JP2000129406A - 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材 - Google Patents

耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材

Info

Publication number
JP2000129406A
JP2000129406A JP10309326A JP30932698A JP2000129406A JP 2000129406 A JP2000129406 A JP 2000129406A JP 10309326 A JP10309326 A JP 10309326A JP 30932698 A JP30932698 A JP 30932698A JP 2000129406 A JP2000129406 A JP 2000129406A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
corrosion resistance
less
alloy material
microbial
containing iron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10309326A
Other languages
English (en)
Inventor
Misako Tochihara
美佐子 栃原
Takeshi Yokota
毅 横田
Susumu Sato
佐藤  進
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP10309326A priority Critical patent/JP2000129406A/ja
Publication of JP2000129406A publication Critical patent/JP2000129406A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 淡水、海水および土壌環境中における使途に
好適な、十分な加工性および耐食性を有し、かつ優れた
耐微生物腐食性を有するCr含有鉄基合金材を提供する。 【解決手段】 重量%で、Cr:5〜40%、 Ag :0.0001
〜1%、Pb:0.0001〜 0.1%を含有し、あるいはさらに
Sn:0.0005〜 0.5%、Zn:0.0005〜 0.5%のうちから選
ばれた1種または2種、および/またはTi:0.0005〜3
%、Zr:0.0001〜1%のうちから選ばれた1種または2
種を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、淡水、海水および
土壌環境中で使用される各種装置、配管用パイプならび
にタンクなどの、耐微生物腐食性が要求される使途に好
適な、優れた耐微生物腐食性を有するCr含有鉄基合金材
に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼などのCr含有合金の腐食原
因の大部分は塩素イオンにあると言われている。その腐
食事例として、塩素イオンが材料表面の不動態皮膜を局
部的に破壊することにより生じる、孔食、隙間腐食、応
力腐食割れなどが挙げられる。しかし、最近、湖沼、河
川、海水あるいは土壌中などの環境で使用される設備
で、耐食性がよいとされているステンレス鋼などのCr含
有合金に、単に塩素イオンの影響のみでは説明できない
腐食事例が発生している。この腐食の原因としては微生
物が考えられている。微生物腐食であろうと判断された
ステンレス鋼の腐食事例はいくつかあり、それらに共通
の特徴的なことは、通常の塩素イオンの影響では考えら
れないほど施工後短時間で腐食が生じるということであ
る。この腐食は、溶接部近くに生じる事例が多いと言わ
れているが、溶接部以外の事例もあり、溶接との関連性
は明確ではない。
【0003】現在行われている微生物腐食対策として、
パイプ内の流体または土壌などに微生物を死滅させる効
果のある薬剤を投入する方法が広く行われている。しか
し、薬剤による環境への影響が問題である。そこで、材
料側からの対策として、CrやMoなどの耐食性改善に効果
的な元素を含有する鋼材を使用することが考えられる。
しかし、単にCr、Mo等を鋼材に添加し鋼材の耐食性を向
