JP3574571B2 - 光ピックアップ用光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体の記録面上に光スポットを照射して情報の記録、再生又は消去を行う光ピックアップヘッドに備えられる一体型の光ピックアップ用光学素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光ピックアップヘッドの一例について図12に基づいて説明する。図12に示すように、従来の光ピックアップヘッドは、レーザ光源としての半導体レーザ101と、コリメータレンズ102と、偏光ビームスプリッタ103と、1/4波長板104と、対物レンズ105と、集光レンズ106と、フォトダイオード(以下、PDという。)107とを主体に構成されている。このような構成において、半導体レーザ101から出射された直線偏光のレーザ光は、コリメータレンズ102によって略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103と1/4波長板104とで構成される光アイソレータにおいて直線偏光から円偏光に変換される。円偏光に変換された光は、対物レンズ105により集光され、光情報記録媒体である光ディスクdの記録面上に光スポットの状態で照射される。この光ディスクdの記録面からの反射光は逆の経路を辿り、対物レンズ105を通過し、1/4波長板104により偏光方向を90゜ 回転した直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ103により集光レンズ106方向に反射される。偏光ビームスプリッタ103により反射された光は、集光レンズ106により集光され、PD107に入射される。PD107では、光ディスクdの記録面上にマークを有するか否かにより生じる反射率の違いに応じて変化する反射光の出力量を検出する。これにより、サーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)の検出や、光ディスクdに対する記録信号の記録、再生又は消去が行われる。
【0003】
ところで、近年においては、光情報記録媒体である光ディスク等の高密度化が進んでいる。このような高密度化された光ディスクについて記録再生等するためには、光ディスクの記録面上でのスポットサイズw(w∝λ/sinθ´)を小さくする必要がある。ここで、θ´は対物レンズの出射角、λはレーザ光の波長である。また、対物レンズの開口数(NA)と対物レンズの出射角θ´とは、
NA=sinθ´
の関係にある。
【0004】
ところが、図12に例示したような光ピックアップヘッドによって光ディスクdを照射した場合における光ディスクdの記録面上でのスポットサイズwは、光の回折限界によりレーザ光の波長程度の大きさでしか得られない。スポットサイズwをさらに小さくするためには、レーザ光の波長を短くするか、NAを大きくするために対物レンズ105の径を大きくすることが考えられる。しかしながら、より波長の短いレーザ光を発生する半導体レーザの開発は容易ではなく、また、径の大きな対物レンズ105を採用してしまうと装置が大型化してしまうとともにフォーカス制御等が困難となる。
【0005】
そこで、図13に示すように、対物レンズ105と光ディスクdとの間にソリッドイマージョンレンズ(Solid Immersion Lens)108a又は108bを設け、これらのソリッドイマージョンレンズ108a又は108bを介して光ディスクdの記録面を照射することにより、スポットサイズwを小さくするようにした光ピックアップヘッドが考えられている(例えば、特開平5−189796号公報参照)。図13(a)に示す構成によれば、入射面側が球面状であって出射面側が平面とされている半球形状のソリッドイマージョンレンズ108aに対物レンズ105で集光された光が入射すると、その入射光は出射面側の平面の中心に収束する。また、このソリッドイマージョンレンズ108aと光ディスクdの記録面との間隔がレーザ光の波長以下の間隔(例えば、100nm以下)である場合には、ソリッドイマージョンレンズ108aの出射面側の平面に形成されるスポットサイズwと、光ディスクdの記録面上に形成されるスポットサイズとは略同一になる。これにより、ソリッドイマージョンレンズ108aの屈折率をnとすると、そのスポットサイズwは、
w∝λ/nsinθ´
となるので、NAをn倍にした場合と同等の効果が得られ、より小さなスポットサイズwの光スポットを得ることができる。
【0006】
また、図13(b)に示す構成によれば、ソリッドイマージョンレンズ108bの形状を図13(a)のソリッドイマージョンレンズ108aに比べて超半球形状としたことにより、スネルの法則が適用されるので、その光スポットのスポットサイズwは、
w∝λ/n2sinθ´
となる。すなわち、ソリッドイマージョンレンズ108bを適用した場合のほうがソリッドイマージョンレンズ108aを適用した場合よりも小さなスポットサイズwの光スポットを得ることができる。
【0007】
また、このようなソリッドイマージョンレンズ108a又は108b(以下、ソリッドイマージョンレンズ108という。)を光ピックアップヘッドに適用する場合の一例としては、図14に示すように、ソリッドイマージョンレンズ108を光ディスクdから所定の間隔をおいて設けられたスライダ109に搭載した浮上ヘッドが、米国特許 第5,497,359号明細書等に示されている。このスライダ109は、ソリッドイマージョンレンズ108の形成材料と同一の材料で形成されることが多い。このような構成の光ピックアップヘッドは、対物レンズ105で集光された光をソリッドイマージョンレンズ108の球面で若干屈折させることにより、スライダ109の底部に光を収束するようにしている。このような光ピックアップヘッドにおいて、例えば、ソリッドイマージョンレンズ108の屈折率nを1.83、NAを0.5、レーザ光の波長を830nm、スライダ109と光ディスクdとの間隔を100nmにそれぞれ設定した場合に得られる光スポットのスポットサイズwは360nmであり、レーザ光の波長以下となる。
【0008】
一方、前述したような対物レンズ105とソリッドイマージョンレンズ108とを組み合わせてNAを大きくした場合と同等の効果を得て、より小さなスポットサイズwを得るようにした場合、対物レンズ105とソリッドイマージョンレンズ108との位置合わせが非常に困難となる。仮に、両者の位置関係が崩れてしまった場合には、狙ったスポットサイズwが得られなくなる。そこで、図15に示すように、対物レンズ105とソリッドイマージョンレンズ108との位置合わせを容易にし、それぞれの光軸調整を不要にするために、対物レンズ105とソリッドイマージョンレンズ108とをガラス等で形成された基板110に一体に成形した一体型光学素子111を用いた光ピックアップヘッドが考えられている。
【0009】
この一体型光学素子111を用いた光ピックアップヘッドによるスポットサイズwは、ソリッドイマージョンレンズ108を半球形状とし、そのソリッドイマージョンレンズ108の屈折率をn、基板110の屈折率をmとすると、
w∝λ/(n/m)sinθ´
となるので、NAを(n/m)倍にした場合と同等の効果が得られ、より小さなスポットサイズwの光スポットを得ることができる。
