JP3590185B2 - 菓子類用小麦粉組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は菓子類用小麦粉組成物、菓子類の製造方法および前記の菓子類用小麦粉組成物を用いるかまたは前記の製造法により得られる菓子類に関する。より詳細には、本発明は、菓子類を製造する際の機械耐性および作業性に優れていて、体積が大きく、沈みなどの変形がなく、しかもソフトで、外観、内相、食感に優れる菓子類を得ることのできる改質された菓子類の製造方法、そのような優れた菓子類を得るための菓子類用小麦粉組成物、および前記の菓子類用小麦粉組成物を用いるかまたは前記の製造法によって得られる菓子類に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポンジケーキなどのケーキ類では、焼成後にケーキの中央部が窪んだり収縮する、いわゆる“沈み”が発生して、外観の不良や食感の低下が生じ易い。そのような沈みの防止には、小麦粉の塩素処理が有効であることが知られていて古くから採用されてきたが、塩素処理は近年の安全志向および自然志向からみて望ましい方法ではなく、今日では世界的にも殆ど採用されていない。
【0003】
そこで、我が国では、スポンジケーキなどの沈み防止のために、塩素処理に代わる方法として、焼成直後にスポンジケーキ等に衝撃等を与える処理を行う、いわゆるショック法が広く採用されている(特公昭51−15103号公報)。このショック法は簡便であり、経済的でもあるが、生産ラインに組み込むには繁雑であり、またロールケーキなどの層の薄いケーキ類の場合にはその沈み防止効果などが充分に発揮されないという欠点がある。
【0004】
更には、菓子類用小麦粉を数カ月間の単位で長期間保存するとその熟成が進み、そのような熟成処理を施した小麦粉を使用した場合には、沈みのないケーキ類が得られることが知られている。しかしながら、そのような長期保存は、保管場所の問題や、カビや細菌類が繁殖したり虫害が生じないようにしながら長期に亙って品質管理を行う必要があるため、コストが極めて高くつくという欠点がある。
【0005】
そこで、上記した問題の改善を目的として、菓子用小麦粉を熱処理して熟成する方法が試みられている(特公昭57−14828号公報)。そして、熱処理を施した菓子用小麦粉は、吸水性が増加することにより種生地に小麦粉を合わせる段階で卵の気泡を潰して焼成後の沈みを防止できるが、一方で得られるケーキの体積が小さくなり、ふっくらとしたケーキが得られないという欠点がある。
【0006】
また、スポンジケーキなどにおける沈みを防止するために、上記した以外に、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤の添加(特公平6−61213号公報)、小麦粉のコーティング処理(特公平7−89825号公報)、馬鈴薯澱粉抽出物の添加(特公平1−8985号公報)、グルコノデルタラクトンと澱粉類の併用(特公昭57−27692号公報)、トランスグルタミナーゼの添加(特開平2−286031号公報)、小麦粉に酢酸、プロピオン酸またはエタノールを加えて加熱処理する方法(特公昭56−26371号公報)が提案されている。しかしながら、いずれも効果が低かったり、または効果が多少あってもコストが大幅に上昇するなどの問題があり、充分に満足のゆくものではない。
【0007】
さらに、熱処理小麦粉、卵白粉末、澱粉および膨張剤等を含有するマイクロ波調理用のケーキプレミックス(特開昭63−258529号公報)、卵白粉末、変性食品澱粉、小麦粉および膨張剤を含むスフレミックス(特開平5−292873号公報)なども知られている。しかし、いずれの場合も、体積が大きく、沈みなどの変形がなく、ソフトで、外観、内相、食感に優れる高品質の菓子類を得るという目的の達成には充分に満足のゆくものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特別の装置などを使用しなくても、また小麦粉の長期保存による熟成などを行わなくても、さらには高価な添加剤などを用いなくても、効率よく、低コストで、機械耐性および作業性に優れる生地を得ることができ、しかも体積が大きく、焼成後の沈みなどがなく、外観が良好で、内相、食感、風味などにも優れる高品質の菓子類を得ることのできる改質された菓子類用小麦粉組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、体積が大きく、焼成後の沈みなどがなく、外観が良好で、内相、食感、風味などにも優れる高品質の菓子類を良好な作業性で円滑に得ることのできる菓子類の製法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、小麦粉から主としてなる穀粉類100重量部に対して、膨剤を添加せずに、卵白粉末を0.1〜10重量部および糊化澱粉を0.1〜10重量部という特定の割合で添加し、しかも菓子類用に用いられている多種類の酸のうちから特にクエン酸を選択して、該穀粉類100重量部に対して0.01〜1重量の特定の割合で添加すると、それにより得られる菓子類用小麦粉組成物からは、機械耐性が良好で且つ作業性に優れた生地が形成され、しかも体積が大きく、焼成後の沈みがなく、その上、外観、内相、食感、風味などにも優れる、高品質の菓子類が得られることを見出した。