JP3572596B2 - エンジンの排気装置及びこれに使用する排気マニホールド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エミッション対策としてエンジンの排気系に設けられるプレキャタリストを備えた排気装置及びその排気装置に使用される排気マニホールドに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの排気系には、排気のエミッション対策のためにキャタリストすなわち触媒装置が配置される。このキャタリストには、通常、排気系の比較的上流側に配置され、高温状態の排気に接触して主として炭化水素を分解するためのプレキャタリストと、排気系の比較的下流側に設けられ排気と接触して主としてNOX、SOX対策のために設けられるメインキャタリストとがある。
このうちメインキャタリストは、比較的下流側に配置されるので、スペース的に余裕があるが、プレキャタリストは、排気系の上流側に配置されるため、エンジンあるいはその後端側に接続されるトランスミッションとの干渉をさけるために、横方向に張り出して配置されるのが普通である。
このようなプレキャタリストの配置構造はたとえば実開平4−113732号に開示されている。
この開示された構造では、プレキャタリストは、トランスミッションの側方にトランスミッションケースとの干渉を避けるようエンジンの出力軸から離間した位置に配置されている。
【0003】
【解決すべき課題】
ところで、エンジンが車両の前後方向に配置されるいわゆる縦型エンジンにおいては、通常、エンジンの後端側にトランスミッションが接続される。このようなパワープラントのレイアイトの場合には、エンジンとトランスミッションとの接続部の振幅が大きくなる。したがって、上記の実開平4−113732号の構造では、プレキャタリストは、トランスミッションの側方に位置しているパワープラントの振動メカニズム上不利となる。この場合、プレキャタリストは通常の排気管に比べて重量物であるので、他の部品に対する振動の影響も大きくなる。しかも、トランスミッションはパワープラントの動力伝達軸から半径方向に大きく張り出す構造を有しているため、上記プレキャタリストもこれとの干渉を避けるように張り出して配置せざるを得ない。この結果、プレキャタリストを安定的に支持することがさらに困難となり、望ましくない車両の振動を生み出す原因となる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上のような事情に鑑みて構成されたもので、縦型エンジンを備えた車両の排気装置において、上記のような車両の振動の問題を極力低減することができる排気装置を提供することを目的とする。
本発明の一つの特徴によれば、車両の前後方向に出力軸が延びるように配置されたエンジンと、前記エンジンの前後方向の中間部に位置するエンジンマウントの上方に前後方向に延びるように配置されたプレキャタリストとを備えたことを特徴とする。
好ましい態様では、前記プレキャタリストがエンジンの側方において、エンジンの後方かつ下方に向かって最短距離で延びるように配置される。
さらに、好ましくは、エンジンの後端側にトランスミッションが接続されており、前記プレキャタリストは少なくとも下流側においては、その一部が前記トランスミッションの外端よりも内側に位置するようにエンジンに近づけて配置される。
また、プレキャタリストの下流側の排気管の接続部の中心をエンジンの出力軸の径方向に関し、プレキャタリストの中心軸よりも外方にオフセットさせるのが好ましい。これによって、プレキャタリストをエンジンに極力近づけて配置することができ、プレキャタリストの張出量を少なくすることができる。
【0005】
さらに、プレキャタリストの上流側は排気マニホールドに接続され、該マニホールドの接続部は、エンジンの前後方向の中間位置よりも前方に位置するように設けられるのが好ましい。このようにすることによってプレキャタリストが下流側においてトランスミッションケースと干渉するのを回避することができる。
