JP3591038B2 - 移動農機におけるブレーキ用アクチュエータの取付構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、移動農機におけるブレーキ用アクチュエータの取付構造に関するものであり、前記アクチュエータは、旋回内側の駆動輪を制動させて、機体を小さな旋回半径で短時間に自動旋回を行なおうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のものは、特開平2−175331号公報で示すように、ステアリングハンドルを廻してこれが所定角度以上に操作されると、前輪増速装置を作動しその余剰油で旋回内側の後輪ブレーキを制動して旋回するものや、特開平6−16149号公報で示すように、ステアリングハンドルを廻してこれが所定角度以上に操作されると、前輪を高速側に変速作動しながら旋回内側の後輪ブレーキを制動して旋回するもの等が公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のものは、後輪ブレーキ部に取り付けた油圧アクチュエータを作動する高圧油の切換弁とアクチュエータが、遠く離れておりさらにパイプ状の油圧配管や弾性配管等で接続されているので、アクチュエータの作動までに時間的な遅れや内圧上昇が安定しない欠点を有していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、従来装置のこのような不具合を解消しようとするものであって、次のような技術的手段を講じた。即ち、左右の駆動車輪1,1を夫れ夫れ独立して制動するブレーキ装置2,2と、これら左右のブレーキ装置2,2を夫れ夫れ独立して制動操作するブレーキペダル41,41を有する移動農機において、
前記ブレーキ装置2を覆うハウジング20の外部に、同ブレーキ装置2を作動させるアーム2aを前後揺動自在に支持する一方、
前記アーム2aを強制的に前後揺動させる油圧アクチュエータ3と同アクチュエータ3へ高圧油を送る切換弁6とを双方3,6に形成した剛体の油路同士を連結させた状態でケース部材48に一体的に構成し、同ケース48を、前記油圧アクチュエータ3のピストン先端部が前記アーム2aを接当して揺動可能な位置に設けたことを特徴とする動農機におけるブレーキ用アクチュエータの取付構造とする。
【0005】
【実施例】
図例は、農用トラクターである移動農機9であって、この移動農機9の後車輪である駆動車輪1,1部に、この発明の片ブレーキ装置を折り込んで旋回時に内輪側駆動車輪1を制動し旋回するものである。
機体の前方には操舵車輪7が設けられ、運転者がハンドル10を左または右に操舵するのをステアリング軸11途中に設けた回転式ポテンショメーター等の検出具8で、その回転の方向や角度や操作速度を検出しコントローラーであるCPU12に伝える。CPU12は、機体の座席13近傍に配設されている。
【0006】
前車輪である操舵車輪7,7間上方の前フレーム14部にはエンジン15が搭載されており、その上方をボンネット16で、前方をフロントグリル17で、側方をサイドカバー18,18で夫れ夫れ覆っている。19は計器盤部を上方に有したリヤーカバーであり、その後部に前述のハンドル10やステアリング軸11等を取り付けている。
【0007】
また、左右の駆動車輪1,1は、アクスルハウジング20,20から左右に夫れ夫れ突出している。エンジン15から駆動車輪1間は、クラッチハウジング21や前伝動ケース22や後伝動ケース23等から成る主フレームで連結されている。前述のアクスルハウジング20は、後伝動ケース23の側方壁面に取り付けられ、このアクスルハウジング20外側方に後述する要部の油圧アクチュエータ3がボルト24,24等の締付具で取り付けられる。
【0008】