【0010】
また、ソリッドイマージョンレンズ108を超半球形状とし、そのソリッドイマージョンレンズ108の屈折率をn、基板110の屈折率をmとすると、その光スポットのスポットサイズwは、
w∝λ/(n2/m)sinθ´
となる。すなわち、ソリッドイマージョンレンズ108の屈折率n(n>1)を基板110の屈折率m(m>1)より大きくすることにより、NAを(n2/m)倍にした場合と同等の効果が得られ、より小さなスポットサイズwの光スポットを得ることができる。
【0011】
なお、一体型光学素子111において、超半球形状のソリッドイマージョンレンズ108の高さhは、半径をrとすると、
h=r(1+m/n)
として表すことができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したような一体型光学素子を製造するにあたっては、種々の問題がある。例えば、一体型光学素子は基板の両面にレンズ形状の凹部を形成し、各凹部に基板の屈折率よりも高屈折率を有する同一の高屈折透明材料をそれぞれ充填することにより製造されるが、一般にソリッドイマージョンレンズを形成するための凹部に比べて対物レンズを形成するための凹部の方が深くなる傾向にある。このような基板に対してスピンコーティング法によって高屈折透明材料を充填する場合、深く形成されている対物レンズ用の凹部側において、遠心力により高屈折透明材料がレンズ形状の曲面に寄せられてしまうためにその凹部の中央部に窪みを生じてしまい高屈折透明材料を完全に充填することができない場合がある。
【0013】
また、たとえ高屈折透明材料をレンズ形状の凹部に確実に充填することができたとしても、充填する高屈折透明材料は固体又は固化する液体に限定されてしまうことにより、材料選択範囲の幅が狭くなるので、所望の屈折率を有する一体型光学素子を得ることが困難な場合もある。
【0014】
本発明の目的は、製造が容易であって、光学特性の高い一体型の光ピックアップ用光学素子の製造方法を得ることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、半導体レーザから出射されたレーザ光を集束する平凸形状の対物レンズと、この対物レンズにより集束されたレーザ光を光情報記録媒体上に照射させる半球形状のソリッドイマージョンレンズとを光軸を一致させて同一基板に一体に成形する光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記基板に前記対物レンズと前記ソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部を形成する凹部形成過程と、この凹部形成過程により形成された少なくとも一方の凹部に対して前記基板の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料を充填する透明材料充填過程と、前記高屈折透明材料の充填後、その高屈折透明材料と略同一の屈折率を有する凹部閉塞部材により前記凹部を閉塞する凹部閉塞過程と、を備える。
【0016】
したがって、凹部形成過程により基板に形成された対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部の少なくとも一方は、透明材料充填過程により基板の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料を充填された後、凹部閉塞過程によりその高屈折透明材料と略同一の屈折率を有する凹部閉塞部材により閉塞される。これにより、少なくとも一方の凹部は高屈折透明材料の充填後に凹部閉塞部材により閉塞されるので、凹部に充填される高屈折透明材料を固体に限定する必要はなくなり、高屈折透明材料の選択幅が広くなる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記凹部形成過程で前記凹部から延出する溝を前記基板に更に形成する。
【0018】
したがって、基板に凹部から延出する溝が形成されることにより、たとえ充填された高屈折透明材料が凹部から溢れる場合であっても、余分な高屈折透明材料がその溝の容積の範囲内で取り除かれる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記高屈折透明材料を前記凹部閉塞部材と前記基板とを接着する接着剤として用いる。
【0020】
したがって、凹部に充填される高屈折透明材料により凹部閉塞部材と基板とが接着されることにより、対物レンズまたはソリッドイマージョンレンズの製造が容易になる。
【0021】
請求項4記載の発明は、半導体レーザから出射されたレーザ光を集束する平凸形状の対物レンズと、この対物レンズにより集束されたレーザ光を光情報記録媒体上に照射させる半球形状のソリッドイマージョンレンズとを光軸を一致させて同一基板に一体に成形する光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記基板に前記対物レンズと前記ソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部とこれら凹部から延出する溝とを形成する凹部形成過程と、少なくとも一方の凹部を前記基板の屈折率よりも高屈折率を有する凹部閉塞部材により閉塞する凹部閉塞過程と、前記凹部の閉塞後、前記溝からその凹部に前記凹部閉塞部材と略同一の屈折率を有する高屈折透明材料を充填する透明材料充填過程と、
を備える。
【0022】
したがって、凹部形成過程により基板に形成された対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部の少なくとも一方は、凹部閉塞過程により基板の屈折率よりも高屈折率を有する凹部閉塞部材に閉塞された後、透明材料充填過程により凹部閉塞部材と略同一の屈折率を有する高屈折透明材料をその凹部から延出する溝から充填される。これにより、少なくとも一方の凹部には凹部閉塞部材による閉塞後に高屈折透明材料が充填されるので、凹部に充填される高屈折透明材料を液体にすることが可能になり、高屈折透明材料の選択幅が広くなる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、透明材料充填過程で各凹部毎に異なる前記高屈折透明材料を充填する。
【0024】
したがって、対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれのレンズの目的とする機能を発揮する高屈折透明材料の選択が可能になる。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記凹部閉塞過程で前記ソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材をそのソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さを有する薄板にする。
【0026】