上させただけでは、微生物腐食を完全に防止するまでに
至っていない。また、特開平9−291343号公報には、溶
接金属のCr、Mo、NおよびNi含有量を調整し、かつδ−
フェライト量を規定して耐微生物腐食性を向上させる方
法が提案されている。しかし、溶接部以外にも微生物腐
食が発生することから、この方法でも、根本的な耐微生
物腐食性向上対策とはなっていない。
【0004】また、材料の微生物腐食を根本的に防止す
るには、材料に微生物を付着させないことが考えられ
る。微生物の付着を防ぐ方法として、例えば、特開平8
−239762号公報には、重量比でFe:10〜80%、Al:1〜
10%、あるいはさらに、Cr、Ni、Mn、Agのうちいずれか
1種以上を1〜15%含み、残部がCuおよび不可避的不純
物からなる抗菌、耐海生生物材料が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平8−23
9762号公報に記載された材料は、Al:1〜10%含有して
おり加工性が低く、配管などへの適用は困難であった。
また、この材料は、細菌や海生生物の付着をごく短時間
では阻止する効果はあるものの、プラントなどで長期に
使用した場合には、微生物の付着を阻止しきれず、材料
の腐食が進行するという問題があった。
【0006】本発明は、上記した従来技術の問題を有利
に解決し、十分な加工性および耐食性を有し、かつ優れ
た耐微生物腐食性を有するCr含有鉄基合金材を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは微生物腐食
の生じた箇所について詳細な調査を実施し、微生物腐食
機構を明確にすると同時に、加工性と一般的な耐食性の
両立の実現に向け鋭意研究を行った。特に、最新鋭電位
測定装置であるケルビンプローブ装置を駆使して、各種
Cr含有鉄基合金材の腐食電位の測定を行い、耐微生物腐
食性とCr含有鉄基合金材の成分組成との関連性について
詳細な検討を行った。
【0008】その結果、AgおよびPb、あるいはさらにS
n、Zn、Ti、Zrのうちの1種以上を適切な範囲に調整し
て添加することにより、従来に比べ加工性および一般的
な耐食性が劣化せず、耐微生物腐食性が顕著に向上した
Cr含有鉄基合金材が得られるという知見を得て、本発明
を完成するに至った。まず、本発明の基礎となった実験
結果について説明する。
【0009】一般的なフェライト系ステンレス鋼である
SUS430鋼板を、一般の河川から採取した河川水に浸漬
し、鋼板表面における腐食の進行状態を、ケルビンプロ
ーブ装置を用いて観察した。なお、このケルビンプロー
ブ装置から得られるデータは、微小部分のケルビン電位
として分析され、電位が低いほど腐食されにくいことを
意味する。比較のために、蒸留水を用いた腐食実験も同
様に実施した。
【0010】その結果、 蒸留水を用いた場合にくらべ、河川水を用いた場合に
は、ケルビン電位が非常に高く、腐食に対する活性が高
くなっていること、 微生物腐食が多く発生すると言われている溶接部と溶
接部以外の部分においても測定したところ、溶接部以外
の部分でもケルビン電位の高い部分が存在すること、 が確認され、河川水を用いると微生物腐食が進行するこ
と、溶接の有無に関係なく微生物腐食は進行する、こと
が推測された。
【0011】そこで、本発明者らは、さらにケルビンプ
ローブ分析装置を用いて、各種添加元素の耐微生物腐食
性への影響を調査した。その結果、耐微生物腐食性を向
上させる好適な元素が存在することが明らかになった。
耐微生物腐食性を向上させる好適な元素とは、Ag、Pb、
あるいはSn、Zn、Ti、Zrであり、AgおよびPb、あるいは
さらにSn、Znのうちの1種又は2種、Ti、Zrのうちの1
種または2種を単独又は複合して適切な範囲に調整して
添加することにより、従来に比べ加工性および一般的な
耐食性が劣化せず、耐微生物腐食性が顕著に向上すると
いう知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明は、重量%(以下、wt%
とも書く) で、Cr:5〜40%、 Ag:0.0001〜1%、P
b:0.0001〜 0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的
不純物からなる組成を有することを特徴とする耐微生物