後伝動ケース23の上方には油圧シリンダーケース25が取り付けられ、ケース内に内装された油圧シリンダー26内のピストン27の圧油による移動によりリフトアーム28が昇降移動する。29は二点リンクヒッチであって、ロータリ作業機31の取付アーム32部をヒッチ軸30に軸着し、この取付アーム32とリフトアーム28間をリフトロッド33で連結する。リフトアーム28の昇降移動により、ロータリ作業機31は上下動する。34はポジションレバーであって、ポジションレバー34の前後方向揺動に比例してリフトアーム28が上下するものであり、図例のものはポジションレバー34の下端に回転式のポテンショメーター36を取り付けて、レバーの揺動角度を検出しCPU12に伝える。そして、この揺動方向と角度の大小の検出により、油圧シリンダー26への高圧油圧回路37途中のソレノイドバルブ38を上げ,中立,下げのいずれかに変更し操作する。また、ポジションレバー34の最上昇部には上限スイッチ35が設けられ、このスイッチの作動を検出しCPUに伝える。安価型の移動農機9におけるポジションレバー34cを図6で示すが、安価型ではレバー下部のポテンショメーター36の代わりに機械式のリンク57を介して、高圧油圧回路37cに設けたスプール式の油路切換弁58のスプール58aを直接手動操作して、リフトアーム28を昇降制御するものとしている。図4で示す39は簡易昇降レバーであって、図例ではハンドル10下部に設けられ側方に突出したスイッチ的なレバーであるが、運転者の近傍であれば座席13やフェンダー40部に配設していてもよい。この簡易昇降レバー39は、レバー操作のスイッチONまたはOFF信号をCPU12に伝え、リフトアーム28を昇降操作するものでありポジションレバー34と同様の昇降制御の働きをするが、ポジションレバー34がそのレバー操作後のレバー角度位置と比例した位置にリフトアーム28を無段階位置に移動制御するのに対し、この簡易昇降レバー39は単に操作信号をCPU12に伝えて作業装置が下降している場合上まで上昇し、作業装置が上に上がっている場合下まで下降する指令を発して、リフトアーム28を上または下の二段階位置に昇降制御するものである。
【0009】
41はブレーキペタルであって、機体右下方のフロア42から上方に突設された二個のペタルであって、運転者が片方踏むと踏んだ方向の片側の駆動車輪1が制動され、両方のブレーキペタル41を踏むと両方の駆動車輪1,1が制動される。運転者操作用のペタルとしては、図示しないがこの他に主クラッチ操作用のクラッチペタルやエンジン15回転制御用のアクセルペタル等が、フロア42の前方に配設されている。
【0010】
56は主変速レバーである。前後の伝動ケース22,23内には、主変速や副変速等の変速装置43が設けられ、主変速レバー56や他の副変速レバー(図示せず。)等の変速操作により進行速度や前進後進等を調整し、デファレンシャル機構44に伝達する。このデファレンシャル機構44に伝達した駆動力は、デファレンシャル機構44部で左右に分割され、夫々左右の駆動車輪1,1に伝達される。このデファレンシャル機構44から突出する出力軸45,45の外方端部は前述したアクスルハウジング20で覆われており、軸外端側にブレーキ装置2が取り付けられている。46は出力ギヤであって、駆動車輪1を取り付ける車軸1a側への減速伝動歯車である。ブレーキ装置2はドラムブレーキでもディスクブレーキでも良く、アクスルハウジング20外部に設けたブレーキアーム2aを前後方向に揺動操作することにより制動と非制動を、前述したブレーキペタル41の足動による「人為操作」や、以下詳述する油圧機構利用の「自動制御」で行なえれば良い。
【0011】
前後の伝動ケース22,23側方に突設したアクスルハウジング20の蓋体47近傍外方には、制動ケース48がボルト24,24..で主フレーム側に一体的に取り付けられる。制動ケース48の上部には油圧アクチュエータ3が設けられ、ピストン3aが前後方向移動自在に内挿されている。この制動ケース48は、左右の駆動車輪1,1用として独立作動する一対が、アクスルハウジング20側方に夫々取り付けられている。ピストン3aの突出端は、ブレーキアーム2aを前後方向揺動可能な位置に突出しており、図例ではブレーキアーム2aの後面に接当状態に設けられている。制動ケース48の下部には電気式のソレノイドである切換弁6が取り付けられており、電気指令により油圧回路4内の高圧油を、タンク5側またはピストン3a背部のシリンダー室3b側に切り替える二室切換弁としている。
【0012】
49は減圧弁であって、タンク5内の油を油圧ポンプ50で例えば1平方センチ当たり25Kgの圧力に加圧し、減圧弁49の下流側の油圧回路4内の内圧を例えば22Kgに常に一定圧に保持するものである。51は圧力制御弁、52は安全弁である。53は逃げ孔であって、出力軸45の外端側の蓋体47に開口しており、制動ケース48からタンク5側に逃げる油が通過する際各部の適所(軸,湿式ディスクブレーキ,歯車等)を潤滑する。図例では、制動ケース48と油圧アクチュエータ3と切換弁6を一体としているが、この要部はパイプを使用せずに、剛体の油路同士を連結することを特徴とするものであるから、油路を突き合わせる状態であれば、ケース48自体は上下二分割したケースをボルト等で一体化しても良い。
