JP3573934B2 - アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属−水素化物蓄電池用負極の活物質としては、粉砕し微細化した水素吸蔵合金粉末が用いられている。この理由は、水素吸蔵合金を微細化すると、電気化学反応に関与する面積が大きくなり、また電極基体への充填密度が高まるので、電池の高エネルギー密度化が図り易いからである。
【0003】
しかし、微細な合金を用いると、安定した電極導電性が得られにくくなり、活物質の利用率が低下する。したがって、合金を微細化しただけでは、電池のエネルギー密度を十分に高めることができない。
【0004】
そこで、電極導電性を改善するために、電極にCu等の導電剤を添加する方法が提案されており、例えば、特開平2−239566号公報では、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が水素を吸蔵放出する電位内において金属状態で存在する物質を導電剤として電極に添加する技術が提案されている。この技術によると、電極に添加された上記物質が電池内で還元されて金属となり、電極内部の導電性を高める。よって、活物質利用率や高率放電特性が向上する。
【0005】
しかしながら、水素吸蔵合金は水素の吸蔵・放出により膨張収縮を繰り返すため、充放電が繰り返されると合金割れが生じ一層微細化する。また、充放電サイクルの進行に伴い合金表面の腐食が進行する。このため、導電剤添加による上記効果は、充放電サイクルの進行とともに減少し、特に充放電サイクルの進行と伴に高率放電特性が低下する。
【0006】
これに対し、特開平4−171661号公報では、金属銅粉末と金属コバルト粉末の混合物を電極に添加し、金属銅粉末を導電性として機能させ、金属コバルト粉末を水素のイオン化触媒として機能させることにより、電極の電気化学的活性を高める技術が提案されている。この技術によると導電剤が電極導電性を改善し、イオン化触媒が合金の腐食等に起因する水素の吸蔵放出能力の低下を抑制するので、単位活物質重量当たりの容量が向上すると共に、合金表面の腐食に起因する発電能力の低下をある程度抑制できる。
【0007】
ところが、この技術では酸化され易い金属銅や金属コバルトを使用しているため、電極の製造段階や電池への組み込みの後、上記金属の表面が酸化物で覆われ、この酸化物膜が導電性やイオン化触媒能を低下させる。このため、この技術を適用しても、十分には長期充放電サイクル後の高率放電特性を向上させることができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、長期充放電サイクル後においても優れた高率放電特性を有する水素吸蔵合金電極を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成されている。請求項1の発明は、銀、ビスマスから選択された金属Aと、この金属Aに付着するコバルト、ニッケル、ルテニウムからなる群より選択される金属Bまたは金属Bの化合物とで組成される活物質助剤と、水素吸蔵合金粉末とを含んでなる負極活物質が、集電体に保持されたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極であることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、金属Aと金属B等とが一体的に存在し、かつ電極内において金属Aと金属B等とが水素吸蔵合金粒子の近傍に存在した状態が形成されている。そして、金属Aは水素吸蔵合金への電子の授受を円滑にし、また金属Aの表面に付着する金属B等は水素吸蔵合金への水素の吸蔵・脱着を円滑にするように作用する。ここにおいて、金属Aと金属B等とが一体的に存在するので、両成分が共働し合って効率的に水素吸蔵合金の発電能力を高める。したがって、長期充放電サイクルによる電極性能の劣化が抑制され、その結果として長期充放電サイクル後の高率放電容量(3C放電容量)が飛躍的に向上する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極における前記活物質助剤が、金属Aの表面に金属Bまたは金属B化合物が被覆された形状であり、この活物質助剤と水素吸蔵合金粒子とが接触し合った状態で集電体に保持されていることを特徴とする。
【0012】
この構成であると、導電剤である金属Aと水素イオン化触媒である金属Bまたは金属B化合物と水素吸蔵合金の三者が最も接近した状態で電極内に存在している。よって、活物質助剤が水素吸蔵合金に対し極めて有効に作用して、充放電サイクルに伴う電極性能の低下、特に高率放電特性の低下を抑制する。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2記載の金属水素化物アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極において、前記金属BがCo、Ni、Ruからなる群より選択される金属であり、前記金属Bの化合物がCoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、NiF2 、RuO2 からなる群より選択される金属化合物であることを特徴とする。
【0015】
上記金属または上記金属化合物は、水素のイオン化触媒能に優れる。したがって、前記金属Aにこれらの金属または金属化合物を付着または被覆した活物質助剤であると、合金割れや合金腐食に起因する電気化学的活性の低下を抑制する効果が大きい。
【0016】
請求項4の発明は、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内においては酸化還元されることのない粒状の金属、または上記電位の範囲内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物を核物質A’とし、この核物質A’をコバルト化合物、ニッケル化合物、ルテニウム化合物より選択された被覆物質B’を用いて被覆する被覆活物質助剤作製工程と、前記被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とを混合して活物質混合物となす混合工程と、前記活物質混合物を集電体に保持させ水素吸蔵合金電極となす電極作製工程と、を備えることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法である。
【0017】
この製造方法によると、上記請求項1に記載した作用効果を奏するアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極を生産性よく製造できる。
すなわち、上記構成において、核物質A’としてアルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化還元されることのない粒状の金属を用いた場合、核物質A’がそのまま請求項1の金属Aとして機能する。
また核物質A’として、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物を用いた場合には、電池組み立て後における初回充電時に核物質A’(金属化合物)が還元されて金属Aになり、その後金属Aの形で機能する。
【0018】
他方、核物質A’を被覆するコバルト化合物、ニッケル化合物、ルテニウム化合物より選択された被覆物質B’は、当該電極が電池に組み込まれたとき、一旦アルカリ電解液に溶解し、その後の充放電により金属Bまたは金属B化合物として再析出するが、この再析出の際に金属Aを核とし、その周囲に金属B等が析出し積層する。よって、金属Aの表面が金属Bまたは金属B化合物で被覆された被覆粒子が生成される。
【0019】
更に、上記製造方法では、被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とが混合されて集電体に保持されており、電池内でのアルカリ電解液の移動は少ない。よって、上記被覆粒子は水素吸蔵合金粒子の近傍で生成され、合金粒子の近傍でその機能を発揮する。
【0020】
以上から、上記製造方法で作製した水素吸蔵合金電極では、電池への組み込みの後、初回充放電がなされると、金属Aの表面に金属Bまたは金属B化合物が付着または被覆された被覆粒子が形成される。そして、この被覆粒子は水素吸蔵合金粒子に対し導電剤および水素イオン化触媒として機能し、電極のサイクル劣化を抑制するように作用する。その結果、長期充放電サイクル後の高率放電容量が飛躍的に向上する。
【0021】
なお、金属単体または金属化合物の何れを核物質A’として用いても、電極の実働時においては同じ物質になるが、金属単体よりも金属化合物の方が化学的に安定であるので、製造時における取扱い性の点で金属化合物が優れている。
【0022】
