JP2005060769A - 耐食性に優れた鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐食性向上元素の過剰な添加による機械的特性および溶接性の低下をきたすことなく、優れた耐食性を有することができる鋼材を提供する。
【解決手段】 (1) Znを含有し、更にCr:6.0質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%の1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材、(2) Zn:0.0001〜30質量%を含有し、更にCr:0.2質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%の1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材、(3) 前記鋼材においてTi:0.01〜1.0質量%を含有するもの、(4) 前記鋼材においてC:0.20質量%以下、Si:0.10〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Al:0.05〜0.50質量%を含有するもの等。
【選択図】 図なし

Description

本発明は、耐食性に優れた鋼材に関する技術分野に属するものである。
腐食環境で使用される鋼は、めっき、塗装、溶射、電気防食などの対策のいずれかがなされることが一般的である。しかしながら、めっき、塗装、溶射などの表面皮膜には必ず何らかの微細欠陥があり、その部分の腐食が進行すると局部的に反応が大きく進行し、信頼性の面で必ずしも安全でない場合も多い。また、電気防食などは経済性の問題はいうに及ばず、装置の信頼性や設定条件を誤るとかえって腐食を進行させることもあり、完全なものではない。
近年、信頼性の向上や、製造・施工工程の簡素化、メンテナンスフリー化、経済的な要請、省資源等の観点から、鋼素地の耐食性向上を目的としたCr含有鋼やステンレス鋼の使用が増大している。しかしながら、素材コストの上昇や溶接性、機械的特性、経済性等を考慮した場合に耐食性を満足する素材が使用できず、これらは抜本的な対策とならない場合が多い。
鋼素地の耐食性向上を目的とした鋼材として鋼にCr,Cu,Ni,P等の化学成分を適量添加した耐候性鋼材があり、この耐候性鋼材としてJISに溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(SMA:JIS G 3114)と高耐候性圧延鋼材(SPA:JIS G 3125)の二種が規定されている。耐候性鋼は、鋼材表面に生成した緻密な安定錆層により永続的な腐食の進行を遮るといった鋼であり、内陸地方などマイルドな腐食環境等では使用実績がある。
従来の耐食性向上手段の中、表面処理については局部的腐食進行による信頼性の面で問題があり、電気防食などは装置や条件の問題、経済性の問題があり、Cr含有鋼やステンレス鋼は溶接性、機械的特性や素材コストの上昇や経済性を考慮した場合に耐食性を満足する素材が使用できず、抜本的な対策とならない場合が多い。
耐候性鋼においては、安定な錆層を生成するまでには約10年以上もの長期間を要し、実用上は初期の腐食及びそれに伴う赤錆の流出などが問題になっている。高温多湿な気候である日本では特にその傾向が強い。耐候性鋼を裸使用する際の錆安定化までの錆汁による周囲構造物の汚染などを防止する目的で、錆安定化処理が一般的に行われている。ただし、この方法も錆汁を防ぐのみで裸使用と同様、塩分が多く飛来する環境では緻密な錆層の生成が阻害され、期待した効果が得られないといった問題がある。
このような問題点を解決する手段も従来から提案されている。例えば、特公昭53-22530号公報、特公昭56-33991号公報、特公昭58-39915号公報、特公昭58-17833号公報、特開平02-133480 号公報、特公平06-21273号公報等では、耐候性鋼の表面に樹脂を塗装することにより、外部環境からの飛来塩分の侵入を防ぎ、安定錆の生成を促進する方法が提案されている。上記特開平02-133480 号公報には、鱗片状結晶構造のFe3O4 、燐酸、ブチラール樹脂及び残部が溶剤である安定錆の生成を促進する表面処理液が開示されている。上記特公平06-21273号には、P,Cu,Cr,Ni,Si及びMoの化合物の1種以上、Fe2O3 、Fe3O4 、燐酸、ビスフェノール系エポキシ樹脂及び残部が溶剤と塗料補助剤である塗装液を塗布する錆安定化表面処理方法が開示してある。
しかし、これらの方法はいずれも鋼材そのものを改善したものではなく、良い錆の生成を促進するには問題がある。即ち、樹脂塗装は、通常、微小な欠陥を有しており、その欠陥箇所においては塗膜の効果を期待できない。更には、塗膜欠陥部での腐食の進行は塗膜−素地界面での隙間腐食を引き起こすこととなり、安定錆層が生成する以前に塗膜自体の剥離、脱落を招くこともある。従って、塩分の飛来がさけられないような厳しい環境においての耐候性鋼の使用は制限を受けることとなり、大きな問題となっている。
