JP3581746B2 - 難燃性エチレン系樹脂組成物 - Google Patents

難燃性エチレン系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性エチレン系樹脂組成物に関し、より詳しくは、難燃性および耐熱性に優れ、従来のものに比べ機械的特性に一層優れ、そして低温特性、絶縁性、加工性および柔軟性も良好であり、電線被覆等に好適に使用できるエチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃性エチレン系樹脂組成物は、ベース材料として高圧法で製造された分岐状・低密度ポリエチレン(HPLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)が使用され、これらを、例えば有機ハロゲン系難燃剤または有機リン系難燃剤を主体とした有機系難燃剤と組み合わせることにより、または、例えば水酸化マグネシウムを主体とした無機系難燃剤と組み合わせることにより用いられていた。しかしながら、エチレン系樹脂に難燃剤を多量に配合する関係上、機械的特性は未だ十分に満足できるものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した難燃性エチレン系樹脂組成物の欠点を改良し、難燃性および耐熱性に優れ、従来よりなお一層機械的特性に優れ、そして低温特性、絶縁性、加工性および柔軟性も良好であり、電線被覆等に好適に使用できる難燃性エチレン系樹脂組成物の提供を課題する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の組成物を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体および直鎖状・超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系樹脂(A)60〜95重量%と、メルトフローレート0.5〜50g/10分、密度0.86〜0.91g/cmおよび重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0以下である、シングルサイト触媒を使用して製造された実質的に直鎖状であるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)40〜5重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、架橋剤の非存在下に難燃剤(D)5〜250重量部を配合し、混練することを特徴とする、非架橋であり優れた機械的特性を有する難燃性エチレン系樹脂組成物に関する。
【0005】
本発明はまた、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体および直鎖状・超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系樹脂(A)50〜93重量%と、メルトフローレート0.5〜50g/10分、密度0.86〜0.91g/cmおよび重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0以下である、シングルサイト触媒を使用して製造された実質的に直鎖状であるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)40〜5重量%と、官能基含有化合物変性エチレン系樹脂(C)40〜2重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、架橋剤の非存在下に難燃剤(D)5〜250重量部を配合し、混練することを特徴とする、非架橋であり優れた機械的特性を有する難燃性エチレン系樹脂組成物に関する。
【0006】
本発明において使用するベース材料であるエチレン系樹脂(A)はエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと記載する)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(以下、EEAと記載する)および直鎖状・超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(以下、VLDPEと記載する)からなる群から選択される1種またはそれ以上のものである。
【0007】
EVAおよびEEAは、反応温度150〜350℃、反応圧力100〜300MPaの条件下、有機過酸化物等のラジカル発生触媒を用いてエチレンと酢酸ビニルまたはエチレンとアクリル酸エチルとを重合させたものである。前記EVAおよびEEAとして以下の物性を有するものが好ましい:
・メルトフローレート(JIS K7210に準拠して測定)が0.5〜50g/10分であるもの(0.5g/10分未満では加工性に、50g/10分を越えると機械的特性にそれぞれ比較的劣る);
・酢酸ビニルまたはアクリル酸エチルのコモノマー含有量が5〜40重量%、特に10〜35重量%であるもの(5重量%未満では加工性に比較的劣り、樹脂成分中に難燃剤を均一に分散し保持することが難しく、40重量%を越えると機械的特性に比較的劣る)。
【0008】
VLDPEは、エチレンと炭素原子数3ないし12のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等を挙げることができる。前記VLDPEとして以下の物性を有するものが好ましい:
・メルトフローレート(JIS K7210に準拠して測定)が0.5〜50g/10分であるもの(0.5g/10分未満では加工性に、50g/10分を越えると機械的特性にそれぞれ比較的劣る);
・密度(JIS K7112に準拠して測定)が0.86〜0.91g/cmであるもの(0.86g/cm未満のものが製造が困難であり、また0.91g/cmを越えると樹脂成分中に難燃剤を均一に分散し保持することが難しい)。
【0009】