請求項5の発明は、請求項4記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核物質A’として銅化合物、銀化合物、ビスマス化合物より選択される金属化合物を用いることを特徴とする。これらの金属化合物は導電性に優れるので、核物質A’として好適に使用できる。
【0023】
また、請求項6の発明は、請求項5記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核物質A’としての銅化合物がCuO、Cu2 O、Cu(OH)2 より選択されるものであり、銀化合物がAg2 Oであり、ビスマス化合物がBi2 O3 、Bi(OH)3 より選択されるであることを特徴とする。これらの金属化合物は、電池内で還元されて導電性に優れた金属に変化する。よって、核物質A’として好適に使用できる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項4、5、または6記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記被覆物質B’としてのコバルト化合物がCoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 からなる群より選択されるものであり、ニッケル化合物がNi(OH)2 、NiF2 からなる群より選択されるものであり、ルテニウム化合物がRuO2 であることを特徴とする。これらの金属化合物は、水素イオン化触媒能に優れるので、被覆物質B’として好適に使用できる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項4、5、6、または7記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法における被覆活物質助剤作製工程と混合工程において、核物質A’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.1重量%〜10重量%となり、被覆物質B’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.01重量%〜5重量%となるように、核物質A’と被覆物質B’の比率を調整すると共に、当該被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末との混合比率を調整することを特徴とする。
【0026】
活物質混合物中の水素吸蔵合金粉末に対する核物質A’の添加量が0.1重量%〜10重量%となり、同上合金粉末に対する被覆物質B’の添加量が0.01重量%〜5重量%となるように規制すると、好適な配合バランスの活物質混合物が得られる。このような混合物を負極活物質とする電極では、各成分が共働し合って機能するので、充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に高まる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項4、5、6、7、または8記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核金属A’の平均粒径を0.1μm〜10μmとすることを特徴とする。
【0028】
この粒径であると、水素吸蔵合金粉末との混合性がよく、また適度な数の作用点が確保できるので、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に向上する。
【0029】
【実施の形態】
本発明にかかる水素吸蔵合金電極は、水素を吸蔵・放出することのできる水素吸蔵合金と、活物質助剤とで組成された負極活物質を集電体に保持させてなるものであり、上記活物質助剤は、導電剤を核とし、この導電剤の周囲に水素イオン化触媒が配置されてなるものであることを特徴とする。
【0030】
上記における導電剤としては、電子導電性にすぐれた各種の金属または金属化合物が使用できるが、好ましくはアルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化還元されることのない粒状の金属、または上記電位の範囲内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物(以下、核物質A’と総称する)を用いるのがよい。このような性質を有する核物質A’であると、電極の実働時において必ず金属になっており、金属は金属化合物よりも導電性が良いので、導電剤として好適に機能するからである。
【0031】
上記核物質A’としては、例えば銅、銀、ビスマスからなる群より選択される金属またはこれらの金属の化合物を使用するのがよい。銅、銀、ビスマスなどの金属は導電性に優れると共に、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化されないので、酸化被膜の形成等に起因する導電性の低下が生じない。よって、優れた導電剤として機能でき、また電極に対する導電性改善効果が長続きする。
【0032】
更に、上記核物質A’としては、より好ましくはCuO、Cu2 O、Cu(OH)2 、Ag2 O、Bi2 O3 、Bi(OH)3 より選択される金属化合物を使用する。これは次の理由による。CuOやCu2 O等の金属化合物は、既に酸化された状態にあるので金属表面が酸化被膜で覆われるといった問題が生じにくい。また、電池組み立て後に行われる初回充電において還元され金属になる一方、水素吸蔵合金がアルカリ電解液中で電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化されることがない。よって、電池内で酸化被膜が生成されることもない。つまり、これらの金属化合物は、電極製造時における取扱い性がよく、実働時には導電性に優れた金属となって機能するので、核物質A’として好都合である。
【0033】
他方、上記水素イオン化触媒としては、コバルト、ニッケル、ルテニウムからなる群より選択される金属(金属B)、またはこれらの金属に代え、或いはこれらの金属と共にこれらの金属の酸化物、水酸化物等の金属化合物を使用する。ここで、上記金属化合物としては、CoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、NiF2 、RuO2 からなる群より選択されるものが例示でき、これらは水素イオン化触媒能に優れる点で好ましい。なお、金属および金属化合物を被覆物質B’と総称する。
【0034】
ところで、核物質A’や被覆物質B’は、水素吸蔵合金の発電能力を十分に引き出すための活性賦活剤として機能するものであり、その作用効果は水素吸蔵合金との関係における存在形態の如何により大きく影響される。具体的には、導電剤は合金相互の導電を確保するために添加するものであるので、合金粒子の間に介在し、かつ合金粒子に接触した状態で存在しているのがよい。また水素イオン化触媒は、水素の吸蔵・脱着を触媒するものであるので、水素吸蔵合金の近傍に存在する必要があり、更に水素の吸蔵・脱着には電子の授受が伴うので、水素イオン化触媒は導電剤により導電性が確保された部位に存在するのが好ましい。つまり、導電剤とイオン化触媒とは近接して存在するのがよく、近接して存在すると両者が共働的に作用できるので、水素吸蔵合金に対する発電能力増強効果が顕著に高まる。
【0035】
本発明においては、活物質助剤として導電剤を核とし、水素イオン化触媒を被覆層としてなる被覆粒子を用いる。この構造の被覆活物質助剤は、導電剤と水素イオン化触媒とが一体化されているので、両者が一体的・共働的に機能する。また、本発明は、このような被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とを混合したものを活物質とし、この活物質を集電体に保持させる構成としてある。よって、水素吸蔵合金の近傍に存在する被覆活物質助剤が、合理的に水素吸蔵合金の発電能力を高める。
【0036】
ここで、被覆活物質助剤の粒径の面から、一層好適な状態の電極構造を実現するためには、核物質A’(導電剤)の平均粒径を0.1μm〜10μmとするのがよい。この範囲の平均粒径であると、充放電サイクル後の3C放電容量を顕著に向上させることができるからである。この理由としては、水素吸蔵合金粉末(通常、平均粒径20μm〜80μmを使用)との均一混合性が高まるためではないかと考えられる。
【0037】
また、核物質A’の添加量としては、水素吸蔵合金粉末に対し0.1重量%〜10重量%とし、水素イオン化触媒(被覆物質B’)の添加量としては、好ましくは水素吸蔵合金粉末に対し0.01重量%〜5重量%とするのがよい。活物質助剤の添加量が少な過ぎると十分な効果が得られない一方、添加量が多くなると、相対的に水素吸蔵合金量が少なくなり、単位重量当たりの水素吸蔵容量が減少する。したがって、水素吸蔵容量の減少によるマイナス効果が活物質助剤を添加することによるプラス効果を上回らない範囲とするのがよく、上記範囲においてこの条件が充足され、充放電サイクル後の3C放電容量が高まる。
