JP3585205B2 - 熱圧力定着用カプセルトナーおよびその製造方法 - Google Patents

熱圧力定着用カプセルトナーおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、静電記録法などにおいて形成される静電潜像の現像に用いられる熱圧力定着用カプセルトナーおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真法の発展にともない、種々のトナーが開発されており、熱ブロッキングを生じず、かつ低温定着性を改善するためのトナーとして、芯物質にロジンエステルを含有し、ポリウレア樹脂等を外殻とするカプセルトナーを用いた電子写真用トナー組成物が開発されている(特開平7−199522号公報)。しかしながら、かかる電子写真用トナー組成物には、定着性向上のためにロジンエステルをを添加しているものの、殻材に工夫がされておらず、低温定着性が不十分であるという欠点がある。
【0003】
一方、殻材として非晶質ポリエステルを使用するカプセルトナーが提案されている(特開平6−130713号公報)。かかるカプセルトナーは、保存安定性に優れ、かつ低温定着性にも優れたものであるが、今後のプリンターや複写機のより一層の高速化においては、さらなる保存安定性と低温定着性の向上が必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、低温定着性に優れ、かつ保存安定性に優れる熱圧力定着用カプセルトナーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低温定着性に優れ、かつ保存安定性に優れた熱圧力定着用カプセルトナーを提供するべく、鋭意検討を重ねたところ、驚くべきことに、非晶質ポリエステルを外殻とするカプセルトナーの芯材に、特定のロジンエステルを添加することにより、優れた低温定着性を維持するとともに、保存安定性を著しく向上させることができるという、まったく新しい事実を見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 熱可塑性樹脂およびロジンエステルを含有する熱溶融性芯材の表面に、非晶質ポリエステルからなる外殻が被覆されており、前記ロジンエステルの酸価と前記非晶質ポリエステルの酸価とが、式:
B/2<A<2B
(式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足することを特徴とする熱圧力定着用カプセルトナー、
(2) 熱溶融性芯材におけるロジンエステルの含有量が熱圧力定着用カプセルトナーの0.1〜50重量%である前記(1)記載の熱圧力定着用カプセルトナー、
(3) ロジンエステルの軟化点が50〜150℃である前記(1)または(2)記載の熱圧力定着用カプセルトナー、
(4) in situ重合法により形成されてなる前記(1)〜(3)いずれか記載の熱圧力定着用カプセルトナー、
(5) 熱可塑性樹脂の原料モノマー、ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルを用いたin situ重合法を行なうことを特徴とする、熱可塑性樹脂の原料モノマー、ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルを用いたin situ重合法を行なうことを特徴とする、熱可塑性樹脂およびロジンエステルを含有する熱溶融性芯材の表面に、非晶質ポリエステルからなる外殻が被覆されており、前記ロジンエステルの酸価と前記非晶質ポリエステルの酸価とが、式:
B/2<A<2B
(式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足する熱圧力定着用カプセルトナーの製造方法、ならびに
(6) ロジンエステルを熱可塑性樹脂の原料モノマー100重量部に対して1〜150重量部使用する前記(5)記載の製造方法、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーは、前記したように、熱可塑性樹脂およびロジンエステルを含有する熱溶融性芯材の表面に、非晶質ポリエステルからなる外殻が被覆されており、前記ロジンエステルの酸価と前記非晶質ポリエステルの酸価とが、式:
B/2<A<2B
(式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足することを特徴とする。
【0008】
本発明のカプセルトナーの熱溶融性芯材は、芯材用樹脂として熱可塑性樹脂、およびロジンエステルを含有するものである。
【0009】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくはビニル系樹脂が挙げられる。
【0010】
前記ビニル系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4 −ジメチルスチレン、p−クロロスチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはスチレン誘導体;例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;例えば塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル等のビニルエステル類;例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸およびそのエステル;例えばビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類、例えばビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;例えばN−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。これらのなかでは、スチレン、α−メチルスチレン、プロピレン、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0011】