また、本発明者らは、上記した菓子類用小麦粉組成物を前以て製造しておく代わりに、菓子類の製造時に、小麦粉から主としてなる穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で、同時にまたは逐次に添加し、且つ膨剤を添加せずに、常法にしたがってそのまま直接菓子類を製造した場合にも、体積が大きく、焼成後の沈みがなく、その上、外観、内相、食感、風味などにも優れる、高品質の菓子類を良好な作業性で円滑に製造できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、小麦粉から主としてなる穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で含有し、且つ膨剤を含有しないことを特徴とする菓子類用小麦粉組成物である。
そして、本発明は、小麦粉から主としてなる穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で添加し、且つ膨剤を添加しないで菓子類を製造する方法である。
さらに、本発明は、上記の製造法により得られる菓子類を包含する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下で本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる“小麦粉から主としてなる穀粉類”(以下これを「小麦粉等穀粉類」という)は、小麦粉単独であっても、または小麦粉と共に少量の他の穀粉類を併用したものであってもよい。
【0012】
小麦粉等穀粉類で用いる小麦粉としては、通常菓子類の用いられている小麦粉であればいずれでもよく、特に制限されず、例えば、アメリカ産ホワイトホイート、ソフトレッドウインターホイート、カナダ産ソフトホワイトスプリングホイート、国内産小麦などの小麦から得られる小麦粉や、それらの混合小麦粉を挙げることができる。
【0013】
また、小麦粉と共に少量の他の穀粉類を併用する場合は、他の穀粉類として、大麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、ポテトフラワー、未糊化澱粉類などを挙げることができ、これらの他の穀粉類は1種類のみを用いても、または2種以上を用いてもよい。他の穀粉類を用いる場合は、小麦粉等穀粉類の全重量に基づいて、30重量%以下であるのが好ましく、15重量%以下であるのがより好ましい。
【0014】
また、本発明で用いる卵白粉末としては、鳥類の卵から得られる卵白を粉末化したものであればいずれでもよく、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥などによる卵白粉末を挙げることができる。そのうちでも、鶏卵から得られる卵白の粉末がコスト面などから好ましい。また、卵白粉末は熱変性の少ない凍結乾燥または噴霧乾燥によって得られたものであることが好ましい。卵白粉末の純度は特に制限されないが卵白含有率が80重量%以上であるものを用いるのが上記した目的の達成のために好ましい。卵白粉末における卵黄の混入量が少ければ少ない程好ましく、多量の卵黄を含む粉末、例えば全卵粉末を用いると、体積が大きく、焼成後の沈みがなく、外観、内相、食感、風味などに優れる菓子類を得るのが困難になる。
【0015】
そして、本発明で用いる糊化澱粉は糊化された(α化した)澱粉であればいずれでもよく、熱処理またはアルカリ性物質による化学的処理などによって糊化したものが一般に好ましく用いられる。糊化澱粉の糊化の程度は特に制限されないが、その糊化度が20%以上であるものを用いるのが好ましく、50%以上のものがより好ましい。糊化度が20%以上の糊化澱粉を用いた場合には、体積が大きく、焼成後の沈みがなく、しかも外観、内相、食感、風味などにも優れる高品質の菓子類を一層円滑に得ることができる。なお、ここでいう澱粉の糊化度とは、下記の実施例に記載する方法で測定したときの値をいう。
【0016】
糊化澱粉の種類は特に制限されず、穀類、芋類、豆類などから得られる澱粉を糊化したものであればいずれであってもよく、具体例としては、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、キャッサバ澱粉、サゴ澱粉、葛澱粉などを糊化したものを挙げることができ、これらの糊化澱粉は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。そのうちでも、小麦澱粉やコーンスターチの糊化澱粉が焼成後の沈み防止効果の点から好ましく用いられる。
【0017】
