JP3130407B2 - 磁性膜の製法および薄膜磁気ヘッド - Google Patents

磁性膜の製法および薄膜磁気ヘッド

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JP3130407B2
JP3130407B2 JP05121223A JP12122393A JP3130407B2 JP 3130407 B2 JP3130407 B2 JP 3130407B2 JP 05121223 A JP05121223 A JP 05121223A JP 12122393 A JP12122393 A JP 12122393A JP 3130407 B2 JP3130407 B2 JP 3130407B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁性膜および薄膜磁気
ヘッドの製法に関する。さらに詳しくは、高周波帯域で
用いられるVTRなどの磁性膜またはその積層膜から
なる薄膜磁気ヘッドに好適な軟磁性膜および薄膜磁気
ヘッドの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】図9は、たとえば特開平3-141007号公報
に示された薄膜磁気ヘッドの磁性薄膜からなる磁気コア
に付与される磁化容易軸方向とそれにともなう磁区構造
を示す図である。
【0003】薄膜磁気ヘッドの磁気コアは、通常、スパ
ッタリング法あるいは蒸着法などを用いて磁性膜を成膜
したのち、エッチング法を用いてパターニングして形成
される。図9中、23は磁気コア内に形成される磁区、24
はこれら磁区の境界にある磁壁を示す。25は各磁区にお
ける磁化の方向、26は磁路方向すなわち磁束信号の流れ
る方向、そして27は磁化容易軸(Easy Axis)、すなわち
異方性磁界の方向を示している。28は、磁気コアの磁気
記録媒体と対向、ないしは摺動する摺動面である。した
がって磁気コアの中でもこの部分の近傍の磁気特性は磁
気ヘッドの性能に大きく影響する。
【0004】通常、薄膜磁気ヘッドを動作させるばあ
い、その磁束信号は図9に示すように、磁化容易軸27と
直角をなす方向26、すなわち磁化困難軸方向に流れるよ
うな構成にする。これは、磁性膜の困難軸方向の磁化過
程が磁壁の移動を伴わない回転磁化過程であるために、
磁気特性(透磁率)の周波数特性が優れているからであ
る。
【0005】困難軸方向の透磁率μ’は、磁性膜の飽和
磁束密度をBs、異方性磁界の大きさをHkとするとB
s/Hkで表される。磁性膜のHkの値が大きすぎると
透磁率は小さくなり、ヘッド効率が低下する。一方、H
kの値を小さくしすぎてしまうと、今度は磁区構造が乱
れ磁壁移動による磁化過程を生じるために、逆に透磁率
の低下を招いたり、周波数特性を劣化させる結果をもた
らすことになる。
【0006】さらに実際の薄膜磁気ヘッドの磁気コアの
この磁区構造は、BsやHkの値のほかに、コア形状か
らくる反磁界(形状効果)の影響を大きく受ける。たと
えば図10(a)〜(f)は、本発明者らによって観察さ
れたストライプ状でBs=9200gaussとした10μm厚さ
の磁性膜の磁区形状の一例を示したものであるが、Hk
=3.0Oeの試料においてストライプ幅が20μm、40μ
mのコア形状の磁区構造(図10(b)、(c)参照)が
きれいな還流磁区構造となっているのに対し、ストライ
プ幅が10μm幅のコア形状の磁区構造(図10(a)参
照)は、ダイヤモンド磁区構造と呼ばれる磁区構造にな
る。このようなダイヤモンド磁区構造を有する試料で
は、還流磁区の試料に比べ透磁率の周波数特性が著しく
劣化してしまう。一方、同じ10μm幅の試料でも図10
(d)〜(f)のようにHk値を8.5Oeまで上げてや
るとストライプ幅が10、20および40μm幅のコア形状の
磁区構造はそれぞれ、きれいな還流磁区構造を示すよう
になる。
【0007】図10に示す例からもわかるように、特性の
優れた薄膜磁気ヘッドをうるためには、磁性膜のHk値
を、その磁気コア形状や磁性膜材料に見合った最適値に
制御することが非常に重要である。
【0008】ところが、磁性膜のHk値を制御する従来
の方法としては、磁性膜の組成や種類を変えるなどのほ
か、たとえば、前記特開平3-141007号公報に示されてい
るように、磁性膜の成膜時にあらかじめ一軸異方性磁界
を付与しておき、そののち、回転磁界中で、回転磁界強
度、回転速度そして熱処理温度などの条件を最適化させ
る方法、または成膜時の異方性磁界と直交する方向に静
磁界を加えて熱処理する際の静磁界強度や熱処理温度を
最適化し、異方性磁界を90°反転させる方法が提案され
ている。
【0009】しかしながら、これらの方法では、ある一
つのHk値ごとに、磁性膜の組成や種類、あるいは回転
磁界強度、回転速度、熱処理温度など複数のパラメータ
を最適化させてやらなければならない。このため、従来
の方法による薄膜磁気ヘッドの製造プロセスにおいて
は、磁性膜は、様々な寸法、形状を有する薄膜磁気ヘッ
ドそれぞれについて最適なHk値をうるために、磁性膜
の種類やその組成、さらには熱処理時の熱処理温度や回
転磁界強度、回転速度または静磁界強度など様々な条件
を最適化して製造されることになり、これがプロセスを
複雑化させ、信頼性や歩留り低下の原因の一つになって
いる。
【0010】ひとつの例として、図11は、特開昭55-873
