JP3580177B2 - 含Cr溶鋼の脱炭精錬方法 - Google Patents

含Cr溶鋼の脱炭精錬方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶鋼のスピッティングを抑制することにより、高歩留まりかつ高能率操業が可能なAOD炉(Argon Oxygen Decarburization)を用いた含Cr溶鋼の脱炭精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
AOD精錬法は、炉体底部から酸素ガスとともに不活性ガス(Ar、N)を大気圧下で溶鋼中に吹込むことにより、CO分圧を低下させ、Crの酸化損失を抑制しながら脱炭を行う方法である。AOD精錬法には、さらに上吹きランスから酸素ガスを供給する上底吹き吹錬法がある。この精錬方法として例えば、特公昭59−21367号公報には、二次燃焼の促進により昇温速度を上げて、脱炭反応を促進させる方法が、開示されている。
【0003】
昨今では、AOD炉における酸素上吹きは、Crの酸化抑制のみならず、トータル送酸速度を増大させ吹錬を高能率化するためにも、導入が進められている。
【0004】
AOD炉では、Crの酸化を抑制するために、C濃度の低下に伴い送酸速度を段階的に低下させるのが一般的である。従って、トータルの吹錬時間短縮には、初期の高C期で一層送酸速度を上げることが効果的である。
【0005】
しかしながら、吹錬初期の高C濃度のときに上吹き送酸速度を増大するとジェットにより溶鋼が跳ね上がる現象、すなわち、スピッティングが問題となる。スピッティング発生量が増大すると、ダストの発生速度が増加して歩留が低下したり、ダクト内にダストが堆積して設備能力の低下や設備損傷、あるいは炉口に地金が付着して操業阻害等をまねく。
【0006】
スピッティングを低減するには、ランスからのジェットが鋼浴面に衝突するエネルギーを分散させることが有効であり、そのためにはランスの多孔化が有効である。多孔ランスは転炉吹錬では多用されているが、その使用方法としては次のような技術がある。
【0007】
例えば、特開昭60−165313号公報には、火点における鋼浴凹みのオーバーラップ率((隣接する火点凹みの中心を結んだ直線上の2つの凹みが重なる部分の距離)/(火点凹みの直径))を指標としてノズル傾斜角を大きくとり、火点凹みの重複を小さくする方法が提案されている。
【0008】
また、特開平9−41020号公報には、凹み深さ、火点と炉壁耐火物の距離、ランス先端−湯面間距離、およびノズル傾斜角を適正範囲とする技術が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法は上底吹き転炉を対象としたものであって、AOD炉上底吹き吹錬では種々の条件が異なる。例えば、AOD炉は転炉に比較して、フリーボード(鋼浴面から炉口までの高さ)が低いなど装置サイズの差異が大きいこと、送酸速度は転炉に比べて小さいこと、および底吹きガスによる攪拌力が上吹きガスのそれと比較して相対的に大きいこと、さらに対象鋼種の付加価値が高いため歩留ロスコストが大きいことなど、上吹き付加によるスピッティングのデメリットが大きく、転炉の技術はAOD炉にそのまま適用できるものではない。
【0010】
例えば、特開平9−41020号公報に開示された方法をAOD上底吹き精錬に適用しようとすると、スピッティングに起因する前記の問題が発生する。なぜなら、AOD炉は元来底吹きのみに攪拌を委ねることを前提に設計されたものであり、同程度の攪拌を上吹きにより実現した場合、スピッティングに起因するデメリットのみが生じるからである。
【0011】
従って、AOD炉を対象とする場合の上吹きの最適条件は上底吹き複合転炉のそれに対しソフトブローにする必要がある。
【0012】
本発明の目的は、上底吹きAOD炉における含Cr溶鋼のスピッティングを抑制する条件を明らかにし、高歩留かつ高能率な脱炭精錬方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水モデル試験、AOD炉での実機試験を行い、上吹き多孔ランスにおけるジェット合体の法則性、および、上吹き条件とスピッティング発生量の法則性を明らかにし、下記の知見を得た。