腐食性に優れたCr含有鉄基合金材であり、また、本発明
では、前記組成に加えて、さらに、重量%で、Sn:0.00
05〜 0.5%、Zn:0.0005〜 0.5%のうちから選ばれた1
種または2種を含有した組成とするのが好ましく、ま
た、本発明では、前記各組成に加えて、さらに、重量%
で、Ti:0.0005〜3%、Zr:0.0001〜1%のうちから選
ばれた1種または2種を含有する組成とするのが望まし
い。なお、不可避的不純物としては、C: 0.1%以下、
Si: 0.2%以下、Mn:1%以下、P: 0.2%以下、S:
0.01%以下、N: 0.1%以下、O:0.01%以下が許容さ
れる。
【0013】また、本発明では、上記した各組成に加え
て、必要に応じ、重量%で、Ni:15%以下、W: 1.0%
以下、Mo: 3.0%以下のうちの1種または2種以上、あ
るいはSi: 2.0%以下、Cu: 1.5%以下のうちの1種ま
たは2種、あるいはNb: 1.0%以下、V: 1.0%以下、
B: 0.005%以下のうちの1種または2種以上を単独あ
るいは複合して添加することができる。
【0014】本発明のCr含有鉄基合金材では、上記した
範囲内(5〜40%)のCrを含有する公知のCr含有耐熱
鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステ
ンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼の組成に加
え、上記した範囲内のAg:0.0001%〜0.1 %、Pb:0.00
01〜 0.1%を含み、Sn:0.0005〜 0.5%、Zn:0.0005〜
0.5%、の1種又は2種、あるいはTi:0.0005〜 3%、
Zr:0.0001〜1%の1種又は2種を単独又は複合して
含有してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】まず、本発明のCr含有鉄基合金材
の化学組成の限定理由について説明する。 Cr:5〜40% Crは、耐微生物腐食性などの耐食性および耐酸化性を改
善する作用を有する有用な元素である。これらの作用は
5%以上の添加で認められる。Cr含有量が5%未満で
は、極端に耐食性が劣化し使用できる環境が極端に狭く
なるうえ、板表面における微生物腐食を抑制する効果が
十分ではない。一方、40%を超えて含有すると、著しく
加工性の劣化を招くため、Crの含有量は5〜40%の範囲
とした。Cr量はこの含有範囲の中で、使途に応じ要求さ
れる耐食性のレベルに応じて選択するのが望ましい。例
えば、パイプなどの用途に供され、特に厳しい耐食性と
加工性を考慮するときのCr含有量として、好ましくは、
9.0 〜19.0%があげられる。
【0016】Ag:0.0001〜1.0 % Agは、本発明で最も重要な元素の一つであり、従来から
抗菌作用を有することで知られている。Agは、この抗菌
効果に加えて微生物腐食に対しても、微量の添加で大き
な抑制効果を有する。Agが耐微生物腐食性に及ぼす機構
の詳細は不明であるが、高分解能の走査型電子顕微鏡や
電界放射型オージェ電子分光分析装置を駆使して、微生
物腐食を起こした部分の表面観察と元素分析を行った結
果から、 微量溶出したAgイオンが、材料表面への微生物の付着
・繁殖を防止する、 溶出したAgイオンが、材料表面の酸化皮膜の一部ある
いは酸化物系介在物と反応または材料表面の酸化皮膜の
一部あるいは酸化物系介在物に吸着され、複合酸化物な
どの化合物または配位吸着物として生成することによ
り、微生物の付着・繁殖を防止する、ことが推定でき
た。
【0017】Ag含有量が0.0001%未満では、Agイオンの
溶出量が十分ではなく、耐微生物腐食性に及ぼす効果が
十分ではない。一方、Ag含有量が1.0 %を超えると、耐
微生物腐食性を高める効果はあるが、耐食性が劣化する
とともに、高価なAgを多量に添加することとなりコスト
的に不利である。このようなことから、Agは0.0001〜1.
0 %の範囲に限定した。
【0018】Pb:0.0001〜0.1 % Pbは、本発明で最も重要な元素の一つであり、微生物腐
食に対し微量の添加で大きな効果が得られる。Pbの耐微
生物腐食性に及ぼす機構は、現在のところ詳細は不明で
あるが、Agの場合と同様な機構が考えられる。しかもAg