本発明においては、熱可塑性樹脂の原料モノマーの中に、樹脂の主骨格を形成するスチレンまたはスチレン誘導体が50〜90重量%含有され、樹脂の軟化点等の熱特性の調節にエチレン性モノカルボン酸またはそのエステルが10〜50重量%含有されていることが、熱可塑性樹脂のガラス転移点を制御し易く好ましい。
【0012】
また、前記ビニル系樹脂の原料モノマーを、不飽和ポリエステルの存在下に重合させてグラフトまたは架橋重合体として、熱可塑性樹脂としても良い。
【0013】
前記ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4 −ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4 −ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、およびジターシャリーブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、2,4 −ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0014】
前記重合開始剤は、重合体の分子量および分子量分布を調節する目的で、または反応時間を調節する目的等で、2種以上を混合して使用することもできる。前記重合開始剤の使用量は、ビニル系樹脂の原料モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部であることが望ましい。
【0015】
前記ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際には、必要に応じて架橋剤を用いることができる。かかる架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3 −ブチレングリコールジメタクリレート、1,6 −ヘキシレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジブロムネオペンチルグリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリルなど、一般の架橋剤を適宜(必要に応じて2種以上組み合わせて)用いることができる。これらのなかでは、ジビニルベンゼンおよびポリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0016】
前記架橋剤の使用量は、ビニル系樹脂の原料モノマー100重量部に対して0.001〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部で使用するのが望ましい。0.001重量部以上が望ましいのは、トナーの一部が定着ローラーの表面に付着し、次の紙に転移するというオフセット現象を防止するためであり、15重量部以下が望ましいのは、ゲル化反応を抑制して、反応制御を容易にするためである他、芯材用樹脂の原料モノマーへの溶解を容易にして、in situ重合を速やかに進行させるためである。
【0017】
前記熱可塑性樹脂に由来する本発明のカプセルトナーのガラス転移点は、カプセルトナーの保存安定性を維持するために、10℃以上、好ましくは20℃以上であることが望ましく、カプセルトナーの定着強度を維持するために60℃以下、好ましくは55℃以下であることが望ましい。ガラス転移点は、例えば、原料モノマーの種類を適宜選択することにより、調整することができる。
【0018】
本発明においては、前記熱溶融性芯材がロジンエステルを含有することにより、高温下におけるトナーの保存安定性を著しく向上させることができる。これは、例えば、in situ重合法により本発明のカプセルトナーを形成させる場合に、熱溶融性芯材に含有されるロジンエステルが、外殻となる非晶質ポリエステルを熱溶融性芯材の表面上に押し出すため、外殻の形成がより完全となるためではないかと推測される。
【0019】
本発明に使用されるロジンエステルとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、かかるロジンを水添等により安定化したロジンまたはマレイン酸変性ロジン等のグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、エチレングリコールエステル等が挙げられる。
【0020】
前記ロジンエステルは、例えば、グリセリンエステルとしては、「スーパーエステルA−75」(荒川化学工業(株)製、商品名)、「エステルガム8L−JA」(理化ハーキュレス(株)製、商品名)、「ハリエスタ−L」(ハリマ化成(株)製、商品名)、水添ロジングリセリンエステルとしては、「エステルガムH」(荒川化学工業(株)製、商品名)、「パインクリスタルKE−100」(荒川化学工業(株)製、商品名)、「フォーラル85」(理化ハーキュレス(株)製、商品名)、ペンタエリスリトールエステルとしては、「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名)、「ペンセルX」(荒川化学工業(株)製、商品名)、「ペンタリンA−JA」(理化ハーキュレス(株)製、商品名)、「ハリエスタ−P」(ハリマ化成(株)製、商品名)、水添ロジンペンタエリスリトールエステルとしては、「フォーラル105」(理化ハーキュレス(株)製、商品名)等として入手することができる。これらの中では「スーパーエステルA−125」および「パインクリスタルKE−100」が好ましい。
【0021】
本発明において、前記ロジンエステルの酸価と、以下に説明する外殻である非晶質ポリエステルの酸価とは、式:
B/2<A<2B
(式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足する。すなわち、ロジンエステルの酸価が非晶質ポリエステルの酸価の2分の1以下である場合は、高温下における保存安定性向上の効果が得られず、また2倍以上である場合には、ロジンエステルがカプセルトナーの最表面に出てくると推測され、保存安定性が著しく低下する。