【0014】
(a) 上吹き酸素ジェットによる溶鋼の凹み深さがが大きいほど、スピッティング量が増加するが、凹み深さと鋼浴深さとの比がある限度を超えるとスピッティング量が急激に増加する。脱炭速度、スピッティング発生量は鋼浴深さに対する鋼浴面の凹み深さの比で整理できる。
【0015】
(b) 底吹きガスに酸素および不活性ガスを用い、攪拌および脱炭を行う場合、上吹き酸素量あたりの脱炭量は凹み深さに係わらず、ほぼ一定となる。従って、スピッティングが急激に増加しない範囲でランスからの酸素吹込み量を大きくするのがよい。
【0016】
(c) スピッティングを抑制するには多孔ランスが適しているが、多孔ランスでは各ノズルからのジェットの重なりが小さいとき、それぞれのノズルによる凹みは鋼浴面上で分離しており、凹み深さは単孔ノズルで得られる凹み深さと一致する。
【0017】
(d) ジェットの重なりが大きいと、隣接するノズルジェットによる凹みが合体し、凹み深さは単孔ノズルで得られる凹み深さに対して、重なり率に依存した係数倍の凹み深さとなる。
【0018】
上記の知見に基づき完成した本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ランス先端に同一のノズル傾斜角を有する2孔以上のノズルから酸素ガスあるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスを含Cr鋼浴面に噴射するAOD上底吹き吹錬において、鋼浴面の凹み深さLと鋼浴深さLの比、L/Lを0.05〜0.20とすることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
【0019】
(2) ノズルからのジェットにより鋼浴面に形成された凹みの重なり面積率Sr(%)に対し、鋼浴面の凹み深さLを下記の(1) 〜(12)式から求めることを特徴とする請求項1に記載の含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
【0020】
Sr≦5%のとき、
vdcos α=1.24・L0.5 ・(L+H) (1)
Sr>5%のとき、
L=k・L (2)
vdcos α=1.24・L 0.5 ・(L+H) (3)
ここで、
Sr={( γ−sin γ) /π}×100 (4)
k=0.04・Sr+0.8 (5)
v=( FO2/60)/{( d ・π/4) ・n} (6)
cos(γ/2)={2 ・R・sin(π/n) }/d (7)
d=h・tan(α+β) −h・tan(α−β) +d (8)
h=H−X・cos α (9)
R=Htanα (10)
=2.47・P・d (11)
=2.19・FO2/(n・d ) (12)
であり、dはノズルスロート径(mm)、dはノズル出口径(mm)、nはランスのノズル数、αはノズル傾斜角度(rad)、Hはランス高さ(mm)、βは噴流の拡がり角(=0.175rad)、FO2はランスのガス流量(Nm/hr)である。
【0021】
なお、本発明において、含Cr鋼とはCr含有量が3〜30重量%の普通鋼およびステンレス鋼をいう。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は上底吹きAOD炉の吹錬状況を示す縦断面図である。同図において、符号1はAOD炉、2は溶鋼、3は鋼浴面、4は底吹き羽口、5はランス、6はランスからのジェットである。底吹き羽口4から不活性ガスあるいは酸素ガスと不活性ガス混合ガスが吹き込まれて溶鋼が攪拌され、酸素ガスがある場合は脱炭反応が進行する。ランス5の先端には同一の傾斜各を有するノズル複数のが配置されており、酸素ガスあるいは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスが噴射され、溶鋼2面に深さLの凹み8を形成しながら脱炭反応が進行する。
【0023】
図2はランスおよびランスから噴射されたジェットの概要を示す縦断面図であり、同図(a) はジェットの寸法関係の概要図、同図(b) はノズル部の拡大図である。同図において図1と同一要素は同一符号で示す。同図の符号7はランス先端に設けられたノズル、71はノズルのスロート部(内径d)、72はノズル出口部(出口径d)、8は鋼浴面の凹み、9はジェット2の超音速領域であるコアジェット、10は音速以下の領域である自由ジェットである。