はPbの存在下で有効に働く。Pb含有量が0.0001%未満で
は溶出量が十分ではなく、耐微生物腐食性に及ぼす効果
が十分ではない。一方、Pb含有量が0.1 %を超えると、
耐微生物腐食性は飽和し、逆に耐食性が低下する。この
ようなことから、Pbは0.0001〜0.1 %の範囲に限定し
た。
【0019】Sn:0.0005〜 0.5%、Zn:0.0005〜 0.5%
のうちから選ばれた1種または2種 Sn、Znは、いずれもCr含有鉄基合金材のケルビン電位を
低下させる効果、すなわち微生物腐食性を向上させる効
果がある。より耐微生物腐食性が求められる環境下の使
途に供せられる場合には、その耐微生物腐食性を向上さ
せるために含有させることが望ましい。この効果は、S
n、Znとも0.0005%以上の含有で顕著に現れる。一方、S
nは0.5 %を超える含有で、熱間割れ性が高まり、溶接
部の亀裂感受性を助長し、また加工性も低下する。した
がって、Snは0.0005〜0.5 %の範囲に限定するのが望ま
しい。また、Znは、Feに固溶し難い元素であり、0.5 %
超の添加では金属間化合物として析出するため、機械強
度および伸びが低下し、加工性が低下する。したがっ
て、Znは0.0005〜0.5 %の範囲に限定するのが望まし
い。
【0020】Ti:0.0005〜3%、Zr:0.0001〜1%のう
ちから選ばれた1種または2種 Ti、Zrは、いずれも酸化物系介在物そして粒界または鋼
板表面に析出し、耐微生物腐食性を改善し材料表面の清
浄作用を有する。Ti酸化物単独、Zr酸化物単独でも耐微
生物腐食性は認められるが、その鋼板表面に析出したTi
酸化物、Zr酸化物に、鋼板表面から溶出したAgイオンま
たは鉛イオンが付着、吸着、配位することにより、より
大きな微生物の付着を防止する効果、または微生物の繁
殖を抑制する効果が認められる。この付着したイオンは
一部化学反応し、AgTiO3などの複合酸化物を生成する場
合もあるが、その耐微生物腐食性への効果は同じであ
る。これらの効果は、Tiが0.0005%以上、Zrが0.0001%
以上の含有で顕著に認められる。一方、3%を超えるTi
の含有では、粗大なTiの炭窒化物の生成が増大し表面性
状を劣化させるほか、成形加工性の低下が著しいので、
Tiは0.0005〜3%に限定するのが望ましい。一方、1%
を超えるZrの含有では、原因は明確ではないがSnとの共
存により耐食性が劣化するので、Zrは0.0001〜1%に限
定するのが望ましい。
【0021】本発明の鋼材は耐微生物腐食性に優れてい
るが、その他の特性、例えば成形加工性、耐食性、機械
強度などの特性をより向上させるには、以下の元素を添
加することができる。Ni:15%以下、W: 1.0%以下、
Mo: 3.0%以下のうちの1種または2種以上 Ni、W、Moは、いずれも固溶強化作用を有し材料の強
度、靱性を向上させる作用を有する。
【0022】Niは、フェライト系ステンレス鋼またはマ
ルテンサイト系ステンレス鋼においては、微量の添加
で、靱性の向上および低温脆性改善の効果を持つ元素で
ある。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著に認
められる。また、Niは強力なオーステナイト相安定化元
素でもあり、8%以上の含有ではオーステナイト相を形
成し、耐食性や耐応力腐食性が向上する。一方、15%を
超えるNiの含有では熱間加工性が低下するほか、価格的
にも不利となる。このようなことから、本発明では、Ni
を含有する場合には、15%以下、好ましくは0.01%以上
に限定するのが望ましい。
【0023】Wは、基地を強化し、さらに時効硬化性を
持つ元素であり、引張強さおよびクリープ特性を改善す
る。その効果は0.001 %以上で顕著に現れるが、高価な
元素であるので、過度のコスト上昇を避けるため、含有
する場合には、1.0 %以下の範囲に止めるのが望まし
い。Moは、固溶強化作用を有し、さらに高温強さとクリ
ープ破断強さを高め、かつ靱性を改善する元素である。
その効果は、0.01%以上の添加で顕著に現れる。しか
し、Moは高価な元素でもあるので、過度のコスト上昇を
避けるため、含有する場合には、3.0 %以下の範囲に止
めるのが望ましい。
【0024】Si: 2.0%以下、Cu: 1.5%以下のうちの
1種または2種 Si、Cuは、いずれも耐食性を向上させる元素であり、必
