JP3585505B2 - 耐海水性・耐生物付着性に優れるFe−Cr合金 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は耐海水性・耐生物付着性に優れる新規なFe−Cr合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にFe−Cr合金は耐食性に優れた材料として知られているが、例えば発電所等の冷却水として海水を用いてる際の冷却水配管などの部材に用いる場合、部材への海水生物の付着が問題となるので付着を防止する提案が種々なされている。
【0003】
例えば、特開平02−232344号公報ではCr含量25.0〜30.0重量%のFe−Cr系合金であって、特にMoを特定量含有せしめた耐生物付着性および耐海水性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記で提案された合金は海水生物の付着性の改良がなされているが、Moを含有するため高価であるだけでなく、なおイ貝等の付着防止能が不十分であり、海水生物の付着の防止に関して更なる改善が求められていた。即ち、本発明は耐海水性・耐生物付着性(これらを耐海水生物付着性と記すこともある。)がより改善されたFe−Cr合金を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、通常Fe−Cr合金に不純物として存在している、C,N,P,O,Sなどの不純物を100ppm以下に低減し、Pb,Biなどを特定量含有せしめることにより耐海水性・耐生物付着性が著しく改善されること、更にCu,Sn,As,Sbから選択される一種以上を特定量含有せしめたFe−Cr合金は一層海水中での生物付着抑制効果に優れることを知見し、本発明を完成するに至った。なおその際Mo含量がたとえば0.06重量%以下程度の不可避的不純物量であってもよく、あるいはAl含量が不可避的不純物量であってもよい。即ち、本発明によれば、Cr含量が5〜60重量%であり、不純物としてのC,N,P,OおよびSの合計量が100ppm以下であり、かつPbまたは/およびBiを下記式(1)を満たすような範囲で含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする耐海水性・耐生物付着性に優れるFe−Cr合金が提供され、更に好ましい本発明の態様として、上記Fe−Cr合金において、Cu,Sn,AsおよびSbから選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含有するFe−Cr合金が提供され、上記本発明の目的が達成される。
0.001重量%≦Pb+Bi≦1.0重量%…………………(1)
0.03重量%≦Cu+Sn+As+Sb≦2.0重量%……(2)
【0006】
【作用】
以下、耐海水生物付着性におよぼす要因に関して説明する。
図1は、Fe−Cr−0.1%Bi合金に関して耐海水腐食性とCr含量および(C+N+P+O+S)量との関係を示すグラフであり、このグラフによると(C+N+P+O+S)量を100ppm以下とし、Cr含量を5重量%以上とすることにより、後述の実施例において記載される方法で測定されたすきま腐食量が著しく減少することが明らかである。一般に海水による腐食が生じると腐食した部分に海水生物が付着しやすくなる。従って耐海水腐食性の向上は、耐海水生物付着性の改善にとって不可欠である。
【0007】
図2はFe−30%Cr合金(C+N+P+O+S=62ppm)に関して、(Pb+Bi)量と海水生物付着量との関係を示すグラフであり、(Pb+Bi)量が0.001重量%以上となると生物付着量が低下し、海水生物の付着の抑制効果が発現することが明らかにされている。
なお、生物付着量の試験方法は実施例に記載されている。
【0008】
図3はFe−36%Cr−0.01%Pb−0.01%Bi合金(C+N+P+O+S=50ppm)に関して、(Cu+Sn+As+Sb)量と生物付着量との関係を示すグラフであり、上記の量が0.03重量%以上となると、Pbおよび/またはBiの特定量の含有と相乗して生物付着量が低下すること、すなわち、海水生物の付着の抑制効果が相乗的に発現することが明らかにされている。
【0009】
【構成】
以下、本発明の構成を詳述するが、本発明のより好ましい態様およびそれに基づく利点が明らかとなろう。
【0010】
C,N,P,O,S:これらの元素の合計量は100ppm以下、好ましくは80ppm以下である。このようにすることにより本発明の合金の海水中での耐食性が向上し、結果として耐海水生物付着性が改善される。しかも耐海水腐食性の維持に必要なCr量を従来より大巾に低減できる。
【0011】
Cr:Cr含量は5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。
上記範囲の値であることにより、上記のC,N,P,OおよびSの合計量の条件と結合して優れた耐海水腐食性を発現する。しかも従来のFe−Cr合金と同等の耐海水腐食性を発現するためのCr含量は著しく少なくて済むので経済的である。過剰にCrを含有すると合金の製造性が低下する。
【0012】
Pb,Bi:これらの元素はフジツボ等の海水生物の付着を抑制する効果を示し、これらの元素の含有量は、単独または複合して下記式(1)、好ましくは式(1)´を満たす。
0.001重量%≦Pb+Bi≦1.0重量%…………………(1)
