JP3849571B2 - 転炉吹錬方法 - Google Patents
転炉吹錬方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3849571B2 JP3849571B2 JP2002138668A JP2002138668A JP3849571B2 JP 3849571 B2 JP3849571 B2 JP 3849571B2 JP 2002138668 A JP2002138668 A JP 2002138668A JP 2002138668 A JP2002138668 A JP 2002138668A JP 3849571 B2 JP3849571 B2 JP 3849571B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- blowing
- slag
- nozzle
- lance
- laval nozzle
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Carbon Steel Or Casting Steel Manufacturing (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラバールノズルを備えた上吹きランスを用いて溶銑に酸素を供給し、溶銑を酸化精錬する転炉吹錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶銑の転炉吹錬においては、上吹き酸素および必要に応じて底吹き酸素により、主として脱炭を目的とした酸化精錬が行われている。これらのうち、上吹き酸素は、上吹きランス先端に設置されたラバールノズルと呼ばれる末広がりのノズルから超音速または亜音速のジェットとして転炉内に吹き付けられる。
【0003】
このような転炉吹錬において、近年、溶銑の脱燐や脱硫を目的とする溶銑予備処理プロセスの発達により、転炉における脱燐の必要性が少なくなっており、転炉で必要となる副原料が低減し、転炉での生成スラグ量が従来は溶鋼tonあたり50kg(50kg/t)を超えていたものが、急激に低減してきている。
【0004】
大量のスラグ下での吹錬では、スラグ貫通のため高圧の酸素ジェットが必要であったが、スラグ量の低減にともなって必ずしもこのような高圧の酸素ジェットが必要ではなくなっている。また、このようにスラグ量の少ない吹錬下では、スピッティングやスプラッシュ等の激しい溶湯飛散をもたらし、炉口やフード、上吹きランス、さらには排ガス設備といった部位への地金付きを増加させ、操業に悪影響を与えるとともに、鉄歩留まりの低下による生産性の悪化をもたらす。また、飛散に伴う鉄ダストの発生も著しく増加し、ダスト発生の観点からも鉄歩留まりの低下をもたらす。
【0005】
また、吹錬末期では、溶銑中炭素の低下にともなった脱炭速度の低下により送酸速度を低位に保持する。さらに、余剰酸素により酸化されたスラグ中の鉄分(T.Fe)を可能な限り低位にし、必要なMnの過剰な酸化を抑制することも重要である。しかし、上記ラバールノズルは、脱炭反応等の反応効率を低下させないようにするため、通常、送酸速度が比較的高い吹錬の初期から中期までの高炭素域(およそC>0.6mass%)における精錬条件に基づいてその形状が設計されているため、吹錬末期の低炭素域(およそC≦0.6mass%)に相当する送酸速度が小さい場合には、酸素ジェットが不必要に減衰し、鉄浴の浴面への衝突圧力の低下によるスラグの反応効率の低下により、必然的にT.Feの上昇をもたらしてしまう。このため、従来は、底吹き攪拌などによりスラグの反応性を制御しT.Feを制御していた。
【0006】
しかしながら、このような対策は大量のスラグが存在することが前提となっており、予備処理溶銑の吹錬のようにスラグが少ない場合には、底吹き等による効果は少なく、T.Feの制御が困難である。そのため、ランス高さを低下させ浴面衝突圧を高める方策も考えられるが、その場合には、火点面積の減少により反応領域が縮小される上、スラグが少ないため浴面からの熱輻射等の影響が特に大きく、ランスの耐用上の問題があり、操業の不安定化をもたらす。
【0007】
一方、吹錬初期から中期にかけての脱炭最盛期には脱炭反応は酸素供給律速であるため大きな送酸速度が必要となるが、前述のように、上吹き酸素ジェットによる鉄の飛散、ダストの生成が顕著になり、歩留まりの低下、操業の不安定化をもたらす。すなわち、従来は大量のスラグがカバーの役割を担っていたが、スラグを低減した場合には、溶銑が酸素ジェットの影響をダイレクトに受け、上記不都合が生じるのである。従来では、こうした操業状況の悪化を抑制するために、ラバールノズルの孔径や傾角等の上吹きランス形状のハード面を適正化しつつ、上吹きランスの先端と浴面との距離(ランス高さ)や送酸速度等の操業条件を制御した対策が多数提案されている。しかし、このような対策では、上吹きランスから噴出される酸素ジェットの軌跡および幾何学的形状が大きく変化し、ジェット中の酸素濃度の変化、火点配置の変化等により、不必要な2次燃焼の増加、脱炭反応効率の低下等をもたらす。
