JP3576256B2 - シートのパワー式リクライニング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、モータの出力軸の回転を減速して伝達し、減速した回転力のもとでシートバックサイドのアームプレートをシートクッションサイドのベースプレートに対して回動させるシートのパワー式リクライニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度(リクライニング角度)を任意に調整、設定可能とするリクライニング装置が、自動車等のシートに広く装着されている。
【0003】
この種のリクライニング装置として、たとえば、遊星歯車機構等を利用した減速装置からなる構成が知られている。このような構成においては、たとえば、駆動源として駆動軸等の入力サイドに連結された操作ハンドルの回転力が、遊星歯車機構等での減速を経てシートバックサイドのアームプレートに伝達され、この減速された回転力により、アームプレートがシートクッションサイドのベースプレートに対して対応する方向に回動される。
【0004】
このような減速装置からなるリクライニング装置においては、遊星歯車機構等を構成する各種歯車の歯部の噛合位置等によって、ベースプレートに対するアームプレートの回動位置、つまりはシートクッションに対するシートバックのリクライニング角度が調整、設定されるため、無段階での微調整が容易に行える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年における、シートの姿勢制御装置のパワー化の傾向に従い、リクライニング装置のパワー化も当然行われている。モータの装着されたパワー式のリクライニング装置においては、通常、上記のような減速装置からなる構成が利用され、モータを駆動源として入力サイドに連結し、モータを駆動制御することによって、シートバックのリクライニング角度を任意に調整、設定可能としている。
【0006】
ここで、上記のような、減速装置からなるリクライニング装置は、通常、操作ハンドルによる駆動に応じた減速比(30〜50程度)に構成されているため、操作ハンドルによる手動タイプを単純に利用した場合においては、モータの回転力に対する減速比がかなり小さく、ベースプレートに対するアームプレートの角度の調整、設定に適した速度、つまりは回動量が得られない。
【0007】
そこで、公知の構成においては、種々のギヤの組み合わせ等からなる別体の減速手段をモータとリクライニング装置の入力端との間に介在させ、別体の減速手段とリクライニング装置自体とによる2段階の減速によって、リクライニング装置の出力に適した速度(回動量)を得ている。
【0008】
しかし、このような構成では、別体の減速手段のためのスペースをリクライニング装置の外部に確保しなければならないため、リクライニング装置の全体的な配置スペースの大型化が避けられない。そして、別体の減速手段を設けるため、部品点数の増加、および、これに起因する構成の複雑化等により、リクライニング装置の全体的なコストが上昇しやすい。
【0009】
更に、別体の減速手段は、多数の歯車(ギヤ)等の組み合わせを有するため、減速手段自体が重量化しやすい。つまり、別体の減速手段を設けることで、リクライニング装置の全体的な重量の増加が避けられない。
【0010】
この発明は、大型化、重量化およびコストの上昇を招くことなく、リクライニング装置自体で大きな減速比を確保可能としたシートのパワー式リクライニング装置の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明によれば、シートクッションサイドに固定されるベースプレートに、所定数の歯数の内歯車が設けられるとともに、このベースプレートの内歯車と同径で当該内歯車の歯数より少ない歯数の内歯車が、シートバックサイドに固定されるアームプレートに設けられる。
【0012】
また、駆動軸が、外歯車状の太陽歯車を有して形成されるとともに、駆動軸の太陽歯車の回りに配置されて太陽歯車、ベースプレートの内歯車の双方に噛合する外歯車状の遊星歯車が、偏心部を一体的に有するカムプレートの突出ピンに回転自在に支持されている。
【0013】
そして、遊星歯車の歯数の2倍の数と駆動軸の太陽歯車の歯数との合計に等しい数に、ベースプレートの内歯車の歯数が設定されるとともに、アームプレートの内歯車の歯数より更に少ない歯数の外歯車状の駆動輪が、ベースプレートの内歯車、アームプレートの内歯車の双方に部分的に噛合する偏心歯車として、カムプレートの偏心部に回転自在に支持されている。