【0022】
ロジンエステルの保存安定性に対する効果は、前記したように、ロジンエステルが非晶質ポリエステルを熱溶融性芯材の表面に押し出すためと推測されるが、ロジンエステルの酸価がポリエステルの酸価に対して低すぎると押し出す効果がほとんどなく、高すぎるとロジンエステルがカプセルトナーの最表面に出てくるものと考えられる。しかしながら、前記式を満足している場合には、ロジンエステルの酸価が非晶質ポリエステルの酸価より高くても、ロジンエステルの方が芯材中への相溶性が良好であるため、ロジンエステルはカプセルトナーの最表面には出てこないものと考えられる。従って、前記ロジンエステルの酸価は、前記式を満足すればよく、特に限定されない。
【0023】
一方、前記非晶質ポリエステルの酸価は、外殻となる非晶質ポリエステルがin situ重合の際に界面に出るのを容易にして、トナーの保存安定性を向上させるために、1(KOHmg/g)以上、好ましくは5(KOHmg/g)以上であることが望ましく、製造安定性の観点から30(KOHmg/g)以下、好ましくは15(KOHmg/g)以下であることが望ましい。なお、前記ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルの酸価は、JIS K0070に準ずる方法により測定することができる。
【0024】
前記ロジンエステルの軟化点は、いったん定着した画像を重ね合わせて保管しておいたときに、その環境によって前の紙に裏移りする現象を防止する等、画像の安定性を確保する観点から、50℃以上、好ましくは70℃以上であることが望ましく、定着強度の観点から150℃以下、好ましくは130℃以下であることが望ましい。なお、前記ロジンエステルの軟化点は、環球法(JIS K2207に準拠した方法)により測定することができる。
【0025】
前記熱溶融性芯材におけるロジンエステルの含有量は、トナーの保存安定性の観点から、熱圧力定着用カプセルトナーの0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であることが望ましく、画像の安定性の観点から50重量%以下、好ましくは40重量%以下であることが望ましい。
【0026】
本発明のカプセルトナーの外殻は、非晶質ポリエステルからなるものである。
【0027】
前記非晶質ポリエステルの原料モノマーとしては、2価または3価以上のアルコール成分と、2価または3価以上のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等のカルボン酸成分が用いられる。
【0028】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.0) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2) −2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0) −ポリオキシエチレン(2.0) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(6) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2 −プロピレングリコール、1,3 −プロピレングリコール、1,4 −ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4 −ブテンジオール、1,5 −ペンタンジオール、1,6 −ヘキサンジオール、1,4 −シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。これらのなかでは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、1,2 −プロピレングリコール、1,3 −プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールが好ましい。
【0029】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6 −ヘキサンテトロール、1,4 −ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4 −ブタントリオール、1,2,5 −ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4 −ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5 −トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらのなかでは、グリセロールおよびトリメチロールプロパンが好ましい。
【0030】
本発明においては、前記2価のアルコール成分および3価以上のアルコール成分は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
また、2価のカルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸等のジカルボン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基で置換されたコハク酸、これらの酸の無水物およびアルキル(炭素数1〜12)エステル等が挙げられる。これらのなかでは、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸およびアルケニル(炭素数2〜20)コハク酸が好ましい。