要に応じ含有できる。Siは、耐食性のうちとくに耐孔食
性、特に溶接部の耐孔食性を改善する有効な元素であ
る。その効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、
2.0 %を超えるSiの含有では、熱間加工性と溶接性が低
下するので、含有する場合には、2.0 %に限定するのが
望ましい。
【0025】Cuは、耐食性に加えて、加工性をも向上さ
せるのに有効な元素である。その効果は、0.05wt%以上
の含有で顕著に認められる。一方、過剰の含有は、熱間
加工性が阻害され高温割れに敏感となるので、1.5 %以
下に限定するのが望ましい。Nb: 1.0%以下、V: 1.0
%以下、B: 0.005%以下のうちの1種または2種以上 Nb、V、Bは、いずれも加工性を向上させる元素であ
り、必要に応じ含有できる。
【0026】Nbは、加工性の向上効果、および溶接部の
耐粒界腐食性を高める効果を持つ元素である。このよう
な効果を顕著に発揮させるためには、0.1 %以上の含有
が必要であるが、1.0 %を超えて含有するとアンダービ
ードクラックが発生するなど、加工性の低下が起こるの
で、含有する場合には、Nbは1.0 %以下の範囲に限定す
るのが望ましい。なおより好ましくは0.4 〜0.6 %の範
囲である。
【0027】Vは、r値を向上させ、成形加工性の改善
に効果がある元素である。その効果は、0.1 %以上で顕
著に現れるが、過剰に含有すると粗大な炭窒化物を析出
し、表面性状を悪化させるので、1.0 %以下の範囲とす
るのが望ましい。より好ましくは、0.1 %以上で15(%
C+%N)以下の範囲である。Bは、2次加工性の向上
に有効な元素である。その効果は、0.0004%以上の含有
で顕著となる。一方、0.005 %を超えて含有しても、多
量のBNを生成して加工性が劣化するため、0.005 %以下
の含有に限定するのが好ましい。なお、より好ましく
は、加工性の劣化がほとんどない、0.0004〜0.0015%で
ある。
【0028】本発明のCr含有鉄基合金材では、上記した
成分以外は、残部Feおよび不可避的不純物であるが、不
可避的不純物として、C: 0.1%以下、Si: 0.2%以
下、Mn:1%以下、P: 0.2%以下、S:0.01%以下、
N: 0.1%以下、O:0.01%以下が許容される。Cは、
0.02 %以下が好適であるが、0.1 %以下までは許容で
きる。Siは、0.05%以下が好適であるが、 0.2%までは
許容できる。Mnは、 0.5%以下が好適であるが、1%ま
では許容できる。Pは、0.1 %以下が好適であるが、
0.2%までは許容できる。Sは、 0.005%以下が好適で
あるが、0.01%までは許容できる。Nは、0.05%以下が
好適であるが、 0.1%までは許容できる。Oは、 0.005
%以下が好適であるが、0.01%までは許容できる。
【0029】また、本発明のCr含有鉄基合金材は、上記
組成のうち、少なくともCrが上記範囲(5〜40%)とな
る公知の耐熱Cr合金鋼、オーステナイト系ステンレス
鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステ
ンレス鋼のいずれかの組成範囲に加え、Ag:0.0001〜1
%、Pb:0.0001〜 0.1%を含有し、あるいはさらにSn:
0.0005〜 0.5%、Zn:0.0005〜 0.5%のうちから選ばれ
た1種または2種、および/またはTi:0.0005〜3%、
Zr:0.0001〜1%のうちから選ばれた1種または2種を
含有する組成としてもよい。
【0030】耐熱Cr合金鋼の好適な基本組成範囲として
は、C:0.01〜 0.1%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0%以
下、Cr:5〜40%、Al: 0.2%以下、N: 0.1%以下で
ある。オーステナイト系ステンレス鋼の好適な組成範囲
としては、C:0.01〜 0.1%、Si: 2.0%以下、Mn:
2.0%以下、Cr:5〜40%、Ni:6〜15%、N:0.01〜
0.1%である。
【0031】フェライト系ステンレス鋼の好適な組成範
囲としては、C: 0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn: 2.