【0038】
本発明では、金属−水素化物アルカリ蓄電池に使用できる各種の水素吸蔵合金が使用でき、例えば一般式MmRx(但し、Mmはミッシュメタル,RはNi、Co、Al、およびMn,Xは4.4〜5.4)で表される水素吸蔵合金、または一般式ABx(但し、Aはジルコニウム、Bはニッケル、Xは1.8〜2.2)で表される水素吸蔵合金が使用できる。
【0039】
また、被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末を含む活物質混合物を集電体に保持させる方法としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などをバインダーとする活物質ペーストを集電体に塗着する方法が挙げられる。この際使用する集電体としては、パンチングメタルやスポンジ状ニッケル基体などが使用できる。
【0040】
また、本発明では、アルカリ電解液として例えば水酸化カリウム水溶液や、水酸化カリウムに水酸化ナトリウムと水酸化リチウムを添加した水溶液などを用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の内容を実験に基づいて更に具体的に説明する。
(実験1)
実験1では、核金属A’(導電剤)としてCu2 Oを用い、被覆金属B’(水素イオン化触媒)としてNiF2 を用い、A’とB’の組成比率を変化させた6通りの被覆活物質助剤を作製し、組成比率と充放電サイクル後の3C放電容量の関係を調べた。具体的には下記する手順に従って行った。
【0042】
(1) 水素吸蔵合金の作製
ミッシュメタル(Mm)とニッケル(Ni)とコバルト(Co)とアルミニウム(Al)とマンガン(Mn)とをモル比で1.0:3.2:1.0:0.2:0.6の割合で混合し、高周波誘導加熱溶解炉で1500℃で溶融させた後、この溶湯を冷却し水素吸蔵合金のインゴットを作製した。次いで、このインゴットを平均粒径約50μmに粉砕して水素吸蔵合金粉末となした。
【0043】
(2) 活物質助剤の作製
NiF2 を蒸留水に溶かして約0.6重量%濃度のNiF2 溶液を作製し、このNiF2 溶液に平均粒径5μmのCu2 O粉末(酸化第二銅粉末)を所定量入れ、攪拌しながら水酸化ナトリウム液を加えて溶液pHを約11に調整した。これによりNiF2 が析出して、Cu2 O粒子の表面に付着するので、この粒子を濾過法により集め、60℃で乾燥した。このようにして、Cu2 O粒子の表面にNiF2 が被覆された6通りの被覆活物質助剤(表1参照)を作製した。
【0044】
ここで、上記における所定量とは、被覆活物質助剤におけるCu2 O(核)とNiF2 (被覆層)との組成比率が、1:10 (0.05 : 0.5 )、1:5(0.1 : 0.5) 、1:0.5 (1 : 0.5 )、1:0.1 (5 : 0.5 )、1:0.05 (10 : 0.5 ) 、1:0.03 (15:0.5) (かっこ内は水素吸蔵合金に対する重量%表示)となるようなCu2 O粉末量であるが、NiF2 溶液に溶解したNiF2 量の約2割がCu2 O粒子(核物質)の表面に塗着することなく失われる。よって、このロス分を考慮してNiF2 溶液に対するCu2 O粉末の投入量を決めた。
【0045】
なお、NiF2 を析出させる際に、NiF2 溶液に水酸化ナトリウム液を加えるので、NiF2 からなる被覆層の一部がNi(OH)2 となっていることも考えられる。
【0046】
(3) 水素吸蔵合金電極の作製
5重量%濃度のポリエチレンオキサイド(PEO)水溶液の1重量部に、前記水素吸蔵合金粉末を10重量部を加えると共に、上記で作製した被覆活物質助剤を加えて混練し活物質ペーストとなした。この活物質ペーストをニッケルメッキした鉄板からなるパンチングメタルの両面に塗着し乾燥した後、圧延し、更に所定の大きさに切断して板状の水素吸蔵合金電極を作製した。このようにして、核物質A’と被覆物質B’の組成比のみが異なる6通りの水素吸蔵合金電極(A1〜A6)を作製した。
【0047】
更に上記電極とこの電極より容量の小さい公知の焼結式ニッケル電極とを、ナイロン製セパレータを介して巻回し渦巻電極体となした。この渦巻電極体を電池缶に挿入し、30重量%の水酸化カリウム水溶液からなるアルカリ電解液を注液して、単3型の密閉円筒型の金属水素化物アルカリ蓄電池(実施例A1〜A6)を作製した。これらの電池の理論容量は、1200mAhであった。
【0048】
他方、活物質助剤を添加しないこと以外は、上記と同様にして比較対照用の比較例B1電池を作製した。
【0049】
〔高率放電特性〕
上記で作製した実施例A1〜A6および比較例B1について、下記の条件で充放電サイクルを繰り返し、充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。
測定条件
各蓄電池に対し、室温・1C電流値(1200mA)で充電を行い、−ΔV検出制御方式により−ΔV=10mVで充電を停止し、1C(1200mA)で放電終止電圧1.0Vまで放電を行うという充放電サイクルを200回繰り返した。その後、充電電流0.1C(120mA)で11時間充電し、しかる後、3C(3600mA)で電池電圧1Vまで放電し、この時の放電容量を測定した。
測定結果を、他の条件と共に表1に示す。なお、同種電池をそれぞれ4個づつ用意して測定を行い、その平均値を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1において、被覆活物質助剤を用いたA1〜A6は、活物質助剤を用いないB1に比較し、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に大きかった。また、水素吸蔵合金に対するCu2 Oの添加量を0.1重量%〜10重量%としたA2〜A5は、Cu2 Oの添加量が0.05重量%のA1および15重量%のA6に比較し、充放電サイクル後の3C放電容量が大きかった。
【0052】
上記の結果から、水素吸蔵合金粉末に被覆活物質助剤を添加すると、飛躍的に充放電サイクル後の3C放電容量が向上することが確認された。なお、水素吸蔵合金に対するCu2 Oの比率が0.1重量%未満になるとCu2 O量が不足するため、電極の導電性が不十分になり、Cu2 Oの比率が10重量%を超えると、導電性向上効果よりも活物質の単位重量当たりの水素吸蔵量が小さくなるマイナス効果の方が大きいために、充放電サイクル後の3C放電容量が小さくなったものと考えられる。
【0053】
(実験2)
実験2においては、核金属A’であるCu2 Oの水素吸蔵合金に対する添加量を5重量%(一定)とし、被覆金属B’であるNiF2 の水素吸蔵合金に対する添加量を0、 0.005、 0.01 、0.5 、5、10に変化させたこと以外は、上記実験1と同様にして金属水素化物アルカリ蓄電池B2およびA7〜A10を作製した。そして、実験1と同様にして充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。その結果を表2に示した。なお、A4は実験1で作製したものである。
【0054】
【表2】
【0055】
表2において、5重量%のCu2 Oのみを添加したB2は、Cu2 OとNiF2 からなる被覆活物質助剤を添加したA7〜A10に比較して、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に小さかった。このことから、3C放電容量を高めるには、導電剤とイオン化触媒を併用する必要があることが判る。また、A7〜A10の比較より、NiF2 の添加量が水素吸蔵合金に対し0.01重量%〜5重量%であるA8、A4、A9において、特に優れた3C放電容量が得られた。このことから、水素イオン化触媒剤は、水素吸蔵合金に対し0.01重量%〜5重量%添加するのが好ましいことが判る。
【0056】
(実験3)
実験3においては、核金属A’を被覆金属B’で被覆してなる被覆活物質助剤の添加効果について更に検証した。具体的には、Cu2 O(導電剤)およびNiF2 (水素イオン化触媒)の何れをも添加しない場合(B1)、Cu2 Oのみを添加した場合(B2)、Cu2 OおよびNiF2 をそれぞれ粉末添加した場合(B3)、及びCu2 Oを核とし、この表面をNiF2 で被覆してなる被覆活物質助剤粒子を用いた場合(A4)、並びに金属銅、金属コバルトをそれぞれ粉末で添加した場合(B4)について、充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。
【0057】