鋼材そのものを改善したものとして、特開平10−330881号公報(特許文献1)や特開平11−71632号公報(特許文献2)に記載のものがある。前者の特開平10−330881号公報に記載のものは、Crフリー、Cu,Ni,Ti等の添加により、優れた耐候性が得られるというものである。しかし、機械的特性・溶接性・コストを勘案して合金添加量が制限され、それにより耐候性の向上が制限され、厳しい環境では耐候性が充分でないという問題点がある。後者の特開平11−71632号公報に記載のものは、Crフリー、Cu,Ni,Ti等の添加、さらに炭素当量特定により、耐候性を得つつ溶接性を確保する範囲を規定している。しかし、機械的特性・溶接性・コストを勘案して合金添加量を制限した結果、十分な耐食性が得られない。
特開平10−330881号公報 特開平11−71632号公報
鉄の耐食性向上のため、Cr,Cu,Niなどの耐食性向上元素の添加が常用されている。これらの元素は、一般的に、添加量が多いほど高い耐食性が得られるが、添加量が多くなるにつれて、機械的特性、溶接性の低下をきたすことが多く、更に、素材コストも高くなるため、元素添加量をなるべく低く抑えることが望ましい。
このように、耐食性の向上と鋼材特性やコストパフォーマンスの向上とは二律背反であり、両者を十分に満足するべく多くの検討が実施されているが、どこかのバランス点で妥協せざえるをえない。
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐食性向上元素の過剰な添加による機械的特性および溶接性の低下をきたすことなく、優れた耐食性を有することができる鋼材を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、耐食性に優れた鋼材に係わり、特許請求の範囲の請求項1〜6記載の耐食性に優れた鋼材(第1〜6発明に係る耐食性に優れた鋼材)であり、それは次のような構成としたものである。
即ち、請求項1記載の耐食性に優れた鋼材は、Znを含有し、更にCr:6.0質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%から選択される1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材である〔第1発明〕。
請求項2記載の耐食性に優れた鋼材は、Zn:0.0001〜30質量%を含有し、更にCr:0.2質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%から選択される1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材である〔第2発明〕。
請求項3記載の耐食性に優れた鋼材は、Ti:0.01〜1.0質量%を含有する請求項1または2に記載の耐食性に優れた鋼材である〔第3発明〕。
請求項4記載の耐食性に優れた鋼材は、C:0.20質量%以下、Si:0.10〜
1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Al:0.05〜0.50質量%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材である〔第4発明〕。
請求項5記載の耐食性に優れた鋼材は、Ca:0.0001〜0.01質量%、La:0.0001〜0.05質量%、Ce:0.0001〜0.05質量%の中の一種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材である〔第5発明〕。
請求項6記載の耐食性に優れた鋼材は、Nb:0.10質量%以下、V:0.10質量%以下、Zr:0.05質量%以下、Mo:0.25質量%以下、Mg:0.010質量%以下の中の一種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材である〔第6発明〕。
本発明に係る耐食性に優れた鋼材によれば、耐食性向上元素の過剰な添加による機械的特性および溶接性の低下をきたすことなく、優れた耐食性を有することができる。
本発明は、耐食性に優れた鋼材に係わり、基本的には、耐食性向上の効果があるCr,Cu,Niの1種以上を鋼材全体としては少量濃度に抑え、耐食性に寄与する表面にCr,Cu,Niの1種以上を濃化させて、その表面に多量濃度とさせるものである。
上記のことは、ZnをCr,Cu,Niの1種以上と複合添加することにより達成できる。Znは電気化学的に卑で鉄に広い組成範囲で固溶するので、腐食環境中へのFeの溶解を促進させる作用がある。これは一時的に鋼材の耐食性が低下することを意味するが、腐食初期にZnとFeが優先溶解することにより、鋼材表面にCr,Cu,Niの1種以上が取り残される形で濃化し、鋼材表面でのCr,Cu,Niの1種以上の濃度が高くなる。
即ち、本発明に係る耐食性に優れた鋼材は、Znを含有し、更にCr:6.0質量%(重量%)以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%(以下、%ともいう)から選択される1種以上を含有するようにしている〔第1発明〕。このようにCr,Cu,Niの1種以上の添加量は少なく、鋼材全体としては濃度が低いが、腐食初期にZnとFeが優先溶解することにより、鋼材表面にCr,Cu,Niの1種以上が取り残される形で濃化し、鋼材表面でのCr,Cu,Niの1種以上の濃度が高くなる。