前記VLDPEは従来一般に用いられている触媒、例えばチーグラー系触媒、フィリップス系触媒またはスタンダード系触媒を使用して重合されるが、チーグラー系触媒と呼ばれるものは、チタン化合物やバナジウム化合物等の遷移金属化合物からなる主触媒、有機アルミニウム等の有機金属化合物からなる助触媒およびケイ素、チタン、マグネシウム等の酸化物からなる触媒担体から構成される触媒である。フィリップス系触媒と呼ばれるものは、酸化クロムからなる主触媒と、アルミニウム等の酸化物からなる触媒担体から構成される触媒であり、スタンダード系触媒と呼ばれるものは、酸化モリブデンからなる主触媒と、アルミニウム等の酸化物からなる触媒担体から構成される触媒である。重合は温度0〜250℃で、圧力が高圧(50MPa以上)、中圧(10〜50MPa)または低圧(常圧〜10MPa)のいずれかの下で行われる。重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、気相重合法、その他の重合法を使用することができる。
【0010】
本発明において使用されるもう一つのベース材料であるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンとα−オレフィン、例えば炭素原子数3ないし12のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等を挙げることができる。これらの中で、難燃性エチレン系樹脂組成物の機械的特性および加工性等の点からオクテン−1が特に好ましい。
【0011】
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は以下の物性:メルトフローレート0.5〜50g/10分、密度0.86〜0.91g/cmおよび重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0以下を有するものである。
ここで、メルトフローレートはJIS K7210に準拠して測定され、0.5g/10分未満であると加工性が悪く、50g/10分を越えると機械的特性が劣り、望ましくない。
また、密度はJIS K7112に準拠して測定され、0.86g/cm未満であると製造が困難であり、0.91g/cmを越えると、そのエチレン−α−オレフィン共重合体に難燃剤を均一に分散し保持することができず、望ましくない。なお、樹脂成分(B)の上記密度範囲は一般に超低密度に分類される。さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定され、3.0以下であることが必要であり、好ましくは2.5以下である。Mw/Mnが3.0を越えると機械的特性が劣るので望ましくない。このMw/Mnは分子量分布の指標となる値であり、小さい程、分子量分布が小さい。
【0012】
本発明において、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造の際に使用されるシングルサイト触媒は、活性点が同種(シングルサイト)であり、エチレンに対して高い重合活性を有するものである。このシングルサイト触媒はメタロセン触媒、また、発明者の名前からカミンスキー触媒とも呼ばれている。本発明に用いられる触媒としてはこれをさらに改良したもの、例えば、適当に拘束された幾何形状を有する触媒(Constrained Geometry Catalysts)で、周期表第3〜10族またはランタノイド(ランタン系列)の金属原子と、拘束を誘起する原子団で置換された非局在化されたπ(パイ)結合を有する原子団とを含む金属配位錯体を含有するものが好ましい。好ましい触媒錯体は、次式:
【化1】
Figure 0003581746
(式中、Mは周期表第3〜10族またはランタノイドの金属原子であり、
Cp*はMにη結合様式で結合しているシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、
Zはホウ素または周期表第14族の元素、そして場合に応じて硫黄原子または酸素原子を含有する原子団であり、該原子団は20個までの水素原子以外の原子を有するか、または
Cp*およびZは一緒になって縮合環系を形成し、
Xは互いに独立してアニオン性配位子または30個までの水素原子以外の原子を有する中性ルイス塩基配位子であり、
nは0、1、2、3または4であり、かつ、Mの原子価より2少ない数であり、そして
Yは、ZおよびMと結合するアニオン性または非アニオン性配位子で、窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子を含んでおり、そして20個までの水素原子以外の原子を有するか、または必要に応じてYとZは一緒になって縮合環系を形成する)で表されるものである。
【0013】
上記触媒錯体の具体的な化合物としては、(第三ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(第三ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)メチレンチタンジクロライド、(第三ブチルアミド)ジベンジル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(フェニルホスフィド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(第三ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランチタンジメチル等が例示される。
【0014】
上記触媒は、さらに活性化共触媒を含有する。該共触媒としては、高重合度または低重合度のアルミノキサン、特にメチルアルミノキサンが適当でる。いわゆる変性メチルアルミノキサンもまた上記共触媒としての使用に適している。
【0015】
