JP3576609B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は空気入りタイヤに関し、更に云えば、氷雪路面での走行性能を向上させたタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トレッド部の表面に突出したスパイク、またはスタッドによる粉塵公害をなくすため、スパイクタイヤの使用が禁止されて以来、スパイクを備えない氷雪路面での走行性能に優れるタイヤを目差して、種々の開発がなされてきた。これらはスタッドレスタイヤと総称されている。このスタッドレスタイヤにほぼ共通する特徴として、そのトレッド表面が多数のブロックに区画され、更に多数のサイプが施されていることが挙げられる。このサイプには様々な態様が可能であって、これまでにも各種提案されてきているが、何れもサイプによるブロック角部のエッジ効果によって氷上摩擦係数を向上させることを狙いとしている。
更にこれに加えて、あるいはサイプを施す代わりに、トレッド部のゴムに微細な独立気泡を多数有するタイヤも提案されている。前記独立気泡によってタイヤと路面との間に介在する水膜を取り除こうとするものである。
【0003】
一方、ゴムの組成の面からゴム中に有機、無機物質の第三成分を添加することが提案されている。例えば、第三成分として短繊維や、樹脂の微細体をトレッドゴムに配合したものである。この狙いは、やはり、第三成分の存在によって、氷上摩擦係数を向上させることにある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記第三成分を配合したトレッドゴムの場合、短繊維、または樹脂の微細体を単にゴムに対し添加したのでは、予期した摩擦係数の向上を得ることはできず、微細体を配合するゴムの性質が重要である。
本発明は、第三成分として微細体を添加配合したゴムを有するトレッドを備えたタイヤの改良に係り、雪路面での走行性能を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一対のサイドウォ−ルと両サイドウォ−ル間に跨がって延びる円筒状トレッドがトロイド状に連なり、上記トレッドが径方向内側を占める下層と、その外側に重なる上層の複合ゴム層より成ると共に、互いに交わる溝によって区分された多数のブロック状陸部を有し、これらブロック状陸部に複数のサイプを備えたタイヤにおいて、上記上層は、上記下層よりも硬質で、微細体を含むショア A 硬度が55〜95°の硬質薄肉ゴム層より形成され、上記ブロック状陸部の表面及び上記サイプの壁面を連続して覆うように設けられていることを特徴としている。
【0006】
本発明において、上層の薄肉ゴム層に含まれる微細体は、 ASTM ショア D 硬度が少なくとも40°であることが好ましい。
【0007】
【作用】
本発明におけるタイヤはトレッドが、例えば上下2層の複合ゴム層であって、そのうちの上層がSPB 樹脂やナイロン短繊維等の微細体を含むショアA 高度が55〜95°の硬質薄肉ゴム層より成ることを構成上の特徴とする。
【0008】
上層に混入された微細体は氷雪路走行時において、周囲ゴムの支持の下に、表面上に現れた部分による氷雪面のスクラッチ効果を狙ったもので、それによって高い駆動・制動力、およびロ−ドホ−ルディングを得ようとするものである。発明者が種々行なった実験によると、通常トレッドに適用される種類のゴムに上記微細体を単に添加配合したトレッドゴムの場合、走行時に表面に現れた微細体に対し外力が作用するとゴム中に埋没してしまい、硬い氷面に対するスクラッチ効果は殆ど期待でず、微細体の埋没を防ぐには、これらを支持するゴムのショアA 硬度が少なくとも55°必要であることが分かった。一方硬度の上限は、トレッドゴムとして要求される他性能との兼ね合いから95°である。トレッドゴムとしてこのように硬質であっても、下層ゴムを被覆する薄肉層として用いることによって、他の性能に対し実質上悪影響を及ぼすことはない。