【0024】
図3は、鋼浴面上の隣りあった2つのノズルに対応する凹みの幾何学的位置関係を示す平面図である。同図において図1、2と同一要素は同一符号で示す。
【0025】
図2および図3に示すように、ランス5から超音速で噴出したジェット6には、長さXの超音速コアジェット9が形成される。その後、音速以下の自由ジェット10の領域では遷移域を経て完全な乱流に発達し、広がり角2β(=約0.35rad=20°)で広がる。
【0026】
ここで、コアジェット長さX(mm)は、(12)式より求まる上吹きガスのノズル前圧力P(kgf/cm)と、ノズルスロート径d(mm)、ノズル出口径d(mm)を用いて実験式(11)式から算出できる。
【0027】
=2.47・P・d (11)
=2.19・FO2/(n・d ) (12)
ここで、FO2は精錬用ガスの流量(Nm/hr)、nはノズル数である。
【0028】
ランス高さ(ランス先端から鋼浴面までの距離)がH(mm)のとき、図3に示す幾何学的関係からジェットが自由噴流となる始点と湯面との距離(自由噴流長さ)h(mm)は(9) 式で与えられ、(8) 式に示す直径d(mm)の凹みが形成される。
【0029】
h=H−X・cos α (9)
d=h・tan(α+β) −h・tan(α−β) +d (8)
ここで、αはノズル傾斜角度(rad)、βは噴流の拡がり角(rad)である。βは概ね一定であり、一定数0.175(rad、すなわち10°)を使用してよい。
【0030】
凹みの中心とランス中心直下(浴の中心)との距離Rは下式(10)によって算出できる。
【0031】
R=Htanα (10)
また、ジェットが他のジェットとの干渉を無視できる場合、すなわち凹み重なり面積率Sr(%)が5%以下のとき、凹み深さLは次式で与えられる。
【0032】
vdcos α=1.24・L0.5 ・(L+H) (1)
多孔ランスにおいて、ジェット間の相互干渉が無視できなくなるとき、すなわち凹み重なり面積率Sr(%)が5%超のとき、ジェット同士の合体により凹み深さLは干渉のない場合の凹み深さLより大きくなる。すなわち、Lは凹み深さ修正係数k、凹みの重なり面積率Srを用いて次式で表される。
【0033】
L=k・L (2)
vdcos α=1.24・L 0.5 ・(L+H) (3)
k=0.04・Sr+0.8 (5)
ここで、vはジェットのノズル出口流速(m/s)であり下記(6) 式で表される。
v=( FO2/60)/{( d ・π/4) ・n} (6)。
【0034】
式(1) 、(3) はL、Lについて陰関数形式で表されているが、ニュートン法等の数値計算によって求めることができる。
【0035】
つぎに、Srの計算方法を説明する。
図3に示す幾何学的関係において、凹み8aの中心と、それと隣り合う凹み8bの重なりの交点を結ぶ直線がなす角(凹みの重なり角度)をγ(rad)とすると、2つの凹みの重なり面積の、凹みの面積に対する比Srは次式(4) で表される。
【0036】
Sr={( γ−sin γ) /π}×100 (4)
ここで、γは次式(7) で表される。
【0037】
cos(γ/2)={2 ・R・sin(π/n) }/d (7)
本発明者らは、まず水モデル実験により、凹み重なり面積率Srが水浴の凹み深さへ及ぼす影響、およびジェットによる凹み深さとスピッティングとの関係を調査した。
【0038】
図4はジェットによる鋼浴面の凹みを観察するための縮尺1/10の水モデル実験の概要図である。ランス5には単孔ランスの他、多孔ランスとして、傾斜角度の異なる2孔、3孔および4孔ランスを用意しそれぞれ実験した。
【0039】
ランス高さを150〜350mmに設定し、ランス5より一定時間圧縮空気を流量800Nl/minで上吹きした。その間、水面13の上方600mmに吸水紙11を取り付け、実験前後の重量変化から液滴12の飛散量を算出した。
【0040】
また、同条件において、水面と同じ高さの平面上のジェットの動圧をピトー管により計測した。ジェットの動圧の大きさは水浴の凹み量に対応するものと考えた。