23号公報において提案されている薄膜磁気ヘッドの、磁
気ギャップ付近のヘッド構造を示すものであり、下部磁
性膜13の幅21を上部磁性膜20の幅22で規制されるトラッ
ク幅よりも広くしておくことによって、プロセス上にお
いて上部磁性膜20の位置が多少左右にずれたとしても、
実際のヘッドのトラック幅やギャップ形状が影響を受け
ないように工夫されたものである。このばあい、下部磁
性膜13と上部磁性膜20のトラック幅の違いにより両磁性
膜のトラック部分の磁気コア形状が異なるため、図10の
例にみられるように、その寸法によっては、両磁性膜の
Hk値をそれぞれ厳密に制御しなければならない可能性
が生じてくる。そこで従来の磁性膜のHkの制御方法を
用いようとすれば、上部と下部の磁性膜それぞれについ
て磁性膜の種類や組成を変えたり、成膜条件や熱処理温
度などをそれぞれの最適条件で行うことにならざるをえ
ないために、薄膜磁気ヘッドの製造プロセスが必然的に
複雑化するという問題がある。
【0011】また別の例として、図12に示す特開平3-17
8015号公報に記載のヘッドが提案されている。この例に
よれば、上部磁性膜20が高透磁率材20aの両側に高飽和
密度で低透磁率の材料20bを貼りあわせて形成されたも
のである。この構造にすることより記録時と再生時で有
効なトラック幅を変化させることができる効果をもたら
し、ワイドライト/ナローリードが達成される。その結
果、オフトラック特性を向上でき、トラック密度を向上
することができる。このばあいは図11のヘッドに比べ、
さらにもう1種類の異なる磁気特性を有する磁性膜が必
要となる可能性があり、同一ヘッドの製造工程におい
て、最多で3種類の磁性膜材料、そしてそれぞれに最適
な成膜条件、熱処理条件が含まれることになり、さらに
プロセスを複雑化するという問題が生じる。
【0012】このように、個々の磁気コアに要求される
最適なHk値をうるために、磁性膜の組成や種類、そし
てその成膜条件や熱処理条件など様々な条件を最適化し
なければならないのは、以下に述べるような理由によ
る。
【0013】すなわち、磁気ヘッドに用いられる磁性膜
は、磁区形状や透磁率μ’に直接関係するBsおよびH
kの値のほかに、飽和磁歪λsがほぼゼロであることが
要求される。つまり磁気ヘッドに用いられる磁性膜にお
いては、Bs、Hk、λsの3つの磁性量が同時に最適
化されていなければならない。ところが、たとえばHk
を所望の値にするために、従来のように磁性膜の組成や
成膜条件、さらに熱処理時の温度、回転磁界強度、回転
速度または静磁界強度などをパラメータとして変化させ
ようとすると、これらはHk値のほかにもBs、λsの
値にも影響を及ぼすることになるので、これらBsやλ
sの変化量も同時に補償しなければならないため、結局
様々なパラメータを最適化しなければならなくなるので
ある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来よ
り発明されている高性能な薄膜磁気ヘッドは、一般に複
数の種類の磁性膜を磁気コアとして用いるような構成と
なっているが、これら磁性膜の磁気特性(Bs、Hk、
λsなど)を最適化するためには、それぞれの磁性膜に
ついて異なる成膜条件や熱処理条件を設定しなければな
らないため、薄膜磁気ヘッドの製造プロセスが複雑にな
るという問題が生じている。
【0015】そして、このように磁性膜の製造が複雑で
あることが、薄膜磁気ヘッドにおけるヘッド設計の自由
度をせばめている原因になる。
【0016】本発明は、かかる問題を解消するためにな
されたもので、成膜条件や熱処理の温度条件を変えるこ
となく、一軸磁気異方性などの磁性膜の磁気特性を幅広
く制御できる軟磁性膜の製法を提供することを目的とす
る。さらに、異なる磁気特性を有する複数の磁性膜を必
要とする薄膜磁気ヘッドにおいて、この磁性膜の製法を
用いることにより、使用する磁性膜の種類を最小限に抑
えることができ、製造プロセスを従来より大幅に簡略化
することのできる薄膜磁気ヘッドの製法を提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の磁性膜の製法
は、一軸磁気異方性を有する磁性膜の製法であって、磁
性膜の面内方向のうちある一方向に第1の一軸異方性磁
界を付与し、ついで第1の一軸異方性磁界の方向とは異
なる方向に熱処理用直流磁界を加えながら前記磁性膜の
熱処理を行い、そののち該熱処理用直流磁界方向または
その近傍の方向が最終的な膜の磁化容易軸方向となるよ
うに第2の一軸異方性磁界を付与するとともに、前記熱
処理用直流静磁界の方向を変えることにより、第2の一
軸異方性磁界の大きさを制御することを特徴とするもの
である。
【0018】前記磁性膜に第1の一軸異方性磁界を付与
する方法は基板の一方向に直流静磁界を印加しながら磁
性膜を成膜することにより行うのが好ましい。
【0019】前記一軸磁気異方性を有する磁性膜が、添
加元素としてCr、Nb、Mo、HfおよびTaからな
る群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むCo−Z
r系非晶質膜であるのが好ましい。
【0020】前記Co−Zr系非晶質膜の結晶化する温
度よりも低い温度で第2の一軸異方性磁界を付与するた
めの熱処理を行うのが好ましい。
【0021】前記一軸磁気異方性を有する磁性膜が、添