したがって、ソリッドイマージョンレンズ側の凹部がソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さを有する薄板により閉塞されることにより、基板に形成された半球形状の凹部が容易に超半球形状になるので、より微小なスポットサイズの光スポットが得られる。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記凹部閉塞過程で前記ソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を前記高屈折透明材料をそのソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部にスピンコーティングした後にそのソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さに研磨されて形成される薄板にする。
【0028】
したがって、ソリッドイマージョンレンズ側の凹部が、その凹部に高屈折透明材料をスピンコーティングした後にソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さに研磨されて形成された薄板により閉塞されることにより、基板に形成された半球形状の凹部が容易に超半球形状になるので、より微小なスポットサイズの光スポットが得られる。
【0029】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記凹部閉塞過程で前記対物レンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を平板にする。
【0030】
したがって、対物レンズ側の凹部を閉塞する凹部閉塞部材が平板であることにより、光ピックアップヘッドの小型化を図ることが可能になる。
【0031】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記凹部閉塞過程で前記対物レンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を光路変更手段にする。
【0032】
したがって、対物レンズ側の凹部を閉塞する凹部閉塞部材が光路変更手段であることにより、半導体レーザの配置位置の多様化が可能になる。
【0033】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、前記対物レンズ側の前記凹部に対する前記光路変更手段の閉塞面に略一致する開口部を有し、前記光路変更手段をその凹部上に案内するガイドを前記基板上に配設する。
【0034】
したがって、光路変更手段を対物レンズ側の凹部上に案内するガイドが基板上に配設されることにより、閉塞位置精度の向上が図られる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。本実施の形態の製造方法による光ピックアップ用光学素子は、相変化記録方式の光情報記録媒体である光ディスクに対して、情報の記録、再生等を行う光ピックアップヘッドに適用されている。
【0036】
ここで、図1は光ピックアップヘッド1を概略的に示す構成図である。図1に示すように、本実施の形態の光ピックアップヘッド1は、レーザ光源としてレーザ光を出射する半導体レーザ2と、コリメータレンズ3と、偏光ビームスプリッタ4と、1/4波長板5と、一体型光ピックアップ用光学素子(以下、光学素子という。)6と、集光レンズ7と、受光素子であるフォトダイオード(以下、PDという。)8とを主体に構成されている。ここで、光学素子6は、半導体レーザ2からのレーザ光の入射面側が平面で他方が曲面である平凸レンズ形状の対物レンズ9と、半導体レーザ2からのレーザ光の入射面側が球面で他方が平面である半球形状のソリッドイマージョンレンズ10とを基板11の上下面にそれぞれ配置して構成されている。この場合、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とは、それぞれの光軸が一致するように配置されている。なお、光学素子6と光ディスクDの記録面との間隔は、半導体レーザ2からのレーザ光の波長以下の間隔に設定されている。
【0037】
次に、光学素子6の製造方法について図2を参照して説明する。まず、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とが配置される基板11の製造方法について説明する。
【0038】
基板11の製造方法としては、例えば透明な光学ガラスであるBK−7(波長768.2nmでの屈折率m=1.5115)等のガラス基板の一方の表面に感光性樹脂であるポジ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OFPR−800)をスピンコート法により塗布した後、そのフォトレジストをベークしてガラス基板上にフォトレジスト層を形成する。次に、露光装置によってフォトレジスト層に所定のパターンを露光する。ここでは、対物レンズ9の平面部と略同一な形状が未露光部分になるようなパターンとされる。その後、現像を行なうことにより未露光部分のフォトレジスト層が溶解されるので、ガラス基板と露光されてガラス基板上に残ったフォトレジスト層とにより凹形状が形成され、パターニングがなされる。この状態で、ガラス基板上のフォトレジスト層をエッチングマスクとしてガラス基板をCF4やCHF3等のガスを使用した反応性イオンエッチング法(RIE)や電子サイクロトロン共鳴エッチング法(ECR)等のドライエッチングによりエッチング(異方性エッチング)することで対物レンズ9の形状の凹部11aを形成した後、アッシングにより残ったフォトレジスト層を除去する。また、ガラス基板の他方の表面にも同様の処理を施し、ソリッドイマージョンレンズ10の平面部と略同一な形状が未露光部分になるようなパターンをフォトレジスト層に露光した後、ドライエッチングによりガラス基板をエッチングしてソリッドイマージョンレンズ10の形状である半球形状の凹部11bを形成する。なお、CF4等のガスには、エッチング速度や選択性を調整する目的で、N2、O2、Ar等のガスを混入しても良い。このようにして、図2(a)に示すような基板11が形成される。なお、本実施の形態においては、ポジ型フォトレジストを用いたが、これに限らず、ネガ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OMR−85 )や感光性ドライフィルムを用いても良い。以上により、凹部形成過程が実現される。
【0039】
次いで、基板11の凹部11bにソリッドイマージョンレンズ10を形成する。詳細には、凹部11b側に基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料であるSFS−1(波長768.2nmでの屈折率n=1.8927)やLaF−2(波長768.2nmでの屈折率n=1.7335)等のガラス材料をスパッタ法により凹部11bにスパッタ膜を形成させながら埋め込んだ後、エッチバックされて平坦化される。以上により、透明材料充填過程が実現される。その後、高屈折透明材料の屈折率と略同一の屈折率を有する薄板12が、紫外線硬化接着剤等により接着される。以上により、凹部閉塞過程が実現される。これにより、図2(b)に示すようなソリッドイマージョンレンズ10が形成される。
【0040】
ここで、薄板12の板厚kは、略同一の屈折率を有するソリッドイマージョンレンズ10に重ねられることにより、ソリッドイマージョンレンズ10を超半球形状にする厚さになっている。つまり、ソリッドイマージョンレンズ10の半径をrとすると、
