JP3597879B2 - Lc素子,半導体装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体装置等に組み込まれて、あるいは単体で所定の周波数帯域を減衰させることができるLC素子,半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子技術の発達に伴い、電子回路は各種分野において幅広く用いられており、従ってこれら各電子回路を外部からの影響を受けることなく安定して確実に動作させることが望まれる。
【0003】
しかし、このような電子回路には、直接あるいは間接的に外部からノイズが侵入する。このため、電子回路を使用した各種電子機器に誤動作が引き起こされる場合が少なくないという問題がある。
【0004】
特に、電子回路は、直流電源としてスイッチングレギュレータを用いる場合が多い。従って、スイッチング等の過渡電流により、または使用するデジタルICのスイッチング動作に起因する負荷変動により、スイッチングレギュレータの電源ラインには各種の周波数成分を持った大きなノイズが発生することが多い。そして、これらのノイズは、同じ機器内の他の回路へ電源ラインを介して、または輻射により伝搬され誤動作やS/N比の低下等の悪影響を及ぼし、さらに近くで使用中の他の電子機器の誤動作を引き起こすことがある。
【0005】
このようなノイズを除去するため、一般に電子回路では各種のノイズフィルタが用いられている。特に、近年では各種構成の電子機器を多数使用しているため、ノイズに対する規制もますます激しくなっており、このため発生するノイズを確実に除去することができる小型でしかも高性能なノイズフィルタとして機能するLC素子の開発が望まれる。
【0006】
このようなLC素子の1つとして、特開平3−259608号公報に開示されたLCノイズフィルタが知られている。このLCノイズフィルタは、L成分とC成分とが分布定数的に存在するものであり、集中定数タイプのLCノイズフィルタに比べて比較的広い帯域にわたって良好な減衰特性を得ることができるというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したLCノイズフィルタは、絶縁シートの一方の面にキャパシタ用導電体を、他方の面にインダクタ用導電体をそれぞれ形成した後に、この絶縁シートを折りたたむことにより製造されるものであり、絶縁シートの折り返し等の工程が必要なため製造工程が複雑になるという問題点があった。
【0008】
また、このLCノイズフィルタをICやLSIの電源ラインあるいは信号ラインに直接挿入して使用する場合には、LCノイズフィルタとIC等とを配線しなければならず、部品組み付けの手間がかかるという問題点があった。
【0009】
さらに、このLCノイズフィルタは部品単体として形成されるため、ICやLSIの回路に含ませて、すなわちICやLSI等の内部配線間に挿入することがほとんど不可能であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、MOS製造技術を用いることにより簡単に製造することができ、後工程における部品の組み付け作業を省略することができ、しかもICやLSIの一部として形成することが可能なLC素子,半導体装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)上述した課題を解決するために、本発明のLC素子は、
半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの両端付近に形成されたソースおよびドレインと、
を備え、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、少なくとも前記チャネルを信号入出力路として用いることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明のLC素子は、
半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの一方端付近に形成されたソースあるいはドレインと、
を備え、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、前記非スパイラル形状の電極を信号入出力路として用いることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、蛇行形状であることを特徴とする。
【0014】
(4)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、波形形状であることを特徴とする。
【0015】
(5)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、曲線形状であることを特徴とする。
【0016】
(6)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、直線形状であることを特徴とする。
【0017】
(7)本発明のLC素子は、(1)〜(6)のいずれかのLC素子において、
前記半導体基板表面であって前記非スパイラル形状の電極に対応する位置に、予めキャリアを注入することを特徴とする。
【0018】
(8)本発明のLC素子は、(1)〜(6)のいずれかのLC素子において、
前記半導体基板表面であって前記チャネルが形成される位置の少なくとも一部に予めキャリアを注入するとともに、前記非スパイラル電極に対して前記チャネルの長さを長くあるいは短く設定することにより、前記非スパイラル電極と前記チャネルとを部分的に対応させることを特徴とする。
【0019】
(9)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極を複数に分割し、分割された複数の電極片のそれぞれの一部を電気的に接続することを特徴とする。
【0020】
(10)本発明のLC素子は、(2)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記チャネルが形成される位置の一部に予めキャリアを注入しておくことにより、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成される前記チャネルを複数に分割し、分割されたそれぞれのチャネルの一方端付近に前記ソースあるいは前記ドレインを設け、これら複数のソースあるいはドレインを電気的に接続することを特徴とする。
【0021】
(11)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記チャネルの両端付近に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記非スパイラル形状の電極の一方端付近に電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とする。
【0022】
(12)本発明のLC素子は、(2)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極の両端付近に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの一方端付近に形成された前記ソースあるいは前記ドレインに電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とする。
【0023】
(13)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極の両端付近に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの両端付近に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第3および第4の入出力電極と、
を有し、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルとの両方を信号入出力路とするコモンモード型の素子として用いられることを特徴とする。
【0024】
(14)本発明のLC素子は、(1)〜(13)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極に対して印加するゲート電圧を可変に設定することにより、少なくとも前記チャネルの抵抗値を可変に制御することを特徴とする。
【0025】
(15)本発明の半導体装置は、(1)〜(14)のいずれかのLC素子を基板の一部として形成し、前記非スパイラル形状の電極およびこれに対応して形成されたチャネルの少なくとも一方を信号ラインあるいは電源ラインに挿入して一体成形したことを特徴とする。
【0026】
(16)本発明のLC素子は、(1)〜(10)のいずれかのLC素子において、
全表面に化学液相法により絶縁膜を形成し、この絶縁膜の一部をエッチングあるいはレーザ光照射によって除去して孔をあけ、その孔を半田で表面に盛り上がる程度に封じることにより端子付けを行うことを特徴とする。
【0027】
(17)本発明の半導体装置は、(1),(3)〜(9),(11),(13)のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号を増幅するバッファを接続したことを特徴とする。
【0028】
(18)本発明の半導体装置は、(1),(3)〜(9),(11),(13)のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号の電圧レベルを変更するレベル変換回路を接続したことを特徴とする。
【0029】
(19)本発明のLC素子は、(1)〜(13)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極に過電圧を動作電源ライン側あるいはアース側にバイパスさせる保護回路を設けたことを特徴とする。
【0030】
(20)本発明のLC素子の製造方法は、
半導体基板に部分的に不純物を注入することによりソースとドレインを形成する第1の工程と、
前記半導体基板上の全面あるいは部分的に絶縁層を形成する第2の工程と、
前記絶縁層のさらに表面に前記ソースと前記ドレインを結ぶように非スパイラル形状の電極を形成する第3の工程と、
前記ソース,ドレインと前記非スパイラル形状の電極のそれぞれに電気的に接続される配線層を形成する第4の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0031】
(21)本発明のLC素子の製造方法は、半導体基板に部分的に不純物を注入することによりソースあるいはドレインを形成する第1の工程と、
前記半導体基板上の全面あるいは部分的に絶縁層を形成する第2の工程と、
前記絶縁層のさらに表面に前記ソースあるいは前記ドレインの近傍に一方端が位置するように非スパイラル形状の電極を形成する第3の工程と、
前記ソースあるいはドレインと前記非スパイラル形状の電極のそれぞれに電気的に接続される配線層を形成する第4の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0032】
【作用】
(1)の発明のLC素子では、半導体基板の一方の面側に非スパイラル形状の電極が形成されており、この電極と半導体基板との間には絶縁層が形成されている。従って、非スパイラル形状の電極と絶縁層と半導体基板とからなるMOS構造となっている。
【0033】
一般には、導体を渦巻き形状に形成することによりインダクタとして機能するが、その導体の形状を工夫することにより、あるいは使用する周波数帯域によっては導体を渦巻き形状以外の形状とした場合でもインダクタとして機能するようになる。
【0034】
従って、本発明においては、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成されるチャネルとがそれぞれインダクタとして機能することになる。また、非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成されるチャネルとの間には絶縁層が介在しており、これらによってキャパシタが形成される。しかも、このキャパシタは非スパイラル形状の電極およびチャネルの全長にわたって分布定数的に形成されている。このため、上述したチャネルの一方端に形成されたソースに入力された信号は、分布定数的に存在するインダクタおよびキャパシタを介して伝搬される際に、広い帯域にわたり良好な減衰特性が得られる。
【0035】
特に、(1)の発明のLC素子は、半導体基板にソースおよびドレインを形成するとともに、さらにその表面に絶縁層と非スパイラル形状の電極を形成することにより製造することができ、製造が非常に容易となる。また、このLC素子は、半導体基板上に形成されるため、ICやLSIの一部として形成することも可能であり、このような部品の一部として形成した場合には、後工程における部品の組み付け作業を省略することができる。
【0036】
また、(2)の発明のLC素子では、上述したLC素子がチャネルを信号入出力路として使用していたのに対し、非スパイラル形状の電極を信号入出力路として使用したものであり、チャネルを介して信号を伝搬しないためソースあるいはドレインのいずれか一方が省略されている。
【0037】
従って、チャネルと非スパイラル形状の電極とがそれぞれインダクタとして機能するとともに、これらの間に分布定数的にキャパシタが形成される点は、上述した(1)の発明のLC素子と同じであり、広い帯域にわたって良好な減衰特性を有するとともに、製造容易および基板の一部として形成することが可能となる。
【0038】
また、(3)〜(6)の発明のLC素子は、上述した非スパイラル形状を具体的に蛇行形状,波形形状,曲線形状,直線形状に特定したものである。
【0039】
すなわち、電極(および対応するチャネル)を蛇行形状あるいは波形形状とした場合には、各凹凸部の1つ1つが約1/2ターンのコイルとなってこれらが直列接続されるため、全体として所定のインダクタンスを有することになる。特に、蛇行形状とすることにより、隣接する電極を接近させることができるため、スペースの有効利用を図ることができる。また、使用する周波数帯域を高周波領域に限った場合には、電極を曲線形状あるいは直線形状とした場合にも所定のインダクタンスを有することになり、電極を蛇行形状等に形成した場合と同様の動作を行わせることができる。
【0040】
また、(7)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応する位置に予めキャリアを注入することにより、デプレション型の素子として形成したものである。この場合には、LC素子の特性そのものは変えずに、非スパイラル形状の電極に電圧(ゲート電圧)を印加しない状態でチャネルを形成し、あるいは印加するゲート電圧とチャネル幅等との関係を変更することができる。
【0041】
また、(8)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極とチャネルのいずれか一方を短く形成しており、この場合であっても同様に、長さが異なる非スパイラル形状の電極とチャネルのそれぞれはインダクタとして機能し、これらの間には絶縁層を挟んで形成されるキャパシタが分布定数的に存在する。したがって、このLC素子は広い帯域にわたって良好な減衰特性を有するとともに、製造が容易であり基板の一部として形成することが可能であるという効果がある。
【0042】
但し、半導体基板の全面を同一状態に形成した場合には、非スパイラル形状の電極の全長に対応してチャネルが形成されてしまうため、このチャネルの一部に予めキャリアを注入しておいて(あるいはエッチング等により断絶層形成しておいて)チャネルを短くする必要がある。
【0043】
