JP3586868B2 - 剥離容易な積層シートの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一度剥離してしまうと剥離した形跡を残さずには元の状態には戻せない積層シートの製造法、例えば上側の基材層の裏面または下側の基材層の表面の少なくとも一方に秘密情報が記載されており、積層シートを剥離しなければその情報が判読できず、且つ一度剥離すると元に戻せないことによりその情報の盗み見を防止することができる積層シートの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
秘密情報を特定の個人に宛て提供する際に積層シートを使用すると、受領者がこの積層シートを剥離することで初めてその剥離面の情報が明らかになる。このような積層シートは、既に知られているが、従来、上側の基材層の裏面に予めヒートシール性接着剤を塗工し、下側の基材層の表面に予め熱可塑性樹脂層を設け、両面を合わせて熱圧着したものが普通であって、ヒートシール性接着剤と熱可塑性樹脂の選択により接着強度を調節することによって、上下の基材層を剥離可能に形成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の積層シートは、接着力の制御がある程度は可能であるという半面、剥離後に強く押さえることで再接着してしまう可能性があり、またアイロンなどで再度熱圧着を行うことで剥離前の状態に復元することが可能であった。更に、剥離後の残留粘着性のために、埃がついたり、積み重ねて保存すると他の紙に粘着してしまう欠点がある。また、製造工程が多段で複雑であり、特に基材層として自己発色性感圧記録紙を使用する場合には、積層シートの製造中で汚れ発色を起してしまう危険性が存在していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、積層シートを構成する各層間の接着強度を強めるための既知の手法、即ち、各層間に起る剥離を防止するための既知の手法を、全く正反対の観点から、剥離を容易にするための手法として使い分けるものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一方の基材層に少なくとも2層の熱可塑性樹脂を共押し出しコーティングし、これらの熱可塑性樹脂層が固化する前に、これらを中間層としてその上に他方の基材層を重ね合わせてクーリングロールで冷却圧着する工程中で、上側基材層と対向する熱可塑性樹脂層の接着強度と、下側基材層と対向する熱可塑性樹脂層の接着強度を調節することにより、上側基材層と熱可塑性樹脂層間の接着強度、及び、下側基材層と熱可塑性樹脂層間の接着強度を異ならせると共に、接着強度の小さい方の熱可塑性樹脂層と基材層との間を剥離可能に調整する積層シートの製造法を内容とするものである。
【0006】
本発明においては、上側及び下側の基材層として、紙、合成樹脂フィルム、不織布、金属箔などを用いる。上下の基材層は同じものであっても良いが、用途に応じて異なる種類の基材層を組み合わせることもできる。また、基材層として内面側に自己発色性感圧記録層を有するシートを用いれば、積層シートの状態のままで上から圧力印字を加えることで、シート内面側に秘匿された印字情報を記載することができる。更に、基材層の外面側に着色または地紋印刷を施せば、透過による印字情報の判読を困難にすることができる。
【0007】
中間層の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、またポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドなど押し出しラミネートが可能な樹脂を使用する。この場合、基材との組み合わせにより接着性が不足する場合には、例えばグラフト変性ポリオレフィン、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸エステルの共重合体などを適宜使用して、その接着性を高めることができる。なお、上側及び下側基材層との接着力を調製するために、それぞれの層に異なる樹脂を積層することや、それらの積層を異なる条件で行なうことも有効な手段である。
【0008】
本発明に係る積層シートの製造法においては、熱可塑性樹脂の中間層が上下のいずれか一方の基材層に対してより強く接着される。従って、製造される積層シートは、その剥離に際して、弱く接着されている基材層が中間層との間で剥離されることになる。弱く接着されている基材層と中間層との間の剥離強度は、剥離操作が容易に行なわれるように、通常0.5〜200g/cm好ましくは0.5〜100g/cm程度とする。
【0009】