上層に混入する微細体としてはASTMショアD 硬度が少なくとも40°のものが好ましい。
【0009】
薄肉の上層ゴムをトレッドに設けた場合、タイヤ製造における加硫成型時にトレッドの陸部に配置されるサイプの壁面が、陸部表面(接地表面)に連続して上層ゴムによって被覆される。本発明においては上層ゴムが硬質であるため、サイプによって細分された陸部の剛性低下が小さく、そのためサイプをその分多用することができる。その上サイプ壁が陸部表面と交わる位置に形成される稜線部によるエッジ効果と相俟って、優れた駆動・制動力を得ることができる。
【0010】
サイプによって区分される陸部は夫々独立して機能するが、サイプを多様した場合、氷雪路面上に存在する微妙な凹凸、異物に対してよくなじみ、それによる接地性向上が同様に駆動・制動力、ロ−ドホ−ルディングの向上に有効である。なおサイプを特に多用しなくても、トレッドの下層ゴムを上層ゴム対比軟質にすることによって同様の効果を得ることができる。
【0011】
【実施例】
以下本発明を図面に基ずき説明する。図1は本発明における第1実施例を示すトレッドの平面図、図2(a)は図1におけるA−A 断面図、図2(b)は図2(a)の部分拡大図である。
本発明においてタイヤは、一対のサイドウォ−ル(図示せず)と両サイドウォ−ル間に跨がって延びる円筒状トレッド1 がトロイド状に連なり、トレッド1 は径方向内側を占める下層2 と、その外側に重なる上層3 の複合ゴム層(図2)より成ると共に、互いに交わる溝4 、5 によって区分された多数のブロック状陸部6 を有し、これら陸部6 に複数のサイプ7 を備えている。そして上層3 は微細体8 を含むショアA 硬度が55〜95°の硬質薄肉ゴム層により形成される。
図示を省略しているが、両サイドウォ−ル間は常法によりポリエステル、レ−ヨンで代表される繊維コ−ドラジアルプライの少なくとも1枚(通常2枚)から成るカ−カスによって、また公知の非伸長性ベルト層をカ−カスとトレッド1 間に配置し補強することができる。そして更に、ベルト層と下層ゴムとの間に、ほぼ下層ゴムの幅全体に亙って、例えば比較的硬質のベ−スゴム層を配置することができる。
【0012】
微細体8 としては、ゴムとの接着性に優れた結晶性のSPB 樹脂(シンジオタクテイック−1,2−ポリブタジエン樹脂)、およびABS 樹脂(アクリロニトル− ブタジエン− スチレン共重合体樹脂)が好適である。このような樹脂の好ましい物性として、氷上でのグリップ性に関連してASTMショアD 硬度が少なくとも40°(但し、樹脂材料の硬度)であって、タイヤの加硫成型に際しての微細体の形状維持の面から融点は110°C 以上である。そして微細体の形状は、直径(平均)が10〜200μm の球状体、同直径で直径の10倍以上長さを有する棒状、または円柱状体のものが好ましい。またナイロンなどの短繊維も使用することができる。
微細体8 の配合量はゴム100に対し5〜60重量部の範囲が好ましい。微細体が上記下限値である5重量部は氷上性能の面ょり、また上限値60重量部はタイヤ製造時の加工性の面より制約される値である。
【0013】
図1に示す実施例においてトレッド1 は、その両端E に近接し周方向に向かって変形ジグザグ、またはクランク状に延びる縦溝41を一対、それらと赤道面O との間にストレ−トに延びる縦溝42をもう一対設け、また両トレッド端E 間を変形クランク状に横切る多数の横溝5 を設けて互いに独立したブロックより成る陸部6 を区分している。陸部6 は各々軸方向に延びる横向きサイプ7 をほぼ等間隔に、ブロックの長さに応じて4本、または5本備える。サイプ7 の先端と、その長手方向の中途に符号9 によって示す部分は、サイプの深さ方向に延びる小穴である。
【0014】