超半球形状の高さhを満たす条件は、
h=r(1+m/n)
であることから、薄板12の板厚kは、
k=r(m/n)
を満たす厚さに設定されている。これにより、基板11に形成された半球形状の凹部11bを容易に超半球形状にするので、光スポットのスポットサイズの微小な光学素子6が得られる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、ソリッドイマージョンレンズ10を形成する材料としてSFS−1やLaF−2等のガラス材料を用いたが、半導体レーザ2からのレーザ光の波長によっては、Si(波長1.33μmでの屈折率n=3.5011)やZnSe(波長656.3nmでの屈折率n=2.578)を材料として用いることができ、また、薄板12を接着することを考慮して接着作用を有するエポキシ樹脂等の高分子樹脂を材料として用いて、ソリッドイマージョンレンズ10の製造を容易にすることもできる。
【0042】
一方、基板11の凹部11aへの対物レンズ9の形成は、凹部11aに熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の接着剤を埋め込むことにより行われる。なお、この接着剤は、基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である。詳細には、基板11の凹部11aの平凸レンズ形状に接着剤が十分に充填される。以上により、透明材料充填過程が実現される。その後、図2(c)に示すように、この基板11の凹部11a上に、その高屈折透明材料の屈折率と略同一の屈折率を有する凹部閉塞部材である平板13が、対物レンズ9を形成する接着剤により接着される。以上により、凹部閉塞過程が実現される。これにより、図2(c)に示すような対物レンズ9が形成される。なお、平板13の板厚は、任意の厚さとされる。このように凹部閉塞部材として平板13を用いることにより、光ピックアップヘッド1の小型化を図ることが可能になる。また、上述したように、凹部11aに充填される高屈折透明材料である接着剤により平板13と基板11とを接着することにより、対物レンズ9の製造を容易にすることができる。以上により、光学素子6が製造される。
【0043】
このような構成において、例えば光ディスクDの再生時には、半導体レーザ2から出射された直線偏光のレーザ光は、コリメータレンズ3によって略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板5とで構成される光アイソレータにおいて直線偏光から円偏光に変換される。円偏光に変換された光は、光学素子6の平板13を透過して対物レンズ9により集光されてから基板11を介してソリッドイマージョンレンズ10に入射する。その入射光は、低屈折率の基板11から高屈折率を有するソリッドイマージョンレンズ10へと入射することにより大きく屈折し、薄板12の底面に微小な光スポットとして収束する。また、この薄板12の底面と光ディスクDの記録面との間隔がレーザ光の波長以下の間隔である場合には、薄板12の底面に形成される光スポットのスポットサイズと、光ディスクDの記録面に形成される光スポットのスポットサイズとは略同一になる。これにより、レーザ光が光ディスクDの記録面上に光スポットとして収束され、光ディスクDの記録面上に記録されたマークを照射する。その後、この光ディスクDの記録面からの反射光は逆の経路を辿り、対物レンズ9を通過し、1/4波長板5により偏光方向を90゜ 回転した直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ4により集光レンズ7方向に反射される。偏光ビームスプリッタ4により反射された光は、集光レンズ7により集光され、PD8に入射される。PD8では、光ディスクDの記録面上にマークを有するか否かにより生じる反射光の違いに応じて変化する反射レーザ光の出力量を検出することにより、光ディスクDの再生が可能になる。
【0044】
ここに、基板11に形成された対物レンズ9の形状に略同一な凹部11aが、基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料を充填された後、その高屈折透明材料と略同一の屈折率を有する平板13により閉塞される。これにより、高屈折透明材料が凹部11aに確実に充填されるので、光学素子6の製造が容易になり、また、高屈折透明材料の充填後に凹部11aが平板13により閉塞されることにより、凹部11aに充填する高屈折透明材料を固体に限定する必要はなくなるので、高屈折透明材料の選択幅が広がり、より光学特性の高い光学素子6が得られる。
【0045】
また、各凹部11a,11b毎に異なる高屈折透明材料が充填されることにより、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とのそれぞれのレンズの目的とする機能を発揮する高屈折透明材料の選択が可能になるので、所望の光学素子6が得られる。
【0046】
本発明の第二の実施の形態を図3に基づいて説明する。なお、前述した実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する(後述する第三、第四、及び第五の実施の形態において同様)。本実施の形態の光ピックアップヘッドは、第一の実施の形態の光ピックアップヘッド1と比較して、光学素子6に代えて光学素子6とは製造方法の異なる光学素子14を備える点でのみ変わるものである。
【0047】
本実施の形態の備える特長である光学素子14の製造方法について図3を参照して説明する。まず、図3(a)に示すように、基板11の凹部11bに基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である高分子樹脂Xが、スピンコーティング法によって凹部11bに充填されるとともに基板11の表面に一定の厚さを有する薄膜状にスピンコートされる。その後、スピンコートされた高分子樹脂Xが硬化処理されて凹部11bにソリッドイマージョンレンズ10が形成されるとともに、所望の膜厚kと平面度を得るために研磨処理され、図3(b)に示すように、薄板12が形成される。以上により、透明材料充填過程と凹部閉塞過程とが実現される。
【0048】
ここで、薄板12の板厚kは、ソリッドイマージョンレンズ10と同一の材料によって形成されることにより、ソリッドイマージョンレンズ10を超半球形状にする厚さになっている。つまり、ソリッドイマージョンレンズ10の半径をrとすると、
超半球形状の高さhを満たす条件は、
h=r(1+m/n)
であることから、薄板12の板厚kは、
k=r(m/n)
を満たす厚さになるまで研磨されている。これにより、基板11に形成された半球形状の凹部11bを容易に超半球形状にするので、光スポットのスポットサイズの小さな光学素子14が得られる。
【0049】
なお、基板11の凹部11aへの対物レンズ9の形成、及び平板13の接着については、第一の実施の形態と何ら変わるところがないので、説明を省略する。
【0050】
また、このような構成において、本実施の形態における光ディスクDの再生等の動作については、基本的に、前述した第一の実施の形態の光ピックアップヘッド1での動作と何ら変わるものではないので、説明は省略する。