【0032】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば1,2,4 −ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ブタントリカルボン酸、1,2,5 −ヘキサントリカルボン酸、1,3 −ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4 −シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ (メチレンカルボキシル) メタン、1,2,7,8 −オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。これらのなでは、安価で、反応制御を容易な点から、トリメリット酸またはその誘導体が好ましい。
【0033】
本発明においては、前記2価のカルボン酸成分および3価以上のカルボン酸成分は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
前記非晶質ポリエステルの原料モノマーを重合させる際には、反応を促進させるため、通常使用されているエステル化触媒を適宜使用してもよい。かかるエステル化触媒としては、例えば、酸化亜鉛、酸化第一錫、酸化モノブチル錫、酸化ジブチル錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。前記エステル化触媒の使用量は、特に限定されないが、非晶質ポリエステルの原料モノマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部程度であることが好ましい。
【0035】
前記非晶質ポリエステルの製造方法は、特に限定されることなく、例えば、前記の原料モノマーを用いて通常公知のエステル化、エステル交換反応により製造することができる。ここで、「非晶質」とは明確な融点を有しない状態をいい、本発明においては、結晶質のポリエステルを用いると融解に必要なエネルギー量が大きくなるため、トナーの定着性が向上できず好ましくない。
【0036】
前記非晶質ポリエステルの軟化点は、高温オフセット性、保存安定性および耐ストレス性の観点から90℃以上、好ましくは95℃以上であることが望ましく、トナーの外殻の溶融軟化を容易にして、低温オフセット性および低温定着性を向上させるために、130℃以下、好ましくは120℃以下であることが望ましい。なお、前記非晶質ポリエステルの軟化点は、ASTM E28−67に準拠した方法により測定することができる。具体的には、高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名:CFT−500)を用い、1cmの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより20kg/cmの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描きそのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0037】
前記非晶質ポリエステルのガラス転移点は、トナーの保存安定性の観点から50℃以上、好ましくは55℃以上であることが望ましく、トナーの定着性の観点から80℃以下、好ましくは75℃以下であることが望ましい。なお、本発明において、ガラス転移点とは、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名:DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0038】
本発明においては、必要に応じて外殻および芯材の少なくとも一方に各種添加剤を適宜含有させてもよい。ここで添加剤としては、着色剤、荷電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、導電性物質、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、オフセット防止剤等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
前記着色剤としては、従来のトナー用着色剤に用いられている染料、顔料等のすべてを使用できる。本発明に用いられる着色剤としては、例えば、ファーネスブラック法、サーマルブラック法、アセチレンブラック法、チャンネルブラック法、ランプブラック法等により製造される各種のカーボンブラック、カーボンブラックの表面が樹脂で被覆されたグラフト化カーボンブラック、ニグロシン染料、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、およびそれらの混合物等を挙げることができる。着色剤の使用量は、通常、芯材用樹脂の原料モノマー100重量部に対して1〜15重量部程度であることが好ましい。
【0040】
前記荷電制御剤としては、正および負のいずれの荷電制御剤も用いることができる。正の荷電制御剤の具体例としては、特に限定されることなく、例えばニグロシン染料として「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN−01」、「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−11」(以上、オリエント化学工業(株)製、商品名)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP−51」(オリエント化学工業(株)製、商品名)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(ヘキスト社製、商品名)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP−B」(オリエント化学工業(株)製、商品名);イミダゾール誘導体、例えば「PLZ−2001」、「PLZ−8001」(以上、四国化成(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0041】