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の重合は、好ましくは溶液重合法により行われ、通常の溶液重合法に対する条件がそのまま採用できる。すなわち、重合温度は0〜250℃であり、重合圧力は常圧から100MPaである。必要ならば、懸濁法、スラリー法、気相法またはそれ以外の方法に従って重合は行われ得る。担体を用いることができるが、好ましくは触媒は均一(例えば可溶性)状態で用いられる。もちろん、触媒成分およびその共触媒成分が重合プロセスに直接添加され、適当な溶剤または希釈剤(濃縮モノマーも含む)がその重合プロセスに用いられた場合に、活性触媒系が反応器中で形成されることは好ましいことである。しかしながら、活性触媒は、それを重合混合物に添加する前に、適当な溶剤中、別の工程で形成されてもよく、この方法もまた好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製法の詳細は、特開平6−306121号公報や特表平7−500622号公報等に記載されている。
【0016】
上記樹脂成分(B)の配合量は、前記した樹脂成分(A)60〜95重量%に対して40〜5重量%である(両者は合計して100重量%に調整される)。すなわち、樹脂成分(A)と樹脂成分(B)とからなる全樹脂成分100重量%中、樹脂成分(B)の配合量は5〜40重量%である。これは、樹脂成分(B)の配合量が5重量%未満では機械的特性の改良が不十分であり、一方、40重量%を越えると、難燃性が劣ったり、コストアップになったりするので好ましくないことによる。
【0017】
本発明において任意に使用される別のベース材料である官能基含有化合物変性エチレン系樹脂(C)は、エチレン系樹脂をある種の官能基含有化合物で変性させることにより得られるものである。官能基含有化合物としては、不飽和カルボン酸、例えばフマル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、ソルビン酸、クロトン酸またはシトラコン酸等、酸無水物、例えば無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物または4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等、エポキシ化合物、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはアリルグリシジルエーテル等、ヒドロキシ化合物、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルまたはポリエチレングリコールモノアクリレート等、金属塩、例えばアクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムまたはアクリル酸亜鉛等、またはシラン化合物、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0018】
上記の変性されるエチレン系樹脂は、特に制限されることなく、あらゆるエチレン系樹脂を使用でき、例えば、EVA、EEA、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、VLDPE、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および上記のシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0019】
上記エチレン系樹脂に付加変性させる前記官能基含有化合物の量は、該樹脂に対して0.05〜10重量%の範囲が好ましい。この付加変性方法としては、公知の方法、例えば溶液法、懸濁法、溶融法等を採用できる。
【0020】
上記方法のうち、溶液法により前記エチレン系樹脂に官能基含有化合物を付加させる場合は、無極性有機溶媒中に前記エチレン系樹脂と官能基含有化合物を投入し、さらにラジカル開始剤を添加して100〜160℃の高温に加熱することにより行われ得る。この際使用される無極性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンおよびテトラクロルエタン等が挙げられる。また、ラジカル開始剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキシン−3およびベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0021】
また、懸濁法によって付加変性する場合、水等の極性溶媒中に前記エチレン系樹脂と官能基含有化合物を投入し、さらに、前記のラジカル開始剤を添加し、高圧下で100℃以上の高温に加熱することにより変性されたエチレン系樹脂を得ることができる。
【0022】
さらに、溶融法によって付加変性する場合、合成樹脂の分野において慣用の溶融混練機、例えば押出機またはバンバリーミキサー等を用いて、前記エチレン系樹脂、官能基含有化合物およびラジカル開始剤を溶融混練することにより変性されたエチレン系樹脂を得ることができる。
【0023】
上記樹脂成分(C)の配合量は、前記した樹脂成分(A)50〜93重量%および樹脂成分(B)40〜5重量%に対して40〜2重量%である(三者は合計して100重量%に調整される)。すなわち、樹脂成分(A)、樹脂成分(B)および樹脂成分(C)からなる全樹脂成分100重量%中、樹脂成分(C)の配合量は2〜40重量%である。これは、樹脂成分(C)の配合量が2重量%未満では機械的特性および耐熱性の改良が不十分であり、一方、40重量%を越えると、可撓性、熱老化性および加工性が劣ることによる。
【0024】
本発明において使用される難燃剤(D)は、例えば有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤および無機系難燃剤等である。
【0025】