基材層と中間層との接着強度調節の因子としては、熱可塑性樹脂の種類、熱可塑性樹脂層中に添加剤を含有させるか否か、その種類及び使用量、紙基材層表面に対するコロナ処理の強度、熱可塑性樹脂層表面に対するオゾン処理の強度、基材層のプレヒート温度、樹脂押し出し温度等を挙げることができる。なお、接着強度調節のための添加剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミドなどが挙げられる。通常、樹脂中に何らかの添加剤を加えれば、接着強度は低下する方向に働く。この意味で、本来別の機能を有する静電防止剤、アンチブロック剤、紫外線吸収剤等は接着強度を低下させる方向の添加剤として用いることができる。
【0010】
上記の接着強度調節の因子のうちコロナ処理とオゾン処理とは、元来、大きい接着強度を得るために開発された手法であるが、本発明では、これらの処理を2層の中間層各々に対して、また上下の基材層各々に対して、適宜使い分けることによって、剥離容易な積層シートを製造することができる。
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂を基材層に共押し出しコーティングする際に、樹脂種類、添加剤の種類と量、コロナ処理強度、オゾン処理強度、樹脂押し出し温度等を制御することで剥離強度を調節するので、剥離に際しては基材層を破壊することなく容易に剥離することができる。また、仮に一旦剥離したものをヒートシールで再接着した場合には、再度の剥離の際に基材層を破壊しなければ剥離できない。つまり、ヒートシールにより再接着を行う場合、実質的に接着強度の調節ができないので、溶融した樹脂が強固に基材層に接着することになる。殊に紙基材層の場合には、溶融樹脂が紙基材層の空隙に入り込むアンカー効果のために、より強固に接着することになる。このように再接着された積層シートは、剥離を試みると基材を破壊してしまうので、仮に再接着を行ったとしても、一度剥離した明らかな痕跡を残すことになる。
【0012】
しかも、本発明においては熱可塑性樹脂層を2層以上とするので、上下の基材層に接する各々の樹脂層の接着力を違えて調節することが容易である。例えば、添加剤により剥離側の接着強度を弱く調節する際に、樹脂層を2層以上にすることによって、添加剤が非剥離側に影響して接着強度を弱めてしまうことを回避することができる。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例に基いて本発明を説明する。
【0014】
[実施例1]
低密度ポリエチレンを溶融状態とし、これにエルカ酸アミドを900ppm添加混合した。これとは別に上記の低密度ポリエチレンの添加剤を含有しないものを用意した。上記の添加剤含有の樹脂を上側層、添加剤不含の樹脂を下側層として、共押出しTダイより290℃の温度で下側の基材層である上質紙の上に積層した。前記樹脂層が固化する前に、添加剤含有の樹脂層上に上側の基材層である上質紙をクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。このとき、樹脂溶融膜の下側上質紙と接着させる面にオゾン含有空気を吹き付ける処理を行なうと共に、樹脂溶融膜積層直前に下側上質紙にコロナ処理を行った。なお、樹脂へのオゾン処理の条件は、溶融膜の積層速度100m/分、エアギャプ130mm,オゾン濃度40g/m、オゾン流量2m/時であった。得られた積層シートは、上側上質紙と添加剤含有の樹脂層との間で容易に剥離することができた。
【0015】
[実施例2]
低密度ポリエチレンを溶融状態とし、これにエルカ酸アミドを900ppm添加混合した。これとは別に用意したアクリル酸変性ポリエチレンを下側層、先の低密度ポリエチレン層を上側層として、共押出しTダイより290℃の温度で、下側の基材層であるアルミニウムシートの上に積層し、樹脂層が固化する前に、上側の基材層である上質紙をクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。得られた積層シートは、上質紙と低密度ポリエチレン層との間で容易に剥離した。
【0016】
[実施例3]
直鎖状低密度ポリエチレンを溶融状態とし、これにオレイン酸アミドを750ppm添加混合した。これとは別に用意したポリプロピレンを下側層とし、先のポリエチレンを上側層として、共押出しTダイより290℃の温度で、下側の基材層となる自己発色性感圧記録紙の上に積層した。前記樹脂層が固化する前に、上側の基材層である上質紙をポリエチレンの上側層に合わせクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。このとき、下側の自己発色性感圧記録紙にはコロナ処理を行い且つ溶融膜の下側面にオゾン含有空気を吹き付ける処理を行った。なお、樹脂へのオゾン処理の条件は、溶融膜の積層速度100m/分、エアギャプ130mm,オゾン濃度40g/m、オゾン流量2m/時であった。得られた積層シートは、上側の上質紙とポリエチレン層との間で容易に剥離した。
【0017】
[実施例4]