加元素としてC、Si、Cr、Mo、Hf、Ta、Nb
およびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元
素を含むFe−N系結晶質合金であるのが好ましい。
【0022】前記一軸磁気異方性を有する磁性膜をおい
て、添加元素としてZr、Nb、HfおよびTaからな
る群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むFe−N
系合金により、非晶質状態で成膜し、該非晶質状態の膜
の結晶化する温度よりも高い温度で直流静磁界を印加し
ながら熱処理を行うことにより、該非晶質状態の膜を微
結晶化させるとともに、同時に第1の一軸異方性磁界を
付与するのが好ましい。
【0023】また、本発明の薄膜磁気ヘッドの製法は、
基板上に下部磁性膜を成膜し、ついで絶縁層と銅コイル
を少なくとも各1層順次成膜し、さらに絶縁層を介して
上部磁性膜を成膜することにより薄膜磁気ヘッドを製造
する方法であって、前記両磁性膜を請求項1記載の方法
により成膜することを特徴とする。
【0024】また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、基板上
に下部磁性膜および上部磁性膜の両磁性膜からなる磁気
コアと、該磁気コアの記録媒体に対向し、該記録媒体に
磁気信号を書き込む部分に設けられた非磁性体からなる
ギャップ層と、上部および下部磁性膜を磁気的および電
気的に分離させる絶縁層と、該絶縁層の中に埋設された
信号の入出力用の導電性コイルとからなる薄膜磁気ヘッ
ドであって、前記磁気コアに用いられる上部磁性膜およ
び下部磁性膜のストライプ幅が異なる幅で形成され、該
ストライプ幅の狭い磁性膜の異方性磁界の大きさが他方
の磁性膜の異方性磁界の大きさより大きく形成されてな
ることを特徴とする。
【0025】
【作用】本発明の磁性膜の製法によれば、同じ組成の磁
性材料であれば、成膜条件および熱処理条件(温度、保
持時間、フンイキガス、印加直流静磁界強度など)など
の多数のパラメータを一切変えることなく、磁性膜の面
内方向のうちある一方向に第1の一軸異方性磁界を付与
したのち、熱処理時に印加する直流静磁界の角度方向の
みを変えて、第2の一軸異方性磁界を付与することによ
り、磁化容易軸の方向を制御するため、あらかじめ磁性
膜の飽和磁束密度Bsや飽和磁歪λsの値を最適化して
おけば、これらBs、λs値に影響を与えることなく所
望の一軸異方性磁界Hk値の磁化容易軸を有する磁性膜
を容易にうることができる。
【0026】さらに、前記磁性膜の製法を用いれば、磁
気特性の異なる複数の磁気コアが要求される薄膜磁気ヘ
ッドにおいても、磁性膜形成プロセス上は、磁性膜熱処
理時に印加する直流静磁界の角度方向の変更だけで容易
に磁化容易軸の方向を制御できるため、磁気ヘッドの設
計の自由度を広げることができるとともに、磁性膜形成
プロセスを大幅に簡略化できるため、薄膜磁気ヘッドの
生産性を向上させることができる。
【0027】
【実施例】つぎに、図面を参照しながら本発明の磁性膜
の製法および薄膜磁気ヘッドについて説明する。
【0028】図1は、本発明の磁性膜の製法の手順を示
す説明図である。図1(a)に示されるように、まず磁
性膜が形成される基板1の全体に一様な直流静磁界2を
永久磁石またはヘルムホルツコイルなどの電磁石を用い
て印加する。
【0029】磁界の強さは、少なくとも地磁気の大きさ
よりも強ければよいが、強度分散または方向分散のない
一軸異方性磁界をうるためには、70Oe以上であること
が好ましい。
【0030】ついで直流静磁界2を印加した状態で磁性
粒子3を基板1に飛散させ、基板1の表面に磁性膜を形
成する。
【0031】磁性膜は、具体的にはRFスパッタリン
グ、RFマグネトロンスパッタリング、DCマグネトロ
ンスパッタリングまたはイオンビームスパッタリングな
どの各種スパッタリング法で形成される。また、蒸着法
やメッキ法などによっても形成することができる。
【0032】磁性膜としては、たとえば非晶質の磁性膜
をうるためにはCoxZry1-x-y(x、yは重量%
(百分率)の比率で0.65≦x≦0.93、0≦y≦0.20、x
+y<1、RはCr、Nb、Mo、HfおよびTaから
なる群より選ばれる少なくとも1種の元素)からなるC
o−Zr系合金が用いられる。
【0033】また結晶化するばあいには、成膜により直
接結晶化した磁性膜をうるには、たとえばFep1-p-q
q(p、qは原子%(百分率)の比率で0.70≦p≦0.9
0、0.05≦q≦0.15、p+q<1、MはC、Si、C
r、Moからなる群より選ばれる少なくとも1種の元
素)からなるFe−N系結晶質合金が用いられる。
【0034】また、成膜時には非晶質状態で成膜し、そ
ののち磁性膜の結晶化温度より高い温度の熱処理をする
ことにより結晶化する磁性膜としては前記Fep1-p-q
qからなるFe−N系合金の添加元素MとしてZr、
Nb、HfおよびTaからなる群より選ばれる少なくと
も1種の元素を添加することによりえられる。
【0035】その結果、図1(b)に示されるように、
基板1の表面に第1の一軸異方性磁界5が付与された磁
性膜4が形成される。本発明においては、第1の一軸異
方性磁界5の方向が重要であって、その向きは正逆のど
ちらでもよい。つまり、図1(a)において、右向きの
矢印で示した直流静磁界2は、これとは逆の左向きに加