有機ハロゲン系難燃剤としては以下のものを挙げることができる:ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス・ペンタブロモベンゼン、エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス・テトラブロモフタルイミド、ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモフェノール、トリブロモフェノールアリルエーテル、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体、テトラブロモ・ビスフェノールS、テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモフェニルアミン、臭素化エポキシ樹脂、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン等。
【0026】
有機リン系難燃剤としては、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレン・ジホスフェート、グリシジル−α−メチル−β−ジ(ブトキシ)ホスフィニルプロピオネート、ジブチルヒドロオキシメチルホスフォネート、ジ(ブトキシ)ホスフィニル・プロピルアミド、ジメチルメチルホスフォネート、エチレン・ビス・トリス(2−シアノエチル)ホスフォニウム・ブロミド、アンモニウムポリホスフェート、エチレンジアミンホスフェート等のアミンホスフェートおよびアミンホスフォネート等が例示される。
【0027】
無機系難燃剤としては、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、酸化ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、無水アルミナ、二硫化モリブデン、粘土、赤リン、ケイソウ土、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、アスベストまたはリトポン等が例示される。これら無機系難燃剤を使用する場合、該難燃剤の表面をステアリン酸、オレイン酸またはパルミチン酸等の脂肪酸またはその金属塩、パラフィン、ワックス、またはそれらの変性物、有機シラン、有機ボランまたは有機チタネート等で被覆する等の表面処理を施すことが好ましい。
【0028】
上記有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤および無機系難燃剤等の難燃剤は単独で用いても、また複数組み合わせて用いてもよいことはいうまでもない。
【0029】
難燃剤(D)の配合量は、樹脂成分〔成分(A)および成分(B)および所望により成分(C)の合計量〕100重量部に対して5〜250重量部である。これは、難燃剤の配合量が5重量部未満であると難燃性が不足し、一方、250重量部を越えると成形加工性が悪化するばかりでなく、成形品の機械的特性、低温特性および柔軟性等を悪化させることによる。
【0030】
本発明の難燃性エチレン系樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、その使用目的に応じて、各種添加剤や補助資材を配合することができる。それら各種添加剤や補助資材としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0031】
本発明の難燃性エチレン系樹脂組成物は、所定量の上記成分(A)、(B)および(D)または(A)、(B)、(C)および(D)に、必要に応じて上記各種添加剤や補助資材等を適当量配合し、一般的な方法、例えばニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサーまたは押出機等を用いて均一に混合混練することにより製造され得る。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明において使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)には、米国ザ・ダウケミカル社からアフィニティー(登録商標)として販売されているものがある。当該樹脂は、シングルサイト触媒の一種である幾何拘束触媒を使用して製造されたもので、エチレン−α−オレフィン共重合体の主鎖に、該主鎖の炭素原子1000個あたり0.01〜3個の割合で長鎖分岐を含有している。この長鎖分岐を含有しているが故に、Mw/Mnが小さい、すなわち、分子量分布が小さいにもかかわらず、加工性が良好である。分子量分布が小さいということは、機械的特性が優れているということである。従来、エチレン−α−オレフィン共重合体において、小さな分子量分布、すなわち優れた機械的特性と、良好な加工性とは両立しなかったが、本発明における上記樹脂成分(B)は機械的特性と加工性の両方に優れており、しかも超低密度のものを選択することにより、難燃剤(D)が多量であっても、それをエチレン−α−オレフィン共重合体に均一に分散させ保持することを可能にしたものである。
また、本発明におけるEVA、EEAまたはVLDPEのエチレン系樹脂(A)は、加工性をより一層を良好にしている。
さらに、本発明の組成物は官能基含有化合物変性エチレン系樹脂(C)の配合により、上記の機械的特性および加工性等がなお一層高められる。
【0033】
【実施例】
次に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体〔メルトフローレート1.5g/10分,コモノマー含有量18重量%,NUC−EVAコポリマー(商品名),日本ユニカー社製〕70重量部、シングルサイト触媒を用いて製造したエチレン−α−オレフィン共重合体〔密度0.900g/cm,メルトフローレート0.8g/10分,Mw/Mn2.4のエチレン−オクテン−1共重合体,アフィニティー(登録商標),ザ・ダウケミカル社製〕30重量部および水酸化マグネシウム120重量部をバンバリーミキサーにて160℃で10分間混練した後、造粒してペレットとし、該ペレットを用いて、熱プレス成形機により150℃、100kg/cm、3分間成形することによりシート(厚さ1mmまたは3mm)を得る。該シートを用いて下記の条件下で難燃性試験、引張試験および伸び試験を行う。結果は表1に示す。