0%以下、Cr:5〜40%、N: 0.1%以下である。マル
テンサイト系ステンレス鋼の好適な組成範囲としては、
C:0.001 〜1%、Si:1%以下、Mn:2%以下、Cr:
5〜40%、N: 0.007〜0.03%である。上記した基本組
成範囲に、強度、靱性、耐食性を向上させる目的でNi、
W、Mo、Cu等の合金元素を前記した範囲内に含有できる
ことは言うまでもない。
【0032】本発明のCr含有鉄基合金材は、通常公知の
溶製方法全てを適用し溶製できるため、溶製方法は特に
限定する必要はない。例えば、溶製法としては、転炉、
電気炉等で溶製し、SS−VOD(Strongly Stirred V
acuum Oxygen Decarburization) により2次精練を行う
のが好適である。溶製した溶湯は、通常公知の鋳造方法
で圧延素材とすることができるが、生産性および品質上
から、連続鋳造法を適用するのが好ましい。溶湯中に含
有されるAg、Pb、Sn、Zn、Ti、Zrおよびこれらの酸化物
などの化合物が微細にかつ均一に分散させるために、連
続鋳造速度を0.7 〜1.7m/minの範囲とするのが望まし
い。連続鋳造速度が0.7m/min未満では、表面欠陥が発生
し、一方、1.7m/minを超えるとAg、Pbが微細析出しにく
い。
【0033】連続鋳造法により所定の寸法形状にされた
圧延素材は、必要に応じ所定温度に加熱され、ついで熱
間圧延により所望の板厚の熱延板とされる。熱延板は、
必要に応じ好ましくは700 〜1200℃の焼鈍を施されたの
ち、冷間圧延を施され所定の板厚の冷延板とされる。冷
延板は、好ましくは700 〜1180℃の焼鈍および酸洗を施
され、冷延焼鈍板とされるのが望ましい。また、使途に
よっては、熱延板もしくは熱延焼鈍板のまま用途に供す
ることも可能である。
【0034】また、本発明では、合金材の表面粗さを使
途に応じて調整することが可能である。一般的な表面仕
上げである2B材、2D材、BA材、HL材、No.4、ダル・エン
ボス加工、機械研磨仕上げなどの仕上げ表面が例として
あげられる。さらに、本発明のCr含有鉄基合金材は、板
材は勿論のこと、帯板、パイプ、プレス品および線材な
どのあらゆる加工品のどのような形状にも適用できるこ
とは言うまでもない。
【0035】
【実施例】表1に示す化学組成の溶鋼を、連続鋳造によ
り200mm 厚のスラブとしたのち、これらスラブを 700℃
〜1200℃に加熱し、熱間圧延により板厚4mm の熱延板と
した。これら熱延板に、熱延板焼鈍、酸洗を施したの
ち、冷間圧延により冷延板とした。ついで、これら冷延
板に 700〜1200℃の冷延板焼鈍を施したのち、酸洗し
て、板厚1.0mm の冷延焼鈍板とした。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】これらの冷延焼鈍板について、耐微生物腐
食性試験、耐食性試験、成形加工性試験および安全性試
験を実施した。以下に、各試験の試験方法について説明
する。 (1)耐微生物腐食性試験 次に示す手段に基づき耐微生物腐食性を評価した。
【0040】冷延焼鈍板から、10cm角の平板試験体を
切り出す。 一部の平板試験体については、その中央部にTIG 溶接
を施し、溶接試験体とする。 、で作製した平板試験体と溶接試験体の表面を、
それぞれ99.5%エタノールを含浸させた脱脂綿を用いて
ワイピングし、脱脂処理する。
【0041】得られた試験体を、河川水を連続的に汲
み上げる試験槽内に、40℃に保温し、180 日間浸漬す
る。 浸漬開始後、90日目および180 日目の試験体を試験水
槽内から取り出し、孔食の有無を顕微鏡で観察する。 結果を以下の基準で評価する。
【0042】180 日まで孔食なし:◎ 90日までは孔食なし、90日以降180 日まで10個未満の孔
食発生:○ 90日までは孔食なし、90日以降180 日まで10個以上の孔
食発生:△ 90日以前に孔食発生あり:× (2)耐食性試験 次に示す手順に基づき、塩乾湿潤複合サイクル試験を5
サイクル実施後、板表面の発銹面積率により耐食性を評
価した。
【0043】冷延焼鈍板から、10cm角の平板試験体を
切り出す。 平板試験体に5.0 %NaCl水溶液(温度:35℃)を0.5h
r 噴霧した後、試験体を湿度40%以下、温度60℃の乾燥
雰囲気で1.0hr 保持する。 試験体を、湿度95%以上、温度40℃の湿潤雰囲気で1.
