること
ができる。この結果、磁性体薄膜内の磁壁数を減少させ
て強磁性共鳴周波数を高めることが可能となり、高周波
磁気デバイスで要求される数MHzから数GHzに至る
高周波帯域においても優れた軟磁気特性を得ることがで
きる。また、本発明の構造を有する磁性体薄膜を磁気ヘ
ッドのメタルコアに用いることにより、高周波帯域での
磁気記録のエラーレイトが著しく改善することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気ヘッドの一実施形態であるMI
Gタイプの磁気ヘッドの斜視図である。
【図2】 本発明の磁気ヘッドの一実施形態であるLA
Mタイプの磁気ヘッドの斜視図と部分拡大図である。
【図3】 本発明の磁気ヘッドの一実施形態であるハー
ドディスク用磁気ヘッドの部分断面図である。
【符号の説明】
1 磁気コア 2 磁性体薄膜 4 磁気ギャップ 11 非磁性体 12 磁気ギャップ 16 磁性体薄膜 17 絶縁層 31 上部記録磁極 32 記録ギャップ膜 33 GMR膜 34 再生上部ギャップ膜 35 硬質磁性膜 36 再生上部シールド膜兼下部記録磁極 38 再生下部ギャップ膜 39 再生下部シールド膜

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性結晶粒を母相とする磁性体薄膜であ
    って、第1の方向に沿った前記磁性結晶粒の平均結晶サ
    イズが、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿った
    前記磁性結晶粒の平均結晶サイズよりも小さい領域を含
    み、前記第1の方向に沿った磁化を、前記第2の方向に
    沿った磁化よりも小さい外部磁界により実施し得ること
    を特徴とする磁性体薄膜。
  2. 【請求項2】 前記第1の方向に沿った磁性結晶粒の平
    均結晶サイズが2nm以上200nm以下である請求項
    1に記載の磁性体薄膜。
  3. 【請求項3】 前記領域内における前記第1の方向及び
    前記第2の方向を含む断面において少なくとも1つの方
    向に沿った磁性結晶粒の平均結晶サイズが2nm以上2
    00nm以下であり、前記領域内において磁性結晶粒の
    少なくとも一つの等価な結晶面の平均方位が所定の方向
    に配向している請求項1に記載の磁性体薄膜。
  4. 【請求項4】 磁性結晶粒の結晶磁気異方性に起因する
    磁化困難軸が、磁性体薄膜の磁化困難軸に沿って配向し
    ている請求項3に記載の磁性体薄膜。
  5. 【請求項5】 前記領域が、前記第1の方向及び前記第
    2の方向を含む面において、直径が100nm以上の範
    囲を含む請求項1に記載の磁性体薄膜。
  6. 【請求項6】 略針状又は略柱状の磁性結晶粒を含む請
    求項1〜5のいずれかに記載の磁性体薄膜。
  7. 【請求項7】 前記磁性結晶粒の長手方向が、所定の方
    向に配向している請求項6に記載の磁性体薄膜。
  8. 【請求項8】 前記磁性結晶粒の長手方向が配向してい
    る方向が、基板との界面に対して傾いている請求項7に
    記載の磁性体薄膜。
  9. 【請求項9】 前記磁性結晶粒の長手方向が配向してい
    る方向と、基板との界面の法線方向とが5°以上45°
    以下の角度を有する請求項8に記載の磁性体薄膜。
  10. 【請求項10】 磁化容易軸に平行で基板との界面に垂
    直な断面における磁性結晶粒の長手方向と前記界面の法
    線方向とがなす角度をαe、磁化困難軸に平行で前記界
    面に垂直な断面における前記長手方向と前記法線方向と
    がなす角度をαhとすると、以下の関係が成立する請求
    項8に記載の磁性体薄膜。 0≦|αe|<|αh|<π/2[rad]
  11. 【請求項11】 基板との界面に平行な面における磁性
    結晶粒間の間隔が、磁性結晶粒の短手方向よりも長手方
    向において大きい請求項7に記載の磁性体薄膜。
  12. 【請求項12】 少なくとも2つの略針状又は略柱状の
    磁性結晶粒からなる多枝形状体を含む請求項1〜11の
    いずれかに記載の磁性体薄膜。
  13. 【請求項13】 基板との界面から500nm以下の範
    囲における磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズをd
    1、前記基板との界面から500nmを超える範囲にお
    ける磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズをd2とす
    ると、d1>d2の関係が成立する請求項1〜12のいず
    れかに記載の磁性体薄膜。
  14. 【請求項14】 基板との界面から500nm以下の範
    囲における磁性結晶粒の短手方向の平均結晶サイズが2
    nm以上200nm以下であり、基板との界面から50
    0nmを超える範囲における磁性結晶粒の短手方向の平
    均結晶サイズが2nm以上100nm以下である請求項
    1〜13のいずれかに記載の磁性体薄膜。
  15. 【請求項15】 基板との界面に平行な面を磁化回転面
    とする請求項1〜14のいずれかに記載の磁性体薄膜。
  16. 【請求項16】 磁化回転面として、少なくとも、基板
    との界面に垂直な面を含む請求項1〜14のいずれかに
    記載の磁性体薄膜。
  17. 【請求項17】 請求項1〜16のいずれかに記載の磁
    性体薄膜からなる磁性層と、酸化物、窒化物、炭化物及
    び硼化物から選ばれる少なくとも1つを含む中間層とを
    含むことを特徴とする磁性体薄膜。
  18. 【請求項18】 前記中間層に、Mnよりも、酸化物生
    成エネルギー及び窒化物生成エネルギーから選ばれる少
    なくとも一方の生成エネルギーが高い元素を、5原子%
    以上含む請求項17に記載の磁性体薄膜。
  19. 【請求項19】 前記中間層と前記磁性層との間に下地
    層を含み、前記下地層が、Fe及び前記磁性層から選ば
    れる少なくとも一方の表面自由エネルギー以下の表面自
    由エネルギーを有する請求項17に記載の磁性体薄膜。
  20. 【請求項20】 前記中間層と前記磁性層との間に下地
    層を含み、前記下地層が、磁性結晶粒及びアモルファス
    磁性体から選ばれる少なくとも一方を母相とする請求項
    17に記載の磁性体薄膜。
  21. 【請求項21】 請求項1〜20のいずれかに記載の磁
    性体薄膜を含むことを特徴とする磁気ヘッド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009502036A (ja) * 2005-07-21 2009-01-22 コミッサリア ア レネルジ アトミック 磁性素子を有する無線周波数デバイス、および磁性素子の製造方法

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