【0035】
試験条件
(1)難燃性試験
シートは厚さ3mmのものを使用し、JIS K7201に準拠して行う。結果は酸素指数で表されるが、この値は、大きい程、難燃性がより優れていることを意味する。
(2)引張試験,伸び試験
シートは厚さ1mmのものを使用し、JIS K6760に準拠して行う。
【0036】
実施例2〜8,比較例1〜8
表1に示す組成からなる組成物を用いて、実施例1と同様の操作を繰り返す。それぞれの結果は表1にまとめて示す。
【0037】
表1に示す結果から以下のことが明らかである。まず、本発明の実施例は全て、難燃性および機械的特性が優れている。これに対し、比較例1〜6は、本発明で使用する樹脂成分のいずれかを欠くか、他の樹脂成分に変更されたものであるが、それぞれ対応する本発明の実施例に比べて引張強度が劣っている。また、比較例7および8は、本発明で使用する樹脂成分を使用するものの、比較例7は難燃剤の配合量が少なすぎるために難燃性が劣り、比較例8は逆に難燃剤の量が多すぎるため、機械的特性等が劣っている。
【0038】
【表1】
Figure 0003581746
(表1の脚注)
注1 メルトフローレート1.5g/10分,コモノマー含有量18重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体〔NUC−EVAコポリマー(商品名),日本ユニカー社製〕
注2 メルトフローレート1.5g/10分,コモノマー含有量15重量%のエチレン−アクリル酸エチル共重合体〔NUC−EEAコポリマー(商品名),日本ユニカー社製〕
注3 密度0.900g/cm,メルトフローレート0.8g/10分,Mw/Mn3.3のエチレン−ブテン−1共重合体〔ナックフレックス(登録商標),日本ユニカー社製〕
注4 密度0.900g/cm,メルトフローレート0.8g/10分,Mw/Mn2.4のエチレン−オクテン−1共重合体〔アフィニティー(登録商標),ザ・ダウケミカル社製〕
注5 密度0.920g/cm,メルトフローレート1.0g/10分,Mw/Mn3.3のエチレン−ブテン−1共重合体〔NUCポリエチレンLL(商品名),日本ユニカー社製〕
注6 注3の共重合体の無水マレイン酸0.5重量%変性物
【0039】
【発明の効果】
本発明の難燃性エチレン系樹脂組成物は、樹脂成分の主成分としてEVA、EEAまたはVLDPEを使用し、副成分としてシングルサイト触媒を使用して製造されるエチレン−α−オレフィン共重合体を配合している。ここで使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は分子量分布の狭いものであるので機械的特性が非常に優れており、しかも主鎖に一定量の長鎖分岐を含んでいるので加工性に優れ、さらに、密度が超低密度に分類される非常に低いものであるので、多量の難燃剤を均一に分散・保持することができる。また、主成分であるEVA等は特に加工性を高めている。さらに、ベース材料の副成分として官能基含有化合物により変性されたエチレン系樹脂を配合することにより、上記各種効果はなお一層向上する。従って、本発明の難燃性エチレン系樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、加工性、低温特性、絶縁性および柔軟性等の諸特性に優れるとともに、機械的特性が従来の難燃性エチレン系樹脂組成物に比べ格段に向上したものである。このような優れた特性、特に優れた耐熱性および機械的特性を有する難燃性エチレン系樹脂組成物は電線被覆等のために極めて適した材料である。

Claims (3)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体および直鎖状・超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系樹脂(A)60〜95重量%と、メルトフローレート0.5〜50g/10分、密度0.86〜0.91g/cmおよび重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0以下である、シングルサイト触媒を使用して製造された実質的に直鎖状であるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)40〜5重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、架橋剤の非存在下に難燃剤(D)5〜250重量部を配合し、混練することを特徴とする、非架橋であり優れた機械的特性を有する難燃性エチレン系樹脂組成物。
  2. エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体および直鎖状・超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系樹脂(A)50〜93重量%と、メルトフローレート0.5〜50g/10分、密度0.86〜0.91g/cmおよび重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)3.0以下である、シングルサイト触媒を使用して製造された実質的に直鎖状であるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)40〜5重量%と、官能基含有化合物変性エチレン系樹脂(C)40〜2重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、架橋剤の非存在下に難燃剤(D)5〜250重量部を配合し、混練することを特徴とする、非架橋であり優れた機械的特性を有する難燃性エチレン系樹脂組成物。
  3. エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィンがオクテン−1である請求項1または2記載の難燃性エチレン系樹脂組成物。
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