また、(9)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極を複数の電極片に分割するとともにこれらの一部を電気的に接続して使用する。この場合には、各分割片の自己インダクタンスが小さくなり、これら各分割片の自己インダクタンスの影響が少ない分布定数型のLC素子を形成することができる。
【0044】
また、(10)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルを複数に分割するとともに、分割されたそれぞれのチャネルの一方端付近のソースあるいはドレインを電気的に接続して使用する。従って、(9)の発明のLC素子と同様に、各分割チャネルの自己インダクタンスが小さくなり、これによる影響が少ない分布定数型のLC素子となる。
【0045】
また、(11)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの両端付近のソースおよびドレインに接続される第1および第2の入出力電極を設けるとともに、非スパイラル形状の電極の一方端近傍にアース電極を設けることにより、チャネルが信号入出力路として使用される3端子型のLC素子を容易に形成することができる。
【0046】
また、(12)の発明のLC素子は、(11)の発明のLC素子において入出力電極とアース電極とを入れ替えたものである。すなわち、非スパイラル形状の電極の両端付近に第1および第2の入出力電極を設けるとともに、チャネルの一方端に形成されたソースあるいはドレインに接続されたアース電極を設けることにより、非スパイラル形状の電極が信号入出力路として使用される3端子型のLC素子を容易に成形することができる。
【0047】
また、(13)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極の両端付近に第1および第2の入出力電極を設けるとともに、この非スパイラル形状の電極に対応するチャネルの両端付近に形成されたソースおよびドレインに第3および第4の入出力電極を設けることにより、4端子コモンモード型のLC素子を容易に形成することができる。
【0048】
また、(14)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に印加するゲート電圧を可変に設定することにより、この非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの幅、すなわちチャネルの抵抗値が変化する。したがって、ゲート電圧を変えることにより、全体としての減衰特性、すなわち周波数特性を必要に応じて可変に制御することができる。
【0049】
また、(15)の発明の半導体装置では、上述した各発明のLC素子を基板の一部に、信号ラインあるいは電源ラインに挿入するように形成している。これにより、半導体基板上の他の部品と一体的に製造することができ、製造が容易になるとともに後工程における部品の組み付け作業が不要となる。
【0050】
また、(16)の発明のLC素子は、上述した(1)〜(10)の発明のいずれかのLC素子を、半導体基板上に形成した後に化学液相法により全表面に絶縁膜を形成する。その後、この絶縁膜の一部にエッチングやレーザ光照射により孔をあけ、この孔に半田を盛ることにより端子付けが行われる。したがって、表面実装型のLC素子を簡単に製造することができ、表面実装型とすることによりこのLC素子の組み付け作業も容易となる。
【0051】
また、(17)の発明の半導体装置では、上述したLC素子のチャネルを介して出力される信号を増幅するバッファが接続されており、アルミニウム等の金属材料に比べて抵抗値が大きいチャネルを介することにより電圧レベルが減衰した信号を、SN比が良好な元の信号に復元することが可能となる。
【0052】
また、(18)の発明の半導体装置では、上述したバッファの変わりにレベル変換回路が接続されている。このレベル変換回路を接続することにより、チャネルを介して減衰した信号レベルを復元するとともに、所定のレベルの変換あるいはレベル補正を行なうことが可能となる。
【0053】
また、(19)の発明の半導体装置では、非スパイラル形状の電極に保護回路が接続されており、この非スパイラル形状の電極に対して過電圧が印加されると、動作電源ライン側あるいはアース側にバイパス電流が流れ、非スパイラル形状の電極と半導体基板との間の絶縁破壊を防止することができる。
【0054】
また、(20)および(21)の発明のLC素子の製造方法は、上述した各LC素子を半導体製造技術を適用して製造するための方法である。すなわち、第1の工程において半導体基板にソース,ドレインの両方を、あるいはいずれか一方を形成し、次に第2の工程において半導体基板表面に絶縁層を、第3の工程において非スパイラル形状の電極をそれぞれ形成する。そして、第4の工程において入出力電極等を含む配線層が形成されて上述したLC素子が完成する。
【0055】
このように、上述したLC素子は、一般的な半導体製造技術(特にMOS製造技術)を応用することにより製造することができ、小型化あるいは低コスト化が可能であるとともに、複数個同時に大量生産することも可能となる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を適用した一実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0057】
第1実施例
図1は、本発明を適用した第1実施例のLC素子の平面図である。また、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3は図1のB−B線拡大断面図である。
【0058】
これらの図に示すように、本実施例のLC素子100は、半導体基板であるp型シリコン基板(p−Si基板)30の表面付近の隔たった位置に形成されたソース12とドレイン14の間をゲートとして機能する蛇行形状の電極10に対する電圧の印加によって形成されるチャネル22によって接続することにより形成されている。
【0059】
上述したソース12およびドレイン14は、p−Si基板30を反転させたn+ 領域の拡散領域として形成される。例えば、As+ イオンを熱拡散あるいはイオン打ち込みにより注入することにより、不純物濃度を高めることにより形成される。
【0060】
また、ゲートとして機能する電極10は、蛇行形状の一方の端部がソース12の一部に、他方の端部がドレイン14の一部にオーバラップするように、p−Si基板30の表面に形成された絶縁層26を挟んで形成されている。電極10は、例えばアルミニウム膜を形成することによって、あるいは拡散またはイオン注入でPを多量にドープすることにより形成する。
【0061】
また、絶縁層26は、p−Si基板30の表面において、このp−Si基板30と電極10とを絶縁するためのものである。p−Si基板30の全表面(あるいは少なくとも電極10に対応する部分)がこの絶縁層26によって覆われており、さらにこの絶縁層26の表面に上述した電極10が形成される。この絶縁層26は、例えばPを添加したSiO2(P−ガラス)によって形成されている。
【0062】
また、上述した電極10,ソース12,ドレイン14のそれぞれには、図1〜図3に示すように、アース電極16及び入出力電極18,20が接続されている。すなわち、電極10に対するアース電極16の取り付けは、図1に示すように、薄いゲート膜を傷付けないように能動領域の外側で行われる。また、ソース12への入出力電極18の取り付け、及びドレイン14への入出力電極20の取り付けは、図2に示すように、ソース12及びドレイン14の一部を露出させた後に、アルミニウムなどの金属膜を付けることにより行われる。
【0063】
上述した構造を有する本実施例LC素子は、nチャネルエンハンスメント型の構造を有しているものとすれば、電極10に正の電圧が印加されたときに初めてn型のチャネル22が形成されることになる。そして、このチャネル22と上述した電極10のそれぞれが蛇行形状のインダクタ用導体として機能するとともに、これらチャネル22および電極10の間には分布定数的にキャパシタが形成される。
【0064】
図4は、蛇行形状のインダクタの原理を示す図である。凹凸状に屈曲した蛇行形状を有する電極10あるいはチャネル22に一方向の電流を流した場合には、隣接する凹凸部分で向きが反対となるような磁束が交互に発生し、あたかも1/2ターンのコイルが直列に接続された状態になる。実際に、蛇行形状の電極と渦巻き形状の電極とを比較すると、電極の幅および隣接する電極の間隔を同一にしたときには、同じ面積に形成することができる電極の長さは、蛇行形状の電極の方が渦巻き形状の電極よりも長くなり、インダクタンスの値はあまり差がないことが確認されている。
【0065】
また、渦巻き形状の電極にした場合には、電極の両端部の内の一方が中心部に位置し、他方が周辺部に位置するのに対し、蛇行形状の電極では電極の両端部が周辺部に位置するので、端子を設けたり他の回路素子と接続する際に好都合である。
【0066】
図5(A),(B)は、チャネルが形成される状態を示す断面図である。電極10に対して、すなわち電極10に接続されたアース電極16に正のゲート電圧が印加されていない状態では、同図(A)に示すようにp−Si基板30の表面にはチャネル22が現れない。したがって、この状態では図1に示したソース12とドレイン14とが絶縁された状態にある。
【0067】
ところが、電極10に対して正のゲート電圧を印加すると、図5(B)に示すように、電極10に対応するp−Si基板30の表面付近にn領域からなるチャネル22が出現する。このチャネル22は、電極10の全長にわたって形成されるため、電極10とチャネル22との間には分布定数的にキャパシタが形成されることになる。
【0068】
図6は、本実施例のLC素子100の断面構造であり、電極10の蛇行方向に沿った断面が示されている。同図に示すように、電極10に平行にチャネル22が形成され、このチャネル22によってソース12とドレイン14とが導通状態になる。例えば、エンハンスメント型の場合は、電極10にゲート電圧を印加した状態で初めてこのチャネル22が形成されてソース12とドレイン14とが導通状態となるが、電極10に印加するゲート電圧を変えることによりチャネル22の幅および深さが変わるため、ソース12とドレイン14との間の抵抗値を変化させることができる。
【0069】
図7は、第1実施例のLC素子の等価回路を示す図である。同図(A)に示す等価回路は、入出力電極18,20のそれぞれを入出力端子に接続すると共に、アース電極16を接地した場合が示されており、3端子型LCノイズフィルタとして機能するものである。
【0070】
この場合には、アース電極16が接地されているため、入出力電極18,20に入出力する信号の電圧レベルおよびp−Si基板30のサブストレート側に印加する電圧レベルを負に保つ必要がある。このようにすれば、相対的に電極10の電位が高くなり、電極10に対応する位置にチャネル22が形成されるようになる。
【0071】
なお、後述するように、チャネル22が形成される位置に予めn型のキャリアを注入しておくデプレション型構造とすることにより、入出力電極18,20に入出力される信号の電圧レベルが正であってもチャネル22が形成されるようにすることもできる。
【0072】
このような等価回路を有する本実施例のLC素子100は、信号入出力路となるチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタ導体として機能するとともに、電極10がインダクタンスL2を有するインダクタ導体として機能する。また、これら2つのインダクタ導体間には所定のキャパシタンスCを有するキャパシタが分布定数的に形成される。したがって、このLC素子100は従来の集中定数型の素子にはない優れた減衰特性を発揮することができ、入出力電極18,20のいずれか一方から入力された信号からは所定の周波数成分のみが除去され他方から出力されるようになる。
【0073】
また、図7(B)は、アース電極16に対して可変のコントロール用電圧Vcを印加する場合の等価回路を示すものである。アース電極16に印加するコントロール電圧Vcを変えることにより、チャネル22の深さが変わるためチャネル22の移動度が変わって、結果的にキャパシタ用導体の抵抗値を任意に変化させることができる。
【0074】
これにより、チャネル22と電極10との間に形成されるキャパシタンスCも影響を受け、全体として減衰特性が変化することになる。換言すれば、このコントロール用電圧Vcを変化させることにより、本実施例のLC素子100の特性をある範囲で任意に変化させることができる。
【0075】
なお、上述したLC素子100は、ソース12とドレイン14の間にnチャネルを形成する場合を説明したが、この場合は、キャリアとして電子が使用されるため移動度が大きく、チャネル22の抵抗が小さくなる。これに対し、n−Si基板上にpチャネルを形成することにより、上述したLC素子100を形成するようにしてもよい。この場合は、キャリアとしてホールが用いられるため、チャネル22の抵抗が比較的大きくなり、上述したnチャネルの場合と比較すると異なる特性を有することになる。
【0076】
図8は、蛇行形状の電極10に印加するゲート電圧(コントロール電圧Vc)を変化させてチャネル22の深さ等を変えた場合のチャネル抵抗Rを説明するための図である。同図(A)は、実際には蛇行形状の電極10を直線形状と仮定した場合の平面図であり、同図(B)は、そのA−A断面図である。
【0077】
同図において、Wはゲート幅であり、Xはチャネルの深さである。このように、幅Wの電極10によってチャネル22が形成されると、この形成されたチャネル幅は(W+2X)となる。したがって、チャネル22のソース12及びドレイン14間の抵抗Rは、
R=ρL/(W+2X)
で計算することができる。ここで、ρはチャネル22の単位面積当たりの抵抗であり、上述した式はチャネル抵抗Rがチャネルの長さLに比例し、チャネル幅(W+2X)に反比例していることを示す。
【0078】
次に、本実施例のLC素子100の製造工程について説明する。
【0079】
図9は、本実施例のLC素子100の製造工程を示す図であり、一例としてエンハンスメント型のLC素子100の場合が示されている。なお、同図は電極10の蛇行方向に断面をとったものである。
【0080】
(1)酸化膜の形成:
まず最初に、p−Si基板30の表面を熱酸化することにより、二酸化シリコンSiO2を形成する(同図(A))。
【0081】
(2)ソース・ドレインの窓開け:
次に、p−Si基板30表面の酸化膜に対してフォトエッチングを行うことにより、ソース12及びドレイン14に対応する部分の窓開けを行う(同図(B))。
【0082】
(3)ソース・ドレインの形成:
次に、窓開けした部分からn型不純物を注入することによりソース12及びドレイン14を形成する(同図(C))。例えば、n型不純物としてAs+が用いられ、この不純物が熱拡散によって注入される。また、このn型不純物をイオン打ち込みにより注入する場合には、上述した(2)における窓開けは不要となる。
【0083】
(4)ゲート領域の除去:
次に、電極10を形成したい部分の酸化膜を除去することにより、ゲート領域の開口部を形成する(同図(D))。本実施例のLC素子100の場合は、電極10を蛇行形状に形成する必要があるため、このゲート領域開口部の形成も蛇行形状になるように行われる。このようにして電極10に対応する部分のみp−Si基板30が露出することになる。
【0084】
(5)ゲート酸化膜の形成:
次に、このようにして部分的に露出したp−Si基板30に対して新しい酸化膜、すなわち絶縁層26の形成を行う(同図(E))。
【0085】
(6)ゲート及び電極の形成:
次に、例えばアルミニウムを蒸着することにより、ゲートとして機能する電極10を形成するとともに、ソース12に接続される入出力電極18及びドレイン14に接続される入出力電極20のそれぞれを形成する(同図(F))。
【0086】
(7)絶縁層の形成:
最後に、全面にP−ガラスを付着させた後、加熱して平滑な表面を形成する(同図(G))。
【0087】
このようにしてLC素子100を製造する工程は、基本的には通常のMOS−FETを製造する工程と類似しており、電極10の形状等が異なるのみであるといえる。したがって、一般のMOS−FETやバイポーラトランジストと同一基板上に形成することが可能であり、ICやLSIの一部として形成することができる。しかも、ICやLISの一部として形成した場合には、後工程における部品の組み付け作業を省略することができる。
【0088】
このように、本実施例のLC素子100は、蛇行形状の電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とのそれぞれがインダクタを形成するとともに、これら電極10とチャネル22との間には分布定数的にキャパシタが形成される。
【0089】
したがって、電極10の一方端に設けられたアース電極16を接地あるいは固定電位に接続するとともに、チャネル22を信号の入出力路として用いた場合には、入力された信号に対して広い帯域で良好な減衰特性を有するLC素子となる。
【0090】
また、上述したようにこのLC素子100は、一般のMOS−FET等の製造技術を応用して製造することができるため、製造が容易であり小型化等にも適している。また、半導体基板の一部としてLC素子を製造した場合には、他の部品との配線も同時に行うことができ、後工程における組み付け作業等が不要となる。
【0091】
また、本実施例のLC素子100は、電極10に印加するゲート電圧(コントロール電圧Vc)を変えることにより、チャネル22の抵抗値を可変に制御することができ、LC素子100の特性をある範囲で調整あるいは変更することができる。
【0092】
なお、上述した第1実施例は、蛇行形状の電極10に対応して形成されるチャネル22を信号の入出力路として用いたが、チャネル22と電極10の機能を入れ替えるようにしてもよい。すなわち、図10に示すように、電極10の両端に入出力電極18,20を接続することによりこの電極10を信号の入出力路として用いるとともに、チャネル22の一方端に形成されたソース12(あるいはドレイン14)にアース電極16を接続し、このアース電極16を接地あるいは固定電位に接続する。
【0093】
但し、この場合にはソース16あるいはドレイン14のいずれか一方にアース電極16を接続することになるため、他方を省略することができる。また、チャネル22はソース12あるいはドレイン14に対して電極10側の電位が相対的に高い場合に形成されるため、チャネル22の抵抗値が所望の値となるようにソース12(あるいはドレイン14)に印加される電圧と電極10に入出力される信号の平均電圧レベルとを決定する必要がある。
【0094】
また、上述した第1実施例は、電極10に印加する電圧レベルをソース12等に比べて相対的に高くしたときにチャネル22が形成されるエンハンスメント型のLC素子100について説明したが、デプレション型とすることもできる。すなわち、図1等に示したチャネル22の領域に予めキャリア(n型不純物)を注入することによりnチャネルを形成しておく。これにより、ゲート電圧をソース12等に印加する電圧よりも相対的に高くすることなくチャネル22を形成することができ、あるいは印加するゲート電圧とチャネル幅等との関係を変えることができる。また、注入するキャリアは電極10に沿った一部の領域のみに注入してもよい。このようにデプレション型とすることができる点は、後述する各実施例についても同様である。
【0095】
第2実施例
次に、本発明の第2実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0096】
上述した第1実施例のLC素子100は、蛇行形状の電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とがほぼ全長にわたって平行に、すなわちほぼ同一の長さに形成されたものであるが、本実施例のLC素子200は、図1に示した電極10を約半分削除するとともに、この削除した部分に対応するp−Si基板30の表面にキャリアを注入した点に特徴がある。
【0097】
図11は、第2実施例のLC素子200の平面図である。図11に示すように、電極10の一部を省略した場合であっても、短くなった電極10により一方のインダクタが、チャネル22により他方のインダクタが、これら電極10とチャネル22とによりキャパシタが分布定数的に形成されるため、図1に示した第1実施例のLC素子100と同様に良好な減衰特性を有することになる。
【0098】
図12は、本実施例のLC素子200の等価回路を示す図である。同図に示すように、電極10の凹凸数が少なくなった分だけインダクタンスL3も小さくなり、これに対応して分布定数的に存在するキャパシタンスC1も小さくなる。
【0099】
また、アース電極16に印加するゲート電圧を変えることにより、より具体的にはアース電極16と入出力電極18,20との相対的電位差を変えることにより、電極10に対応して形成されるチャネル22の抵抗値も変化し、LC素子200の減衰特性を可変に制御できる点は上述した第1実施例のLC素子100と同様である。
【0100】
このように、本実施例のLC素子200は、電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とによりインダクタとキャパシタが分布定数的に形成され、良好な減衰特性をもった素子として機能することになる。
【0101】
また、LC素子200を半導体製造技術を利用して製造できる点や、LSI等の一部として形成することができるとともに、この場合には後工程における配線処理を省略できる点、ゲート電圧を変えることにより減衰特性を変更できる点等については上述した第1実施例のLC素子100と同じである。
【0102】
なお、本実施例のLC素子200は、チャネル22を信号の入出力路として用いたが、電極10を信号の入出力路として用い、チャネル22側を接地あるいは固定電位に接続するようにしてもよい。特にこの場合は、図1に示した電極10の一部に対応するようにチャネル22を形成する必要があり、例えば同図のチャネル22の一部に対応する位置にp型不純物を多量に注入しておいて、チャネル22が部分的に形成された際にもこのp型不純物を多量に注入した部分でチャネル22が分断されるように、あるいはp型不純物を多量に注入した部分(図10におけるチャネル22の右側半分に相当する部分)ではチャネル22が全く形成されないようにする必要がある。
【0103】
第3実施例
次に、本発明の第3実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0104】
上述した第1実施例のLC素子100および第2実施例のLC素子200は、3端子のノーマルモード型素子として機能するものであるが、本実施例のLC素子300は、4端子のコモンモード型素子として機能するよう形成されている点に特徴がある。
【0105】
図13は、第2実施例のLC素子の平面図である。同図に示すように、第3実施例のLC素子300は、蛇行形状の電極10の両端に入出力電極36,38が接続されており、この点が図1に示したLC素子100と異なっている。
【0106】
図14は、第3実施例のLC素子の等価回路を示す図である。同図に示すように、2つの入出力電極18,20の間にソース12およびドレイン14を介して形成されたチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、2つの入出力電極36,38間に形成された電極10がインダクタンスL2を有するインダクタとして機能する。しかも、これらチャネル22と電極10とがそれぞれ信号の入出力路として使用されるとともに、これらの間には第1実施例のLC素子100と同様にキャパシタンスCを有するキャパシタが分布定数的に形成される。
【0107】
このように、本実施例のLC素子300は、電極10に対応して形成されるチャネル22のみならずこの電極10の両端にも2つの入出力電極36,38を設けることにより、良好な減衰特性をもった4端子コモンモード型素子として機能することができる。また、入出力電極18,20と入出力電極36,38との相対的電位差を変えることにより、チャネル22の抵抗値を変えることができ、LC素子300の減衰特性をある範囲で可変に制御することができる。
【0108】
また、このLC素子300をMOS製造技術を利用して製造することができる点、LSI等の一部として形成することができるとともにこの場合には後工程における配線処理を省略することができる点等については上述した第1実施例のLC素子100等と同じである。
【0109】
第4実施例
次に、本発明の第4実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0110】
上述した各実施例のLC素子100,200,300のそれぞれは、蛇行形状の電極10を1本の導体で形成していたが、本実施例のLC素子400はこの電極10を複数の(例えば3本の)分割電極片10−1,10−2,10−3に分割した点に特徴がある。
【0111】
図15は、第4実施例のLC素子の平面図である。同図に示すように、第4実施例のLC素子400は、図1に示したLC素子100に用いられている蛇行形状の電極10を3本の分割電極片10−1,10−2,10−3に置き換えた構造を有している。全体として蛇行形状を有するこれらの分割電極片10−1〜10−3のそれぞれにはアース電極16が接続されており、3つのアース電極16を接地することにより、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれによって形成されるインダクタの一部が接地される。あるいは3つのアース電極16を固定電位の電源に接続することにより、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれによって形成されるインダクタの一部がこの固定電位となる。
【0112】
なお、電極10を3分割してあるので各分割電極片間には隙間ができることになり、このままではチャネル22が分断されるおそれがある。そのため、本実施例では、この各分割電極片間の隙間部分に対応するp−Si基板30の表面にn型不純物を注入した2つの拡散領域13,15が設けられており、これらの拡散領域13,15の存在により、3つの分割電極片10−1〜10−3の全長にわたって平行に1本の長いチャネル22が形成されるようになっている。
【0113】
図16は、第4実施例の型LC素子400の等価回路を示す図である。同図に示すように、3本の分割電極片10−1〜10−3に対応して形成されるチャネル22の全体がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれがインダクタンスL3,L4,L5を有するインダクタとして機能する。そして、チャネル22と各分割電極片10−1〜10−3とがキャパシタンスC2,C3,C4を有するキャパシタとして機能し、しかもこれらのキャパシタが分布定数的に形成される。
【0114】
本実施例のLC素子400は、各分割電極片10−1,10−2,10−3の自己インダクタンスL3,L4,L5が小さくなる。したがって、これらの自己インダクタンスによるLC素子400全体の特性への影響は小さくなり、チャネル22が有するインダクタンスL1と分布定数的に形成されるキャパシタンスC2,C3,C4とによってLC素子400全体の特性がほぼ決定されることになる。
【0115】
また、アース電極16と入出力電極18,20との相対的電位差を変えることによりLC素子400全体の特性を可変に制御できる点は上述した各実施例と同様である。
【0116】
なお、図15に平面構造を示した本実施例のLC素子400は、チャネル22を信号の入出力路として用いるとともに蛇行形状の電極10を3分割したが、これとは反対に蛇行形状の電極10側を複数に分割するようにしてもよい。この場合には、電極10に電圧が印加された状態でチャネル22側を電気的に複数に分割する必要があるため、蛇行形状を有するチャネル22の一部に予めp型不純物を多量に注入しておいて、電極10に電圧が印加されてもチャネル22が部分的に分断されるようにすればよい。
【0117】
第5実施例
次に、本発明の第5実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0118】
上述した各実施例のLC素子100等は、蛇行形状の電極10あるいは複数の分割電極片10−1〜10−3を有していたが、本実施例のLC素子500は、これらの電極10等を削除するとともに、p−Si基板30の表面に蛇行形状となるようにキャリアを注入することによりチャネルを形成した点に特徴がある。
【0119】
図17は、第5実施例のLC素子500の平面図である。同図に示すように、本実施例のLC素子500は、p−Si基板30の表面付近の隔たった位置に形成されたソース12とドレイン14の間に蛇行形状にキャリア(n型不純物)を注入してチャネル22を形成している。
【0120】
このキャリアの注入は、例えばp−Si基板30の表面(蛇行形状の部分)にイオン打ち込み法によってAs+イオンを打ち込むことにより行われる。従って、本実施例のLC素子500においては、ゲートとして機能する電極10がないにもかかわらずチャネル22が形成されており、このチャネル22がインダクタとして機能する。また、このチャネル22はある有限の大きさを有してp−Si基板30上に形成されているため浮遊容量を有している。
【0121】
図18は、第5実施例のLC素子500の等価回路を示す図である。同図に示すように、予めキャリアを注入して形成されたチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、このインダクタが有する浮遊容量C5が分布定数的に形成されている。
【0122】
このように、本実施例のLC素子500は、インダクタンスL1と浮遊容量C5とが分布定数的に存在するため、原理的には上述した各実施例の型LC素子100等と同様の特性を有しており、良好な減衰特性を持った素子として機能することができる。
【0123】
また、このLC素子500は、p−Si基板30上にイオン打ち込み法等によりキャリアを注入することにより製造することができ、これは上述した第4実施例までの各実施例と同様にMOSの製造技術を利用して製造することができる。しかも、本実施例のLC素子500はLSI等の一部として形成することができるとともにこの場合には後工程における配線を省略することができる点等については上述した第1実施例等と同じである。
【0124】
第6実施例
次に、本発明の第6実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0125】
一般に、導電体は渦巻き形状とすることにより所定のインダクタンスを有するインダクタ導体として機能する。また、上述したように電極10やチャネル22を蛇行形状とした場合であっても所定のインダクタンスを有するインダクタ導体として機能する。ところが、入力される信号の周波数帯域を高周波に限った場合には、渦巻き形状や蛇行形状以外の形状、極端な場合には直線形状であってもインダクタンス成分を有するインダクタ導体として機能する。本実施例のLC素子は、このような点に着目して、電極10等を蛇行形状以外の形状に形成した点に特徴がある。
【0126】
図19〜21のそれぞれは、ゲートとして機能する電極10およびそれに対応して形成されるチャネル22のそれぞれを直線形状とした本実施例のLC素子の平面図である。
【0127】