このように鋼材表面にCr,Cu,Niの1種以上が濃化し鋼材表面でのCr,Cu,Niの1種以上の濃度が高くなるので、これにより耐食性が向上し、優れた耐食性を有することができる。また、Cr,Cu,Niの1種以上の添加量は少なく、鋼材全体としては濃度が低く、この量は機械的特性および溶接性の低下をきたすような過剰な添加量ではない。
従って、本発明に係る耐食性に優れた鋼材は、耐食性向上元素(Cr,Cu,Niの1種以上)の過剰な添加による機械的特性および溶接性の低下をきたすことなく、優れた耐食性を有することができる〔第1発明〕。即ち、耐食性向上元素(Cr,Cu,Niの1種以上)の添加量は機械的特性および溶接性の低下をきたさない程度の少量であるが、優れた耐食性を有することができる。
本発明に係る耐食性に優れた鋼材〔第1発明〕において、Znの含有量は一般鋼、スクラップレベル以上であることが必要である。Znの含有量が一般鋼、スクラップレベルの場合には、鋼材表面でのCr,Cu,Niの1種以上の濃化がほとんど起こらず、耐食性が不充分である。
Znは鋼の耐食性を向上させるのに必須で、鋼の母材耐食性を向上させるだけでなく、生成錆を緻密化、微細化させ保護性さび形成に非常に優位に働く機能を持つ。更に、亜鉛はFe母材を溶解しやすくし、耐食性向上元素を濃化させ、また、亜鉛の腐食生成物が鋼材表面を覆い、環境遮断膜の役割を果たすという効果がある。
Crは、大気中や海水中において耐食性向上元素となる。また、Crは鋼の強化のために有効な元素であるが、6.0%を超えて添加した場合、強化の効果が飽和すると共に、溶接性が悪くなるため、Crを添加する場合、Cr:6.0%(質量%)以下とする。なお、大気中や海水中での耐食性をより向上させ高水準なものとするには、Cr0.2%以上とすることが望ましい。
CuとNiは共に、耐食性向上効果や溶接性向上効果を有する元素であり、これらの1種または2種を含有することにより、これらの効果が発揮される。この内、Cuは電気化学的に鉄より貴な元素であり、鋼表面に生成する錆を緻密化して、安定錆層の形成を促進し、耐候性などの耐食性を向上させる効果を有する。また、溶接性の向上にも寄与する。Cu含有量が0.05%未満の場合にはこの効果がなく、3.0%を超えてもそれ以上の効果は得られず、逆に鋼材の製造のための熱間圧延等の加工の際に、素材の脆化(以下、熱間加工脆性ともいう)を引き起こす可能性がある。従って、Cuを添加する場合、Cu:0.05〜3.0%とする。なお、上記熱間加工脆性の発生をより確実に抑制するためには、Cu含有量を0.5%以下とすることが好ましい。即ち、Cu:0.05〜0.5%とすることが望ましい。
Niは、Cuの場合と同様に、鋼表面に生成する錆を緻密化して、安定錆層の形成を促進し、耐候性等の耐食性を向上させる効果を有する。また、溶接性の向上にも寄与する。更に、Niは、前記Cu添加の場合の熱間加工脆性を抑制する効果もある。従って、NiをCuと併せて含有させると、耐食性向上効果、熱間加工脆性の抑制効果の相乗効果が期待できる。
Ni含有量が0.05%未満の場合には、上記のような優れた効果を得ることはできない。一方、Niの過剰な含有は、完全オーステナイト組織における固液凝固温度範囲を広げて、低融点不純物元素のデンドライト粒界への偏析を助長するとともに、Sと反応して溶接金属の粒界に、低融点のNiS化合物を析出させ、凝固金属の粒界の延性を劣化させる。このように、Niの過剰な含有は、耐溶接高温割れ性に悪影響を与えるので、その上限の含有量は6.0%とすべきである。従って、Niを添加する場合、Ni:0.05〜6.0%とする。
CuとNiとをZnとともに添加した場合、Znが優先溶解した部分にCuおよびNiが濃化するため、通常のさび−鉄界面に濃化するよりも耐食性向上作用は大きくなる。
本発明に係る耐食性に優れた鋼材〔第1発明〕は、以上のように、Znを含有し、更にCr:6.0%以下、Cu:0.05〜3.0%、Ni:0.05〜6.0%の1種以上を含有することが必要であるが、鋼材の必要強度等に応じて上記Zn、Cr、Cu、Ni以外の元素を含有することができる。通常は、Znを含有し、更にCr:6.0%以下、Cu:0.05〜3.0%、Ni:0.05〜6.0%の1種以上を含有すると共に、C、Si、Mn、P、Sを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。この場合、Si、Mn、P、Sの含有量は、鋼材の用途によって異なり、適宜選択されるべきであるが、通常は、JISに規定されている一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)や溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JIS G 3114)あるいは高耐候性圧延鋼材(JIS G 3125)での量、または、C:0.50%以下、Si:0.05〜3.0%、Mn:3.5%以下、P:0.15%以下、S:0.02%以下、あるいは、C:0.30%以下、Si:0.05〜2.0%、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.02%以下である。