その結果を表3に示した。表3から次のことが明らかになる。即ち、活物質助剤を全く添加しない場合、充放電サイクル後の3C放電容量が小さい(B1)。しかし、Cu2 Oのみを添加しても、3C放電容量を十分に高めることができない(B2)。これに対し、導電剤Cu2 Oと水素イオン化触媒NiF2 とを併用した場合、大幅に3C放電容量が向上し(B3)、特に導電剤Cu2 Oを水素イオン化触媒NiF2 で被覆して導電剤の近傍に水素イオン化触媒が存在する形態とした場合において(A4)、飛躍的に3C放電容量が向上する。
【0058】
他方、導電剤として金属銅、水素イオン化触媒として金属コバルトをそれぞれ粉末で添加した場合(B4)では、十分な3C放電容量の改善が認められない。これらの結果は、次のように考察できる。
【0059】
先ず、導電剤のみを添加しても十分に3C放電容量が改善されない理由は、次のように考えられる。水素吸蔵合金電極に導電剤を添加すると、合金相互間における電子の授受が円滑に行われるようになるので、活物質利用率や高率放電特性が向上する。しかし、充放電が繰り返えされると、合金が一層微細化されるため、相対的に導電剤の効果が低下する。また、充放電サイクルの進行とともに合金表面が腐食し、合金の電気化学的活性が低下する。この結果、充放電サイクルの進行につれ高率放電特性が悪くなる。
【0060】
これに対し、導電剤と共にCo、Niなどの水素のイオン化触媒を電極に添加すると、導電剤が合金相互間の導電性を改善し、イオン化触媒が水素の吸蔵脱着を触媒して、合金腐食等に起因する電気化学的活性の低下を補う。よって、充放電サイクル後の3C放電容量が向上するが、この場合、本発明にかかる被覆活物質助剤を用いると飛躍的に充放電サイクル後の3C放電容量が向上する(実施例A4)。この理由として次のことが考えられる。
【0061】
水素吸蔵合金が高い発電能力を発揮するためには、水素の吸脱着とこれに伴う電子の授受が円滑に行われる必要があり、このためには水素吸蔵合金の近傍に導電剤とイオン化触媒が存在する必要がある。本発明にかかる実施例A4の負極は、Cu2 O粒子(導電剤)を水素イオン化触媒NiF2 で被覆した被覆活物質助剤を用い、この被覆活物質助剤を水素吸蔵合金粉末と混合しペースト状となしたものを集電体に塗着する方法で作製されている。このような負極であると、導電剤の近傍にイオン化触媒が存在し、かつこれらの助剤が水素吸蔵合金の近傍(接触を含む)に位置している。よって、これらの助剤が極めて効率的にその作用効果を発揮して水素吸蔵合金の発電能力を向上させ、その結果として充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に向上する。
【0062】
他方、金属銅と金属コバルトを添加した比較例B4は、比較例B3や実施例A4に比べ充放電サイクル後の3C放電容量が大幅に小さいが、この理由としては次のことが考えられる。金属銅や金属コバルトは酸化され易いため、金属表面が酸化被膜で覆われる。金属表面が酸化被膜で覆われると、導電性や触媒能が低下し、十分な作用効果が発揮できなくなる。
【0063】
これに対し、Cu2 O粒子を核とし、NiF2 を被覆層とする本発明にかかる実施例A4では、初回充電時にCu2 O(核金属A’)が還元されて金属銅(導電性を有する金属A)になり、その後は金属銅の状態で存在する。また、被覆層を形成するNiF2 (被覆金属化合物B’)は、初回充電時に一旦アルカリ電解液に溶解し、その後、上記金属銅の周囲に、金属ニッケルまたはニッケル化合物の形(金属Bまたは金属B化合物)で再び析出する。つまり、本発明によると、導電性に優れた核金属の周りに触媒能に優れた金属ニッケルまたはニッケル化合物が存在するという好適な形状の助剤が生成され、これが水素吸蔵合金の発電能力を飛躍的に高めるので、充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に向上することになる。
【0064】
【表3】
【0065】
(実験4)
実験4では、Cu2 OとNiF2 との組み合わせ以外において、本発明構成の作用効果を検証した。具体的には、核物質A’としてCu2 O、CuO、Cu(OH)2 、Ag2 O、Bi2 O3 、Bi(OH)3 を用い、被覆物質B’としてCoO、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、RuO2 、NiF2 を用い、水素吸蔵合金に対する核物質A’と被覆物質B’の添加割合を5重量%、0.5重量%一定とした被覆活物質助剤を作製した。そして、実験1と同様な手法で3C放電容量を求めた。
【0066】
被覆活物質助剤組成および3C放電容量を表4に一覧表示した。表4のごとく、何れの組み合わせにおいても極めて良好な3C放電容量が得られ、本発明の優位性が裏付けられた。
【0067】
【表4】
【0068】
(実験5)
実験5では、核金属A’の平均粒径の違いが充放電サイクル後の3C放電容量に及ぼす影響を調べた。具体的には、水素吸蔵合金に対するCu2 O添加量を5重量%一定とし、NiF2 添加量を0.5重量%一定とした上で、Cu2 Oの粒径を変化させた被覆活物質助剤を作製し、実験1と同様な手法で3C放電容量を求めた。なお、平均粒径は、Leeds & Northrup社製の7991型マイクロトラック粒度分析計を用い測定した。
【0069】
その結果を表5に示した。表5から明らかなごとく、Cu2 O粒子の平均粒径が0.1μmから10μmの範囲(X2〜X5)において、高い3C放電容量が得られた。その一方、平均粒径が0.05μmのX1、及び平均粒径が15μmのX6では、十分な3C放電容量が得られなかった。この結果より、導電剤である核金属A’としては、平均粒径0.1μm〜10μmの粒子を用いるのが好ましい。
【0070】
なお、0.1μmよりも小さい平均粒径のものであると、粒子相互が凝集し、水素吸蔵合金との均一混合が困難になるため、十分な効果が得れなくなるものと考えられる。他方、平均粒径が10μmを超える大きな粒径であると、当然に被覆活物質助剤の粒径も大きくなり、水素吸蔵合金に対する作用点が少なくなること、及び粒径が大きいと、アルカリ電解液に溶解しにくくなり金属銅への還元が円滑になされなくなる結果、十分な作用効果が得られなくなると考えられる。
【0071】
【表5】
【0072】
【発明の効果】
以上から明らかなように、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内においては酸化還元されることのない粒状の金属である銀、ビスマス(導電剤)がコバルト、ニッケル、ルテニウムより選択される金属等(水素イオン化触媒)で被覆されてなる活物質助剤を、水素吸蔵合金粉末に添加することを特徴とする本発明によると、一体化された前記導電剤と水素イオン化触媒が水素吸蔵合金に対し共働して作用する。よって、電極のサイクル劣化が抑制され、その結果として長期充放電サイクル後の高率放電容量が飛躍的に向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属−水素化物蓄電池用負極の活物質としては、粉砕し微細化した水素吸蔵合金粉末が用いられている。この理由は、水素吸蔵合金を微細化すると、電気化学反応に関与する面積が大きくなり、また電極基体への充填密度が高まるので、電池の高エネルギー密度化が図り易いからである。
【0003】
しかし、微細な合金を用いると、安定した電極導電性が得られにくくなり、活物質の利用率が低下する。したがって、合金を微細化しただけでは、電池のエネルギー密度を十分に高めることができない。
【0004】
そこで、電極導電性を改善するために、電極にCu等の導電剤を添加する方法が提案されており、例えば、特開平2−239566号公報では、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が水素を吸蔵放出する電位内において金属状態で存在する物質を導電剤として電極に添加する技術が提案されている。この技術によると、電極に添加された上記物質が電池内で還元されて金属となり、電極内部の導電性を高める。よって、活物質利用率や高率放電特性が向上する。
【0005】
しかしながら、水素吸蔵合金は水素の吸蔵・放出により膨張収縮を繰り返すため、充放電が繰り返されると合金割れが生じ一層微細化する。また、充放電サイクルの進行に伴い合金表面の腐食が進行する。このため、導電剤添加による上記効果は、充放電サイクルの進行とともに減少し、特に充放電サイクルの進行と伴に高率放電特性が低下する。
【0006】
これに対し、特開平4−171661号公報では、金属銅粉末と金属コバルト粉末の混合物を電極に添加し、金属銅粉末を導電性として機能させ、金属コバルト粉末を水素のイオン化触媒として機能させることにより、電極の電気化学的活性を高める技術が提案されている。この技術によると導電剤が電極導電性を改善し、イオン化触媒が合金の腐食等に起因する水素の吸蔵放出能力の低下を抑制するので、単位活物質重量当たりの容量が向上すると共に、合金表面の腐食に起因する発電能力の低下をある程度抑制できる。