さらに、本発明の別の特徴によれば、エンジンの排気装置の一部を構成する排気マニホールドであって、その上流端においてエンジンのシリンダヘッドとの合わせ面に設けられ、シリンダヘッドに設けられる各気筒への排気通路に接続するための気筒接続用フランジと、下流端においてプレキャタリストに接続するためのキャタリスト接続用フランジとを備え、前記気筒接続用フランジとキャタリスト接続用フランジを接続したことを特徴とする排気マニホールドが提供される。
この場合、排気マニホールドは、好ましくは、各気筒からの排気を流通させる独立通路部分と、該独立通路の下流側に連続して設けられ、かつ、二つ以上の気筒からの排気ガスが流通するエンジンの前後方向に延びる前後方向共通通路部分と備え、該前後方向共通通路部分を構成する排気管が、前記キャタリスト接続用フランジに連結される。これによって、排気マニホールドの剛性を高めることができるとともに、製造面でも鋳造を容易に行なうことができる等のメリットが生じる。
【0006】
さらに、好ましくは、前記独立通路部分のうち中間気筒の独立通路部分と前記キャタリスト接続用フランジとが接続される。これによってさらに、排気マニホールドの強度を高めることができる。
また、前記前後方向共通通路は下流側においてな後方且つ下方に延びその下流端において前記キャタリスト接続用フランジに接続されている出口側共通通路を備えており、前記前後方向共通通路は、一端上方にのびその後湾曲して後方かつ下方に延びて前記出口側共通通路に接続される。このようにすることにより、流路抵抗を小さくすることができ、排気の流通をスムーズに行わせることができる。
【0007】
【発明を実施するための形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3を参照すると本発明を適用することができる車両のエンジン回り構造が示されている。
図示のエンジン1は、直列4気筒エンジンであって車両の前後方向に第1乃至第4気筒11、12、13及び14が並んで配置されるもので、いわゆる縦型I型エンジンである。エンジン1の後端には、トランスミッションケース2が接続されており、内部にトランスミッション(図示せず)が配置されている。したがって、図示のエンジン1では、エンジン1の出力を車輪に伝達するパワープラントの動力伝達軸は、車両の中央を前後方向に真っ直ぐ延びている。
エンジン1とトランスミッションとの接続部においては、上記動力伝達軸を中心とする円の半径方向に関しトランスミッションケース2がエンジン1の本体よりも張り出している。エンジン1のシリンダヘッド3の一方の側面には、排気マニホールド4が結合している。排気マニホールド4の排気出口側には、主として排気中の炭化水素成分を分解してエミッション性能を向上させるためのプレキャタリスト5が接続されている。プレキャタリスト5の下流側には、排気管6が接続されて後方に延びている。エンジン1の前後方向の中間部の側面の下部には、エンジンを車体に支持するためのエンジンマウントブラケット15が設けられている。さらに、エンジン1の側方には前方かつ下方に向かって延びるステアリングコラム7が位置している。ステアリングコラム7の先端はステアリング装置71に接続されている。ステアリング装置71は、車体横方向に延びるステアリングシャフト72を操舵するようになっている。
【0008】
さらに、車両の横方向において、ステアリングコラム7よりも外側には、前後方向に延びるサイドフレーム8が位置している。
図示の排気マニホールド4は、エンジン1のシリンダヘッド3に設けられる各気筒の排気通路に連通する独立排気通路部を形成する独立排気管部41を備えており、シリンダヘッド接続用フランジ42を介してシリンダヘッド3にそれぞれ接続されている。独立吸気管部41は、その下流側において合流して前後方向に延びる排気の共通排気通路部を構成する共通排気管部43を有する。
