JP3589723B2 - 磁性粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は磁性粒子およびその製造方法に関し、より詳しくは、電子写真法を利用した画像形成装置における磁性キャリヤや磁性トナー、あるいは磁気ディスプレーの表示媒体などに使用される磁性粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁性粒子としては、フェライト等の磁性材料の粒子や当該粒子の表面を樹脂コートしたものが使用されている。しかし前記磁性材料は比重が大きいことから、磁性粒子の重量も大きくなってしまう。
このため、前記磁性粒子を磁性キャリヤとして使用した場合には、感光体の表面が傷ついたり、感光体の表面に静電付着しているトナーが掻き取られたり、あるいはその付着位置がずれてしまうおそれがあり、形成画像の画質が低下するという問題が生じる。また、前記磁性粒子を磁気ディスプレーの表示媒体として使用した場合には、磁性粒子が脱落しやすく、表示の自由度が低下するという問題が生じる。
【0003】
近年、磁性粒子の軽量化を目的として、比重の小さい樹脂に磁性粉を分散させたバインダー型の磁性粒子が使用されている。このバインダー型磁性粒子の製造方法としては、例えば結着樹脂中に磁性粉を混合し、溶融、混練した後、粉砕するいわゆる混練粉砕法が挙げられる。しかし、この方法で得られる磁性粒子は、粒度分布が広く、粒径の小さい磁性粒子を得るのが困難である。また、得られる粒子の形状が一定でなく、粒子の流動性が劣る。そこで、ラジカル重合性のモノマーと磁性粉とその他の添加剤とを混合し、この混合物を分散媒中で液滴状に分散させつつ加熱して重合するいわゆる懸濁重合法が利用されている。この懸濁重合法によって得られる磁性粒子は、粒度分布が狭くかつ小粒径で、球状に近く、流動性にも優れている。しかしながら、一方で、耐磨耗性が低いことや、割れやすいという問題を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、例えば特開昭61−120158号公報には、上記バインダー型の磁性粒子の表面に樹脂コート層を形成させることにより、耐磨耗性を付与する方法が開示されている。しかし、この方法では依然として磁性粒子が割れやすいという問題が残る。また、コート層が剥がれたり、コート層を形成するための新たな工程が必要になるという新たな問題も生じる。
【0005】
また、特開平4−328583号公報には、磁性粉を分散させる結着樹脂として三次元架橋樹脂を用いることにより、耐磨耗性と耐割れ性とを付与する方法が開示されている。しかし、この方法では三次元架橋樹脂を製造するための架橋剤が多量に必要となり、コストが高くなるという問題がある。さらにこの方法では、樹脂の重合度が高くなりにくいために残留モノマーが増加しやすくなるという問題もある。前記架橋剤としてジビニルベンゼンを用いた場合には、ジビニルベンゼンには不純物として樹脂化しないジメチルベンゼン、トルエン、アルデヒド類等の有機低分子化合物が含まれているために、この有機低分子化合物が磁性粒子中に残留し、これらのガスが徐々に放散されて異臭の原因になるおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、耐摩耗性や耐割れ性が向上し、かつ架橋剤の使用量を低減でき、有機低分子化合物の残存量をも軽減することのできる磁性粒子およびその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スチレン系樹脂またはスチレン−(メタ)アクリル系樹脂である結着樹脂中に磁性粉を分散させた球形の磁性粒子を製造するのにあたって、所定のモノマーと架橋剤とを使用して、水性媒体中で懸濁重合したときには、上記結着樹脂の架橋部分を粒子の表面近傍に偏在させることができ、その結果、磁性粒子の耐摩耗性や耐割れ性が向上し、かつ架橋剤の使用量や有機低分子化合物の残留量を低減させることができるという新たな事実を見出し、本発明の磁性粒子を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る磁性粒子は、スチレン系樹脂またはスチレン−(メタ)アクリル系樹脂である結着樹脂中に磁性粉を分散させた球形の磁性粒子であって、スチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーと、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤と、磁性粉との混合物を、水性媒体中に分散させて、ラジカル重合反応により懸濁重合してなるものであることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明者らは、スチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーと、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤と、磁性粉とを混合し、この混合物を水性媒体中に分散させ、ラジカル重合反応により懸濁重合するときは、前記混合物が水性媒体中で液滴を形成し、前記架橋剤が液滴と水性媒体との界面近傍に偏在した状態で架橋反応が進行することから、上記磁性粒子を得ることができることを見出し、本発明の磁性粒子の製造方法を完成するに至った。