図19(A)は上述した図1に対応しており、ゲートとして機能する電極10の全長にわたってチャネル22が形成された3端子型のLC素子が示されている。同図に示したLC素子は、エンハンスメント型あるいはデプレション型のいずれであってもよい。
【0128】
また、同図(B)は図11に対応しており、チャネル22の一部に対向するように電極10が設けられており、電極10に対向しないチャネル22の他の部分には予めキャリアが注入されている。あるいはチャネル22の全長にわたって予めキャリアを注入したデプレション型としてもよい。
【0129】
また、図20(A)は図13に対応しており、直線形状の電極10の両端に入出力電極36,38を形成してコモンモード型とした場合が示されている。図20(B)は図15に対応しており、分割された3本の分割電極片10−1,10−2,10−3が設けられた場合が示されている。
【0130】
また、図21は図17に対応しており、ゲートとして機能する電極10を削除するとともに浮遊容量を利用してLC素子を構成した場合が示されている。
【0131】
図22は、電極10とチャネル22を曲線形状あるいは波形形状とした場合のLC素子の平面図である。同図(A)は曲率半径の大きな曲線形状の場合が示されている。ソース12とドレイン14とを直線で結んだ位置に他の部品等を配置しなければならない場合には同図(A)に示すように電極10およびチャネル22を曲線形状とすればよい。
【0132】
同図(B)は波形形状の場合が示されている。このLC素子は、図1等に示した蛇行形状ほどではないが、電極10等を直線形状あるいは曲率半径の大きな曲線形状とした場合に比べると大きなインダクタ成分を有することになる。
【0133】
図23は、電極10とチャネル22を1周に満たない周回形状とした場合のLC素子の平面図であり、図24は電極10とチャネル22を1周に満たない周回形状とするとともにその端部に若干の折り返し部分を設けたLC素子の平面図である。これらの図に示すように、電極10およびチャネル22をほぼ周回形状に形成することにより、小さなインダクタンスを有するLC素子を形成することができる。また、図24に示すように、電極10およびチャネル22の一方端(あるいは両端でもよい)を部分的に折り返すことにより電極10等が発生する磁束を部分的に打ち消してインダクタンスを減らし、LC素子全体のインダクタンス、すなわち周波数特性を調整することができる。
【0134】
なお、上述した図22〜図24のそれぞれは、説明を簡単にするために、図19(A)に対応するLC素子のみが示されているが、図19(B),図20(A),(B),図21のそれぞれに対応するタイプについても同様に考えることができる。
【0135】
このように、図19〜図24に示したLC素子は、電極10等を蛇行形状以外の形状としたものであり、上述した第1実施例〜第5実施例と同様に、良好な減衰特性をもったノイズフィルタとして機能することができる。また、電極10を有するものについては、入出力電極18,20に対する電極10の相対的電位を変えることによりチャネル22の抵抗値も変わり、LC素子全体の特性を可変に制御することができる点も、上述した各実施例と同じである。
【0136】
このように、高周波帯域の信号に限った場合には、電極10とチャネル22(あるいはチャネル22のみ)を渦巻き形状以外の任意形状とすることができることから、半導体基板上の空き領域を有効に使ってLC素子を形成することができる。
【0137】
その他の実施例
次に、本発明のその他の実施例に係るLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0138】
図25は、化学液相法を用いて端子付けを行う場合の概略を示す図であり、図8と同じ位置の断面構造が示されている。
【0139】
このような断面構造を有する半導体基板を1個のLC素子ごとに切り離した後に、個別に切り離されたチップ(素子)の全表面に化学液相法により絶縁膜としてシリコン酸化膜40を形成する。その後、エッチングにより電極10あるいは入出力電極18,20上のシリコン酸化膜40を除去して孔をあけ、その孔を半田42で表面に盛り上がる程度に封じることにより、突出した半田42をプリント配線基板のランドと直接接触させることができる。したがって、表面実装する場合には好都合となる。
【0140】
なお、素子表面の保護膜に合成樹脂等の他の絶縁材料を使用してもよく、保護膜の穿孔にレーザ光線を利用してもよい。また、図25に示した例では半田42の鉛直方向の高さに違いが生じるため、例えば電極10の一方端に設けられたアース電極16の端面を入出力電極18,20の端面と同じ高さにするとともに、これらの各端面上に上述した半田42を盛るようにしてもよい。この場合には、突出した半田42の高さもほぼ同一となるため、表面実装に際してさらに好都合である。
【0141】
図26は、上述した各実施例のLC素子を実際のLSI等の一部として形成する場合の説明図である。同図に示すように、半導体チップ44上の各種信号あるいは電源のライン46に上述した各実施例のLC素子100等を挿入する形で組み込む。特に、上述した各実施例のLC素子は、半導体チップ44上に各種回路を形成する工程において同時に製造することができるため、後工程における配線処理等が不要になるといった利点がある。
【0142】
次に、上述した各実施例のLC素子を実際の回路の一部として使用する場合の一例について説明する。なお、以下に説明する各図面においては、第1実施例のLC素子100を用いた各種回路を示してあるが、同様に第2実施例以下の各実施例のLC素子を用いる場合であってもよい。
【0143】
一般に、上述した各実施例のLC素子においてインダクタを形成するチャネル22は高抵抗を有し、しかもこのチャネル22の全長が長いため、2つの入出力電極18,20間で信号レベルの減衰が生じる。そのため、実際に各実施例のLC素子を回路の一部として使用する場合には、出力側に高入力インピーダンスのバッファを接続することにより実用的な構成となる。
【0144】
図27は、出力側にバッファを接続した例を示す図である。同図(A)は、バッファとしてMOS−FETと抵抗からなるソースホロワ回路50を用いた場合を示している。このソースホロワ回路50を構成するMOS−FETは上述した各実施例のLC素子と同じMOS構造を有しているため、このソースホロワ回路50を含めた全体をLC素子として一体的に形成することができる。
【0145】
また、同図(B)は、バッファとして2つのバイポーラトランジスタと抵抗からなるエミッタホロワ回路52を用いた場合を示している。各実施例のLC素子とバイポーラトランジスタでは構造は若干異なるものの同一の半導体基板上に形成することが可能であるため、このエミッタホロワ回路52を含めた全体をLC素子として一体的に形成することができる。
【0146】
このように出力側にバッファを設けることにより、LC素子100等のインダクタ部分(チャネル22)によって減衰した信号レベルが増幅によって復元されて、SN比が良好な出力信号を得ることが可能になる。
【0147】
図28は、出力側にレベル変換回路を接続した例を示す図である。同図(A)は、レベル変換回路として2つのエミッタホロワ回路54,56を直列に接続した場合を示している。同図(B)は、レベル変換回路として2つのソースホロワ回路58,60を直列に接続した場合を示している。
【0148】
このように、出力側にレベル変換回路を接続することにより、LC素子100等のインダクタ部分によって減衰した信号レベルが増幅されるとともに、所定のレベル変換あるいはレベル補正を容易に行うことができる。
【0149】
なお、これらのレベル変換回路をLC素子と同一の基板に一体的に形成することができる点は、上述したバッファの場合と同じである。
【0150】
図29は、上述した各実施例のLC素子に入力保護回路を追加した場合の構成の一例を示す図である。MOS構造を有する各実施例のLC素子は、電極10の一方端に設けられたアース電極16等に静電気によって発生する高電圧が印加されると、電極10とp−Si基板30との間に介在する絶縁層26が破壊される。したがって、この静電気による絶縁層26の破壊を防止するために保護回路が必要となる。
【0151】
同図に示す保護回路は、ともに複数のダイオードと抵抗とにより構成されており、電極10に高電圧が印加されると、動作電源ライン側あるいは筐体アース側に電流がバイパスされるようになっている。特に同図(A)の回路では数100V、同図(B)の回路では1000〜2000Vの静電耐量があり、使用環境等に応じて使用する保護回路を適宜選択することができる。
【0152】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0153】
例えば、上述した各実施例においては、LC素子100等をLSI等の一部として形成できる点を効果としてあげたが、必ずしもLSI等の一部として形成する必要はなく、半導体基板上にLC素子100等を形成した後にアース電極16及び入出力電極18,20のそれぞれに端子付けを行って、あるいは図25に示したような化学液相法を利用して端子付けを行って、単体の素子として形成するようにしてもよい。この場合には、同一の半導体基板上に複数個のLC素子100を同時に形成し、その後半導体基板を切り離して各LC素子に端子付けを行うようにすれば、容易に大量生産が可能となる。
【0154】
また、上述した各実施例においては、電極10の一方の端部にアース電極16を設けるようにしたが、必ずしも最端部に設ける必要はなく、周波数特性を検討した後に必要に応じてその取り付け位置をずらすようにしてもよい。
【0155】
また、上述した第1実施例〜第5実施例の各LC素子は、電極10の両端近傍であって隔たった位置にソース12およびドレイン14を配置するようにしたが、電極10の形状を工夫してソース12とドレイン14とを接近した位置に配置するようにしてもよい。
【0156】
例えば図30に示すように、ソース12とドレイン14とを隣接するように配置するとともに、図1に示したLC素子100の電極10の一方端をドレイン14に達するまで延長する。あるいは、図31に示すように、ソース12とドレイン14とを隣接するように配置するとともに、図1に示したLC素子100の電極10を蛇行形状を維持したまま折り返す。
【0157】
このように、電極10の形状を工夫することにより、ソース12とドレイン14の位置が接近し、アース電極16および入出力電極18,20をほぼ同一位置に形成することができる。したがって、端子付けに際しての配線を容易に行うことができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0158】
また、上述した各実施例のLC素子は、p−Si基板30を利用して形成したが、同様にn型半導体基板(n−Si基板)を利用して形成するようにしてもよい。また、半導体基板はゲルマニウム等のシリコン以外の材料、あるいは非晶質材料であるアモルファスシリコン等を用いるようにしてもよい。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1実施例のLC素子の平面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線拡大断面図である。
【図4】蛇行形状のインダクタの原理を示す図である。
【図5】チャネルが形成される状態を示す図である。
【図6】第1実施例のLC素子の断面構造を示す図である。
【図7】第1実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図8】チャネルの抵抗値を説明するための図である。
【図9】第1実施例のLC素子の製造工程を示す図である。
【図10】第1実施例のLC素子の変形例を示す図である。
【図11】第2実施例のLC素子の平面図である。
【図12】第2実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図13】第3実施例のLC素子の平面図である。
【図14】第3実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図15】第4実施例のLC素子の平面図である。
【図16】第4実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図17】第5実施例のLC素子の平面図である。
【図18】第5実施例のLC素子の平面図である。
【図19】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図20】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図21】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図22】電極を曲線形状あるいは波形形状としたLC素子の平面図である。
【図23】電極を1周未満の周回形状としたLC素子の平面図である。
【図24】電極を1周未満の周回形状としたLC素子の平面図である。
【図25】化学液相法を用いて端子付けを行う場合の概略を示す図である。
【図26】各実施例のLC素子をLSI等の一部として形成する場合の説明図である。
【図27】各実施例のLC素子の出力側にバッファを接続した例を示す図である。
【図28】各実施例のLC素子の出力側にレベル変換回路を接続した例を示す図である。
【図29】各実施例のLC素子の入力側に保護回路を接続した例を示す図である。
【図30】電極の形状を工夫した変形例を示す図である。
【図31】電極の形状を工夫した変形例を示す図である。
【符号の説明】
10 電極
12 ソース
14 ドレイン
16 アース電極
18,20 入出力電極
22 チャネル
26 絶縁層
30 p型シリコン(p−Si)基板
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体装置等に組み込まれて、あるいは単体で所定の周波数帯域を減衰させることができるLC素子,半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子技術の発達に伴い、電子回路は各種分野において幅広く用いられており、従ってこれら各電子回路を外部からの影響を受けることなく安定して確実に動作させることが望まれる。
【0003】
しかし、このような電子回路には、直接あるいは間接的に外部からノイズが侵入する。このため、電子回路を使用した各種電子機器に誤動作が引き起こされる場合が少なくないという問題がある。
【0004】
特に、電子回路は、直流電源としてスイッチングレギュレータを用いる場合が多い。従って、スイッチング等の過渡電流により、または使用するデジタルICのスイッチング動作に起因する負荷変動により、スイッチングレギュレータの電源ラインには各種の周波数成分を持った大きなノイズが発生することが多い。そして、これらのノイズは、同じ機器内の他の回路へ電源ラインを介して、または輻射により伝搬され誤動作やS/N比の低下等の悪影響を及ぼし、さらに近くで使用中の他の電子機器の誤動作を引き起こすことがある。
【0005】
このようなノイズを除去するため、一般に電子回路では各種のノイズフィルタが用いられている。特に、近年では各種構成の電子機器を多数使用しているため、ノイズに対する規制もますます激しくなっており、このため発生するノイズを確実に除去することができる小型でしかも高性能なノイズフィルタとして機能するLC素子の開発が望まれる。
【0006】