共通排気管部43は、ほぼ第2気筒12と第3気筒13との間の位置において一端上方に湾曲してなだらかな円弧を描くようにして一本の排気管に集合してマニホールドの出口側に向かって延びる出口管部44を形成している。これによって内部の排気流通が滑らかとなり、摩擦損失を減少することができる。マニホールド4の出口管部はプレキャタリスト接続用フランジ45が取り付けられており、プレキャタリストの上流側フランジ51にボルト穴47、52に挿通されるボルト(図示せず)によってと結合される。図示のプレキャタリスト5は、後方かつ斜め下方かつ外方に延びるように配置されている。すなわち、パワープラントの下方に後方に延びる排気管6のレベルまで排気経路が最短距離で下降するように構成されている。またプレキャタリスト5は、エンジン1のシリンダブロック16側面に近づけてしかも、トランスミッションケース2に干渉しないようにこれよりも前方に配置されている。プレキャタリスト5の下流側には、排気管がそれぞれのフランジ54、62に設けられたボルト穴55、63にボルト(図示せず)挿通することにより両フランジ54、62を介して接続される。この場合、プレキャタリスト5の中心線53と排気管6の中心線61とは一致しておらず、排気管6の中心線61の方がプレキャタリスト5の中心線53よりも外方かつ下方にオフセットした関係で接続されている。また、プレキャタリスト5は、図1及び図3に示すように排気マニホールド4の下方でかつエンジンマウントブラケット15の上方の空間に位置しており、とくに平面視において、マニホールド4の下方にオーバーラップする程度にエンジン1のシリンダブロック16の側面に近づけて配置されている。これによってトランスミッションケース2とエンジン1とによって画成されるコーナー部分の領域を利用して、プレキャタリスト5をレイアウトすることができる。これによって、この僅かな空間をむだなく使用することができる。また、プレキャタリスト5は、高温の方が触媒機能が高くなることが知られている。上記の配置と関係においては、上記コーナー部分にプレキャタリスト5を配置することによって、プレキャタリスト5をエンジンルーム内を流通する外気の流れから隔離することができる。すなわち、プレキャタリスト5が外気による冷却作用を受けることを極力抑制することができ、プレキャタリスト5の触媒作用を良好な状態に維持することができる。
【0009】
なお、マニホールド4の出口管部44には、O2 センサ9が取り付けられており、O2 センサ9の先端はマニホールド4の排気通路からプレキャタリスト5の入り口部まで達している。したがって、上記の配置では、排気マニホールド4回りの構成をコンパクトに構成することができる。
さらに、プレキャタリスト5はマニホールド4のすぐ下流側に取り付けられておりしたがってプレキャタリスト5までの排気経路の長さは極めて短くなっている。この結果、プレキャタリスト5には、高温の排気が導入されることになり、プレキャタリストの触媒作用を良好に維持することができる。
つぎに、上記の構成について車両の振動メカニズム関連して検討する。
図4を参照すると、パワープラントにおける一般的に振動パターンが示されている。
図示のようにパワープラントの振動パターンによれば、実線22で示すようにエンジン1とトランスミッション21及びプロペラシャフト10の中央部分の振幅が大きいことが分かる。
したがって、実開平4−113732号に開示されるようにプレキャタリスト5をエンジン1とトランスミッション21との接続部の側方に位置せしめる構造では、通常の排気管よりも重量のあるプレキャタリスト5を振幅の大きい領域に位置させることとなり、車両の振動を大きくする結果となる。
【0010】
本発明に従う上記の構造では、プレキャタリスト5はトランスミッションよりも前方の領域において極力エンジン1に近づけて配置される。この結果、プレキャタリスト5の振動を従来の構造に比べて小さく維持することができ、車両全体の振動を抑えることができる。
図5〜図8を参照すると、排気マニホールド4の出口管部44は水平方向に延びる共通排気管部から第2気筒用の独立吸気管部41の付近において集合して下方かつ後方に向かって斜めに延びている。出口管部44の後端にあるプレキャタリスト用フランジ45には、プレキャタリスト5の上流側フランジ51が組み合わされてプレキャタリスト5が接続されている。このプレキャタリスト用フランジ45の上端部には上方に延びる肉部46が設けられ、図7に断面で示すように、プレキャタリスト用フランジ45は、この肉部によってその上方の共通排気管部43及び第3気筒用の独立排気管部41に接続されている。