【0051】
本発明の第三の実施の形態を図4ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態の光ピックアップヘッド15は、第一の実施の形態の光ピックアップヘッド1と比較して光学素子6に代えて光学素子6とは製造方法の異なる光学素子16が備えられている点で異なるものである。
【0052】
ここで、図4は光ピックアップヘッド15を概略的に示す構成図である。図4に示すように、本実施の形態の光ピックアップヘッド15は、レーザ光源としてレーザ光を出射する半導体レーザ2と、コリメータレンズ3と、偏光ビームスプリッタ4と、1/4波長板5と、光学素子16と、集光レンズ7と、受光素子であるPD8とを主体に構成されている。ここで、光学素子16は、半導体レーザ2からのレーザ光の入射面側が平面で他方が曲面である平凸レンズ形状の対物レンズ9と、半導体レーザ2からのレーザ光の入射面側が球面で他方が平面である半球形状のソリッドイマージョンレンズ10とを基板11の上下面にそれぞれ配置して構成されている。この場合、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とは、それぞれの光軸が一致するように配置されている。なお、光学素子16と光ディスクDの記録面との間隔は、半導体レーザ2からのレーザ光の波長以下の間隔に設定されている。さらに、対物レンズ9の上には、第一及び第二の実施の形態の平板13に代えて、光路変更手段として機能するプリズム17が備えられている。このプリズム17の斜面部17aにはArやCr等の反射膜がコーティングされており、その斜面部17aにおいて半導体レーザ2から出射されたレーザ光の行路を変更することにより、プリズム17はレーザ光を対物レンズ9へと導く機能を果たしている。
【0053】
次に、光学素子16の製造方法について図5を参照して説明する。なお、基板11、ソリッドイマージョンレンズ10及び薄板12の製造方法は、第一の実施の形態の光学素子6又は第二の実施の形態の光学素子14において説明した製造方法と何ら変わるところがないので、説明を省略する。
【0054】
一方、基板11の凹部11aへの対物レンズ9の形成は、凹部11aに熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の接着剤Yを埋め込むことにより行われる。なお、この接着剤Yは、基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である。詳細には、図5(a)に示すように、基板11の凹部11aに接着剤Yを十分に充填する。以上により、透明材料充填過程が実現される。その後、図5(b)に示すように、光路変更手段として機能するプリズム17を凹部閉塞部材として基板11の凹部11aに押し付けて接着することにより平凸レンズ形状の対物レンズ9が形成される。なお、プリズム17の底面17bは、対物レンズ9の有効径である平面9aを全て覆う大きさに設定されている。また、プリズム17の接着時にはみ出た余分な接着剤Zは、硬化後に取り除かれる。以上により、凹部閉塞過程が実現される。このように凹部閉塞部材としてプリズム17を用いることにより、光ピックアップヘッド15の半導体レーザ2の配置位置を多様化することが可能になる。また、上述したように、凹部11aに充填される高屈折透明材料である接着剤Yによりプリズム17と基板11とを接着することにより、対物レンズ9の製造を容易にすることができる。以上により、図5(c)に示すような光学素子16が製造される。
【0055】
このような構成において、例えば光ディスクDの再生時には、半導体レーザ2から出射された直線偏光のレーザ光は、コリメータレンズ3によって略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板5とで構成される光アイソレータにおいて直線偏光から円偏光に変換される。円偏光に変換された光は、光学素子16のプリズム17の斜面部17aにおいて反射され、対物レンズ9により集光されてから基板11を介してソリッドイマージョンレンズ10に入射する。その入射光は、低屈折率の基板11から高屈折率を有するソリッドイマージョンレンズ10へと入射することにより大きく屈折し、薄板12の底面に微小な光スポットとして収束する。また、この薄板12の底面と光ディスクDの記録面との間隔がレーザ光の波長以下の間隔である場合には、薄板12の底面に形成される光スポットのスポットサイズと、光ディスクDの記録面に形成される光スポットのスポットサイズとは略同一になる。これにより、レーザ光が光ディスクDの記録面上に光スポットとして収束され、光ディスクDの記録面上に記録されたマークを照射する。その後、この光ディスクDの記録面からの反射光は逆の経路を辿り、対物レンズ9を通過してプリズム17の斜面部17aを経て、1/4波長板5により偏光方向を90゜ 回転した直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ4により集光レンズ7方向に反射される。偏光ビームスプリッタ4により反射された光は、集光レンズ7により集光され、PD8に入射される。PD8では、光ディスクDの記録面上にマークを有するか否かにより生じる反射光の違いに応じて変化する反射レーザ光の出力量を検出することにより、光ディスクDの再生が可能になる。
【0056】
ここに、基板11に形成された対物レンズ9の形状に略同一な凹部11aが、基板11の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である接着剤Yを充填された後、その接着剤Yと略同一の屈折率を有するプリズム17により閉塞される。これにより、高屈折透明材料を凹部11aに確実に充填することができるので、光学素子16の製造が容易になり、また、高屈折透明材料の充填後に凹部11aがプリズム17により閉塞されることにより、凹部11aに充填する高屈折透明材料を固体に限定する必要はなくなるので、高屈折透明材料の選択幅が広がり、より光学特性の高い光学素子16が得られる。
【0057】
また、各凹部11a,11b毎に異なる高屈折透明材料が充填されることにより、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とのそれぞれのレンズの目的とする機能を発揮する高屈折透明材料の選択が可能になるので、所望の光学素子16が得られる。
【0058】
本発明の第四の実施の形態を図6ないし図8に基づいて説明する。本実施の形態の光ピックアップヘッドは、第三の実施の形態の光ピックアップヘッド15と比較して、光学素子16に代えて光学素子16とは製造方法の異なる光学素子18を備える点でのみ変わるものである。
【0059】
次に、本実施の形態の特長である光学素子18の製造方法について説明する。まず、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とが配置される基板19について説明する。ここで、図6(a)は基板19を概略的に示す平面図、図6(b)はその断面図である。図6に示すように、この基板19は、その基板19の上面19cにおいて対物レンズ9の形状の凹部19aの端部から放射状に延出する溝19dを有している点で、溝を有さない前述した各実施の形態の基板11とは異なる。
