JP3579950B2 - ボイスコイルボビン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は各種音響機器に使用されるスピーカに用いるボイスコイルボビンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種音響機器の小形化に伴い、使用されるスピーカも小口半径のものが要求されてきているが、一方では耐入力等の信頼性においては大口半径のものに劣らぬ性能が要求されており、この種の小形高性能スピーカにおいては、特にボイスコイルの耐熱性や難燃性が重要になってきている。すなわち、ボイスコイルに入力が印加されるとコイルにジュール熱が発生し、その入力が大きくなればなるほど上記ジュール熱の発生も大きくなり、このジュール熱によってボイスコイルが激しく温度上昇してオイルを巻回したボビンが焼損したり、あるいはコイルとボビンを結合しているワニスが軟化劣化してコイルがボビンから抜けてしまうといった問題が発生していた。
【0003】
このようなことから従来、耐熱仕様のボイスコイルとしては、金属箔を短冊状に切断したものを筒状にし、その外周に補強と絶縁のためにクラフト紙からなる補強紙を巻き付けてボビンを形成し、このボビンにコイルを巻回してボイスコイルを構成することにより、金属箔でコイルの熱を放熱して温度上昇を抑制するようにしたものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、耐熱性を図ってボイスコイルのボビンとして使用する金属箔は重量が重く、スピーカの能率を低下させるばかりでなく、金属は電気良導体のためにショートの原因になるなどの欠点を持ち、十分に満足できるものではなかった。
【0005】
また、耐熱性の化学繊維からなるシート、例えば芳香族ポリアミド繊維のみからなる紙(ノーメックス紙(Dupont社製))をクラフト紙に代わってボイスコイルのボビンとして使用したものがあるが、これは少量の吸湿性があり、ボイスコイルの急激な昇温から100℃以上になると水分がガス化することによりコイルの裏側に膨れを生じ、スピーカにおいて異常音を発生させ、スピーカの品質不良の原因となるという欠点を有していた。
【0006】
また近年、車載用のドア取り付け用のスピーカにおいては防水性が要求され、振動板をはじめボイスコイルにおいても耐水性が重要視されてきているが、十分に満足できるものが得られるにいたっていないという課題も有していた。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決し、軽量で高性能なボイスコイルボビンを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明によるボイスコイルボビンは、耐水性及び耐熱性を有する微細なフィルム状の合成パルプを主成分とし、これに耐水性及び耐熱性を有する合成繊維を5〜30%、無機質フィラーを20〜50%混合して抄造し、カレンダーによる熱圧加工を施したシートにより形成される構成としたものである。
【0009】
【作用】
この構成によりボイスコイルのボビンは耐熱性及び熱安定性の優れたものとなり、表面に凹凸があるので接着性にも優れたボイスコイルを得ることができる。
【0010】
また、カレンダーによる熱圧加工を施すと、微細なフィルム状の合成パルプが自己融着性を発揮し、また無機質のフィラーとの間隙が小さくなるためシートの組織が緻密になり水分の浸透が抑えられ、軽量で耐水性に優れ、ボイスコイルの発熱によるガス、気泡の発生がなく、大入力に対して十分耐えることができるものになる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について、説明する。
【0012】
微細フィルム状パルプとして、メタ型芳香族ポリアミドパルプ(コーネックスパルプ:帝人(株)製)のカナディアン標準濾水度110mlの水性スラリーを用い、耐熱、耐水性を有する合成繊維としてパラ型芳香族ポリアミド短繊維(テクノーラ繊維:帝人(株)製)の1.5デニール、3mmカット長のものを使用した。
【0013】
無機質フィラーとして硬質マイカで60メッシュ以上が35%、60〜200メッシュが50%、200メッシュ以上が15%のものを使用した。
前記パルプと短繊維とマイカを(表1)に示す組成の割合(乾燥重量%)で混合し水性スラリーを作製した。
【0014】
