JP3571120B2 - 硬化性エマルジョンおよび該エマルジョンからなる被覆剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アルコキシシリル基、すなわち、珪素原子に加水分解性のアルコキシ基が結合した基を有する重合体からなる硬化性エマルジョンに関するものであり、該硬化性エマルジョンは、塗料またはコーティング剤として使用される。
【0002】
【従来の技術】
γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランまたはビニルトリエトキシシランに代表される、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性単量体を他の単量体と共重合して得られる重合体は、接着剤、シーリング材、塗料およびコーティング剤などの用途に汎用されている。ところが、これらの用途では有機溶剤の揮散による人体への有害性や環境汚染を避けるため、有機溶剤を使用しない水性系の材料が求められている。
アルコキシシリル基を含有する重合体からなる水性エマルジョンは、該基がもともと加水分解するという性質を備えているため、保存安定性に問題があり、その点を改良する目的で多数の提案がなされている。
【0003】
すなわち、特開平3−227312号公報には、(メタ)アクリル酸アルキルとアルコキシシリル基を有する単量体を水性乳化重合する際に、上記単量体以外にアクリルアミド、アクリル酸またはスチレンスルホン酸のような特定の水溶性単量体を0.1〜5重量%程度共重合させる方法が提案されており、また特開平5ー25354号公報には、アルコキシシリル基を有する単量体をアミンイミド基含有単量体とアルコール溶剤中で共重合させ、その後に水を加えてエマルジョン化し、次いでアルコールを蒸散させる方法が提案されている。
【0004】
さらに、特開昭59−152972号公報には、ビニルシラン、アクリル系単量体および重合性乳化剤を水性乳化重合して得られた水性エマルジョンに、特定量のコロイダルシリカを配合することにより、耐水性に優れる被膜を形成する水性エマルジョンが得られることが開示されている。
しかしながら、従来公知の硬化性エマルジョンは、保存安定性がなお不十分であり、さらにその点に加えて、得られる被膜の耐候性および耐酸性が不満であるという問題があった。
本発明者らは、アルコキシシリル基を有する重合体からなる水性エマルジョンであって、保存安定性に優れ、かつ優れた物性の被膜を形成し得る硬化性エマルジョンの提供を目的に検討した結果、ポリオキシアルキレン単位およびラジカル重合性二重結合を有するイオン性界面活性剤を使用して、pH緩衝剤の存在下に、ラジカル重合性アルコキシシランと他のビニル単量体を共重合することにより、保存安定性と被膜物性の両方に優れる硬化性エマルジョンが得られることを見出し、特許出願をしている(特願平7−49129号)。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記特許出願の後にさらに検討した結果、ラジカル重合性基を有するアルコキシシランを他の共重合性単量体と水性媒体中で重合させるに際し、それらの単量体とともに、ポリオキシアルキレン単位およびラジカル重合性二重結合を有するイオン性界面活性剤ならびに分子の片末端にラジカル重合性基を有する平均縮合度が3以上のポリエステルまたはポリアルキレンオキシドを併用することにより、前記特願平7−49129号で提案した硬化性エマルジョンと比較して、酸性雨に対する耐久性(以下耐酸性という)に優れる被膜を与えるエマルジョンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、水性媒体中でpH緩衝剤の存在下に、下記ラジカル重合性成分(a)〜(d)をミクロ懸濁重合により共重合させてなる硬化性エマルジョンであり、さらには該エマルジョンからなる被覆剤である。
(a)ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン
(b)上記成分(a)と共重合可能なビニル単量体
(c)分子の片末端に上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性基を有する平均縮合度が3以上のポリエステルまたはポリアルキレンオキシド
(d)一般式;Z−(AO)n −Y(式中、Zは上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性二重結合を有する構造単位、AOはオキシアルキレン基、n は2以上の整数、Yはイオン解離性基を示す)で表されるラジカル重合性界面活性剤
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明における成分(a)は、前記のとおり、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(以下アルコキシシラン単量体という)であり、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシランおよびγ−メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
好ましい成分(a)は、アルコキシ基がメトキシ基またはエトキシ基であるアルコキシシラン単量体である。
【0008】
上記成分(a)と共重合させるビニル単量体(b)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2ーヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレンおよびα−メチルスチレン等が挙げられる。