【0060】
次に、基板19の製造方法について説明する。基板19の製造方法としては、例えば透明な光学ガラスであるBK−7(波長768.2nmでの屈折率m=1.5115)等のガラス基板の一方の表面に感光性樹脂であるポジ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OFPR−800)をスピンコート法により塗布した後、そのフォトレジストをベークしてガラス基板上にフォトレジスト層を形成する。次に、露光装置によってフォトレジスト層に所定のパターンを露光する。ここでは、対物レンズ9の平面部と略同一な形状が未露光部分になるとともにその平面部から放射状に延出する溝形状が未露光部分になるようなパターンとされる。その後、現像を行なうことにより未露光部分のフォトレジスト層が溶解されるので、ガラス基板と露光されてガラス基板上に残ったフォトレジスト層とにより凹形状が形成され、パターニングがなされる。この状態で、ガラス基板上のフォトレジスト層をエッチングマスクとしてガラス基板をCF4やCHF3等のガスを使用した反応性イオンエッチング法(RIE)や電子サイクロトロン共鳴エッチング法(ECR)等のドライエッチングによりエッチング(異方性エッチング)することで対物レンズ9の形状の凹部19aと溝19dとを形成した後、アッシングにより残ったフォトレジスト層を除去する。また、ガラス基板の他方の表面にも同様の処理を施し、ソリッドイマージョンレンズ10の平面部と略同一な形状が未露光部分になるようなパターンをフォトレジスト層に露光した後、ドライエッチングによりガラス基板をエッチングしてソリッドイマージョンレンズ10の形状である半球形状の凹部19bを形成する。なお、CF4等のガスには、エッチング速度や選択性を調整する目的で、N2、O2、Ar等のガスを混入しても良い。このようにして、図6に示すような基板19が形成される。なお、本実施の形態においては、ポジ型フォトレジストを用いたが、これに限らず、ネガ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OMR−85 )や感光性ドライフィルムを用いても良い。以上により、凹部形成過程が実現される。
【0061】
また、図7に示すように、基板19の上面19cには、ガイド20が設けられている。ガイド20は、プリズム17と基板19とを位置合わせするためのものである。このようにガイド20を設けることにより、閉塞位置精度の向上を図ることが可能になる。このガイド20は、凹部19aと溝19dとの上部に積層した金属等をフォトリソグラフィ技術により凹部19aを包含してプリズム17の底面17bと略同一な形状が未露光部分になるようにパターニングし、エッチングによりプリズムガイド部20aを形成したものである。
【0062】
次に、光学素子18の製造方法について図8を参照して説明する。なお、ソリッドイマージョンレンズ10及び薄板12の製造方法は、第一の実施の形態の光学素子6又は第二の実施の形態の光学素子14において説明した製造方法と何ら変わるところがないので、説明を省略する。
【0063】
一方、基板19の凹部19aへの対物レンズ9の形成は、凹部19aに熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の接着剤Yを埋め込むことにより行われる。なお、この接着剤Yは、基板19の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である。詳細には、図8(a)に示すように、基板19の凹部19aに接着剤Yを十分に充填する。以上により、透明材料充填過程が実現される。その後、図8(b)に示すように、プリズム17の底面17bをガイド20のプリズムガイド部20aに嵌合させて基板19の凹部19aに押し付けて接着することにより平凸レンズ形状の対物レンズ9が形成される。以上により、凹部閉塞過程が実現される。これにより、図8(b)に示すような光学素子18が製造される。なお、プリズム17の接着時にはみ出た余分な接着剤Zは、溝19dの容積の範囲内で溝19dに流れ込むので、余分な接着剤Zを取り除く作業が不要になるので、作業工程の削減を図ることができ、また、余分な接着剤Zによるプリズム17の閉塞位置の誤差の発生を防止することができる。また、溝19dは、接着剤Yを硬化させる際の膨張・収縮を吸収する役割も果たす。
【0064】
このような構成において、本実施の形態における光ディスクDの再生等の動作については、基本的に、前述した第三の実施の形態の光ピックアップヘッド15での動作と何ら変わるものではないので、説明は省略する。
【0065】
本発明の第五の実施の形態を図9ないし図11に基づいて説明する。本実施の形態の光ピックアップヘッドは、第三の実施の形態の光ピックアップヘッド15と比較して、光学素子16に代えて光学素子16とは製造方法の異なる光学素子21を備える点でのみ変わるものである。
【0066】
次に、本実施の形態の特長である光学素子21について説明する。まず、対物レンズ9とソリッドイマージョンレンズ10とが配置される基板22について説明する。ここで、図9(a)は基板22を概略的に示す平面図、図9(b)はその断面図である。図9に示すように、この基板22は、その基板22の上面22cにおいて対物レンズ9の形状の凹部22aの端部から延出する溝22dを有している点で、溝を有さない前述した第一ないし第三の実施の形態の基板11とは異なる。
【0067】
次に、基板22の製造方法について説明する。基板22の製造方法としては、例えば透明な光学ガラスであるBK−7(波長768.2nmでの屈折率m=1.5115)等のガラス基板の一方の表面に感光性樹脂であるポジ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OFPR−800)をスピンコート法により塗布した後、そのフォトレジストをベークしてガラス基板上にフォトレジスト層を形成する。次に、露光装置によってフォトレジスト層に所定のパターンを露光する。ここでは、対物レンズ9の平面部と略同一な形状が未露光部分になるとともにその平面部から延出する溝形状が未露光部分になるようなパターンとされる。その後、現像を行なうことにより未露光部分のフォトレジスト層が溶解されるので、ガラス基板と露光されてガラス基板上に残ったフォトレジスト層とにより凹形状が形成され、パターニングがなされる。この状態で、ガラス基板上のフォトレジスト層をエッチングマスクとしてガラス基板をCF4やCHF3等のガスを使用した反応性イオンエッチング法(RIE)や電子サイクロトロン共鳴エッチング法(ECR)等のドライエッチングによりエッチング(異方性エッチング)することで対物レンズ9の形状の凹部22aと溝22dとを形成した後、アッシングにより残ったフォトレジスト層を除去する。また、ガラス基板の他方の表面にも同様の処理を施し、ソリッドイマージョンレンズ10の平面部と略同一な形状が未露光部分になるようなパターンをフォトレジスト層に露光した後、ドライエッチングによりガラス基板をエッチングしてソリッドイマージョンレンズ10の形状である半球形状の凹部22bを形成する。なお、CF4等のガスには、エッチング速度や選択性を調整する目的で、N2、O2、Ar等のガスを混入しても良い。このようにして、図9に示すような基板22が形成される。なお、本実施の形態においては、ポジ型フォトレジストを用いたが、これに限らず、ネガ型フォトレジスト(例えば、東京応化社製 OMR−85 )や感光性ドライフィルムを用いても良い。以上により、凹部形成過程が実現される。