なお、上記一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)のSS540の場合、C:0.30%以下、Mn:1.60%以下、P:0.040%以下、S:0.040%以下である。上記溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JIS G 3114)のSMA400の場合、C:0.18%以下、Si:0.15〜0.65%、Mn:1.25%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下であり、SMA570Wの場合、C:0.18%以下、Si:0.15〜0.65%、Mn:1.40%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下である。上記高耐候性圧延鋼材(JIS G 3125)の場合、C:0.12%以下、Si:0.25〜0.75%、Mn:0.20〜0.50%、P:0.070〜0.150%、S:0.040%以下である。
前述の本発明に係る耐食性に優れた鋼材(第1発明)におけるZnの含有量を0.0001〜30%に特定すると共に、Crの含有量を0.2%以下に特定すると、前述のZnの効果をより確実に得ることができると共に、大気の塩化物環境下での耐食性をより向上することができる。即ち、Zn:0.0001〜30質量%を含有し、更にCr:0.2質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%から選択される1種以上を含有する鋼材は、前述の本発明に係る耐食性に優れた鋼材(第1発明)の奏する効果に加えて、上記のような効果を奏する〔第2発明〕。
より詳細には、Znの含有量を0.0001%以上とすることにより、前述のZnの効果をより確実に得ることができ、Znの含有量を30%以下とすることにより、母材の耐食性を高水準に維持できる。Znの含有量:30%超の場合には、Fe母材の溶解が進み、母材の耐食性が低下する。一方、Crの含有量を0.2%以下とすることにより、大気の塩化物環境(海に近いところなど)下での耐食性、特に耐孔あき性をより向上することができる。即ち、大気の塩化物環境下では、Crが悪影響を及ぼす場合があり、Crの含有量を低減させた方が耐食性、特に耐孔あき性が向上する。Crの含有量を0.2%以下とすることにより、このような効果が得られ、大気の塩化物環境下での耐食性、特に耐孔あき性をより向上することができる。
上記のようなZnの効果をより確実に得ると共に母材の耐食性をより高水準に維持するためには、Znの含有量を0.0008〜10%とすることが望ましく、更には0.002〜3%とすることが望ましく、0.02〜1.0%とすることは更に望ましい。また、上記のような大気の塩化物環境下での耐食性をより高水準なものとするには、Crの含有量を0.02%以下とすることが望ましい。
以上の本発明に係る鋼材(第1発明、第2発明)において、Zn−Cu/Ni/Cr(Znと共にCu,Ni及びCrを含有)系のものよりも、Zn−Cu/Ni (Znと共にCu及びNiを含有)系のものの方が、大気の塩化物環境下での耐孔あき性には好ましい。即ち、Crフリーのものの方が大気の塩化物環境下での耐孔あき性に優れており、大気の塩化物環境下での耐孔あき性が重要な場合にはCrフリーのものの方が好ましい。
以上の本発明に係る鋼材(第1発明、第2発明)において、Ti:0.01〜1.0質量%を含有するようにすると、更に耐食性等が向上する〔第3発明〕。
即ち、Tiは、耐食性向上の効果を有する元素であり、Cr,Cu,Niと同様、生成錆を緻密化し安定錆層の生成を促進する有益な作用を有していると共に、非常に優れた耐食性を持たせる作用を有している。特に、塩化物環境下で特徴的に生成し鋼材の耐食性に悪影響を及ぼすβ-FeOOHさびの生成を、抑制し微細化する効果を持つ。また、鋼の清浄化という利点も併せ持っている。更に、亜鉛の腐食生成物を微細化し、緻密化し、腐食生成物による環境遮断による耐食性向上機能をより一層向上させる機能を有する。従って、Tiの添加により、以上のような効果が得られる。
このような効果は、Ti量:0.01%以上の添加により得られ、Tiを0.03%を超えて添加すると、その効果は著しく上昇し、Ti量:0.05%以上の添加が更に望ましい。しかし、過剰な添加を行っても、その効果は飽和傾向を示し、経済的にも好ましくなく、かかる点からTi量:1.0%以下とするのがよい。従って、Tiを添加する場合、上記第3発明に係るTiの添加量は0.01〜1.0%とする。かかる量(0.01〜1.0%)のTiの添加により、以上のような効果が得られ、更に耐食性等が向上する。