【0007】
ところが、この技術では酸化され易い金属銅や金属コバルトを使用しているため、電極の製造段階や電池への組み込みの後、上記金属の表面が酸化物で覆われ、この酸化物膜が導電性やイオン化触媒能を低下させる。このため、この技術を適用しても、十分には長期充放電サイクル後の高率放電特性を向上させることができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、長期充放電サイクル後においても優れた高率放電特性を有する水素吸蔵合金電極を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成されている。請求項1の発明は、銀、ビスマスから選択された金属Aと、この金属Aに付着するコバルト、ニッケル、ルテニウムからなる群より選択される金属Bまたは金属Bの化合物とで組成される活物質助剤と、水素吸蔵合金粉末とを含んでなる負極活物質が、集電体に保持されたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極であることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、金属Aと金属B等とが一体的に存在し、かつ電極内において金属Aと金属B等とが水素吸蔵合金粒子の近傍に存在した状態が形成されている。そして、金属Aは水素吸蔵合金への電子の授受を円滑にし、また金属Aの表面に付着する金属B等は水素吸蔵合金への水素の吸蔵・脱着を円滑にするように作用する。ここにおいて、金属Aと金属B等とが一体的に存在するので、両成分が共働し合って効率的に水素吸蔵合金の発電能力を高める。したがって、長期充放電サイクルによる電極性能の劣化が抑制され、その結果として長期充放電サイクル後の高率放電容量(3C放電容量)が飛躍的に向上する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極における前記活物質助剤が、金属Aの表面に金属Bまたは金属B化合物が被覆された形状であり、この活物質助剤と水素吸蔵合金粒子とが接触し合った状態で集電体に保持されていることを特徴とする。
【0012】
この構成であると、導電剤である金属Aと水素イオン化触媒である金属Bまたは金属B化合物と水素吸蔵合金の三者が最も接近した状態で電極内に存在している。よって、活物質助剤が水素吸蔵合金に対し極めて有効に作用して、充放電サイクルに伴う電極性能の低下、特に高率放電特性の低下を抑制する。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2記載の金属水素化物アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極において、前記金属BがCo、Ni、Ruからなる群より選択される金属であり、前記金属Bの化合物がCoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、NiF2 、RuO2 からなる群より選択される金属化合物であることを特徴とする。
【0015】
上記金属または上記金属化合物は、水素のイオン化触媒能に優れる。したがって、前記金属Aにこれらの金属または金属化合物を付着または被覆した活物質助剤であると、合金割れや合金腐食に起因する電気化学的活性の低下を抑制する効果が大きい。
【0016】
請求項4の発明は、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内においては酸化還元されることのない粒状の金属、または上記電位の範囲内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物を核物質A’とし、この核物質A’をコバルト化合物、ニッケル化合物、ルテニウム化合物より選択された被覆物質B’を用いて被覆する被覆活物質助剤作製工程と、前記被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とを混合して活物質混合物となす混合工程と、前記活物質混合物を集電体に保持させ水素吸蔵合金電極となす電極作製工程と、を備えることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法である。
【0017】
この製造方法によると、上記請求項1に記載した作用効果を奏するアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極を生産性よく製造できる。
すなわち、上記構成において、核物質A’としてアルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化還元されることのない粒状の金属を用いた場合、核物質A’がそのまま請求項1の金属Aとして機能する。
また核物質A’として、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物を用いた場合には、電池組み立て後における初回充電時に核物質A’(金属化合物)が還元されて金属Aになり、その後金属Aの形で機能する。
【0018】
他方、核物質A’を被覆するコバルト化合物、ニッケル化合物、ルテニウム化合物より選択された被覆物質B’は、当該電極が電池に組み込まれたとき、一旦アルカリ電解液に溶解し、その後の充放電により金属Bまたは金属B化合物として再析出するが、この再析出の際に金属Aを核とし、その周囲に金属B等が析出し積層する。よって、金属Aの表面が金属Bまたは金属B化合物で被覆された被覆粒子が生成される。
【0019】
更に、上記製造方法では、被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とが混合されて集電体に保持されており、電池内でのアルカリ電解液の移動は少ない。よって、上記被覆粒子は水素吸蔵合金粒子の近傍で生成され、合金粒子の近傍でその機能を発揮する。
【0020】
以上から、上記製造方法で作製した水素吸蔵合金電極では、電池への組み込みの後、初回充放電がなされると、金属Aの表面に金属Bまたは金属B化合物が付着または被覆された被覆粒子が形成される。そして、この被覆粒子は水素吸蔵合金粒子に対し導電剤および水素イオン化触媒として機能し、電極のサイクル劣化を抑制するように作用する。その結果、長期充放電サイクル後の高率放電容量が飛躍的に向上する。
【0021】
なお、金属単体または金属化合物の何れを核物質A’として用いても、電極の実働時においては同じ物質になるが、金属単体よりも金属化合物の方が化学的に安定であるので、製造時における取扱い性の点で金属化合物が優れている。
【0022】
請求項5の発明は、請求項4記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核物質A’として銅化合物、銀化合物、ビスマス化合物より選択される金属化合物を用いることを特徴とする。これらの金属化合物は導電性に優れるので、核物質A’として好適に使用できる。
【0023】
また、請求項6の発明は、請求項5記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核物質A’としての銅化合物がCuO、Cu2 O、Cu(OH)2 より選択されるものであり、銀化合物がAg2 Oであり、ビスマス化合物がBi2 O3 、Bi(OH)3 より選択されるであることを特徴とする。これらの金属化合物は、電池内で還元されて導電性に優れた金属に変化する。よって、核物質A’として好適に使用できる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項4、5、または6記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記被覆物質B’としてのコバルト化合物がCoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 からなる群より選択されるものであり、ニッケル化合物がNi(OH)2 、NiF2 からなる群より選択されるものであり、ルテニウム化合物がRuO2 であることを特徴とする。これらの金属化合物は、水素イオン化触媒能に優れるので、被覆物質B’として好適に使用できる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項4、5、6、または7記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法における被覆活物質助剤作製工程と混合工程において、核物質A’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.1重量%〜10重量%となり、被覆物質B’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.01重量%〜5重量%となるように、核物質A’と被覆物質B’の比率を調整すると共に、当該被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末との混合比率を調整することを特徴とする。