えたとしても、一軸異方性磁界5の角度に関して何ら問
題はない。なお、第1の一軸異方性磁界5の方向とその
向きは、通常、成膜時に印加される直流静磁界2の方向
と向きに一致するが、その方向と大きさは磁束密度と磁
界の大きさの関係を示すB−Hカーブを調べることによ
って簡単にうることができる。
【0036】ついで、図1(c)に示されるように、磁
性膜4の全体に第1の一軸異方性磁界5の方向から角度
θだけ回転した方向に一様な直流静磁界6を加える(な
お角度θは反時計方向を正とする)。前述の直流静磁界
2と同じく、直流静磁界6も、図1(c)に示している
左手前から右後方への向きであっても、その逆の右後方
から左手前への向きであっても本発明の及ぼす効果は等
価である。したがって、本発明による効果をうるための
角度θは、0°から180°の範囲である必要はなく、0
°から90°の範囲で変化させてやればよい。また、負方
向についても同様である。
【0037】直流静磁界6の強さは、図1(a)におけ
る直流静磁界2と同じ理由からやはり70Oe以上である
ことが好ましい。
【0038】ついで、図1(c)の状態で、試料を熱処
理炉などを用いて熱処理し、第2の一軸異方性磁界を付
与させる。このときの熱処理温度は本発明の作用を考え
たばあい、とくに限定されないが、磁気ヘッドへの適用
を考えたばあい、その磁気ヘッドの工程で許される温度
範囲内に設定する必要がある。たとえば、薄膜磁気ヘッ
ドにおいては、絶縁体として通常レジストが使用される
が、このレジストの耐熱温度はおよそ300℃以下である
ため、ヘッドプロセスに含まれる熱処理工程時の温度は
300℃以下に設定しなければならない。
【0039】また、磁性膜が最終的に非晶質膜であるば
あい、その膜の結晶化温度がTxであるとすると、加熱
による膜の結晶化を防ぐために、熱処理温度はTxより
も低い温度に設定しなければならない。
【0040】逆に、磁性膜の状態が最終的に結晶質膜
で、磁性膜を結晶化させてやる必要があるばあいは、T
xよりも高い温度に設定しておく必要がある。しかし、
後者のばあい、磁性膜を結晶化させる工程は図1(c)
における工程時に必須ではなく、たとえば図1(a)の
磁性膜形成後、第1の一軸異方性磁界5を形成する際に
加熱処理を行って結晶化させておいてもよい。また、図
1(a)の成膜直後に既に結晶化した磁性膜がえられて
いれば、とくに磁性膜を結晶化させる工程が必ずしも必
要でないことはいうまでもない。
【0041】以上、述べたように図1(c)における熱
処理時の熱処理温度は、磁性膜の種類やそれが用いられ
る磁気ヘッドの製造プロセスで許される範囲内で自由に
設定すればよい。また、熱処理時の温度保持時間もとく
に限定されることはないが、実際の作業効率を考える
と、たとえば30分から120分程度が好ましい。
【0042】叙上のごとく熱処理を行うことにより、図
1(d)に示されるように、磁性膜4に最終的に第2の
一軸異方性磁界8から負方向に−δだけ回転した方向に
一軸異方性磁界が付与され、この方向が最終的な膜の磁
化容易軸9となる。図1(d)では、最終的な膜の磁化
容易軸9の方向が、(c)の工程で付与される第2の一
軸異方性磁界8の方向とは異なっているが、通常のばあ
い、最終的な膜の磁化容易軸9は、第2の一軸異方性磁
界8の方向とほぼ一致する。ただし、第1の一軸異方性
磁界5と第2の一軸異方性磁界8の大きさに極端な差が
あるような条件では、最終的な磁化容易軸9の方向は、
第2の一軸異方性磁界8の方向とは必ずしも一致せず、
その近傍の0°〜20°回転した方向にずれる。最終的な
膜の磁化容易軸9の方向と大きさはB−Hカーブを測定
することによって、正確に確認することができる。薄膜
磁気ヘッドを製造する際には、この最終的な磁化容易軸
9の方向が磁気コアの磁束信号の流れと直交する方向に
一致するように磁性膜を形成する。
【0043】つぎに、具体的な実施例により、さらに詳
細に説明する。
【0044】[実施例1]本実施例では、磁性膜として
Co−Zr系非晶質合金に添加元素としてNbを含み、
その組成がCo=78.5重量%、Zr=6.0重量%、Nb
=15.5重量%、結晶化温度Tx=550℃のCoZrNb
非晶質合金を用いた。以下、図1の流れに沿って具体的
に説明する。
【0045】まず、図1(a)において、基板1として
3インチ径のSiウェハを用い、永久磁石を基板の両側
にセットして約170Oeの直流静磁界2を加えた状態
で、RFスパッタリング法を用いて、膜厚が約5μmの
CoZrNb非晶質膜からなる磁性膜4を形成した。図
2は、この状態、すなわち図1(b)における試料の磁
化困難軸方向(第1の一軸異方性磁界5と直角方向)で
測定したB−Hカーブを示す。第1の一軸異方性磁界5
の大きさHkは9Oeであった。
【0046】つぎに、図1(c)において、ヘルムホル
ツコイルを用いて約70Oeの強さの直流静磁界6を試料
に加え、5×10-5Torr以下の真空中で、温度T=200
℃、保持時間30分の条件で熱処理を行った。このとき、
角度θを0°から90°の範囲で変化させた7種類の試料
を作製した。
【0047】以上の手順で作製されたCoZrNb非晶
質膜のB−Hカーブを調べ、最終的に付与された磁化容
易軸における磁界の大きさHkを測定した。B−Hカー
ブの結果を図3に示す。図3(a)〜(e)では、それ
ぞれ角度θが15°、30°、45°、60°、75°のばあいの