Tiは更に、靱性向上や溶接性向上の効果も有する。即ち、Tiの含有によって、溶接部の冷却過程において、強力なフェライト変態核となるTiC やTiN 等を鋼中に分散析出させ、溶接熱影響部の組織のフェライト微細化に大きく寄与する。Ti含有量が0.01%未満ではこの効果がなく、また、1.0%を越えてもその効果は飽和し経済的ではない。このTiの効果をより発揮させるためには、Tiを0.05%以上含有することが好ましく、また、Tiが0.5%を越えると、鋼の脆化が問題となる場合もあり、経済的でもない。このような点からすると、Ti含有量は0.05〜0.5%とすることが望ましい。
Cは鋼の強度に効く元素であり、390〜630N/mm2 級乃至それ以上の強度の確保に際し有効な元素であるが、C:0.2%超の場合には鋼の溶接性や裸耐候性を劣化させる。かかる点から、C:0.20%以下とすることが望ましい〔第4発明〕。
Siは溶鋼の脱酸や固溶強化のための元素であり、また、緻密な安定錆層の形成を促進し、裸耐候性などの耐食性を向上させる効果も有する。しかし、Si:0.10%未満では、これらの効果が不十分である。逆に多すぎて、Si:1.0%超の場合には、溶接性が低下する。このような点から、Si:0.10〜1.0%とすることが望ましい〔第4発明〕。
Mnは鋼の強度に効く元素であり、Cに替わり390〜630N/mm2 級乃至それ以上の強度の確保に有効な元素であるが、Mn:2.5%超の場合には、MnSが鋼中に多量に生成して、裸耐候性などの耐食性の劣化を招くおそれがある。かかる点から、Mn:2.5%以下とすることが望ましい〔第4発明〕。
AlはTiと複合添加することにより安定錆層の形成を一層促進し、ひいては耐食性を更に向上させる効果を有する。また、Alは溶接性の向上効果も有する。更に、Alは、溶鋼の脱酸元素として、固溶酸素を捕捉するとともに、ブローホールの発生を防止して、鋼の靱性の向上のためにも有効な元素である。Al含有量が0.05%未満では、これらの効果が十分には得られず、一方、Al含有量が0.50%を超えると、上記の安定錆層形成の促進による耐食性向上の効果は飽和し、逆に、溶接性を劣化させたり、アルミナ系介在物の増加により鋼の靱性を劣化させる。このような点から、Al:0.05〜0.50%とすることが望ましい〔第4発明〕。
そこで、本発明の第4発明に係る鋼材は、上記の本発明に係る鋼材(第1発明、第2発明、第3発明)において、C:0.20質量%以下、Si:0.10〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Al:0.05〜0.50質量%を含有するものとしている。
Caは、耐食性をより向上させる元素であり、また、溶接性の向上効果も有する。Caの耐食性向上の作用の1 つは、耐食性に有害なSを固定して、鋼マトリックスを清浄化することである。また、更に他の作用として、鋼中に微量固溶したCaが鋼表面やミクロ的な欠陥部での腐食進行過程において、鉄の腐食反応に伴い微量溶解してアルカリ性を呈する。このため、腐食 (アノード) 先端部の溶液pH緩衝効果を有し、腐食先端部での腐食を抑制する効果を有する。これらは、前記Crのような溶解時にpHを下げる元素の作用とは全く逆の作用を持っている。CaをTiと併用すると、前述のCrの低減効果やTi等の安定錆層の形成促進効果と合わせ、裸耐候性などの耐食性向上の相乗効果が生じる。このような効果は、Ca:0.0001%未満では発揮されないが、Caを過度に含有しても、その効果は飽和し、経済的ではない。特に、Caは、過度に含有されると、鋼の清浄度を悪くし、耐候性鋼材の製造時、特に製鋼中の炉壁を損傷する可能性も有している。この点から、Ca:0.01%以下とするのがよい。以上の点から、Ca:0.0001〜0.01%とすることが望ましい〔第5発明〕。
La、Ceは、鋼表面やミクロ的な欠陥部での腐食進行過程において、鉄の腐食反応に伴い微量溶解してアルカリ性を呈する。このため、腐食 (アノード) 先端部の溶液pH緩衝効果を有し、腐食先端部での腐食を抑制する効果を有する。これらは、前記Crのような溶解時にpHを下げる元素の作用とは全く逆の作用を持っている。前述のCrの低減効果やTi等の安定錆層の形成促進効果と併用すると、より一層の耐食性向上の相乗効果が期待できる。このような効果は、La:0.0001%未満やCe:0.0001%未満では発揮されないが、LaやCeを過度に含有しても、その効果は飽和し、経済的ではないし、鋼の機械的性質も悪くする。この点から、Laの場合もCeの場合も、0.05%以下とするのがよい。以上の点から、La:0.0001〜0.05質量%、Ce:0.0001〜0.05質量%とすることが望ましい〔第5発明〕。
そこで、本発明の第5発明に係る鋼材は、上記の本発明に係る鋼材(第1発明、第2発明、第3発明、第4発明)において、Ca:0.0001〜0.01質量%、La:0.0001〜0.05質量%、Ce:0.0001〜0.05質量%の中の一種以上を含有するものとしている。