【0026】
活物質混合物中の水素吸蔵合金粉末に対する核物質A’の添加量が0.1重量%〜10重量%となり、同上合金粉末に対する被覆物質B’の添加量が0.01重量%〜5重量%となるように規制すると、好適な配合バランスの活物質混合物が得られる。このような混合物を負極活物質とする電極では、各成分が共働し合って機能するので、充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に高まる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項4、5、6、7、または8記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記核金属A’の平均粒径を0.1μm〜10μmとすることを特徴とする。
【0028】
この粒径であると、水素吸蔵合金粉末との混合性がよく、また適度な数の作用点が確保できるので、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に向上する。
【0029】
【実施の形態】
本発明にかかる水素吸蔵合金電極は、水素を吸蔵・放出することのできる水素吸蔵合金と、活物質助剤とで組成された負極活物質を集電体に保持させてなるものであり、上記活物質助剤は、導電剤を核とし、この導電剤の周囲に水素イオン化触媒が配置されてなるものであることを特徴とする。
【0030】
上記における導電剤としては、電子導電性にすぐれた各種の金属または金属化合物が使用できるが、好ましくはアルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化還元されることのない粒状の金属、または上記電位の範囲内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物(以下、核物質A’と総称する)を用いるのがよい。このような性質を有する核物質A’であると、電極の実働時において必ず金属になっており、金属は金属化合物よりも導電性が良いので、導電剤として好適に機能するからである。
【0031】
上記核物質A’としては、例えば銅、銀、ビスマスからなる群より選択される金属またはこれらの金属の化合物を使用するのがよい。銅、銀、ビスマスなどの金属は導電性に優れると共に、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化されないので、酸化被膜の形成等に起因する導電性の低下が生じない。よって、優れた導電剤として機能でき、また電極に対する導電性改善効果が長続きする。
【0032】
更に、上記核物質A’としては、より好ましくはCuO、Cu2 O、Cu(OH)2 、Ag2 O、Bi2 O3 、Bi(OH)3 より選択される金属化合物を使用する。これは次の理由による。CuOやCu2 O等の金属化合物は、既に酸化された状態にあるので金属表面が酸化被膜で覆われるといった問題が生じにくい。また、電池組み立て後に行われる初回充電において還元され金属になる一方、水素吸蔵合金がアルカリ電解液中で電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内において酸化されることがない。よって、電池内で酸化被膜が生成されることもない。つまり、これらの金属化合物は、電極製造時における取扱い性がよく、実働時には導電性に優れた金属となって機能するので、核物質A’として好都合である。
【0033】
他方、上記水素イオン化触媒としては、コバルト、ニッケル、ルテニウムからなる群より選択される金属(金属B)、またはこれらの金属に代え、或いはこれらの金属と共にこれらの金属の酸化物、水酸化物等の金属化合物を使用する。ここで、上記金属化合物としては、CoO、Co3 O4 、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、NiF2 、RuO2 からなる群より選択されるものが例示でき、これらは水素イオン化触媒能に優れる点で好ましい。なお、金属および金属化合物を被覆物質B’と総称する。
【0034】
ところで、核物質A’や被覆物質B’は、水素吸蔵合金の発電能力を十分に引き出すための活性賦活剤として機能するものであり、その作用効果は水素吸蔵合金との関係における存在形態の如何により大きく影響される。具体的には、導電剤は合金相互の導電を確保するために添加するものであるので、合金粒子の間に介在し、かつ合金粒子に接触した状態で存在しているのがよい。また水素イオン化触媒は、水素の吸蔵・脱着を触媒するものであるので、水素吸蔵合金の近傍に存在する必要があり、更に水素の吸蔵・脱着には電子の授受が伴うので、水素イオン化触媒は導電剤により導電性が確保された部位に存在するのが好ましい。つまり、導電剤とイオン化触媒とは近接して存在するのがよく、近接して存在すると両者が共働的に作用できるので、水素吸蔵合金に対する発電能力増強効果が顕著に高まる。
【0035】
本発明においては、活物質助剤として導電剤を核とし、水素イオン化触媒を被覆層としてなる被覆粒子を用いる。この構造の被覆活物質助剤は、導電剤と水素イオン化触媒とが一体化されているので、両者が一体的・共働的に機能する。また、本発明は、このような被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とを混合したものを活物質とし、この活物質を集電体に保持させる構成としてある。よって、水素吸蔵合金の近傍に存在する被覆活物質助剤が、合理的に水素吸蔵合金の発電能力を高める。
【0036】
ここで、被覆活物質助剤の粒径の面から、一層好適な状態の電極構造を実現するためには、核物質A’(導電剤)の平均粒径を0.1μm〜10μmとするのがよい。この範囲の平均粒径であると、充放電サイクル後の3C放電容量を顕著に向上させることができるからである。この理由としては、水素吸蔵合金粉末(通常、平均粒径20μm〜80μmを使用)との均一混合性が高まるためではないかと考えられる。
【0037】
また、核物質A’の添加量としては、水素吸蔵合金粉末に対し0.1重量%〜10重量%とし、水素イオン化触媒(被覆物質B’)の添加量としては、好ましくは水素吸蔵合金粉末に対し0.01重量%〜5重量%とするのがよい。活物質助剤の添加量が少な過ぎると十分な効果が得られない一方、添加量が多くなると、相対的に水素吸蔵合金量が少なくなり、単位重量当たりの水素吸蔵容量が減少する。したがって、水素吸蔵容量の減少によるマイナス効果が活物質助剤を添加することによるプラス効果を上回らない範囲とするのがよく、上記範囲においてこの条件が充足され、充放電サイクル後の3C放電容量が高まる。
【0038】
本発明では、金属−水素化物アルカリ蓄電池に使用できる各種の水素吸蔵合金が使用でき、例えば一般式MmRx(但し、Mmはミッシュメタル,RはNi、Co、Al、およびMn,Xは4.4〜5.4)で表される水素吸蔵合金、または一般式ABx(但し、Aはジルコニウム、Bはニッケル、Xは1.8〜2.2)で表される水素吸蔵合金が使用できる。
【0039】
また、被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末を含む活物質混合物を集電体に保持させる方法としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などをバインダーとする活物質ペーストを集電体に塗着する方法が挙げられる。この際使用する集電体としては、パンチングメタルやスポンジ状ニッケル基体などが使用できる。
【0040】
また、本発明では、アルカリ電解液として例えば水酸化カリウム水溶液や、水酸化カリウムに水酸化ナトリウムと水酸化リチウムを添加した水溶液などを用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の内容を実験に基づいて更に具体的に説明する。
(実験1)
実験1では、核金属A’(導電剤)としてCu2 Oを用い、被覆金属B’(水素イオン化触媒)としてNiF2 を用い、A’とB’の組成比率を変化させた6通りの被覆活物質助剤を作製し、組成比率と充放電サイクル後の3C放電容量の関係を調べた。具体的には下記する手順に従って行った。
【0042】