好ましいビニル単量体(b)は、重合体に造膜性を付与する単量体であり、具体的には、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびグリシジル(メタ)アクリレートである。
一方、アルコキシリル基の加水分解を促進させる(メタ)アクリル酸のような酸性単量体は使用しないことが望ましい。
【0009】
本発明における成分(c)は、分子の片末端に上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性基を有する平均縮合度が3以上のポリエステルまたはポリアルキレンオキシド(以下これらをそれぞれポリエステル単量体およびポリアルキレンオキシド単量体という)であり、ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ポリエステル単量体のポリエステル部分を形成する好ましい単量体単位は、オキシカルボン酸およびラクトンであり、該ポリエステル部分の好ましい平均縮合度は、3〜100であり、さらに好ましくは3〜8である。また、ポリアルキレンオキシド単量体におけるポリアルキレンオキシドを形成する好ましい単量体単位は、エチレンオキジドおよびプロピレンオキシドであり、該ポリアルキレンオキシドの好ましい平均縮合度は、3〜200である。
ポリエステル単量体またはポリアルキレンオキシド単量体を構成する各単量体単位の縮合度が、2以下であると得られる硬化性エマルジョンからは、耐酸性に優れる被膜が得られない。
【0010】
本発明において、特に好ましくは、下記化1または化2で表される平均縮合度が3〜8のポリカプロラクトンからなるポリエステル単量体である。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
かかるポリエステル単量体としては、市販品を使用してもよく、例えばダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM3(上記化1で表されn=3のもの)、プラクセルFA3(上記化2で表されn=3のもの)、プラクセルFM6(上記化1で表されn=6のもの)、プラクセルFA6(上記化2で表されn=6のもの)、プラクセルFM8(上記化1で表されn=8のもの)およびプラクセルFA8(上記化2で表されn=8のもの)等が挙げられる。
【0014】
ポリアルキレンオキシド単量体の具体例としては、日本油脂(株)製のブレンマーPP−1000(片末端にメタクリロイル基が結合した縮合度5〜6のポリプロピレンオキシド)、PP−500(片末端にメタクリロイル基が結合した縮合度9のポリプロピレンオキシド)、PP−800(片末端にメタクリロイル基が結合した縮合度12のポリプロピレンオキシド)、PE−200(片末端にメタクリロイル基が結合した縮合度4〜5のポリエチレンオキシド)およびPE−350(片末端にメタクリロイル基が結合した縮合度7〜9のポリエチレンオキシド)等が挙げられる。
【0015】
次に、本発明における成分(d)は、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン基とイオン解離性基を含有するラジカル重合性界面活性剤である。
Z−(AO)n −Y (1)
(式中、Zは、上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性二重結合を有する構造単位、AOはオキシアルキレン基、n は2以上の整数、Yはイオン解離性基を示す。)
前記一般式(1)における好ましいZは、芳香族炭化水素基、アルキル置換芳香族炭化水素基、高級アルキル基または脂環式炭化水素基等の疎水性基とラジカル重合性二重結合とが組み合わされた構造単位である。さらに、Zにおけるラジカル重合性二重結合としては、(メタ)アリル基、プロペニル基またはブテニル基等が好ましい。
【0016】
成分(d)の好ましいイオン性はアニオンであり、したがってYとしては、基(AO)n 側にアニオンが共有結合し、これにカチオンがイオン結合した塩が好ましい。好ましいYの具体例としては、−SO3 Na、−SO3 NH4 、−COONa、−COONH4 、−PO3 Na2 および−PO3 (NH4)2 等が挙げられ、さらに好ましくは−SO3 Naまたは−SO3 NH4 である。
基(AO)n におけるnとしては、300以下が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。nが5未満であると、前記単量体(a)中のアルコキシシリル基の安定性が不足し易く、一方nが50を越えると得られる硬化性エマルジョンから形成される塗膜の物性が低下する傾向を示す。また、基(AO)n における単位A、すなわちアルキレン基としては、エチレン基またはプロピレン基が好ましい。
【0017】
上記ラジカル重合性界面活性剤の代表例としては、下記化3、化4または化5等で表される化合物が挙げられる。各式中、Yはいずれもイオン解離性基であり、その好ましい具体例は既述のとおりである。
【0018】
【化3】
化3中のRとしては、炭素数6〜18の直鎖状または分岐状アルキル基が好ましい。
【0019】
【化4】
化4中のRとしては、炭素数6〜18の直鎖状または分岐状アルキル基が好ましい。
【0020】
【化5】
化5中のR1 は、水素原子またはメチル基であり、またR2 としては、炭素数8〜24のアルキル基が好ましい。
【0021】