このようなLC素子の1つとして、特開平3−259608号公報に開示されたLCノイズフィルタが知られている。このLCノイズフィルタは、L成分とC成分とが分布定数的に存在するものであり、集中定数タイプのLCノイズフィルタに比べて比較的広い帯域にわたって良好な減衰特性を得ることができるというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したLCノイズフィルタは、絶縁シートの一方の面にキャパシタ用導電体を、他方の面にインダクタ用導電体をそれぞれ形成した後に、この絶縁シートを折りたたむことにより製造されるものであり、絶縁シートの折り返し等の工程が必要なため製造工程が複雑になるという問題点があった。
【0008】
また、このLCノイズフィルタをICやLSIの電源ラインあるいは信号ラインに直接挿入して使用する場合には、LCノイズフィルタとIC等とを配線しなければならず、部品組み付けの手間がかかるという問題点があった。
【0009】
さらに、このLCノイズフィルタは部品単体として形成されるため、ICやLSIの回路に含ませて、すなわちICやLSI等の内部配線間に挿入することがほとんど不可能であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、MOS製造技術を用いることにより簡単に製造することができ、後工程における部品の組み付け作業を省略することができ、しかもICやLSIの一部として形成することが可能なLC素子,半導体装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)上述した課題を解決するために、本発明のLC素子は、
半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの両端付近に形成されたソースおよびドレインと、
を備え、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、少なくとも前記チャネルを信号入出力路として用いることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明のLC素子は、
半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの一方端付近に形成されたソースあるいはドレインと、
を備え、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、前記非スパイラル形状の電極を信号入出力路として用いることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、蛇行形状であることを特徴とする。
【0014】
(4)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、波形形状であることを特徴とする。
【0015】
(5)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、曲線形状であることを特徴とする。
【0016】
(6)本発明のLC素子は、(1)又は(2)のLC素子において、前記電極の形状は、直線形状であることを特徴とする。
【0017】
(7)本発明のLC素子は、(1)〜(6)のいずれかのLC素子において、
前記半導体基板表面であって前記非スパイラル形状の電極に対応する位置に、予めキャリアを注入することを特徴とする。
【0018】
(8)本発明のLC素子は、(1)〜(6)のいずれかのLC素子において、
前記半導体基板表面であって前記チャネルが形成される位置の少なくとも一部に予めキャリアを注入するとともに、前記非スパイラル電極に対して前記チャネルの長さを長くあるいは短く設定することにより、前記非スパイラル電極と前記チャネルとを部分的に対応させることを特徴とする。
【0019】
(9)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極を複数に分割し、分割された複数の電極片のそれぞれの一部を電気的に接続することを特徴とする。
【0020】
(10)本発明のLC素子は、(2)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記チャネルが形成される位置の一部に予めキャリアを注入しておくことにより、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成される前記チャネルを複数に分割し、分割されたそれぞれのチャネルの一方端付近に前記ソースあるいは前記ドレインを設け、これら複数のソースあるいはドレインを電気的に接続することを特徴とする。
【0021】
(11)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記チャネルの両端付近に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記非スパイラル形状の電極の一方端付近に電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とする。
【0022】
(12)本発明のLC素子は、(2)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極の両端付近に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの一方端付近に形成された前記ソースあるいは前記ドレインに電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とする。
【0023】
(13)本発明のLC素子は、(1),(3)〜(8)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極の両端付近に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの両端付近に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第3および第4の入出力電極と、
を有し、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルとの両方を信号入出力路とするコモンモード型の素子として用いられることを特徴とする。
【0024】
(14)本発明のLC素子は、(1)〜(13)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極に対して印加するゲート電圧を可変に設定することにより、少なくとも前記チャネルの抵抗値を可変に制御することを特徴とする。
【0025】
(15)本発明の半導体装置は、(1)〜(14)のいずれかのLC素子を基板の一部として形成し、前記非スパイラル形状の電極およびこれに対応して形成されたチャネルの少なくとも一方を信号ラインあるいは電源ラインに挿入して一体成形したことを特徴とする。
【0026】
(16)本発明のLC素子は、(1)〜(10)のいずれかのLC素子において、
全表面に化学液相法により絶縁膜を形成し、この絶縁膜の一部をエッチングあるいはレーザ光照射によって除去して孔をあけ、その孔を半田で表面に盛り上がる程度に封じることにより端子付けを行うことを特徴とする。
【0027】
(17)本発明の半導体装置は、(1),(3)〜(9),(11),(13)のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号を増幅するバッファを接続したことを特徴とする。
【0028】
(18)本発明の半導体装置は、(1),(3)〜(9),(11),(13)のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号の電圧レベルを変更するレベル変換回路を接続したことを特徴とする。
【0029】
(19)本発明のLC素子は、(1)〜(13)のいずれかのLC素子において、
前記非スパイラル形状の電極に過電圧を動作電源ライン側あるいはアース側にバイパスさせる保護回路を設けたことを特徴とする。
【0030】
(20)本発明のLC素子の製造方法は、
半導体基板に部分的に不純物を注入することによりソースとドレインを形成する第1の工程と、
前記半導体基板上の全面あるいは部分的に絶縁層を形成する第2の工程と、
前記絶縁層のさらに表面に前記ソースと前記ドレインを結ぶように非スパイラル形状の電極を形成する第3の工程と、
前記ソース,ドレインと前記非スパイラル形状の電極のそれぞれに電気的に接続される配線層を形成する第4の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0031】
(21)本発明のLC素子の製造方法は、半導体基板に部分的に不純物を注入することによりソースあるいはドレインを形成する第1の工程と、
前記半導体基板上の全面あるいは部分的に絶縁層を形成する第2の工程と、
前記絶縁層のさらに表面に前記ソースあるいは前記ドレインの近傍に一方端が位置するように非スパイラル形状の電極を形成する第3の工程と、
前記ソースあるいはドレインと前記非スパイラル形状の電極のそれぞれに電気的に接続される配線層を形成する第4の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0032】
【作用】
(1)の発明のLC素子では、半導体基板の一方の面側に非スパイラル形状の電極が形成されており、この電極と半導体基板との間には絶縁層が形成されている。従って、非スパイラル形状の電極と絶縁層と半導体基板とからなるMOS構造となっている。
【0033】
一般には、導体を渦巻き形状に形成することによりインダクタとして機能するが、その導体の形状を工夫することにより、あるいは使用する周波数帯域によっては導体を渦巻き形状以外の形状とした場合でもインダクタとして機能するようになる。
【0034】
従って、本発明においては、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成されるチャネルとがそれぞれインダクタとして機能することになる。また、非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成されるチャネルとの間には絶縁層が介在しており、これらによってキャパシタが形成される。しかも、このキャパシタは非スパイラル形状の電極およびチャネルの全長にわたって分布定数的に形成されている。このため、上述したチャネルの一方端に形成されたソースに入力された信号は、分布定数的に存在するインダクタおよびキャパシタを介して伝搬される際に、広い帯域にわたり良好な減衰特性が得られる。
【0035】
特に、(1)の発明のLC素子は、半導体基板にソースおよびドレインを形成するとともに、さらにその表面に絶縁層と非スパイラル形状の電極を形成することにより製造することができ、製造が非常に容易となる。また、このLC素子は、半導体基板上に形成されるため、ICやLSIの一部として形成することも可能であり、このような部品の一部として形成した場合には、後工程における部品の組み付け作業を省略することができる。
【0036】
また、(2)の発明のLC素子では、上述したLC素子がチャネルを信号入出力路として使用していたのに対し、非スパイラル形状の電極を信号入出力路として使用したものであり、チャネルを介して信号を伝搬しないためソースあるいはドレインのいずれか一方が省略されている。
【0037】
従って、チャネルと非スパイラル形状の電極とがそれぞれインダクタとして機能するとともに、これらの間に分布定数的にキャパシタが形成される点は、上述した(1)の発明のLC素子と同じであり、広い帯域にわたって良好な減衰特性を有するとともに、製造容易および基板の一部として形成することが可能となる。
【0038】
また、(3)〜(6)の発明のLC素子は、上述した非スパイラル形状を具体的に蛇行形状,波形形状,曲線形状,直線形状に特定したものである。
【0039】
すなわち、電極(および対応するチャネル)を蛇行形状あるいは波形形状とした場合には、各凹凸部の1つ1つが約1/2ターンのコイルとなってこれらが直列接続されるため、全体として所定のインダクタンスを有することになる。特に、蛇行形状とすることにより、隣接する電極を接近させることができるため、スペースの有効利用を図ることができる。また、使用する周波数帯域を高周波領域に限った場合には、電極を曲線形状あるいは直線形状とした場合にも所定のインダクタンスを有することになり、電極を蛇行形状等に形成した場合と同様の動作を行わせることができる。
【0040】
また、(7)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応する位置に予めキャリアを注入することにより、デプレション型の素子として形成したものである。この場合には、LC素子の特性そのものは変えずに、非スパイラル形状の電極に電圧(ゲート電圧)を印加しない状態でチャネルを形成し、あるいは印加するゲート電圧とチャネル幅等との関係を変更することができる。
【0041】
また、(8)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極とチャネルのいずれか一方を短く形成しており、この場合であっても同様に、長さが異なる非スパイラル形状の電極とチャネルのそれぞれはインダクタとして機能し、これらの間には絶縁層を挟んで形成されるキャパシタが分布定数的に存在する。したがって、このLC素子は広い帯域にわたって良好な減衰特性を有するとともに、製造が容易であり基板の一部として形成することが可能であるという効果がある。
【0042】
但し、半導体基板の全面を同一状態に形成した場合には、非スパイラル形状の電極の全長に対応してチャネルが形成されてしまうため、このチャネルの一部に予めキャリアを注入しておいて(あるいはエッチング等により断絶層形成しておいて)チャネルを短くする必要がある。
【0043】
また、(9)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極を複数の電極片に分割するとともにこれらの一部を電気的に接続して使用する。この場合には、各分割片の自己インダクタンスが小さくなり、これら各分割片の自己インダクタンスの影響が少ない分布定数型のLC素子を形成することができる。
【0044】
また、(10)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルを複数に分割するとともに、分割されたそれぞれのチャネルの一方端付近のソースあるいはドレインを電気的に接続して使用する。従って、(9)の発明のLC素子と同様に、各分割チャネルの自己インダクタンスが小さくなり、これによる影響が少ない分布定数型のLC素子となる。
【0045】
また、(11)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの両端付近のソースおよびドレインに接続される第1および第2の入出力電極を設けるとともに、非スパイラル形状の電極の一方端近傍にアース電極を設けることにより、チャネルが信号入出力路として使用される3端子型のLC素子を容易に形成することができる。
【0046】
また、(12)の発明のLC素子は、(11)の発明のLC素子において入出力電極とアース電極とを入れ替えたものである。すなわち、非スパイラル形状の電極の両端付近に第1および第2の入出力電極を設けるとともに、チャネルの一方端に形成されたソースあるいはドレインに接続されたアース電極を設けることにより、非スパイラル形状の電極が信号入出力路として使用される3端子型のLC素子を容易に成形することができる。
【0047】
また、(13)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極の両端付近に第1および第2の入出力電極を設けるとともに、この非スパイラル形状の電極に対応するチャネルの両端付近に形成されたソースおよびドレインに第3および第4の入出力電極を設けることにより、4端子コモンモード型のLC素子を容易に形成することができる。