【0008】
以上のように、予備処理溶銑の吹錬のように少ないスラグ下での吹錬においては種々の問題があり、これらの状況に対処可能な新たなノズル設計および吹錬条件の確立が急務となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、少ないスラグで吹錬が行われることとなる予備処理溶銑を安定的に吹錬することができる転炉吹錬方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、スラグ量の少ない予備処理溶銑の吹錬においては、従来のように脱炭最盛期の高い送酸速度に基づいてラバールノズルを設計するのではなく、極めて低い送酸条件、すなわち吹錬末期の低い送酸速度以下で設計することにより、吹錬末期の反応効率が向上し、操業も安定することを見出した。また、スラグ量の少ない予備処理溶銑の吹錬では、脱炭最盛期において、従来よりも低い送酸条件で浴面の酸素衝突圧力が弱くても十分に脱炭反応を進行させることが可能であり、それによって鉄飛散およびダスト低減が可能となることを見出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、第1発明は、その先端にラバールノズルが設置された上吹きランスを用い、吹錬最盛期よりも吹錬末期において送酸速度を低下させて予備処理溶銑を吹錬する転炉吹錬方法であって、
前記ラバール1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)とラバールノズルのスロート径Dt(mm)とから以下の(1)式で表されるノズル背圧Po(kPa)を用い、
吹錬末期の炭素濃度0.6mass%以下の低炭素域において、以下の(2)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式において定数KfがKf≦0.24を満足し、
吹錬最盛期の炭素濃度0.6mass%超の高炭素域において、以下の(3)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式においてKm≦0.18を満足するラバールノズルを用いることを特徴とする転炉吹錬方法を提供する。
【数3】
【0014】
第2発明は、上記第1発明において、溶銑上のスラグが50kg/t以下であることを特徴とする転炉吹錬方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明に至った検討結果について説明する。
酸素吹錬中の転炉内挙動は、その反応挙動の違いから高炭素域(C>0.6mass%)と低炭素域(C≦0.6mass%)とに大別される。従来から、高炭素域では、供給される酸素はほぼ全量脱炭に費やされ、反応は酸素の供給律速であり、高い送酸速度で吹錬が行われる。一方、低炭素域では、酸素の供給律速から炭素の移動律速に変わり、酸素の一部が鉄の酸化にも費やされるので、鉄の酸化を抑制して脱炭酸素効率を高めるために送酸速度を低減させている。
【0016】
吹錬におけるラバールノズルの設計は送酸速度に基づいて行われ、従来から吹錬の際の送酸速度から求められるラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)とスロート径Dt(mm)を用いて以下の(1)式によりノズル背圧Po(kPa)を定め、定めたノズル背圧Po(kPa)と雰囲気圧Pe(kPa)とスロート径Dt(mm)とラバールノズルの出口径De(mm)との間の周知の関係式からラバールノズルの出口径De(mm)を定めることによってなされている。この周知の関係式を、以下の(2)および(3)式に示す。これらは同じ内容の式であるが、(2)式では吹錬末期を想定したものであり、(3)式は吹錬最盛期を想定したものである。これらの式にそれぞれ示す定数KfおよびKmはそれぞれの吹錬時期に適した値が採用される。そして、吹錬末期を想定する(2)式を用いる場合には、(1)式の送酸速度は当然に吹錬末期の送酸速度であり、吹錬最盛期を想定する(3)式を用いる場合には、(1)式の送酸速度は当然に吹錬最盛期の送酸速度である。これら送酸速度は、操業的に平均値もしくは代表値が用いられる。
【数5】
【0017】