本発明においては、上記成分(a)〜(d)を水性媒体中で重合させるに当たり、成分(a)におけるアルコキシシリル基の安定のため、pH緩衝剤を使用する。pH緩衝剤としては、水性媒体のpHを6〜10に保持するのに適した緩衝剤が好ましく、かかるpH緩衝剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、りん酸一ナトリウム、りん酸一カリウム、りん酸二ナトリウム、りん酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムおよび蟻酸ナトリウム等が挙げられる。これらの化合物は2種以上組み合わせて使用することもできる。
さらに好ましいpH緩衝剤は、少量の添加でpHが安定する炭酸水素ナトリウムである。
pH緩衝剤の好適な使用量は、水に対して0.01〜5重量%である。
【0022】
上記重合性成分(a)〜(d)の好ましい共重合割合は、それらの合計量を基準にして、(a)1〜40重量%、(b)50〜97重量%、(c)1〜40重量%および(d)0.2〜20重量%であり、さらに好ましくは、(a)3〜20重量%、(b)50〜93重量%、(c)3〜30重量%および(d)0.5〜5重量%である。
上記成分(a)の共重合割合が、1重量%未満であると良好な硬化性が発現せず、一方40重量%を越えると貯蔵安定性が低下し易い。成分(c)の共重合仕込み割合が、1重量%未満であると得られる硬化性エマルジョンから形成される被膜の耐酸性が低く、一方40重量%を越えると被膜の耐候性が低下し易い。成分(d)の割合が、0.2重量%未満であると重合安定性が低下し易く、一方20重量%を越えると被膜の耐水性が不足する。また、成分(b)の割合が、50重量%未満であると得られる硬化性エマルジョンの造膜性および被膜の基材に対する密着性等が劣る。
【0023】
次に、重合方法について説明する。
本発明においては、重合方法として、油溶性重合開始剤を用い油溶性単量体の微細粒子中で重合させるミクロ懸濁重合を採用する。
以下、ミクロ懸濁重合の概要について説明する。
ミクロ懸濁重合をするためには、まず単量体および油溶性重合開始剤からなる微細粒子を、pH緩衝剤を溶解した水性媒体中に分散させる。この単量体等の水性媒体への分散操作において、界面活性剤の前記成分(d)は、pH緩衝剤と同様に事前に水性媒体に溶解させておいても良い。水性媒体と分散させる単量体の割合は、単量体100重量部当たり水性媒体20〜150重量部程度が適当である。
【0024】
上記微細粒子の水性媒体中への分散においては、回転式ホモミキサー、高圧式乳化分散機(通常ホモジナイザーと称されている)またはタービン型ミキサー等を用いる分散方法が採用できる。
上記操作により、1μ以下の粒径の微細粒子を得ることができる。さらに好ましい粒径は0.2〜0.05μである。単量体の水性分散粒子が小さいほど、得られる重合体エマルジョンにおける重合体分散粒子も小さくなり、それから形成される被膜は耐溶剤性および耐水性に優れる。
【0025】
上記操作によって得られる、単量体等からなる微細粒子の水性分散体(以下単量体エマルジョンという)を、重合開始剤の分解温度以上に加熱された水性媒体中に供給して、成分(a)〜(d)を共重合させる。
重合容器に予め仕込んでおく水性媒体の好ましい量は、単量体エマルジョン100重量部当たり10〜50重量部である。重合温度は、通常40〜100℃程度であり、好ましくは70〜90℃である。
【0026】
ミクロ懸濁重合に使用される油溶性ラジカル重合開始剤としては、20℃の水に対する溶解度が10重量%以下のものが好ましく、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4ジメチルバレロニトリル、1ーアゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリルおよびジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシドジ−n−プロピルパーオキシジカルボネートおよびt−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物が代表例として挙げられる。その使用量は、成分(a)〜(d)の合計量に対して0.1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0027】
上記ミクロ懸濁重合によって得られる本発明の硬化性エマルジョンは、温度60℃で1ケ月間放置しても安定なエマルジョン状態を維持し、しかも良好な硬化性能を保持している。
本発明の硬化性エマルジョンは、優れた物性の被膜を形成するので、被覆剤として好適である。塗布の対象材料としては、以下のようなものがある。
▲1▼鉄、ステンレス、ブリキ、アルミニウム、ニッケル等の金属基材
▲2▼コンクリート、スレート、モルタル、ケイ酸カルシウム系材料、石膏/スラグ系材料等のセメント系基材
▲3▼アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS、ベークライト、ナイロン、エポキシ樹脂等の樹脂成形体
▲4▼ガラス
▲5▼スギ、ヒノキ等の木材および紙
【0028】
硬化性エマルジョンを塗料等の被覆剤として使用する場合には、アルコキシシリル基が加水分解することによって生じるシラノール基の縮合反応を促進するために、使用前に触媒を添加することが好ましく、かかる触媒としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等の有機チタネート化合物、またはジオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫化合物、またはパラトルエンスルフォン酸等の有機酸が挙げられる。
