JP3593516B2 - スピニングリールのロータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ、特に、リール本体の前部に回転自在に装着され、リール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるためのロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スピニングリールのロータは、リール本体に回転自在に装着された円筒部及び円筒部の後部に対向して一体で形成された第1及び第2ロータアームを有するロータ本体と、ロータアームの先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着された釣り糸案内用のベールアームとを備えている。円筒部の後部には、リング状の鍔部が形成されており、鍔部から両ロータアームが前方に延びている。第1ロータアームの内部には、糸開放姿勢に揺動したベールアームを糸巻取姿勢に戻すためのベール反転機構が設けられている。
【0003】
ベールアームは、第1ロータアームに揺動自在に設けられた第1ベール支持部材と、第2ロータアームの先端に揺動自在に設けられた第2ベール支持部材と、両ベール支持部材を連結するベールとを有している。第1ベール支持部材の先端には、釣り糸を案内するためのラインローラと、ラインローラを支持するための固定軸カバーとが装着されており、ベールの一端は固定軸カバーに、他端は第2ベール支持部材にそれぞれ固定されている。
【0004】
このような構成のロータでは、第1ロータアームにベール反転機構が設けられているため、第1ロータアーム側が第2ロータアーム側より重くなる。また、第1ベール支持部材にはラインローラなどが装着されているため、ベールアームの重心が第1ロータアーム側に片寄り、さらに第1ロータアーム側が重くなる。このため、ロータの回転バランスを考慮して第2ロータアームや円筒部に回転バランス補正用の重りを装着することがある。円筒部に重りを装着する場合、従来は、たとえば鉛製の重りを円筒部の鍔部に径方向外方に突出して設けたり、鍔部のロータアームの付け根に設けたりしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の重りを設けたロータでは、鍔部の外周に突出して重りを設けると、重りに釣り糸が引っ掛かり、糸絡みを生じるおそれがある。また、ロータアームの付け根に重りを設けると、重りを装着する分だけロータアームの付け根が薄くなり、最も力が作用するロータアームの付け根部分の比強度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、スピニングリールのロータにおいて、釣り糸が引っ掛かりにくくかつ比強度を維持して回転バランスを補正できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのロータは、リール本体の前部に回転自在に装着され、リール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるためのものであって、ロータ本体と、ベールアームとを備えている、ロータ本体は、リール本体の前部に回転自在に装着され後端部にリング状の鍔部を有しスプールの内周側に配置され得る円筒部と、鍔部から円筒部と間隔を隔てて前方に延びる第1及び第2ロータアームと、第1ロータアームから第2ロータアームにわたって鍔部から前後いずれかに突出して設けられた回転バランス補正用の重り部とを有している。ベールアームは、両ロータアームの先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着され、釣り糸をスプールに案内するものである。
【0008】
このスピニングリールのロータでは、ロータが回転すると、ベールアームに案内された釣り糸がスプールに巻き付けられる。この回転時に回転バランス補正用の重り部により回転バランスが補正された状態でスムーズに回転する。この重り部は、第1ロータアームから第2ロータアームにわたって鍔部から突出して設けられており、径方向外方には突出していないので、釣り糸が引っ掛かりにくくなり糸絡みも生じにくくなる。また、ロータアームの付け根以外に重り部を設けることができるので、ロータアームの比強度を高く維持することができる。さらに、両ロータアームにわたって重り部が形成されているので、バランサとして機能する突出した重り部に釣り糸が絡むのをより防止できる。
【0009】
発明2に係るスピニングリールのロータは、発明1に記載のロータにおいて、重り部は、鍔部の前面に設けられている。この場合には、重り部が鍔部の前面に突出して設けられているので、リール本体との干渉を防止でき、コンパクトなロータを実現できる。
【0010】
発明3に係るスピニングリールのロータは、発明1又は2に記載のロータにおいて、重り部は、鍔部と一体形成されている。この場合には、鍔部と重り部とが一体形成されているので、重り部を装着する手間を省ける。