Nb、V、Zrは、Tiと同様の効果を有し、生成する錆の非晶質化やα-FeOOHの割合を高くして、微細で緻密な錆を形成するとともに、β-FeOOHを抑制した安定錆層を形成する。しかし、その効果はTiに比べると劣っている。このため、これらの元素を含有させる際には、Tiの効果を補完するものとして、選択的に含有させるのがよい。これらの元素を含有させるに際し、多量に添加しても効果が飽和し、また、高価な元素であるため、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.05%以下とするのがよい〔第6発明〕。
Moは、塩素イオンの侵入を阻止するので、塩化物環境下の腐食防止に有用であるが、多量に添加しても効果が飽和し、また高価な元素であるため、0.25%以下とするのがよい。Mgは、鋼材の溶解に伴うpH低下を抑制し、鋼の腐食を抑制して耐食性向上に寄与する元素であるが、過剰に添加してもその作用は飽和してしまうので、0.010%以下とするのがよい〔第6発明〕。
そこで、本発明の第6発明に係る鋼材は、上記の本発明に係る鋼材(第1発明、第2発明、第3発明、第4発明、第5発明)において、Nb:0.10質量%以下、V:0.10質量%以下、Zr:0.05質量%以下、Mo:0.25質量%以下、Mg:0.010質量%以下の中の一種以上を含有するものとしている〔第6発明〕。
Sは、0.02%を越えて含有されると、腐食の起点となるFeS 、MnS が鋼中に多量に生成して、前記安定錆層の形成を阻害して、耐食性劣化を招く可能性がある。また、Niなどを過剰に含有した場合に、Sとの反応により、溶接金属の粒界に低融点のNiS 化合物を析出させ、凝固金属の粒界の延性を劣化させやすくなる。この点、S含有量を0.02%以下とすれば、前記低融点のNiS 化合物を析出させずに、Niをより多量に含有することが可能になる。従って、S含有量は0.02%以下とすることが望ましい。更には、S:0.01%以下とすることが望ましく、0.005%以下とすることは更に望ましい。
本発明に係る鋼材の適用の形態については、特には限定されず、例えば、熱間圧延した鋼板、冷間圧延した鋼板、または、熱延あるいは冷延を行った後に焼鈍を施した鋼板に、化成処理、溶融めっき、電気めっき、蒸着などのめっきや、各種塗装、塗装下地処理、有機被膜処理などを行って用いることも可能である。
塗装の場合、各種用途に応じてリン酸塩処理などの化成処理を施したり、電着塗装を施してもよい。塗料は公知の樹脂が使用可能であり、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂などを公知の硬化剤とともに使用可能である。特に、耐食性の観点からすればエポキシ、フッ素、シリコンアクリル樹脂の使用が推奨される。その他、塗料に添加される公知の添加剤、例えば着色用顔料、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤などを添加してもよい。
また、塗料形態も特に限定されず、溶剤系塗料、粉体塗料、水系塗料、水分散型塗料、電着塗料など、用途に応じて適宜選択することができる。
上記塗料を用い、所望の被覆層を鋼材に形成させるには、ディッピング法、ロールコータ法、スプレー法、カーテンフローコータ法などの公知の方法を用いればよい。被覆層の厚みは用途に応じて公知の適切な値を用いればよい。
本発明の実施例および比較例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1〜2に示す化学成分の鋼板を供試材とした。この供試材より試験片を作製し、これを用いて耐食性評価試験および耐孔あき性評価試験を行い、耐食性および耐孔あき性を評価した。
耐食性評価試験としては、兵庫県内の暴露試験場において試験片を暴露する試験を行った。この試験は、より詳細には、試験片表面をサンドブラスト処理後、南向きで一年間暴露(加えて、週一回の塩水を強制散布)するという試験である。この耐食性評価試験後、試験片表面の錆を除去し、板厚減少量から耐食性を評価した。
耐孔あき性評価試験としては、試験片にリン酸塩処理を施した後、カチオン電着塗装(20ミクロン狙い)を行い、鋼材素地に達するクロスカットを施し、CCT試験(塩水散布→乾燥→湿潤のサイクル)を行うという試験を行った。この耐孔あき性評価試験後、評価面を等間隔に16区画に分割して、各区画ごとに最大孔あき深さを測定し、その平均値を算出し、耐孔あき性を評価した。
試験結果の評価の基準としては、No.1(比較鋼1)の腐食量Bを基準にし、腐食量が腐食量Bの70%未満のものを◎(極めて優れる水準)、腐食量が腐食量Bの70%以上80%未満のものを○(優れる水準)、腐食量が腐食量Bの80%以上90%未満のものを△(良好)、腐食量が腐食量Bの90%以上のものを×(不良)とした。なお、上記腐食量は、耐食性評価試験の場合は板厚減少量であり、耐孔あき性評価試験の場合は各区画の最大孔あき深さの平均値である。
上記試験結果を表1〜2に示す。この表1〜2からわかるように、No.1〜6 の鋼材は、Znフリーであり、比較例に係る鋼材である。このNo.1〜6 の鋼材は、いずれも、耐食性および耐孔あき性が×(不良)である。
これに対し、No.7〜50の鋼材は、本発明の実施例に係るものであり、上記比較例に係る鋼材の場合に比較し、耐食性および耐孔あき性が優れている。即ち、耐食性および耐孔あき性が△(良好)、○(優れる水準)、または、◎(極めて優れる水準)である。