被膜は、常温乾燥または加熱乾燥により硬化でき、好ましい乾燥条件は、常温では3〜14日間であり、温度100〜150℃では3〜30分程度である。
【0029】
硬化性エマルジョンを塗料として用いる場合、増粘剤、造膜助剤および顔料等を併用でき、さらに必要に応じて、垂れ防止剤、沈降防止剤、消泡剤またはシランカップリング剤等の塗料添加剤も添加できる。塗料の基材への塗装方法としては、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り塗装などが挙げられる。
硬化性エマルジョンの上記以外の用途としては、無機建材用溌水剤、電子部品の防湿用コーティング剤、磁気テープのバックコート剤、繊維用の硬化仕上げ剤、シーリング剤、接着剤、バインダーまたは粘着剤等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、各例における配合量を表す「部」は、「重量部」である。また、ラジカル重合性界面活性剤として使用されたアクアロンHS20〔第一工業製薬(株)、商品名〕は、下記化6で表される化合物である。
【0031】
【化6】
【0032】
各例で得られた硬化性エマルジョンは、それを20〜25μmの膜厚となるようにバーコーダーでアルミ板上に塗布し、温度25℃で湿度60%の条件下で14日間乾燥させることにより、以下の被膜物性測定用の試験片を作成した。
▲1▼耐水性;25℃のイオン交換水に上記試験片を7日間浸漬後、塗膜の白化の程度を観察した。
(○;変化なし、△;多少白化、×;完全に白化)
▲2▼耐酸性;被膜上に5%硫酸を一滴滴下し、60℃で10分間保持し、塗膜の状態を評価した。
(○:変化なし、△:痕が付く、×:塗膜が浮く、または剥がれる)
▲3▼促進耐候性試験;スガ試験機製のサンシャイン・ウエザーメーターを使用し、JIS5400の条件で被膜を強制劣化させ、初期光沢(60゜)に対する3000時間経過後の光沢(60゜)の保持率(%)により、耐候性を評価した。
【0033】
【実施例1】
下記表1に記載の単量体、ラジカル重合性界面活性剤および重合開始剤を、pH緩衝剤を溶解した水媒体に加え、ホモミキサーで混合した後、さらにホモジナイザー〔ゴーリン社製〕を使用して、平均粒径0.2μmでpH8.5の単量体エマルジョンを調製した。
攪拌機、温度計および冷却器を備えたフラスコに脱イオン水40部を仕込み、液温を80℃に昇温した後、水媒体を高速で攪拌しながら、上記の単量体エマルジョンを2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃の温度に2時間保持して重合を完結させ、ついで室温まで冷却した。
重合中、フラスコ内壁に凝集物が僅かに付着したが、液分離およびブロッキングは起こらず、重合は安定に行われた。得られた硬化性エマルジョンから形成された被膜の物性の評価結果は、表3のとおりである。
【0034】
【表1】
【0035】
【実施例2〜4】
表2に記載の単量体およびラジカル重合性界面活性剤等を使用して、実施例1と同様にして硬化性エマルジョンを合成した。得られた硬化性エマルジョンから形成された被膜の物性の評価結果は、表3に記載のとおりである。
【0036】
【比較例1〜3】
表2に記載の単量体およびラジカル重合性界面活性剤等を使用して、実施例1と同様にして硬化性エマルジョンを合成した。なお、比較例3では、ラジカル重合性界面活性剤に代えて、ラジカル重合性を含まない界面活性剤レベノールWZ〔花王(株)商品名、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーエル硫酸エステル塩〕を2部使用した。
得られた硬化性エマルジョンから形成された被膜の物性の評価結果は、表3に記載のとおりである。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
本発明の硬化性エマルジョンは、保存安定性に優れ、しかも該エマルジョンからは、耐酸性および耐候性に優れる被膜を形成できる。
Claims (4)
- 水性媒体中でpH緩衝剤の存在下に、下記ラジカル重合性成分(a)〜(d)をミクロ懸濁重合により共重合させてなる硬化性エマルジョン。
(a)ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン
(b)上記成分(a)と共重合可能なビニル単量体
(c)分子の片末端に上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性基を有する平均縮合度が3以上のポリエステルまたはポリアルキレンオキシド
(d)一般式;Z−(AO)n −Y(式中、Zは上記成分(a)と共重合可能なラジカル重合性二重結合を有する構造単位、AOはオキシアルキレン基、n は2以上の整数、Yはイオン解離性基を示す)で表されるラジカル重合性界面活性剤 - ラジカル重合性成分(a)〜(d)の共重合割合が、それらの合計量を基準にして、(a)1〜40重量%、(b)50〜97重量%、(c)1〜40重量%および(d)0.2〜20重量%である請求項1記載の硬化性エマルジョン。
- ラジカル重合性成分(b)が、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた1種または2種以上の単量体である請求項1または請求項2記載の硬化性エマルジョン。
- 請求項1、請求項2または請求項3記載の硬化性エマルジョンからなる被覆剤。
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