また、負の荷電制御剤の具体例としては、特に限定されることなく、例えば含金属アゾ染料である「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS−31」(以上、オリエント化学工業(株)製、商品名)、「T−77」(保土谷化学工業(株)製、商品名)、「ボントロンS−32」、「ボントロンS−34」、「ボントロンS−36」(以上、オリエント化学工業(株)製、商品名)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業(株)製、商品名)等;銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE−81」、「ボントロンE−82」、「ボントロンE−84」、「ボントロンE−85」(以上、オリエント化学工業(株)製、商品名);4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(ヘキスト社製、商品名)、ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR−147」(日本カーリット(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0042】
前記荷電制御剤は芯材用樹脂の原料モノマー100重量部に対して0.1〜8.0重量部、好ましくは0.2〜5.0重量部使用することが望ましい。
【0043】
前記流動性向上剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。特にシリカの微粉末が好ましい。
【0044】
なお、シリカ(SiO)の微粉末は、乾式法および湿式法で製造されたもののいずれであってもよい。また、無水シリカのほか、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などいずれであってもよいが、SiOを85重量%以上含むものが好ましい。また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル、側鎖にアミンを有するシリコーンオイルなどにより表面処理されたシリカの微粉末などを用いることができる。
【0045】
前記クリーニング性向上剤としては、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子化合物の微粒子粉末などがある。
更に現像性を調整するための添加剤、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等の重合物の微粒子などを用いてもよい。
【0046】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーは、製造設備や製造工程の簡素化という点から、熱可塑性樹脂の原料モノマー、ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルを用いたin situ重合法を行なうことにより、得ることが好ましい。前記in situ重合法は、ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルの存在下で、熱可塑性樹脂の原料モノマーを乳化重合させることによって行なうことができる。
【0047】
以下、in situ重合法による製造方法を例にとり説明する。
【0048】
このin situ重合法において、カプセルトナーの外殻形成は、熱可塑性樹脂の原料モノマー、ロジンエステル、非晶質ポリエステルおよび必要に応じて前記各種添加剤の混合液を分散媒中に乳化分散させた際に、前記非晶質ポリエステルが芯材用樹脂の原料モノマーの液滴の表面に偏在(即ち、粒子の最外層に偏在)するという性質を利用して行なうことができる。即ち、前記in situ重合法においては、非晶質ポリエステルと芯材用樹脂の原料モノマーとの溶解度指数の差によって混合液の液滴中で芯材用樹脂の原料モノマーと非晶質ポリエステルの分離が起こり、その状態で重合が進行してカプセル構造が形成される。この方法によると、外殻がほぼ均一な厚みを持った非晶質ポリエステルからなる層として芯材の表面に形成されるため、トナーの帯電特性が均質になるという特長を有する。
【0049】
ところで、一般的なin situ重合法によるカプセル化は、外殻用樹脂の原料モノマー、開始剤等を、分散相の内相または外相の一方から供給し、重合により外殻を形成してカプセル化物を得ることにより行なわれる(近藤保、小石直純「マイクロカプセル」、1987年、三共出版(株))。一方、本発明におけるin situ重合法とは、外殻用樹脂の内部において、芯材用樹脂の原料モノマー、開始剤等が重合して芯材用樹脂を形成する方法である。従って、一般的なin situ重合法によるカプセル化の場合とは異なっているが、分散相の内相のみからモノマー等が供給される点で両者は共通するため、本発明の方法も広義のin situ重合法に含まれるものである。
【0050】
前記分散媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトニトリル、アセトン、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0051】
この方法による場合、分散質の凝集、合体を防ぐために、前記分散媒中に分散安定剤を含有させておく必要がある。かかる分散安定剤としては、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、アリル−アルキル−ポリエーテルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、3,3 −ジスルホンジフェニル尿素−4,4 −ジアゾ−ビス−アミノ−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5 −テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4 −ジアゾ−ビス−β−ナフトール−ジスルホン酸ナトリウム、コロイダルシリカ、アルミナ、リン酸三カルシウム、水酸化第二鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、その他を使用することができる。これらの分散安定剤は2種以上を混合してもよい。