0hr 保持する。 、の手順を1サイクルの処理とし、この処理を全
部で5サイクル繰り返した後、試験体表面の発銹面積率
(%)を測定する。
【0044】結果を以下の基準で評価する。 発銹面積率が5%未満:○ 発銹面積率が5%以上:× (3)成形加工性試験 密着曲げ試験方法により成形加工性を評価した。
【0045】冷延焼鈍板について、JIS Z 2248金属材料
曲げ試験方法に準拠して、内側半径が0mm、曲げ角度18
0 °として行った。評価は、曲げ部に割れが生じていな
ければ○、割れが生じていれば×とした。 (4)安全性試験 次に示す変異原生試験および皮膚一次刺激性試験により
安全性を評価した。
【0046】(4−1)変異原生試験 冷延焼鈍板について、微生物としてEscherichia coil
WP2uvr A株、およびSalmonella Typhimurium TA
系の菌を用いて、代謝活性化を含む復帰変異試験を行
い、復帰変異コロニー数が増加していれば陽性(+)、
変化がなければ陰性(−)とした。
【0047】(4−2)皮膚一次刺激性試験 冷延焼鈍板をウサギの皮膚に4時間接触させ、その後72
時間までの紅斑、浮腫等の刺激異常の有無を確認した。
異常があれば陽性(+)、異常がなければ(−)とし
た。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】本発明例は、従来にくらべ耐食性、加工性
の劣化を伴わず、耐微生物腐食性に優れ、かつ変異原
生、皮膚一次刺激性に代表される安全性にも優れた合金
材であることがわかる。とくに、所定量のCrを含有し、
Ag、Pbに加えてSnおよび/またはZn、あるいはTiおよび
/またはZrを含有する(板No.21 〜No.23 、板No.25 〜
No.27 、板No.29 〜No.34 、板No.36 〜No.38 、板No.4
0 〜No.42 )と耐微生物腐食性がさらに向上し、Ag、Pb
に加えてSn、Zn、Ti、Zrを含有する(板No.43 〜No.63
)と耐微生物腐食性が顕著に向上する。
【0052】これに対し、Crが本発明の下限を外れる比
較例(板No.1)は、耐微生物腐食性、耐食性が劣化して
いる。また、Crが本発明の上限を外れる比較例(板No.
7)は、加工性が低下している。また、Agが本発明の下
限を外れる比較例(板No.8)は耐微生物腐食性が劣化
し、Agが本発明の上限を外れる比較例(板No.14 )は耐
食性が劣化している。また、Pbが本発明の上限を外れる
比較例(板No.20 )は耐食性が劣化している。また、Sn
が本発明の上限を外れる比較例(板No.24 )、Znが本発
明の上限を外れる比較例(板No.28 )、Tiが本発明の上
限を外れる比較例(板No.35 )は加工性が劣化し、Zrが
本発明の上限を外れる比較例(板No.39 )は耐微生物腐
食性、耐食性、加工性が劣化している。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、従来材にくらべ加工
性、耐食性を劣化させることなく、耐微生物腐食性に優
れたステンレス鋼を含むCr含有鉄基合金材を提供でき
る。これにより、耐微生物腐食性が要求される分野への
Cr含有鉄基合金材の適用拡大が期待でき、産業上格段の
効果を奏する。
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Cr:5〜40%、
    Ag :0.0001〜1%、Pb:0.0001〜 0.1%を含有
    し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有す
    ることを特徴とする耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基
    合金材。
  2. 【請求項2】 前記組成に加えて、さらに、重量%で、
    Sn:0.0005〜 0.5%、Zn:0.0005〜 0.5%のうちから選
    ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求
    項1に記載の耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金
    材。
  3. 【請求項3】 前記組成に加えて、さらに、重量%で、
    Ti:0.0005〜3%、Zr:0.0001〜1%のうちから選ばれ
    た1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    または2に記載の耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合
    金材。
JP10309326A 1998-10-30 1998-10-30 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材 Pending JP2000129406A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10309326A JP2000129406A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10309326A JP2000129406A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000129406A true JP2000129406A (ja) 2000-05-09

Family

ID=17991678

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10309326A Pending JP2000129406A (ja) 1998-10-30 1998-10-30 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000129406A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005060769A (ja) * 2003-08-12 2005-03-10 Kobe Steel Ltd 耐食性に優れた鋼材
TWI454583B (zh) * 2012-10-30 2014-10-01 Nat Univ Tsing Hua 含鋅肥粒鐵不銹鋼及其製造方法
CN108707814A (zh) * 2018-04-17 2018-10-26 常熟市虹桥铸钢有限公司 一种石油机械用双闸板铸件