【0009】
以下、本発明の磁性粒子を詳細に説明する。
本発明の磁性粒子における結着樹脂はスチレン系樹脂またはスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなり、これらの結着樹脂はスチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーを重合させることによって得られる。
【0010】
上記油溶性モノマーのうちスチレン系モノマーは、例えば一般式(1) :
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1 およびR2 は同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。)
で表され、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が例示される。これらは単独で使用することができ、2種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
(メタ)アクリル系モノマーは、一般式(2) :
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R3 は水素原子または低級アルキル基を示し、R4 は低級アルキル基を示す。)
で表され、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソオキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ペンタニル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が例示される。これらは単独で使用することができ、2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
上記R1 〜R4 における低級アルキル基としては、炭素数が1〜12のアルキル基が挙げられ、このアルキル基にはハロゲン原子などが置換していてもよい。上記油溶性モノマーのうち、スチレン系モノマーのみを用いた場合は、結着樹脂がスチレン系樹脂である磁性粒子が得られる。一方、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーの両方のモノマーを用いた場合は、結着樹脂がスチレン−(メタ)アクリル樹脂である磁性粒子が得られる。後者の場合、(メタ)アクリル系モノマーは、モノマー総量中70重量%以下の割合で用いられる。(メタ)アクリル系モノマーの含有量が前記範囲よりも多い場合は、材料コストが高くなるか、あるいはガラス転移温度が低くなるために好ましくない。
【0017】
本発明の磁性粒子における磁性粉としては、強磁性を示す金属やその合金、各種のフェライト、あるいは強磁性を示す元素を含有しないものの熱処理によって強磁性を示すようになる合金などの従来公知の種々の磁性材料を用いることができ、これらの磁性材料を粉末状にして使用される。
前記強磁性を示す金属としては、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、前述のようにこれらの金属を含有する合金を使用することもできる。フェライトとしては、例えば四三酸化鉄(Fe3 O4 )、三二酸化鉄(γ−Fe2 O3 )、酸化鉄亜鉛(ZnFe2 O4 )、酸化鉄イットリウム(Y3 Fe5 O12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2 O4 )、酸化鉄ガドリニウム(Gd3 Fe5 O4 )、酸化鉄銅(CuFe2 O4 )、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ネオジム(NdFeO3 )、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2 O4 )、酸化鉄マンガン(MnFe2 O4 )、酸化鉄ランタン(LaFeO3 )等が挙げられる。また、熱処理によって強磁性を示す合金としては、例えばマンガン−銅−アルミニウムや、マンガン−銅−錫などの、マンガンと銅を含有するホイスラー合金等が挙げられる。これらは単独で使用でき、2種以上を併用することもできる。
【0018】