そこで、まず、本発明が対象とするスラグの少ない予備処理溶銑の転炉吹錬における吹錬末期の(2)式の定数Kfについて調査した。ここでは、吹錬前の燐が0.010〜0.018mass%でスラグ量が20kg/t以下の極小スラグ下における吹錬を行った。スラグ量は、吹錬終了後のスラグ分析値と投入された媒溶材からCaOのマスバランスを計算して求めた。また、スラグの塩基度CaO/SiO2は2.5〜3.5であった。その結果の一例を図1に示す。最適なジェットとなるようにラバールノズルを設計する場合には、理論的にはKf=0.26であるが、図1に示すように、(2)式のKfの値がKf≦0.29を満たす出口径Deにおいて、スラグ中のT.Feの大幅な低減が得られた。従来のように脱炭最盛期近傍でラバールノズルの設計を行う場合には、Kfは通常0.30以上であるが、Kf≦0.29とすることにより、吹錬末期の酸素ジェットが適正化する方向に向かうためと考えられる。つまり、吹錬末期において酸素ジェットが最適となるKf=0.26近傍に達すると、酸素ジェットの衝突圧力が増加し、スラグ中の反応向上がもたらされるためと考えられる。
【0018】
Kfを理論値0.26より低い値に低下させていくと、酸素ジェットが再び最適条件から外れていく。このため、スラグが多い場合にはジェットの衝突が阻害されてT.Feが上昇傾向にあったが、この例のようにスラグ量が20kg/T以下では酸素ジェットの衝突を阻害するスラグがほとんどないことから、図1に示すようにT.Feの上昇が少ない。このような効果はスラグが少なくなるほど大きくなり、スラグ量が10kg/t以下ではT.Feの上昇がほとんど見られなくなる。
【0019】
スラグ量が多くなっても、50kg/t以下であればジェット衝突の阻害が少なくT.Feの上昇は許容範囲である。また、スラグ量30kg/t以下であればよりT.Feの上昇が小さくなるためより好ましい。
【0020】
ここで、ランスのハード面から調査した結果、20kg/T以下の極小スラグの場合、理論最適値であるKf=0.26では、ランスノズル先端の損耗が若干大きい傾向にあることがわかった。これは、酸素ジェット最適化による火点温度の上昇などにより熱輻射が増大する等の要因であり、スラグが少なくなることにより、このような影響を受けやすくなるためと考えられる。したがって、T.Feの上昇を許容範囲内にしつつこのようなランスノズル先端の摩耗を少なくして安定な操業を行う観点から、Kf≦0.24が好ましい。
【0021】
このように脱炭末期に酸素ジェットを最適化すると、脱炭最盛期の高送酸速度域では酸素ジェットは必然的に適正な条件からはずれてくるため、ラバールノズル出口近傍でのジェットエネルギーロスが大きくなり、そのため、浴面衝突圧は低下する。本発明が対象とするスラグの少ない予備処理溶銑の転炉吹錬においては、このように浴面衝突圧が低くても脱炭反応を有効に進行させることができ、かつ低い衝突圧によって鉄飛散およびダストの低減を図ることができる。
【0022】
図2はこのことを示す一例である。ここでは、上記の場合と同様の吹錬条件で、スラグ量が20kg/t以下の極小スラグ下における吹錬を行い、その際の上記(3)式におけるKm値とダスト発生速度指数との関係を示す。この図2に示すように、(3)式のKmの値がKm≦0.23を満たす出口径Deにおいて、ダスト低減効果が大きくなることが確認された。さらにKmを低下させていくと、エネルギーロスの増大によりダスト低減効果は大きくなり、Km≦0.18でその効果はより大きくなる。このような効果は、図2に示すスラグ量が20kg/T以下の極小スラグ下で特に大きい。
【0023】
スラグ量が50kg/tを超える場合には、Kmが適正値から過剰に低下すると、スラグの存在により浴面への酸素供給圧が弱まり、これにより、酸素ジェットが溶銑に効率良く到達せず、脱炭反応の酸素効率が低下して、鉄酸化、ダスト生成が進むなどの悪影響が生じる場合があったが、50kg/t程度までではこのような問題は生じ難く、30kg/t以下の場合にこのような問題がより生じ難くなる。特に、上述したようなスラグ量が20kg/t以下の極小スラグ条件において、脱炭酸素効率を低下させることなくKm値を大きく低下させて、鉄飛散およびダスト発生を一層有効に低減可能であることが確認された。すなわち、従来はKmには自ずと下限が存在していたが、本発明のような少ないスラグ下の吹錬では従来のような意味合いでのKmの下限は存在しない。
【0024】
ここで、吹錬末期における送酸速度を大きく低減させて脱炭酸素効率向上の極限化を図る場合や、脱炭最盛期の高効率化の目的で送酸速度を極限まで高めて高速化を図る場合などは、必然的に末期と最盛期の送酸速度比は大きくなっていく。そのため、吹錬末期の送酸条件にてKf値を0.29以下にして適正化させていくと吹錬最盛期のKm値は極めて小さくなってくる。したがって、本発明のように少ないスラグ下の吹錬において上述のようにKmに本質的な下限が存在しないことは極めて大きな意義を有する。