【0041】
まず、多孔ランスにおけるジェットの動圧分布の一例として、2孔ランスにおける、凹み重なり面積率Srが0%、3%、7%および15%の4条件での動圧分布を調査した。
【0042】
図5はランスからのジェットによる鋼浴面上の動圧分布を模式的に示すグラフである。横軸は単孔ノズルによって形成される凹みの直径に対する比で示し、0の位置は2つの凹みの中点に相当する。
【0043】
Srが0%の場合、2つのジェットによる動圧分布は完全に独立しているのがわかる。Srが3%の場合、2つのジェットは互い引き寄せられ中心に寄っているが、各ジェットの動圧のピークは明瞭に分離している。
【0044】
これに対し、Srが7%の場合、Srが3%の場合よりもジェットの合体は進行しており、動圧の最大値は2つのジェットの中間に存在している。
【0045】
さらに、Srが15%の場合、ジェットは完全に合体しており、中心の最大動圧はSrが7%の場合よりも大きくなっている。
【0046】
次に、2孔以上の各ランスにおける凹みの最大値と、別に測定したそのランスからの単独ジェットによる凹みの比k(凹み深さ修正係数ともいう)を、Srで整理した。
【0047】
図6は多孔ノズルのジェットの鋼浴面上の凹み重なり面積率Sr(%)と凹み深さ修正係数kとの関係を示すグラフである。
【0048】
同図からわかるように、Srが0〜25%の範囲において、kはノズル孔数とは無関係にSrで整理可能であり、Srが5%以下ではkは1で一定、Srが5%を超える領域では次式の関係が得られた。
【0049】
k=0.04・Sr+0.8 (5)
これより、多孔ランスにおける凹み深さは、Srが5%を超える場合、単独ジェットのk倍として推算できることが判明した。
【0050】
次に、水モデルにおける凹み深さLを(1) 〜(12)式で計算し、L/Lとスピッティング量との関係を調査した。
【0051】
図7はL/L、すなわち水浴の凹み深さL(mm)/水浴深さLの比とスピッティング量との関係をを示すグラフである。同図に示すように、スピッティング量はL/Lで整理でき、L/Lが0.2を超えると急にスピッティング量が増加することがわかる。
【0052】
次に、内径3mのAOD炉で、80t/チャージ、Cr濃度が15重量%、C濃度が0.5重量%以上の溶鋼に、底吹き羽口から酸素を流量4000Nm/hrおよびArを流量1000Nm/hr吹込み、ランスから酸素を流量5000Nm/hrで吹込む場合を例として、本発明の作用と具体的方法を説明する。
【0053】
Cr含有溶鋼の脱Cは、溶鋼へ供給されたOとの反応で生成したCrとCとの反応によるもので、下記式で進行すると考えられる。
【0054】
Cr+3C=2Cr+3CO
上記式の反応は高温ほど右方向に進むことが知られている。
【0055】
上吹きジェットの強さの指標であるL/Lが反応点の温度に及ぼす影響として、次の2つが知られている。
【0056】
(a) L/Lが小さいほど二次燃焼率(CO+1/2O→CO)の増大による昇温速度が増加する。
【0057】
(b) L/Lが大きいほど凹みの温度(火点温度)が上昇する。
つまり、(12)式の反応点での温度上昇はこの2つの効果のバランスで決定される。
【0058】
以下は、後述の実施例に示す単孔、2孔、3孔、および4孔ランスを用い、ランス高さを調整し、L/Lを種々変更して操業した結果である。
【0059】
図8は鋼浴面の凹み深さL/鋼浴深さLの比と単位供給酸素当たりの脱C量△C/△O(kg/Nm)の関係を示すグラフである。
【0060】
同図に示すLは前述の(1) または(2) 〜(3) 式で補正した値である。同図に示すように、L/LのCr酸化量への影響は小さいことが判明した。これは、上記(a) 、(b) の各々の効果はL/Lの変化に対応してそれぞれが増減しても、両者を併せた効果はほぼ一定であることを示している。
【0061】
次に、鋼浴の凹み深さの指標であるL/Lとスピッティングとの関係をAOD炉で調査した。このときのスピッティング量は、炉頂部に鉄製サンプラーを一定時間保持し、これへの付着地金の重量で評価した。
【0062】
図9は鋼浴面の凹み深さと付着地金重量との関係を示すグラフである。同図の溶鋼の凹み深さLは図8におけるものと同じである。