上記No.7〜50の鋼材の中、No.7〜10の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。このNo.7〜10の鋼材は、それぞれ、Zn量が0.01〜3.0%の範囲において異なる(変化させている)。これらの鋼材は、いずれも、耐食性は◎(極めて優れる水準)である。耐孔あき性は○(優れる水準)または◎(極めて優れる水準)であり、この中で、Zn量:0.03〜0.3%のものは◎であり、特に耐孔あき性に優れている。
No.11 〜14の鋼材は、第1発明(または第2発明)に係る鋼材の例に相当する。耐食性向上元素としては、Cr,Cu,Niの中のCuを含有させている。それぞれ、Cu量が0.05〜1.0%の範囲において異なる(変化させている)。これらの鋼材は、いずれも耐孔あき性は○(優れる水準)である。耐食性は△(良好)または○(優れる水準)であり、この中で、Cu量の高い(0.5〜1.0%)鋼材は○であり、より耐食性に優れている。
No.15 〜18の鋼材は、上記No.11 〜14の鋼材の成分に対し、更にTi:0.045%を含有させた成分を有するものである。即ち、Tiも含有させた点において上記No.11 〜14の鋼材と異なり、この点を除き上記No.11 〜14の鋼材と同様の成分のものである。これらNo.15 〜18の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。これらの鋼材は、上記No.11 〜14の鋼材に比較して、耐食性および耐孔あき性が優れている(Cu量同一水準のもの同士を比較)。これは、Ti添加の効果であり、Ti添加により耐食性および耐孔あき性が向上することを示している。特に、Ti添加により耐孔あき性が向上しており、○から◎に向上している。
No.19 〜22の鋼材は、第1発明(または第2発明)に係る鋼材の例に相当する。耐食性向上元素としては、Cr,Cu,Niの中のNiを含有させている。それぞれ、Ni量が0.05〜3.0%の範囲において異なる(変化させている)。これらの鋼材は、いずれも耐孔あき性は○である。耐食性は△または○であり、この中で、Ni量の高い(1.0〜3.0%)鋼材は○であり、より耐食性に優れている。
No.23 〜26の鋼材は、上記No.19 〜22の鋼材の成分に対し、更にTi:0.045%を含有させた成分を有するものである。即ち、Tiも含有させた点において上記No.19 〜22の鋼材と異なり、この点を除き上記No.19 〜22の鋼材と同様の成分のものである。これらNo.23 〜26の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。これらの鋼材は、上記No.19 〜22の鋼材に比較して、耐食性および耐孔あき性が優れている(Ni量同一水準のもの同士を比較)。これは、Ti添加の効果であり、Ti添加により耐食性および耐孔あき性が向上することを示している。特に、Ti添加により耐孔あき性が向上しており、○から◎に向上している。
No.27 〜30の鋼材は、第1発明(または第2発明)に係る鋼材の例に相当する。耐食性向上元素としては、Cr,Cu,Niの中のCrを含有させている。それぞれ、Cr量が0.25〜5.0%の範囲において異なる(変化させている)。これらの鋼材は、いずれも耐孔あき性は△である。耐食性は△または○であり、この中で、Cr量の高い(1.0〜5.0%)鋼材は○であり、より耐食性に優れている。
No.31 〜34の鋼材は、上記No.27 〜30の鋼材の成分に対し、更にTi:0.045%を含有させた成分を有するものである。即ち、Tiも含有させた点において上記No.27 〜30の鋼材と異なり、この点を除き上記No.27 〜30の鋼材と同様の成分のものである。これらNo.31 〜34の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。これらの鋼材は、上記No.27 〜30の鋼材に比較して、耐食性および耐孔あき性が優れている(Cr量同一水準のもの同士を比較)。これは、Ti添加の効果であり、Ti添加により耐食性および耐孔あき性が向上することを示している。特に、Ti添加により耐孔あき性が向上しており、△から○に向上している。
No.35 〜38の鋼材は、第1発明(または第2発明)に係る鋼材の例に相当する。耐食性向上元素としては、Cr,Cu,Niの全てを含有させている。それぞれ、Cr量、Cu量、Ni量が異なる(変化させている)。これらの鋼材は、いずれも耐孔あき性は△である。耐食性は○または◎であり、この中で、Cr量、Cu量、Ni量の高い鋼材は◎であり、より耐食性に優れている。
No.39 〜42の鋼材は、上記No.35 〜38の鋼材の成分に対し、更にTi:0.045%を含有させた成分を有するものである。即ち、Tiも含有させた点において上記No.35 〜38の鋼材と異なり、この点を除き上記No.35 〜38の鋼材と同様の成分のものである。これらNo.39 〜42の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。これらの鋼材は、上記No.35 〜38の鋼材に比較して、耐食性および耐孔あき性が優れている(Cr量、Cu量、Ni量同一水準のもの同士を比較)。これは、Ti添加の効果であり、Ti添加により耐食性および耐孔あき性が向上することを示している。特に、Ti添加により耐孔あき性が向上しており、△から○に向上している。