【0025】
以上の検討結果は、吹錬末期におけるKfまたは吹錬最盛期におけるKmを最適化する条件で吹錬することが重要であることを示すものであるが、KfおよびKmの双方を最適化するような送酸条件およびラバールノズル設計により、吹錬末期および最盛期の両方において最適な吹錬を行うことができることはいうまでもない。
【0026】
なお、以上の検討結果が示すように、KfおよびKmについては、本発明が対象とする予備処理溶銑の転炉吹錬のように少ないスラグ下では明確な下限は存在しないが、実際には、Kf,Km値の低下にともない出口径Deは小径になるため、スロート径Dtと同径になったところで先細ノズルとなり、工業的には末広がりでないストレートノズル(Dt=De)となる。そのため、このストレートノズルになったところが必然的に下限となる。
【0027】
以上のような結果に基づき、本発明では、その先端にラバールノズルが設置された上吹きランスを用い、吹錬最盛期よりも吹錬末期において送酸速度を低下させて予備処理溶銑を吹錬するに際し、前記ラバール1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)とラバールノズルのスロート径Dt(mm)とから上記(1)式で表されるノズル背圧Po(kPa)を用い、
吹錬末期の炭素濃度0.6mass%以下の低炭素域において、上記(2)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式においてKf≦0.24を満足し、
吹錬最盛期の炭素濃度0.6mass%超の高炭素域において、上記(3)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式においてKm≦0.18を満足するラバールノズルを用いることとした。
【0028】
本発明で対象とする予備処理溶銑とは、転炉吹錬に先だって脱燐、脱硫等の溶銑予備処理を行って、転炉吹錬でのスラグ量の低減を可能にした溶銑をいい、転炉吹錬とは、主として脱炭を目的とした酸化精錬工程のことを示す。このように本発明で対象とする予備処理溶銑は転炉吹錬においてスラグ量が少なくてよく、通常は50kg/t以下であるが、30kg/t以下がより好ましく、20kg/t以下の極小スラグがさらに好ましい。例えば、0.10%程度の燐を含有する溶銑を溶銑予備処理の脱燐工程にて燐レベルを0.02%以下とし、実質的に製品の燐レベルまで低減した予備処理溶銑の場合、転炉吹錬におけるスラグ量は添加されるMn鉱石などの副原料にも依存するが、概ね25kg/t以下に低減することができる。
【0029】
ラバールノズルは理想的にはその末広がり部が曲線をなしているが、本発明におけるラバールノズルには、加工が容易であるため多用されている末広がり部が広がり角2〜8°程度の円錐形状のものを含む。また、スロート部、出口部に多少のストレート部を持つものも含む。
【0030】
さらに、ノズル背圧とは、理想的にはノズルのすぐ上流のランス内部の畜気部圧力を示すが、工業的には、ランス上部管など圧損が著しく大きくならない部分で測定される圧力に相当し、本発明ではこれらのいずれも含む。
【0031】
次に、本発明の実施に用いられる転炉吹錬用上吹きランスの一例について説明する。図3は本発明の実施に用いられる転炉吹錬用上吹きランスの一例を示す概略断面図、図4は図3に示す転炉吹錬用上吹きランスに装着されたラバールノズルの概略拡大断面図である。
【0032】
図3に示すように、上吹きランス1は、円筒状のランス本体2と、このランス本体2の下端に溶接等により接続されたランスノズル3とで構成されており、そして、ランス本体2は、外管8、中管9、内管10の同心円状の3種の鋼管、すなわち三重管で構成され、銅製のランスノズル3には、鉛直下向き方向または鉛直斜め下向き方向にラバールノズル4が設置されている。
【0033】
外管8と中管9との間隙、および、中管9と内管10との間隙は、上吹きランス1を冷却するための冷却水の流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は中管9と内管10との間隙を通ってランスノズル3の部位まで至り、ランスノズル3の部位で反転して外管8と中管9との間隙を通って上吹きランス1の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。この場合に給排水の経路を逆としても良い。また、内管10の内部はラバールノズル4への酸素の供給流路となっており、上吹きランス1の上端部から内管10内に供給された酸素は、内管10を通り、ラバールノズル4から転炉(図示せず)内に噴出される。