JP6809656B1 (ja) * 2019-07-31 2021-01-06 Jfeスチール株式会社 オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼板
WO2021019909A1 (ja) * 2019-07-31 2021-02-04 Jfeスチール株式会社 オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼板

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005060769A (ja) * 2003-08-12 2005-03-10 Kobe Steel Ltd 耐食性に優れた鋼材
TWI454583B (zh) * 2012-10-30 2014-10-01 Nat Univ Tsing Hua 含鋅肥粒鐵不銹鋼及其製造方法
CN108707814A (zh) * 2018-04-17 2018-10-26 常熟市虹桥铸钢有限公司 一种石油机械用双闸板铸件
JP6809656B1 (ja) * 2019-07-31 2021-01-06 Jfeスチール株式会社 オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼板
WO2021019909A1 (ja) * 2019-07-31 2021-02-04 Jfeスチール株式会社 オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼板
JP2021025134A (ja) * 2019-07-31 2021-02-22 Jfeスチール株式会社 オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼板
TWI721924B (zh) * 2019-07-31 2021-03-11 日商杰富意鋼鐵股份有限公司 沃斯田鐵-肥粒鐵系二相不鏽鋼鋼板
CN114207159A (zh) * 2019-07-31 2022-03-18 杰富意钢铁株式会社 奥氏体-铁素体系双相不锈钢板
CN114207159B (zh) * 2019-07-31 2023-10-24 杰富意钢铁株式会社 奥氏体-铁素体系双相不锈钢板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2773785B1 (en) Duplex stainless steel
JP6792951B2 (ja) オゾン含有水用二相ステンレス鋼
US6306341B1 (en) Stainless steel product having excellent antimicrobial activity and method for production thereof
US20190106775A1 (en) Ferritic stainless steel sheet
KR20190042045A (ko) 내황산 이슬점 부식강
CA2861030C (en) Ferrite-based stainless steel plate having excellent resistance against scale peeling, and method for manufacturing same
US6391253B1 (en) Stainless steel having excellent antibacterial property and method for producing the same
US11401573B2 (en) Ferritic stainless steel sheet and method for manufacturing the same
JP4190993B2 (ja) 耐隙間腐食性を改善したフェライト系ステンレス鋼板
US20200385834A1 (en) Raw material for cold-rolled stainless steel sheet and method for manufacturing the same
EP3040427A1 (en) High-strength hot-rolled plated steel sheet and method for manufacturing same
JP3227405B2 (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP2000129406A (ja) 耐微生物腐食性に優れたCr含有鉄基合金材
JP2000313940A (ja) 二相ステンレス鋼材およびその製造方法
US20160168673A1 (en) Ferritic stainless steel having excellent corrosion resistance of weld zone
JP4784364B2 (ja) 除錆性および耐発銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
JPH07258801A (ja) 耐食性と加工性に優れたFe−Cr−Ni系合金
JP2017190522A (ja) 鋼材
JP3227418B2 (ja) 抗菌性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JPH06172935A (ja) 耐候性、耐銹性に優れた高Cr,P添加フェライト系ステンレス鋼
JP3229577B2 (ja) 抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼
JP3358678B2 (ja) 建材用オーステナイト系ステンレス鋼
JPH0635615B2 (ja) 溶接部の耐食性にすぐれたフエライト系ステンレス鋼材の製法
JP3567280B2 (ja) 極軟質オーステナイト系ステンレス鋼
JP3276303B2 (ja) 初期発銹の起こりにくい耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040325

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050307

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050419

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20050816