【0063】
同図からわかるように、水モデル同様、補正したL/Lとスピッティング量の間には明確な相関があり、L/Lが0.2を超えるとスピッティングは急増することが判明した。
【0064】
さらに、L/Lと炉壁耐火物溶損速度の関係を調査した結果、後述の実施例で示すように、L/Lが0.05未満の場合、耐火物の溶損速度が著しく増加することが判明した。これは凹み深さを浅くすると、スピッティングは減少するが、脱炭反応も低下し、反対に二次燃焼率が増大して炉壁近傍の温度が急増するためと考えられる。
【0065】
以上の結果より、L/Lはスピッティング低減、耐火物溶損抑制の両面から0.05以上0.2以下とする。好ましくはL/Lの範囲は0.06〜0.15であり、さらに好ましくは0.07〜0.1とするのがよい。
【0066】
次に、ランス高さHについて述べる。
【0067】
を小さくしすぎると、溶鋼飛散によるランスの溶損や熱変形が発生しやすく、ランス寿命を短くすることになる。
【0068】
また、Hが大きすぎると、ジェットの広がりが大きくなり、L/Lを過度に小さくしたときと同様、COガスの二次燃焼による過度の昇温をもたらし、耐火物損耗の問題を生ずる。
【0069】
発明者らが試験を行った通常30〜100t/チャージのAOD炉では、Hは1600mm以上、3000mm以下であるのが好ましい。さらに好ましくは2000〜2500である。
【0070】
本発明の実施にあたっては、鋼浴面の凹み深さLを求める必要があるが、第1の方法として、鋼浴面の凹み深さLを実測またはランス高さ、上吹き酸素ガス量から推定し、操業条件から決まる鋼浴深さLに対するLの値を本発明の規定する範囲で操業する方法がある。
【0071】
鋼浴の凹み深さLを実測するには、上吹きランスとは別に設けたサブランスにレーザ距離計を水冷ジャケットで保護して装着し、オンライン測定する方法が考えられる。
【0072】
しかし、このようなサブランスによる測定装置は設備コストが大きくなり、距離計センサの長期信頼性の問題もあるため、鋼浴の凹み深さを簡単な方法で推定する方法を用いるのがよい。
【0073】
例えば、鋼浴の凹み深さLは、ランスの種類毎に、ランス高さHをパラメータとして、上吹き酸素ガス流量FO2とLの関係をノモグラムとして与えることによっても推定できる。
【0074】
本発明の第2の方法は、鋼浴面の凹み深さLを、数式で与える方法である。すなわち、ノズル数n、ノズルスロート径d、ノズル出口径d、ノズル傾斜角度αなどのランス仕様の諸数値と、上吹きガス流量FO2、ノズル前圧力P、溶鋼量から決まる鋼浴深さL、ランス高さH等の脱炭条件から決まる条件に基づき、前記(1) 〜(12)式からLを求めることができる。
【0075】
【実施例】
内径3mの80トンAOD炉において、Cr濃度18重量%の溶鋼を、C濃度4重量%から0.5重量%まで、表1に示す条件にて脱炭吹錬した。全条件において、底吹きガスには酸素ガスおよびArガスを用い、流量はそれぞれ4000Nm/hrおよび1000Nm/hrとした。
【0076】
表1には、本発明例および比較例の操業時のスピッティングロス、ダストロス、および炉壁耐火物損耗速度を併せて示す。これらの値は、各例において20〜30チャージ操業したときの平均値である。スピッティングロス、炉壁耐火物損耗速度は比較例1を基準(100%)として、これに対する相対的比率(%)で示した。
【0077】
比較例2は2孔ランスを用いた操業例であるが、L/Lは単孔ランスを用いた比較例1よりも大きいため、スピッティングロスは著しく増加した。
【0078】
また、比較例3は4孔ランスを用いた操業例であり、L/Lの低下によりスピッティングロスは著しく減少した。また、スピッティングを起点に発生するダストも減少するためトータルのダストロスも減少した。しかしながら、二次燃焼率増大により耐火物の損耗速度は著しく増加し、連続操業には好ましくない結果となった。
【0079】
これに対し、本発明例の場合、L/Lが本発明の規定範囲であるため、スピッティングロスおよびダストロスともに少なかった。また、炉壁損耗速度の増加率も±2%と誤差の範囲内であり、ソフトブロー化による二次燃焼率増大の悪影響は抑制された。
【0080】
【発明の効果】