【0013】
ブレーキペタル41とブレーキアーム2a間はロッド54で連動連結されており、ブレーキペタル41を踏むとブレーキアーム2aが矢印「イ」方向に移動し、ブレーキ装置2を制動操作し駆動車輪1を停止させる。また、ハンドル10を左または右に一定以上操舵すると、ステアリング軸11部の検出具8によりその操舵方向内輪側の駆動車輪1を制動するために、制動側の制動ケース48内のピストン3aを突出させ、ブレーキアーム2aを矢印「イ」方向に強制的に自動移動する。ブレーキアーム2aとロッド54間は、長孔55を介して連結されておりピストン3aの突出時にロッド54が動かない。ピストン3aの背部のシリンダー室3b内の圧油がタンク5側に逃げると、ブレーキ装置2またはロッド54部等に設けた図示しない戻し機構や戻しバネにより、ブレーキアーム2aは元の非制動位置に戻る。
【0014】
ここで、ブレーキペタル41の足動による「人為操作」での旋回の場合は運転者がペタルをふんでいるから、作業機の上昇操作を忘れて地中に残したまま旋回する誤操作や、旋回時に作業機が他物に接当する運転ミス等の、旋回姿勢の変更時に異状が発生した時は、運転者の足裏への反力と姿勢変化を比較し、異状の有無は容易にわかる。しかし、単にハンドル10の操舵に伴う、油圧機構利用の「自動制御」で旋回すると、移動農機9の反応がよくわからず素人では、作業機を壊す運転をする場合が発生する。このような場合は、ポジションレバー34の上限方向上げ操作時に感知する上限スイッチ35の検出があったときのみ、油圧アクチュエータ3を作動するようにプログラムを組んでおけば、このような失敗を少なくできる。図例では、上限スイッチ35をポジションレバー34の上昇操作で検出しているが、他にリフトアーム28の上昇角度や位置等を検出し規制しても良い。
【0015】
図5は、ポジションレバー34の別実施例であって、握り34a部に昇降スイッチ39aを設け、このスイッチの押圧操作をCPU12で検出し、この検出により作業装置が下降している場合上まで上昇し、作業装置が上に上がっている場合下まで下降する指令を発して、リフトアーム28を上または下の二段階位置に昇降制御する。このポジションレバー34bも第一図例のポジションレバー34と同じで、レバー操作後のレバー角度位置と比例した位置にリフトアーム28を無段階位置に移動制御するようにしている。
【0016】
また図6に示すように、主変速レバー56近傍にはバック位置検出スイッチ59が設けられ、主変速レバー56が後進側に変速操作されるとこのスイッチにより信号をCPU12に伝え、電動モーター60を回転し、スプール58aを作業機上昇側に作動する。以後、この機構を「バックアップ」機構と呼ぶ。
【0017】
このバックアップ機構を有する安価型の移動農機9における、ポジションレバー34cの別変更例を図6で説明する。ポジションレバー34cは、運転者の手動操作により、油路切換弁58内のスプール58aを上げまたは下げ方向に操作しリフトアーム28を昇降制御する。さらに、別の自動操作として、ポジションレバー34cの握り61部に電気スイッチである上げスイッチ62と下げスイッチ63を取り付ける。この上げスイッチ62と下げスイッチ63は、レバーの揺動操作の必要が無く単にスイッチを押すだけで、電動モーター60を回転駆動しスプール58aを上下切り替える。
【0018】
64はモード設定ダイヤルであって、図例ではハンドル10近傍の計器盤部に設けているが、座席13やフレーム40近傍に取り付けても良い。このモード設定ダイヤル64は旋回時の内輪ブレーキ機構の自動作動をON,OFFするスイッチであり、圃場内ではスイッチONしてハンドル10の操舵と連動して自動旋回を行なっており、圃場から道路上に出て路上を高速走行する際には安全上の理由からOFFとしており、ハンドル10を所定角度以上操舵しても旋回時にブレーキの自動作動はさせないようにしている。
【0019】