【0014】
【作用】
この発明によれば、リクライニング装置自体において大きな減速比が確保できるため、駆動軸の回転力が、大きく減速された後に、アームプレートに伝達される。従って、モータによる駆動軸の直接的な回転が可能となり、別体の減速手段を削除しても、シートバックのリクライニング角度の調整、設定に適した回動量が、アームプレートにおいて容易に確保できる。
【0015】
【実施例】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施例について詳細に説明する。
【0016】
図1、図2に示すように、この発明に係るシートのパワー式リクライニング装置110においては、シートクッションサイドに固定されるベースプレート112と、シートバックサイドに固定されるアームプレート114とが、駆動軸116を介して、同心軸上を回動自在に連結されている。
【0017】
ベースプレート112、アームプレート114は、たとえば、対向面サイドに同径の円形凹部112a,114aを有してそれぞれ形成され、円形凹部の周面を利用して、内歯車118,124がベースプレート、アームプレートにそれぞれ設けられている。
【0018】
この構成においては、アームプレートの内歯車124の歯数が、ベースプレートの内歯車118の歯数より、たとえば、1つだけ少なく形成される。
【0019】
なお、ベースプレート、アームプレートの円形凹部112a,114aの底面には、駆動軸116の遊挿可能な挿通孔がそれぞれ穿設され、各挿通孔への主軸部の挿通によって、ベースプレート112、アームプレート114が、駆動軸の同心軸上にそれぞれ支持されている。
【0020】
そして、図1、図2に示すように、この構成においては、駆動軸116が、外歯車状の太陽歯車116aを有して形成され、外歯車状の遊星歯車50(50-1〜50-3)が、駆動軸の回りで、駆動軸の太陽歯車、ベースブラケットの内歯車118の双方に噛合して配置されている。遊星歯車50(50-1〜50-3)は、たとえば、等間隔離反した3ヶ所に配置され、偏心部52aを一体的に有するカムプレート52の突出ピン52bによって、回転自在にそれぞれ支持されている。
【0021】
カムプレート52は、駆動軸116の軸線(同心軸)01を中心として回転自在に、駆動軸の回りに配置され、図1に示すように、偏心部52aは、たとえば、駆動軸の軸線から距離eだけずれた偏心軸02を中心とする偏心円として、カムプレートに一体的に設けられている。
【0022】
ここで、ベースプレートの内歯車118の歯数は、遊星歯車50(50-1〜50-3)の歯数の2倍の数と駆動軸の太陽歯車116aの歯数との合計に等しい数とされるため、ベースプレートの内歯車の歯数をZ1、駆動軸の太陽歯車の歯数をZ2、遊星歯車の歯数をZ3とした場合、下記の数式1の関係が成り立つように、各歯車の歯数が、それぞれ設定される。
【0023】
【数1】
・・・・+Z2=Z1
【0024】
つまり、駆動軸の太陽歯車116aの歯数Z2を10、遊星歯車50(50-1〜50-3)の歯数Z3の歯数を20とした場合においては、数式1により、
・・・・+10=50
となるため、ベースプレートの内歯車118の歯数Z1は50に設定される。
【0025】
なお、アームプレートの内歯車124は、ベースプレートの内歯車118の歯数より、たとえば1つだけ少ない歯数に形成されるため、ベースプレートの内歯車の歯数を50とした場合においては、アームプレートの歯数は49とされる。
【0026】
そして、図1、図2に示すように、アームプレートの内歯車124の歯数より更に少ない歯数の外歯車状の駆動輪54が、ベースプレートの内歯車118、アームプレートの内歯車の双方に部分的に噛合する偏心歯車として、カムプレートの偏心部52aに回転自在に支持されている。
【0027】
駆動輪54の歯数は、たとえば、アームプレートの内歯車124の歯数より更に1つだけ少ない歯数、つまり、アームプレートの内歯車の歯数を49とした場合においては48に形成される。
【0028】
そして、このようなシートのパワー式リクライニング装置110においては、図1、図2に示すように、各種構成部材が、駆動軸116の回りにそれぞれ配置され、たとえば、駆動軸の大径のヘッド116bと、端末に嵌着した止めリング56とでの挟持によって、離脱不能に組み付けられている。
【0029】
なお、このパワー式リクライニング装置110においては、支持ピン44がベースプレート112、アームプレート114にそれぞれ固定され、各支持ピンでの支持によって、ベースプレート、アームプレートの相互間のブレ等が確実に防止されている。