図2に示す実施例において陸部6 の下層2 上に積層された上層3 は、サイプ7 の壁面、並びに溝(横溝5 )の壁面へも陸部の表面10より続いて延びている。これはタイヤの加硫成型時に溝、およびサイプを型付けする金型の骨、およびブレ−ドのグリ−ントレッドへの押圧によって形成されたもので、これによって陸部6 のサイプ7 で細分され部分は補強され、走行時に矢印Y 方向の駆動力、またこの逆方向の制動力が作用したときに生じ勝ちな陸部の倒込みを有利に抑制すると共に、エッジ効果を発揮するためのサイプ壁と陸部表面10が交わる稜線、またはエッジ11の部分が強化される。その点溝壁と陸部表面10が交わる稜線11’ の部分についても同様である。
なお上層の硬度によっては、加硫成型時にサイプ壁に沿って延びる上層の被覆が部分的に破断することがあるが、その場合においても陸部の補強を損なうことはない。
【0015】
図2に示す実施例は微細体8 としてSPB 樹脂の棒状体81を用いたものであるが、棒状体81の向きは周方向Y である。そしてこの場合、横溝5 とサイプ7 に近接する限られた部分のだけはタイヤ製造時に加硫工程において溝を型付けする骨、サイプを型付けするブレ−ドによってゴムに圧力が作用する方向に指向している。上層3 の陸部表面10における厚みt は0.1〜2mmの範囲が好ましい。
なお符号12は、陸部6 のほぼ中央に縦溝42と平行に比較的細く、且つ浅く設けた補助溝である。
【0016】
図3は本発明における第2実施例を示すトレッドの平面図、図4は図3におけるB−B 断面図である。
この実施例の特徴は、トレッド1 における陸部6 の夫々に、図1に示す例対比サイプ7 を1本多く用いて細分し、また微細体としてSPB 樹脂の球状体82を上層3 に添加配合した点にある。
【0017】
本発明においてトレッドの下層2 はショアA 硬度につき30〜55°の範囲であり、また上層の硬度より25〜45°低いことが好ましい。
【0018】
【効果】
このようにして成る本発明のタイヤの効果を確かめるため、 185/70R13 サイズのラジアル構造に、図1に示す第1実施例のタイヤ6種類、図3に示す第2実施例のタイヤ1種類と、トレッドが単一ゴム層よりなる5種類の比較例のタイヤを交えて氷上制動性能を実車にてテストを行い評価した。
テスト条件は、13×5Jリムに組み、1.9Kgf/Cm2 の内圧を充填し、特設の氷結路上において20Km/Hの定速度で直進し、ブレ−キをかけた地点から停止した地点までの距離を測定して、比較例 1−1(表1)を基準にしてその数値の逆数をもって評価値とした。
【0019】
トレッドゴムの詳細とテスト結果は表1に示す。
【表1】
【0020】
このように、タイヤのトレッドが下層と上層の複合ゴム層より成ると共に、ブロック状陸部に複数のサイプを備え、上記上層を微細体を含む硬質薄肉ゴム層で形成することによって、優れた走行性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すトレッド平面図。
【図2】図1におけるA−A 断面図。
【図3】本発明の第2実施例を示すトレッド平面図。
【図4】図3におけるB−B 断面図。
【符号の説明】
1 ドレッド
2 下層ゴム
3 上層ゴム
4 縦溝
5 横溝
6 陸部
7 サイプ
8 微細体
Claims (2)
- 一対のサイドウォ−ルと両サイドウォ−ル間に跨がって延びる円筒状トレッドがトロイド状に連なり、上記トレッドが径方向内側を占める下層と、その外側に重なる上層の複合ゴム層より成ると共に、互いに交わる溝によって区分された多数のブロック状陸部を有し、これらブロック状陸部に複数のサイプを備えたタイヤにおいて、
上記上層は、上記下層よりも硬質で、微細体を含むショア A 硬度が55〜95°の硬質薄肉ゴム層より形成され、上記ブロック状陸部の表面及び上記サイプの壁面を連続して覆うように設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記微細体は ASTM ショア D 硬度が少なくとも40°である請求項1記載の空気入りタイヤ。
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