そして、本発明の菓子類用小麦粉組成物では、上記した成分と共に、クエン酸を用いる。クエン酸としては、食品に従来から用いられているものであればいずれも使用でき、その調製法などは特に制限されず、例えばクエン酸発酵により得られたもの、果汁類から抽出したもののいずれもが使用できる。食品類に用いられる有機酸としては、クエン酸以外にも、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸などの多数の有機酸が知られているが、本発明はそのような多数の有機酸のうちからクエン酸を選択し、これを上記した卵白粉末および糊化澱粉との併用下に小麦粉等穀粉類に添加し、且つ膨剤を無添加とすることによって、菓子類製造時の作業性や二次加工性に優れ、しかも体積が大きく、焼成後の沈みがなく、しかも外観、内相、食感、風味などにも優れる高品質の菓子類を得ることのできる菓子類用小麦粉組成物の提供が可能になった。
【0018】
本発明の菓子類用小麦粉組成物は、小麦粉等穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で含有し、且つ膨剤を含有しないことが必要であり、小麦粉等穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を1〜7重量部、糊化澱粉を0.5〜5重量部およびクエン酸を0.05〜0.5重量部の割合で含有し且つ膨剤を含有しないことが好ましい。
【0019】
卵白粉末の含有割合が0.1重量部未満であると体積、沈み防止、内相、食感等の点で効果がなく、一方10重量部を超えるとスポンジケーキなどの菓子類においてその焼成後に沈みを生ずる。
また、糊化澱粉の含有割合が0.1重量部未満であると体積、沈み防止、内相、食感等の点で効果がなく、一方10重量部を超えると種生地の粘性が増加して焼成時にスポンジケーキなどの菓子類の膨張が不充分になって体積が小さくなり、しかも粘着性の強い団子状の不良な食感となる。
そして、クエン酸の含有割合が0.01重量部未満であると体積、沈み防止、内相、食感等の点で効果がなく、一方1重量部を超えると、スポンジケーキなどの菓子類の製造時に種生地の消泡が激しくなって、体積が小さくなり、しかも酸味の強い不良な食感となる。
【0020】
また、本発明の菓子類用小麦粉組成物は、スポンジケーキ、カステラ、クッキー類などの目的とする菓子類の種類に応じて、例えば、糖類、乳製品、油脂類、香辛料、チョコレート粉末、コーヒー粉末、食塩、粉砕ナッツ類、オレンジ、レモン、アーモンド、ラム酒などの他の原料の1種または2種以上を必要に応じて含有していてもよい。
【0021】
本発明の菓子類用小麦粉組成物の製造法は特に制限されず、上記した原料成分の変質を生じない任意の方法で混合することによって製造することができ、例えば、ビーターを用いた縦型ミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー等を用いて混合して製造すればよい。
【0022】
本発明の菓子類用小麦粉組成物は菓子類用のミックス粉として、貯蔵、流通、販売することができる。そして、本発明の菓子類用小麦粉組成物を使用することによって、工場、商店、各家庭などで、上記した高品質の菓子類を簡単に製造することができる。
本発明の菓子類用小麦粉組成物は、小麦粉を用いて、膨剤を使用せずに製造される菓子類のいずれに対しても使用可能であり、特にスポンジケーキ、カステラ、クッキー類、ワッフル、バターケーキ、シュークリーム等の菓子類の製造に適している。
そして、本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いて菓子類を製造するに当たっては、それぞれの菓子類の種類に応じて、従来から採用されている配合や方法を用いて菓子類を製造することができる。
【0023】
また、本発明では、上記した菓子類用小麦粉組成物(菓子類用のミックス粉)を前以て製造しておく代わりに、菓子類の製造時に、上記したのと同じ小麦粉等穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で、同時にまたは逐次に添加し、必要に応じて菓子類の製造に用いられている上記した他の原料の1種または2種以上を更に添加し、且つ膨剤を添加しないで、常法にしたがってそのまま直接菓子類を製造してもよい。そしてこの場合にも、菓子類用小麦粉組成物におけるのと同様に、小麦粉等穀粉類100重量部に対して卵白粉末を1〜7重量部、糊化澱粉を0.5〜5重量部およびクエン酸を0.05〜0.5重量部の割合で添加し、且つ膨剤を添加しないことが好ましい。
そして、このような本発明の製造法による場合にも、上記した菓子類小麦粉組成物を用いた場合と同様に、生地の機械耐性および作業性を良好に保ちながら、体積が大きく、沈みなどの変形がなく、しかもソフトで、外観、内相、食感に優れる菓子類を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが本発明はそれにより限定されない。以下の例において、澱粉の糊化度は、「β−アミラーゼ−プルラナーゼ法」に従って測定した。
【0030】
《実施例 1》
(1) 菓子用小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)に、卵白粉末(太陽化学株式会社製「サンキララ」)および糊化澱粉(旭化成工業株式会社製「部分α化澱粉」;糊化度=69.7%)およびクエン酸を、下記の表2に示す割合で配合し、下記の表2に示す小麦粉組成物をそれぞれ調製した。
(2) 上白糖(日新製糖株式会社製造)を20メッシュの篩で篩った後、この上白糖100gに全卵100gを加えて、ホイッパーで充分に撹拌した後、5コートミキサー(三英製作所製)に入れて、ホイッパーを用いて種比重が約0.28になるように高速で充分に泡立てた。次いで、水40mlを徐々に加えて、種比重が0.24±0.01になるまで充分に泡立てた。
(3) 上記(2)で得られた種生地240gをボールに計量し、これに20メッシュ篩で篩った上記(1)で調製した小麦粉組成物100gを加え、杓文字で生地比重が0.46±0.01となるように混ぜ合わせてスポンジケーキ生地を調製した。
【0031】
(4) 上記(3)で得られたスポンジケーキ生地を、底と内周部に型紙を敷いたケーキ型(内径15.2cm、高さ5.5cm)に移し、190℃で30分間焼成した。焼成後、ケーキ型を窯から静かに取り出して、円周部の型紙を持ち、スポンジケーキをケーキ型から静かに取り出して室温に放置した。
(5) 1日後に、菜種種子置換法でスポンジケーキの体積を測定した。次いで、そのスポンジケーキを、スライサーを用いてケーキの円周部(側壁部)から内側に、垂直方向に27mm厚で2回切り出した後、15mm厚で1回切り出し、その15mm厚で切り出した部分について、その中央部の高さと両端部の高さを定規で測定した。次いで、その15mm厚で切り出した部分の品質(内相および食感)を下記の表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
上記の表2の結果から、卵白粉末、糊化澱粉およびクエン酸を本発明の範囲内の量で添加した実験番号14〜28の本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が大きく、中央に窪みが生じず、しかも内相および食感にも優れるスポンジケーキが得られることがわかる。
それに対して、卵白粉末、糊化澱粉およびクエン酸のうちの1種または2種以上を含まない実験番号1〜7の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が小さいかおよび/または中央に窪みが生じており、しかも内相および食感に極めて劣るスポンジケーキしか得られないことがわかる。
また、卵白粉末、糊化澱粉およびクエン酸を含有していてもその含有量が本発明の範囲から外れている実験番号8〜13の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合に比べてスポンジケーキの内相および食感が劣っており、また体積が小さいことがわかる。
【0035】
《実施例 2》
(1) 菓子用小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)に、卵白粉末(太陽化学株式会社製「サンキララ」)、全卵粉末(キューピー株式会社製)、卵黄粉末(太陽化学株式会社製)、糊化澱粉(旭化成工業株式会社製「部分α化澱粉」;糊化度=69.7%)およびクエン酸を、下記の表3に示す割合で配合し、下記の表3に示す小麦粉組成物をそれぞれ調製した。
(2) 上記(1)で調製したそれぞれの小麦粉組成物を用いて、実施例1の(2)〜(4)と同様にしてスポンジケーキをそれぞれ製造した。
(3) 上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの体積の測定、および中央部の高さと両端部の高さの測定を実施例1の(5)と同様にして行った。また、上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの品質を上記の表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0036】
【表3】
【0037】
上記の表3の結果から、糊化澱粉およびクエン酸と共に卵白粉末を本発明の範囲内の量で含有する実験番号36〜38の本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が大きく、中央に窪みが生じず、しかも内相および食感にも優れるスポンジケーキが得られるのに対して、同じ卵粉末であっても卵黄粉末または全卵粉末を含有する実験番号30〜35の菓子類用小麦粉組成物および卵粉末を含有しない実験番号29の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が小さく、中央に窪みが生じており、しかも内相および食感に極めて劣るスポンジケーキしか得られないことがわかる。
【0038】
《実施例 3》
(1) 菓子類用小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)100gに、卵白粉末(キューピー株式会社製)6gおよび糊化澱粉(旭化成工業株式会社製「部分α化澱粉」;糊化度=69.7%)2gを加え、さらに、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸およびコハク酸(いずれの有機酸も和光純薬株式会社製)を下記の表4に示す割合で配合して、小麦粉組成物をそれぞれ調製した。