B−Hカーブが示されており、角度θが大きくなるにつ
れてB−Hカーブの線形範囲が急峻になることがわか
る。また、磁化容易軸における磁界の大きさHkの角度
θに対する依存性を図4に示す。なお、図4中Aは第1
の一軸異方性磁界5の大きさを示す。θを0°から90°
の範囲で変化させることにより、Hk値は3Oeから9
Oeまで変化していることがわかる。なお、最終的にえ
られたこれら7種類のCoZrNb非晶質膜試料の飽和
磁束密度Bs、および飽和磁歪λsは角度θにかかわら
ず、いずれの試料においてもそれぞれBs=9200gaus
s、λs=−3.3×10-7で一定のままであった。したがっ
て本実施例においては、θを0°から90°まで変えるこ
とによって、Bs=9200gauss、λs=−3.3×10-7を変
化させることなく、Hkの値が3Oeから9Oeまでの
CoZrNb非晶質膜をうることができた。
【0048】[実施例2]本実施例では、磁性膜とし
て、組成がCo=88.0重量%、Zr=3.1重量%、Nb
=8.9重量%、結晶化温度Tx=390℃のCoZrNb非
晶質膜を用いた。以下、図1の工程に沿って具体的に説
明する。
【0049】図1(a)において、永久磁石を用いて約
170Oeの直流静磁界2を加え、RFスパッタリング法
を用いて、5μmのCoZrNb非晶質膜からなる磁性
膜4を3インチ径Siウエハ基板1上に形成した。この
ときの第1の一軸異方性磁界5の大きさはHk=11Oe
であった。
【0050】ひき続き、図1(c)における直流静磁界
6の強さ約70Oe、5×10-5Torr以下の真空中で、おお
よそ温度T=200℃、保持時間30分の条件で熱処理を行
った。このとき、やはり角度θを0°から90°の範囲で
変化させた7種類の試料を作製した。このようにして作
製されたCoZrNb非晶質膜において、最終的に付与
される磁化容易軸における磁界の大きさHkをB−Hカ
ーブより測定した。その結果を図5に示す。なお、図5
中Bは第1の一軸異方性磁界5の大きさを示す。θを0
°から90°の範囲で変化させることにより、Hk値は3
Oeから11Oeまで変化していることがわかる。またこ
れらいずれの試料でも、飽和磁束密度Bsと飽和磁歪λ
sの値は、角度θの値にかかわらず、それぞれBs=13
200gauss、λs=−2.9×10-7で一定のままであった。
したがって本実施例では、θを0°から90°まで変える
ことによって、Bs=13200gauss、λs=−2.9×10-7
を変化させることなく、Hkの値が3Oeから11Oeま
でのCoZrNB非晶質膜をうることができた。
【0051】[実施例3]前記2つの実施例が単層膜で
あったのに対し、本実施例は、磁性膜を2層とし、上部
と下部の磁性層に、本発明の方法を用いてそれぞれ異な
る大きさの一軸異方性磁界を付与させようとするもので
ある。磁性膜は、組成がCo=78.5重量%、Zr=6.0
重量%、Nb=15.5重量%、結晶化温度Tx=550℃の
CoZrNb非晶質膜を用いた。
【0052】まず、図1(a)において、約170 Oe
の直流静磁界2を加え、RFスパッタリング法を用いて
5μmのCoZrNb非晶質膜からなる磁性膜4を3イ
ンチ径Siウエハ基板1上に形成した。そののち、図1
(c)において、約70Oeの直流静磁界6を加えて、角
度θ=75°、5×10-6Torrの真空中で約200℃、約30分
保持の熱処理を行い、図1(d)において、磁化容易軸
9をなす3Oeの大きさの一軸異方性磁界を有する第1
層目(下部)の磁性膜4をえた。
【0053】つぎに、この上にさらに、5μmの第2層
目のCoZrNb非晶質膜を図1の手順で形成した。成
膜条件および熱処理条件は、図1(c)における角度θ
を15°としたことを除き、すべて同一条件とした。な
お、最終的にえられる磁化容易軸9の方向が下部磁性膜
と上部磁性膜とで同じ方向となるように、第2層目にお
ける図1(a)の直流静磁界2の方向を選んでいる。
【0054】図6は、このようにしてえられた2層膜の
磁化困難軸方向のB−Hカーブを示すものである。B−
Hカーブは2種類の成分からなっている。しかもそれら
のHk値はそれぞれほぼ3Oeと8.5Oeであり、図4
で示す角度θに相当するHk値に一致する。上部および
下部磁性膜それぞれに対して、所望のHkを独立にうる
ことができていることがわかる。
【0055】本実施例で示されたように、本発明による
磁性膜の製法は、磁性膜が2層のばあいでもその効果を
充分にうることができる。もちろん2層に限らず、2層
以上の複数の磁性膜のばあいでも充分な効果がえられる
ことはいうまでもない。したがって、本発明による磁性
膜の製法は、磁気特性の異なる複数の磁性膜を要求する
薄膜磁気ヘッドのばあいにも有効な手段となりうる。
【0056】なお、以上の実施例1、2および3におい
てはCoZrNb系非晶質膜について説明したが、これ
以外のたとえばCoZrCr、CoZrMo、CoZr
Hf、CoZrTa系の非晶質膜を用いても同様の効果
をうることができる。
【0057】[実施例4]本実施例では、磁性膜として
Fe−N系結晶質膜に添加元素としてZrを含み、その
組成が原子百分率でFe=81.5%、Zr=10.8%、N=
7.7%のFeZrN結晶質膜を用いた。以下、図1の流
れに沿って具体的に説明する。
【0058】まず、図1(a)において、基板1として
3インチ径のSiウエハを用い、永久磁石を基板の両側