【0034】
ラバールノズル4は、図4に示すように、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成され、縮小部分を絞り部5、拡大部分をスカート部(末広がり部)7、絞り部5からスカート部7に遷移する部位である、最も狭くなった部位をスロート6と呼び、1個ないし複数個のラバールノズル4がランスノズル3に設けられている。ランス本体2の内部を通ってきた酸素は、絞り部5、スロート6、スカート部7を順に通って、超音速または亜音速のジェットとして転炉内に供給される。図4中のDtはスロート径、Deは出口径であり、スカート部7の広がり角度θは通常10度以下である。
【0035】
なお、絞り部5およびスカート部7は円錐体である必要はなく、内径が曲線的に変化する曲面で構成してもよく、また、絞り部5はスロート6と同一の内径であるストレート状の円筒形であってもよい。絞り部5およびスカート部7を、内径が曲線的に変化する曲面で構成する場合には、ラバールノズルとして理想的な流速分布が得られるが、ラバールノズルの加工が極めて困難であり、一方、絞り部5をストレート状の円筒形とした場合には、理想的な流速分布とは若干乖離するが、転炉吹錬で使用には全く問題とならず、かつ、ラバールノズルの加工が極めて容易となる。
【0036】
本発明においては、以上のように例示されるラバールノズル4について、吹錬末期の送酸速度から求められるラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)とスロート径Dt(mm)を用いて上記(1)式によりノズル背圧Po(kPa)を定め、吹錬末期の炭素濃度0.6mass%以下の低炭素域において、定めたノズル背圧Po(kPa)と雰囲気圧Pe(kPa)とスロート径Dt(mm)とラバールノズルの出口径De(mm)との間の関係式である上記(2)式のKfがKf≦0.24となるように、また、吹錬最盛期の炭素濃度0.6mass%超の高炭素域において、定めたノズル背圧Po(kPa)と雰囲気圧Pe(kPa)とスロート径Dt(mm)とラバールノズルの出口径De(mm)との間の関係式である上記(3)式のKmがKm≦0.18となるように、ラバールノズルの出口径De(mm)を定める。
【0039】
このような形状のラバールノズル4を有するランスノズル3を用いて転炉吹錬を行うのであるが、ランスノズル3が複数個のラバールノズル4を有している場合には、その一部のみを上記のような形状としてもよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに示す。
容量が260tで、酸素ガスを上吹きし、攪拌用ガスを底吹きする上底吹き複合吹錬用転炉内に約260トンの溶銑を装入し、主として脱炭吹錬を行った。用いた溶銑は転炉前工程である溶銑予備処理設備にて脱硫および脱燐処理が施された同一鋼種向けの溶銑であり、[P]は0.010〜0.015mass%であった。転炉内には石灰系フラックスを添加し、表1に示す種々の量のスラグを生成させた。スラグ分析値から求められたスラグの塩基度すなわちCaO/SiO2は約3〜4であり、スラグ量はCaOのマスバランスにより求めた。すなわち、以下の式により求めた。
【数6】
【0041】
転炉炉底に設置した羽口からは、溶湯攪拌を目的としてアルゴンまたは窒素を毎分10〜25Nm3程度吹き込んだ。用いた上吹きランスは、ラバールノズルが5個円周上に設置された5孔ノズルタイプで、脱炭初期から最盛期にかけての送酸量を60000Nm3/hr、吹錬末期では35000Nm3/hrとし、ランス高さなどの吹錬パターンはいずれも極力同一とした。このような吹錬条件において、種々のノズルを用いて吹錬した。吹錬により[C]は0.05〜0.09mass%まで低下し、到達温度は1630〜1670℃であった。吹錬中は湿式のダスト測定装置を用いて1吹錬あたりの発生ダスト量を求め、また、吹錬終了時には転炉内スラグを採取してスラグ中のT.Feを調査した。また、ランスの損耗状態も把握した。これらの結果を表1に示す。表1中、ランスの損耗状況の評価基準は◎が従来なみ、○がチップが損耗傾向、△が寿命大幅減である。
【0042】