(1) 水素吸蔵合金の作製
ミッシュメタル(Mm)とニッケル(Ni)とコバルト(Co)とアルミニウム(Al)とマンガン(Mn)とをモル比で1.0:3.2:1.0:0.2:0.6の割合で混合し、高周波誘導加熱溶解炉で1500℃で溶融させた後、この溶湯を冷却し水素吸蔵合金のインゴットを作製した。次いで、このインゴットを平均粒径約50μmに粉砕して水素吸蔵合金粉末となした。
【0043】
(2) 活物質助剤の作製
NiF2 を蒸留水に溶かして約0.6重量%濃度のNiF2 溶液を作製し、このNiF2 溶液に平均粒径5μmのCu2 O粉末(酸化第二銅粉末)を所定量入れ、攪拌しながら水酸化ナトリウム液を加えて溶液pHを約11に調整した。これによりNiF2 が析出して、Cu2 O粒子の表面に付着するので、この粒子を濾過法により集め、60℃で乾燥した。このようにして、Cu2 O粒子の表面にNiF2 が被覆された6通りの被覆活物質助剤(表1参照)を作製した。
【0044】
ここで、上記における所定量とは、被覆活物質助剤におけるCu2 O(核)とNiF2 (被覆層)との組成比率が、1:10 (0.05 : 0.5 )、1:5(0.1 : 0.5) 、1:0.5 (1 : 0.5 )、1:0.1 (5 : 0.5 )、1:0.05 (10 : 0.5 ) 、1:0.03 (15:0.5) (かっこ内は水素吸蔵合金に対する重量%表示)となるようなCu2 O粉末量であるが、NiF2 溶液に溶解したNiF2 量の約2割がCu2 O粒子(核物質)の表面に塗着することなく失われる。よって、このロス分を考慮してNiF2 溶液に対するCu2 O粉末の投入量を決めた。
【0045】
なお、NiF2 を析出させる際に、NiF2 溶液に水酸化ナトリウム液を加えるので、NiF2 からなる被覆層の一部がNi(OH)2 となっていることも考えられる。
【0046】
(3) 水素吸蔵合金電極の作製
5重量%濃度のポリエチレンオキサイド(PEO)水溶液の1重量部に、前記水素吸蔵合金粉末を10重量部を加えると共に、上記で作製した被覆活物質助剤を加えて混練し活物質ペーストとなした。この活物質ペーストをニッケルメッキした鉄板からなるパンチングメタルの両面に塗着し乾燥した後、圧延し、更に所定の大きさに切断して板状の水素吸蔵合金電極を作製した。このようにして、核物質A’と被覆物質B’の組成比のみが異なる6通りの水素吸蔵合金電極(A1〜A6)を作製した。
【0047】
更に上記電極とこの電極より容量の小さい公知の焼結式ニッケル電極とを、ナイロン製セパレータを介して巻回し渦巻電極体となした。この渦巻電極体を電池缶に挿入し、30重量%の水酸化カリウム水溶液からなるアルカリ電解液を注液して、単3型の密閉円筒型の金属水素化物アルカリ蓄電池(実施例A1〜A6)を作製した。これらの電池の理論容量は、1200mAhであった。
【0048】
他方、活物質助剤を添加しないこと以外は、上記と同様にして比較対照用の比較例B1電池を作製した。
【0049】
〔高率放電特性〕
上記で作製した実施例A1〜A6および比較例B1について、下記の条件で充放電サイクルを繰り返し、充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。
測定条件
各蓄電池に対し、室温・1C電流値(1200mA)で充電を行い、−ΔV検出制御方式により−ΔV=10mVで充電を停止し、1C(1200mA)で放電終止電圧1.0Vまで放電を行うという充放電サイクルを200回繰り返した。その後、充電電流0.1C(120mA)で11時間充電し、しかる後、3C(3600mA)で電池電圧1Vまで放電し、この時の放電容量を測定した。
測定結果を、他の条件と共に表1に示す。なお、同種電池をそれぞれ4個づつ用意して測定を行い、その平均値を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1において、被覆活物質助剤を用いたA1〜A6は、活物質助剤を用いないB1に比較し、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に大きかった。また、水素吸蔵合金に対するCu2 Oの添加量を0.1重量%〜10重量%としたA2〜A5は、Cu2 Oの添加量が0.05重量%のA1および15重量%のA6に比較し、充放電サイクル後の3C放電容量が大きかった。
【0052】
上記の結果から、水素吸蔵合金粉末に被覆活物質助剤を添加すると、飛躍的に充放電サイクル後の3C放電容量が向上することが確認された。なお、水素吸蔵合金に対するCu2 Oの比率が0.1重量%未満になるとCu2 O量が不足するため、電極の導電性が不十分になり、Cu2 Oの比率が10重量%を超えると、導電性向上効果よりも活物質の単位重量当たりの水素吸蔵量が小さくなるマイナス効果の方が大きいために、充放電サイクル後の3C放電容量が小さくなったものと考えられる。
【0053】
(実験2)
実験2においては、核金属A’であるCu2 Oの水素吸蔵合金に対する添加量を5重量%(一定)とし、被覆金属B’であるNiF2 の水素吸蔵合金に対する添加量を0、 0.005、 0.01 、0.5 、5、10に変化させたこと以外は、上記実験1と同様にして金属水素化物アルカリ蓄電池B2およびA7〜A10を作製した。そして、実験1と同様にして充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。その結果を表2に示した。なお、A4は実験1で作製したものである。
【0054】
【表2】
【0055】
表2において、5重量%のCu2 Oのみを添加したB2は、Cu2 OとNiF2 からなる被覆活物質助剤を添加したA7〜A10に比較して、充放電サイクル後の3C放電容量が顕著に小さかった。このことから、3C放電容量を高めるには、導電剤とイオン化触媒を併用する必要があることが判る。また、A7〜A10の比較より、NiF2 の添加量が水素吸蔵合金に対し0.01重量%〜5重量%であるA8、A4、A9において、特に優れた3C放電容量が得られた。このことから、水素イオン化触媒剤は、水素吸蔵合金に対し0.01重量%〜5重量%添加するのが好ましいことが判る。
【0056】
(実験3)
実験3においては、核金属A’を被覆金属B’で被覆してなる被覆活物質助剤の添加効果について更に検証した。具体的には、Cu2 O(導電剤)およびNiF2 (水素イオン化触媒)の何れをも添加しない場合(B1)、Cu2 Oのみを添加した場合(B2)、Cu2 OおよびNiF2 をそれぞれ粉末添加した場合(B3)、及びCu2 Oを核とし、この表面をNiF2 で被覆してなる被覆活物質助剤粒子を用いた場合(A4)、並びに金属銅、金属コバルトをそれぞれ粉末で添加した場合(B4)について、充放電サイクル後の3C放電容量を測定した。
【0057】
その結果を表3に示した。表3から次のことが明らかになる。即ち、活物質助剤を全く添加しない場合、充放電サイクル後の3C放電容量が小さい(B1)。しかし、Cu2 Oのみを添加しても、3C放電容量を十分に高めることができない(B2)。これに対し、導電剤Cu2 Oと水素イオン化触媒NiF2 とを併用した場合、大幅に3C放電容量が向上し(B3)、特に導電剤Cu2 Oを水素イオン化触媒NiF2 で被覆して導電剤の近傍に水素イオン化触媒が存在する形態とした場合において(A4)、飛躍的に3C放電容量が向上する。
【0058】
他方、導電剤として金属銅、水素イオン化触媒として金属コバルトをそれぞれ粉末で添加した場合(B4)では、十分な3C放電容量の改善が認められない。これらの結果は、次のように考察できる。
【0059】
先ず、導電剤のみを添加しても十分に3C放電容量が改善されない理由は、次のように考えられる。水素吸蔵合金電極に導電剤を添加すると、合金相互間における電子の授受が円滑に行われるようになるので、活物質利用率や高率放電特性が向上する。しかし、充放電が繰り返えされると、合金が一層微細化されるため、相対的に導電剤の効果が低下する。また、充放電サイクルの進行とともに合金表面が腐食し、合金の電気化学的活性が低下する。この結果、充放電サイクルの進行につれ高率放電特性が悪くなる。
【0060】
これに対し、導電剤と共にCo、Niなどの水素のイオン化触媒を電極に添加すると、導電剤が合金相互間の導電性を改善し、イオン化触媒が水素の吸蔵脱着を触媒して、合金腐食等に起因する電気化学的活性の低下を補う。よって、充放電サイクル後の3C放電容量が向上するが、この場合、本発明にかかる被覆活物質助剤を用いると飛躍的に充放電サイクル後の3C放電容量が向上する(実施例A4)。この理由として次のことが考えられる。
【0061】