にセットして約200Oeの直流静磁界2を加えた状態
で、イオンビームスパッタ法を用いて、膜厚が約1μm
のFeZrN非晶質膜からなる磁性膜4を形成した。こ
の膜にヘルムホルツコイルを用いて約70Oeの直流静磁
界を直流静磁界2が加わっていた方向と同一方向に加え
た状態で、結晶化温度Tx以上の450℃で熱処理し、図
1(b)に示す第1の一軸異方性磁界5が2.5OeのF
eZrN結晶質膜をえた。なお、この熱処理による結晶
化後のFeZrN膜の飽和磁束密度Bsは15500gaussで
あった。
【0059】つぎに、図1(c)において、ヘルムホル
ツコイルを用いて約70Oeの強さの直流静磁界6を試料
に加え、5×10-6Torr以下の真空中で、おおよそ温度T
=100℃、保持時間30分の条件で熱処理を行った。この
とき、角度θを0°から90°の範囲で変化させた7種類
の試料を作製した。
【0060】以上の手順で作製されたFeZrN結晶質
膜のB−Hカーブを調べ、最終的に付与された磁化容易
軸における磁界の大きさHkを測定した。磁化容易軸に
おける磁界の大きさHkの角度θに対する依存性を図7
に示す。なお、図7中Cは第1の一軸異方性磁界の大き
さを示す。θを0°から90°の範囲で変化させることに
より、Hkの値は0.9Oeから2.5Oeまで変化している
ことがわかる。なお、最終的にえられたこれら7種類の
FeZrN結晶質膜試料の飽和磁束密度Bs、および飽
和磁歪λsは角度θにかかわらず、いずれの試料におい
てもそれぞれBs=15500gauss、λs=3.5×10-6で一
定のままであった。したがって本実施例において、θを
0°から90°まで変えることによって、Bs=15500gau
ss、λs=3.5×10-6を変化させることなく、Hkの値
が0.9Oeから2.5OeまでのFeZrN結晶膜をうるこ
とができた。
【0061】なお、本実施例においてはFeZrN結晶
質膜の結果のみを示したが、成膜時には非晶質状態であ
るFeNbN、FeHfN、FeTaN膜についても本
実施例と同様に2回の熱処理を施すことにより、種々の
大きさの一軸異方性磁界を有する結晶質膜をうることが
できる。
【0062】さらに、たとえばFeCN、FeSiN、
FeCrN、FeMoN系結晶質膜を用いるばあい、こ
れらの磁性膜は成膜直後の状態で非晶質化せず既に結晶
化しているため、本実施例で示したFeZrN系結晶質
膜のように成膜後、結晶化のための結晶化温度Tx以上
の熱処理をとくに必要としない。したがって、実施例1
および2で示されたCoZrNb系非晶質膜のばあいと
まったく同様の手順で、直流静磁界2中で磁性膜を形成
し、第1の一軸異方性磁界5の方向と異なる方向に直流
静磁界6を加え熱処理することにより、磁化容易軸9に
おいて種々の一軸異方性磁界の値を有し、かつ熱処理前
と同じBs、λs値をもつ磁性膜をうることができる。
【0063】[実施例5]つぎに本発明の製法によって
作製された磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドについて説明
する。図8は、本発明の薄膜磁気ヘッドの一実施例を示
す断面説明図であり、基板11上に下部磁性膜13が形成さ
れ、その上部に磁気ギャップ層14を介して銅コイル16、
18および上部磁性膜20が形成されて薄膜磁気ヘッドを構
成している。また、前記磁気ギャップ層14、銅コイル1
6、18および上部磁性膜20の各層のあいだにはそれぞれ
第1〜3絶縁層15、17、19が形成されているため、各層
は互いに電気的に絶縁されているが、下部磁性膜13およ
び上部磁性膜20はバックシャント部10を通じて接触して
いる。さらに、下部磁性膜13のトラック幅が上部磁性膜
20のトラック幅よりも広く設定されているため、プロセ
ス上において実際のヘッドのトラック幅を規制する上部
磁性膜20の位置がずれたとしても、トラックずれが生じ
ないように工夫されている。
【0064】本実施例の薄膜磁気ヘッドは以下の手順で
製造される。
【0065】まず、アルミナの下地膜12を有するアルチ
ック(Al23−TiC)基板11上に下部磁性膜13とし
てCoZrNb非晶質膜をたとえば実施例1と同様の条
件で成膜および熱処理を行い、磁化容易軸における磁界
Hkが図8においてヘッド断面を直交して貫く方向(紙
面の法線方向)になるように形成する。
【0066】そののち、写真製版技術を用いて、下部磁
気コアをパターニングする。そののち、この上に磁気ギ
ャップ層14、第1絶縁層15、銅コイル16、第2絶縁層1
7、銅コイル18、第3絶縁層19を順次形成し、ついで下
部磁性膜13と後工程で形成される上部磁性膜20とからな
る上下磁気コアを接触させるためのバックシャント部10
を形成する。
【0067】つぎに、上部磁性膜20としてCoZrNb
非晶質膜を、実施例1と同様の条件で成膜および熱処理
を行い、磁化容易軸における磁界Hkの方向が下部磁性
層13と同じ方向、すなわちヘッド断面を直交して貫く方
向となるように形成する。
【0068】さらに、上部磁性膜20をパターニングして
上部磁気コアを形成し、さらに上部保護膜21としてアル
ミナ(Al23)を積層して最終的に薄膜磁気ヘッドを
えた。
【0069】本実施例の薄膜磁気ヘッドの一例として下
部磁気コアのトラック幅が20μm、上部磁気コアのトラ
ック幅が10μmになるように設計されたばあいは、たと
えば下部磁性膜のHkが3Oe、上部磁性膜のHkが8.