【0052】
本発明における製造方法において、前記非晶質ポリエステルの添加量は、十分な膜厚で外殻を形成して、保存安定性を向上させるために、芯材用樹脂の原料モノマー100重量部に対して1重量部以上、好ましくは3重量部以上であることが望ましく、分散相の粘度を調整して微粒化を容易にし、製造安定性を向上させるために、芯材用樹脂の原料モノマー100重量部に対して50重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下であることが望ましい。
【0053】
また、前記ロジンエステルの使用量は、得られた熱圧力定着用カプセルトナーの熱溶融性芯材における含有量が、前記したように、熱圧力定着用カプセルトナーの0.1〜50重量%となるように適宜選択される。従って、ロジンエステルは、通常、前記熱可塑性樹脂の原料モノマー100重量部に対して1〜150重量部使用することが望ましい。
【0054】
本発明においては、前記のようにして得られるカプセルトナーを前駆体粒子として更にseed重合を行なった熱圧力定着用カプセルトナーであってもよい。従って、本発明においてカプセルトナーとは、前記のようなin situ重合法単独で得られるものの他、in situ重合とseed重合を組み合わせて得られるものをも含むものである。
【0055】
即ち、seed重合は前記in situ重合法により得られるカプセルトナー(以下、前駆体粒子という場合がある)の水系懸濁液に、少なくとも重合性単量体と重合開始剤とを添加して前駆体粒子中に吸収させた後、該前駆体粒子中の単量体成分を重合させるものである。例えば、前記のin situ重合法による前駆体粒子の製造後、懸濁状態のまま、直ちに少なくとも重合性単量体と重合開始剤を添加して前駆体粒子中に吸収させ、該前駆体粒子中の単量体成分をseed重合させてもよい。こうすることにより製造工程をより簡略化できる。なお、前記重合性単量体、重合開始剤等は、予め水乳濁液として調製した後に、前記水系懸濁液に添加してもよい。
【0056】
水乳濁液は、水に重合性単量体と重合開始剤を分散安定剤と共に乳化分散させたものであり、他に架橋剤、オフセット防止剤、荷電制御剤等を含有させることもできる。
【0057】
前記重合性単量体としては、前記の前駆体粒子の製造時に用いられるものと同じものでもよい。また、重合開始剤、架橋剤および分散安定剤も、前記の前駆体粒子の製造時に用いられるものと同様のものを用いることができる。前記架橋剤の使用量としては、耐オフセット性の観点から、重合性単量体100重量部に対して、0.001重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であることが望ましく、熱によるトナーの溶融を容易にして、熱圧力定着性を向上させるために、重合性単量体100重量部に対して、15重量部以下、好ましくは10重量部以下であることが望ましい。
【0058】
また、トナーの保存安定性の更なる向上のため、前記非晶質ポリエステルを前記水乳濁液に添加してもよい。そのときの添加量としては芯材用樹脂の原料モノマー100重量部に対し、通常1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部であることが望ましい。また、本発明ではこのとき、添加する非晶質ポリエステル中に、前記した各種添加剤を予め分散させておいてもよい。
【0059】
非晶質ポリエステルに各種添加剤を分散させる場合、その分散方法としては、通常公知の方法が用いられ、例えば2軸混練機、バンバリーミキサー、ニーダー等の溶融混練分散の他、非晶質ポリエステルの製造時に溶融ブレンドさせ分散させてもよい。
【0060】
前記水乳濁液は、超音波発振機等により均一に分散させて調製することができる。
【0061】
また、seed重合で用いる非晶質ポリエステルの酸価は、in situ重合の場合と同様に1〜30(KOHmg/g)であることが好ましく、より好ましくは5〜15(KOHmg/g)である。
【0062】
水乳濁液の添加量は、重合性単量体の使用量が、前駆体粒子100重量部に対して10〜200重量部となるように調整することが好ましい。10重量部以上が好ましいのは、定着性改良の効果を向上させるためであり、200重量部以下が好ましいのは、均一に単量体を前駆体粒子中に吸収させ易くするためである。
【0063】
水乳濁液の添加により、前記重合性単量体は前駆体粒子中に吸収されて前駆体粒子の膨潤が起こる。そして、この状態で前駆体粒子中の単量体成分が重合する。即ち、前駆体粒子を種粒子として芯材中で重合性単量体を重合するseed重合である。
【0064】
このようにしてseed重合させると、in situ重合法単独で製造されたカプセルトナーと比較して、つぎの点がより改善されることになる。
即ち、in situ重合法で製造したカプセルトナーは、低温定着性と保存安定性の点で従来のものより優れるが、seed重合法を更に行なうことにより、界面化学的により均一な外殻が形成され、更に保存安定性が優れるものとなる。また、芯材の重合性単量体を2段(in situ重合反応およびseed重合反応)に分けて重合させることができるため、さらに、架橋剤を適宜使用することにより、芯材中の熱可塑性樹脂の分子量制御が容易になり、低温定着性と耐オフセット性をより良好にすることができる。特に高速での定着のみならず低速での定着にも適したトナーを提供することができる。
【0065】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーの平均粒子径は別段制約を受けるものではないが、通常3〜30μmであることが好ましい。トナーの平均粒子径は、分散剤の濃度や乳化分散の条件(攪拌速度、時間)等により調整することができる。
また、カプセルトナーの外殻の厚さは耐ブロッキング性を向上させるために、0.01μm以上であることが好ましく、熱溶融性を向上させるために1μm以下であることが好ましい。トナーの外殻は、非晶質ポリエステルの添加量とトナーの平均粒子径により調整することができる。