肉部46は、図7に示すようにプレキャタリスト用フランジ45の上端部から上方に拡がっており、その上方の共通排気管部43、第3気筒用の独立排気管部41及び該独立排気管部のシリンダヘッド用フランジ42を一体的に連結している。このようにマニホールド4の上記各部を連結することにより排気マニホールド4の構造上の強度を向上させる効果があるととともに、製造面でも好ましい。すなわち、マニホールド4は通常鋳造によって製造されるが、仮に上記のようにプレキャタリスト用フランジ45と共通排気管部43を連結するように延びる肉部46を設けないとすると、両者の間に僅かな間隙を有するように鋳造型を形成しなければならないが、このようにすると通常の2つ割りの鋳造型では、型の抜き取りが出来なくなるという問題がある。この点上記のようにプレキャタリスト用フランジ45の上方に肉部を設けるようにすると型の抜き取りが可能となり、容易に鋳造することができる。
【0011】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、プレキャタリストをエンジンとトランスミッションとの接続部より前方のエンジンの側方にトランスミッションの前端面とによって画成されるコーナー部の空間を利用してプレキャタリストを配置することによりコンパクトな排気装置の構造を提供することができる。また、このように配置した排気装置は、パワープラントの振動面でも、プレキャタリストの触媒性能の面でも好ましい結果を与えるものである。
さらに、本発明により強度の高い排気マニホールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つ実施の形態にかかるエンジンの回りの構造を示す平面図、
面図、
【図2】図1のエンジン回りの側面図
【図3】プレキャタリストの上記エンジンとの位置関係を示す前方からみた側面図、
【図4】パワープラントの振動パターンを示す概略図、
【図5】排気マニホールドの前方からみた外形図、
【図6】排気マニホールドの側面からみた外形図、
【図7】排気マニホールドの平面図、
【図8】排気マニホールドのA−A断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 トランスミッションケース
3 シリンダヘッド
4 排気マニホールド
5 プレキャタリスト
6 排気管
7 ステアリングコラム
8 サイドフレーム
9 O2 センサ。
Claims (4)
- 車両の前後方向に出力軸が延びるように配置されたエンジンと、前記エンジンの前後方向の中間部に位置するエンジンマウントの上方に前後方向に延びるように配置されたプレキャタリストとを備え、
前記プレキャタリストの下流側の排気管の接続部の中心をエンジンの出力軸の径方向に関し、プレキャタリストの中心軸よりも外方にオフセットさせたことを特徴とするエンジンの排気装置。 - 請求項1において、さらにエンジンの後端側にトランスミッションが接続されており、前記プレキャタリストは少なくとも下流側においては、その一部が前記トランスミッションの外端よりも内側に位置するようにエンジンに近づけて配置されていることを特徴とするエンジンの排気装置。
- 請求項1において、プレキャタリストの上流側は排気マニホールドに接続されており、該マニホールドの接続部は、エンジンの前後方向の中間位置よりも前方に位置することを特徴とするエンジンの排気装置。
- エンジンの排気装置の一部を構成する排気マニホールドであって、その上流端においてエンジンのシリンダヘッドとの合わせ面に設けられ、シリンダヘッドに設けられる各気筒への排気通路に接続するための気筒接続用フランジと、下流端においてプレキャタリストに接続するためのキャタリスト接続用フランジと、
各気筒からの排気を流通させる独立通路部分と、
該独立通路の下流側に連続して設けられ、かつ、二つ以上の気筒からの排気ガスが流通するエンジンの前後方向に延びる前後方向共通通路部分とを備え、
前記気筒接続用フランジとキャタリスト接続用フランジを接続するとともに、前記前後方向共通通路部分を構成する排気管が、前記キャタリスト接続用フランジに連結されており、かつ前記前後方向共通通路は下流側において後方且つ下方に延びその下流端において前記キャタリスト接続用フランジに接続されている出口側共通通路を備えており、前記前後方向共通通路は、一端上方にのびその後湾曲して後方かつ下方に延びて前記出口側共通通路に接続されていることを特徴とする排気マニホールド。
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