【0048】
また、(14)の発明のLC素子では、非スパイラル形状の電極に印加するゲート電圧を可変に設定することにより、この非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの幅、すなわちチャネルの抵抗値が変化する。したがって、ゲート電圧を変えることにより、全体としての減衰特性、すなわち周波数特性を必要に応じて可変に制御することができる。
【0049】
また、(15)の発明の半導体装置では、上述した各発明のLC素子を基板の一部に、信号ラインあるいは電源ラインに挿入するように形成している。これにより、半導体基板上の他の部品と一体的に製造することができ、製造が容易になるとともに後工程における部品の組み付け作業が不要となる。
【0050】
また、(16)の発明のLC素子は、上述した(1)〜(10)の発明のいずれかのLC素子を、半導体基板上に形成した後に化学液相法により全表面に絶縁膜を形成する。その後、この絶縁膜の一部にエッチングやレーザ光照射により孔をあけ、この孔に半田を盛ることにより端子付けが行われる。したがって、表面実装型のLC素子を簡単に製造することができ、表面実装型とすることによりこのLC素子の組み付け作業も容易となる。
【0051】
また、(17)の発明の半導体装置では、上述したLC素子のチャネルを介して出力される信号を増幅するバッファが接続されており、アルミニウム等の金属材料に比べて抵抗値が大きいチャネルを介することにより電圧レベルが減衰した信号を、SN比が良好な元の信号に復元することが可能となる。
【0052】
また、(18)の発明の半導体装置では、上述したバッファの変わりにレベル変換回路が接続されている。このレベル変換回路を接続することにより、チャネルを介して減衰した信号レベルを復元するとともに、所定のレベルの変換あるいはレベル補正を行なうことが可能となる。
【0053】
また、(19)の発明の半導体装置では、非スパイラル形状の電極に保護回路が接続されており、この非スパイラル形状の電極に対して過電圧が印加されると、動作電源ライン側あるいはアース側にバイパス電流が流れ、非スパイラル形状の電極と半導体基板との間の絶縁破壊を防止することができる。
【0054】
また、(20)および(21)の発明のLC素子の製造方法は、上述した各LC素子を半導体製造技術を適用して製造するための方法である。すなわち、第1の工程において半導体基板にソース,ドレインの両方を、あるいはいずれか一方を形成し、次に第2の工程において半導体基板表面に絶縁層を、第3の工程において非スパイラル形状の電極をそれぞれ形成する。そして、第4の工程において入出力電極等を含む配線層が形成されて上述したLC素子が完成する。
【0055】
このように、上述したLC素子は、一般的な半導体製造技術(特にMOS製造技術)を応用することにより製造することができ、小型化あるいは低コスト化が可能であるとともに、複数個同時に大量生産することも可能となる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を適用した一実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0057】
第1実施例
図1は、本発明を適用した第1実施例のLC素子の平面図である。また、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3は図1のB−B線拡大断面図である。
【0058】
これらの図に示すように、本実施例のLC素子100は、半導体基板であるp型シリコン基板(p−Si基板)30の表面付近の隔たった位置に形成されたソース12とドレイン14の間をゲートとして機能する蛇行形状の電極10に対する電圧の印加によって形成されるチャネル22によって接続することにより形成されている。
【0059】
上述したソース12およびドレイン14は、p−Si基板30を反転させたn+ 領域の拡散領域として形成される。例えば、As+ イオンを熱拡散あるいはイオン打ち込みにより注入することにより、不純物濃度を高めることにより形成される。
【0060】
また、ゲートとして機能する電極10は、蛇行形状の一方の端部がソース12の一部に、他方の端部がドレイン14の一部にオーバラップするように、p−Si基板30の表面に形成された絶縁層26を挟んで形成されている。電極10は、例えばアルミニウム膜を形成することによって、あるいは拡散またはイオン注入でPを多量にドープすることにより形成する。
【0061】
また、絶縁層26は、p−Si基板30の表面において、このp−Si基板30と電極10とを絶縁するためのものである。p−Si基板30の全表面(あるいは少なくとも電極10に対応する部分)がこの絶縁層26によって覆われており、さらにこの絶縁層26の表面に上述した電極10が形成される。この絶縁層26は、例えばPを添加したSiO2(P−ガラス)によって形成されている。
【0062】
また、上述した電極10,ソース12,ドレイン14のそれぞれには、図1〜図3に示すように、アース電極16及び入出力電極18,20が接続されている。すなわち、電極10に対するアース電極16の取り付けは、図1に示すように、薄いゲート膜を傷付けないように能動領域の外側で行われる。また、ソース12への入出力電極18の取り付け、及びドレイン14への入出力電極20の取り付けは、図2に示すように、ソース12及びドレイン14の一部を露出させた後に、アルミニウムなどの金属膜を付けることにより行われる。
【0063】
上述した構造を有する本実施例LC素子は、nチャネルエンハンスメント型の構造を有しているものとすれば、電極10に正の電圧が印加されたときに初めてn型のチャネル22が形成されることになる。そして、このチャネル22と上述した電極10のそれぞれが蛇行形状のインダクタ用導体として機能するとともに、これらチャネル22および電極10の間には分布定数的にキャパシタが形成される。
【0064】
図4は、蛇行形状のインダクタの原理を示す図である。凹凸状に屈曲した蛇行形状を有する電極10あるいはチャネル22に一方向の電流を流した場合には、隣接する凹凸部分で向きが反対となるような磁束が交互に発生し、あたかも1/2ターンのコイルが直列に接続された状態になる。実際に、蛇行形状の電極と渦巻き形状の電極とを比較すると、電極の幅および隣接する電極の間隔を同一にしたときには、同じ面積に形成することができる電極の長さは、蛇行形状の電極の方が渦巻き形状の電極よりも長くなり、インダクタンスの値はあまり差がないことが確認されている。
【0065】
また、渦巻き形状の電極にした場合には、電極の両端部の内の一方が中心部に位置し、他方が周辺部に位置するのに対し、蛇行形状の電極では電極の両端部が周辺部に位置するので、端子を設けたり他の回路素子と接続する際に好都合である。
【0066】
図5(A),(B)は、チャネルが形成される状態を示す断面図である。電極10に対して、すなわち電極10に接続されたアース電極16に正のゲート電圧が印加されていない状態では、同図(A)に示すようにp−Si基板30の表面にはチャネル22が現れない。したがって、この状態では図1に示したソース12とドレイン14とが絶縁された状態にある。
【0067】
ところが、電極10に対して正のゲート電圧を印加すると、図5(B)に示すように、電極10に対応するp−Si基板30の表面付近にn領域からなるチャネル22が出現する。このチャネル22は、電極10の全長にわたって形成されるため、電極10とチャネル22との間には分布定数的にキャパシタが形成されることになる。
【0068】
図6は、本実施例のLC素子100の断面構造であり、電極10の蛇行方向に沿った断面が示されている。同図に示すように、電極10に平行にチャネル22が形成され、このチャネル22によってソース12とドレイン14とが導通状態になる。例えば、エンハンスメント型の場合は、電極10にゲート電圧を印加した状態で初めてこのチャネル22が形成されてソース12とドレイン14とが導通状態となるが、電極10に印加するゲート電圧を変えることによりチャネル22の幅および深さが変わるため、ソース12とドレイン14との間の抵抗値を変化させることができる。
【0069】
図7は、第1実施例のLC素子の等価回路を示す図である。同図(A)に示す等価回路は、入出力電極18,20のそれぞれを入出力端子に接続すると共に、アース電極16を接地した場合が示されており、3端子型LCノイズフィルタとして機能するものである。
【0070】
この場合には、アース電極16が接地されているため、入出力電極18,20に入出力する信号の電圧レベルおよびp−Si基板30のサブストレート側に印加する電圧レベルを負に保つ必要がある。このようにすれば、相対的に電極10の電位が高くなり、電極10に対応する位置にチャネル22が形成されるようになる。
【0071】
なお、後述するように、チャネル22が形成される位置に予めn型のキャリアを注入しておくデプレション型構造とすることにより、入出力電極18,20に入出力される信号の電圧レベルが正であってもチャネル22が形成されるようにすることもできる。
【0072】
このような等価回路を有する本実施例のLC素子100は、信号入出力路となるチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタ導体として機能するとともに、電極10がインダクタンスL2を有するインダクタ導体として機能する。また、これら2つのインダクタ導体間には所定のキャパシタンスCを有するキャパシタが分布定数的に形成される。したがって、このLC素子100は従来の集中定数型の素子にはない優れた減衰特性を発揮することができ、入出力電極18,20のいずれか一方から入力された信号からは所定の周波数成分のみが除去され他方から出力されるようになる。
【0073】
また、図7(B)は、アース電極16に対して可変のコントロール用電圧Vcを印加する場合の等価回路を示すものである。アース電極16に印加するコントロール電圧Vcを変えることにより、チャネル22の深さが変わるためチャネル22の移動度が変わって、結果的にキャパシタ用導体の抵抗値を任意に変化させることができる。
【0074】
これにより、チャネル22と電極10との間に形成されるキャパシタンスCも影響を受け、全体として減衰特性が変化することになる。換言すれば、このコントロール用電圧Vcを変化させることにより、本実施例のLC素子100の特性をある範囲で任意に変化させることができる。
【0075】
なお、上述したLC素子100は、ソース12とドレイン14の間にnチャネルを形成する場合を説明したが、この場合は、キャリアとして電子が使用されるため移動度が大きく、チャネル22の抵抗が小さくなる。これに対し、n−Si基板上にpチャネルを形成することにより、上述したLC素子100を形成するようにしてもよい。この場合は、キャリアとしてホールが用いられるため、チャネル22の抵抗が比較的大きくなり、上述したnチャネルの場合と比較すると異なる特性を有することになる。
【0076】
図8は、蛇行形状の電極10に印加するゲート電圧(コントロール電圧Vc)を変化させてチャネル22の深さ等を変えた場合のチャネル抵抗Rを説明するための図である。同図(A)は、実際には蛇行形状の電極10を直線形状と仮定した場合の平面図であり、同図(B)は、そのA−A断面図である。
【0077】
同図において、Wはゲート幅であり、Xはチャネルの深さである。このように、幅Wの電極10によってチャネル22が形成されると、この形成されたチャネル幅は(W+2X)となる。したがって、チャネル22のソース12及びドレイン14間の抵抗Rは、
R=ρL/(W+2X)
で計算することができる。ここで、ρはチャネル22の単位面積当たりの抵抗であり、上述した式はチャネル抵抗Rがチャネルの長さLに比例し、チャネル幅(W+2X)に反比例していることを示す。
【0078】
次に、本実施例のLC素子100の製造工程について説明する。
【0079】
図9は、本実施例のLC素子100の製造工程を示す図であり、一例としてエンハンスメント型のLC素子100の場合が示されている。なお、同図は電極10の蛇行方向に断面をとったものである。
【0080】
(1)酸化膜の形成:
まず最初に、p−Si基板30の表面を熱酸化することにより、二酸化シリコンSiO2を形成する(同図(A))。
【0081】
(2)ソース・ドレインの窓開け:
次に、p−Si基板30表面の酸化膜に対してフォトエッチングを行うことにより、ソース12及びドレイン14に対応する部分の窓開けを行う(同図(B))。
【0082】
(3)ソース・ドレインの形成:
次に、窓開けした部分からn型不純物を注入することによりソース12及びドレイン14を形成する(同図(C))。例えば、n型不純物としてAs+が用いられ、この不純物が熱拡散によって注入される。また、このn型不純物をイオン打ち込みにより注入する場合には、上述した(2)における窓開けは不要となる。
【0083】
(4)ゲート領域の除去:
次に、電極10を形成したい部分の酸化膜を除去することにより、ゲート領域の開口部を形成する(同図(D))。本実施例のLC素子100の場合は、電極10を蛇行形状に形成する必要があるため、このゲート領域開口部の形成も蛇行形状になるように行われる。このようにして電極10に対応する部分のみp−Si基板30が露出することになる。
【0084】
(5)ゲート酸化膜の形成:
次に、このようにして部分的に露出したp−Si基板30に対して新しい酸化膜、すなわち絶縁層26の形成を行う(同図(E))。
【0085】
(6)ゲート及び電極の形成:
次に、例えばアルミニウムを蒸着することにより、ゲートとして機能する電極10を形成するとともに、ソース12に接続される入出力電極18及びドレイン14に接続される入出力電極20のそれぞれを形成する(同図(F))。
【0086】
(7)絶縁層の形成:
最後に、全面にP−ガラスを付着させた後、加熱して平滑な表面を形成する(同図(G))。
【0087】
このようにしてLC素子100を製造する工程は、基本的には通常のMOS−FETを製造する工程と類似しており、電極10の形状等が異なるのみであるといえる。したがって、一般のMOS−FETやバイポーラトランジストと同一基板上に形成することが可能であり、ICやLSIの一部として形成することができる。しかも、ICやLISの一部として形成した場合には、後工程における部品の組み付け作業を省略することができる。
【0088】
このように、本実施例のLC素子100は、蛇行形状の電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とのそれぞれがインダクタを形成するとともに、これら電極10とチャネル22との間には分布定数的にキャパシタが形成される。
【0089】
したがって、電極10の一方端に設けられたアース電極16を接地あるいは固定電位に接続するとともに、チャネル22を信号の入出力路として用いた場合には、入力された信号に対して広い帯域で良好な減衰特性を有するLC素子となる。
【0090】
また、上述したようにこのLC素子100は、一般のMOS−FET等の製造技術を応用して製造することができるため、製造が容易であり小型化等にも適している。また、半導体基板の一部としてLC素子を製造した場合には、他の部品との配線も同時に行うことができ、後工程における組み付け作業等が不要となる。
【0091】
また、本実施例のLC素子100は、電極10に印加するゲート電圧(コントロール電圧Vc)を変えることにより、チャネル22の抵抗値を可変に制御することができ、LC素子100の特性をある範囲で調整あるいは変更することができる。
【0092】