5OeとなるようにCoZrNb非晶質膜が形成される
のが好ましい。以下、各磁性層のHk値の設定について
説明する。
【0070】これらのHkの値は、磁気コアのギャップ
近傍のトラック部分の磁区構造をもとに決定される。H
kが3Oeのばあいは、ストライプ幅wがw=20μm以
上では規則正しい還流磁区構造となるが、w=10μmで
はダイヤモンド磁区構造になる。一方Hkが8.5Oeの
ばあいは、w=10μmでも規則正しい還流磁区構造とな
る。ダイヤモンド磁区構造になると磁壁移動による磁化
過程の割合が増加し、透磁率の低下や周波数特性の劣化
を招き、ヘッド特性が劣化してしまうことになる。
【0071】トラック部分の磁区形状をきれいな還流軸
構造にするには、Hk値を大きくすればよいが、Hk値
を大きくしていくとヘッドとして動作する磁化困難軸方
向の透磁率が小さくなってヘッド効率を下げるため、H
k値を過大に大きくするのは動作特性上好ましくない。
本発明者らはこれらの点を考慮して、トラック幅が20μ
mの下部磁気コアのHkを3Oeに、トラック幅が10μ
mの上部磁気コアのHkを8.5Oeに設定した。
【0072】また、下部および上部CoZrNb非晶質
膜は、具体的にはそれぞれ本発明の実施例3で述べた第
1層目および第2層目の膜と同じ手順で形成することに
よって簡単にうることができる。
【0073】さらに、本実施例で示したようにヘッド効
率を最適化するために異なるHk値の磁性膜が必要なば
あいでも、本発明による磁性膜の製法を用いれば、熱処
理時の第2の一軸異方性磁界の設定角度を変えるだけで
対応できるため、プロセスや設備を変更することなく、
簡単に高効率の薄膜磁気ヘッドをうることができる。
【0074】[実施例6]本実施例では、本発明による
磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドの他の実施例として、図
12のごとく上部磁性膜20のトラック部を中央部の高透磁
率磁性膜20aと、その両側に高飽和磁束密度の低透磁率
磁性膜20bとの2種類の磁性膜によって構成したものを
示す。記録時と再生時で有効トラック幅が変化する効果
をもたらし、ワイドライト/ナローリードが実現される
結果、オフトラック特性を向上でき、トラック密度の向
上を可能とするものである。本実施例による薄膜磁気ヘ
ッドを図8の断面説明図に基づいて説明する。
【0075】前記実施例5と同様にCoZrNb非晶質
膜を用い、同様の手順で、アルミナの下地膜12を有する
アルチック(Al23−TiC)基板11上に下部磁性膜
13、磁気ギャップ層14、第1絶縁層15、銅コイル16、第
2絶縁層17、銅コイル18、第3絶縁層19、そしてバック
シャント部10を順次形成したのち、上部磁性膜20aを形
成する。
【0076】つぎに図12に示されるように、上部磁性膜
20aのトラック中央部を残して、両端部を除去し、実施
例2で用いた飽和磁束密度Bs=13200gaussのCoZr
Nb非晶質膜を用いて、第2の上部磁性膜20bを形成す
る。この磁性膜は、下部および上部磁性膜13、20aと同
じ材料でもよい。そして、上部および下部磁気コアのト
ラック幅が同じになるように第2の上部磁性膜を20bを
パターニングし、その上に上部保護膜21としてアルミナ
を積層して図12に示すトラック構造を有する薄膜磁気ヘ
ッドをうる。
【0077】このような薄膜磁気ヘッドを理想的な形で
効率よく動作させるためには、実施例5でも述べたよう
に各磁性膜13、20a、20bのHk値を、実際の下部磁性
膜のトラック幅、上部磁性膜の中央部と両端部の幅に対
応して、それぞれトラック部分の磁区構造がきれいな還
流磁区構造となるような値に設定する必要がある。そし
てこのようなばあいでも、各磁性膜13、20aおよび20b
に最適なHk値をうる方法として、図1に示す本発明の
角度θをパラメータとする方法を用いれば極めて簡単に
高性能な薄膜磁気ヘッドをうることができる。
【0078】なお、以上の実施例では、Co−Zr系非
晶質膜とFe−N系結晶質膜について説明したが、本発
明に用いる磁性膜はこれらに限定されるものではなく、
一軸性の結晶磁気異方性を有する磁性膜ならば前記実施
例と同様の効果をうることができる。また、単層膜に限
らず、磁性人工格子膜や渦電流損失を低減するために用
いられる電気的絶縁膜を挟んだ積層膜においても同様の
効果をうることができる。
【0079】
【発明の効果】本発明の製法によれば、第1の一軸異方
性磁界方向と、第2の一軸異方性磁界を付与するために
熱処理時に印加する直流静磁界とのなす角度θのみをパ
ラメータとして変化させることにより、最終的にえられ
る磁化容易軸の方向の一軸異方性磁界の大きさを容易に
変えることができる。
【0080】また、磁性膜の種類や、各種成膜条件、熱
処理時の温度、保持時間、フンイキ、印加直流磁界強度
などの条件を一切変える必要がないので、一度磁性膜の
飽和磁束密度や飽和磁歪の値を最適化しておけば、これ
らの値を変えることなく、所望の異方性磁界値をもつ様
々な一軸異方性膜を容易にうることができる。
【0081】さらに、本発明の磁性膜の製法を用いれ
ば、磁気特性の異なる複数の磁気コアが要求される薄膜
磁気ヘッドにおいても、磁性膜形成プロセス上は、磁性
膜熱処理時に印加する直流静磁界の角度方向を変更する
だけで容易に対処できるため、磁気ヘッド設計の自由度
を広げることができるとともに、磁性膜形成プロセスを
簡略化することができるため、薄膜磁気ヘッドの生産性
を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁性膜の製法の一実施例を示す説明図
である。