【0066】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーの軟化点は、保存安定性の観点から、70℃以上、好ましくは80℃以上であることが望ましく、定着性の観点から、160℃以下、好ましくは150℃以下である。ここで、熱圧力定着用カプセルトナーの軟化点は、非晶質ポリエステルの軟化点と同様の方法により測定することができる。
【0067】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーは、磁性体微粉末を含有するものであるときには、単独で現像剤として用いられ、また磁性体微粉末を含有しないものであるときは、非磁性一成分系現像剤として、またはキャリアと混合して二成分系の現像剤として用いることができる。キャリアとしては、特に限定されないが、鉄粉、フェライト、ガラスビーズ等、またはそれらを樹脂で被覆したもの、更にはマグネタイト微粉、フェライト微粉を樹脂中に練り込んだ樹脂キャリア等が用いられる。トナーとキャリアを混合する際のトナーの使用量は、キャリア100重量部に対して0.5〜20重量部程度であることが望ましい。また、キャリアの平均粒子径は、15〜500μm程度であることが好ましい。
【0068】
本発明の熱圧力定着用カプセルトナーは、熱と圧力を併用して紙等の記録材に定着させることにより形成した画像に良好な定着強度を与える。熱圧力定着方法としては、熱と圧力が併用されていれば、公知の熱ローラー定着方式、例えば特開平2−190870号公報に記載のように、記録材上の未定着のトナー画像を加熱部と耐熱シートから構成された加熱手段により、該耐熱性シートを介して加熱溶融させ、定着せしめる定着方式、例えば特開平2−162356号公報に記載のように、固定支持された加熱体と、該加熱体に対向圧接し、且つフィルムを介して記録材を該加熱体に密着させる加圧部材とにより、該トナーの顕画像を記録材に加熱加圧定着する方式等の方法が挙げられる。これらの方法は、いずれも本発明のカプセルトナーを記録材に定着させるのに適したものである。
【0069】
【実施例】
以下、実施例、比較例および試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0070】
なお、実施例中に記載されている樹脂およびロジンエステルの酸価、樹脂およびカプセルトナーのガラス転移点、ならびにカプセルトナーおよびロジンエステルの軟化点は、以下に示す方法により測定したものである。
【0071】
〔樹脂およびロジンエステルの酸価〕
JIS K0070に準ずる方法により測定する。
【0072】
〔樹脂およびカプセルトナーのガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名:DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。
【0073】
〔カプセルトナーの軟化点〕
ASTM E28−67に準拠した方法により測定する。具体的には、高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名:CFT−500)を用い、1cmの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより20kg/cmの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描きそのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0074】
〔ロジンエステルの軟化点〕
環球法(JIS K2207に準拠した方法)により測定する。
【0075】
樹脂製造例1
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン550g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン180g、テレフタル酸342g、無水トリメリット酸5.5gおよびジブチル錫オキシド2.0gをガラス製2リットル容の四つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて反応させた。ASTM E28−67に準拠した軟化点より重合度の追跡を行ない、軟化点が119℃に達したとき、反応を終了した。この樹脂を樹脂Aとする。樹脂Aのガラス転移点は72℃、酸価は8(KOHmg/g)であった。
【0076】
実施例1
スチレン75重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル25重量部、ジビニルベンゼン0.5重量部、カーボンブラック「#44」(三菱化成(株)製、商品名)7.0重量部に、樹脂A15重量部、ロジンエステル「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名、酸価:12.1(KOHmg/g)、軟化点122℃)20重量部、荷電制御剤「ボントロンN−07」(オリエント化学工業(株)製、商品名)1.0重量部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.5重量部を添加し、アトライター(三井三池化工機(株)製)に投入し、10℃にて5時間分散し、重合性組成物を得た。次いで、2リットルのガラス製セパラブルフラスコに予め調製したリン酸三カルシウム4重量%の水性コロイド溶液560gに前記の重合性組成物240gを添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて15℃にて回転数12000rpmで5分間乳化分散させた。
【0077】
次に、四つ口のガラス製の蓋をし、還流冷却管、温度計、窒素導入管およびステンレススチール製攪拌棒を取り付け、電熱マントルヒーター中に設置した。窒素下にて攪拌を続けながら、85℃まで昇温し、10時間反応させた。冷却後、10%塩酸水溶液にて分散媒を溶かし、濾過、水洗を経て風乾後、35℃にて12時間、20mmHgで減圧乾燥し、風力分級機にて分級し、外殻が非晶質ポリエステルである、平均粒子径8μmのカプセルトナーを得た。