なお、上述した第1実施例は、蛇行形状の電極10に対応して形成されるチャネル22を信号の入出力路として用いたが、チャネル22と電極10の機能を入れ替えるようにしてもよい。すなわち、図10に示すように、電極10の両端に入出力電極18,20を接続することによりこの電極10を信号の入出力路として用いるとともに、チャネル22の一方端に形成されたソース12(あるいはドレイン14)にアース電極16を接続し、このアース電極16を接地あるいは固定電位に接続する。
【0093】
但し、この場合にはソース16あるいはドレイン14のいずれか一方にアース電極16を接続することになるため、他方を省略することができる。また、チャネル22はソース12あるいはドレイン14に対して電極10側の電位が相対的に高い場合に形成されるため、チャネル22の抵抗値が所望の値となるようにソース12(あるいはドレイン14)に印加される電圧と電極10に入出力される信号の平均電圧レベルとを決定する必要がある。
【0094】
また、上述した第1実施例は、電極10に印加する電圧レベルをソース12等に比べて相対的に高くしたときにチャネル22が形成されるエンハンスメント型のLC素子100について説明したが、デプレション型とすることもできる。すなわち、図1等に示したチャネル22の領域に予めキャリア(n型不純物)を注入することによりnチャネルを形成しておく。これにより、ゲート電圧をソース12等に印加する電圧よりも相対的に高くすることなくチャネル22を形成することができ、あるいは印加するゲート電圧とチャネル幅等との関係を変えることができる。また、注入するキャリアは電極10に沿った一部の領域のみに注入してもよい。このようにデプレション型とすることができる点は、後述する各実施例についても同様である。
【0095】
第2実施例
次に、本発明の第2実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0096】
上述した第1実施例のLC素子100は、蛇行形状の電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とがほぼ全長にわたって平行に、すなわちほぼ同一の長さに形成されたものであるが、本実施例のLC素子200は、図1に示した電極10を約半分削除するとともに、この削除した部分に対応するp−Si基板30の表面にキャリアを注入した点に特徴がある。
【0097】
図11は、第2実施例のLC素子200の平面図である。図11に示すように、電極10の一部を省略した場合であっても、短くなった電極10により一方のインダクタが、チャネル22により他方のインダクタが、これら電極10とチャネル22とによりキャパシタが分布定数的に形成されるため、図1に示した第1実施例のLC素子100と同様に良好な減衰特性を有することになる。
【0098】
図12は、本実施例のLC素子200の等価回路を示す図である。同図に示すように、電極10の凹凸数が少なくなった分だけインダクタンスL3も小さくなり、これに対応して分布定数的に存在するキャパシタンスC1も小さくなる。
【0099】
また、アース電極16に印加するゲート電圧を変えることにより、より具体的にはアース電極16と入出力電極18,20との相対的電位差を変えることにより、電極10に対応して形成されるチャネル22の抵抗値も変化し、LC素子200の減衰特性を可変に制御できる点は上述した第1実施例のLC素子100と同様である。
【0100】
このように、本実施例のLC素子200は、電極10とこれに対応して形成されるチャネル22とによりインダクタとキャパシタが分布定数的に形成され、良好な減衰特性をもった素子として機能することになる。
【0101】
また、LC素子200を半導体製造技術を利用して製造できる点や、LSI等の一部として形成することができるとともに、この場合には後工程における配線処理を省略できる点、ゲート電圧を変えることにより減衰特性を変更できる点等については上述した第1実施例のLC素子100と同じである。
【0102】
なお、本実施例のLC素子200は、チャネル22を信号の入出力路として用いたが、電極10を信号の入出力路として用い、チャネル22側を接地あるいは固定電位に接続するようにしてもよい。特にこの場合は、図1に示した電極10の一部に対応するようにチャネル22を形成する必要があり、例えば同図のチャネル22の一部に対応する位置にp型不純物を多量に注入しておいて、チャネル22が部分的に形成された際にもこのp型不純物を多量に注入した部分でチャネル22が分断されるように、あるいはp型不純物を多量に注入した部分(図10におけるチャネル22の右側半分に相当する部分)ではチャネル22が全く形成されないようにする必要がある。
【0103】
第3実施例
次に、本発明の第3実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0104】
上述した第1実施例のLC素子100および第2実施例のLC素子200は、3端子のノーマルモード型素子として機能するものであるが、本実施例のLC素子300は、4端子のコモンモード型素子として機能するよう形成されている点に特徴がある。
【0105】
図13は、第2実施例のLC素子の平面図である。同図に示すように、第3実施例のLC素子300は、蛇行形状の電極10の両端に入出力電極36,38が接続されており、この点が図1に示したLC素子100と異なっている。
【0106】
図14は、第3実施例のLC素子の等価回路を示す図である。同図に示すように、2つの入出力電極18,20の間にソース12およびドレイン14を介して形成されたチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、2つの入出力電極36,38間に形成された電極10がインダクタンスL2を有するインダクタとして機能する。しかも、これらチャネル22と電極10とがそれぞれ信号の入出力路として使用されるとともに、これらの間には第1実施例のLC素子100と同様にキャパシタンスCを有するキャパシタが分布定数的に形成される。
【0107】
このように、本実施例のLC素子300は、電極10に対応して形成されるチャネル22のみならずこの電極10の両端にも2つの入出力電極36,38を設けることにより、良好な減衰特性をもった4端子コモンモード型素子として機能することができる。また、入出力電極18,20と入出力電極36,38との相対的電位差を変えることにより、チャネル22の抵抗値を変えることができ、LC素子300の減衰特性をある範囲で可変に制御することができる。
【0108】
また、このLC素子300をMOS製造技術を利用して製造することができる点、LSI等の一部として形成することができるとともにこの場合には後工程における配線処理を省略することができる点等については上述した第1実施例のLC素子100等と同じである。
【0109】
第4実施例
次に、本発明の第4実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0110】
上述した各実施例のLC素子100,200,300のそれぞれは、蛇行形状の電極10を1本の導体で形成していたが、本実施例のLC素子400はこの電極10を複数の(例えば3本の)分割電極片10−1,10−2,10−3に分割した点に特徴がある。
【0111】
図15は、第4実施例のLC素子の平面図である。同図に示すように、第4実施例のLC素子400は、図1に示したLC素子100に用いられている蛇行形状の電極10を3本の分割電極片10−1,10−2,10−3に置き換えた構造を有している。全体として蛇行形状を有するこれらの分割電極片10−1〜10−3のそれぞれにはアース電極16が接続されており、3つのアース電極16を接地することにより、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれによって形成されるインダクタの一部が接地される。あるいは3つのアース電極16を固定電位の電源に接続することにより、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれによって形成されるインダクタの一部がこの固定電位となる。
【0112】
なお、電極10を3分割してあるので各分割電極片間には隙間ができることになり、このままではチャネル22が分断されるおそれがある。そのため、本実施例では、この各分割電極片間の隙間部分に対応するp−Si基板30の表面にn型不純物を注入した2つの拡散領域13,15が設けられており、これらの拡散領域13,15の存在により、3つの分割電極片10−1〜10−3の全長にわたって平行に1本の長いチャネル22が形成されるようになっている。
【0113】
図16は、第4実施例の型LC素子400の等価回路を示す図である。同図に示すように、3本の分割電極片10−1〜10−3に対応して形成されるチャネル22の全体がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、各分割電極片10−1〜10−3のそれぞれがインダクタンスL3,L4,L5を有するインダクタとして機能する。そして、チャネル22と各分割電極片10−1〜10−3とがキャパシタンスC2,C3,C4を有するキャパシタとして機能し、しかもこれらのキャパシタが分布定数的に形成される。
【0114】
本実施例のLC素子400は、各分割電極片10−1,10−2,10−3の自己インダクタンスL3,L4,L5が小さくなる。したがって、これらの自己インダクタンスによるLC素子400全体の特性への影響は小さくなり、チャネル22が有するインダクタンスL1と分布定数的に形成されるキャパシタンスC2,C3,C4とによってLC素子400全体の特性がほぼ決定されることになる。
【0115】
また、アース電極16と入出力電極18,20との相対的電位差を変えることによりLC素子400全体の特性を可変に制御できる点は上述した各実施例と同様である。
【0116】
なお、図15に平面構造を示した本実施例のLC素子400は、チャネル22を信号の入出力路として用いるとともに蛇行形状の電極10を3分割したが、これとは反対に蛇行形状の電極10側を複数に分割するようにしてもよい。この場合には、電極10に電圧が印加された状態でチャネル22側を電気的に複数に分割する必要があるため、蛇行形状を有するチャネル22の一部に予めp型不純物を多量に注入しておいて、電極10に電圧が印加されてもチャネル22が部分的に分断されるようにすればよい。
【0117】
第5実施例
次に、本発明の第5実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0118】
上述した各実施例のLC素子100等は、蛇行形状の電極10あるいは複数の分割電極片10−1〜10−3を有していたが、本実施例のLC素子500は、これらの電極10等を削除するとともに、p−Si基板30の表面に蛇行形状となるようにキャリアを注入することによりチャネルを形成した点に特徴がある。
【0119】
図17は、第5実施例のLC素子500の平面図である。同図に示すように、本実施例のLC素子500は、p−Si基板30の表面付近の隔たった位置に形成されたソース12とドレイン14の間に蛇行形状にキャリア(n型不純物)を注入してチャネル22を形成している。
【0120】
このキャリアの注入は、例えばp−Si基板30の表面(蛇行形状の部分)にイオン打ち込み法によってAs+イオンを打ち込むことにより行われる。従って、本実施例のLC素子500においては、ゲートとして機能する電極10がないにもかかわらずチャネル22が形成されており、このチャネル22がインダクタとして機能する。また、このチャネル22はある有限の大きさを有してp−Si基板30上に形成されているため浮遊容量を有している。
【0121】
図18は、第5実施例のLC素子500の等価回路を示す図である。同図に示すように、予めキャリアを注入して形成されたチャネル22がインダクタンスL1を有するインダクタとして機能するとともに、このインダクタが有する浮遊容量C5が分布定数的に形成されている。
【0122】
このように、本実施例のLC素子500は、インダクタンスL1と浮遊容量C5とが分布定数的に存在するため、原理的には上述した各実施例の型LC素子100等と同様の特性を有しており、良好な減衰特性を持った素子として機能することができる。
【0123】
また、このLC素子500は、p−Si基板30上にイオン打ち込み法等によりキャリアを注入することにより製造することができ、これは上述した第4実施例までの各実施例と同様にMOSの製造技術を利用して製造することができる。しかも、本実施例のLC素子500はLSI等の一部として形成することができるとともにこの場合には後工程における配線を省略することができる点等については上述した第1実施例等と同じである。
【0124】
第6実施例
次に、本発明の第6実施例のLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0125】
一般に、導電体は渦巻き形状とすることにより所定のインダクタンスを有するインダクタ導体として機能する。また、上述したように電極10やチャネル22を蛇行形状とした場合であっても所定のインダクタンスを有するインダクタ導体として機能する。ところが、入力される信号の周波数帯域を高周波に限った場合には、渦巻き形状や蛇行形状以外の形状、極端な場合には直線形状であってもインダクタンス成分を有するインダクタ導体として機能する。本実施例のLC素子は、このような点に着目して、電極10等を蛇行形状以外の形状に形成した点に特徴がある。
【0126】
図19〜21のそれぞれは、ゲートとして機能する電極10およびそれに対応して形成されるチャネル22のそれぞれを直線形状とした本実施例のLC素子の平面図である。
【0127】
図19(A)は上述した図1に対応しており、ゲートとして機能する電極10の全長にわたってチャネル22が形成された3端子型のLC素子が示されている。同図に示したLC素子は、エンハンスメント型あるいはデプレション型のいずれであってもよい。
【0128】
また、同図(B)は図11に対応しており、チャネル22の一部に対向するように電極10が設けられており、電極10に対向しないチャネル22の他の部分には予めキャリアが注入されている。あるいはチャネル22の全長にわたって予めキャリアを注入したデプレション型としてもよい。
【0129】
また、図20(A)は図13に対応しており、直線形状の電極10の両端に入出力電極36,38を形成してコモンモード型とした場合が示されている。図20(B)は図15に対応しており、分割された3本の分割電極片10−1,10−2,10−3が設けられた場合が示されている。
【0130】
また、図21は図17に対応しており、ゲートとして機能する電極10を削除するとともに浮遊容量を利用してLC素子を構成した場合が示されている。
【0131】
図22は、電極10とチャネル22を曲線形状あるいは波形形状とした場合のLC素子の平面図である。同図(A)は曲率半径の大きな曲線形状の場合が示されている。ソース12とドレイン14とを直線で結んだ位置に他の部品等を配置しなければならない場合には同図(A)に示すように電極10およびチャネル22を曲線形状とすればよい。
【0132】
同図(B)は波形形状の場合が示されている。このLC素子は、図1等に示した蛇行形状ほどではないが、電極10等を直線形状あるいは曲率半径の大きな曲線形状とした場合に比べると大きなインダクタ成分を有することになる。
【0133】
図23は、電極10とチャネル22を1周に満たない周回形状とした場合のLC素子の平面図であり、図24は電極10とチャネル22を1周に満たない周回形状とするとともにその端部に若干の折り返し部分を設けたLC素子の平面図である。これらの図に示すように、電極10およびチャネル22をほぼ周回形状に形成することにより、小さなインダクタンスを有するLC素子を形成することができる。また、図24に示すように、電極10およびチャネル22の一方端(あるいは両端でもよい)を部分的に折り返すことにより電極10等が発生する磁束を部分的に打ち消してインダクタンスを減らし、LC素子全体のインダクタンス、すなわち周波数特性を調整することができる。