水素吸蔵合金が高い発電能力を発揮するためには、水素の吸脱着とこれに伴う電子の授受が円滑に行われる必要があり、このためには水素吸蔵合金の近傍に導電剤とイオン化触媒が存在する必要がある。本発明にかかる実施例A4の負極は、Cu2 O粒子(導電剤)を水素イオン化触媒NiF2 で被覆した被覆活物質助剤を用い、この被覆活物質助剤を水素吸蔵合金粉末と混合しペースト状となしたものを集電体に塗着する方法で作製されている。このような負極であると、導電剤の近傍にイオン化触媒が存在し、かつこれらの助剤が水素吸蔵合金の近傍(接触を含む)に位置している。よって、これらの助剤が極めて効率的にその作用効果を発揮して水素吸蔵合金の発電能力を向上させ、その結果として充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に向上する。
【0062】
他方、金属銅と金属コバルトを添加した比較例B4は、比較例B3や実施例A4に比べ充放電サイクル後の3C放電容量が大幅に小さいが、この理由としては次のことが考えられる。金属銅や金属コバルトは酸化され易いため、金属表面が酸化被膜で覆われる。金属表面が酸化被膜で覆われると、導電性や触媒能が低下し、十分な作用効果が発揮できなくなる。
【0063】
これに対し、Cu2 O粒子を核とし、NiF2 を被覆層とする本発明にかかる実施例A4では、初回充電時にCu2 O(核金属A’)が還元されて金属銅(導電性を有する金属A)になり、その後は金属銅の状態で存在する。また、被覆層を形成するNiF2 (被覆金属化合物B’)は、初回充電時に一旦アルカリ電解液に溶解し、その後、上記金属銅の周囲に、金属ニッケルまたはニッケル化合物の形(金属Bまたは金属B化合物)で再び析出する。つまり、本発明によると、導電性に優れた核金属の周りに触媒能に優れた金属ニッケルまたはニッケル化合物が存在するという好適な形状の助剤が生成され、これが水素吸蔵合金の発電能力を飛躍的に高めるので、充放電サイクル後の3C放電容量が飛躍的に向上することになる。
【0064】
【表3】
【0065】
(実験4)
実験4では、Cu2 OとNiF2 との組み合わせ以外において、本発明構成の作用効果を検証した。具体的には、核物質A’としてCu2 O、CuO、Cu(OH)2 、Ag2 O、Bi2 O3 、Bi(OH)3 を用い、被覆物質B’としてCoO、Co(OH)2 、CoF2 、Ni(OH)2 、RuO2 、NiF2 を用い、水素吸蔵合金に対する核物質A’と被覆物質B’の添加割合を5重量%、0.5重量%一定とした被覆活物質助剤を作製した。そして、実験1と同様な手法で3C放電容量を求めた。
【0066】
被覆活物質助剤組成および3C放電容量を表4に一覧表示した。表4のごとく、何れの組み合わせにおいても極めて良好な3C放電容量が得られ、本発明の優位性が裏付けられた。
【0067】
【表4】
【0068】
(実験5)
実験5では、核金属A’の平均粒径の違いが充放電サイクル後の3C放電容量に及ぼす影響を調べた。具体的には、水素吸蔵合金に対するCu2 O添加量を5重量%一定とし、NiF2 添加量を0.5重量%一定とした上で、Cu2 Oの粒径を変化させた被覆活物質助剤を作製し、実験1と同様な手法で3C放電容量を求めた。なお、平均粒径は、Leeds & Northrup社製の7991型マイクロトラック粒度分析計を用い測定した。
【0069】
その結果を表5に示した。表5から明らかなごとく、Cu2 O粒子の平均粒径が0.1μmから10μmの範囲(X2〜X5)において、高い3C放電容量が得られた。その一方、平均粒径が0.05μmのX1、及び平均粒径が15μmのX6では、十分な3C放電容量が得られなかった。この結果より、導電剤である核金属A’としては、平均粒径0.1μm〜10μmの粒子を用いるのが好ましい。
【0070】
なお、0.1μmよりも小さい平均粒径のものであると、粒子相互が凝集し、水素吸蔵合金との均一混合が困難になるため、十分な効果が得れなくなるものと考えられる。他方、平均粒径が10μmを超える大きな粒径であると、当然に被覆活物質助剤の粒径も大きくなり、水素吸蔵合金に対する作用点が少なくなること、及び粒径が大きいと、アルカリ電解液に溶解しにくくなり金属銅への還元が円滑になされなくなる結果、十分な作用効果が得られなくなると考えられる。
【0071】
【表5】
【0072】
【発明の効果】
以上から明らかなように、アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内においては酸化還元されることのない粒状の金属である銀、ビスマス(導電剤)がコバルト、ニッケル、ルテニウムより選択される金属等(水素イオン化触媒)で被覆されてなる活物質助剤を、水素吸蔵合金粉末に添加することを特徴とする本発明によると、一体化された前記導電剤と水素イオン化触媒が水素吸蔵合金に対し共働して作用する。よって、電極のサイクル劣化が抑制され、その結果として長期充放電サイクル後の高率放電容量が飛躍的に向上する。
Claims (9)
- 銀、ビスマスから選択された金属Aと、この金属Aに付着するコバルト、ニッケル、ルテニウムからなる群より選択される金属Bまたは金属Bの化合物とで組成される活物質助剤と、
水素吸蔵合金粉末と、
を含んでなる負極活物質が、
集電体に保持されたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極。 - 前記活物質助剤は、前記金属Aの表面に前記金属Bまたは金属Bの化合物が被覆された形状であり、この活物質助剤と水素吸蔵合金粒子とが接触し合った状態で集電体に保持されていることを特徴とする、
請求項1記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極。 - 前記金属BはCo、Ni、Ruからなる群より選択された金属であり、前記金属Bの化合物はCoO、Co 3 O 4 、Co(OH) 2 、CoF 2 、Ni(OH) 2 、NiF 2 、RuO 2 からなる群より選択された金属化合物である、
請求項2記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極。 - アルカリ電解液中で水素吸蔵合金が電気化学的に水素を吸蔵・放出する電位内においては酸化還元されることのない粒状の金属、または上記電位の範囲内において還元されて金属となるが、その後この電位の範囲内では再び酸化されることがない粒状の金属化合物を核物質A’とし、この核物質A’をコバルト化合物、ニッケル化合物、ルテニウム化合物より選択された被覆物質B’を用いて被覆する被覆活物質助剤作製工程と、
前記被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末とを混合して活物質混合物となす混合工程と、
前記活物質混合物を集電体に保持させ水素吸蔵合金電極となす電極作製工程と、
を備えるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記核物質A’として、銅化合物、銀化合物、ビスマス化合物より選択される金属化合物を用いる、
請求項4記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記核物質A’としての銅化合物がCuO、Cu 2 O、Cu(OH) 2 より選択されるものであり、銀化合物がAg 2 Oであり、ビスマス化合物がBi 2 O 3 、Bi(OH) 3 より選択されるものである、
請求項5記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記被覆物質B’としてのコバルト化合物がCoO、Co 3 O 4 、Co(OH) 2 、CoF 2 からなる群より選択されるものであり、ニッケル化合物がNi(OH) 2 、NiF 2 からなる群より選択されるものであり、ルテニウム化合物がRuO 2 である、
請求項4、5、または6記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記被覆活物質助剤作製工程と混合工程において、核物質A’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.1重量%〜10重量%となり、被覆物質B’の水素吸蔵合金粉末に対する添加量が0.01重量%〜5重量%となるように、核物質A’と被覆物質B’の比率を調整すると共に、当該被覆活物質助剤と水素吸蔵合金粉末との混合比率を調整することを特徴とする、
請求項4、5、6、または7記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記核物質A’の平均粒径が、0.1μm〜10μmであることを特徴とする、
請求項4、5、6、7、または8記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。
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