【0030】
このパワー式リクライニング装置110においては、モータ(図示しない)が、駆動源として駆動軸116に連動可能に連結され、このモータの駆動のもとで、駆動軸が直接的に駆動される。
【0031】
なお、駆動軸116へのモータの連結の際においては、駆動軸のヘッドサイドに穿設された四角形等の非円形の軸受116cが利用され、また、そのモータとしては、たとえばフラットモータが利用できる。
【0032】
このようなパワー式リクライニング装置110において、たとえば、所定のスイッチ操作等のもとでモータが駆動すると、駆動軸116が、モータの駆動のもとで対応方向に回転する。すると、まず、駆動軸116と共に太陽歯車116aが一体的に回転して、遊星歯車50(50-1〜50-3)が対応方向にそれぞれ回転され、ベースプレートの内歯車118との噛合のもとでの遊星歯車の自転により、カムプレート52が、駆動軸の同心軸01の回りをベースプレート112に対して回転する。
【0033】
そして、次に、カムプレートの偏心部52aが、駆動軸116、つまりは同心軸01を中心として偏心運動し、これによって、駆動輪54が、逆方向に自転しながら偏心運動する。
【0034】
ここで、駆動輪54は、ベースプレートの内歯車118、アームプレートの内歯車124の双方に部分的に噛合されているため、アームプレートの内歯車に対しても、偏心運動のもとで自転する。しかし、アームプレートの内歯車124の歯数は、ベースプレートの内歯車118の歯数より少ないため、ベースプレートの内歯車に対する駆動輪54の偏心運動での一周毎に、アームプレート114の角度が、その歯数の差の分のピッチに相当する量だけずれ、これによって、アームプレートが、ベースプレートの内歯車、つまりはベースプレート112に対して、対応方向に回動される。
【0035】
ここで、ベースプレートの内歯車118の歯数をZ1、駆動軸の太陽歯車116aの歯数をZ2、駆動輪54の歯数をZ4、アームプレートの内歯車124の歯数をZ5とした場合、このリクライニング装置110での減速比は、下記の数式2によって算出されることがわかっている。
【0036】
【数2】
減速比=・・・・・・・・/(Z2+・・・・・・・・/(Z1−Z5)]
【0037】
そこで、上述したように、たとえば、ベースプレートの内歯車118の歯数Z1を50、駆動軸の太陽歯車116aの歯数Z2を10、駆動軸54の歯数Z4を48、アームプレートの内歯車124の歯数Z5を49とした場合において、これらの数値を数式2に代入すると、
・・・・・・・・/(10+・・・・・・・・/(50−49)]=400
となり、減速比が400として算出される。
【0038】
このシートのパワー式リクライニング装置110で得られる400程度の減速比を、従来のリクライニング装置の30〜50程度の減速比と比較すればわかるように、この発明によれば、別体の減速手段を設けることなく、確実に大きな減速比が得られる。つまり、別体の減速手段を省略し、モータの回転力を駆動軸116に直接的に伝達できため、外部に減速手段の配置スペースを確保する必要がなく、パワー式リクライニング装置110の全体的な省スペース化が容易にはかられる。
【0039】
そして、別体の減速手段の削除により、全体的な部品点数が低減するため、これに伴う、構成の簡素化によって、パワー式リクライニング装置110の全体的なコストが、確実に低減化される。
【0040】
更に、多数の歯車(ギヤ)等の組み合わせを有する減速手段が削除されるため、パワー式リクライニング装置110の全体的な重量が、確実に低減化される。
【0041】
なお、実施例においては、モータとしてフラットモータを例示しているが、モータの回転力を駆動軸116に直接的に伝達可能とする構成であれば足りるため、これに限定されず、たとえば、小型ギヤードモータや別体の小型ギヤボックスを有するモータ等を、駆動軸の入力サイドの端末116cに連結してもよい。
【0042】
ここで、この実施例においては、遊星歯車50(50-1〜50-3)を、駆動軸の太陽歯車116aの回りの等間隔離反した3ヶ所に設けているが、駆動軸116の回転力を減速しながらカムプレート52に伝達すれば足りるため、遊星歯車の数、配置はこの限りでない。しかし、実施例のように、遊星歯車50(50-1〜50-3)を、駆動軸の太陽歯車116aの回りの等間隔離反した3ヶ所に設ければ、確実かつ円滑な回転力の伝達が十分に確保できる。
【0043】