【0134】
なお、上述した図22〜図24のそれぞれは、説明を簡単にするために、図19(A)に対応するLC素子のみが示されているが、図19(B),図20(A),(B),図21のそれぞれに対応するタイプについても同様に考えることができる。
【0135】
このように、図19〜図24に示したLC素子は、電極10等を蛇行形状以外の形状としたものであり、上述した第1実施例〜第5実施例と同様に、良好な減衰特性をもったノイズフィルタとして機能することができる。また、電極10を有するものについては、入出力電極18,20に対する電極10の相対的電位を変えることによりチャネル22の抵抗値も変わり、LC素子全体の特性を可変に制御することができる点も、上述した各実施例と同じである。
【0136】
このように、高周波帯域の信号に限った場合には、電極10とチャネル22(あるいはチャネル22のみ)を渦巻き形状以外の任意形状とすることができることから、半導体基板上の空き領域を有効に使ってLC素子を形成することができる。
【0137】
その他の実施例
次に、本発明のその他の実施例に係るLC素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0138】
図25は、化学液相法を用いて端子付けを行う場合の概略を示す図であり、図8と同じ位置の断面構造が示されている。
【0139】
このような断面構造を有する半導体基板を1個のLC素子ごとに切り離した後に、個別に切り離されたチップ(素子)の全表面に化学液相法により絶縁膜としてシリコン酸化膜40を形成する。その後、エッチングにより電極10あるいは入出力電極18,20上のシリコン酸化膜40を除去して孔をあけ、その孔を半田42で表面に盛り上がる程度に封じることにより、突出した半田42をプリント配線基板のランドと直接接触させることができる。したがって、表面実装する場合には好都合となる。
【0140】
なお、素子表面の保護膜に合成樹脂等の他の絶縁材料を使用してもよく、保護膜の穿孔にレーザ光線を利用してもよい。また、図25に示した例では半田42の鉛直方向の高さに違いが生じるため、例えば電極10の一方端に設けられたアース電極16の端面を入出力電極18,20の端面と同じ高さにするとともに、これらの各端面上に上述した半田42を盛るようにしてもよい。この場合には、突出した半田42の高さもほぼ同一となるため、表面実装に際してさらに好都合である。
【0141】
図26は、上述した各実施例のLC素子を実際のLSI等の一部として形成する場合の説明図である。同図に示すように、半導体チップ44上の各種信号あるいは電源のライン46に上述した各実施例のLC素子100等を挿入する形で組み込む。特に、上述した各実施例のLC素子は、半導体チップ44上に各種回路を形成する工程において同時に製造することができるため、後工程における配線処理等が不要になるといった利点がある。
【0142】
次に、上述した各実施例のLC素子を実際の回路の一部として使用する場合の一例について説明する。なお、以下に説明する各図面においては、第1実施例のLC素子100を用いた各種回路を示してあるが、同様に第2実施例以下の各実施例のLC素子を用いる場合であってもよい。
【0143】
一般に、上述した各実施例のLC素子においてインダクタを形成するチャネル22は高抵抗を有し、しかもこのチャネル22の全長が長いため、2つの入出力電極18,20間で信号レベルの減衰が生じる。そのため、実際に各実施例のLC素子を回路の一部として使用する場合には、出力側に高入力インピーダンスのバッファを接続することにより実用的な構成となる。
【0144】
図27は、出力側にバッファを接続した例を示す図である。同図(A)は、バッファとしてMOS−FETと抵抗からなるソースホロワ回路50を用いた場合を示している。このソースホロワ回路50を構成するMOS−FETは上述した各実施例のLC素子と同じMOS構造を有しているため、このソースホロワ回路50を含めた全体をLC素子として一体的に形成することができる。
【0145】
また、同図(B)は、バッファとして2つのバイポーラトランジスタと抵抗からなるエミッタホロワ回路52を用いた場合を示している。各実施例のLC素子とバイポーラトランジスタでは構造は若干異なるものの同一の半導体基板上に形成することが可能であるため、このエミッタホロワ回路52を含めた全体をLC素子として一体的に形成することができる。
【0146】
このように出力側にバッファを設けることにより、LC素子100等のインダクタ部分(チャネル22)によって減衰した信号レベルが増幅によって復元されて、SN比が良好な出力信号を得ることが可能になる。
【0147】
図28は、出力側にレベル変換回路を接続した例を示す図である。同図(A)は、レベル変換回路として2つのエミッタホロワ回路54,56を直列に接続した場合を示している。同図(B)は、レベル変換回路として2つのソースホロワ回路58,60を直列に接続した場合を示している。
【0148】
このように、出力側にレベル変換回路を接続することにより、LC素子100等のインダクタ部分によって減衰した信号レベルが増幅されるとともに、所定のレベル変換あるいはレベル補正を容易に行うことができる。
【0149】
なお、これらのレベル変換回路をLC素子と同一の基板に一体的に形成することができる点は、上述したバッファの場合と同じである。
【0150】
図29は、上述した各実施例のLC素子に入力保護回路を追加した場合の構成の一例を示す図である。MOS構造を有する各実施例のLC素子は、電極10の一方端に設けられたアース電極16等に静電気によって発生する高電圧が印加されると、電極10とp−Si基板30との間に介在する絶縁層26が破壊される。したがって、この静電気による絶縁層26の破壊を防止するために保護回路が必要となる。
【0151】
同図に示す保護回路は、ともに複数のダイオードと抵抗とにより構成されており、電極10に高電圧が印加されると、動作電源ライン側あるいは筐体アース側に電流がバイパスされるようになっている。特に同図(A)の回路では数100V、同図(B)の回路では1000〜2000Vの静電耐量があり、使用環境等に応じて使用する保護回路を適宜選択することができる。
【0152】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0153】
例えば、上述した各実施例においては、LC素子100等をLSI等の一部として形成できる点を効果としてあげたが、必ずしもLSI等の一部として形成する必要はなく、半導体基板上にLC素子100等を形成した後にアース電極16及び入出力電極18,20のそれぞれに端子付けを行って、あるいは図25に示したような化学液相法を利用して端子付けを行って、単体の素子として形成するようにしてもよい。この場合には、同一の半導体基板上に複数個のLC素子100を同時に形成し、その後半導体基板を切り離して各LC素子に端子付けを行うようにすれば、容易に大量生産が可能となる。
【0154】
また、上述した各実施例においては、電極10の一方の端部にアース電極16を設けるようにしたが、必ずしも最端部に設ける必要はなく、周波数特性を検討した後に必要に応じてその取り付け位置をずらすようにしてもよい。
【0155】
また、上述した第1実施例〜第5実施例の各LC素子は、電極10の両端近傍であって隔たった位置にソース12およびドレイン14を配置するようにしたが、電極10の形状を工夫してソース12とドレイン14とを接近した位置に配置するようにしてもよい。
【0156】
例えば図30に示すように、ソース12とドレイン14とを隣接するように配置するとともに、図1に示したLC素子100の電極10の一方端をドレイン14に達するまで延長する。あるいは、図31に示すように、ソース12とドレイン14とを隣接するように配置するとともに、図1に示したLC素子100の電極10を蛇行形状を維持したまま折り返す。
【0157】
このように、電極10の形状を工夫することにより、ソース12とドレイン14の位置が接近し、アース電極16および入出力電極18,20をほぼ同一位置に形成することができる。したがって、端子付けに際しての配線を容易に行うことができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0158】
また、上述した各実施例のLC素子は、p−Si基板30を利用して形成したが、同様にn型半導体基板(n−Si基板)を利用して形成するようにしてもよい。また、半導体基板はゲルマニウム等のシリコン以外の材料、あるいは非晶質材料であるアモルファスシリコン等を用いるようにしてもよい。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1実施例のLC素子の平面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線拡大断面図である。
【図4】蛇行形状のインダクタの原理を示す図である。
【図5】チャネルが形成される状態を示す図である。
【図6】第1実施例のLC素子の断面構造を示す図である。
【図7】第1実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図8】チャネルの抵抗値を説明するための図である。
【図9】第1実施例のLC素子の製造工程を示す図である。
【図10】第1実施例のLC素子の変形例を示す図である。
【図11】第2実施例のLC素子の平面図である。
【図12】第2実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図13】第3実施例のLC素子の平面図である。
【図14】第3実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図15】第4実施例のLC素子の平面図である。
【図16】第4実施例のLC素子の等価回路を示す図である。
【図17】第5実施例のLC素子の平面図である。
【図18】第5実施例のLC素子の平面図である。
【図19】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図20】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図21】電極を直線形状としたLC素子の平面図である。
【図22】電極を曲線形状あるいは波形形状としたLC素子の平面図である。
【図23】電極を1周未満の周回形状としたLC素子の平面図である。
【図24】電極を1周未満の周回形状としたLC素子の平面図である。
【図25】化学液相法を用いて端子付けを行う場合の概略を示す図である。
【図26】各実施例のLC素子をLSI等の一部として形成する場合の説明図である。
【図27】各実施例のLC素子の出力側にバッファを接続した例を示す図である。
【図28】各実施例のLC素子の出力側にレベル変換回路を接続した例を示す図である。
【図29】各実施例のLC素子の入力側に保護回路を接続した例を示す図である。
【図30】電極の形状を工夫した変形例を示す図である。
【図31】電極の形状を工夫した変形例を示す図である。
【符号の説明】
10 電極
12 ソース
14 ドレイン
16 アース電極
18,20 入出力電極
22 チャネル
26 絶縁層
30 p型シリコン(p−Si)基板
Claims (13)
- 半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの両端に形成されたソースおよびドレインと、
を備え、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、少なくとも前記チャネルを信号入出力路として用いることを特徴とするLC素子。 - 半導体基板上に形成され、ゲートとして機能する非スパイラル形状の電極と、
前記非スパイラル形状の電極と前記半導体基板との間に形成された絶縁層と、
前記半導体基板内にあって、前記非スパイラル形状の電極に対応して形成されるチャネルの一方端に形成されたソースあるいはドレインと、
を備え、
前記非スパイラル形状の電極の形状は、蛇行形状、波形形状、曲線形状のいずれかとして形成され、
前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルのそれぞれによって形成されるインダクタと、これらの間に形成されるキャパシタとが分布定数的に存在し、前記非スパイラル形状の電極を信号入出力路として用いることを特徴とするLC素子。 - 請求項1において、
前記電極の形状は、蛇行形状、波形形状、曲線形状、直線形状のいずれかであることを特徴とするLC素子。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記半導体基板表面であって前記非スパイラル形状の電極に対応する位置に、予め不純物を注入することを特徴とするLC素子。 - 請求項1,3のいずれかにおいて、
前記非スパイラル形状の電極を複数に分割し、分割された複数の電極片のそれぞれの一部を電気的に接続することを特徴とするLC素子。 - 請求項1,3,5のいずれかにおいて、
前記チャネルの両端に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記非スパイラル形状の電極の一方端に電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とするLC素子。 - 請求項2において、
前記非スパイラル形状の電極の両端に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの一方端に形成された前記ソースあるいは前記ドレインに電気的に接続されたアース電極と、
を有し、前記第1および第2の入出力電極のいずれか一方から信号を入力し、他方から信号を出力するとともに、前記アース電極を固定電位の電源に接続あるいは接地することを特徴とするLC素子。 - 請求項1,7のいずれかにおいて、
前記非スパイラル形状の電極の両端に電気的に接続された第1および第2の入出力電極と、
前記チャネルの両端に形成された前記ソースおよび前記ドレインのそれぞれに電気的に接続された第3および第4の入出力電極と、
を有し、前記非スパイラル形状の電極とこれに対応して形成される前記チャネルとの両方を信号入出力路とするコモンモード型の素子として用いられることを特徴とするLC素子。 - 請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記非スパイラル形状の電極に対して印加するゲート電圧を可変に設定することにより、少なくとも前記チャネルの抵抗値を可変に制御することを特徴とするLC素子。 - 請求項1〜9のいずれかのLC素子を基板の一部として形成し、前記非スパイラル形状の電極およびこれに対応して形成されたチャネルの少なくとも一方を信号ラインあるいは電源ラインに挿入して一体成形したことを特徴とする半導体装置。
- 請求項1,3,5のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号を増幅するバッファを接続したことを特徴とする半導体装置。
- 請求項1,3,5のいずれかのLC素子の前記ソースおよび前記ドレインのいずれか一方に、前記チャネルを介して出力される信号の電圧レベルを変更するレベル変換回路を接続したことを特徴とする半導体装置。
- 請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記非スパイラル形状の電極に過電圧を動作電源ライン側あるいはアース側にバイパスさせる保護回路を設けたことを特徴とするLC素子。
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