0.01重量%≦Pb+Bi≦0.5重量%…………………(1)´
上記範囲であることにより、前記のC,N,P,O,Sの合計量の条件およびCr含量の条件と結合して優れた海水生物付着抑制効果を発現する。しかしながら、過剰の含有は合金の熱間加工性や耐食性などの性質が低下する。
【0013】
Cu,Sn,As,Sb:これらの元素は、含有しなくても良いが、好ましくは下記式(2)、より好ましくは式(2)´を充足するように含有することにより前記の条件と相乗して著しく耐海水生物付着性に優れたFe−Cr合金が得られる。
0.03重量%≦Cu+Sn+As+Sb≦2.0重量%……(2)
0.1重量%≦Cu+Sn+As+Sb≦1.0重量%……(2)´
しかしながら、これらの元素の過剰の含有は、合金の製造性、特に熱間加工性および合金の表面品質が低下する。
【0014】
以上の条件を充足する本発明のFe−Cr合金は耐海水生物付着性に著しく優れ、特に海水温度が比較的高い海域で冷却水として海水を取りこむ発電所の冷却水配管系の用途に好適に用いられる。
【0015】
本発明のFe−Cr合金は原料として、超高純度電解鉄、電解Cr、更には下記の元素を用いて製造することができる。
Pb:電解鉛Bi:ゾーンメルト法精製ビスマスCu:電解銅Sn:電解錫As:酸化物還元法精製砒素Sb:ゾーンメルト法精製アンチモンいずれの原料も主たる不純物は酸素であり、この酸素を除去するために10−5torr、望ましくは10−7torrよりも高い超高真空下で溶解、鋳造することにより本発明のFe−Cr合金を製造することができる。
【0016】
【実施例】
表1に示す成分範囲の供試材を100kg高周波誘導加熱超高真空溶製炉にて作製した。これらの供試材を鋳造、切削、熱間圧延を行った後、焼鈍、冷間圧延を行って2.0mmt の鋼板を製造した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
しかるのちに、これらの材料から二つのすきま腐食試験片(試験片A:2t ×15×25mm、試験片B:2t ×25×40mm)および生物付着試験片(試験片C:2t ×25×40mm)を切り出し、海水中耐すきま腐食性ならびに耐生物付着性をしらべた。結果を表2に示す。なお試験方法は下記の通りである。
【0022】
生物付着試験
試験片Cを生海水中(実海水温度下)に1年間浸漬した後、付着した生物(イ貝、カラス貝、フジツボ類等)をスクレーパーにて剥ぎおとしてその付着重量をしらべた。
【0023】
海水中耐すきま腐食試験
図4の如くに、上記の試験片Aおよび試験片Bをチタン製ボルトおよびナット(テフロン製ワッシャー使用)により合体し、生海水(室温、曝気下)中に1年間浸漬した後、クエン酸アンモニウムで除錆して、重量減少量を測定した。
【0024】
なお、表2で評価は以下のように行った。
【0025】
生物付着試験
生物付着量(mg)
◎ 25未満
○ 25〜 50未満
△ 50〜 75未満
× 75〜100未満
×× 100以上
【0026】
すきま腐食試験
腐食減量(mg)
◎ 5未満
○ 5〜 10未満
△ 10〜 20未満
× 20〜 30未満
×× 30以上
【0027】
この結果から明らかなように、Fe−Cr系合金(5≦Cr≦60)で、S,P,O,NおよびCの含有量を合計で100ppm以下とし、かつPb,Biを単独ないし複合で0.001重量%≦Pb+Bi≦1.0重量%含むことで耐食性および耐海水生物付着性に優れる合金が得られることがわかる。また、上の成分系に加えて、さらにCu,Sn,AsおよびSbの1種以上を0.03重量%≦Cu+Sn+As+Sb≦2.0重量%の範囲で含むことで一層耐海水腐食性および耐海水生物付着性に優れる合金が得られることが明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明の新規Fe−Cr合金は、耐海水生物付着性において著しく優れ、特に海水温度が比較的高く、海水生物が繁殖し易い環境での冷却水配管の用途に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cr含量および(C+N+P+O+S)量と耐海水腐食性の関係を示すグラフである。
【図2】(Pb+Si)量と生物付着量の関係を示すグラフである。
【図3】(Cu+Sn+As+Sb)量と生物付着量の関係を示すグラフである。
【図4】海水中の耐すきま腐食試験に用いた試験片の合体の様子を示す概念図である。
Claims (3)
- Cr含量が5〜60重量%であり、不純物としてのC,N,P,OおよびSの合計量が100ppm以下であり、かつPbまたは/およびBiを下記式(1)を満たすような範囲で含み、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする耐海水性・耐生物付着性に優れるFe−Cr合金。
0.001重量%≦Pb+Bi≦1.0重量%…………………(1) - 更にCu,Sn,AsおよびSbから選択される1種以上を含有し、その含有量が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のFe−Cr合金。0.03重量%≦Cu+Sn+As+Sb≦2.0重量%……(2)
- 超高純度原料を10-5torrの超高真空下で溶解・鋳造して得られた請求項1または2に記載のFe−Cr合金。
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