含Cr鋼を脱炭精錬する際、高送酸速度のAOD上底吹き吹錬に本発明を適用することで、炉壁耐火物の溶損を増大させることなくスピッティングおよびダストロスを大幅に低減することができる。
【0081】
これにより、歩留まりの向上および炉口地金付着等の操業トラブルの回避が達成され、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】上底吹きAOD炉の吹錬状況を示す縦断面図である。
【図2】ランスおよびランスから噴射されたジェットの概要を示す縦断面図であり、同図(a) はジェットの寸法関係の概要図、同図(b) はノズル部の拡大図である。
【図3】鋼浴面上の隣りあった2つのノズルに対応する凹みの幾何学的位置関係を示す平面図である。
【図4】ジェットによる鋼浴面の凹みを観察するための縮尺1/10の水モデル実験の概要図である。
【図5】ランスからのジェットによる鋼浴面上の動圧分布を模式的に示すグラフである。
【図6】多孔ノズルのジェットの鋼浴面上の凹み重なり面積率Sr(%)と凹み深さ修正係数kとの関係を示すグラフである。
【図7】水浴の凹み深さL/水浴深さLの比と、スピッティング量との関係を示すグラフである。
【図8】鋼浴面の凹み深さL/鋼浴深さLの比と単位供給酸素当たりの脱C量△C/△O(kg/Nm)の関係を示すグラフである。
【図9】鋼浴面の凹み深さと付着地金重量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:AOD炉 2:溶鋼
3:鋼浴面 4:底吹き羽口
5:ランス 6:ジェット
7:ノズル 71:スロート部
72:ノズル出口部
8、8a、8b:凹み
9:コアジェット 10:自由ジェット
11:吸水紙 12:液滴
13:水面
:鋼浴深さ
L:鋼浴面の凹み深さ
n:ノズル数
:ランス高さ(mm)
:ノズルスロート径(mm)
:ノズル出口径(mm)
Sr:凹み重なり面積率(%)
γ:凹みの重なり角度(rad)
R:浴心から凹み中心までの距離(mm)
d:凹み直径(mm)
α:ノズル傾斜角度(rad)
β:噴流の拡がり角(rad)
:コアジェット長さ(mm)
h:ジェットの自由噴流長さ(mm)

Claims (2)

  1. ランス先端に同一のノズル傾斜角を有する2孔以上のノズルから酸素ガスあるいは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを含Cr鋼浴面に噴射するAOD炉上底吹き吹錬において、鋼浴面の凹み深さLと鋼浴深さLの比、L/Lを0.05〜0.20とすることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
  2. 隣接するノズルからのジェットにより鋼浴面に形成された凹みの重なり面積率Sr(%)に対し、鋼浴面の凹み深さLを下記の(1) 〜(12)式から求めることを特徴とする請求項1に記載の含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
    Sr≦5%のとき、
    vdcos α=1.24・L0.5 ・(L+H) (1)
    Sr>5%のとき、
    L=k・L (2)
    vdcos α=1.24・L 0.5 ・(L+H) (3)
    ここで、
    Sr={( γ−sin γ) /π}×100 (4)
    k=0.04・Sr+0.8 (5)
    v=( FO2/60)/{( d ・π/4) ・n} (6)
    cos(γ/2)={2 ・R・sin(π/n) }/d (7)
    d=h・tan(α+β) −h・tan(α−β) +d (8)
    h=H−X・cos α (9)
    R=Htanα (10)
    =2.47・P・d (11)
    =2.19・FO2/(n・d ) (12)
    であり、dはノズルスロート径(mm)、dはノズル出口径(mm)、nはランスのノズル数、αはノズル傾斜角度(rad)、Hはランス高さ(mm)、βは噴流の拡がり角(=0.175rad)、FO2はランスのガス流量(Nm/hr)である。
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