No.43 〜46の鋼材は、第1発明(または第2発明)に係る鋼材の例に相当する。耐食性向上元素としては、前記No.35 〜38の鋼材の場合と同様、Cr,Cu,Niの全てを含有させている。それぞれ、Cu量、Ni量が異なる(変化させている)。ただし、Cr量は前記No.35 〜38の鋼材の場合と異なり、前記No.35 〜38の鋼材のいずれよりも少ない量(0.01%)としている。これらの鋼材は、いずれも耐孔あき性は○である。耐食性は○または◎であり、この中で、Cu量、Ni量の高い鋼材は◎であり、より耐食性に優れている。なお、これらの鋼材は、前記No.35 〜38の鋼材と比較して、耐孔あき性に優れている。これは、前記のようにCr量を少ない量としていることに起因するものである。
No.47 〜50の鋼材は、上記No.43 〜46の鋼材の成分に対し、更にTi:0.045%を含有させた成分を有するものである。即ち、Tiも含有させた点において上記No.43 〜46の鋼材と異なり、この点を除き上記No.43 〜46の鋼材と同様の成分のものである。これらNo.47 〜50の鋼材は、第3発明に係る鋼材の例に相当する。これらの鋼材は、上記No.43 〜46の鋼材に比較して、耐食性および耐孔あき性が優れている(Cu量、Ni量同一水準のもの同士を比較)。これは、Ti添加の効果であり、Ti添加により耐食性および耐孔あき性が向上することを示している。特に、Ti添加により耐孔あき性が向上しており、○から◎に向上している。
なお、以上の実施例および比較例においては、耐食性評価試験および耐孔あき性評価試験を前述の試験方法により行い、上記のような結果が得られたが、この試験方法とは別の試験方法による場合においても、絶対値は異なるものの、上記と同様の傾向の結果が得られる。
上記No.7〜50の鋼材は、Cr,Cu,Ni等の含有量が表1〜2に示されるように少なく、鋼材全体としては濃度が低く、この量は機械的特性および溶接性の低下をきたすような過剰な添加量ではないので、充分な機械的特性および溶接性を有するものである。
本発明に係る鋼材によれば、耐食性向上元素の過剰な添加による機械的特性および溶接性の低下をきたすことなく、優れた耐食性を有することができる。即ち、充分な機械的特性および溶接性を確保した上で、優れた耐食性を有することができる。従って、本発明に係る鋼材は、橋梁、船舶、海洋構造物、他鋼構造物、建材、家電、自動車用鋼板等の用途に好適に適用できる。より詳細には、本発明に係る鋼材は、(1) 各種鉄筋構造物、支柱等のコンクリート腐食環境、アルカリ腐食環境、(2) 船舶、橋梁、杭、矢板等の海水腐食環境、(3) 貯水槽、給水管、給湯管、缶容器、各種容器、食器、調理機器、浴槽、プール、洗面化粧台等の水道水腐食環境、(4) 橋梁ケーブル、各種容器、低温熱交換機、浴室部材等の高温湿潤腐食環境、(5) 各種貯蔵タンク、支柱、杭、矢板、配管等の土壌腐食環境、(6) 橋梁、支柱、建築内外装材、屋根材、建具、厨房部材、各種手すり、ルーフドレイン、家電、自動車、鉄道車両等の大気腐食環境などの種々の腐食環境において好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. Znを含有し、更にCr:6.0質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%から選択される1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材。
  2. Zn:0.0001〜30質量%を含有し、更にCr:0.2質量%以下、Cu:0.05〜3.0質量%、Ni:0.05〜6.0質量%から選択される1種以上を含有することを特徴とする耐食性に優れた鋼材。
  3. Ti:0.01〜1.0質量%を含有する請求項1または2に記載の耐食性に優れた鋼材。
  4. C:0.20質量%以下、Si:0.10〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Al:0.05〜0.50質量%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
  5. Ca:0.0001〜0.01質量%、La:0.0001〜0.05質量%、Ce:0.0001〜0.05質量%の中の一種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
  6. Nb:0.10質量%以下、V:0.10質量%以下、Zr:0.05質量%以下、
    Mo:0.25質量%以下、Mg:0.010質量%以下の中の一種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
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