(2) 上記(1)で調製したそれぞれの小麦粉組成物を用いて、実施例1の(2)〜(4)と同様にしてスポンジケーキをそれぞれ製造した。
(3) 上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの体積の測定、および中央部の高さと両端部の高さの測定を実施例1の(5)と同様にして行った。また、上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの品質を上記の表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0039】
【表4】
【0040】
上記の表4の結果から、卵白粉末および糊化澱粉と共にクエン酸を本発明の範囲内の量で含有する実験番号44〜46の本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が大きく、中央に窪みが生じず、しかも内相および食感にも優れるスポンジケーキが得られるのに対して、同じ有機酸であってもクエン酸以外の有機酸を含有する実験番号40〜43の菓子類用小麦粉組成物および有機酸を添加しない実験番号39の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が小さく、しかも内相および食感に劣るスポンジケーキしか得られないことがわかる。
【0041】
《実施例 4》
(1) コーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社製)50gに水450mlを加え、ビスコグラフ(ブラベンダー社製)を使用して、最初の設定温度を25℃にした後、1.5℃/分の昇温速度で温度を上げて、下記の表5に示すように、40℃、60℃、80℃および92.5℃になるまでそれぞれの温度に加熱した。前記で得られたそれぞれの熱処理澱粉をトレーに入れて、バーチス社製の凍結乾燥機を用いて棚温度20℃、真空度150mmトールの条件下に24時間乾燥した。乾燥物をコーヒーミルで粉砕して100メッシュの篩を通過する澱粉粉末を調製した。その結果得られたそれぞれの澱粉粉末の糊化度を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(2) 菓子用小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)に、卵白粉末(キューピー株式会社製)およびクエン酸と共に、上記(1)で調製した澱粉粉末を、下記の表6に示す割合で配合して小麦粉組成物をそれぞれ調製した。
(3) 上記(1)で調製したそれぞれの小麦粉組成物を用いて、実施例1の(2)〜(4)と同様にしてスポンジケーキをそれぞれ製造した。
(3) 上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの体積の測定、および中央部の高さと両端部の高さの測定を実施例1の(5)と同様にして行った。また、上記(2)で得られたそれぞれのスポンジケーキの品質を上記の表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
上記の表6の結果から、卵白粉末およびクエン酸と共に糊化澱粉を本発明の範囲内の量で添加した実験番号54〜62の本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が大きく、中央に窪みが生じず、しかも内相および食感にも優れるスポンジケーキが得られるのがわかる。それに対して、澱粉を添加していても糊化していない澱粉を添加している実験番号48〜53の菓子類用小麦粉組成物および澱粉を添加しない実験番号47の菓子類用小麦粉組成物を用いた場合には、体積が小さく、中央に窪みが生じていて、しかも内相および食感に極めて劣るスポンジケーキしか得られないことがわかる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の菓子類用小麦粉組成物を用いて菓子類を製造すると、また本発明の方法により菓子類を製造すると、菓子類製造時の作業性や二次加工性に優れ、しかも体積が大きく、焼成後の沈みや窪みがなく、その上外観、内相、食感、風味に優れる高品質の菓子類を簡単に且つ円滑に得ることができ、本発明の菓子類用小麦粉組成物および菓子類の製造方法は、スポンジケーキ、カステラ、クッキー類、ワッフル、バターケーキ、シュークリームなどの膨剤を使用しない菓子類の製造に特に適している。
Claims (3)
- 小麦粉から主としてなる穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で含有し、且つ膨剤を含有しないことを特徴とする菓子類用小麦粉組成物。
- 小麦粉を主成分とする穀粉類100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で添加し、且つ膨剤を添加しないで菓子類を製造する方法。
- 請求項2の製造法により得られる菓子類。
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