表1から明らかなように、Kfが高い比較例1,2は、ダスト量が多く、T.Feの値が高かった。これに対して本発明の範囲内である実施例1〜5は比較例よりもダスト量が少なく、T.Feの値も低かった。また、スラグ量が18kg/tと低く、Kfが0.26付近の参考例2はランスの損耗状況が△であったが、Kfが低い値となれば実施例5に示すように、スラグ量が9kg/tと極めて低い場合でもランスの損耗状況が◎であった。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スラグ量の少ない予備処理溶銑の吹錬において、従来のように高送酸速度に基づいてラバールノズルを設計するのではなく、極めて低い送酸条件、すなわち吹錬末期の低い送酸速度以下で設計するので、吹錬末期の反応効率が向上し、操業も安定する。また、本発明によれば、スラグ量の少ない予備処理溶銑の吹錬において、脱炭最盛期に従来よりも低い送酸条件で吹錬を行うことにより、十分に脱炭反応を進行させつつ、鉄飛散およびダスト低減が可能となる。その結果、吹錬全体での鉄歩留まりを大幅に向上することができかつ操業の安定化が達成され、工業上極めて有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】吹錬末期の関係式である(2)式の定数Kfと吹錬終了時のT.Feの指数値との関係を示す図。
【図2】吹錬最盛期の関係式である(3)式の定数Kmとダスト発生速度指数との関係を示す図。
【図3】本発明に用いられる転炉吹錬用上吹きランスを示す概略断面図。
【図4】本発明に用いられる転炉吹錬用上吹きランスのラバールノズルの一例を示す概略拡大断面図。
【符号の説明】
1 上吹きランス
2 ランス本体
3 ランスノズル
4 ラバールノズル
5 絞り部
6 スロート
7 スカート部(末広がり部)
Claims (2)
- その先端にラバールノズルが設置された上吹きランスを用い、吹錬最盛期よりも吹錬末期において送酸速度を低下させて予備処理溶銑を吹錬する転炉吹錬方法であって、
前記ラバール1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)とラバールノズルのスロート径Dt(mm)とから以下の(1)式で表されるノズル背圧Po(kPa)を用い、
吹錬末期の炭素濃度0.6mass%以下の低炭素域において、以下の(2)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式においてKf≦0.24を満足し、
吹錬最盛期の炭素濃度0.6mass%超の高炭素域において、以下の(3)式に示すラバールノズルの出口径De(mm)と、前記ノズル背圧Po(kPa)および前記スロート径Dt(mm)との関係式においてKm≦0.18を満足するラバールノズルを用いることを特徴とする転炉吹錬方法。
- 溶銑上のスラグが50kg/t以下であることを特徴とする請求項1に記載の転炉吹錬方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002138668A JP3849571B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | 転炉吹錬方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002138668A JP3849571B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | 転炉吹錬方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003328027A JP2003328027A (ja) | 2003-11-19 |
JP3849571B2 true JP3849571B2 (ja) | 2006-11-22 |
Family
ID=29700049
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002138668A Expired - Fee Related JP3849571B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | 転炉吹錬方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3849571B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019039285A1 (ja) * | 2017-08-21 | 2019-02-28 | 新日鐵住金株式会社 | 転炉吹錬用上吹きランスおよび溶銑の精錬方法 |
-
2002
- 2002-05-14 JP JP2002138668A patent/JP3849571B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003328027A (ja) | 2003-11-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US9493854B2 (en) | Converter steelmaking method | |