【0068】
また、図10に示すように、基板22の上面22cには、ガイド20が設けられている。ガイド20は、前述した第四の実施の形態のガイド20と何ら変わるところがないので、説明を省略する。
【0069】
次に、光学素子21の製造方法について図11を参照して説明する。なお、ソリッドイマージョンレンズ10及び薄板12の製造方法は、第一の実施の形態の光学素子6又は第二の実施の形態の光学素子14において説明した製造方法と何ら変わるところがないので、説明を省略する。
【0070】
一方、基板22の凹部22aへの対物レンズ9の形成は、凹部22aに屈折液である液体Lを注入することにより行われる。なお、この液体Lは、基板22の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料である。詳細には、図11(a)に示すように、プリズム17の底面17bをガイド20のプリズムガイド部20aに嵌合させて基板22の凹部22aに押し付けて紫外線硬化接着剤等により接着することにより平凸レンズ形状の空間Aが形成される。なお、この場合の接着剤は、溝22dを塞ぐことのない位置に塗布される。以上により、凹部閉塞過程が実現される。次いで、図11(b)に示すように、溝22dとガイド20とプリズム17の底面17bとにより形成される注入口23から屈折液である液体Lを注入する。そして、空間Aを満たす量が注入された時点で注入口23を接着剤等で塞ぐことにより対物レンズ9が形成され、光学素子21が製造される。以上により、透明材料充填過程が実現される。
【0071】
このような構成において、本実施の形態における光ディスクDの再生等の動作については、基本的に、前述した第三の実施の形態の光ピックアップヘッド15での動作と何ら変わるものではないので、説明は省略する。
【0072】
ここに、基板22に形成された対物レンズ9の形状に略同一な凹部22aが、基板22の屈折率よりも高屈折率を有する凹部閉塞部材であるプリズム17に閉塞された後、プリズム17と略同一の屈折率を有する高屈折透明材料である液体Lがその凹部22aから延出する溝22dから注入される。これにより、液体Lを凹部に確実に注入することができるので、光学素子21の製造が容易になり、また、凹部22aに高屈折透明材料である液体を注入することができるので、高屈折透明材料の選択幅を広げることができ、より光学特性の高い光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態においては、凹部閉塞部材としてプリズム17を用いたが、これに限るものではない。
【0074】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、凹部形成過程により基板に形成された対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部の少なくとも一方について、透明材料充填過程により基板の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料を充填した後、凹部閉塞過程によりその高屈折透明材料と略同一の屈折率を有する凹部閉塞部材により閉塞することにより、高屈折透明材料を凹部に確実に充填することができるので、光ピックアップ用光学素子の製造を容易にすることができ、また、高屈折透明材料の充填後に凹部を凹部閉塞部材により閉塞することにより、凹部に充填する高屈折透明材料を固体に限定する必要はなくなるので、高屈折透明材料の選択幅を広げることができ、より光学特性の高い光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0075】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、基板に凹部から延出する溝を形成することにより、たとえ充填された高屈折透明材料が凹部から溢れる場合であっても、余分な高屈折透明材料をその溝の容積の範囲内で取り除くことができるので、作業工程の削減を図ることができ、また、余分な高屈折透明材料による凹部閉塞部材の閉塞位置の誤差の発生を防止することができる。
【0076】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、凹部に充填される高屈折透明材料により凹部閉塞部材と基板とを接着することにより、対物レンズまたはソリッドイマージョンレンズの製造を容易にすることができる。
【0077】
請求項4記載の発明によれば、凹部形成過程により基板に形成された対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部の少なくとも一方について、凹部閉塞過程により基板の屈折率よりも高屈折率を有する凹部閉塞部材に閉塞された後、透明材料充填過程により凹部閉塞部材と略同一の屈折率を有する高屈折透明材料をその凹部から延出する溝から充填することにより、高屈折透明材料を凹部に確実に充填することができるので、光ピックアップ用光学素子の製造を容易にすることができ、また、凹部閉塞部材による閉塞後に高屈折透明材料を充填することにより、凹部に充填する高屈折透明材料を液体にすることができるので、高屈折透明材料の選択幅を広げることができ、より光学特性の高い光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0078】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、透明材料充填過程で各凹部毎に異なる高屈折透明材料を充填することにより、対物レンズとソリッドイマージョンレンズとのそれぞれのレンズの目的とする機能を発揮する高屈折透明材料を選択することができるので、所望の光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0079】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、ソリッドイマージョンレンズ側の凹部をソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さを有する薄板により閉塞することにより、基板に形成された半球形状の凹部を容易に超半球形状にするので、光スポットのスポットサイズを微小にする小さな光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0080】
請求項7記載の発明によれば、請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、ソリッドイマージョンレンズ側の凹部に高屈折透明材料をスピンコーティングした後にソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さに研磨して形成した薄板によりソリッドイマージョンレンズ側の凹部を閉塞することにより、基板に形成された半球形状の凹部を容易に超半球形状にするので、光スポットのスポットサイズを微小にする光ピックアップ用光学素子を得ることができる。