抄紙は通常の長網方式の抄紙機を用い、該水性スラリーを抄紙し、乾燥して坪量約130〜190g/m2のシートを得た。このシートを280℃で200kg/cmの線圧で熱圧カレンダー加工した。得られた紙状シートの熱収縮性、難燃性の指標としてのLOI値(限界酸素指数)、耐水性、物理特性について比較例としてのクラフト紙のデータと併せて(表1)に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
熱収縮性は10cm角に切断した試験片を所定の温度のオーブン中に240時間放置した後の寸法変化を測定して求めた。
LOI値は、JIS K−7201により測定した。
耐水性については、10cm角に切断した試験片を沸騰水中で1時間煮沸し、90℃のオーブン中で1時間乾燥を行うことを1サイクルとし、これを5サイクル繰り返して各サイクルごとの寸法変化を測定して求めた。
【0017】
この(表1)から明らかなように、本実施例によるシートは耐熱性に優れ、寸法安定性が良好でLOI値が高く難燃性に優れており、大入力用のスピーカのボイスコイルボビンとして十分満足できるものとなる。
また耐水性についても良好な結果を示すことが明らかとなる。
さらに、本実施例によると比弾性率と内部損失のバランスのとれたシートが得られる。
【0018】
本実施例における材料の配合については重量割合として、メタ型芳香族アラミドパルプは10〜80%の範囲が好ましい。10%未満では紙状物の力学的強度が不足する。また80%を越えると比弾性率が不足する。
パラ型芳香族ポリアミド短繊維は、5〜30%の範囲が好ましい。
パラ型芳香族ポリアミド短繊維は、高結晶性で弾性率が高く、シートの引き裂き強度を向上させ、また高耐熱性で高い難燃性を有するためシートの熱的特性が向上する。
【0019】
無機質フィラーとしてはマイカを用いるのが最適で、抄造用として使用するため粒径が16メッシュより小さく、200メッシュより大きい粒状マイカを主体とするのが好ましい。
【0020】
抄紙は通常の円網方式、長網方式等いずれの方法でも良く、得られた紙状物の比弾性率、及び耐水性をさらに高めるには温度220℃以上、線圧100kg/cm以上でカレンダーによる熱圧加工を施すことが望ましい。
カレンダー加工により、メタ型芳香族ポリアミドパルプの自己融着性が発揮され、マイカの密着性も向上し、耐水性が向上するとともにボイスコイルの温度上昇時のガス発生も抑制され耐熱性が向上する。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明によるボイスコイルボビンは、耐水性及び耐熱性を有する微細なフィルム状の合成パルプを主成分とし、これに耐水性及び耐熱性を有する合成繊維と無機質フィラーを混合して抄造し、カレンダーによる熱圧加工を施したシートを用いた構成とすることにより、コイルへの大入力印加に十分に耐えると共に、難燃性を実現したボイスコイルを得ることができるため、発火燃焼などの危険も少なく安全で、小型高性能セット用のスピーカに用いられるボイスコイルボビンとして実用効果が高く、しかも耐水性に優れているため、車載用のドア取り付け用スピーカのボイスコイルのボビンとしても十分にその効果を発揮することができる実用価値の大なるものである。
Claims (5)
- 耐水性及び耐熱性を有する微細なフィルム状の合成パルプを主成分とし、これに耐水性及び耐熱性を有する合成繊維を5〜30%、無機質フィラーを20〜50%混合して抄造し、カレンダーによる熱圧加工を施したシートにより形成されたボイスコイルボビン。
- 微細なフィルム状の合成パルプにメタ型芳香族ポリアミド樹脂からなるパルプを用いた請求項1記載のボイスコイルボビン。
- 合成繊維にパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維を用いた請求項1もしくは請求項2記載のボイスコイルボビン。
- 無機質フィラーに粒径が16メッシュより小さく、220メッシュより大きいフレーク状マイカを主体として用いた請求項1〜請求項3いずれか記載のボイスコイルボビン。
- カレンダーによる熱圧加工後の面厚が30〜500μm、嵩密度が0.5〜2.0g/cm3のシートを用いた請求項1〜請求項4いずれか記載のボイスコイルボビン。
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- 1995-03-24 JP JP06616895A patent/JP3579950B2/ja not_active Expired - Fee Related
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