ポリプロピレンを溶融状態とし、これにオレイン酸アミドを250ppm添加混合した。これとは別に上記のポリプロピレンの添加剤を含有しないものを用意した。この添加剤不含の樹脂を下側層とし、先の添加剤含有の樹脂層を上側層として、共押出しTダイより下側層は290℃の温度で上側層は260℃の温度で上質紙の上に積層し、前記樹脂層が固化する前に上側の基材層である上質紙をクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。このとき、下側の上質紙にはコロナ処理を行い且つ溶融膜の下側上質紙と接着させる面にオゾン含有空気を吹き付ける処理を行った。なお、樹脂へのオゾン処理の条件は、溶融膜の積層速度100m/分、エアギャプ130mm,オゾン濃度40g/m、オゾン流量2m/時であった。
【0018】
[実施例5]
直鎖状低密度ポリエチレンを溶融状態とし、これにステアリン酸アミドを250ppm添加混合した。これとは別に用意したポリプロピレンを15μの厚みで下側層、先の直鎖状低密度ポリエチレンを10μの厚みで上側層として、共押出しTダイより290℃の温度で、下側の基材層である上質紙の上に積層した。前記樹脂層が固化する前に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層上に上側の基材層である上質紙をクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。このとき、上側及び下側の樹脂溶融膜の上質紙と接着させる面にオゾン含有空気を吹き付ける処理を行うと共に、樹脂溶融膜積層直前に下側上質紙にコロナ処理を行った。なお、樹脂へのオゾン処理の条件は、溶融膜の積層速度100m/分、エアギャップ130mmで下側樹脂層にはオゾン濃度40g/m、オゾン流量2m/時、上側基材層にはオゾン濃度30g/m、オゾン流量1m/時であった。得られた積層シートは、上側上質紙と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層との間で容易に剥離することができた。
【0019】
[実施例6]
ポリプロピレンを溶融状態とし、これにステアリン酸アミドを500ppm添加混合した。これとは別に用意したポリプロピレンを10μの厚みで下側層、先の添加剤含有ポリプロピレンを10μの厚みで上側層として、共押出しTダイより下側層は290℃の温度で上側層は260℃の温度で、下側の基材層である上質紙の上に積層した。前記樹脂層が固化する前に、添加剤含有ポリプロピレン樹脂層上に上側の基材層である上質紙をクーリングロールで冷却圧着し積層シートを得た。このとき、下側の上質紙にはコロナ処理を行いかつ溶融膜の下側上質紙と接着させる面にオゾン含有空気を吹き付ける処理を行った。なお、樹脂へのオゾン処理の条件は、溶融膜の積層速度100m/分、エアギャップ130mm、オゾン濃度40g/m、オゾン流量2m/時であった。得られた積層シートは、上側上質紙と添加剤含有ポリプロピレン樹脂層との間で容易に剥離することができた。
【0020】
上記の実施例で得られた積層シートの品質性能を評価し、その結果を表1に示した。
【0021】
なお、剥離強度と再接着の評価は次の基準に従った。
(1)剥離強度:基材層と樹脂層との層間剥離強度は、予め剥離のきっかけを作った幅10mmの積層シートの90度剥離に要する力を測定し剥離強度とした。このとき、剥離できなかったり、基材層または樹脂層の材料破壊が起きた場合は測定不能とした。
(2)復元可能性:一旦剥離した後、アイロンにより熱圧着を試みた。その後、再剥離を行った。材料破壊が起こったもの及び元の剥離強度が得られなかったものについては不可とした。
【0022】
【表1】
Figure 0003586868
【0023】
【発明の効果】
本発明の積層シートの製造法によれば、剥離の際には上側及び下側の基材層の少なくとも一方が樹脂層と容易に剥離する一方、一旦剥離した後は再接着による復元ができない積層シートが提供される。また、樹脂層を2層以上で横成したことによって、上側基材層と樹脂層の接着力および下側基材層と樹脂層の接着力を各々任意に設定することが容易でしかも安定した接着力を得ることができる。本発明により製造される積層シートは、粘着剤を用いた従来のヒートシール加工の積層シートのように剥離面に粘着剤が残留することがないので、挨の付着による汚れが無く、また、剥離したシートを積み重ねて保存することもできる。本発明により製造される積層シートは、実質的に親展の内容を記載可能な郵便はがきとして用いることができる。

Claims (1)

  1. 一方の基材層に少なくとも2層の熱可塑性樹脂を共押し出しコーティングし、これらの熱可塑性樹脂層が固化する前に、これらを中間層としてその上に他方の基材層を重ね合わせてクーリングロールで冷却圧着する工程中で、上側基材層と対向する熱可塑性樹脂層の接着強度と、下側基材層と対向する熱可塑性樹脂層の接着強度を調節することにより、上側基材層と熱可塑性樹脂層間の接着強度、及び、下側基材層と熱可塑性樹脂層間の接着強度を異ならせると共に、接着強度の小さい方の熱可塑性樹脂層と基材層との間を剥離可能にその接着強度を調整することを特徴とする積層シートの製造法。
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