【0011】
発明4に係るスピニングリールのロータは、発明1又は2に記載のロータにおいて、重り部は、鍔部に別体で装着されている。この場合には、重り部の別体であるので、ロータ本体より比重が大きいものを採用すればコンパクトな重り部を実現できる。
【0012】
発明5に係るスピニングリールのロータは、発明1から4のいずれかに記載のロータにおいて、第1ロータアームに設けられ、糸開放姿勢にあるベールアームをロータの糸巻取方向の回転に連動して糸巻取姿勢に戻すベール反転機構をさらに備える。この場合には、ベール反転機構によりさらに回転バランスが乱れても重り部により回転バランスを補正しやすい。
【0013】
発明6に係るスピニングリールのロータは、発明1から5のいずれかに記載のロータにおいて、両ロータアームの外側面及び鍔部の後面をカバーするロータカバーをさらに備える。この場合には、ロータカバーを設けロータ本体との隙間が小さくなっても重り部を設けることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールは、ロータを制動するレバーブレーキ式のスピニングリールであり、ハンドル1を有し釣竿に装着されるリール本体2と、リール本体2の前方に配置されたロータ3と、ロータ3の前方に配置されたスプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2に回転自在に装着されている。スプール4は、リール本体2に前後移動自在に装着されている。
【0015】
リール本体2は、たとえはアルミニウム合金製であり、リールボディ2aと、リールボディ2aの図1上方に延びる概ねT状の竿装着部2bとを有している。リールボディ2aの内部には、図2に示すように、ハンドル1の回転をロータ3に伝達するための回転伝達機構5と、ハンドル1のロータ3の回転に同期してスプール4を前後移動させるためのオシレーティング機構6と、ロータ3の糸繰り出し方向の回転を制動するロータ制動機構7とが設けられている。リールボディ2aの後端下部は、オシレーティング機構6を収納するために後方に突出する突出部となっている。この突出部には、傷つきを防止するためにプレス成形された、たとえばステンレス合金製等の硬質金属製のカバープレート10が装着されている。カバープレート10とリールボディ2aとの間にはリール本体2殿間の隙間を埋めるために合成樹脂製の絶縁部材(図示せず)が介装されている。
【0016】
ロータ3は、図2及び図3に示すように、リール本体2に回転自在に装着されたロータ本体15と、ロータ本体の先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着されたベールアーム16と、ロータ本体15の後部外側面に着脱自在に装着されたロータカバー17とを有している。
【0017】
ロータ本体15は、たとえばマグネシウム合金製又はアルミニウム合金製のものであり、図3に示すように、円筒部20と、円筒部20と一体形成された1対の第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22とを有している。円筒部20は、リール本体2に回転自在に装着され、後端部に他の部分より大径のリング状の鍔部20aを有している。鍔部20aの糸巻取姿勢にあるベールアーム16が配置される側には、前方に突出する重り部20bが鍔部20aと一体で形成されている。重り部20bは、ベールアーム16や後述するベール反転機構等に起因する回転バランスを補正するために設けられている。重り部20bは、図4にハッチングで示すように、第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22の付け根(後述する接続部21a,22a)を除く部分に周方向に向けて形成されている。このように配置された重り部20bは、径方向外方には突出していないので、釣り糸が引っ掛かりにくくなり糸絡みも生じにくくなる。また、ロータアーム21,22の接続部21a,22a(付け根)ではない場所に設けたので、接続部21a,22aの肉厚を薄くする必要がなくなり、第1ロータアーム及び第2ロータアーム21,22の比強度を高く維持することができる。また、前方に突出して設けているので、リール本体2との干渉を防止でき、コンパクトなロータ3を実現できる。
【0018】
第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22は鍔部20aの外周面の対向する位置に一体形成されている。第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22は、鍔部20aの外周面の対向する位置で鍔部20aから径方向外方に延びる1対の第1接続部21a及び第2接続部22aと、1対の第1接続部21a及び第2接続部22aから屈曲し円筒部20と間隔を隔ててそれぞれ前方に延びる1対の第1アーム部21b及び第2アーム部22bとを含んでいる。第1接続部21a及び第2接続部22aは、鍔部20aの外周面から先細りに径方向外方に突出した後、湾曲して第1アーム部21b及び第2アーム部22bに連続している。これらの第1接続部21a及び第2接続部22aと第1アーム部21b及び第2アーム部22bとの外側面には外側に突出する縁取りがなされており、縁取り部分で囲まれた外側部分に空間が形成されている。そして、第1ロータアーム21側の外側空間には、ベールアーム16を糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに保持するとともに、糸開放姿勢から糸巻取姿勢に復帰させるベール反転機構30(図3参照)が設けられている。
【0019】
ベールアーム16は釣り糸をスプール4に案内するためのものである。ベールアーム16は、図1〜図3に示すように、1対の第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22の先端にそれぞれ揺動自在に装着された第1ベール支持部材25及び第2ベール支持部材26と、第1ベール支持部材25の先端に回転自在に装着されたラインローラ27と、第1ベール支持部材25とラインローラ27を挟んで対向して配置された固定軸カバー28と、第2ベール支持部材26と固定軸カバー28とを連結する線材製の湾曲したベール29とを有している。
【0020】
ロータカバー17は、1対の第1ロータアーム21及び第2ロータアーム22の外側空間を覆うように後方(図2右側)からロータ本体15に装着可能なカバーである。ロータカバー17は、端部をロータ本体15の端端部に突き合わせた状態でロータ本体15に装着されている。ロータカバー17は、たとえば、PVC等の弾性を有する合成樹脂製の部材であり、傷つきにくくなっている。ロータカバー17は、ロータ3の他のものに接触しやすい部分を覆ってロータ3を保護して傷つきにくくするとともに、ロータ本体15の外側空間を覆うために設けられている。ロータカバー17は、図2及び図3に示すように、鍔部20aの外周面及びその後面及び1対の第1接続部21a及び第2接続部22aの外側面をカバーする第1カバー部17aと、第1カバー部17aの両端に滑らかに接続され前方に延びて1対の第1アーム部21b及び第2アーム部22bの外側面をそれぞれカバーする1対の第2カバー部17b、17cとの3つの部分に分割されている。第1カバー部17aの中心には、円筒部20の後端面に嵌め込まれる円形の開口17dが形成されている。第1カバー部17aは、鍔部20aの後面にはめ込み固定されている。第2カバー部17b,17cは、第1アーム部21b及び第2アーム部にそれぞれ形成されたボス部31a(第1アーム部21b側のみ図示)が形成されており、ボス部31aに挿入された小ねじ32a、32bによりロータ本体15に締結されている。
【0021】
ベール反転機構30は、図3に示すように、第1ベール支持部材25の揺動に連動して前後に移動する移動部材50と、第1ベール支持部材25を介してベールアームを糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに付勢するトグルばね機構51と、リール本体2の前部に固定された戻し部(図示せず)とを有している。ベール反転機構30は、ベールアーム16が糸開放姿勢に揺動すると、移動部材50が後方に移動し、戻し部に接触する位置に移動する。これにより、ロータ3が糸巻取方向に回転すると戻し部に移動部材50が接触して前方に移動し、ベールアーム16を糸巻取姿勢に戻す。
【0022】
スプール4は、外周に釣り糸が巻き付けられる鍔付き円筒状の部材である。スプール4は、ロータ3の回転に同期して前後移動し、ベールアーム16により案内された釣り糸を外周面に略均一に巻き取る。スプール4は、リール本体2に前後移動自在に装着されたスプール軸15に回転不能かつ着脱自在に装着されている。スプール4は、スプール軸15に装着される糸巻胴部4aと、糸巻胴部4aと一体形成されたスカート部4bと、糸巻胴部4aの前方に設けられたフランジ部4cとを有している。ロータ3の円筒部20は、スカート部4bの内方に位置している。
【0023】
ロータ制動機構7は、図2に示すように、ロータ3の糸巻取方向の回転に連動して回転する制動円筒60と、制動円筒60に接触してロータ3の制動操作を行うための制動レバー61と、制動円筒60を所定制動状態で制動するとともに制動解除するための補助レバー62とを有している。ロータ制動機構7は、制動レバー61を釣り竿接近する方向に操作すると制動力が徐々に強くなる。また、補助レバー62を釣り竿から離反する方向に操作すると、補助レバー62はその位置で保持され、所定制動状態でロータ3を制動し続ける。
【0024】
このように構成されたスピニングリールでは、ロータカバー17が第1接続部21a及び第2接続部22aの屈曲部分だけでなく、円筒部20の鍔部20aの外側面もカバーしているので、リールを硬いものの上に置いても、ロータ3の外側露出部分がカバーされて傷つきにくくなる。
【0025】
また、ロータ3の鍔部20aに前方に突出した回転バランス補正用の重り部20bを一体形成したので、重り部20bを装着する手間を省くことができるとともに、釣り糸が引っ掛かりにくくなり糸絡みも生じにくくなる。また、ロータアーム21,22の付け根以外に重り部20bを設けているので、ロータアーム21,22の比強度を高く維持することができる。特に後面側にロータ3の傷付きを防止するためにロータカバー17を設けた場合、後面側に重り部を設ける空間を確保しにくくなる。このような場合でも、鍔部20aの前方に重り部20bを設けることにより回転バランスの補正を行える。
【0026】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、ロータを制動するレバーブレーキ式のスピニングリールを例に説明したが、フロントドラグ式やリアドラグ式のスプールを制動するスピニングリールにも本発明を適用できる。
【0027】
(b)前記実施形態では、重り部20bを鍔部に一体形成したが、図5に示すように重り部120bを鍔部20aと別体で形成してもよい。
【0028】
(c)前記実施形態では、ロータカバー17を有するロータ3を例に説明したが、ロータカバー17、特にロータ背面側のロータカバーを有さないロータにも本発明を適用できる。
【0029】
(d)前記実施形態では、重り部20bを第1ロータアーム21と第2ロータアーム22との付け根を除く部分でベールアーム16が配置される側に設けたが、図6にハッチングで示すように、第1ロータアーム21の付け根(接続部21a)と第2ロータアーム22の付け根(接続部22a)とを含んで第1ロータアーム21から第2ロータアーム22にわたって重り部220bを形成してもよい。この場合には、バランサそのもの又はバランサとして機能する突出した重り部220bに釣り糸が絡むのをより防止できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、重り部が鍔部に前後のいずれかに突出して設けられており、径方向外方には突出していないので、釣り糸が引っ掛かりにくくなり糸絡みも生じにくくなる。また、ロータアームの付け根以外に重り部を設けることができるので、ロータアームの比強度を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図2】その側面断面図。
【図3】ロータの分解斜視図。
【図4】ロータ本体の正面図。
【図5】他の実施形態の図3に相当する図。
【図6】他の実施形態の図4に相当する図。
【符号の説明】
2 リール本体
3 ロータ
4 スプール
15 ロータ本体
16 ベールアーム
17 ロータカバー
20 円筒部
20a 鍔部
20b,120b,220b 重り部
21,22 第1及び第2ロータアーム
30 ベール反転機構
Claims (6)
- リール本体の前部に回転自在に装着され、前記リール本体に前後移動自在に装着されたスプールに釣り糸を巻き付けるためのスピニングリールのロータであって、
前記リール本体の前部に回転自在に装着され後端部にリング状の鍔部を有し前記スプールの内周側に配置され得る円筒部と、前記鍔部から前記円筒部と間隔を隔てて前方に延びる第1及び第2ロータアームと、前記第1ロータアームから前記第2ロータアームにわたって前記鍔部から前後いずれかに突出して設けられた回転バランス補正用の重り部とを有するロータ本体と、
前記両ロータアームの先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着され、釣り糸を前記スプールに案内するベールアームと、
を備えたスピニングリールのロータ。 - 前記重り部は、前記鍔部の前面に設けられている、請求項1に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記重り部は、前記鍔部と一体形成されている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記重り部は、前記鍔部に別体で装着されている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのロータ。
- 前記第1ロータアームに設けられ、前記糸開放姿勢にあるベールアームを前記ロータの糸巻取方向の回転に連動して前記糸巻取姿勢に戻すベール反転機構をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載のスピニングリールのロータ。
- 前記両ロータアームの外側面及び前記鍔部の後面をカバーするロータカバーをさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載のスピニングリールのロータ。
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