磁性粉の粒径については特に限定されないが、通常の磁性粒子に使用されるのと同程度、すなわち平均粒径が0.01〜5μmであることが好ましい。磁性粉の平均粒径が上記範囲よりも小さい場合、飽和磁化の低下を招くおそれがある。また、磁性粉の平均粒径が上記範囲よりも大きい場合、均質な磁気特性や微小でかつ均一な粒径をもった磁性粒子が得られなくなるおそれがある。
【0019】
磁性粉の配合量は飽和磁化の強さなどに影響し、得られる磁性粒子の用途などによって適宜設定される。磁性粒子を磁性キャリヤとして用いる場合は、飽和磁化が通常50〜70emu/g程度であるのが好ましいことから、油溶性モノマー100重量部に対して100〜250重量部、好ましくは150〜200重量部の割合で配合される。また、磁性トナーとして用いる場合は、飽和磁化が通常30〜50emu/g程度であるのが好ましいことから、油溶性モノマー100重量部に対して2〜20重量部、好ましくは5〜10重量部の割合で配合される。さらに、磁気ディスプレーの表示媒体に用いる場合は、飽和磁化が通常50〜80emu/g程度であるのが好ましいことから、油溶性モノマー100重量部に対して100〜300重量部、好ましくは150〜250重量部の割合で配合される。
【0020】
本発明の磁性粒子における結着樹脂の架橋部分は、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤を使用することによって形成される。
上記架橋剤は、前述のように、油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有するものである。すなわち、懸濁重合時には油溶性モノマーや磁性粉などの混合物からなる液滴中に溶解しているものの、水性媒体に対しても若干の親和性を示すものであればよい。このような架橋剤としては、例えばビニル基またはアリル基を少なくとも2つ以上有するアミン、またはフタル酸、クロレンド酸、マレイン酸等が挙げられる。これらのうち、ビニル基またはアリル基を少なくとも2つ以上有するアミン、すなわちジビニルアミン、トリビニルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミンを用いて架橋構造を形成した場合、得られる磁性粒子の表面硬度が高くなり、磁性粒子の耐磨耗性および耐割れ性が向上するために好ましい。
【0021】
架橋剤は、油溶性モノマー100重量部に対して、通常1〜50重量部程度の割合で配合される。尚、上記架橋剤の配合量は、本発明の磁性粒子を磁性キャリヤや磁気ディスプレイの表示媒体として使用する場合には、磁性粒子の機械的強度等を考慮して、3〜50重量部の割合であるのが好ましい。また、本発明の磁性粒子を磁性トナーとして使用する場合には、磁性トナーの定着性を考慮して、0.5〜10重量部の割合であるのが好ましい。
【0022】
本発明の磁性粒子は、上記各成分の混合物を懸濁重合することによって得られるが、前記混合物中には重合開始剤やその他の添加物が含まれていてもよい。
重合開始剤としては、水性媒体に不溶で、かつ油溶性モノマーと相溶性のあるものが使用できる。水性媒体中に溶解する重合開始剤を使用した場合、磁性粒子から遊離した重合粉が副生するおそれがあるために好ましくない。前記重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物が使用できる。紫外線や可視光線の照射による重合を行う場合には、従来公知の光重合開始剤を使用することもできる。これらは単独で使用でき、2種以上を併用することもできる。
【0023】
上記重合開始剤は、油溶性モノマー100重量部に対して、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜6重量部の割合で配合される。また、開始剤は、油溶性モノマー中にあらかじめ添加しておいてもよいし、重合の途中で分割添加するようにしてもよい。
尚、本発明における重合反応は、γ線、加速電子線等を用いて開始させることも可能であり、この場合には重合開始剤を使用しなくてもよい。また、紫外線と各種光増感剤とを組合せて重合を開始してもよい。
【0024】
その他の添加剤は、磁性粒子の用途に応じて添加される。例えば磁性キャリヤや磁性トナーには電荷制御剤などが使用でき、磁性トナーはオフセット防止剤も使用することができる。さらに、磁性トナーには着色剤が添加される。
電荷制御剤は、本発明の磁性粒子を、電子写真複写装置などにおける2成分系現像剤としてのキャリヤや、1成分系現像剤としての磁性トナーに使用する場合に配合されるもので、帯電極性に応じて、正電荷制御用または負電荷制御用のいずれかの電荷制御剤が使用される。
【0025】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、塩基性窒素原子を有する有機化合物、例えば塩基性染料、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン類等や、上記各化合物で表面処理された充填剤等が挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、ニグロシンベース(C.I.5045)、オイルブラック(C.I. 26150)、ボントロンS、スピロンブラック等の油溶性染料;スチレン−スチレンスルホン酸共重合体等の電荷制御性樹脂;カルボキシ基を含有する化合物(例えばアルキルサリチル酸金属キレート等)、金属錯塩染料、脂肪酸金属石鹸、樹脂酸石鹸、ナフテン酸金属塩等が挙げられる。
【0026】
これらの電荷制御剤は、油溶性モノマー100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部の割合で配合される。
オフセット防止剤は、本発明の磁性粒子を磁性トナーとして使用する場合に配合されるものである。具体的には、脂肪族系炭化水素、脂肪族金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックス等が用いられ、中でも、重量平均分子量が1000〜10000程度の脂肪族系炭化水素が好ましい。例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、炭素原子数4以上のオレフィン単位からなる低分子量のオレフィン重合体、シリコーンオイル等の1種または2種以上の組み合わせが適当である。
【0027】
オフセット防止剤は、ビニル単量体の総量100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部の割合で配合される。
本発明の磁性粒子を磁性トナーとして使用する場合には、着色剤として、例えばカーボンブラック、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーン、ローズベンガル等、従来公知の種々の着色剤が使用される。これらの着色剤は、ビニル単量体の総量100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは5〜10重量部の割合で配合される。
【0028】
次に、本発明の磁性粒子の製造方法を詳細に説明する。
本発明の磁性粒子は、前述のように、スチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーと、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤と、磁性粉とを混合し、この混合物を水性媒体中に分散させ、ラジカル重合反応により懸濁重合することによって製造される。
【0029】
水性媒体としては、油溶性モノマーの原料成分および重合後の磁性粒子を全く溶解しないかあるいは殆ど溶解せず、しかも不活性である溶媒が使用でき、具体的には、水、水−アルコール混合媒体などが例示される。
上記水性媒体中に油溶性モノマー、架橋剤および磁性粉などからなる混合物を加えて102 〜108 ダイン/cm程度のせん断力を生じるように攪拌すると、前記混合物が水性媒体中で懸濁し、液滴が形成される。このとき、前記架橋剤は、前述のように液滴中に溶解しているものの、水性媒体に対しても若干の親和性を示すために液滴と水性媒体との界面近傍に偏在している。この状態で、通常−30〜90℃、好ましくは30〜80℃の温度で0.1〜50時間程度の重合反応を行うことにより、結着樹脂の架橋部分が粒子の表面近傍に偏在した本発明の磁性粒子が得られる。前記重合反応の際には、酸素による重合の停止反応を抑制するために反応系内を不活性ガスで置換することが好ましい。また、本発明の製造方法では懸濁重合法を用いているために、粒度分布が狭くかつ小粒径で、球状に近く、流動性に優れた磁性粒子が得ることができる。
【0030】
本発明の製造方法では、前記混合物が比重の大きな磁性粉を大量に含有しているために、懸濁重合の際に磁性粉がモノマー相から分離して沈降するおそれが生じる。このような場合には、水性媒体中での混合物の分散安定性を向上させる、混合物中での磁性粉の分散安定性を向上させる、または水性媒体と磁性粉との比重差を小さくするといった方法のうちの少なくとも1種以上の手段を用いればよい。
【0031】
上記各方法のうち、水性媒体中での混合物の分散安定性を向上させる方法は、水性媒体中に分散安定剤を配合し、油滴の生成を安定化させることによって達成される。前記分散安定剤としては従来公知の種々のものが使用できるが、目的とする磁性粒子の粒径がμmレベルであることを考慮すると、優れた分散能力を有している必要がある。また製造後の磁性粒子の特性に影響を与えないために、磁性粒子から容易に除去される必要がある。
【0032】
上記の要件を満たす好適な分散安定剤としては、例えばリン酸三カルシウム等のカルシウム塩とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤との組み合わせのほかに、水溶性高分子化合物および/または難水溶性無機化合物の微粉末が用いられる。前記水溶性高分子としては、ゼラチン、澱粉、ヒドロキシエチルセルトーズ、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、難水溶性無機化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、クレー、珪酸、珪藻土などが挙げられる。上記分散安定剤の配合量は、水性媒体の0.5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の割合である。
【0033】
また、上記各方法のうち、混合物中での磁性粉の分散安定性を向上させる方法は、混合物中にシラン系、チタン系またはアルミニウム系のカップリング剤を共存させることによって達成される。前記カップリング剤は磁性粉粒子の表面と油溶性モノマーとの界面に介在して磁性粉の分散性を向上させるが、重合後の磁性粒子の表面にブリードアウトする傾向が全くないという点で本発明の目的に合致している。これらのカップリング剤は、あらかじめ磁性粉粒子表面に塗布しておいてもよいし、モノマー中に添加してもよい。上記カップリング剤の配合量は、磁性粉100重量部当たり0.2〜3重量部であるのが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法によれば、懸濁重合時の懸濁液の攪拌速度、重合反応の温度、反応時間などの懸濁条件を設定することによって、磁性粒子の粒径をその用途に応じたものにすることができる。懸濁条件の設定には、磁性粒子の粒径に匹敵する粒径となるように、混合物の液滴を形成させればよい。尚、懸濁重合中に追加量のモノマーを補給して重合を継続させる場合には、得られる磁性粒子の粒径が液滴の最初の粒径よりも増大することを考慮する必要がある。
【0035】
本発明の磁性粒子の粒径は特に限定されないが、当該磁性粒子を磁性キャリヤとして使用する場合には、形成画像の高画質化のために、その中心粒径(D50)が40〜90μmであるのが好ましい。磁性粒子の中心粒径が上記範囲よりも小さい場合は、磁性キャリヤがトナーとともに感光体に付着するおそれがある。一方、上記範囲よりも大きい場合は、形成画像を高画質化する効果が不十分になるおそれがある。また、上記磁性粒子を磁性トナーとして使用する場合には、その中心粒径(D50)が5〜10μmであるのが好ましい。磁性粒子の中心粒径が上記範囲よりも小さいときには、十分な画像濃度が得られないおそれがある。一方、上記範囲よりも大きいときには、形成画像を高画質化する効果が不十分になるおそれがある。さらに、上記磁性粒子を磁気ディスプレーの表示媒体として使用する場合には、表示品質などを考慮すると、その中心粒径(D50)が50〜500μmであるのが好ましい。
【0036】
前述のような懸濁重合を行った後、磁性粒子を重合系から固液分離し、洗浄、乾燥、分級などの後処理を行うことによって、所望の磁性粒子が得られる。
【0037】
【実施例】
実施例および比較例1
磁性粒子の作製
油溶性モノマーとしてスチレンとブチルメタクリレートとを使用し、架橋剤としてジアリルアミンまたはジビニルベンゼンを使用し、磁性粉としてマグネタイト(BL200、チタン工業社製)を使用した。
【0038】
上記成分およびその他の成分を下記の表1に示す割合で混合し、TKホモミキサー高粘度用(特殊機化工業社製)中に加え、回転数7000rpmで15分間懸濁させて混合物を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
次いで、上記混合物を、蒸留水600重量部中に加え、さらにリン酸三カルシウム30重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部とを加えた。さらに、これをセパラブルフラスコに移し入れ、窒素雰囲気下、回転数300rpm、温度80℃で5時間重合させた。重合後、生成物をろ過、希酸洗浄、水洗、乾燥することによって、表面近傍が架橋された磁性粒子を得た。得られた磁性粒子の中心粒径(D50)は、実施例の磁性粒子が68μm、比較例1の磁性粒子が73μmであった。
比較例2
上記表1に示す割合で各成分を混合し、実施例および比較例1と同様にして混合物を得た。尚、架橋剤には、ポリメチレンフェニルイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製のミリオネートMR)を使用した。
【0041】
次いで、上記混合物セパラブルフラスコに移し入れ、窒素雰囲気下、回転数300rpmで攪拌し、温度を30℃に保ってキシレンジアミン10gを滴下して1時間反応させ、さらに温度を80℃に上げて、5時間重合させた。
重合後、生成物をろ過、希酸洗浄、水洗、乾燥することにより表面にポリウレアコート層を有する磁性粒子を得た。得られた磁性粒子の中心粒径(D50)は、75μmであった。
キャリヤ評価
実施例および比較例1〜2で得られた磁性粒子とトナー(三田工業(株)製のDC−2585用トナー)とを混合してトナー濃度が8%の現像剤を作製した。
【0042】
この現像剤を用い、電子写真複写機(三田工業(株)製のDC−2585)でそれぞれ合計4万枚の複写試験を行い、以下の各項目について評価した。
(画像濃度)
各画像の黒ベタ部の画像濃度を反射濃度計(東京電色(株)製のTC−6D)を用いて測定した。
(かぶり濃度)
各画像の余白部分の画像濃度を上記と同じ反射濃度計を用いて測定した。
(帯電量)
現像剤の帯電量をブローオフ法で測定した。
【0043】
上記各項目の評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2より、実施例のキャリヤは4万枚まで画像濃度、かぶり、帯電量のいずれの評価項目も安定して良好な結果を示している。一方、比較例1〜2のキャリヤは、印刷枚数が多くなるにつれて、いずれも帯電量が大きく低下し、かぶりが発生した。また、比較例1のキャリヤは、印刷枚数が多くなるにつれて画像濃度も低下した。
【0046】
上記帯電量の低下、かぶりの発生および画像濃度の低下は、いずれもキャリヤ粒子の表面が磨耗したり、割れたりすることによる流動性の低下に原因があると考えられる。すなわち、いずれの評価項目も良好な結果を示した本発明のキャリヤは、耐磨耗性および耐割れ性に優れていることを示す。
有機低分子量化合物の残存量
実施例および各比較例で得られた磁性粒子からジオキサン中に残存有機低分子量化合物を抽出し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製の「GC−9A」)を用いて有機低分子量化合物の残存量を求めた。尚、ここでいう低分子量化合物とは、分子量が200以下のものである。また、有機低分子量化合物の残存量は、スチレンモノマーに相当するピークを全てスチレンと仮定して質量に換算し、全トナーに対する割合(重量%)で表したものである。その結果、有機低分子量化合物の残存量は、実施例が0.08重量%、比較例1が1.3重量%および比較例2が0.15重量%であった。
【0047】
上記結果より、本発明の磁性粒子は、磁性粒子中の有機系低分子量成分の残存量が比較例に比べて少ないことがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の磁性粒子は、粒子表面の架橋構造に由来して、強靱でしかも硬い。また、表面に樹脂をコートするような接合構造ではないために割れにくく、非常に堅牢である。従って、耐磨耗性および耐割れ性に優れているとともに、実質上不溶融性、不溶性であり、耐熱性、耐久性、耐光性、耐湿性なども優れている。
【0049】
また、磁性粒子全体を万遍なく架橋する場合よりも、架橋剤の必要量が少なく、コストの削減や有機系低分子成分の残留量が少なくなる。
さらに、本発明の磁性粒子は、樹脂中に磁性粉を均一に分散した構造であるため、飽和磁化が大きく変動することはなく、磁気特性の安定したものを量産することが可能である。
【0050】
本発明の製造方法によれば、油溶性モノマーなどからなる液滴と水性媒体との界面近傍に架橋剤が偏在した状態で重合反応が進行するために、得られる磁性粒子の表面近傍に架橋部分が偏在して存在し、表面近傍がより高密度に架橋された粒子構造をもった磁性粒子を得ることができる。
従って、本発明の磁性粒子は、電子写真複写装置の現像剤として用いられるキャリヤまたは磁性トナー、あるいは磁気ディスプレイの表示媒体などの用途に好適である。
Claims (3)
- スチレン系樹脂またはスチレン−(メタ)アクリル系樹脂である結着樹脂中に磁性粉を分散させた球形の磁性粒子であって、スチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーと、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤と、磁性粉との混合物を、水性媒体中に分散させて、ラジカル重合反応により懸濁重合してなるものであることを特徴とする磁性粒子。
- スチレン系モノマーまたはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる油溶性モノマーと、前記油溶性モノマーに溶解しかつ親水性基を有する架橋剤と、磁性粉とを混合し、この混合物を水性媒体中に分散させ、ラジカル重合反応により懸濁重合することを特徴とする磁性粒子の製造方法。
- 前記架橋剤が、少なくとも2つのビニル基またはアリル基を有するアミンである請求項2記載の磁性粒子の製造方法。
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