圃場内では操作容易化のため、手動操作するポジションレバー34を操作しなくても、スイッチ的な簡易昇降レバー39や昇降スイッチ39aや上げスイッチ62や下げスイッチ63等を軽く作動させて作業機の昇降を行なっている。このような機構は運転者の疲労軽減のためには必要であるが、路上走行中にスイッチに間違って触れると作業機が昇降し、道路上の歩行者や自動車等他に危険を及ぼす欠点があった。ここで、モード設定ダイヤル64を路上走行のためOFFとした時は、各種の、スイッチ的な簡易昇降レバー39や昇降スイッチ39aや上げスイッチ62や下げスイッチ63等による簡易昇降を規制し、ポジションレバー34による手動の揺動操作に伴う、比例した作業機昇降位置制御のみ働かせる。このようにすると、間違ってポジションレバー34に運転者の服の一部や身体の一部が接当して昇降動作したとしても、作業機が上限や地面まで一気に動く恐れが無くより安全性を向上できる。
【0020】
また、独立した左右のブレーキペタル41,41は、圃場内では運転者の足動による急旋回のために左右分離している必要があるが、道路上の走行時には片ブレーキを作動させると移動農機9の姿勢が変わり過ぎて危険なため、左右のブレーキペタル41,41を機械的に固定する固定具(図示せず。)を設けて危険防止としている。しかし、短距離の道路移動では両ペタルを踏めば良いとの安易な考えで固定具を使用せずに道路を走行して、道路側方の溝や川に転落する事故が繰り返されている。ここで、この発明の自動旋回機構である油圧アクチュエータ3作動部を、モード設定ダイヤル64を路上走行のためOFFとした時は、検出具8の操舵角度検出に関わらず、ブレーキペタル41の一方が踏まれたとき、両方の油圧アクチュエータ3,3に切換弁6,6を介して圧油を流し、左右の駆動車輪1,1を同時制動する。このようにすると、路上走行時の安全性がより向上できると共に、足に力の無い老人や婦女子でも移動農機9の停止動作を軽い力で行なえる。
【0021】
【発明の作用効果】
この発明は、説明したように、左右の駆動車輪1,1を夫れ夫れ独立して制動するブレーキ装置2,2と、これら左右のブレーキ装置2,2を夫れ夫れ独立して制動操作するブレーキペダル41,41を有する移動農機において、
前記ブレーキ装置2を覆うハウジング20の外部に、同ブレーキ装置2を作動させるアーム2aを前後揺動自在に支持する一方、
前記アーム2aを強制的に前後揺動させる油圧アクチュエータ3と同アクチュエータ3へ高圧油を送る切換弁6とを双方3,6に形成した剛体の油路同士を連結させた状態でケース部材48に一体的に構成し、同ケース48を、前記油圧アクチュエータ3のピストン先端部が前記アーム2aを接当して揺動可能な位置に設けたことを特徴とする動農機におけるブレーキ用アクチュエータの取付構造としたものであるから、油圧アクチュエータ3と切換弁6間では短い油路により瞬時に内輪側の油圧アクチュエータ3を作動することができ、前記アクチュエータ3の作動までの時間的な遅れや内圧上昇が不安定であるといった課題を解消することができ、安定した圧力が得られて安定した旋回を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】左駆動車輪側の、要部拡大側面図である。
【図2】図1の一部断面した、背面図である。
【図3】制御回路の、説明線図である。
【図4】全体側面図である。
【図5】別図例の、ポジションレバー斜視図である。
【図6】さらに別の、ポジションレバー廻りの、説明線図である。
【符号の説明】
1 駆動車輪
2 ブレーキ装置
3 油圧アクチュエータ
4 油圧回路
5 タンク
6 切換弁
7 操舵車輪
8 検出具
Claims (1)
- 左右の駆動車輪1,1を夫れ夫れ独立して制動するブレーキ装置2,2と、これら左右のブレーキ装置2,2を夫れ夫れ独立して制動操作するブレーキペダル41,41を有する移動農機において、
前記ブレーキ装置2を覆うハウジング20の外部に、同ブレーキ装置2を作動させるアーム2aを前後揺動自在に支持する一方、
前記アーム2aを強制的に前後揺動させる油圧アクチュエータ3と同アクチュエータ3へ高圧油を送る切換弁6とを双方3,6に形成した剛体の油路同士を連結させた状態でケース部材48に一体的に構成し、同ケース48を、前記油圧アクチュエータ3のピストン先端部が前記アーム2aを接当して揺動可能な位置に設けたことを特徴とする動農機におけるブレーキ用アクチュエータの取付構造。
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