【図2】本発明の製法の一実施例によってえられた磁性
膜の第1の一軸異方性磁界における磁気特性(B−Hカ
ーブ)を示す図である。
【図3】本発明の製法の一実施例によってえられた磁性
膜の磁気特性(B−Hカーブ)を示す図である。
【図4】本発明の製法の一実施例によってえられた磁性
膜の磁化容易軸における磁界の大きさと角度θとの関係
を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例によってえられた磁性膜の
磁化容易軸における磁界の大きさと角度θとの関係を示
す図である。
【図6】本発明の他の実施例によってえられた磁性膜の
磁気特性(B−Hカーブ)を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例によってえられた磁性膜の
磁化容易軸における磁界の大きさと角度θとの関係を示
す図である。
【図8】本発明の薄膜磁気ヘッドの一実施例を示す断面
図である。
【図9】薄膜磁気ヘッドコアの磁区構造を示す平面図で
ある。
【図10】従来のストライプ状の磁性膜の磁区構造を示
す図である。
【図11】従来の薄膜磁気ヘッドのトラック部分を示す
斜視図である。
【図12】従来の薄膜磁気ヘッドの他の例のトラック部
分を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基板 2 直流静磁界 4 磁性膜 5 第1の一軸異方性磁界 6 直流静磁界 8 第2の一軸異方性磁界 9 磁化容易軸 11 基板 13 下部磁性膜 20 上部磁性膜 27 磁化容易軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 41/22 C23C 14/34 G11B 5/31 H01F 10/16

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一軸磁気異方性を有する磁性膜の製法で
    あって、磁性膜の面内方向のうちある一方向に第1の1
    軸異方性磁界を付与し、ついで第1の一軸異方性磁界の
    方向とは異なる方向に熱処理用直流磁界を加えながら前
    記磁性膜の熱処理を行い、そののち該熱処理用直流磁界
    方向またはその近傍の方向が最終的な膜の磁化容易軸方
    向となるように第2の一軸異方性磁界を付与するととも
    に、前記熱処理用直流静磁界の方向を変えることによ
    り、第2の一軸異方性磁界の大きさを制御することを特
    徴とする磁性膜の製法。
  2. 【請求項2】 前記磁性膜に第1の一軸異方性磁界を付
    与する方法は基板の一方向に直流静磁界を印加しながら
    磁性膜を成膜することにより行うことを特徴とする請求
    項1記載の磁性膜の製法。
  3. 【請求項3】 前記一軸磁気異方性を有する磁性膜が、
    添加元素としてCr、Nb、Mo、HfおよびTaから
    なる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むCo−
    Zr系非晶質膜である請求項1記載の製法。
  4. 【請求項4】 前記Co−Zr系非晶質膜の結晶化する
    温度よりも低い温度で第2の一軸異方性磁界を付与する
    ための熱処理を行うことを特徴とする請求項3記載の製
    法。
  5. 【請求項5】 前記一軸磁気異方性を有する磁性膜が、
    添加元素としてC、Si、Cr、Mo、Hf、Ta、N
    bおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の
    元素を含むFe−N系結晶質合金である請求項1記載の
    製法。
  6. 【請求項6】 前記一軸磁気異方性を有する磁性膜を、
    添加元素としてZr、Nb、HfおよびTaからなる群
    より選ばれる少なくとも1種の元素を含むFe−N系合
    金により、非晶質状態で成膜し、該非晶質状態の膜の結
    晶化する温度よりも高い温度で直流静磁界を印加しなが
    ら熱処理を行うことにより、該非晶質状態の膜を微結晶
    化させるとともに、同時に第1の一軸異方性磁界を付与
    することを特徴とする請求項5記載の製法。
  7. 【請求項7】 基板上に下部磁性膜を成膜し、ついで絶
    縁層と銅コイルを少なくとも各1層順次成膜し、さらに
    絶縁層を介して上部磁性膜を成膜することにより薄膜磁
    気ヘッドを製造する方法であって、 前記両磁性膜を請求項1記載の製法により成膜すること
    を特徴とする薄膜磁気ヘッドの製法。
  8. 【請求項8】 基板上に下部磁性膜および上部磁性膜の
    両磁性膜からなる磁気コアと、該磁気コアの記録媒体に
    対向し、該記録媒体に磁気信号を書き込む部分に設けら
    れた非磁性体からなるギャップ層と、上部および下部磁
    性膜を磁気的および電気的に分離させる絶縁層と、該絶
    縁層の中に埋設された信号の入出力用の導電性コイルと
    からなり、前記磁気コアに用いられる上部磁性膜および
    下部磁性膜のストライプ幅が異なる幅で形成され、該ス
    トライプ幅の狭い磁性膜の異方性磁界の大きさが他方の
    磁性膜の異方性磁界の大きさより大きく形成されてなる
    薄膜磁気ヘッドを製造する方法であって、前記両磁性膜
    を請求項1、2、3、4、5または6記載の製法により
    成膜することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製法。
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