【0081】
請求項8記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、対物レンズ側の凹部を閉塞する凹部閉塞部材を平板にすることにより、光ピックアップヘッドの小型化を図ることができる。
【0082】
請求項9記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、対物レンズ側の凹部を閉塞する凹部閉塞部材を光路変更手段にすることにより、半導体レーザの配置位置を多様化することができる。
【0083】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法において、光路変更手段を対物レンズ側の凹部上に案内するガイドを基板上に配設したことにより、閉塞位置精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態の光ピックアップヘッドを概略的に示す構成図である。
【図2】光学素子の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態の光学素子の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態の光ピックアップヘッドを概略的に示す構成図である。
【図5】光学素子の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第四の実施の形態の基板について示し、(a)は基板を概略的に示す平面図、(b)はその断面図である。
【図7】基板にガイドが載置された状態について示し、(a)は基板とガイドとを概略的に示す平面図、(b)はその断面図である。
【図8】光学素子の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の第五の実施の形態の基板について示し、(a)は基板を概略的に示す平面図、(b)はその断面図である。
【図10】基板にガイドが載置された状態について示し、(a)は基板とガイドとを概略的に示す平面図、(b)はその断面図である。
【図11】光学素子の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図12】従来の光ピックアップヘッドの一例について概略的に示す構成図である。
【図13】従来のソリッドイマージョンレンズを備えた光ピックアップヘッドの一部を示す側面図である。
【図14】従来のスライダに搭載された光ピックアップヘッドの一部を示す側面図である。
【図15】従来の一体型光学素子を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
2 半導体レーザ
6,14,16,18,21 光ピックアップ用光学素子
9 対物レンズ
10 ソリッドイマージョンレンズ
11,19,22 基板
11a,19a,22a 対物レンズの形状に略同一な凹部
11b,19b,22b ソリッドイマージョンレンズの形状に略同一な凹部
12 薄板
13 平板
17 光路変更手段
19d,22d 溝
20 ガイド
X,Y,Z,L 高屈折透明材料
Claims (10)
- 半導体レーザから出射されたレーザ光を集束する平凸形状の対物レンズと、この対物レンズにより集束されたレーザ光を光情報記録媒体上に照射させる半球形状のソリッドイマージョンレンズとを光軸を一致させて同一基板に一体に成形する光ピックアップ用光学素子の製造方法において、
前記基板に前記対物レンズと前記ソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部を形成する凹部形成過程と、
この凹部形成過程により形成された少なくとも一方の凹部に対して前記基板の屈折率よりも高屈折率を有する高屈折透明材料を充填する透明材料充填過程と、前記高屈折透明材料の充填後、その高屈折透明材料と略同一の屈折率を有する凹部閉塞部材により前記凹部を閉塞する凹部閉塞過程と、
を備えることを特徴とする光ピックアップ用光学素子の製造方法。 - 前記凹部形成過程で前記凹部から延出する溝を前記基板に更に形成することを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記高屈折透明材料を前記凹部閉塞部材と前記基板とを接着する接着剤として用いることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 半導体レーザから出射されたレーザ光を集束する平凸形状の対物レンズと、この対物レンズにより集束されたレーザ光を光情報記録媒体上に照射させる半球形状のソリッドイマージョンレンズとを光軸を一致させて同一基板に一体に成形する光ピックアップ用光学素子の製造方法において、
前記基板に前記対物レンズと前記ソリッドイマージョンレンズとのそれぞれの形状に略同一な凹部とこれら凹部から延出する溝とを形成する凹部形成過程と、少なくとも一方の凹部を前記基板の屈折率よりも高屈折率を有する凹部閉塞部材により閉塞する凹部閉塞過程と、
前記凹部の閉塞後、前記溝からその凹部に前記凹部閉塞部材と略同一の屈折率を有する高屈折透明材料を充填する透明材料充填過程と、
を備えることを特徴とする光ピックアップ用光学素子の製造方法。 - 透明材料充填過程で各凹部毎に異なる前記高屈折透明材料を充填することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記凹部閉塞過程で前記ソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材をそのソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さを有する薄板にすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記凹部閉塞過程で前記ソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を前記高屈折透明材料をそのソリッドイマージョンレンズ側の前記凹部にスピンコーティングした後にそのソリッドイマージョンレンズの形状を超半球形状にする厚さに研磨されて形成される薄板にすることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記凹部閉塞過程で前記対物レンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を平板にすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記凹部閉塞過程で前記対物レンズ側の前記凹部を閉塞する前記凹部閉塞部材を光路変更手段にすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
- 前記対物レンズ側の前記凹部に対する前記光路変更手段の閉塞面に略一致する開口部を有し、前記光路変更手段をその凹部上に案内するガイドを前記基板上に配設することを特徴とする請求項9記載の光ピックアップ用光学素子の製造方法。
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