【0078】
このカプセルトナー100重量部に疎水性シリカ微粉末「アエロジルR−972」(日本アエロジル(株)製、商品名)0.4重量部を加えて混合し、トナー1を得た。トナー1のガラス転移点は43.4℃、軟化点は123.3℃であった。
【0079】
実施例2
実施例1においてロジンエステル「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名)20重量部の代わりにロジンエステル「パインクリスタルKE−100」(荒川化学工業(株)製、商品名、酸価:4.8(KOHmg/g)、軟化点103℃)20重量部を使用した以外は実施例1と同様にして、ガラス転移点が45.3℃、軟化点が126.2℃のトナー2を得た。
【0080】
比較例1
実施例1においてロジンエステル「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名)20重量部を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、ガラス転移点が43.3℃、軟化点が124.7℃の比較トナー1を得た。
【0081】
比較例2
実施例1においてロジンエステル「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名)20重量部の代わりに水添ロジングリセリンエステル「ステベライトエステル7」(理化ハーキュレス(株)製、商品名、酸価:3.2(KOHmg/g)、軟化点:72℃)20重量部を使用した以外は実施例1と同様にして、ガラス転移点が43.8℃、軟化点が124.1℃の比較トナー2を得た。
【0082】
比較例3
実施例1においてロジンエステル「スーパーエステルA−125」(荒川化学工業(株)製、商品名)20重量部の代わりにペンタエリスリトールエステル「ペンタリン4851」(理化ハーキュレス(株)製、商品名、酸価:18.1(KOHmg/g)、軟化点:100℃)20重量部を使用した以外は実施例1と同様にして、ガラス転移点が44.1℃、軟化点が125.2℃の比較トナー3を得た。
【0083】
試験例1
トナー1および2、比較トナー1〜3について、50℃・相対湿度(RH)40%の条件下および55℃・RH40%のより厳しい条件下における24時間放置後の凝集度から保存安定性を評価した。
【0084】
なお、凝集度の測定は、以下のようにして行なった。
ホソカワミクロン(株)製パウダテスターを用いて、上から順に、篩の目開きが250μm、149μm、74μmのふるいをセットした。次いで、前記条件下で24時間放置したトナー2gを、250μmのふるい上に、下に落ちないように静かに置き、振幅1mmの振動を1分間与え、次式により凝集度を算出した。
【0085】
凝集度(%)=(a)+(b)+(c)
(a):ふるい目250μmのふるいに残ったトナーの重量%×1
(b):ふるい目149μmのふるいに残ったトナーの重量%×0.6
(c):ふるい目74μmのふるいに残ったトナーの重量%×0.2
【0086】
【表1】
Figure 0003585205
【0087】
表1から明らかなように、酸価が所定の範囲内であるロジンエステルを使用したトナー1および2は、50℃および55℃のいずれの条件下においても、凝集度が小さく、保存安定性に優れる。一方、ロジンエステルを使用していない比較トナー1および酸価が所定の範囲より低いロジンエステルを使用した比較トナー2は、50℃の条件下ではトナー1および2と同様に、凝集度が小さく、良好な保存安定性を有しているものの、55℃の条件下においては、凝集度が著しく大きくなり、保存安定性が悪化することがわかる。また、酸価が所定の範囲より高いロジンエステルを使用した比較トナー3は、50℃および55℃のいずれの条件下においても、全体が固化し、保存安定性に欠けることがわかる。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、低温定着性に優れ、かつ保存安定性に優れた熱圧力定着用カプセルトナーを提供することができる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂およびロジンエステルを含有する熱溶融性芯材の表面に、非晶質ポリエステルからなる外殻が被覆されており、前記ロジンエステルの酸価と前記非晶質ポリエステルの酸価とが、式:
    B/2<A<2B
    (式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足することを特徴とする熱圧力定着用カプセルトナー。
  2. 熱溶融性芯材におけるロジンエステルの含有量が熱圧力定着用カプセルトナーの0.1〜50重量%である請求項1記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
  3. ロジンエステルの軟化点が50〜150℃である請求項1または2記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
  4. in situ重合法により形成されてなる請求項1〜3いずれか記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
  5. 熱可塑性樹脂の原料モノマー、ロジンエステルおよび非晶質ポリエステルを用いたin situ重合法を行なうことを特徴とする、熱可塑性樹脂およびロジンエステルを含有する熱溶融性芯材の表面に、非晶質ポリエステルからなる外殻が被覆されており、前記ロジンエステルの酸価と前記非晶質ポリエステルの酸価とが、式:
    B/2<A<2B
    (式中、Aはロジンエステルの酸価、Bは非晶質ポリエステルの酸価を示す)を満足する熱圧力定着用カプセルトナーの製造方法。
  6. ロジンエステルを熱可塑性樹脂の原料モノマー100重量部に対して1〜150重量部使用する請求項5記載の製造方法。
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