また、各種歯車の歯数を対象となる歯車の歯数より1つだけ少ない数として具体化しているが、対象となる歯車の歯数より少ない歯数であれば足りるため、1つに限定されず、たとえば、対象となる歯車の歯数より2つ以上少ない歯数に、対応する歯車の歯数を形成してもよい。
【0044】
しかし、対応する歯車の歯数を対象となる歯車の歯数より1つだけ少ない歯数に形成すれば、双方の歯車間において、確実な減速が得られるため、大きな減速比の確保が十分かつ容易に可能となる。
【0045】
なお、実施例において例示した各種歯車の歯数は、説明上での数値にすぎないため、各種歯車の歯数を、上記数値に限定するものではない。
【0046】
また、実施例においては、自動車等のシートのパワー式リクライニング装置として具体化されているが、これに限定されず、たとえば、電車、飛行機、船舶等のシートや、あんま用、理髪用等の各種シートのリクライニング装置に、この発明を応用してもよい。
【0047】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0048】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るシートのパワー式リクライニング装置によれば、リクライニング装置自体で大きな減速比が確実に得られるため、別体の減速手段が省略できる。従って、外部に減速手段の配置スペースを確保する必要がなく、パワー式リクライニング装置の全体的な省スペース化が容易にはかられる。
【0049】
そして、別体の減速手段の削除により、全体的な部品点数が低減するため、これに伴う、構成の簡素化によって、リクライニング装置の全体的なコストが確実に低減化されるとともに、リクライニング装置の全体的な重量も、確実に低減化される。
【0050】
また、アームプレートの内歯車の歯数をベースプレートの内歯車の歯数より1つだけ少なくするとともに、駆動輪の歯数をアームプレートの内歯車の歯数より更に1つだけ少なくすれば、これらに相当する各部分において、確実な減速が得られる。従って、この構成においても、大きな減速比が十分に確保できるため、ベースプレートに対するアームプレートの調整、設定が容易に可能となる。
【0051】
さらに、遊星歯車を、駆動軸の太陽歯車の回りの等間隔離反した3ヶ所に設ければ、確実かつ円滑な回転力の伝達が十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るシートのパワー式リクライニング装置の概略縦断面図である。
【図2】シートのパワー式リクライニング装置の概略分解斜視図である。
【符号の説明】
110 シートのパワー式リクライニング装置
112 ベースプレート
114 アームプレート
116 駆動軸
116a 駆動軸の太陽歯車
118 ベースプレートの内歯車
124 アームプレートの内歯車
50(50-1〜50-3) 遊星歯車
52 カムプレート
52a カムプレートの偏心部
54 駆動輪

Claims (3)

  1. シートクッションサイドに固定されるベースプレートと;シートバックサイドに固定されるアームプレートと;ベースプレート、アームプレートを同心軸上で回動自在に支持して、モータの駆動のもとで直接的に回転される駆動軸と;を具備し、
    ベースプレートに所定数の歯数の内歯車を設けるとともに、ベースプレートの内歯車と同径で、当該内歯車の歯数より少ない歯数の内歯車をアームプレートに設け、
    駆動軸が、外歯車状の太陽歯車を有して形成されるとともに、
    駆動軸の太陽歯車の回りに配置されて太陽歯車、ベースプレートの内歯車の双方に噛合する外歯車状の遊星歯車が、偏心部を一体的に有するカムプレートの突出ピンに回転自在に支持され、
    遊星歯車の歯数の2倍の数と駆動軸の太陽歯車の歯数との合計に等しい数に、ベースプレートの内歯車の歯数が設定されるとともに、
    アームプレートの内歯車の歯数より更に少ない歯数の外歯車状の駆動輪が、ベースプレートの内歯車、アームプレートの内歯車の双方に部分的に噛合する偏心歯車として、カムプレートの偏心部に回転自在に支持されたことを特徴とするシートのパワー式リクライニング装置。
  2. アームプレートの内歯車が、ベースプレートの内歯車の歯数より1つだけ少ない歯数に形成されるとともに、外歯車状の駆動輪が、アームプレートの内歯車の歯数より更に1つだけ少ない歯数に形成された請求項1記載のシートのパワー式リクライニング装置。
  3. 遊星歯車が、等間隔離反した3箇所に配置された請求項1または2記載のシートのパワー式リクライニング装置。
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