JP5644355B2 (ja) | 溶銑の精錬方法 | |
JP4273688B2 (ja) | 転炉吹錬方法 | |
JP4901132B2 (ja) | 転炉吹錬方法及び転炉吹錬用上吹きランス | |
JP2006348331A (ja) | 溶融金属精錬用上吹きランス及び溶融金属の吹錬方法 | |
JP4830825B2 (ja) | 転炉型精錬炉における精錬方法 | |
JP4487812B2 (ja) | 低燐溶銑の製造方法 | |
JP2006328432A (ja) | 転炉吹錬方法及び転炉吹錬用上吹きランス | |
JP5544807B2 (ja) | 精錬用上吹きランス及び転炉精錬方法 | |
EP0756012B1 (en) | Decarburization refining process for chromium-containing molten metal. | |
JP2007239082A (ja) | 溶融金属の酸化精錬方法及び精錬用上吹きランス | |
JP3849571B2 (ja) | 転炉吹錬方法 | |
US5540753A (en) | Method for refining chromium-containing molten steel by decarburization | |
JP5915568B2 (ja) | 転炉型精錬炉における溶銑の精錬方法 | |
JP4218234B2 (ja) | 転炉吹錬方法 | |
JP2012082492A (ja) | 転炉精錬方法 | |
JP4385855B2 (ja) | 転炉吹錬方法及び転炉吹錬用上吹きランス | |
JP3424534B2 (ja) | 溶融金属精錬用上吹きランス | |
JP4862860B2 (ja) | 転炉吹錬方法 | |
JP2011084789A (ja) | 転炉吹錬方法 | |
JP4244546B2 (ja) | 転炉吹錬用上吹きランス | |
JP4686873B2 (ja) | 溶銑の脱燐方法 | |
JP2012082491A (ja) | 転炉精錬方法 | |
JP2003138312A (ja) | 溶融金属精錬方法及び溶融金属精錬用上吹きランス | |
JP4470673B2 (ja) | 溶鋼の真空脱炭精錬方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041001 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20051122 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060123 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060328 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060526 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060808 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060821 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090908 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100908 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100908 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110908 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110908 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120908 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120908 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130908 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |